JP6612574B2 - 研削装置 - Google Patents

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Description

本発明は、環状の工作物の外周面及び内周面を研削する研削装置に関する。
従来より、この種の研削装置として、略水平に延びる主軸と、この主軸を正転及び逆転方向に切り替え駆動する主軸駆動部と、主軸に装着され、工作物の中心線方向一端面を吸着する吸着面を有するチャックと、工作物の外周面を側方から支持する第1シュー(リアシュー)と、工作物の外周面を下方から支持する第2シュー(フロントシュー)と、工作物の外周面に接触し、外周面を研削する外周面砥石車と、工作物の内周面に接触し、内周面を研削する内周面砥石車と、第1及び第2シューが取り付けられるとともに、第1及び第2シューを主軸の径方向に変位させるシュー可動機構とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この研削装置では、シュー可動機構は、第1及び第2シューの位置を、工作物の外周面の研削時に工作物に第1及び第2シューへの押し付け力を作用させるように工作物の中心線を主軸の回転中心線に対し偏心させる第1の位置と、工作物の内周面の研削時に工作物に第1及び第2シューへの押し付け力を作用させるように工作物の中心線を主軸の回転中心線に対し偏心させる第2の位置とに切り替えるように構成されている。
特許第5064122号公報
しかしながら、特許文献1の研削装置では、第1シュー(リアシュー)の位置が工作物の外周面の研削時に適切となるような位置に設けられているので、工作物の内周面の研削時に第1シュー(リアシュー)が内周面砥石車の真後ろに配置されず、適切に研削を行うことができなかった。
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、環状工作物の外周面と内周面とを研削する研削装置において、シューを組み替えることなく、いずれの研削位置においても、適切に研削を行って加工精度の向上させることができるようにすることにある。
上記目的を達成するために、本発明では、主軸の回転中心線に対する工作物の中心線の偏心方向を変更したときに、それぞれ最適な位置にあるシューで工作物を支持するようにした。
具体的には、第1の発明では、環状の工作物の外周面及び内周面を研削する研削装置を前提とする。
そして、この研削装置は、
主軸と、
上記主軸を正転及び逆転方向に切り替え駆動する主軸駆動部と、
上記主軸に装着され、上記工作物の中心線が該主軸と平行になるように中心線方向一端面を吸着する吸着面を有するチャックと、
前側において上記工作物の外周面に接触し、該外周面を研削する外周面砥石車と、
上記工作物の内周面に接触し、該内周面を研削する内周面砥石車と、
上記工作物の外周面を前側において支持するフロントシューと、
上記内周面砥石車による加工時には上記工作物の外周面から距離を空け、上記外周面砥石車による加工時に上記工作物の外周面を上記外周面砥石車の反対側から支持する第1リアシューと、
上記外周面砥石車による加工時には上記工作物の外周面から距離を空け、上記内周面砥石車による加工時には上記第1リアシューに対して相対的に移動して上記工作物の外周面を上記内周面砥石車の反対側から支持する第2リアシューとを備えている。
上記の構成によれば、外周面砥石車による加工時には、フロントシューによって工作物の外周面を前側において支持すると共に、第1リアシューによって工作物の外周面を上記外周面砥石車の反対側から支持する。第2リアシューは、工作物の外周面に当接しない。このとき、外周面砥石車の真後ろ側ではなく、少しずらした位置で第1リアシューによって工作物を支持することで、工作物の外周面に突起があるときの突起の増大を防ぐことができる。また、内周面砥石車による加工時には、フロントシューによって工作物の外周面を前側において支持すると共に、第2リアシューが第1リアシューに対して相対的に移動して工作物の外周面を内周面砥石車の反対側から支持する。このため、工作物の内周面を精度よく加工することができる。このように、工作物の外周面を研削するときと内周面を研削するときとで第1リアシューと第2リアシューとを使い分けることにより、それぞれ最適な位置で工作物を支持することができる。なお、ここで「前側」は、外周面砥石車が配置される側を意味し、フロントシューは、少なくとも第1リアシュー及び第2リアシューよりも前側にあればよい。ここで、「第1リアシューに対して相対的に移動して」とは、第1リアシュー及び第2リアシューの少なくとも一方が、他方に対して移動することで、互いの位置関係が変わることを意味する。
第2の発明では、第1の発明において、
上記フロントシュー及び上記第1リアシューが取り付けられるとともに、該フロントシュー及び第1リアシューを上記主軸に対して変位させるシュー可動機構とを備え、
上記シュー可動機構は、
上記フロントシュー及び上記第1リアシューの位置を、上記工作物の外周面の研削時に該工作物に上記フロントシュー及び上記第1リアシューへの押し付け力を作用させるように該工作物の中心線を上記主軸の回転中心線に対し偏心させる第1の位置と、
上記工作物の内周面の研削時に該工作物に上記フロントシュー及び上記第2リアシューへの押し付け力を作用させるように該工作物の中心線を上記主軸の回転中心線に対し偏心させる第2の位置とに切り替えるように構成されている。
上記の構成によると、シュー可動機構によって第1の位置とされたフロントシュー及び第1リアシューに工作物を支持すると、工作物の中心線が主軸の回転中心線から偏心した状態になる。このときの偏心方向は、工作物の外周面の研削時に、該工作物にフロントシュー及びリアシューへの押し付け力を作用させる方向である。このため、主軸を回転させて工作物の外周面を外周面砥石車で研削する際に、工作物が外周面砥石車の真後ろではない位置で安定して支持することができる。
また、この内周面を研削する際には、主軸駆動部によって主軸の回転方向が外周面の研削時とは反対方向に切り替えられる。この場合には、シュー可動機構によってシューの位置が第1の位置から第2の位置に切り替えられる。すると、主軸の回転中心線に対する工作物の中心線の偏心方向は、工作物の内周面の研削時に工作物にフロントシュー及び第2リアシューへの押し付け力を作用させる方向となる。これにより、工作物の内周面を内周面砥石車で研削する際に、工作物がシューにより安定して支持される。
このように、シュー可動機構を設けたことにより、従来構造のように主軸台を揺動させることなく、主軸の回転中心線に対する工作物の中心線の偏心方向を、工作物の外周面を研削する場合と内周面を研削する場合とに対応するように変更することが可能になり、外周面の研削と内周面の研削とを連続的に行える。
第3の発明では、第2の発明において、
上記シュー可動機構は、
上記主軸を支持する主軸台に固定され、上記第2リアシューが設けられたベース部材と、
上記フロントシュー及び第1リアシューが設けられると共に、上記ベース部材に設けた回動軸を中心に回動可能に支持されるシュー保持部材と、
上記ベース部材に設けられ、上記シュー保持部材を押圧して回動させる回動アクチュエータと、
上記ベース部材に設けられ、上記回動アクチュエータに押圧された上記シュー保持部材の回動範囲を規制する回動位置設定部とを備えている。
上記の構成によると、回動アクチュエータを駆動することで、簡単かつ確実にシュー保持部材を第1の位置又は第2の位置に切り替えることができ、最適な保持状態で外周面の研削と内周面の研削とを行える。
第4の発明では、第3の発明において、
上記回動アクチュエータと上記回動位置設定部とは、上記回動軸に対して隣接した位置に設けられている。
上記の構成によると、回動アクチュエータと回動位置設定部とを隣接した位置に設けることで、離れていた場合にシュー保持部材に生じ得る曲げモーメントをできるだけ小さくすることができ、シュー保持部材の変形を防いで精度よく研削を行うことができる。
本発明によれば、内周面砥石車による加工時に第2リアシューを第1リアシューに対して相対的に移動させることで、外周面砥石車による加工時と内周面砥石車による加工時と第1リアシューと第2リアシューとを使い分けるようにしたことにより、シューを組み替えることなく、いずれの研削位置においても、適切に研削を行って加工精度の向上させることができる。
本発明の実施形態に係る研削装置の概要を示す側面図である。 実施形態に係る研削装置を工作物側から中心線に沿って見た図であり、(a)は、シューが外周面研削用の位置にある状態を示し、(b)は、シューが内周面研削用の位置にある状態を示している。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る研削装置1を示すものである。この研削装置1は、シュータイプセンタレス研削装置であり、環状工作物Wの外周面及び内周面を連続的に研削加工するように構成されている。
上記研削装置1は、主軸2と、主軸2を支持する主軸台3と、主軸2を回転駆動する駆動装置4とを備えている。
上記主軸2は、回転中心線Xが水平に延びるように配置された状態で、主軸台3に対して軸受(図示せず)を介して支持されている。駆動装置4は、モーター及び減速機(共に図示せず)を備えており、主軸2を、図2における反時計回りである正転方向(図2(a)に矢印Aで示す方向)と、時計回りである逆転方向(図2(b)に矢印Bで示す方向)とに切替駆動するように構成されている。
図1に示すように、上記主軸2の先端部には、電磁チャック5が装着されている。電磁チャック5は、工作物Wの中心線方向一端面を吸着して支持するように構成されており、電磁コイル(図示せず)と、電磁コイルを収容する管状の本体部5aと、本体部5aの端面に配設されたバッキングプレート5bとを備えている。電磁コイルは、図示しないが、配線を介して電源装置に接続され、この電源装置から電磁コイルに電流が供給されるようになっている。
上記バッキングプレート5bは、磁性金属材料を円環状に形成してなるものであり、本体部5aに固定されている。バッキングプレート5bの先端面は、工作物Wを吸着する吸着面5cとされている。この吸着面5cは、主軸2の回転中心線Xに対し直交して延びる面で構成されている。電磁コイルに電流が供給されると、バッキングプレート5bが磁化され、工作物Wの一端面が吸着面5cに吸着される。電磁コイルの磁力の大きさは、バッキングプレート5bの吸着面5cに吸着された工作物Wがバッキングプレート5bの径方向に摺動可能となるように、かつ、主軸2の回転力は工作物Wに伝達されるように、設定されている。
図2に示すように、研削装置1は、工作物Wの外周面に接触し、この外周面を研削する外周面砥石車11と、工作物Wの内周面に接触し、この内周面を研削する内周面砥石車12とを備えている。
また、研削装置1は、工作物Wの外周面を図1の手前側(以下、説明のために図1の手前側を前側、奥側を後側とする)の下方から支持するフロントシュー7を備えている。また、研削装置1は、図2(a)に示すように、外周面砥石車11による加工時に工作物Wの外周面を外周面砥石車11の反対側から支持する第1リアシュー8と、外周面砥石車11による加工時には工作物Wの外周面から距離を空け、図2(b)に示すように、内周面砥石車12による加工時には上記第1リアシュー8に対して相対的に移動して工作物Wの外周面を内周面砥石車12の反対側(すなわち、その真後ろ側)から支持する第2リアシュー9とを備えている。フロントシュー7、第1リアシュー8及び第2リアシュー9の摺動面7a,8a,9aは、工作物Wの外周面に沿うように形成されている。
これらフロントシュー7、第1リアシュー8及び第2リアシュー9は、シュー可動機構10に設けられている。このシュー可動機構10は、シュー保持部材15と、ベース部材16とを備えている。ベース部材16は、主軸台3に対して固定されている。シュー保持部材15は、ベース部材16の後側かつ下側に設けた回動軸17を中心に回動可能に支持されると共に、複数のクランプ機構18によってベース部材16に対しクランプされるようになっている。
フロントシュー7の基端部は、主軸2の回転中心線X方向に延びるピン19によってシュー保持部材15前側に取り付けられており、工作物Wの外周面に沿うようにシュー保持部材15に対して位置合わせ可能な程度に回動できるようになっている。
一方、第1リアシュー8の基端部は、主軸2の回転中心線X方向に延びるピン20によってシュー保持部材15後側の上下中間部に取り付けられている。第1リアシュー8は、工作物Wの外周面に沿うように、ピン20の周りに回動するようになっている。ここで、第1リアシュー8の摺動面8aは、外周面砥石車11と同じ高さにあるのではなく、それよりも低い位置などずれた位置にあることが重要となっている。工作物Wの外周面に突起などがあったときに、増大作用を避けるためである。なお、第1リアシュー8をシュー保持部材15の中に収容されるように移動可能としてもよい。
さらに、第2リアシュー9の基端部は、シュー保持部材15の回動動作とは独立し、第1リアシュー8よりも後側かつ上側において、ベース部材16に対して固定されている。なお、第2リアシュー9の摺動面9a側は、図示しないピンを中心に工作物Wの外周面に対して位置決め可能な程度に回動可能となっていてもよい。第2リアシュー9の位置は、内周面砥石車12の真後ろ側に配置されることが重要となっている。第2リアシュー9が外周面砥石車11による加工時に確実に工作物Wの外周面に当接するように、第2リアシュー9の基端側に油圧シリンダ、エアシリンダ、電動シリンダ等を設け、摺動面9aの位置を変位可能に構成してもよい。
そして、ベース部材16前側には、シュー保持部材15から前方に延びる被押圧部15bを押圧してシュー保持部材15を回動軸17周りに回動させるための回動アクチュエータ23が配設されている。この回動アクチュエータ23は、例えば油圧シリンダ、空圧シリンダ、電動シリンダ等で構成されており、そのシリンダ部分がベース部材16に固定され、ロッド先端部がシュー保持部材15の被押圧部15bに当接するように配置されている。この回動アクチュエータ23の伸縮動作によって、シュー保持部材15が回動するようになっている。
上記ベース部材16の前側には、上下方向に離れて配置された2つの回動位置設定部24が設けられている。これら回動位置設定部24は、シュー保持部材15を回動させたときの停止位置を設定するストッパとなる。すなわち、シュー保持部材15の前端には、左側へ突出するように突出部15aが設けられている。この突出部15aが、下側の回動位置設定部24に当接するまで、シュー保持部材15を回動させると、このとき、図2(a)に示すように、工作物Wの中心線Yは、主軸2の回転中心線Xよりも下方かつフロントシュー7に近い側に偏心する。このため、ベース部材16に固定された第2リアシュー9は、工作物Wの外表面には接触しない。フロントシュー7及び第1リアシュー8の位置は、工作物Wの外周面を研削する外周面研削用の位置となる。
一方、図2(b)に示すように、シュー保持部材15の突出部15aが上側の回動位置設定部24に当接するまで、シュー保持部材15を回動させると、フロントシュー7及び第2リアシュー9の位置が、工作物Wの内周面を研削する内周面研削用の位置となる。
このように、回動アクチュエータ23と回動位置設定部24とを隣接した位置に設けることで、離れていた場合にシュー保持部材15に生じ得る曲げモーメントをできるだけ小さくすることができ、シュー保持部材15の変形を防いで精度よく研削を行うことができる。ここで、「隣接した位置」とは、回動位置設定部24と被押圧部15bとで押し合ったときに、シュー保持部材15に大きな曲げモーメントが生じない程度に離れていてもよいことを意味する。
なお、回動位置設定部24によって設定されるフロントシュー7、第1リアシュー8及び第2リアシュー9の位置は、工作物Wの大きさや研削代等によって調整可能としてもよい。
このように、研削装置1を駆動させるときに、図2(a)に示すように、外周面研削用の位置では、工作物Wの中心線Yが主軸2の回転中心線Xよりも下方で、かつ、フロントシュー7に近い側に偏心(オフセット)する。また、図2(b)に示すように、内周面研削用の位置では、工作物Wの中心線Yが主軸2の回転中心線Xよりも上方でかつ第2リアシュー9に近い側にオフセットする。つまり、シュー保持部材15を回動させるだけで、フロントシュー7及び第1リアシュー8が主軸2の径方向に移動して、主軸2の回転中心線Xに対する工作物Wの中心線Yの偏心方向が切り替わるようになっている。一方、第2リアシュー9については、シュー保持部材15の回動動作に関わらず、ベース部材16に対して所定の位置にあることから、第1リアシュー8に対しては相対的に移動してシュー保持部材15の回動に伴って工作物Wの外周面に当接したり当接しなかったりする。
上記クランプ機構18は、シュー保持部材15をベース部材16に押し付けることによって生じる両者間の摩擦力を利用してシュー保持部材15をベース部材16に動かないように固定する周知の構造のものである。このクランプ機構18としては、例えば、シュー保持部材15をベース部材16に押し付ける方向に付勢する皿バネと、皿バネの付勢力をシュー保持部材15に作用させないようにする油圧シリンダとを備えた油圧式クランプを用いることができる。
上記外周面砥石車11は、その回転中心線が主軸2の回転中心線Xと平行に、かつ同じ高さ位置で工作物Wの外側に位置するように配置されている。外周面砥石車11は、図示しない駆動装置により、図2の矢印C方向(主軸2の正転方向Aとは逆方向)に回転駆動されるようになっている。また、内周面砥石車12は、その回転中心線が主軸2の回転中心線Xと平行に、かつ同じ高さ位置で工作物Wの内側に位置するように配置されている。内周面砥石車12は、図示しない駆動装置により、外周面砥石車11と同方向(図2(b)に矢印Dで示す方向)に回転駆動されるようになっている。また、上記外周面砥石車11及び内周面砥石車12は、図示しない可動機構に支持されており、工作物Wに対して接離する方向に移動するようになっている。
次に、上記のように構成された研削装置1を用いて工作物Wを研削する方法について説明する。
まず、工作物Wの外周面を研削する場合について説明すると、クランプ機構18をアンクランプ状態にしてシュー保持部材15をフリーにした後、回動アクチュエータ23を作動させてシュー保持部材15を回動軸17周りに回動させ、図2(a)に示すように、フロントシュー7、第1リアシュー8及び第2リアシュー9を外周面研削用の位置にする。そして、クランプ機構18をクランプ状態にしてシュー保持部材15をベース部材16に固定する。このとき、第2リアシュー9は、工作物Wの外周面からは、離れており、接触しない。
この状態で工作物Wをフロントシュー7及び第1リアシュー8に支持し、電磁チャック5の吸着面5cに吸着させる。そして、主軸2を矢印Aの方向に回転させることで、工作物Wは、フロントシュー7及び第1リアシュー8の摺動面7a,8aを摺動しながら同方向に回転する。このとき、工作物Wの中心線Yと主軸2の回転中心線Xとは上記の如く偏心しているが、工作物Wは電磁チャック5の吸着面5cに吸着されているだけなので、吸着面5cに対し径方向に滑るように動き、フロントシュー7及び第1リアシュー8から離れることはない。
そして、外周面砥石車11を駆動装置によって矢印C方向に回転させながら、可動機構によって移動させて工作物Wの外周面に接触させる。これにより、工作物Wの外周面が全周に亘ってダウン研削される。このとき、工作物Wの中心線Yが主軸2の回転中心線Xよりも下方で、かつ、第1リアシュー8に近い側に偏心しているので、工作物Wには、フロントシュー7及び第1リアシュー8への押し付け力が作用する。これにより、工作物Wを安定して研削することが可能である。
一方、工作物Wの内周面を研削する場合について説明すると、工作物Wをフロントシュー7及び第1リアシュー8に保持したまま、クランプ機構18をアンクランプ状態にした後、回動アクチュエータ23を作動させてシュー保持部材15を回動軸17周りに回動させ、図2(b)に示すように、フロントシュー7、第1リアシュー8及び第2リアシュー9を内周面研削用の位置にする。そして、クランプ機構18をクランプ状態にしてシュー保持部材15をベース部材16に固定する。シュー保持部材15を回動させることで、ベース部材16に固定されている第2リアシュー9の摺動面9aが飛び出してきて工作物Wの外周面に当接し、第1リアシュー8の摺動面8aと工作物Wの外周面との間には隙間ができる。
この状態でフロントシュー7及び第2リアシュー9に支持された工作物Wは、電磁チャック5の吸着面5cに吸着され、主軸2を矢印Bの方向に回転させることで工作物Wが回転する。そして、内周面砥石車12を駆動装置によって回転させながら、可動機構によって移動させて工作物Wの内周面に接触させる。これにより、工作物Wの内周面が全周に亘ってダウン研削される。このとき、工作物Wの中心線Yが主軸2の回転中心線Xよりも上方で、かつ、フロントシュー7に近い側に偏心しているので、工作物Wには、フロントシュー7及び第2リアシュー9への押し付け力が作用する。これにより、工作物Wを安定して研削することが可能である。
つまり、上記シュー可動機構10は、フロントシュー7、第1リアシュー8及び第2リアシュー9の位置を、工作物Wの外周面の研削時に工作物Wにフロントシュー7及び第1リアシュー8への押し付け力を作用させるように工作物Wの中心線Yを主軸2の回転中心線Xから偏心させる位置と、工作物Wの内周面の研削時に工作物Wにフロントシュー7及び第2リアシュー9への押し付け力を作用させるように工作物Wの中心線Yを主軸2の回転中心線Xから偏心させる位置とに切り替えるように構成されている。
以上説明したように、この実施形態に係る研削装置1によれば、主軸台3を動かさずにフロントシュー7及び第2リアシュー9を動かすようにしているので、主軸2に装着されている電磁チャック5の吸着面5cが位置ずれすることはなく、工作物Wの加工精度を向上できる。また、シュー保持部材15を回動軸17周りに回動させるだけで、フロントシュー7及び第1リアシュー8を主軸2に対して変位させ、第2リアシュー9は相対位置を変えることで、工作物Wの偏心方向を容易に切り替えることができるので、フロントシュー7、第1リアシュー8及び第2リアシュー9のいずれかを専用で移動させるアクチュエータを設ける必要がなく、構造及び制御が簡単となる。
本実施形態では、外周面砥石車11による加工時には、フロントシュー7によって工作物Wの外周面を前側において支持すると共に、第1リアシュー8によって工作物Wの外周面を外周面砥石車11の反対側から支持するが、第2リアシュー9は、工作物の外周面に当接しないようにした。このとき、外周面砥石車11の真後ろ側ではなく、少しずらした位置で第1リアシュー8によって工作物Wを支持することで、工作物Wの外周面に突起があるときの突起の増大を防ぐことができる。
また、内周面砥石車12による加工時には、フロントシュー7によって工作物Wの外周面を前側において支持すると共に、第2リアシュー9が第1リアシュー8に対して相対的に移動して工作物Wの外周面を内周面砥石車12の真後ろ側から支持した。このため、工作物の内周面を精度よく加工することができる。
したがって、工作物Wの外周面を研削するときと内周面を研削するときとで第1リアシュー8と第2リアシュー9とを使い分けることにより、それぞれ最適な位置で工作物Wを支持することができる。
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
すなわち、上記実施形態では、主軸2は水平としているが、垂直な構成としてもよい。その場合には、前側かつ下側と表現したフロントシュー7に位置は、左右どちらに配置されてもよい。
また、確実な工作物Wの保持のために、第1リアシュー8及び第2リアシュー9のいずれかを専用で移動させるアクチュエータを設けてもよい。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
1 研削装置
2 主軸
3 主軸台
4 駆動装置
5 電磁チャック
5a 本体部
5b バッキングプレート
5c 吸着面
7 フロントシュー
7a,8a,9a 摺動面
8 第1リアシュー
9 第2リアシュー
10 シュー可動機構
11 外周面砥石車
12 内周面砥石車
15 シュー保持部材
15a 突出部
15b 被押圧部
16 ベース部材
17 回動軸
18 クランプ機構
19 ピン
20 ピン
23 回動アクチュエータ
24 回動位置設定部

Claims (4)

  1. 環状の工作物の外周面及び内周面を研削する研削装置において、
    主軸と、
    上記主軸を正転及び逆転方向に切り替え駆動する主軸駆動部と、
    上記主軸に装着され、上記工作物の中心線が該主軸と平行になるように中心線方向一端面を吸着する吸着面を有するチャックと、
    前側において上記工作物の外周面に接触し、該外周面を研削する外周面砥石車と、
    上記工作物の内周面に接触し、該内周面を研削する内周面砥石車と、
    上記工作物の外周面を前側において支持するフロントシューと、
    上記内周面砥石車による加工時には上記工作物の外周面から距離を空け、上記外周面砥石車による加工時に上記工作物の外周面を上記外周面砥石車の反対側から支持する第1リアシューと、
    上記外周面砥石車による加工時には上記工作物の外周面から距離を空け、上記内周面砥石車による加工時には上記第1リアシューに対して相対的に移動して上記工作物の外周面を上記内周面砥石車の反対側から支持する第2リアシューとを備えており、
    上記第2リアシューは、上記主軸を支持する主軸台に固定されたベース部材に設けられており、
    上記第1リアシューは、上記ベース部材に設けた回動軸を中心に回動可能に支持されるシュー保持部材に取り付けられている
    ことを特徴とする研削装置。
  2. 請求項1に記載の研削装置において、
    上記フロントシュー及び上記第1リアシューが取り付けられるとともに、該フロントシュー及び第1リアシューを上記主軸に対して変位させるシュー可動機構とを備え、
    上記シュー可動機構は、上記フロントシュー及び上記第1リアシューの位置を、
    上記工作物の外周面の研削時に該工作物に上記フロントシュー及び上記第1リアシューへの押し付け力を作用させるように該工作物の中心線を上記主軸の回転中心線に対し偏心させる第1の位置と、
    上記工作物の内周面の研削時に該工作物に上記フロントシュー及び上記第2リアシューへの押し付け力を作用させるように該工作物の中心線を上記主軸の回転中心線に対し偏心させる第2の位置とに切り替えるように構成されている
    ことを特徴とする研削装置。
  3. 環状の工作物の外周面及び内周面を研削する研削装置において、
    主軸と、
    上記主軸を正転及び逆転方向に切り替え駆動する主軸駆動部と、
    上記主軸に装着され、上記工作物の中心線が該主軸と平行になるように中心線方向一端面を吸着する吸着面を有するチャックと、
    前側において上記工作物の外周面に接触し、該外周面を研削する外周面砥石車と、
    上記工作物の内周面に接触し、該内周面を研削する内周面砥石車と、
    上記工作物の外周面を前側において支持するフロントシューと、
    上記内周面砥石車による加工時には上記工作物の外周面から距離を空け、上記外周面砥石車による加工時に上記工作物の外周面を上記外周面砥石車の反対側から支持する第1リアシューと、
    上記外周面砥石車による加工時には上記工作物の外周面から距離を空け、上記内周面砥石車による加工時には上記第1リアシューに対して相対的に移動して上記工作物の外周面を上記内周面砥石車の反対側から支持する第2リアシューとを備え、
    上記フロントシュー及び上記第1リアシューが取り付けられるとともに、該フロントシュー及び第1リアシューを上記主軸に対して変位させるシュー可動機構とを備え、
    上記シュー可動機構は、上記フロントシュー及び上記第1リアシューの位置を、
    上記工作物の外周面の研削時に該工作物に上記フロントシュー及び上記第1リアシューへの押し付け力を作用させるように該工作物の中心線を上記主軸の回転中心線に対し偏心させる第1の位置と、
    上記工作物の内周面の研削時に該工作物に上記フロントシュー及び上記第2リアシューへの押し付け力を作用させるように該工作物の中心線を上記主軸の回転中心線に対し偏心させる第2の位置とに切り替えるように構成されており、
    上記シュー可動機構は、
    上記主軸を支持する主軸台に固定され、上記第2リアシューが設けられたベース部材と、
    上記フロントシュー及び第1リアシューが設けられると共に、上記ベース部材に設けた回動軸を中心に回動可能に支持されるシュー保持部材と、
    上記ベース部材に設けられ、上記シュー保持部材を押圧して回動させる回動アクチュエータと、
    上記ベース部材に設けられ、上記回動アクチュエータに押圧された上記シュー保持部材の回動範囲を規制する回動位置設定部とを備えている
    ことを特徴とする研削装置。
  4. 請求項3に記載の研削装置において、
    上記回動アクチュエータと上記回動位置設定部とは、上記回動軸に対して隣接した位置に設けられている
    ことを特徴とする研削装置。
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