JP6610767B2 - 電解エッチング用装置および金属化合物粒子の抽出方法 - Google Patents

電解エッチング用装置および金属化合物粒子の抽出方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6610767B2
JP6610767B2 JP2018500235A JP2018500235A JP6610767B2 JP 6610767 B2 JP6610767 B2 JP 6610767B2 JP 2018500235 A JP2018500235 A JP 2018500235A JP 2018500235 A JP2018500235 A JP 2018500235A JP 6610767 B2 JP6610767 B2 JP 6610767B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
metal
electrolytic
cathode
metal compound
electrolytic etching
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018500235A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2017142084A1 (ja
Inventor
和実 水上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Publication of JPWO2017142084A1 publication Critical patent/JPWO2017142084A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6610767B2 publication Critical patent/JP6610767B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C25ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES; APPARATUS THEREFOR
    • C25FPROCESSES FOR THE ELECTROLYTIC REMOVAL OF MATERIALS FROM OBJECTS; APPARATUS THEREFOR
    • C25F3/00Electrolytic etching or polishing
    • C25F3/02Etching
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C25ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES; APPARATUS THEREFOR
    • C25FPROCESSES FOR THE ELECTROLYTIC REMOVAL OF MATERIALS FROM OBJECTS; APPARATUS THEREFOR
    • C25F3/00Electrolytic etching or polishing
    • C25F3/02Etching
    • C25F3/06Etching of iron or steel
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C25ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES; APPARATUS THEREFOR
    • C25FPROCESSES FOR THE ELECTROLYTIC REMOVAL OF MATERIALS FROM OBJECTS; APPARATUS THEREFOR
    • C25F7/00Constructional parts, or assemblies thereof, of cells for electrolytic removal of material from objects; Servicing or operating
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N1/00Sampling; Preparing specimens for investigation
    • G01N1/28Preparing specimens for investigation including physical details of (bio-)chemical methods covered elsewhere, e.g. G01N33/50, C12Q
    • G01N1/32Polishing; Etching
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N1/00Sampling; Preparing specimens for investigation
    • G01N1/28Preparing specimens for investigation including physical details of (bio-)chemical methods covered elsewhere, e.g. G01N33/50, C12Q
    • G01N1/40Concentrating samples
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/20Metals
    • G01N33/202Constituents thereof
    • G01N33/2028Metallic constituents
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N1/00Sampling; Preparing specimens for investigation
    • G01N1/28Preparing specimens for investigation including physical details of (bio-)chemical methods covered elsewhere, e.g. G01N33/50, C12Q
    • G01N1/40Concentrating samples
    • G01N2001/4038Concentrating samples electric methods, e.g. electromigration, electrophoresis, ionisation
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P10/00Technologies related to metal processing
    • Y02P10/20Recycling

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Electrochemistry (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • Investigating And Analyzing Materials By Characteristic Methods (AREA)
  • Sampling And Sample Adjustment (AREA)
  • Electrolytic Production Of Metals (AREA)

Description

本願発明は、金属材料中の金属化合物粒子を分離抽出する電解エッチング用装置であって、特定の金属からなる部材を陰極の少なくとも一部に備える、電解エッチング用装置に関係する。
金属材料、特に、鉄鋼材料は、微量添加元素や様々な熱処理によって、材料マトリックス中に存在する介在物や析出相の種類、アスペクト比などの形状、寸法等を制御して、鉄鋼材料に求められる強度や特性をコントロールすることが広く実施されている。
従って、介在物及び/又は析出相の観察や、その成分、分量を測定することは鉄鋼材料の品質管理や製造プロセスの解析を行う上で、重要な意味を持つ。
介在物や析出相の観察をSEM等で行うためには、マトリックス中に埋没した状態の介在物や析出相を観察表面に露出させる必要があり、従来から、各種電解質溶液中で電解することで、介在物や析出相を試料表面に露出させて、観察可能な状態としている。
近年、鉄鋼材料の製造技術の進歩により、介在物や析出相の種類が多様化すると共に、微細分散化も進んでおり、観察に際しては、マトリックス(Fe)のみを選択的に溶解すると共に、介在物や析出相に関しては、それらが微細粒であっても、確実に観察表面に保持して、溶解しないような電解液が求められる。
また、これらの介在物や析出相を同定・定量分析する場合には、同様に、電解質溶液中で鉄鋼試料のマトリックスを溶解させ、介在物や析出相を電解残渣として回収し、これを同定・定量分析することが行われている。
この定量分析の場合には、鉄鋼材料のマトリックス部分のみを効率良く電解すると共に、Fe分を確実に電解液中に溶解して保持すると共に、その他の介在物や析出相に相当する部分を電解残渣として確実に回収できることが要求される。
特許文献1には、鉄鋼試料のための電解液組成物と、それを用いた介在物や、析出物の分析方法が記載されている。
この電解液組成物は、従来の電解液が酸性のものが多かったのに対して、アルカリ性のトリエタノールアミンが添加されていることにより、微細な介在物や析出相であっても、溶解され難くなり、これらの介在物や析出物の粒子が鋼材試料表面に残留し易く、鉄鋼試料を電解液から取り出し乾燥後、そのままの状態でSEM等による観察や分析を可能としている。
また、特許文献2には、鉄鋼試料中の介在物や析出物の抽出用非水溶媒系電解液と、それを用いた鉄鋼試料の電解抽出方法に関する発明が開示されている。
この電解液は、無水マレイン酸と、塩化テトラメチルアンモニウムと、メタノールを所定の割合で含むものであり、一度に大量の鉄鋼試料を電解する能力に優れた電解液であり、液中に含まれる無水マレイン酸が、鉄錯体を生成し、Fe水酸化物等の錯体沈殿生成を阻止する特徴を有する。
鉄鋼試料における介在物や析出相をSEM等でその場で観察するためには、試料を電解して、マトリックスを構成するFe成分を、Feイオンキレート剤で電解液中に保持し、介在物や析出相が試料表面に残留するように電解する。
一方、介在物や析出相の定量分析であれば、マトリックスのFe分をキレート剤によって電解液中に保持し、電解によって試料から離脱した介在物や析出相を溶解しないような電解液を用いて、これらを電解残渣として回収し、該残渣を同定・定量分析する。
したがって、介在物や析出相の同定・定量分析のための残渣回収を目的とする場合、Fe分を電解液中にキレート錯体として溶解状態を維持できることに主眼が置かれており、電解操作中での介在物や析出相に対するコンタミネーションなどについては、特段の配慮がなされていなかった。
特開2002−303620号公報 特開2000−137015号公報
従来の非水溶媒系電解液中での電解腐食等による鋼材中の金属化合物分析の際に、介在物や析出相の微粒子、特に、各種金属化合物、中でもMnSの表層には、電解操作以外の手段で測定した含有量よりも高濃度のCuSが観察されるという原因不明の現象が観察されることがあった。このため、MnS粒子をあたかもCuS(Artifact CuS)として検知することがあった。
本願発明者らは、その原因について、詳細に検討した結果、電解操作によって、電解液中に溶解度積Kspの小さい金属イオン(Cu2+)が生成すると、金属硫化物(MnS)の表面で、溶解度積Kspの大きい金属イオン(Mn2+)が、溶解度積Kspの小さい金属イオン(Cu2+)に置換(exchange)されることを発見した。また、このような硫化物表面での金属イオンの置換は、常温常圧で、しかも水溶液や非水溶媒中でも容易に進行することを突き止めた。
その結果、鉄鋼試料中に、本来MnSとして存在していた介在物や析出相は、表面を観察する限り、CuSとして観察されることになり、また、MnSの表面に、電解液中のCuイオンに起因するCuSが、厚さ数十nm程度(1〜100nm)MnSと交換される
ことで、残渣から質量分析を行っても、微細粒子の場合には、体積の相当部分をCuSが占めることとなるので、正確な定量が不可能となっていた。
上記では、CuによるMnS表面へのアタック(MnS表面のMn原子とCu原子の置換現象)の事例で説明したが、Cu以外の金属においても同様な現象が発現することが推定できる。即ち、金属化合物表面での金属イオンの置換は、溶解度積Kspに相当の大小差(10ケタ(1010)程度以上の大小差)があるときに、容易に進行することが推定できる。(以下、本明細書において、この現象を「Artifact」と呼ぶ)。より詳しくは、溶解度積Kspの異なる2つの化合物のpKspの差(以下Δと称する場合がある)が約10以上であるとき、pKspの大きい(溶解度積Kspの小さい)化合物とpKspの小さい(溶解度積の大きい)化合物との置換が、容易に進行することが推定できる。
上記の条件は、以下の式で表すことができる。
Δ=pKsp[化合物(Kspの小さいもの)]−pKsp[化合物(Kspの大きいもの)]
=(−log10sp[化合物(Kspの小さいもの)])−(−log10sp[化合物(Kspの大きいもの)])
≧10
ここで、或る化合物の溶解度積KspはKsp[化合物]と表し、pKsp[化合物]=−log10sp[化合物]と表す。
実際に、本発明者がMnSにAgを作用させる模擬実験を行ったところ、Agは、MnSにアタックして、Mnをイオン化して電解液中に追い出すと共に、自身は、MnS表面にAgSとして残留することが、確認された。ここで、AgSとMnSの溶解度積(またはpKsp)を比較すると、AgSの溶解度積Kspが小さく(pKspが大きく)、MnSの溶解度積Kspが大きい(pKspが小さい)。AgSとMnSとの溶解度積Kspの差は37桁であり、pKspの差Δは36.6である。式で表すと、以下である。
Δ=pKsp[AgS]−pKsp[MnS]
=50.1−13.5
=36.6≧10
また、電解操作によって、一部のイオンは陰極上で析出することがあるが、析出金属と陰極構成材料の親和性が高くないと、析出金属は容易に剥離して、再度電解液中に金属として沈殿したり、金属イオン供給源となったりして、結果として介在物や析出相および電解残渣のコンタミネーション源になり得ることを、本願発明者が見出した。
そこで、本願発明が解決しようとする課題は以下である。
・溶媒系電解液での電解腐食法等による金属材料中の金属微粒子(介在物、析出物)の抽出や分析において、従来の抽出・分析方法を大きく変更することなく、Cuイオン等による金属微粒子の表面置換を抑制し、Artifact(擬制)CuS等の生成を防止することを課題とする。
・特に金属硫化物(MnS、FeS等)に着目し、Artifact(擬制)CuS等の生成を防止することを課題とする。
・陰極上に析出したCu等の金属が容易に剥離・沈殿して、介在物や析出相および電解残渣のコンタミネーション源とならないように、陰極上に積極的に付着させることを課題とする。
本願発明者らは、上記課題を解決するための手法について、鋭意検討した。
その結果、溶媒系電解液中に、Artifact(擬制)金属硫化物を形成する金属(アタック金属)を存在させなければ、置換現象は発現しないという知見から、そのようなアタック金属を補足することに想い至った。すなわち、電解装置の陰極の少なくとも一部に、補足したい金属元素からなる部材を設置し、当該金属を陰極上に電解析出し易くし、析出したアタック金属を陰極上に保持することにより、電解液中の自由なアタック金属が減少し、Artifact(擬制)金属硫化物が生成されないことに想到した。
電解によって、鉄鋼試料等からマトリックス(Fe)イオンが溶け出すと、Feイオンはキレート剤により電解液中に保持される。一方、電解によって、マトリックス(Fe)以外の金属イオン、例えばCuイオンが溶け出す場合があり、そのようなイオン(例えばCuイオン)は陰極へ移動して析出するが、析出後に捕捉サイトがないため陰極から剥離しやすく、電解液中にメタルCuとして沈殿したり、金属イオン(Cuイオン等)供給源となり得る。すなわち、介在物や析出相および電解残渣のコンタミネーション源になり得る。このような金属イオン(Cuイオン等)を析出金属として付着させる捕捉サイト(析出サイト)を積極的に設置することにより、それらの金属イオン(Cuイオン等)が陰極で電解析出後に剥離・沈殿することなく、電解液中への金属イオン(Cuイオン等)供給源を減じることができることが判明した。そのため、例えば、Cuイオンに表面観察用鉄鋼試料表面のMnSを攻撃させないこと、或いは、介在物や析出相の同定・定量分析のための電解操作においても、同様に、介在物や析出相から作成された定量分析用残渣中に、メタルCuやCuSが混入しないようにすることで、表面観察用の鉄鋼試料中の介在物や析出相を本来の姿のままで観察可能とすることができ、また、解析対象である電解残渣中に、試料のマトリックス等から溶け出したCuイオンに由来するメタルCuおよびCuS等を含まず、本来、鉄鋼試料が含有していた介在物や析出相に起因する元素のみを、正しく同定・定量できることが判明した。
本願発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)陽極と陰極を備え、陽極と陰極の間に通電することにより金属材料を電解エッチングし、金属材料中の金属化合物粒子を分離抽出する電解エッチング用装置であって、
金属化合物M’x’y’の溶解度積をKsp[M’x’y’] とし、
前記金属材料中に含まれる抽出対象金属化合物Mの溶解度積をKsp[M] とすると、
下記式で定義されるΔが10以上となる金属M’が含まれる部材を、前記陰極の少なくとも一部に備え、
前記金属M’を含む錯体を形成する薬剤及び非水溶媒を含む電解液を収容する電解槽を備えることを特徴とする、電解エッチング用装置。

Δ=pKsp[M’x’y’]−pKsp[M
=(−log10sp[M’x’y’])−(−log10sp[M])
ここで、MとM’は異なる金属元素であり、AはMまたはM’と化合物を形成する単原子または原子団であり、x、x’、y、y’はM、M’、Aの価数に応じて決まる前記化合物の組成比を表し、前記溶解度積Kspは水溶液中25℃での値である
(2)前記抽出対象金属化合物MがMnSまたはFeSの1種または2種であることを特徴とする、上記(1)に記載の電解エッチング用装置。
(3)前記金属化合物M’x’y’の金属M’が、Hg、Ag、Cu、Pb、Cd、Co、Zn、およびNiの少なくとも一つであることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の電解エッチング用装置。
(4)前記陰極に備えられる部材が、陰極の表面を覆うように備えられていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の電解エッチング用装置。
(5)前記陰極が、前記金属M’でできていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の電解エッチング用装置。
(6)前記陰極に備えられる部材が、質量%で99.9%以上のCuおよび不可避的不純物からなることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の電解エッチング用装置。
(7)前記非水溶媒が、メタノールまたはエタノールの少なくとも一つを含んでなることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の電解エッチング装置。

(8)前記金属M’を含む錯体を形成する薬剤が、ポリエチレンアミン類、エチレンジアミン4酢酸、シクロヘキサンジアミン4酢酸の少なくとも一つを含んでなることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の電解エッチング装置。

(9)前記薬剤がトリエチレンテトラミンを含んでなることを特徴とする、(8)に記載の電解エッチング装置。

(10)電解液の撹拌手段をさらに備える(1)〜(9)のいずれかに記載の電解エッチング装置。

(11)前記陽極表面に気泡を照射する気泡発生器を、さらに備える(10)に記載の電解エッチング装置。
(12)陽極と陰極を備え、陽極と陰極の間に通電することにより金属材料を電解エッチングし、金属材料中の金属化合物粒子を抽出する方法において、
金属化合物M’x’y’の溶解度積をKsp[M’x’y’] とし、
前記金属材料中に含まれる抽出対象金属化合物Mの溶解度積をKsp[M] とすると、
下記式で定義されるΔが10以上となる金属M’が含まれる部材を、前記陰極の表面の少なくとも一部に備え、
前記金属M’を含む錯体を形成する薬剤及び非水溶媒を含む電解液を用いることを特徴とする、金属化合物粒子の抽出方法。

Δ=pKsp[M’x’y’]−pKsp[M
=(−log10sp[M’x’y’])−(−log10sp[M])
ここでMとM’は異なる金属元素であり、AはMまたはM’と化合物を形成する単原子または原子団であり、x、x’、y、y’はM、M’、Aの価数に応じて決まる前記化合物の組成比を表し、前記溶解度積Kspは水溶液中25℃での値である

(13)前記電解エッチングを行う際に、電解液を撹拌しながら電解エッチングすることを特徴とする(12)に記載の金属化合物粒子の抽出方法。

(14)電解液をマグネチックスターラーで撹拌することを特徴とする(13)に記載の金属化合物粒子の抽出方法。

(15)電解液中に気泡をバブリングすることを特徴とする(13)に記載の金属化合物粒子の抽出方法。
・本願発明によれば、抽出した金属微粒子の表面分析により、実態はMnSやFeSである微粒子をCuSと誤認することがなくなり、金属硫化物の真の姿(サイズ、成分)を知ることができ、さらには鉄鋼材料中の金属硫化物の含有量も正確に把握することができる。
・本願発明によれば、電解操作によって鋼板試料表面に露出させた介在物或いは析出相等を鉄鋼試料中に本来存在していた成分及び形態で観察することが可能となる他、電解残渣の分析から介在物や析出相成分を定量分析する場合に、電解液から混入するCu等の影響を受けずに、正しく定量分析することができるので、鉄鋼試料の組織観察や、鉄鋼試料中の介在物或いは析出相の同定・定量分析の精度向上におおいに寄与するものである。
本願発明に係る電解エッチング用装置の見取り図の一例を示すものである。 鉄鋼試料の電解残渣の分析結果を示すグラフである。 鏡面研磨した鉄鋼試料の介在物近傍のSEM写真と元素濃度を示すグラフである。
本願発明により、陽極と陰極を備え、陽極と陰極の間に通電することにより金属材料を電解エッチングし、金属材料中の金属化合物粒子を分離抽出する電解エッチング用装置であって、
金属化合物M’x’y’の溶解度積をKsp[M’x’y’] とし、
前記金属材料中に含まれる抽出対象金属化合物Mの溶解度積をKsp[M] とすると、
下記式で定義されるΔが10以上となる金属M’が含まれる部材を、前記陰極の少なくとも一部に備え、
前記金属M’を含む錯体を形成する薬剤及び非水溶媒を含む電解液を収容する電解槽を備えることを特徴とする、電解エッチング用装置が提供される。

Δ=pKsp[M’x’y’]−pKsp[M
=(−log10sp[M’x’y’])−(−log10sp[M])
ここで、MとM’は異なる金属元素であり、AはMまたはM’と化合物を形成する単原子または原子団であり、x、x’、y、y’はM、M’、Aの価数に応じて決まる前記化合物の組成比を表し、前記溶解度積Kspは水溶液中25℃での値である
本発明の電解エッチング用装置では、金属材料中の金属化合物粒子の抽出を行う。すなわち、金属材料を電解質溶液中でエッチングすることで、マトリックス(Fe等)を選択的に溶解し、金属材料に含まれる介在物や析出相等の金属化合物粒子を試料表面に露出させる。これにより、金属化合物粒子を観察可能な状態にできる。
金属試料中の微粒子の抽出方法としては、例えば、酸溶液中で鉄鋼試料の鉄マトリックスを溶解する酸分解法、ヨウ素メタノール混合溶液あるいは臭素メタノール混合溶液中で鉄鋼試料の鉄マトリックスを溶解するハロゲン溶解法、非水溶媒系定電流電解法、又は、非水溶媒系定電位電解(SPEED:Selective Potentiostatic Etching by Electrolytic Dissolution Method)法等を用いることができる。これらの内、非水溶媒を用いるSPEED法は、溶媒中に微粒子が分散された際に、組成やサイズの変化が起こり難く、不安定な微粒子でも安定的に抽出できるため好適である。本実施形態に関して、図1を参照しながら、一般的な電解抽出法である非水溶媒系定電位電解法(SPEED法)による鉄鋼材料中の微粒子の評価方法を例に取り、説明を行うが、本発明における抽出の方法はSPEED法に限定されるものではない。
初めに、金属試料4を、例えば、20mm×40mm×2mmの大きさに加工して、表層のスケール等の酸化皮膜等を化学的研磨又は機械的研磨等により除去し、金属層を出しておく。逆に、酸化皮膜層に含まれる微粒子を解析する場合は、そのままの形態で残しておく。
次に、この金属試料を、SPEED法を用いて電解する例を用いて説明を続ける。具体的には、電解槽10に電解溶液9を満たし、その中に金属試料4を浸漬させて、参照電極7を金属試料4に接触させる。白金電極6と金属試料4を電解装置8に接続する。金属試料4と白金電極6の間に通電することにより、白金電極6が陰極として作動することができる。一般的に上記電解法を用いると、金属試料4のマトリックスとなる金属部分の電解電位に比べて、析出物等の鋼中微粒子の電解電位は、高い電解電位を持つ。そこで、電解装置8を用いて金属試料4のマトリックスを溶解し、かつ析出物等の微粒子を溶解しない電解電位の間に、電圧を設定することにより、マトリックスのみを選択的に溶解することが可能となる。表面マトリックス部分のFeが電解溶出された試料表面には、介在物或いは析出相5が浮き出し、SEM等による観察に適した状態となる。さらに、電解を続けて、介在物や析出相を試料表面から離脱させて、電解残渣11として回収し、電解液から濾過分離して、同定・定量分析に供することもできる。
本願発明に係る金属材料用の電解液、即ち、介在物や析出相を観察するために表面のFeマトリックスを電解したり、介在物や析出相を定量分析するために、Feマトリックスを電解し、残渣を回収するための電解に用いる電解液は、好ましくは、
(1)Feイオンに対する錯体形成剤、
(2)電解液に導電性を担保させる為の電解質、
(3)形成されたFe等の錯体を液中に保持するための溶媒、
を含む。
Feイオンに対する錯体形成剤としては、アセチルアセトン、無水マレイン酸、マレイン酸、トリエタノールアミン、サリチル酸、サリチル酸メチルの中から1種類以上を選択してもよい。
電解質には、テトラメチルアンモニウムクロライド(TMAC)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化リチウム(LiCl)の中から1種類以上を選択することができる。
溶媒は、各種錯体形成剤や、これらとFeの錯体を溶解状態で保持できるものである必要があり、非水溶媒であってもよい。水溶液系電解液では相対的に低い電解電圧(例えば-300mV以下)でも各種の析出物が分解するのに対し、非水溶媒系電解液は安定した電解領域が広く、超合金、高合金、ステンレスから炭素鋼までほとんどすべての鉄鋼材料に適用することができる。非水溶媒系電解液を用いた場合、主として、マトリックスの溶解と、溶解したFeイオンとキレート剤との(錯体化)反応が起こるだけであり、介在物或いは析出相5は溶解することなく、母材上で”in situ”な状態での三次元観察と分析を行う事ができる。非水溶媒としては、電解を円滑に進め、しかも、錯体化可能な有機化合物と支持電解質とを溶解する化合物が適しており、例えば、低級アルコール、例えば、メタノール、エタノール、又はイソプロピルアルコールを用いることができる。メタノール、又はエタノール、あるいはこれらの混合物を選択することができる。
従来の定電位電解法では、電解溶液として、例えば、10質量%アセチルアセトン(以降“AA”と称す)−1質量%テトラメチルアンモニウムクロライド(以降“TMAC”と称す)−メタノール溶液、又は10質量%無水マレイン酸−2質量%TMAC−メタノール溶液が用いられている。これらの電解溶液では、電解溶出されたFeが錯体を生成し、生成したFe錯体が電解液中に溶解する観点で好ましいため、多用されている。
電解液にはマトリックス(Fe)以外の金属が、マトリックス(Fe)に比すれば相対的には僅かであるが、溶出することがある。その溶出金属の溶解度積Kspが小さく(言い換えると、pKsp(=−log10sp)が大きく)、介在物或いは析出相5や電解残渣11が溶解度積Kspの大きい(pKspが小さい)金属の金属化合物を含む場合、その金属化合物の表面で、溶解度積Kspの大きい(pKspが小さい)金属イオン(例えばMn2+)が、溶解度積Kspの小さい(pKspが大きい)金属イオン(例えばCu2+)に置換(exchange)されることを、本発明者が発見した。この置換は、溶解度積Kspの差が10ケタ(1010)程度以上の大小差があるときに、より詳しくは、溶解度積Kspの異なる2つの化合物のpKspの差Δが約10以上であるときに、容易に進行すると考えられる。溶解度積Kspの差が20ケタ(1020)程度以上の大小差があるとき、より詳しくは、pKspの差Δが約20以上であるときには、置換はさらに容易に進行すると考えられる。
表1に、水溶液中 25℃での硫化物の溶解度積Kspと、硫化物間のpKsp(=−log10sp)の差Δを示す。表中で、二重線の枠(または濃いグレーの枠)はpKspの差Δが22以上である硫化物の組み合わせであり、それらの組み合わせでは交換反応が容易にまたは秒単位で進行すると予想される。簡易的に記号で表せば、交換反応の期待度(予測)が◎と表現される。太線の枠(または薄いグレーの枠)はpKspの差Δが10以上22未満である硫化物の組み合わせであり、数分から数時間単位でかかったりすることがあるが、交換反応は進行すると予想される。簡易的に記号で表せば、交換反応の期待度(予測)が○〜△と表現される。細い線の枠(または白い枠)はpKspの差Δが10未満である硫化物の組み合わせであり、それらの組み合わせでは交換反応は進行しにくいと予想される。簡易的に記号で表せば、交換反応の期待度(予測)が△〜×と表現される。
なお、硫化物の溶解度積に関して、同じ元素の硫化物であっても結晶形態等によって、異なる溶解度積を示すものがある。表1では、pKspの差Δが小さくなる結晶形態等を有する硫化物を列記している。これは、pKspの差Δが大きくなる形態であっても、対象となる硫化物とのpKspの差Δが10以上となり、交換反応が進行すると考えられるからである。
上記の溶解度積Kspは水溶液中の値であるが、同じ極性溶媒のメタノール等の非水溶媒中でも同じ傾向があることが推定される。
例えば、鉄鋼試料表面或いは電解液残渣中にMnSが存在している場合、電解液中に溶出したCuイオンの硫化物は、MnSとのpKspの差が22.6であるため、MnSにアタックして、Mnをイオン化して電解液中に追い出すと共に、自身は、MnS表面にCuSとして残留する。つまり、Cu含有鉄鋼試料中に、本来MnSとして存在していた介在物や析出相は、その表面を観察する限り、CuSとして観察されることになる。また、MnSの表面に、電解液中のCuイオンに起因するCuSが、厚さ数十nm程度(1〜100nm)MnSを置換することで、残渣から質量分析を行っても、微細粒子の場合には、体積の相当部分をCuSが占めることとなるので、正確な定量が不可能となる。このような表面近傍の金属が置換される現象を、本明細書中では、Artifact(擬制)と呼ぶことがある。
また、Agイオンの硫化物は、MnSとのpKspの差Δが36.6であるため、MnSにアタックして、Mnをイオン化して電解液中に追い出すと共に、自身は、MnS表面にAgSとして残留する。このことは、以下の手順により得られた図3で確認される。
・MnSを介在物として含んでいることを確認済の鉄鋼試料を用意し、表面不純物を除くために、予め鏡面研磨を施す。
・従来から知られている硫化物系介在物を残渣として回収できる4質量%サリチル酸メチル+1質量%サリチル酸+1質量%塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を含み、溶媒がメタノールである電解液(4%MS)を用意する。
・前記鉄鋼試料を前記電解液中で電解を行う。
・電解終了後に、Agイオン溶液を前記電解液中に滴下し混合する。
・Agイオン溶液滴下する前と後で、表面を電解した鉄鋼試料について、走査電子顕微鏡(SEM)による観察および、EDSによる表面元素濃度の計測を行う。
・図3は、Agイオン滴下後のものであり、左上画像はSEM観察像であり、右上画像がSEM観察像に、EDSにより計測したAg濃度のチャートを重ねて示したものであり、左下画像がMn濃度のチャートを重ねて示したものであり、右下画像がS濃度のチャートを重ねて示したものである。
・なお、当然のことながら、Agイオン滴下前では、Agの存在は認められなかった。
図3の各元素濃度のチャートから、MnS粒子の表面部のみがAgSで置換されていることが確認される。チャートにおける各元素の高さ(濃度)は相対的なものであるが、以下のことが読み取れる。具体的には、介在物粒子の部分において、MnとSのグラフの値が山型に上昇しており、介在物粒子が、MnとSを含む、即ち具体的には、MnSを主成分とする粒子であることが確認される。Agは、介在物粒子の端部で濃度が高まっており、介在物粒子の表面でAgが濃化していることが確認される。また、介在物粒子の中央部では、Agの濃度は高まらず、MnおよびSの濃度が高いことから、MnSの表面だけがAgで置換されていることが確認される。
本発明者らは、陽極と陰極を備え、陽極と陰極の間に通電することにより金属材料を電解エッチングし、金属材料中の金属化合物粒子を分離抽出する電解エッチング用装置において、
特定の部材を、前記陰極の少なくとも一部に備えることにより、電解液中の自由なアタック金属(M’)が減少し、Artifact(擬制)を防ぐことができることを新しく見出した。特定の部材は、金属化合物M’x’y’の金属(アタック金属)M’を含んでなり、ここで、金属化合物M’x’y’ の溶解度積をKsp[M’x’y’] とし、
金属材料中に含まれる抽出対象金属化合物Mの溶解度積をKsp[M] とすると、
Δ=pKsp[M’x’y’]−pKsp[M
=(−log10sp[M’x’y’])−(−log10sp[M])
≧10
である。
さらに、アタック金属M’を含む錯体を形成する薬剤を含んでなる電解液を用いることにより、電解液中の自由なアタック金属が減少し、Artifact(擬制)を防ぐことができることを新しく見出した。
なお、ここでMとM’は異なる金属元素であり、AはMまたはM’と化合物を形成する単原子または原子団であり、x、x’、y、y’はM、M’、Aの価数に応じて決まる前記化合物の組成比を表し、前記溶解度積Kspは水溶液中25℃での値である。
電解によって、鉄鋼試料等からマトリックス(Fe)イオンが溶け出すと、Feイオンはキレート剤により電解液中に保持される。一方、電解によって、マトリックス(Fe)以外の金属イオン、例えばCuのようなアタック金属M’のイオンが溶け出す場合があり、そのようなイオン(例えばCuイオン)は陰極へ移動して析出するが、析出後に捕捉サイトがないため陰極から剥離しやすく、電解液中にメタルCuとして沈殿したり、アタック金属M’(Cu等)の供給源となり得る。すなわち、介在物や析出相および電解残渣のコンタミネーション源になり得る。
本発明の電解エッチング装置は、アタック金属M’が含まれる部材を陰極の少なくとも一部に備える。陰極の一部に備えられた当該部材がアタック金属M’を含んでいることで、アタック金属M’(Cu等)イオンを積極的に付着させる捕捉サイト(析出サイト)として作用する。なお、当該部材中のアタック金属M‘の含有量が高いほど、アタック金属M’(Cu等)イオンを積極的に付着させる作用の効果が高くなると考えられる。そのため、当該部材中のアタック金属M‘の含有量は、90質量%以上であってもよく、好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であってもよい。析出したアタック金属M’と、陰極の一部に備えられた部材に含まれるアタック金属M’とは、同じ材料であるため、親和性が高いので、陰極で電解析出したアタック金属M’(Cu等)が析出後に剥離し、メタルCuとして沈殿することを抑制することができる。また、電解液中へのアタック金属M’(Cu等)供給源を減じることができる。
そのため、pKspの差Δが大きい金属化合物Mが存在していても、アタック金属M’は金属化合物Mの表面での金属Mとの置換(すなわち、Artifact(擬制))を自由に行うことができない。言い換えると、M’x’y’の生成が抑制される。
したがって、例えば、Cuイオンに表面観察用鉄鋼試料表面のMnSを攻撃させないこと、或いは、介在物や析出相の同定・定量分析のための電解操作においても、同様に、介在物や析出相から作成された定量分析用残渣中に、メタルCuおよびCuSが混入しないようにすることで、表面観察用の鉄鋼試料中の介在物や析出相を本来の姿のままで観察可能とすることができ、また、解析対象である電解残渣中に、試料のマトリックス等から溶け出したCuイオンに由来するメタルCuおよびCuS等を含まず、本来、鉄鋼試料が含有していた介在物や析出相に起因する元素のみを、正しく同定・定量できる。
Artifact(擬制)を生じやすいアタック金属M’としては、その含有量や溶解度積Kspの低さ、言い換えるとpKspの高さからCuが顕著である。Cuは、Cu化合物に対してpKsp差Δがおよそ20であるMnSやFeSの表面を容易にアタックし、Artifact(擬制)を生じ得る。ただし、Artifact(擬制)あるいはアタック金属M’によるアタックは、pKspの差Δが大きいほど、生じやすいと考えられ、本発明の対象は、CuとMnSやFeSの組み合わせに限られるものではない。具体的には,大きいpKspを有する金属化合物M’x’y’の金属M’が、Hg、Ag、Cu、Pb、Cd、Co、Zn、およびNiの少なくとも一つであってもよく、これらはアタック金属M’になり得る。アタック金属M’は、主として、鋼材試料中に含まれる金属M’またはその化合物が電解液中に溶出したものであると考えられる。ただし、電解液や電解装置は再利用されることがあり、再利用された電解液や電解装置中に金属M’またはその化合物が存在することがあり、これがアタック金属M’となることもある。また、電解抽出操作の際に、金属M’またはその化合物がコンタミネーション物質として電解液中に混入し、アタック金属M’となることもある。
M’は、Hg、Ag、Cu、Pb、Cd、Co、Zn、およびNiの少なくとも一つであってもよいが、Mとは異なる金属元素である。Aは、MまたはM’と化合物を形成する単原子または原子団であり、C、N、H、S、O、PならびにFの原子からなる群より独立して選ばれる1つ以上の原子を含んでもよい。Hg、Ag、Cu、Pb、Cd、Co、Zn、およびNiの硫化物と、MnSとのpKspの差Δは、10以上である。特に、Hg、Ag、Cuの硫化物と、MnSとのpKspの差Δは、20以上である。
抽出対象金属化合物MxAyとアタック金属化合物M’x’Ay’のpKspの差Δが10程度の場合、数時間でArtifact(擬制)が生じ得る。実際の電解抽出分析は数時間のオーダーで行われることが多い。そのため、pKspの差Δが10程度の組み合わせは、分析に影響を与える可能性がある。本発明では、pKspの差Δが10以上と規定しており、その場合に生じ得るArtifact(擬制)を抑制することができる。
抽出対象金属化合物MxAyとアタック金属化合物M’x’Ay’のpKspの差Δが大きいほど、Artifact(擬制)が容易または迅速に生じ得る。本発明では、pKspの差Δが大きいMxAyとM’x’Ay’の組み合わせを選択することができ、それにより、容易または迅速に生じ得るArtifact(擬制)を抑制することができ、好ましい。この点で、M’x’Ay’のpKsp[M’x’Ay’]は、抽出対象金属化合物MxAyのpKsp[MxAy]に比べて、11以上大きいことが好ましく、12以上大きいことがさらに好ましくは、13以上大きいことがさらに好ましく、14以上大きいことがさらに好ましく、15以上大きいことがより好ましく、16以上大きいことがさらに好ましく、17以上大きいことがさらに好ましく、18以上大きいことがさらに好ましく、19以上大きいことがさらに好ましく、20以上大きいことがさらに好ましく、21以上大きいことが好ましく、22以上大きいことがさらに好ましく、23以上大きいことがさらに好ましく、24以上大きいことがさらに好ましく、25以上大きいことがより好ましく、26以上大きいことがさらに好ましく、27以上大きいことがさらに好ましく、28以上大きいことがさらに好ましく、29以上大きいことがさらに好ましく、30以上大きいことがさらに好ましく、31以上大きいことが好ましく、32以上大きいことがさらに好ましくは、33以上大きいことがさらに好ましく、34以上大きいことがさらに好ましく、35以上大きいことがより好ましく、36以上大きいことがさらに好ましく、37以上大きいことがさらに好ましく、38以上大きいことがさらに好ましく、39以上大きいことがさらに好ましく、40以上大きいことがさらに好ましい。
なお、溶解度積Kspは水溶液中の値であるが、表2で示すとおり、非水溶媒(低級アルコール)を用いた場合でもKspより求められるpKsp(−log10sp)の差Δが10以上で、反応が認められることが確認されている。具体的には、以下の確認試験を行った。
・抽出対象物を含む試料として、MnSを含有する鋼材2種(MnSの粒径が1μm以上のもの、及び粒径100〜150nmのもの)を用意し、それらの表面に鏡面研磨仕上げを行った。
・アタック金属M’+イオンとして、Ag、Cu、Pb、Co、Zn、Niの金属イオン濃度が、それぞれ1000μg/mlの6種類の原子吸光分析用標準溶液(M’+溶液)を用意した。M’溶液0.1mlを非水溶媒であるメタノール0.3mlと混合した。
・鋼材表面に混合液を塗布して、鋼材表面の変化を確認した。
AgおよびCuを含む混合液を塗布したものは、塗布から5分以内に鋼材の表面が黒色に変化した。Pbを含む混合液を塗布したものは、塗布から10分程度で鋼材の表面が黒色に変化した。Co、Zn、Niを含む混合液を塗布したものは、塗布から20分程度で鋼材の表面が黒色に変化した。
・さらに、変色のあった鋼材についてSEMおよびEDS観察を行ったところ、いずれもMnS粒子の表面でMnとアタック金属M’との置換(すなわち、Artifact(擬制))が生じていることが確認された。
このことから、本発明の範囲では、溶解度積Kspは水溶液中の指標であるが、非水溶液に適用することが可能であり、そこでの溶解度積Kspは水溶液中と同様の傾向を示すことが推定される。
また、pKspの差Δが大きいほど、置換(Artifact(擬制))反応が速いことも確認された。一方で、pKspの差Δが小さくとも、相対的に反応速度は遅くなるものの、着実に置換(Artifact(擬制))反応が進行することも確認された。鋼材の電解抽出分析は、数時間のオーダーで行われることが多い。例えば、試料を電解液に漬けておく時間として、2時間程度で計画していても、さらに1時間程度延長されることもある。pKspの差Δが10となるNi含有液とMnSを用いた場合、20分程度で変色が見られた。つまり、pKspの差Δが10以上では、置換(Artifact(擬制))反応が、問題となり得ることが確認された。
これに関連して、上記の確認試験に加えて、アタック金属M’+溶液とメタノールの混合液にさらに錯化剤としてトリエチレンテトラミン(TETA)0.1mlを加えたもの(錯化剤添加液)を用意し、それを鏡面仕上げ鋼材に塗布した場合の観察も行った。錯化剤添加溶液を加えた場合、数時間経過後も鋼材表面の変色は見られず、良好な鏡面研磨状態が保持された。SEMおよびEDS観察でも、Artifact(擬制)は確認されなかった。
前記の陰極に備えられるアタック金属M’を含んでなる部材が、陰極の表面を覆うように備えられていてもよい。陰極の表面が、アタック金属M’イオンの捕捉サイトとして作用し、析出したアタック金属M’(Cu等)の析出後の剥離・沈殿を抑制する効果が高まるからである。
あるいは、前記の陰極が、前記小さい溶解度積Ksp(大きいpKsp)を有する金属化合物の金属でできていてもよい。すなわち、陰極の全体が、アタック金属M’からなり、アタック金属M’イオンとの親和性がより高まり、アタック金属M’イオンの捕捉サイトとしてより有効に作用し、析出したアタック金属M’(Cu等)の析出後の剥離・沈殿を抑制する効果がさらに高まるからである。
陰極に備えられるアタック金属M’からなる部材が、質量%で99.9%以上のCuおよび不可避的不純物からなるものであってもよい。前述のように、Artifact(擬制)を生じやすいアタック金属M’としては、Cuが顕著である。アタック金属M’からなる部材を、質量%で99.9%以上のCuおよび不可避的不純物からなるものとすることで、アタック金属M’としてのCuの剥離・沈殿を抑制する効果を確実に高くすることができる。
アタック金属M’を含む錯体を形成する薬剤として、クラウンエーテルを利用可能である。クラウン(王冠)エーテルは、環状のポリエーテル(エーテル単位がいくつかつながったもの)であり、環状の穴部のサイズを変更することができる。そのため、アタック金属種M’に応じて、適当な穴を有するクラウンエーテルを用意でき、それによりアタック金属種M’のみを選択的に捕捉できる。
アタック金属M’を含む錯体を形成する薬剤が、ポリエチレンアミン類、エチレンジアミン4酢酸、シクロヘキサンジアミン4酢酸のうちのいずれか1種または2種以上を含んでいてもよい。これらは、キレート剤として作用し、アタック金属M’を捕捉する。ポリエチレンアミン類として、トリエチレンテトラミン(TETA)、ペニシラミン、ペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。特に、トリエチレンテトラミン等のキレート剤は、CuイオンおよびNiイオン等に対する選択性が高く、アタック金属M’がCuやNi等である場合に、特に高い捕捉効果が発揮される。
表3は、アタック金属M’としてのCuまたはNiを各種キレート剤で捕捉したときの、錯体の安定度定数(Log10)を示したものである。安定度定数が高いほど、アタック金属を捕捉し、再び遊離させにくいと考えられるため、好ましい。化合物M’x’、特にCuSの生成を抑制する場合、アタック金属M’を含む錯体を形成する薬剤として、安定度定数が10以上のもの、好ましくは12以上のもの、さらに好ましくは14以上のもの、より好ましくは16以上のもの、さらに好ましくは18以上のもの、より好ましくは20以上のものを、選択してもよい。一般に、生成を抑制すべき化合物M’x’の溶解度積をKsp[M’x’y’]とすると、pKsp[M’x’y’](=−Log10sp[M’x’y’])とLogKとの差、pKsp[M’x’y’]−LogKが、26未満のもの、好ましくは24未満のもの、さらに好ましくは22未満のもの、より好ましくは20未満のもの、さらに好ましくは18未満のもの、より好ましくは16未満のものを、選択してもよい。
アタック金属M’が捕捉され、アタック金属M’の錯体が形成される。アタック金属M’の錯体は上述の溶媒に溶解状態で保持される。そのため、pKspの差Δが大きい金属化合物Mが存在していても、アタック金属M’は金属化合物Mの表面での金属Mとの置換(すなわち、Artifact(擬制))を自由に行うことができない。言い換えると、M’x’y’の生成が抑制される。
錯体を形成する薬剤、またはこれを含む電解液は、電解槽中で攪拌されてもよい。これにより、未反応の薬剤がアタック金属M’に接触しやすくなり、アタック金属M’が捕捉されやすくなる。攪拌の手段は、特に限定されないが、気泡発生器によるバブリング、マグネチックスターラーによる渦流等を用いてもよい。または、未反応の薬剤の液滴をアタック金属M’の近傍に滴下してもよい。未反応の薬剤がアタック金属M’に接触しやすいように、バブリングであれば100cc/分、好ましくは200cc/分、スターラーであれば100rpm、好ましくは200rpmを、下限としてもよい。バブリング量やスターラー回転数が高すぎると、電解対象物表面の剥離等の問題を生じる。そのため、バブリングであれば600cc/分、好ましくは500cc/分、スターラーであれば600rpm、好ましくは500rpmを上限としてもよい。
なお、一般的な電解操作において電解液の攪拌を行う場合、攪拌によって生じる電解液の流れが電解対象物に接触しないように、攪拌操作が行われる。これは、攪拌によって生じた電解液の流れが電解対象物に影響を与えないようにするという考えに基づく。本発明では、錯体を形成する薬剤がアタック金属M’またはその発生源に接触しやすいという観点から、攪拌等によって生じる電解液の流れが電解対象物に接触するように、当該薬剤を攪拌または供給してもよい。
また、バブリングのための気体としては窒素ガスやヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが挙げられる。酸素や水素等の活性ガスは、電解液中の溶存酸素濃度に影響を与えるおそれがあり、電解対象物に影響を与えるおそれがあるため、好ましくない。
本発明により、上記の電解エッチング装置と同様の作用を用いる、金属材料中の金属化合物粒子を抽出する方法も提供される。その方法は、陽極と陰極を備え、陽極と陰極の間に通電することにより金属材料を電解エッチングし、金属材料中の金属化合物粒子を抽出する方法に関する。この方法により、抽出した金属微粒子では、実態はMnSやFeSである微粒子をCuSと誤認することがなくなり、金属硫化物の真の姿(サイズ、成分)を知ることができ、さらには鉄鋼材料中の金属硫化物の含有量も正確に把握することができる。また、この方法によれば、抽出物(例えば電解操作によって鋼板試料表面に露出させた介在物或いは析出相等)を鉄鋼試料中に本来存在していた成分及び形態で観察することが可能となる他、抽出物(例えば電解残渣)の分析から介在物や析出相成分を定量分析する場合に、電解液から混入するCu等の影響を受けずに、正しく定量分析することができるので、鉄鋼試料の組織観察や、鉄鋼試料中の介在物或いは析出相の同定・定量分析の精度向上におおいに寄与するものである。
なお、鋼材中で、析出物MnSのMnがSeで容易に置換され、MnSeとして析出し得ることが報告されており、その理由として、MnSとMnSeが同じNaCl型構造であり、格子定数が極めて近いためであると言われている。元素周期律からすると、S、Seと同族であるTeや隣接する族のSbについても、MnSのSと容易に置換され、MnTeやMnSbとして析出することも予想される。そして、MnSが、MnSe、MnTeおよび、またはMnSbに容易に置換されるのであれば、MnSの正しい定量分析は、MnSe、MnTeおよびMnSbの定量分析の精度向上にも役立つものと考えられる。
また、MnSの置換等によって生じるMnSeが、さらに他のセレン化物との置換(Artifact(擬制)反応を生じ得る。表4に、水溶液中 25℃でのセレン化物間のpKsp(=−log10sp)の差Δを示す。表中で、二重線の枠(または濃いグレーの枠)はpKspの差Δが22以上であるセレン化物の組み合わせであり、それらの組み合わせでは交換反応が容易にまたは秒単位で進行すると予想される。簡易的に記号で表せば、交換反応の期待度(予測)が◎と表現される。太線の枠(または薄いグレーの枠)はpKspの差Δが10以上22未満であるセレン化物の組み合わせであり、数分から数時間単位でかかったりすることがあるが、交換反応は進行すると予想される。簡易的に記号で表せば、交換反応の期待度(予測)が○〜△と表現される。細い線の枠(または白い枠)はpKspの差Δが10未満であるセレン化物の組み合わせであり、それらの組み合わせでは交換反応は進行しにくいと予想される。簡易的に記号で表せば、交換反応の期待度(予測)が△〜×と表現される。
本発明によれば、セレン化物についても、Artifact(擬制)を防ぐことができる。
以下、実施例を通じて、本願発明について説明する。ただし、本願発明は、以下の実施例に限定して解釈されるべきではない。
本願発明に係る電解エッチング用装置を使用した電解によって、鉄鋼試料における介在物或いは析出相の定量分析を行った。対照例として、従来の電解液を用いて電解した比較例を用意した。
本実施例においては、鉄鋼試料として、0.4質量%Cu含有する鋼材を、1350℃×30minの加熱処理で溶体化した後、水中で急冷した試料を用いた。
電解液は、以下の2種類を用意した。
(1)4%MS:従来から知られている硫化物系介在物を残渣として回収できる4質量%サリチル酸メチル+1質量%サリチル酸+1質量%塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を含有するものであり、SPEED法で用いられる電解液の一つである。
(2)4%MS+5%TETA:(1)の4%MSに、Cuイオンと錯体を形成するトリエチレンテトラミン(TETA)5体積%を添加したものである。
なお、溶媒は(1)〜(2)のいずれでもメタノールとした。
夫々の電解液を用いて、陰極側の電極をPt製プレートとした場合と、Pt製プレートにCu製プレートを固定した場合について、試料を約1g相当電解して、得られた電解残渣に含まれるMnとCuの含有量を湿式化学分析で定量し、1g鋼材試料中に含まれる含有量を計算した。なお、Pt製プレートにCu製プレートを固定する方法は以下のとおりとした。固定するCuプレートとしては、Ptプレートと略同じ大きさのものを用意し、両プレートを重ね合わせ、両プレートの端部に穴を開け、その穴にPtワイヤーを通して、Ptワイヤーで両プレートを固定(結束)した。
結果を図2に示す。
同図において、4本の帯グラフは、それぞれ電解残渣中から検出されたMnとCuを重ねて%単位で示したものであり、左から、(1)一般的な電解液(4%MS)で、Pt電極を陰極として電解した場合、(2)一般的な電解液(4%MS)で、陰極にCuプレートを固定して電解した場合、(3)一般的な電解液に、TETA5体積%を添加した電解液(4%MS+5%TETA)とPt電極を陰極側に用いて電解した場合、(4)一般的な電解液に、TETA5体積%を添加した電解液(4%MS+5%TETA)と陰極にCuプレートを固定して電解した場合、を示す。
なお、実施例で採用した鉄鋼試料を鏡面研磨して、EDS等により成分元素の分布を解析したところ、試料中に含まれるCuは試料のマトリックス部分にそのほとんどが固溶しており、CuSやCu2S等の硫化物形態では存在していないことが確認されている。
それにもかかわらず、図2の(1)に示した従来のPt電極を陰極側とした電解液(4%MS)での電解においては、鉄鋼試料中の硫化物が主成分とみられる電解残渣中から、0.018質量%であるMn濃度を上回る濃度のCu濃度(0.04%=400ppm)が測定された。この理由としては、以下が考えられる。鉄鋼試料から溶け出したアタック金属(Cu)は、Pt陰極で析出するが、析出後に剥離しやすくメタルCuとして残渣に沈殿するものや、電解液中に沈殿しアタック金属(Cu)の供給源となる。この供給源から供給されるアタック金属(Cu)により、金属化合物の表面(MnS)で金属(Cu)の置換(すなわち、Artifact(擬制))されたCuSを生じた。
(2)に示すグラフは、Pt製陰極にCuプレートを固定し、電解液(4%MS)での電解した場合であり、電解残渣中のCu成分は、0.0103質量%(103ppm)にまで減少している。これは、Pt陰極に固定されたCuプレートが、アタック金属(Cu)イオンの捕捉サイト(析出サイト)として作用し、陰極で電解析出したアタック金属(Cu)の析出後の剥離・沈殿を抑制し、その結果、メタルCuとして残渣に沈殿するものや電解液中へのアタック金属(Cu)供給源を減じたためと考えられる。
また、(3)に示すグラフは、陰極をPt電極のままで、トリエチレンテトラミン5体積%を添加した電解液(4%MS+5%TETA)で電解した際の電解残渣中から測定されたMnとCuの濃度を示す。
この場合、電解残渣中のCu成分は、0.0016質量%(16ppm)にまで減少している。これは、トリエチレンテトラミン(TETA)が、Cuイオンと錯体を形成し、アタック金属(Cu)が金属化合物(MnS)の表面での金属(Mn)と置換(すなわち、Artifact(擬制))されることを抑制したためと考えられる。
さらに、(4)は、TETAを含む電解液(4%MS+5%TETA)とPt製陰極へのCuプレートの固定とを併用した場合の測定値を示す。
電解残渣から計測されるCu濃度は、0.0004質量%(4ppm)まで減少し、通常の分析であれば測定限界である5ppm以下にまで、Cu濃度を低下させることが可能であることがわかった。
即ち、本願発明による、アタック金属からなる部材を陰極の少なくとも一部に備える、電解エッチング用装置を用いて、金属試料を電解すれば、残渣の化学分析精度が向上し、試料中に存在する介在物や析出相を正確に同定・定量することが可能となる。
本願発明による、アタック金属からなる部材を陰極の少なくとも一部に備える、電解エッチング用装置を用いて金属試料を電解することで、試料中の介在物や析出相を試料中に本来存在するままの形態で観察することが可能となると共に、これら介在物や析出相の化学分析においても、Cu等によるコンタミに起因する汚染を排除することができ、化学分析の精度向上を図ることができる。
4 金属試料
5 介在物・析出相粒
6 電極(陰極側)
7 参照電極
8 電源(ポテンショスタット)
9 電解液
10 電解槽
11 電解残渣

Claims (15)

  1. 陽極と陰極を備え、陽極と陰極の間に通電することにより金属材料を電解エッチングし、金属材料中の金属化合物粒子を分離抽出する電解エッチング用装置であって、
    金属化合物M’x’y’の溶解度積をKsp[M’x’y’] とし、
    前記金属材料中に含まれる抽出対象金属化合物Mの溶解度積をKsp[M] とすると、
    下記式で定義されるΔが10以上となる金属M’が含まれる部材を、前記陰極の少なくとも一部に備え、
    前記金属M’を含む錯体を形成する薬剤及び非水溶媒を含む電解液を収容する電解槽を備えることを特徴とする、電解エッチング用装置。

    Δ=pKsp[M’x’y’]−pKsp[M
    =(−log10sp[M’x’y’])−(−log10sp[M])
    ここで、MとM’は異なる金属元素であり、AはMまたはM’と化合物を形成する単原子または原子団であり、x、x’、y、y’はM、M’、Aの価数に応じて決まる前記化合物の組成比を表し、前記溶解度積Kspは水溶液中25℃での値である
  2. 前記抽出対象金属化合物MがMnSまたはFeSの1種または2種であることを特徴とする、請求項1に記載の電解エッチング用装置。
  3. 前記金属化合物M’x’y’の金属M’が、Hg、Ag、Cu、Pb、Cd、Co、Zn、およびNiの少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1または2に記載の電解エッチング用装置。
  4. 前記陰極に備えられる部材が、陰極の表面を覆うように備えられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解エッチング用装置。
  5. 前記陰極が、前記金属M’でできていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解エッチング用装置。
  6. 前記陰極に備えられる部材が、質量%で99.9%以上のCuおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解エッチング用装置。
  7. 前記非水溶媒が、メタノールまたはエタノールの少なくとも一つを含んでなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電解エッチング装置。
  8. 前記金属M’を含む錯体を形成する薬剤が、ポリエチレンアミン類、エチレンジアミン4酢酸、シクロヘキサンジアミン4酢酸の少なくとも一つを含んでなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電解エッチング装置。
  9. 前記薬剤がトリエチレンテトラミンを含んでなることを特徴とする、請求項8に記載の電解エッチング装置。
  10. 電解液の撹拌手段をさらに備える請求項1〜9のいずれか1項に記載の電解エッチング装置。
  11. 前記陽極表面に気泡を照射する気泡発生器を、さらに備える請求項10に記載の電解エッチング装置。
  12. 陽極と陰極を備え、陽極と陰極の間に通電することにより金属材料を電解エッチングし、金属材料中の金属化合物粒子を抽出する方法において、
    金属化合物M’x’y’の溶解度積をKsp[M’x’y’] とし、
    前記金属材料中に含まれる抽出対象金属化合物Mの溶解度積をKsp[M] とすると、
    下記式で定義されるΔが10以上となる金属M’が含まれる部材を、前記陰極の少なくとも一部に備え、
    前記金属M’を含む錯体を形成する薬剤及び非水溶媒を含む電解液を用いることを特徴とする、金属化合物粒子の抽出方法。

    Δ=pKsp[M’x’y’]−pKsp[M
    =(−log10sp[M’x’y’])−(−log10sp[M])
    ここで、MとM’は異なる金属元素であり、AはMまたはM’と化合物を形成する単原子または原子団であり、x、x’、y、y’はM、M’、Aの価数に応じて決まる前記化合物の組成比を表し、前記溶解度積Kspは水溶液中25℃での値である
  13. 前記電解エッチングを行う際に、電解液を撹拌しながら電解エッチングすることを特徴とする請求項12に記載の金属化合物粒子の抽出方法。
  14. 電解液をマグネチックスターラーで撹拌することを特徴とする請求項13に記載の金属化合物粒子の抽出方法。
  15. 電解液中に気泡をバブリングすることを特徴とする請求項13に記載の金属化合物粒子の抽出方法。
JP2018500235A 2016-02-18 2017-02-17 電解エッチング用装置および金属化合物粒子の抽出方法 Active JP6610767B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016028895 2016-02-18
JP2016028895 2016-02-18
PCT/JP2017/005995 WO2017142084A1 (ja) 2016-02-18 2017-02-17 電解エッチング用装置および金属化合物粒子の抽出方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2017142084A1 JPWO2017142084A1 (ja) 2018-12-27
JP6610767B2 true JP6610767B2 (ja) 2019-11-27

Family

ID=59625996

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018500235A Active JP6610767B2 (ja) 2016-02-18 2017-02-17 電解エッチング用装置および金属化合物粒子の抽出方法

Country Status (10)

Country Link
US (1) US11111595B2 (ja)
EP (1) EP3418711B1 (ja)
JP (1) JP6610767B2 (ja)
KR (1) KR102214098B1 (ja)
CN (1) CN108603820B (ja)
BR (1) BR112018016748B1 (ja)
PL (1) PL3418711T3 (ja)
RU (1) RU2698004C1 (ja)
TW (1) TWI642935B (ja)
WO (1) WO2017142084A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20210002892U (ko) * 2020-06-17 2021-12-24 두산중공업 주식회사 전해 에칭 시험용 멀티 터미널 지그

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
TWI632944B (zh) * 2016-02-18 2018-08-21 新日鐵住金股份有限公司 金屬化合物粒子的萃取方法、該金屬化合物粒子的分析方法、以及可用於其等之電解液
JP6919775B1 (ja) * 2019-11-25 2021-08-18 Jfeスチール株式会社 析出物および/または介在物の抽出方法、析出物および/または介在物の定量分析方法、電解液、ならびに、レプリカ試料の作製方法
WO2021106711A1 (ja) * 2019-11-25 2021-06-03 Jfeスチール株式会社 析出物および/または介在物の抽出方法、析出物および/または介在物の定量分析方法、ならびに、電解液
CN111238915B (zh) * 2020-02-12 2021-05-07 北京科技大学 一种高温合金中非金属夹杂物的提取方法
CN111596094B (zh) * 2020-05-12 2023-04-18 上海大学 钢中非金属夹杂物三维腐刻装置及腐刻方法

Family Cites Families (20)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5479131A (en) * 1977-12-07 1979-06-23 Okuno Chem Ind Co Electrolytic bath for removing electrodeposited metal on stainless steel substrate
JPS59141035A (ja) * 1983-02-01 1984-08-13 Daido Steel Co Ltd 金属中の非金属介在物を採取する方法
SU1257446A1 (ru) 1984-07-18 1986-09-15 Предприятие П/Я В-2120 Электролит дл вы влени границ зерен аустенита в нержавеющей стали
JPS62238379A (ja) 1986-04-07 1987-10-19 Asahi Kagaku Kogyo Kk 鉄系金属の化学溶解液用添加剤および化学溶解処理液
JPH04143290A (ja) 1990-10-05 1992-05-18 Nippon Sanso Kk 表面処理法
SU1755103A1 (ru) 1991-01-08 1992-08-15 Научно-исследовательский институт прикладных физических проблем им.А.Н.Севченко Способ получени образца кремни с косым шлифом
JPH07260772A (ja) * 1994-03-25 1995-10-13 Nippon Steel Corp 分解能が高い鋼の偏析状態、凝固組織の迅速現出方法及び転写方法
JP3454171B2 (ja) 1998-10-30 2003-10-06 Jfeスチール株式会社 鉄鋼試料中の介在物又は析出物の抽出用非水溶媒系電解液及び鉄鋼試料の電解抽出方法
US7323416B2 (en) * 2001-03-14 2008-01-29 Applied Materials, Inc. Method and composition for polishing a substrate
JP3984431B2 (ja) 2001-04-04 2007-10-03 新日本製鐵株式会社 鉄鋼材料用電解液組成物およびそれによる介在物または析出物の分析方法
JP4280004B2 (ja) 2001-06-01 2009-06-17 新日本製鐵株式会社 鉄損および磁束密度が極めて優れたセミプロセス無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2004317203A (ja) 2003-04-14 2004-11-11 Nippon Steel Corp 金属中の介在物および析出物の評価方法、および治具
JP2006274293A (ja) * 2005-03-28 2006-10-12 Nikko Kinzoku Kk 板状電気銅の製造方法
JP4134144B2 (ja) * 2005-11-01 2008-08-13 株式会社四国総合研究所 金属材料の分析方法、およびその装置
JP5098843B2 (ja) * 2007-06-29 2012-12-12 Jfeスチール株式会社 金属試料中の着目元素の固溶含有率を求める方法
KR100916479B1 (ko) 2007-11-30 2009-09-08 삼성전기주식회사 금속제품 전해가공용 전해액
KR101165162B1 (ko) * 2008-04-25 2012-07-11 신닛뽄세이테쯔 카부시키카이샤 금속 재료 중 미립자의 입도 분포 측정 방법
JP5583704B2 (ja) 2011-10-28 2014-09-03 富士フイルム株式会社 平版印刷版用支持体の製造方法及び平版印刷版用支持体の製造装置
JP5958501B2 (ja) 2013-08-07 2016-08-02 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の評価方法および方向性電磁鋼板の製造方法
SG11201703153SA (en) 2014-12-24 2017-05-30 Veltek Associates Inc Cart with removable wheel base

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20210002892U (ko) * 2020-06-17 2021-12-24 두산중공업 주식회사 전해 에칭 시험용 멀티 터미널 지그
KR200496071Y1 (ko) 2020-06-17 2022-10-26 두산에너빌리티 (주) 전해 에칭 시험용 멀티 터미널 지그

Also Published As

Publication number Publication date
US20200141843A1 (en) 2020-05-07
US11111595B2 (en) 2021-09-07
CN108603820B (zh) 2021-07-27
EP3418711A4 (en) 2019-10-09
EP3418711B1 (en) 2021-05-19
BR112018016748B1 (pt) 2022-12-20
WO2017142084A1 (ja) 2017-08-24
RU2698004C1 (ru) 2019-08-21
TWI642935B (zh) 2018-12-01
EP3418711A1 (en) 2018-12-26
CN108603820A (zh) 2018-09-28
KR20180102139A (ko) 2018-09-14
BR112018016748A2 (ja) 2018-12-26
TW201740106A (zh) 2017-11-16
KR102214098B1 (ko) 2021-02-09
PL3418711T3 (pl) 2021-11-08
JPWO2017142084A1 (ja) 2018-12-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6610767B2 (ja) 電解エッチング用装置および金属化合物粒子の抽出方法
JP6690699B2 (ja) 金属化合物粒子の抽出方法、その金属化合物粒子の分析方法、およびそれらに用いられる電解液
Sauber et al. Electrochemical study of leached chalcopyrite using solid paraffin-based carbon paste electrodes
JP2017506702A (ja) スクラップからの金および/または銀の回収
JP6897532B2 (ja) 金属化合物粒子の抽出用電解液、およびそれを用いた電解抽出方法
JP2010229534A (ja) ニッケルとリチウムの分離回収方法
Oishi et al. Hydrometallurgical recovery of high-purity copper cathode from highly impure crude copper
JP5412184B2 (ja) ニッケルめっきが施された銅又は銅合金屑のリサイクル方法
JP2019039710A (ja) 金属材料中の炭化物および/または窒化物の抽出方法、その炭化物および/または窒化物の分析方法、その金属材料中の固溶炭素量および/または固溶窒素量の分析方法、およびそれらに用いられる電解液
JP4103661B2 (ja) 鋼中析出物及び/又は介在物の抽出分析用電解液、及びそれを用いた鋼中析出物及び/又は介在物の電解抽出方法
JP2011127147A (ja) Cu系材料のSnめっき層の剥離方法
JP2019039029A (ja) Cu添加鋼板
JP2014111802A (ja) 希土類金属の回収方法
JP2015221934A (ja) 銀の回収方法
JP2010008090A (ja) 鋼中のCaO含有介在物の分析方法
Łoś et al. A Selective Separation of Platinum Group Metals from the Fe-PGM Alloy Using Electrodeposition Combined with Electrochemical Dealloying
RU2522905C1 (ru) Способ извлечения редкоземельных элементов из жидких сплавов с цинком
Van der Spoel Badenhorst Development of an iron electrowinning process using anion exchange membranes
JP2010270357A (ja) ニッケルめっきが施された銅又は銅合金屑のリサイクル方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180817

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190709

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20191001

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191014

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6610767

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151