JP2015221934A - 銀の回収方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】銀及び銀合金を被覆した基材から銀を環境への負荷を軽減しつつ、低コストで回収することができる。【解決手段】銀又は銀系合金を被覆した基材に硝酸鉄(III)含有溶液を添加し、銀又は銀系合金を溶解させる溶解剥離工程と、銀又は銀系合金が溶解した溶液に塩酸を加えて、塩化銀沈殿物を生成する塩化銀生成工程と、溶解剥離工程後の溶液に含まれる2価の鉄イオンを3価の鉄イオンに酸化する硝酸鉄再生工程とを有し、溶解剥離工程では、基材を添加した後の硝酸鉄(III)含有溶液中のFe3+濃度がFe2+濃度の1.5倍量以上となるように維持し、硝酸鉄再生工程で生成した硝酸鉄(III)含有溶液を溶解剥離工程で使用する。【選択図】図1

Description

本発明は、銀又は銀系合金を被覆した基材表面から銀又は銀系合金を溶解剥離して、基材から銀又は銀系合金中の銀を回収する銀の回収方法に関する。
電子材料には、鉄系合金基材上に銀ロウ等の銀系合金を塗布または成膜して銀ロウ被覆鉄合金としたものを用いることが広く行われている。例えば、セラミックやガラスに近い熱膨張係数を示す鉄−ニッケル−コバルト合金製薄板材の両表面に銀ロウを塗布したものは、金属とセラミックやガラスとの接合に適しており、接合面の形状に合わせて打ち抜き加工した上で、圧電振動子や圧電発振器などの気密封入などに利用される。
このようなに銀ロウを被覆した鉄合金を電子材料として利用する場合には、打ち抜き屑などの加工屑が多量に発生する。特に、鉄−ニッケル−コバルト合金などの高価な鉄系合金基材上に銀系合金の銀ロウを塗布している場合には、基材自身や塗布された銀もそれぞれ回収して再生利用することが望まれている。
特に鉄系合金基材では、合金成分に上記のようにニッケルやコバルトといった高価な金属を用いているため、好ましくは全量溶解せずに、しかも被覆した銀ロウ等の銀系合金の部分だけを分離して回収することが望まれている。
研削など機械的な方法による分離は、分離が不完全であり、しかも新たなコンタミネーションを生じる懸念もあるため、好ましくない。
鉄系合金基材上の銀合金のみを溶解する方法としては、例えば特許文献1に示すように、シアン化アルカリ溶液を用いる方法が一般的に用いられている。
特許文献1は、銀ロウ被覆鉄合金の加工屑から、銀含有量が10ppm以下の鉄合金及び銀ロウ成分を別々に有効に回収する方法を提供するものである。
特許文献1の方法は、具体的に、銀ロウ被覆鉄合金の加工屑を小片化し且つ表面同士が密着しないように変形させる前処理工程、銀ロウ被覆鉄合金の小片を導電性且つ通液性の籠に収容し、籠をシアン化合物水溶液中に浸漬し、籠をアノードとし、籠の外にカソードを設け、電解処理して、鉄合金表面から銀ロウ成分を除去してカソードに移動させる電解剥離処理工程を有する。更に、特許文献1の方法は、電解処理した銀ロウ被覆鉄合金の小片を、酸素又は酸化剤を含有するシアン化合物水溶液中に浸漬して鉄合金表面から銀ロウ成分を十分に除去する仕上剥離処理工程、及び鉄合金表面から銀ロウ成分を除去した小片を水洗する水洗工程を有し、銀ロウ被覆鉄合金からの鉄合金及び銀ロウ成分を回収する。
特許文献1のようなシアン化アルカリ溶液を用いる手法は、鉄系合金基材を損失することなく、全て溶解して銀系合金のみを分離回収することができる。しかしながら、特許文献1の方法では、毒物であるシアン化アルカリを使用するために、特定の専用作業施設を設け、発生する洗浄液中のシアンを完全分解する排水処理設備が必要となるなど管理上の手間とコストが大きくなる課題があった。
一方、シアン化アルカリを用いない方法としては、下記の特許文献2に硝酸鉄(III)の水溶液を用いる方法が開示されている。この方法は、金属材料を被覆した鉄基合金素材を硝酸第二コバルト、硝酸第二銅、硝酸第二鉄から採択される1種又は2種以上を含有する剥離溶液に浸漬することを特徴とする鉄基合金素材に被覆された金属材料の回収方法である。
特許文献2のような、硝酸鉄(III)の溶液を用いる手法は、Fe3+を酸化剤として、下記の式1に銀メタルについて、式2に銅メタルについて例示する溶解反応により、銀ロウに含まれる銀メタルや銅メタルを溶解するものである。この方法は、毒物に該当する薬剤を使用しないため、設備立地への制限が少ないという利点がある。
Fe3+(NO + Ag
→ Fe2+(NO + Ag(NO )・・・<式1>
2Fe3+(NO + Cu
→ 2Fe2+(NO + Cu2+(NO ・・・<式2>
しかしながら、Fe3+が酸化剤として働いてFe2+になる反応と、Agが還元されてAgメタルに戻る反応の標準電極電位は、ほぼ同レベルである。このため、式1の反応が進んで液中のFe2+やAgの濃度が上昇してくると、式1の逆反応、すなわち一旦溶解した銀の析出反応が起こるという問題がある。
銀ロウを被覆した鉄系合金基材を再利用する場合には、一般に、基材中の銀品位を数十ppm以下にまで低減する必要がある。このため、式1の逆反応によって基材上に銀メタルの再析出現象が生じると、回収した基材をそのまま鉄系合金原料として再利用することは難しくなる問題がある。
式1から逆反応による銀の再析出を防止するには、式1の右辺の反応系におけるFe2+やAgに比べて左辺の生成系で、大過剰のFe3+イオンが存在する状態を維持すれば良いとも考えられる。しかしながら、使用する硝酸鉄(III)量が回収する基材や銀などの有価物に対して多くなった場合には、コストが嵩んでしまう。また、硝酸鉄(III)は、環境への窒素負荷が大きいため、処理するには環境への窒素負荷を許容範囲まで低減させる処理が必要となる。そのため、硝酸鉄(III)の溶液の使用量が多くなると、それに伴って大量の溶液を処理する必要があるため、より手間がかかり、また大量の溶液を処理する設備が必要となる。
したがって、銀又は銀系合金を被覆した基材表面から銀を回収する方法には、環境への負荷を軽減でき、安全性とコストの両面で安定した方法が求められている。
特開2003−89894号公報 特開平02−159324号公報
そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、基材を溶出させることなく、基材に被覆された銀又は銀合金を完全に溶解し、基材も再利用できる形で回収でき、かつ銀も回収することができる銀の回収方法を提供することを目的とする。また、本発明は、環境負荷低減と安全性とコスト削減を安定的に満たす銀の回収方法を提供することを目的とする。
上述した目的を達成する本発明に係る銀の回収方法は、銀又は銀系合金を被覆した基材に硝酸鉄(III)含有溶液を添加し、銀又は銀系合金を溶解させ、基材から銀又は銀系合金を剥離する溶解剥離工程と、銀又は銀系合金が溶解した溶液に塩酸を加えて、塩化銀沈殿物を生成する塩化銀生成工程と、溶解剥離工程後の溶液に含まれる2価の鉄イオンを3価の鉄イオンに酸化し、硝酸鉄(III)含有溶液を再生する硝酸鉄再生工程とを有し、溶解剥離工程では、基材を添加した後の硝酸鉄(III)含有溶液中のFe3+濃度がFe2+濃度の1.5倍量以上となるように維持し、硝酸鉄再生工程で生成した硝酸鉄(III)含有溶液を溶解剥離工程で使用することを特徴とする。
本発明では、基材を溶出させることなく、基材に被覆された銀又は銀合金を完全に溶解し、基材も再利用できる形で回収でき、かつ銀も回収することができる。本発明では、シアンを用いていないため、環境への負荷を軽減でき、経済的に銀を回収することができる。また、本発明では、銀や銀合金の溶出に使用する硝酸鉄(III)含有溶液を多数回繰り返して利用することにより、環境負荷低減と安全性とコスト削減を安定的に満たすことができる。
銀の回収方法のフローチャートである。 実施例で用いた回転撹拌槽の概略図である。 酸化再生時の酸化還元電位の測定値の経時変化例をグラフ化した図である。
以下に、本発明を適用した銀の回収方法について図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、特に限定がない限り、以下の詳細な説明に限定されるものではない。
1.溶解剥離工程
2.塩化銀生成工程
3.硝酸鉄再生工程
4.硝酸鉄(III)含有溶液調整工程
5.銀以外の金属回収工程
6.基材水洗工程
<銀の回収方法>
銀の回収方法は、銀又は銀合金によって表面が被覆された基材が対象である。処理対象としては、例えば、鉄合金基材の表面に銀又は銀系合金が塗布又は成膜された銀被覆基材を挙げることができる。処理対象は、その形状や大きさ、処理設備の形態や大きさに応じて、切断、裁断、破砕などの適切な前処理を施してから、銀を回収するための処理に供する。また、ゴミ、埃、油等が付着している場合は、付着物に応じた方法で事前に洗浄前処理を施すことが好ましい。
具体的に、処理対象としては、鉄合金基材に、銀と銅の合金からなる銀ロウを被覆した銀ロウ被覆基材がある。処理対象の銀ロウ被覆基材としては、鉄−ニッケル−コバルト合金製薄板材の表面に銀ロウを塗布した電子材料の加工屑やスペックアウト品など、あるいはこの材料を用いた製品のスクラップ等を挙げることができる。
なお、一般的な銀ロウは、銀に銅、亜鉛、スズ、などを加えて合金化したものである。例えば電子材料に用いられる銀ロウは、銀に10〜30%の銅が配合されている合金である。なお、電子材料に用いられる銀ロウは、亜鉛やスズが配合されていないか、配合されていても極微量である。
銀の回収方法については、銀ロウ被覆基材を例に挙げて説明する。なお、この銀の回収方法は、銀や銀合金を被覆した基材であれば同様に銀を回収することができる。
銀の回収方法は、図1に示すように、適切な前処理を施した銀ロウ被覆基材片に硝酸鉄(III)含有溶液を添加して銀ロウを溶解して剥離する溶解剥離工程と、溶解させた銀を塩化銀として生成する塩化銀生成工程と、溶解剥離工程後の溶液に含まれる2価の鉄イオンを3価の鉄イオンに酸化し、硝酸鉄(III)含有溶液を再生する硝酸鉄再生工程とを有する。また、銀の回収方法は、溶解剥離工程で剥離した鉄合金基材を水洗する基材水洗工程を有する。さらに、銀の回収方法は、硝酸鉄(III)含有溶液を再利用するにあたり、硝酸イオン濃度を調整する硝酸鉄(III)含有溶液調整工程を有する。
<1.溶解剥離工程>
溶解剥離工程は、適切な前処理を施した銀ロウ被覆基材片から銀ロウを溶解して、銀ロウを鉄合金基材から剥離する。この溶解剥離工程では、鉄合金基材片を溶解させず、また基材片を損傷させることなく、基材原料として再生利用できる形で銀ロウを剥離する。具体的に、溶解剥離工程は、溶解処理液に銀ロウ被覆基材片を浸漬させて、銀ロウを溶解させて鉄合金基材から銀ロウを剥離する。
溶解剥離工程で用いる溶解処理液には、硝酸鉄(III)を含有する水溶液、または後述する硝酸鉄再生工程で得られた硝酸鉄(III)を含有する水溶液(以下、それぞれを硝酸鉄(III)含有溶液という)を用いることができる。
溶解剥離工程では、下記の式1、式2に示す反応が生じる。なお、電子部品に用いられる銀ロウは、銀以外の銀合金成分の殆どが銅である。したがって、式2に銅の反応式を示す。
Fe(NO + Ag → Fe(NO + Ag(NO
・・・<式1>
2Fe(NO + Cu
→ 2Fe(NO + Cu(NO・・・<式2>
即ち、溶解剥離工程では、硝酸鉄(III)が酸化剤として働き、銀ロウ中の銀を硝酸銀として溶解させ、銅を硝酸銅として溶解させる。ここで、Fe3+がFe2+になる反応の標準酸化還元電位と、Agが還元されてAgメタルに戻る反応の標準酸化還元電位とは、ほぼ同じである。このため、溶解剥離工程では、式1に示す反応が進み、Fe2+やAgの濃度が上昇すると、式1の逆反応が生じ、一旦溶解した銀の析出反応が生じる。
そこで、発明者らは、溶解剥離工程で式1の逆反応を抑制するための条件を求めて試験を重ねた結果、溶解処理液に銀ロウ被覆基材を浸漬した状態、即ち溶解反応中における溶解処理液中のFe3+イオン量が、常にFe2+イオンの1.5倍量以上になるよう維持することが好ましく、2.5倍量以上になるよう維持することが更に好ましいことを見出した。
溶解処理液中のFe3+イオン量が、常にFe2+イオンの1.5倍量以上、好ましくは2.0倍量以上、更に好ましくは2.5倍量以上になるよう溶解処理液を維持する必要がある。即ち、溶解剥離工程では、単に溶解処理液中のFe3+が過剰となるように硝酸鉄(III)の濃度を高くするのではなく、銀の還元反応を抑制するのに最低限必要な硝酸鉄(III)の濃度とする。これにより、この溶解剥離工程では、硝酸鉄(III)含有溶液を必要量だけ使用すればよいため、硝酸鉄(III)含有溶液の処理する場合には環境への窒素負荷を許容範囲まで軽減する手間及びコストを削減することができる。また、本実施の形態では、後述するように硝酸鉄(III)含有溶液を再利用しているが、必要な量で繰り返し使用することができるためコストを削減することができる。
Fe3+濃度を常にFe2+濃度の1.5倍量以上となるように維持するとは、例えばバッチ式溶解剥離処理を例に挙げると、1バッチで処理する銀ロウ被覆基材片に含まれる銀や銅などの溶解対象となるメタル量を事前に把握し、これらを全て溶解する際に発生すると見積もられるFe2+イオン量の、2.5倍量以上のFe3+イオンを含む硝酸鉄(III)含有溶液始液を用いて溶解処理を開始する必要がある、ということである。Fe3+イオン量を常にFe2+イオンの2.5倍量以上になるよう維持するためには、発生すると見積もられるFe2+イオン量の3.5倍量以上のFe3+イオンを含む硝酸鉄(III)含有溶液始液を用いて処理を開始する。
なお、硝酸鉄(III)含有溶液中のFe2+、Fe3+を合わせた鉄濃度が10g/l(0.18mol/l)以下の場合でも、銀ロウを溶解する反応は行なえるが、処理する銀ロウ被覆基材量当たりに必要な液量が多くなり過ぎるため現実的ではない。また、鉄濃度が150g/l(2.67mol/l)以上になると、液の粘性や比重が高くなって、操業操作上、好ましくない。したがって、鉄濃度は、60〜90g/l(1.07〜1.60mol/l)が好ましく、60〜70g/l(1.07〜1.25mol/l)が更に好ましい。
溶解剥離工程では、溶解反応中においてFe3+濃度がFe2+濃度の1.5倍量以上に維持した状態で銀ロウを溶解させることで、銀を再び鉄合金基材に還元析出させず、銀を完全に溶解させることができ、かつ鉄合金基材を再利用できる形で銀ロウと分離することができる。
<2.塩化銀生成工程>
次に、銀及び銅が溶解した溶液から銀を塩化銀として生成及び回収する塩化銀生成工程を行う。具体的には、塩化銀生成工程は、溶液に溶け込んでいるAgイオンと当量以下の量の塩酸を溶液に添加して塩化銀を生成、沈殿させる。そして、塩化銀生成工程は、塩化銀沈殿物を溶液から固液分離することにより、銀ロウ由来の銀を回収する。その反応式を下記の式3に示す。
Ag(NO) + HCl → AgCl↓ + HNO ・・・<式3>
この塩化銀生成工程では、溶存するAgイオンの当量を超える塩酸を添加すると、添加後の液中に塩化物イオン(Clイオン)が残留することになる。この残留した塩化物イオンは、後述するように硝酸鉄(III)含有溶液を再生して、再び溶解剥離工程で使用して銀ロウを溶解する際に、塩化銀の沈殿を発生させてしまう。溶解剥離工程では、溶解途中の銀ロウ表面に塩化銀が析出すると、銀ロウと硝酸鉄(III)含有溶液との接触が妨害される可能性があり、好ましくない。したがって、塩化銀生成工程では、塩化銀生成後の液中にAgイオンが少量残留しているように塩酸の添加量を制御することが好ましい。
分離した塩化銀沈殿物は、水洗により付着液を除去した後、銀メタルの原料として再利用される。銀ロウ由来の銀以外の金属元素は、この塩化銀生成工程では除去されずに液中に蓄積することになる。
<3.硝酸鉄再生工程>
硝酸鉄再生工程は、溶解剥離工程で銀や銅の溶解反応により生成したFe2+イオンを、Fe3+イオンに酸化して、硝酸鉄(III)含有溶液を再生する。この硝酸鉄酸化工程は、塩化銀生成工程後に限らず、溶解剥離工程後であって塩化銀生成工程前に行っても問題はない。
硝酸鉄再生工程では、銀や銅の溶解後の溶液、例えば図1に示すように銀を除去した後の脱銀後液に酸化剤を供給して、Fe2+イオンを酸化する。供給する酸化剤としては、空気(中の酸素)が適している。その他の酸化剤としては、酸素濃縮装置などを介した酸素濃縮空気、純酸素、オゾン、過酸化水素等を挙げることができる。硝酸鉄再生工程は、Fe2+イオンをFe3+イオンにすることができればよく、条件は特に限定されない。なお、溶液を加温すると、常温の場合より反応が進みやすく処理時間を短縮できるので好ましい。
具体的には、銀を除去した後の脱銀後液(硝酸鉄溶液)の液温を45℃以上70℃以下に維持しながら、空気を吹き込むエアレーションを行い、Fe2+イオンを酸化する。このような方法では、3時間、あるいは1〜2時間程度の短時間で効率よく硝酸鉄(II)溶液を硝酸鉄(III)溶液へと酸化再生させることができる。
なお、液温が45℃未満では、短時間で酸化処理することが出来ず、同じ設備を用いてエアレーションを行っても3時間を超える時間を要し、ばらつきも多くなる。一方で、液温を45℃以上とすることで酸化反応が早くなり、3時間以内の短時間で安定して酸化再生処理をすることができる。
また、液温は、高くなるほどより迅速に酸化が進行するが、75℃を超えても蒸発による溶液の減少量が多くなることや加温にかかる熱量が増大してコストが増加するわりに再生速度が顕著に増加することはない。したがって、75℃以下の温度で酸化することが適している。
酸化の終点は、過マンガン酸カリウムを利用した酸化還元滴定法などによりFe2+イオン残存量を定量することにより判定することが好ましい。
エアレーション手段としては、図2に例示するようなエアー供給管4と撹拌羽根3の組み合わせの他に、エジェクタ方式の気液混合器の利用や、マイクロバブル発生装置の利用、などが考えられるが、これに限定されるものではない。
なお、銀の回収方法では、得られた硝酸鉄(III)含有溶液をそのまま溶解剥離工程で再利用してもよいが、次に説明するように、硝酸等を添加して濃度や液量を調整してもよい。
<4.硝酸鉄(III)含有溶液調整工程>
硝酸鉄(III)含有溶液の再利用の回数が少ない間は、得られた硝酸鉄(III)含有溶液をそのまま溶解剥離工程で再利用することができる。しかしながら、硝酸鉄(III)含有溶液をより多数回繰り返して利用するには、硝酸鉄再生工程後に、溶解剥離工程で溶解した銀以外の銀合金成分と当量の硝酸イオンを硝酸を添加することにより補充して、硝酸鉄再生工程で生成した硝酸鉄(III)含有溶液の硝酸イオンの濃度を調整する必要がある。なお、例えば電子材料に用いられる銀ロウは、銀以外の銀合金成分は殆どが銅であるため、以下では銅を例に挙げて説明する。
即ち、硝酸鉄(III)含有溶液調整工程では、硝酸鉄再生工程により生成した硝酸鉄(III)含有溶液を溶解剥離工程で再利用できるように、硝酸鉄の濃度を調整する。硝酸鉄(III)含有溶液調整工程は、硝酸鉄再生工程で得られた硝酸鉄(III)を含有する溶液に、銅により消費された硝酸イオンを補充するための硝酸や、水、更には硝酸鉄(III)を添加して、溶解剥離工程で再利用できる硝酸鉄(III)含有溶液に液性、液量を調整してもよい。
ここで、硝酸鉄(III)含有溶液調整工程における硝酸イオンの補充について説明する。溶解剥離工程にて式1で示される反応により溶解した銀のほぼ全量は、塩化銀生成工程で回収される。式2で示される反応により溶解した銅は、全量が硝酸鉄再生工程後の硝酸鉄(III)含有溶液中に残存する。即ち、硝酸鉄再生工程後の硝酸鉄(III)含有溶液では、溶解剥離工程にて溶解した銅の当量分の硝酸イオンが不足する。
発明者らは、硝酸鉄再生工程後の硝酸鉄(III)含有溶液に硝酸イオンを補充するための硝酸を添加せずに、硝酸鉄再生工程後の硝酸鉄(III)含有溶液を使用して溶解剥離工程から硝酸鉄再生工程までの処理を多数回重ねる試験を行った。その結果、硝酸イオンの不足が一定レベルを超えると、上述の硝酸鉄再生工程において酸化する際に、酸化中にFe3+イオンの一部が加水分解して沈殿が発生することを確認した。
なお、溶解剥離工程にて溶解した銀以外の銀合金成分と当量分の硝酸イオンを補填するために行う硝酸添加を、硝酸鉄再生工程の前に行うと、Fe2+イオンをFe3+イオンに酸化する反応速度が著しく遅くなることも確認した。
従って、硝酸鉄(III)含有溶液をより多数回繰返し利用するためには、硝酸鉄再生工程の後に、溶解剥離工程で溶解した銀以外の銅等の銀合金成分と当量の硝酸イオンを硝酸を添加することにより補填して、硝酸鉄再生工程で生成した硝酸鉄(III)含有溶液の硝酸イオン濃度を調整する必要がある。これにより、銀の回収方法では、硝酸鉄再生工程において沈殿の発生が抑えられ、かつ硝酸鉄(III)含有溶液を再利用できるため、低コストで効率良く硝酸鉄再生工程を行うことができる。
なお、硝酸鉄(III)含有溶液調整工程は、溶解剥離工程から硝酸鉄再生工程までの間に固液分離時の付着などでロスした分の硝酸鉄(III)や水も添加して、溶解剥離工程で再利用できる硝酸鉄(III)含有溶液に液性、液量を調整してもよい。
<5.銀以外の金属回収工程>
銀以外の金属回収工程は、再生した硝酸鉄(III)含有溶液に含まれている銅等の銀以外の金属を回収する。回収方法は、電気分解で析出させたり、水酸化物として沈殿させて回収する方法等を挙げることができる。この金属回収工程では、硝酸鉄(III)溶液調整工程で調整した水溶液から銅等の不純物を除去することができる。これにより、不純物を含まない硝酸鉄(III)含有溶液を溶解剥離工程で再利用することができる。
<6.基材水洗工程>
基材水洗工程は、溶解剥離工程で得られた銀ロウ分離後の基材片を水洗する。この基材水洗工程は、基材片を水洗して付着液を除去する。これにより、洗浄した基材片は、基材原料の鉄系合金として再利用することができる。
上述の銀の回収方法では、銀ロウ被覆基材を処理対象として説明したが、銀又は銀合金を被覆した基材の場合であっても同様に、基材を損傷させることなく、銀を回収することができる。例えば、銀を被覆した基材の場合には、硝酸鉄再生工程により得られた硝酸鉄(III)含有溶液から他の金属を除去する必要がないため、そのまま溶解剥離工程で再利用でき、また必要に応じて濃度調整を行うのみで再利用することができる。銀ロウの他に、銀と他の金属の合金の場合でも、上述の場合とほぼ同様であり、含まれている他の金属に合わせて金属の回収方法を選択すればよい。
以上のような銀の回収方法は、溶解剥離工程においてFe3+イオン量が、常にFe2+イオンの1.5倍量以上となるように維持することにより、Agの再析出を抑えることができ、基材への銀の残留量を安定的に少なくすることができる。また、この銀の回収方法では、溶解剥離工程にて基材を溶解させることなく、銀又は銀合金を完全に溶解して基材から剥離することができる。これにより、この銀の回収方法では、基材を再利用するあたり必要とされる銀品位にまで低減することができ、かつ損傷がなく、再利用できる形で基材を回収することができる。
また、銀の回収方法では、基材に被覆されていた銀又は銀合金を完全に溶解させ、銀の再析出を抑えることができるため、ほぼすべての銀を回収することができる。
更に、この銀の回収方法では、銀又は銀合金の剥離後の溶液に含まれている2価の鉄イオンを3価の鉄イオンに酸化し、硝酸鉄(III)含有溶液とすることで、溶解剥離工程で多数回再利用することができる。このため、この銀の回収方法で発生した硝酸を含む溶液は、使い捨てしないため、硝酸を処理する手間やコストを削減でき、更に環境への窒素負荷を軽減することができる。また、この銀の回収方法では、シアンを用いていないため、排水処理設備等を設ける必要がない。以上のことから、この銀の回収方法は、環境への負荷を軽減でき、安全で、経済的に銀を回収することができる。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例では、Fe−Ni−Co合金からなる板の表面に銀ロウを被覆した材料の加工屑である銀ロウ被覆基材片を原料とした。この原料の品位を以下の表1に示す。なお、分析はICP(Inductively Coupled Plasma)を用いて行なった。銀ロウ被覆基材片1kgに含まれる銀ロウ成分量は、銀が200g、銅が47gである。この量の銀ロウ成分を溶解する際に発生するFe2+イオンの量は、約3.3molになる。
Figure 2015221934
<実施例1>
実施例1では、銀ロウ被覆基材片1kgと、表2に示す濃度および液量の硝酸鉄(III)溶液を、容量30Lの図2に示すような撹拌用邪魔板付き回転撹拌槽1に投入し、20rpmの回転速度で3時間撹拌混合し、銀ロウを溶解剥離して溶解後の溶液と溶解残渣とからなるスラリーとした。
図2に示す撹拌槽1は、撹拌用邪魔板2を備えた容量30Lの撹拌槽である。撹拌槽1には、円板付撹拌羽根3、及び撹拌槽1の底部の中央から槽内に空気を送り込むエアー供給管4が取り付けられている。また、撹拌槽1には、溶液の液温を測る温度センサー5が取り付けられている。
次に、実施例1では、ヌッチェと濾瓶を用いて、溶解後の溶液と浸出残渣を分離し、浸出残渣を合計3Lの水で洗浄して、753gの基材片を回収した。この基材片の銀品位は、10ppm未満であり、新たな銀ロウ被覆基材の原料として再生できる品位であった。また、基材の溶解ロスは0.2%未満だった。さらに9.7L回収した溶解後の溶液にも、基材洗浄液中にも、沈殿物は全く観察されなかった。
引き続き、実施例1では、溶解後の溶液を容量15Lの撹拌羽根付き凝集沈殿槽に入れ、200rpmで撹拌しながら36重量%の塩酸(濃塩酸)130mlを投入し、塩化銀を生成し、固液分離した銀濃度3.1g/Lの脱銀後液を9.2Lを得た。
次に、この脱銀後液を図2に示す構成と同様の構成の容量20Lの回転撹拌槽1に入れ、液温を45℃に加温・維持しながら、エアー供給管5から空気曝気量10L/分で3時間かけて空気を供給し、硝酸鉄(III)の再生を実施した。その結果、液中残留するFe2+濃度は0.1g/L未満と、再利用に支障がないレベルにまで低下したことが確認できた。
<実施例2>
実施例2では、実施例1と同じ銀ロウ被覆基材片と、表2に示す濃度および液量の硝酸鉄(III)溶液を、実施例1と同じ回転撹拌槽に投入し、実施例1と同じ撹拌条件にて銀ロウの溶解剥離を実施した。
次に、銀ロウ分離後の基材片を実施例1と同様に水洗浄して、752gの基材片を回収した。この基材片の銀品位は、10ppm未満であり、問題なく銀ロウ被覆基材原料として再生できる品位であった。また、基材の溶解ロスが0.2%未満であることも確認できた。
実施例2では、銀ロウを溶解した後の溶液中に銀粉状物の析出が少し観察されたため、硬質濾紙とヌッチェと濾瓶を用いた吸引濾過を行った。その結果、9.5Lの溶解後の溶液を回収するとともに、析出した銀粉を洗浄・乾燥したところ乾燥状態で4.8gの銀粉を回収した。
引き続き、実施例2では、溶解後の溶液を実施例1と同じ凝集沈殿槽に入れて、実施例1と同様の撹拌条件で36重量%の塩酸180mlを投入し、塩化銀を生成し、固液分離して銀濃度4.7g/Lの脱銀後液を9.2L得た。
実施例2では、この脱銀後液を、実施例1と同じ回転撹拌槽に入れ、実施例1と同様の硝酸鉄(III)の再生を実施したところ、液中残留Fe2+濃度が0.1g/L未満と、再利用に支障がないレベルに低下できたことが確認できた。
<比較例1>
比較例1では、重量1kgの銀ロウ被覆基材片と、表2に示す濃度および液量の硝酸鉄(III)溶液を、実施例1と同じ回転撹拌槽に投入し、実施例1と同じ撹拌条件にて銀ロウを溶解剥離した。
次に、銀ロウ分離後の基材片を実施例1と同様に水洗浄して、752gの基材片を回収した。この基材片の銀品位は、100ppmとなり、そのままでは銀ロウ被覆基材原料として再生できない品位であった。
さらに、比較例1では、溶解後の溶液に銀粉状物の析出も多く観察されたため、実施例2と同様の方法で銀粉の回収を実施した。その結果、銀粉11.3gを分離した。
表2に、実施例及び比較例において、回収した基材片の銀品位、溶解剥離工程後の溶液に含まれていた銀粉量、溶解剥離工程後の溶液中の銀濃度をまとめた。溶解剥離工程後の溶液に含まれていた銀粉量は、銀の還元析出反応により一度溶解したAgの析出量といえる。
表2に示す結果から、実施例1では、銀ロウ被覆基材片に含まれていた銀のすべてが溶解しており、溶解剥離後の溶液には銀粉が含まれておらず、銀の還元反応が起きていないことがわかる。したがって、実施例1では、銀ロウ中の銀をすべて回収できることがわかる。また、実施例1では、基材片の銀品位が非常に低いことがわかる。
実施例2は、銀が多少析出したものの、ほとんどの銀が溶解した状態であり、充分に銀を回収できることがわかる。また、実施例2では、実施例1と同様に、基材片に残留する銀品位が非常に低いことがわかる。
一方、比較例1は、実施例と比べて、銀の析出量が多く、銀の溶解量が少ないため、回収できる銀の量が少なくなった。また、比較例1では、基材片の銀品位が非常に高くなった。
Figure 2015221934
(実施例3)
実施例3では、実施例1と同じ装置と材料を用いて実施例1と同じ方法で銀ロウ被覆基材を溶解し、脱銀した脱銀後液(硝酸鉄溶液)を得た。この脱銀後液(硝酸鉄溶液)を900ml分取し、容量2Lの図2に示すような回転撹拌槽1に入れて加温し、同時に撹拌槽1の底部の中央へエアー供給管4からエアレーションを行い、円板付撹拌羽根3を用いて撹拌して酸化した。
酸化の程度は、銀・塩化銀電極を参照電極として撹拌槽1中に装入し、銀−塩化銀電極を参照電極として測定した酸化還元電位(ORP)が、ほぼIII価の鉄イオンの形態となるORP810mVに到達するまでの時間で評価した。酸化還元電位の変化を図3に示す。なお、以降に示す酸化還元電位の値は、銀−塩化銀電極を用いた測定値である。
図3に示すように、脱銀後液を60℃に維持した場合には、酸化還元電位が810mV以上となるまでに1〜2時間程度の短時間で到達し、実施例1における3時間よりも早く酸化できた。
また、酸化終了時の脱銀後液(硝酸鉄溶液)中の鉄(II)濃度は、表3に示すように、酸化前の19g/lから0.1g/l未満に減少し、再利用に支障のないレベルにまで低下していることが確認できた。
(比較例2)
比較例2では、脱銀後液(硝酸鉄溶液)を室温に維持して酸化したこと以外は実施例3と同様にして行った。比較例2では、酸化に10時間以上の時間を要した。
実施例3及び比較例2の結果から、脱銀後液(硝酸鉄溶液)の液温を45℃以上に加温してFe2+の酸化を行う方が効率よく酸化できることがわかる。
Figure 2015221934
<実施例4>
実施例4では、銀ロウ被覆基材片1kgと、表4に示す組成の鉄濃度として67g/Lに調製した硝酸鉄(III)溶液10Lを、図2に示す容量30Lの撹拌用邪魔板付き回転撹拌槽1に投入し、20rpmの回転速度で3時間撹拌混合し、銀ロウを溶解剥離して溶解後の溶液と溶解残渣とからなるスラリーとした。
次に、実施例4では、ヌッチェと濾瓶を用いて、溶解後の溶液と浸出残渣を分離し、浸出残渣を合計3Lの水で洗浄して、753gの基材片を回収した。この基材片の銀品位は、10ppm未満であり、新たな基材原料として再生できる品位であった。また、基材の溶解ロスは0.2%未満だった。さらに9.7L回収した溶解後の溶液にも、基材洗浄液中にも、沈殿物は全く観察されなかった。回収した溶解後の溶液(溶解後液)の銀と銅の濃度を表4に示す。
引き続き、実施例4では、溶解後の溶液を容量15Lの撹拌羽根付き凝集沈殿槽に入れ、200rpmで撹拌しながら36重量%の塩酸(濃塩酸)145mlを投入し、塩化銀を生成し、固液分離した銀濃度1.1g/Lの脱銀後液9.5Lを得た。
次に、この脱銀後液を図2に示す構成と同様の容量20Lの撹拌曝気槽1に入れ、液温を55℃に加温・維持しながらエアー供給管5から空気曝気量10L/分で空気を供給し、3時間かけて硝酸鉄(III)の再生を実施した。その結果、液中に残留するFe2+濃度は0.1g/L未満となり、再利用に支障がないレベルにまで低下した。
硝酸鉄再生工程で得られた再生後液8.8Lの鉄と銅の濃度は、表4に示す値であったため、これに溶解剥離工程で液中に加わった銅量と当量分の硝酸(0.68mol分)と固液分離時の液ロスにより失った3価鉄45g分の硝酸鉄(III)試薬を補填した上で、液量を10.0Lに調整した。その後、2回目の溶解剥離工程へ繰り返した。調整後の硝酸鉄(III)溶液(調整後液)の組成を表4に示す。
硝酸鉄(III)溶液を繰返し液として用いる他は、1回目と同じ条件で原料1kgの溶解剥離処理を実施したところ、回収・水洗した基材片の銀品位は、10ppm未満であり、新たな基材原料として再生できる品位であった。この結果から、硝酸鉄再生工程後の硝酸鉄(III)溶液の硝酸イオン濃度を調整することにより、再利用した硝酸鉄(III)溶液であっても、銀合金を溶解し、再利用できる基材片が得られることがわかる。
<実施例5>
実施例5では、実施例4に準じて更に4回繰返し利用して、合計5回目の再生を行った後の硝酸鉄(III)溶液を用いる他は、実施例4と同様の溶解剥離処理を行った。5回目の再生を行った後の液の組成は表4に示す通りである。合計6回目の溶解剥離処理後に回収して実施例4と同様の洗浄処理を行った基材片の銀品位は、10ppm未満であり、新たな基材原料として再生できる品位であった。また、基材の溶解ロスは0.2%未満だった。さらに回収した溶解後の溶液にも、基材洗浄液中にも、沈殿物は全く観察されなかった。回収した溶解後の溶液(溶解後液)の銀と銅の濃度を表4に示す。
引き続き、回収した溶解後液を対象に、実施例4と同じ条件で塩化銀生成工程の処理を実施し、脱銀後液9.3Lを得た。更に脱銀後液に対して、実施例4と同じ処理条件で3時間の硝酸鉄(III)再生処理を実施した結果、液中に残留するFe2+濃度は0.1g/L未満となり、再利用に支障がないレベルにまで低下した。
硝酸鉄再生工程で得られた再生後液8.8Lの鉄と銅の濃度は、表4に示す値であったため、これに0.67mol分の硝酸と3価鉄63g分の硝酸鉄(III)試薬を補填した上で、液量を10.0Lに調整した。その後、合計7回目の溶解剥離工程を行った。調整後の硝酸鉄(III)溶液(調整後液)の組成を表4に示す。
硝酸鉄(III)溶液を繰返し液として用いる他は、1回目と同じ条件で原料1kgの溶解剥離処理を実施したところ、回収・水洗した基材片の銀品位は、10ppm未満であり、新たな基材原料として再生できる品位であった。この結果から、硝酸鉄再生工程の硝酸鉄(III)溶液の硝酸イオン濃度を調整することにより、再利用及び複数回酸化再生した硝酸鉄(III)溶液であっても、銀合金を溶解し、再利用できる基材片が得られることがわかる。
<比較例3>
比較例3では、溶解剥離工程と塩化銀生成工程は、実施例4に準じて行った。溶解剥離処理後に回収して実施例4と同様の洗浄処理を行った基材片の銀品位は、10ppm未満であり、新たな基材原料として再生できる品位であった。また、基材の溶解ロスは0.2%未満だった。更に、回収した溶解後の溶液(溶解後液)にも、基材洗浄液中にも、沈殿物は全く観察されなかった。回収した溶解後液の銀と銅の濃度を表4に示す。
引き続き、回収した溶解後液を対象に、実施例4と同じ条件で塩化銀生成工程の処理を実施し、脱銀後液9.5Lを得た。
ここで、比較例3では、硝酸鉄再生処理の前に、溶解剥離工程で液中に加わった銅量と当量分の硝酸(0.68mol分)を添加した後、実施例4と同じ処理条件で3時間の硝酸鉄(III)再生処理を実施した。その結果、液中Fe2+は3.2g/Lであり、そのまま次の溶解剥離工程には再利用できないレベルであった。したがって、硝酸の補填を硝酸鉄再生処理の前に行うと、酸化再生工程の反応効率が悪化し、硝酸鉄(III)溶液の再生利用を効率が悪く経済的に行うことができないことがわかる。この結果から、硝酸鉄再生処理の前に硝酸イオンの濃度を調整すると、Fe(III)イオンの再生及び硝酸鉄(III)溶液の再生利用の効率が悪くなることがわかる。
<比較例4>
比較例4では、溶解剥離工程と塩化銀生成工程を、実施例5に準じて行った。
溶解剥離処理後に回収して実施例4と同様の洗浄処理を行った基材片の銀品位は、10ppm未満であり、新たな基材の原料として再生できる品位であった。また、基材の溶解ロスは0.2%未満だった。更に、回収した溶解後の溶液にも、基材洗浄液中にも、沈殿物は全く観察されなかった。回収した溶解後の溶液(溶解後液)の銀と銅の濃度を表4に示す。
引き続き、回収した溶解後液を対象に、実施例4や実施例5と同じ条件で塩化銀生成工程の処理を実施し、脱銀後液9.4Lを得た。
ここで、比較例4では、比較例1と同様、硝酸鉄再生処理の前に、溶解剥離工程で液中に加わった銅量と当量分の硝酸(0.67mol分)を添加した後、実施例4と5と同じ処理条件で3時間の硝酸鉄(III)再生処理を実施した結果、液中Fe2+は5.4g/Lと、そのまま次の溶解剥離工程には再利用できないレベルであった。この結果から、硝酸鉄再生処理の前に硝酸イオンの濃度を調整し、溶解剥離工程から塩化銀生成工程を複数回繰り返すと、Fe2+の濃度が更に高くなり、Fe(III)イオンの再生及び硝酸鉄(III)溶液の再生利用を効率がより悪くなることがわかる。





































Figure 2015221934
以上のことから、本発明を適用することによって、シアンのような有毒物を使用することなく、鉄系合金基材表面に塗布又は成膜した銀系合金を、基材を損ねることなく溶解分離して、銀の回収率が高く、基材も銀もそれぞれ経済的に回収して再生利用できることがわかる。また、本発明を適用することによって、Fe2+を酸化する際に、脱銀後液の液温を45℃以上、70℃以下の範囲内にすることで、酸化を短時間で行うことができ、効率良く銀を回収できることがわかる。また、本発明を適用することによって、硝酸鉄再生工程後に、溶解剥離工程で溶解した銀以外の銀合金成分と当量の硝酸イオンを補充することによって、硝酸鉄(III)溶液を多数回繰返し利用することができ、酸化鉄再生工程を効率良く行うことができる。
1 回転撹拌槽、2 撹拌用邪魔板、3 円板付撹拌羽根、4 エアー供給管、5 温度センサー

Claims (7)

  1. 銀又は銀系合金を被覆した基材に硝酸鉄(III)含有溶液を添加し、該銀又は銀系合金を溶解させ、該基材から該銀又は銀系合金を剥離する溶解剥離工程と、
    上記銀又は銀系合金が溶解した溶液に塩酸を加えて、塩化銀沈殿物を生成する塩化銀生成工程と、
    上記溶解剥離工程後の上記溶液に含まれる2価の鉄イオンを3価の鉄イオンに酸化し、硝酸鉄(III)含有溶液を再生する硝酸鉄再生工程とを有し、
    上記溶解剥離工程では、上記基材を添加した後の上記硝酸鉄(III)含有溶液中のFe3+濃度がFe2+濃度の1.5倍量以上となるように維持し、
    上記硝酸鉄再生工程で生成した硝酸鉄(III)含有溶液を上記溶解剥離工程で使用することを特徴とする銀の回収方法。
  2. 上記Fe3+濃度をFe2+濃度の2.5倍量以上に維持することを特徴とする請求項1に記載の銀の回収方法。
  3. 上記硝酸鉄再生工程は、上記塩化銀生成工程後に行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の銀の回収方法。
  4. 上記硝酸鉄再生工程後に、該硝酸鉄再生工程で生成した硝酸鉄(III)含有溶液の濃度を上記溶解剥離工程に使用する硝酸鉄(III)含有溶液の濃度に調整する硝酸鉄(III)含有溶液調整工程を更に有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の銀の回収方法。
  5. 上記銀系合金を被覆した基材とは、銀ロウを被覆した鉄合金であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の銀の回収方法。
  6. 上記硝酸鉄再生工程では、上記溶解剥離工程後の上記溶液の液温を45℃以上、70℃以下とすることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の銀の回収方法。
  7. 上記硝酸鉄(III)含有溶液調整工程では、上記溶解剥離工程で溶解した銀以外の銀合金成分と当量の硝酸イオンを硝酸を添加することにより補充して、該硝酸鉄再生工程で生成した硝酸鉄(III)含有溶液の硝酸イオン濃度を調整することを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の銀の回収方法。
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