JP2011032517A - Snめっき金属材料からSnを分離させる方法 - Google Patents

Snめっき金属材料からSnを分離させる方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Snめっき金属材料からSnを分離させる化学的処理に伴って二次廃棄物や廃棄物ができてしまうのを抑える。
【解決手段】水酸化ナトリウムの溶融塩を収容した反応槽1にSnめっき廃材Wを浸漬することで、短時間にSnめっき層のSnが溶融塩中に溶出する。反応槽1の中の溶融塩には酸素が供給される。酸素を供給して酸素雰囲気で処理することで、溶融塩中に溶出したSnの化合物はSn酸化物が主体となって沈殿すると共に反応によって生成されるH2Oで、溶融塩中の酸化ナトリウムが水酸化ナトリウムに再生される。
【選択図】図1

Description

本発明は、錫(Sn)めっきした金属材料からSnを分離させる方法に関し、典型的には、金属基材は銅又は銅合金であるが、アルカリ溶媒に対して安定な金属、例えば鉄系金属であってもよい。
錫(Sn)めっきは、金属基材の耐蝕性、半田付け性、電気的特性を向上する目的でリードフレームなどの電子部品や半導体部品などに多用されており、特に銅又は銅合金の表面処理に適用されている。
錫めっき金属材料をプレス加工してリードフレームを作る場合に、型抜きされた廃材や廃棄された錫めっき電子部品などから錫(Sn)や基材金属を回収する技術として様々な提案が行われているが十分に確立しているとは言えないのが現状である。
特許文献1は、従来から錫めっき金属材料を弗酸や塩酸或いは硝酸などの強酸の酸性溶液に浸漬して化学的に処理することで、これらの酸と錫(Sn)とを反応させてSnを酸化物(SnO)として金属基材から分離させることが行われていたことを紹介している。そして、この特許文献1は、酸化物(SnO)が強酸の酸性容器の底にスラッジとして沈降する問題点を指摘して、このスラッジに含まれるSnを回収する方法を提案している。
特許文献2は、錫めっきした銅又は銅合金から錫を分離させる方法を提案している。具体的には、特許文献2の方法は、錫めっきした銅又は銅合金の表面を粗くする前処理を行い、次いで、錫めっきした銅又は銅合金の表面から錫を分離するSn分離工程を含む。
前処理工程では、炭酸カリウム溶液や水酸化ナトリウム溶液などの強塩基の溶液が使用され、好ましくは、この前処理溶液を加熱した状態で前処理工程が実施される。他方、錫分離工程では、硫酸もしくは硝酸又は硝酸の混合水溶液に銅イオン(2価)を含んだpH0.01〜1.0の溶液が使用され、好ましくは、この溶液を加熱した状態で分離工程が実施される。錫分離工程では、錫めっきした銅又は銅合金が分離用溶液に浸漬され、次の反応式で表される酸化還元反応によって錫イオン(Sn2+)が生成され、この錫イオン(Sn2+)は硫酸イオンや過酸化水素と反応することで硫酸錫又は酸化錫として沈殿する。
Cu2++Sn→Cu+Sn2+
これにより、Snめっきした基材金属の銅又は銅合金から錫(Sn)を分離させて、基材金属及び錫(Sn)を回収することができる。
特開平11−92839号公報 特開2008−184675号公報
本発明の目的は、Snめっき金属材料からSnを分離させる処理に伴って二次廃棄物や廃棄物ができてしまうのを抑えることのできる処理方法を提供することにある。
上記の技術的課題は、本発明によれば、
錫めっき金属材料から錫を化学的処理により分離させる錫分離方法であって、
水酸化ナトリウムを主体とした溶融液を用意し、
該溶融液に前記錫めっき金属材料を浸漬させ、
該錫めっき金属材料の錫めっき層が消失したら、前記溶融液から基材金属を取り出すことを特徴とする錫分離方法を提供することにより達成される。
溶融液の中で錫めっき金属材料のSnめっき層は短時間に腐食してSnが溶出する。溶出したSnはSn化合物となって沈殿することから、この沈殿物を溶融液から取り出すことで、Snを回収することができる。
また、Sn(錫)の溶解に伴う水素発生反応によって、水酸化ナトリウムは酸化ナトリウムに変化する。この酸化ナトリウムは、溶融液に水蒸気を供給することで水酸化ナトリウムに再生することができる。
したがって、本発明の錫分離方法によれば、錫めっき金属材料から錫(Sn)を分離させる化学的処理に伴って二次廃棄物や廃棄物ができてしまうのを抑えることができる。
溶融液にSnが溶出することで生成されるSn化合物は様々な態様となる。したがって、溶融液の雰囲気を一定にするのが好ましい。不活性ガスを溶融液に供給して不活性雰囲気でSnの溶出を行ったときには、Sn化合物は固形のSn水酸化物やSn酸化物が多くなり、溶融液中で沈殿することから、この沈殿物を溶融液から取り出して濾過(フィルタリング)することで簡単に回収することができる。回収したSn化合物は錫めっき用の薬剤として再度使用することができる。
変形例として、溶融液に空気又は酸素を供給して空気又は酸素雰囲気で処理するときには、Sn化合物としてSn酸化物が一層優勢になるだけでなく、H2Oの生成を伴うことから、このH2Oによって、上述した溶融液中の酸化ナトリウムを水酸化ナトリウムに再生することができる。
溶融液は、水酸化ナトリウム100%の溶融液であってもよいが、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合塩であってもよい。混合塩を使用することで融点が比較的低くなるため、錫めっき金属材料から錫を化学的処理により分離させるときの処理温度を比較的低く設定することができる。
Snめっき金属材料からSnを分離する処理方法の実施に用いられる反応槽及びこれに関連した構成を説明するための概念図である。
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
Snめっき金属材料の典型例であるSnめっき銅又は銅合金を例に本発明の実施例を説明する。処理対象のSnめっき銅又は銅合金を以下に「Snめっき廃材」と呼ぶ。実施例の方法は、前洗浄工程と、次の錫分離工程と、次の後処理工程とを含む。前洗浄工程では、Snめっき廃材の表面に付着している油脂などの汚れを洗浄する処理が行われる。次の錫分離工程では、水酸化ナトリウムを主成分とする溶融塩にSnめっき廃材を浸漬することで行われる。
図1は、Sn分離工程で使用される反応槽の概要を示す。図1を参照して、反応槽1は、図外のボイラから供給される蒸気が巡回する加熱管2を有する開放容器で構成され、この加熱管2による加熱によって反応槽1の水酸化ナトリウム溶融塩が生成される。この溶融塩の温度は融点〜600℃であるのがよい。反応槽1の溶融塩は、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合塩の溶融塩であってもよい。混合塩は融点が下がるため、Snめっき廃材を処理するときの温度を比較的低温に設定することができる。
反応槽1には、溶融塩の雰囲気を生成するために、空気(又は酸素O2)又は不活性ガス(例えば窒素ガス)を反応槽1の中に供給するガス供給管3が配設されている。
反応槽1では、水酸化ナトリウムを主体とした溶融塩の中でSnめっき廃材Wが選択的に且つ高速に腐食する。すなわち、下記の化学式(1)〜(3)に基づいてSnが溶出し、基材金属である銅又は銅合金は金属の状態で残存する。
化学式(1): Sn+8NaOH→Sn(OH)4+4Na2O+2H2
化学式(2): Sn+8NaOH→SnO2・2H2O+4Na2O+2H2
化学式(3): Sn+4NaOH→Na4SnO4+2H2
溶融塩中に溶出したSn化合物は様々な態様で存在する可能性がある。このことから、Sn化合物の態様を規定するために、ガス供給管3を通じて不活性ガスや酸素又は空気を溶融塩中に供給して雰囲気を一定するのがよい。
ガス供給管3を通じて窒素ガスなどの不活性ガスを溶融塩中に供給して不活性雰囲気でSnめっき廃材Wを処理した場合には、溶融塩中に溶出したSnの化合物はSn酸化物が主体となる。
また、空気(又は酸素)を溶融塩中に供給して空気(又は酸素)雰囲気でSnめっき廃材Wを処理したときには、溶出した2価のSnイオンが溶存酸素によって極めて迅速に下記の反応が生じて4価の酸化錫になると考えられる。
化学式(4): Sn(OH)2+(1/2)O2→SnO(OH)2→SnO2+H2O
酸素(又は空気)雰囲気中で溶出したSnの化合物は、不活性雰囲気よりもSn酸化物が優勢になる。このようなSn化合物は固体沈殿物となって溶融塩中に存在することから、固体沈殿物を反応槽1から取り出して濾過することで固体沈殿物であるSn化合物を回収することができる。回収したSn化合物は例えば錫めっき用の薬剤として再度利用することができる。
水酸化ナトリウムを主体とした溶融塩は、上記の化学式(1)〜(3)から分かるように、Sn(錫)の溶解に伴う水素発生反応によって、徐々に、酸化ナトリウムに変化する。この酸化ナトリウムを水酸化ナトリウムに再生させるために、溶融塩に水蒸気を供給するのが好ましい。酸化ナトリウムを水蒸気によって水酸化ナトリウムに再生することで、基本的には、水酸化ナトリウムを補充する必要が無くなる。
図1を参照して、反応槽1には、水蒸気(H2O)を溶融塩中に供給する水蒸気供給管4が配設され、この水蒸気供給管4を通じて反応槽1の中の溶融塩に水蒸気を供給することができる。水蒸気の供給による水酸化ナトリウムの再生は次の化学式(5)によって表すことができる。
化学式(5): Na2O+H2O→2NaOH
上述した酸素雰囲気又は空気雰囲気で錫(Sn)を分離処理した場合に、化学式(4)から分かるように、H2Oが生成される。したがって、酸素又は空気雰囲気でSnを溶出させる処理は、これに伴って生成されるH2Oによって、反応槽1中の酸化ナトリウムを水酸化ナトリウムに再生することができるという利点がある。
図1を再び参照して、反応槽1に隣接して予熱セクションが用意される。前述した前洗浄工程で表面の油脂等を除去したSnめっき廃材は、予熱セクションで加熱され、この予熱したSnめっき廃材が反応槽1に投入される。予熱セクションを用意することで、反応槽1での処理時間を短縮することができる。また、反応槽1に隣接して後処理セクションが用意される。反応槽1に存在する基材金属である銅又は銅合金、つまり分離工程が終わってSn(錫)を取り除いた銅又は銅合金は、反応槽1から取り上げられて後処理セクションに搬送される。
後処理セクションでは、反応槽1から取り出した基材金属(銅又は銅合金)を例えば遠心分離機に入れて、この基材金属に付着している溶融塩の回収が行われ、回収した溶融塩は反応槽1に戻される。次いで、基材金属の銅又は銅合金は水を使って洗浄される。洗浄に使用した水は、残渣を取り除いた後に水蒸気源に戻される。また、残渣は水酸化ナトリウム塩として回収及び再利用される。
上述した説明から分かるように、実施例の方法によれば、基本的に水酸化ナトリウムの補充無しに錫めっき廃材から錫(Sn)を分離させて、基材金属である銅又は銅合金を回収することができ、また、Sn化合物としてSnを回収することができる。そして、このSn分離の処理において二次廃棄物や廃棄物(廃液を含む)ができてしまうのを抑えることができる。
実験室で行った具体例を次に説明する。基材金属が黄銅の錫めっき金属を使用した。溶融塩は水酸化ナトリウム溶融塩を使用した。反応槽1の溶融塩の温度は約500℃であった。反応槽1に錫めっき黄銅を浸漬して約10分で錫めっき層が完全に消失した。錫めっき層の消失を確認した後、直ちに反応槽1から基材金属(黄銅)を取り出した。取り出した黄銅の表面は、成分金属である亜鉛の溶出が若干認められたが、その影響はごく表層だけであり、表面を僅かに研磨することで無垢のバルク材と同じになった。なお、反応槽1から固体の沈殿物を取り出して、この沈殿物を水溶液に溶解させて電気分解を行ったところ、陰極に錫(Sn)が析出することが確認できた。
比較例として、一般的な水溶液(例えば塩酸と過酸化水素溶液や硫酸銅水溶液)に錫めっき黄銅を浸漬したが、錫めっき層は耐蝕性が高いために、このめっき層が消失するのに数日を要した。また、アノード電気分解によって錫めっき層を短時間に溶出させてみたが、基材金属が多量に損失し、また、処理後の基材金属の表面性状も一様でなかった。
電子部品で多用されている錫めっき銅又は銅合金の廃材から錫及び基材金属を回収するのに効果的に利用できる。
1 反応槽(Snの分離工程)
3 反応槽の中の溶融塩の雰囲気を空気(又は酸素)又は窒素ガスなどの不活性雰囲気にするためのガス供給管
4 反応槽の中の溶融塩に水蒸気を供給する水蒸気供給管

Claims (6)

  1. 錫めっき金属材料から錫を化学的処理により分離させる錫分離方法であって、
    水酸化ナトリウムを主体とした溶融液を用意し、
    該溶融液に前記錫めっき金属材料を浸漬させ、
    該錫めっき金属材料の錫めっき層が消失したら、前記溶融液から基材金属を取り出すことを特徴とする錫分離方法。
  2. 前記溶融液に空気又は酸素を供給しながら、前記錫めっき金属材料を前記溶融液に浸漬する、請求項1に記載の錫分離方法。
  3. 前記溶融液に不活性ガスを供給しながら、前記錫めっき金属材料を前記溶融液に浸漬する、請求項1に記載の錫分離方法。
  4. 前記溶融液が水酸化ナトリウム100%の溶融液である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の錫分離方法。
  5. 前記溶融液が水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの混合塩の溶融液である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の錫分離方法。
  6. 前記溶融液に水蒸気を供給して、溶融液中の酸化ナトリウムを水酸化ナトリウムに再生する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の錫分離方法。
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