JP6224601B2 - WC−Co超硬合金溶解用の溶融塩浴、並びにタングステン、コバルトの分離回収方法 - Google Patents

WC−Co超硬合金溶解用の溶融塩浴、並びにタングステン、コバルトの分離回収方法 Download PDF

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Description

本発明は、WC−Co超硬合金からタングステン及びコバルトを分離回収するために用いる溶融塩浴に関し、さらには、溶融塩浴を用いて溶解したWC−Co超硬合金からタングステン及びコバルトを分離回収する方法に関する。
従来、タングステンは、高い融点と弾性率を有することから、フィラメント材料やタングステン炭化物(WC)の原料として広く用いられている。特に、WCは、コバルト等の金属を結合相とする超硬合金の材料として広く用いられている。
ところで、タングステンは、産出地域が偏在するばかりか産出量も少量であるので、安定した供給が困難であり、しかも、僅かの需要の変動で大きく価額が変動する。また、コバルトは、強磁性に由来する磁石材料として、さらには、耐熱鋼やWC−Co超硬合金の添加元素として極めて有用である。このコバルトも、タングステンと同様に、産出地域が偏在するばかりか産出量も少量であるので、安定した供給が困難であり、しかも、僅かの需要の変動で大きく価額が変動する。
このような実情から、タングステン、コバルトの安定した供給を実現するため、タングステン及びコバルトを材料とするWC−Co超硬合金の廃材からタングステン及びコバルトを回収することが有益である。
従来、WC−Co超硬合金の廃材からタングステンを回収する方法として以下のような方法が提案されている。
その一つとして、WC−Co超硬合金の廃材を、塩化第二鉄、 硝酸第二鉄、又は塩化第二銅の溶液、又はこれらの溶液に無機酸を添加した溶液を用いて80℃以下の温度で浸漬することによって、結合相を構成するコバルトを溶出し、残渣を粉砕して炭化タングステン粉を回収する方法がある(特許文献1)。
他の方法として、WC−Co超硬合金の廃材を、塩化第二鉄と塩酸を含む溶液を用い、81℃〜100℃の温度で、結合相を構成するコバルトを溶出させて炭化タングステンを回収する方法がある(特許文献2、3)。
さらに他の方法として、WC−Co超硬合金の廃材を、亜鉛(Zn)やスズ(Sn)等の溶融金属中に浸漬し、結合相を構成するコバルトを膨潤させて、WC粒子に分割し、その後、ZnやSnを蒸発させることでWCを回収し、この回収したWCをWC−Co超硬合金の材料として再び利用する方法がある(非特許文献1)。
上述したいずれの方法も、炭化タングステンを主体とする超硬合金から炭化タングステンを回収するものであって、タングステンとコバルトを単独で回収するものではなく、炭化タングステンを主体とする超硬合金の材料に用いられるにすぎず、超硬合金以外の資源として再利用することは困難である。
そこで、超硬合金のみならず、多様な金属素材の資源として用いることを可能とするため、WC−Co超硬合金から再び純粋なタングステン及びコバルトを分離抽出する方法が検討されている。
その一つとして、WC−Co超硬合金を酸に浸出させ、その後、タングステン製錬の技術を適用して、タングステンとコバルトに分離する方法が検討されている。同様にして、超硬合金を溶融純硝酸ナトリウム(NaNO)に浸漬して溶解した後、タングステン製錬の技術を適用してタングステンとコバルトに分離する方法が検討されている。この方法を採用することにより、WC−Co超硬合金から再び純粋なタングステンとコバルトを分離回収することができる(特許文献4、5)。
特公昭56−36692号公報 特開2009−179818号公報 特開2009−191328号公報 国際公開第2010/104009号公報 特開2002−198104号公報
廃棄超硬合金粉末を用いた再生超硬合金の製造技術とその特性,岩手県工業技術センタ−研究報告、No.10,(2003),pp.37-40. 天満屋泰彦,希少金属等高効率回収システム開発事業「廃超硬工具からのタングステン等の回収」,金属資源レポート,2008年11月,Vol.38, No.4,p.407-413 川北晃平 他,廃超硬工具からのタングステン等の回収,環境資源工学会シンポジウム「リサイクル設計と分離精製技術
従来提案されている超硬合金を酸に浸出させてタングステンとコバルトを回収する方法にあっては、超硬合金の酸への浸出速度が遅く、工業的な利用には適さないばかりか、コストが高くなってしまうという問題点がある。
また、NaNOは融点が比較的高いため、NaNOを1000K付近まで加熱して超硬合金を溶解する必要がある。このような高温度では、溶融NaNOの蒸発損失が大きく、超硬合金の溶解に用いる反応プラント容器を構成するステンレス鋼の腐食劣化が著しいという問題点がある。そして、1000K付近では、溶融NaNOの蒸発と同時に爆発性気体の過酸化ナトリウム(Na)に分解する問題点がある。
本発明はかかる問題点に鑑み提案されるものであって、本発明の技術課題は、WC−Co超硬合金を低温で溶解することを可能とし、超硬合金の溶解に用いるステンレス鋼等の鋼材により形成した反応プラント容器の腐食損傷を低減することができ、しかも蒸発損失の小さい溶融塩浴を提案することにある。
さらに、本発明の技術課題は、低温で、しかも蒸発損失の小さい溶融塩浴を用いて溶解したWC−Co超硬合金を湿式処理技術を用いて処理することにより、WC−Co超硬合金から純粋なタングステン(W)とコバルト(Co)を分離回収することにある。
上述した課題を解決するため、本発明者等は鋭意研究の結果、低温で効率の良くWC−Co超硬合金の溶解を可能とする溶融塩浴を実現したものであって、この溶融塩浴は、溶融アルカリ塩化物と溶融アルカリ硝酸塩を適当な組成で配合したものであって、アルカリ塩化物MCl(M=Li,Na,K)の群から選択されるアルカリ塩化物を1mol%以上含有し、アルカリ硝酸塩NNO (N=Na,K)の群から選択されるアルカリ硝酸塩を99mol%以下含有している。本発明に係る溶融塩浴において、アルカリ塩化物は、アルカリ塩化物MCl(M=Li,Na,K)の群から2種以上選択し、前記アルカリ塩化物は、前記アルカリ硝酸塩NNO (N=Na,K)の群から1種以上選択して構成することが望ましい。
ところで、アルカリ塩化物とアルカリ硝酸塩は、その極性から均一に溶融することが困難である。そこで、本発明者等は、以下の点に着目してアルカリ塩化物とアルカリ硝酸塩が均一に溶融し得ることを見出した
本発明に係る溶融塩浴は、溶融アルカリ塩化物を溶媒塩とし、溶融アルカリ硝酸塩を溶質塩とし溶融アルカリ塩化物中に溶融アルカリ硝酸塩を溶融した。この溶融塩浴は、溶融アルカリ塩化物中に溶融アルカリ硝酸塩が均一に溶融されている。ここで均一溶融とは、溶融塩中に一部固相が晶出した状態を含む。また、複数の分離液相がエマルジョン状態やミセル状態で混和している状態を含む。
そして、溶融アルカリ塩化物と溶融アルカリ硝酸塩は、適当な組成で配合することにより、773K以下の融点とすることができ、しかもその蒸発損失を低減することができる。このように融点を低下し、蒸発損失の低減が図られた溶融アルカリ塩化物と溶融アルカリ硝酸塩の混合塩化物は、超硬合金の溶解に用いるステンレス鋼等の鋼材により形成される反応プラント容器の腐食による損傷を抑制することができ、WC−Co超硬合金を溶解する溶融塩浴に用いて有用である。
溶融アルカリ塩化物中に酸化剤としての溶融アルカリ硝酸塩を溶融した本発明に係る溶融塩浴中にWC−Co超硬合金を浸漬すると、WC−Coの結晶粒子の最表面が逐次、WO,CoとCoOの2成分酸化物、及びCoWOの3成分複酸化物に酸化し、WC−Co超硬合金の溶解が行われる。
なお、本発明に係る溶融塩浴を構成する溶融アルカリ塩化物と溶融アルカリ硝酸塩は、相補関係にある。
従来、WC−Co超硬合金の溶融塩浴として提案されているNaNOのみを溶融した純溶融NaNOを溶融塩浴として用いたとき、この溶融塩浴にWC−Co超硬合金を浸漬すると、WC−Coの結晶粒子の最表面にNaWOからなる酸化物層が緻密化して堆積する。ここで生成されるNaWOの融点は1000K付近にある。したがって、WC−Coの結晶粒子の表面を被覆するNaWOを溶融するには、溶融NaNOを1000K付近まで加熱する必要がある。溶融NaNOは、1000K付近まで加熱されると激しく蒸発し、かつ爆発性気体のNaに熱分解する。すなわち、純溶融NaNOからなる溶融塩浴は、超硬合金の溶解に用いるステンレス鋼等の鋼材により形成される反応プラント容器が腐食劣化を受けることがない低温の773K以下の温度でWC−Co超硬合金を溶解させることができない。
一方、本発明に係るWC−Co超硬合金溶解用の溶融塩浴は、WC−Co超硬合金の結晶粒子の最表面に生成される酸化物層中の酸化物イオンの位置を塩化物イオンが置換する効果がある。そのため、WC−Co結晶粒子の最表面に生成される酸化物層をオキシタングステンクロライド錯イオンに変化させ、タングステン成分を溶融塩中に迅速に溶解することを可能とする。
そこで、本発明方法は、溶融アルカリ塩化物中に溶融アルカリ硝酸塩を溶融した溶融塩浴中にWC−Co超硬合金を浸漬し、このWC−Co超硬合金を浸漬した溶融塩浴を650〜1000Kまで昇温し、この昇温した状態を一定時間保持して上記溶融塩浴中にWC−Co超硬合金を溶解し、次いで、WC−Co超硬合金が溶解した上記溶融塩浴を凝固して凝固塩を生成し、その後、凝固塩に加水して生成された水溶液を濾過し、この水溶液中から、WC−Co超硬合金が溶解して析出されたタングステン由来のタングステン錯塩と、コバルト由来のコバルト酸化物を分離回収するようにしたものである。
本発明方法は、その後、上述の工程で分離回収されたタングステン由来のタングステン錯塩と、コバルト由来のコバルト酸化物をそれぞれ精製することにより、純粋なタングステン及びコバルトが分離回収される。
本発明に係る溶融塩浴は、(1)融点の低温化を実現し、(2)溶融塩の蒸発損失と熱分解の低減と超硬合金の溶解に用いる反応プラント容器を構成する材料の腐食劣化を抑制し、(3)WC−Co超硬合金の加速度的な溶解を実現し、(4)WC−Co超硬合金を溶解した溶解物に対して所定の精製処理を行うことにより、純粋なタングステンと純粋なコバルトを容易に分離回収することを可能とする。
本発明に係る溶融塩浴を用いて超硬合金を溶解して得られる凝固塩を濾過した濾過液にCaClを加えて析出されたCaWOをX線分光分析(XRD)した結果を示す図である。 本発明に係る溶融塩浴を用いて溶解した超硬合金から得られるCaWOを、353Kの沸騰塩酸に浸漬して析出したHWOをX線分光分析(XRD)した結果を示す図である。 沸騰塩酸に析出し回収したHWOをアンモニア水に浸漬し24時間静置させた後回収したAPT(パラタングステン酸アンモニウム(NH10(H1242))を示す写真である。 APTを873Kで2時間、熱分解して生成されたWOをX線分光分析(XRD)した結果を示す図である。 APTを873Kで2時間、熱分解して生成されたWOを、1123Kで1.5時間水素熱還元して生成した生成物をX線回折した結果を示す図である。 超硬合金を溶融塩浴を凝固した凝固塩に温水を加えて濾過し、濾紙上の残滓 として回収した酸化コバルト粉体を水素熱還元した生成物をX線分光分析(XRD)した結果を示す図である。
〔溶解塩浴〕
まず、WC−Co超硬合金を溶解するために用いられる本発明に係る溶融塩浴の実施の形態を説明する。
本発明に係る溶融塩浴は、溶融アルカリ塩化物中に溶融アルカリ硝酸塩を均一溶融したものある。この溶融塩浴を構成するアルカリ塩化物には、MCl(M=Li,Na,K)の群から選ばれる少なくとも2種以上が選択され、アルカリ硝酸塩には、NNO(N=Na,K)の群から選ばれる少なくとも1種が選択される。さらに具体的には、溶融アルカリ塩化物を溶媒塩とし、溶融アルカリ硝酸塩を溶質塩とし、溶融アルカリ塩化物中に溶融アルカリ硝酸塩を均一溶融した。
この溶融塩浴の組成は、MCl(M=Li,Na,K)の群から選択される2種以上のアルカリ塩化物を1mol%以上とし、NNO(N=Na,K)の群から選択されるアルカリ硝酸塩の少なくとも1種を99mol%以下とし、これらアルカリ塩化物とアルカリ硝酸塩を均一溶融した。
ここで、MCl(M=Li,Na,K)の群から選択される2種以上のアルカリ塩化物を1〜81mol%含有し、NNO(N=Na,K)の群から選択されるアルカリ硝酸塩の少なくとも1種を99〜19mol%含有して均一溶融することが望ましい。
そして、本発明に係る溶融塩浴は、溶融アルカリ塩化物を溶媒塩とし、溶融アルカリ硝酸塩を溶質塩として溶融したとき、アルカリ塩化物とアルカリ硝酸塩とが均一に溶融されればよく、アルカリ塩化物とアルカリ硝酸塩の溶融割合は上述した範囲で適宜選択される。
特に、本発明に係る溶融塩浴は、MCl(M=Li,Na,K)の群から選択される2種以上のアルカリ塩化物と、NNO(N=Na,K)の群から選択されるアルカリ硝酸塩の少なくとも1種は、融点が773k以下となる組成比で均一溶融されている。
本発明に係る溶融塩浴において、MCl(M=Li,Na,K)の群から選択されるアルカリ塩化物は、高温操業時の蒸発損失の低減を図り、溶融塩浴の低融点化を実現し、WC−Co超硬合金の表面に生成した固体酸化物被膜をオキシタングステンクロライド錯イオンとして溶融塩中へ溶解する機能を有する。また、NNO(N=Na,K)の群から選択されるアルカリ硝酸塩は、WC−Co超硬合金の表面を酸化する機能を有する。
本発明に係る溶融塩浴は、上述した溶融塩浴を構成するアルカリ塩化物として、MCl(M=Li,Na,K)の群から選択される2種以上とCsClとを含有したものであってもよい。アルカリ塩化物として、MCl(M=Li,Na,K)の群から選択される2種以上とCsClを含有した溶融塩浴は、更なる低融点化を図ることができるので、高温操業時の蒸発損失の更なる低減を実現するとともに、この溶融塩浴に浸漬した超硬合金の表面に生成する酸化物をオキシタングステンクロライド錯イオンとして溶融塩中へ溶解する機能を加速することが期待できる。
本発明に係る溶融塩浴は、アルカリ硝酸塩として、NNO(N=Na,K)の群から選択される少なくとも1種と、CsNOとを含有したものであってもよい。アルカリ硝酸塩の一部にCsNOを含有する溶融塩浴は、超硬合金表面を酸化する機能をさらに改善し、WC−Co超硬合金の溶解を促進する。
そして、本発明に係る溶融塩浴は、アルカリ塩化物として、MCl(M=Li,Na,K)の群から選択される2種以上と、CsClとを含み、アルカリ硝酸塩として、NNO(N=Na,K)の群から選択された少なくとも1種とCsNOとを含むものであってもよい。
さらに、本発明に係る溶融塩浴は、MCl(M=Li,Na,K)の群から選択される2種以上のアルカリ塩化物の一部をMF(M=Li,K,Cs)の群から選択される1種以上のフッ化物と置換したものであってもよい。この溶融塩浴は、更なる低融点化を図ることができ、高温操業時の蒸発損失の更なる低減を実現する。また、この溶融塩浴を用いることにより、超硬合金の表面に生成するタングステン酸化物被膜をオキシタングステンハライド錯イオンとして溶融塩中へ溶解する機能をさらに付与する。
また、本発明に係る溶融塩浴は、NNO(N=Na,K)の群から選択されたアルカリ硝酸塩の少なくとも1種をNaSOで置換したものであってもよい。この溶融塩欲に含有されるNaSOは、アルカリ硝酸塩による反応プラント容器を構成するステンレス鋼の腐食劣化を低減する効果を有する。したがって、NaSOを含む溶融塩浴は、反応プラント容器の保護に一層有益である。
さらに、本発明に係る溶融塩浴は、MCl(M=Li,Na,K)の群から選択された2種以上のアルカリ塩化物と、アルカリ硝酸塩として、NNO(N=Na,K)の群から選択された少なくとも1種とCsNOを含み、さらにNNO(N=Na,K)の群から選択されたアルカリ硝酸塩の1種をNaSOで置換したものであってもよい。この溶融塩浴に含有されるアルカリ硝酸塩であるCsNOと、NNO(N=Na,K)の群から選択されたアルカリ硝酸塩の1種と置換されたNaSOは、アルカリ硝酸塩による反応プラント容器を構成するステンレス鋼の腐食劣化を低減する効果を有する。したがって、CsNOとNaSOを含有する溶融塩浴は、反応プラント容器の保護に一層有益である。
〔WC−Co超硬合金の溶解方法、タングステン及びコバルトの回収方法〕
次に、上述した本発明に係る上述したいずれかの溶解塩浴を用いてWC−Co超硬合金を溶解し、WC−Co超硬合金からタングステンとコバルトを分離回収する方法について説明する。
まず、反応容器中に上述したいずれかの溶融塩浴とWC−Co超硬合金を投入し、溶融塩浴中にWC−Co超硬合金を浸漬する。次いで、溶融塩浴が均一溶融する650〜1000K程度まで昇温し、望ましくは773kに昇温する。WC−Co超硬合金は、所定の温度に昇温された溶融塩浴中に所定時間浸漬されることにより溶融塩浴中に溶解される。WC−Co超硬合金の溶解に要する時間は、用いる溶融塩浴や、溶解量で適宜選択される。
WC−Co超硬合金が溶融塩浴中で溶解されると、WC−Co超硬合金のタングステン成分がオキシタングステンハライド錯イオンとして溶融塩浴に溶解し、コバルト成分がコバルト酸化物であるCoO及びCoOとして溶融塩浴中に剥離する。そして、オキシタングステンハライド錯イオンとコバルト酸化物が剥離された溶融塩浴を凝固すると、オキシタングステンハライド錯塩とコバルト酸化物を含む凝固塩が得られる。この凝固塩に温水を加えると水溶液が得られる。
ところで、WC−Co超硬合金を溶解して得られるタングステン錯塩は、水に対して可溶であり、コバルト酸化物は、水に対して不溶である。
したがって、WC−Co超硬合金を溶融塩浴に溶解した後に凝固して得られる凝固塩に温水を加えると、タングステン錯塩は元の溶融塩成分とともに温水中に溶解する。一方、コバルト成分は、酸化物CoO及びCoOとして温水中に沈降する。この温水を濾過すると、コバルト酸化物CoO及びCoOは固体として回収され、タングステン錯塩は水溶液中に錯イオンとして分離回収される。
そして、コバルト酸化物CoO及びCoOは、水素熱還元されることにより、容易に純粋なコバルトとして回収することができる。
また、濾液中に回収したタングステン錯体に所定の処理を施すことで、純粋なタングステンを分離回収することができる。すなわち、タングステン錯体が溶解している濾液にカルシウム塩化物(CaCl)を添加すると、タングステン酸カルシウム(CaWO)が生成される。ここで生成されるCaWOは、難溶性であるため濾液中に沈降する。この濾液を濾過しCaWOを分離回収する。この回収したCaWOを沸騰塩酸中に投入し、酸化剤硝酸を数滴滴下すると、CaWOはタングステン酸(HWO)に変化する。なお、塩酸は、約353Kで沸騰する。
ここで得られるHWOは、難溶性であるため水溶液中に析出する。HWOが析出した水溶液を濾過し、HWOを分離回収する。分離回収したHWOをアンモニア水に溶解させ、24時間静置すると、APT(パラタングステン酸アンモニウム(NH10(H1242))が生成される。なお、APTを生成するため、HWOを溶解したアンモニア水を静置する時間は、アンモニア水に投入されるHWOの量に応じ適宜選択される。
APTは、難溶性であるため、反応に伴って生成され、アンモニア水中に逐次沈殿する。このAPTの析出体を含む水溶液を蒸発乾固することで、APTの結晶を分離回収できる。APTの結晶を酸素又は大気中で熱分解すると、三酸化タングステン(WO)が得られる。このWOを水素熱還元すると、純粋なタングステンが得られる。
このように、本発明に係る溶融塩浴を用いてWC−Co超硬合金を溶解し、この溶融塩浴中に溶解されたタングステン成分及びコバルト成分に上述したような処理を施すことにより、純粋なタングステンと純粋なコバルトを分離回収できる。
〔実験例〕
次に、下記の表1に示す各実験例に示すとおりの組成とした溶融塩浴を用意し、これら溶融塩浴の溶解温度を変化させ、各溶融塩浴中に浸漬したWC−Co超硬合金の溶解量を測定した。
ここで、各実験例に用いる溶融塩浴を説明すると、表1に示す実験例1〜3に用いる溶融塩浴は、本発明に係る溶融塩浴との比較に用いたものであって、従来、WC−Co超硬合金の溶解浴として提案されている溶融NaNOを用いたものである。
表1に示す実験例4〜7に用いる溶融塩浴は、アルカリ塩化物とアルカリ硝酸塩を均一溶融したものであって、アルカリ塩化物としてNaClとKClを用い、アルカリ硝酸塩としてKNOを用いている。そして、実験例4、5に用いる溶融塩浴は、NaClを48mol%、KClを33mol%含有し、KNOを19mol%含有している。実験例6、7に用いる溶融塩浴は、NaClを25mol%、KClを25mol%含有し、KNOを50mol%含有する。
表1に示す実験例8〜10に用いる溶融塩浴は、アルカリ塩化物としてLiClとKClを用い、アルカリ硝酸塩としてKNOを用いたものである。そして、実験例8〜10に用いる溶融塩浴は、LiClを45mol%、KClを35mol%含有し、KNOを20mol%含有する。
そして、表1に示す実験例11、12に用いる溶融塩浴は、アルカリ塩化物としてLiClとKClを用い、アルカリ硝酸塩に代えて硫酸塩であるNaSOを用いたものである。硫酸塩であるNaSOは、酸化剤として機能する。実験例11〜12に用いる溶融塩浴は、LiClを53mol%、KClを37mol%含有し、NaSOを10mol%含有する。
表1に示す実験例13、14に用いる溶融塩は、KNOのみからなる。
表1に示す実験例15、16に用いる溶融塩浴は、上記実験例4〜7に用いる溶融塩浴と同様に、アルカリ塩化物としてNaClとKClを用い、アルカリ硝酸塩としてKNOを用いているが、その組成割合を異にするものである。実験例15、16に用いる溶融塩浴は、NaClを10mol%、KClを10mol%とし、KNOを80mol%含有している。
さらに、表1に示す実験例17に用いる溶融塩は、アルカリ塩化物のみから構成されたものであって、NaClを58mol%、KClを42mol%含有して構成されている。
Figure 0006224601
次に、上述した表1に示す実験例1〜17にそれぞれ用いられる溶融塩を用いてWC−Co超硬合金を溶解する条件、手順を説明し、各実験例において溶解されるWC−Co超硬合金の溶解量と、この溶解されたWC−Co超硬合金からそれぞれ回収されるタングステン及びコバルトの回収率を上述の表1に示し、さらに、各実験に用いた溶融塩浴が溶解用容器に与える影響を述べる。
以下において述べるの各実験例において用いる溶融塩浴は、表1に示すとおりの組成の塩をアルゴン(Ar)気流中に60gを溶融したものを用いた。この溶融塩浴に浸漬して溶解する超硬合金として、大きさを12.6mm×8.1mm×4.5mmとし、重量を6.3gとするWC−Co超硬合金を用意した。WC−Co超硬合金を溶解する反応容器には、ステンレス鋼(SUS304)製の容器を用いた。
また、以下の実験例では、所定の温度に加熱した溶融塩浴にWC−Co超硬合金を3時間浸漬した後、溶融塩浴中に溶解したWC−Co超硬合金の溶解量を測定した。ここで、WC−Co超硬合金の溶解量は、溶融塩浴中に溶解した成分を凝固して得られる凝固塩を測定して行った。
また、溶融塩浴中に溶解したWC−Co超硬合金からのタングステンとコバルトの分離回収は、上述したような抽出回収法を用いて行った。表1に示すタングステンとコバルトを回収率は、溶融塩浴中に溶解して分離回収されたタングステン成分及びコバルト成分に対するものである。
まず、実験例1は、組成の100%をNaNOとする溶融NaNOにWC−Co超硬合金を浸漬した。このときの溶融NaNOの温度を973Kとした。その結果、WC−Co超硬合金は、表1に示すように、溶融塩浴中に4.42gが溶解した。この実験例1では溶融NaNOの蒸発損失が大きく、さらに、溶融NaNOが充填されるステンレス鋼からなる反応容器の腐食が著しいものであった。以下の実験例においても、反応器はステンレス鋼からなるものを用いた。
実験例2は、WC−Co超硬合金を浸漬した溶融NaNOの温度を、実験例1より低温の873Kとした。このときのWC−Co超硬合金の溶解量は、表1に示すように、3.61gであった。この例においても、反応容器の腐食が著しいものであった。
実験例3は、WC−Co超硬合金を浸漬した溶融NaNOを、実験例1、2よりさらに低温の773Kとした。このときのWC−Co超硬合金の溶解量は、表1に示すように、0.17gであった。
上記実験例1〜3に示すように、WC−Co超硬合金の溶解に溶融NaNOを用いるとき、溶融NaNOを873K以上の高温とすることにより、WC−Co超硬合金を50重量%以上溶解することができる。しかし、WC−Co超硬合金の溶解に用いる反応容器の腐食が著しく実用化に適さない。
また、ステンレス製の反応容器の腐食を抑えるため、溶融NaNOの温度を773K以下とすると、NaWO酸化物被膜がWC−Co超硬合金の表面を被覆するために、WC−Co超硬合金を溶解することはできない。
したがって、従来提案されている溶融NaNOは、WC−Co超硬合金を溶解し、この合金から純粋なタングステン及びコバルトを分離回収するための溶媒に用いることはできない。
実験例4は、アルカリ塩化物とアルカリ硝酸塩を均一に溶融した溶融塩浴を用いる。ここで、アルカリ塩化物としてNaClとKClを用い、アルカリ硝酸塩としてKNOを用いた。その組成は、NaClを48mol%、KClを33mol%とし、KNOを19mol%とした。この溶融塩浴にWC−Co超硬合金を浸漬し、溶融塩浴の温度を873Kとした。このとき、溶融塩浴中へのWC−Co超硬合金の溶解量は、表1に示すように3.52gであった。この溶解量は、従来提案されている溶融NaNOを873Kとしたときと同等の大きな溶解量であった。
実験例4では、従来の溶融NaNOを用いた場合と比較して蒸発損失が小さく、さらに、WC−Co超硬合金の溶解に用いる反応容器の腐食劣化が低減されていたことが認められた。
実験例4によりWC−Co超硬合金を溶解して得られるタングステン成分は、水に可溶なタングステン錯塩として抽出され、コバルト成分は、水に対して不溶なCoO及びCoOとして抽出される。これら水に可溶なタングステン錯塩と水に対して不溶なCoO及びCoOは、濾過することにより、分離独立して抽出することができる。分離独立して抽出されたタングステン錯塩とCoO及びCoOは、上述したような精製工程を経ることにより、純粋なタングステン及びコバルトとして回収できる。その回収率は、表1に示すように、タングステンにあっては、溶解量の95重量%が回収され、コバルトにあっては、溶解量の90重量%が回収された。
なお、コバルトの回収率において、10重量%の損失があるが、これは、タングステン成分とコバルト成分を分離濾過する際に用いる濾紙への付着損失であり、この付着分を回収することにより、コバルトにおいてもほぼ全量を回収することができる。
実験例5は、実験例4に用いた溶融塩浴と同様の溶融塩浴を用い、溶融塩浴の温度を実験例4より低温の773Kとした。このときのWC−Co超硬合金の溶解量は、2.85gであった。溶融塩浴として、NaClを48mol%、KClを33mol%とし、KNOを19mol%含有するものを用いることにより、従来提案されている溶融NaNOでは溶解することができなかった低温でWC−Co超硬合金を溶解することができた。
そして、溶融塩浴の温度を773Kとすることにより一層蒸発損失を小さくでき、ステンレス鋼製の反応容器の腐食劣化も一層の低減が認められた。
実験例5によりWC−Co超硬合金を溶解して得られたタングステン成分とコバルト成分を精製し回収される純粋なタングステン及びコバルトの回収率は、表1に示すように、タングステンにあっては溶解量の95重量%であり、コバルトにあっては溶解量の90重量%であった。
実験例6は、前記実験例4、5と同様に、アルカリ塩化物とアルカリ硝酸塩とを均一に溶融したものであって、アルカリ塩化物としてNaClとKClを用い、アルカリ硝酸塩としてKNOを用い、その組成を、NaClを25mol%、KClを25mol%とし、KNOを50mol%とした。本実験例では、この溶融塩浴を873Kとした。WC−Co超硬合金の溶解量は、表1に示すように、5.79gであった。本実験の結果より、本実験例6の溶解速度は、本実験例と同様に溶融NaNOを873KとしてWC−Co超硬合金を溶解したときの約1.6倍であることが認められた。
実験例6においても、溶融NaNO用いた場合と比較して蒸発損失が小さく、さらに、反応容器の腐食劣化を低減することが認められた。
そして、実験例6においても、WC−Co超硬合金を溶解して得られたタングステン成分とコバルト成分を精製し回収される純粋なタングステン及びコバルトの回収率は、表1に示すように、タングステンにあっては、溶解量の95重量%であり、コバルトにあっては、溶解量の90重量%であった。
実験例7は、実験例6に用いた溶融塩浴と同様の溶融塩浴を用いてWC−Co超硬合金を溶解したものであるが、溶融塩浴の温度を実験例6より低温の773Kとした。実験例7では、表1に示すように、WC−Co超硬合金の溶解量は2.35gであった。
実験例7においても、溶融塩浴の蒸発損失を抑え、反応容器の腐食劣化を低減することが認められたが、実験例6に比しWC−Co超硬合金の溶解率が低い。したがって、NaClを25mol%、KClを25mol%とし、KNOを50mol%含有する溶融塩浴を用いてWC−Co超硬合金の溶解を行うときには、873K程度の温度で行うことが好ましい。
次に、実験例8は、アルカリ塩化物とアルカリ硝酸塩を均一に溶融した溶融塩浴を用いる。ここで、アルカリ塩化物としてLiClとKClを用い、アルカリ硝酸塩としてKNOを用いた。その組成は、LiClを45mol%、KClを35mol%とし、KNOを20mol%とした。この溶融塩浴にWC−Co超硬合金を浸漬し、溶融塩浴を873Kとした。このときのWC−Co超硬合金の溶融塩浴中への溶解量は、表1に示すように、6.22gであった。この溶解量は、溶融NaNOを同温度の973KにしてWC−Co超硬合金を溶解したときと比較して約1.5倍であった。本実験例の溶融塩浴の減少は、溶融NaNOを用いた場合と比較して小さく、さらに、反応容器の腐食劣化も低減することが認められ、工業的なタングステン及びコバルトの溶解に適用して好適である。
そして、実験例8においても、WC−Co超硬合金を溶解して得られたタングステン成分とコバルト成分を精製し回収される純粋なタングステン及びコバルトの回収率は、表1に示すように、タングステンにあっては、溶融塩浴中に溶解したほぼ全量の95重量%であり、コバルトにあっては、溶融塩浴中に溶解した溶解量の90重量%であった。
実験例8から、LiClを45mol%、KClを35mol%とし、KNOを20mol%含有する溶融塩浴を用い、この溶融塩浴を937KとしてWC−Co超硬合金の溶解を行うことにより、極めて高能率でWC−Co超硬合金の溶解を行うことができ、しかも、溶融塩浴の減少を抑えながら、反応容器の損傷を有効に防止できる。
実験例9は、実験例8に用いた溶融塩浴と同様の溶融塩浴を用いてWC−Co超硬合金を溶解するものであるが、溶融塩浴の温度を実験例8より低温の873Kとした。このときのWC−Co超硬合金の溶融塩浴中への溶解量は、表1に示すように、5.83gであった。この溶解量は、本実験例と同様に873Kの溶融NaNOを用いたときと比較して1.6倍程度の溶解量であった。
そして、実験例9では、溶融NaNOを用いた場合と比較して溶融塩浴の蒸発損失が小さく、さらに、反応容器の腐食劣化が低減することが認められ、工業的なWC−Co超硬合金の溶解に適用して好適である。
また、実験例9においても、WC−Co超硬合金を溶解して得られたタングステン成分とコバルト成分を精製し回収される純粋なタングステン及びコバルトの回収率は、表1に示すように、タングステンにあっては、溶解量のほぼ全量の95重量%であり、コバルトにあっては、溶解量の90重量%であった。
ところで、LiClを45mol%、KClを35mol%とし、KNOを20mol%とした溶融塩浴を用いた場合には、溶融塩浴の温度を873Kとした場合でも、WC−Co超硬合金の溶解を十分に高能率で行うことができ、工業的なWC−Co超硬合金の溶解工程に用いることができる。
実験例10は、実験例8に用いた溶融塩浴と同様の組成の溶融塩浴を用いてWC−Co超硬合金を溶解するものであるが、溶融塩浴の温度を実験例8、9よりさらに低温の773Kとした。その結果、WC−Co超硬合金の溶融塩浴中への溶解量は、表1に示すように、2.54gであった。
実験例10からも明らかなように、LiClを45mol%、KClを35mol%とし、KNOを20mol%とした溶融塩浴を用いることにより、溶融NaNOのみからなる溶融浴では溶解を行うことができなかった低い温度でWC−Co超硬合金の溶解が可能である。その溶解量も、上述した実験例5、7においてそれぞれ用いた溶解浴を用いた場合と同等の結果が得られた。
また、実験例10においても、WC−Co超硬合金を溶解して得られたタングステン成分とコバルト成分を精製し回収される純粋なタングステン及びコバルトの回収率は、表1に示すように、タングステンにあっては、溶解量のほぼ全量の95重量%であり、コバルトにあっては、溶解量の90重量%であった。
次に、実験例11、12は、アルカリ硝酸塩に代えて酸化剤として機能する硫酸塩を用いたものであって、アルカリ塩化物と硫酸塩を均一溶融した溶融塩浴であり、アルカリ塩化物としてLiClとKClを用い、硫酸塩としてNaSOを用い、その組成を、LiClを53mol%、KClを37mol%とし、NaSOを10mol%とした。この溶融塩浴を用いてWC−Co超硬合金の溶解を行った。このとき、溶融塩浴の温度は、実験例11では873Kとし、実験例12では973Kとした。実験例11、12におけるWC−Co超硬合金の溶融塩浴中への溶解量は、表1に示すように、実験例11では0.10gであり、実験例12では0.88gであった。そして、WC−Co超硬合金を溶解して得られたタングステン成分とコバルト成分を精製し回収される純粋なタングステン及びコバルトの回収率は、表1に示すように、実験例11、12とも、タングステンにあっては、溶解量の75重量%であり、コバルトにあっては、溶解量の90重量%であった。
実験例11、12から、アルカリ塩化物と、アルカリ硝酸塩に代えて酸化剤として機能する硫酸塩であるNaSOとを均一溶融した溶融塩浴であっても、WC−Co超硬合金の溶解が可能である。
ところで、実験例11、12に示すように構成された溶融塩浴を用いてWC−Co超硬合金を溶解するとき、溶融塩浴の温度を高くすると、溶解量の増加が見られた。溶融塩浴の温度を100K上昇させると、実験例11と実験例12から明らかなように、8倍以上増加した。これら実験例から、アルカリ塩化物と硫酸塩を均一溶融した溶融塩浴によりWC−Co超硬合金を溶解するときには、溶融塩浴は、900K以上に昇温することにより十分に工業的な溶解工程に用いることができる。
実験例11、12のように、溶融塩浴としてアルカリ塩化物と硫酸塩とを均一溶融した溶融塩浴を用いた場合、実験例4〜10に示すアルカリ塩化物とアルカリ硝酸塩を均一溶融した溶融塩浴を用いた場合に比し、WC−Co超硬合金の溶解量が低下し、タングステンの回収率が低下した。これは、タングステン錯イオンを含む水溶液に、CaClを加えて、CaWOを沈降させる際、石膏CaSOも大量に共沈し、CaSOの析出を制御することが難しいためである。しかしながら、実験例11、12で用いた溶融塩浴は、加熱されたときの蒸発損失が小さく、反応容器を構成するステンレス(SUS304)製容器の腐食劣化が低減することが認められた。そのため、実験例11、12で用いた溶融塩浴は、工業的なタングステン及びコバルトの回収工程に用いて有為性がある。
なお、WC−Co超硬合金を溶解して得られたタングステン成分とコバルト成分を精製し回収される純粋なタングステン及びコバルトの回収率は、実験例11、12のいずれも表1に示すように、タングステンにあっては、溶解量の75重量%であり、コバルトにあっては、溶解量の90重量%であった。
次に、実験例13は、溶融塩浴として、アルカリ塩化物であるKNOのみからなる溶融KNOを用いてWC−Co超硬合金の溶解した例である。本実験例は、溶融KNOの温度を873Kとした。このときのWC−Co超硬合金の溶融KNO中への溶解量は、表1に示すように4.87gであった。本実験例では、実験例1〜3のように溶融NaNOを用いたときと同等の蒸発損失があり、しかも、反応容器の腐食劣化も著しかった。
なお、実験例13では、溶融KNOの蒸発損失が大きく、しかも、反応容器の腐食劣化も著しいものであったので、溶解したWC−Co超硬合金からのタングステン及びコバルトの回収は行わなかった。
実験例14は、KNOのみからなる溶融KNOを773Kにして、WC−Co超硬合金を溶解した。本実験例では、WC−Co超硬合金の溶融KNO中への溶解量は、表1に示すように0.36gである。本実験例でも、WC−Co超硬合金の溶融KNO中への溶解量が小さく、しかも溶融KNOの蒸発損失が大きいため実用に供することはできない。
次に、実験例15に用いる溶融塩浴は、アルカリ塩化物としてNaClとKClを用い、アルカリ硝酸塩としてKNOを用いたものであり、その組成を、NaClを10mol%、KClを10mol%とし、KNOを80mol%としたものである。
実験例15は、溶融塩浴を773KとしてWC−Co超硬合金の溶解を行った。このときのWC−Co超硬合金の溶融塩浴中への溶解量は、表1に示すように2.72gであった。本実験例で得られる溶解量は、組成を本実験例と同一の溶融塩浴を用いた実験例5、7と同等の量である。そして、WC−Co超硬合金を溶解して得られたタングステン成分とコバルト成分を精製し回収される純粋なタングステン及びコバルトの回収率も、表1に示すように、タングステンにあっては、溶解量のほぼ全量の95重量%であり、コバルトにあっては、溶解量の90重量%であった。
本実験例に用いた溶融塩浴は、低温の773KにおいてWC−Co超硬合金を溶解することができるので、溶解時の溶融塩浴の蒸発損失を小さくし、反応容器の腐食劣化を抑制できる。
また、実験例16は、実験例15と同様の溶解塩浴を用いてWC−Co超硬合金の溶解を行ったものであって、溶融塩浴を873Kとした。このときのWC−Co超硬合金の溶融塩浴中への溶解量は、表1に示すように5.94gであった。本実験例で得られる溶解量は、本実験例に用いる溶融塩浴と組成を同一とする溶融塩浴を用いる実験例5、7で得られる以上の量であり、極めて大きな溶解量を得ることができる。そして、WC−Co超硬合金を溶解して得られたタングステン成分とコバルト成分を精製して回収される純粋なタングステン及びコバルトの回収率も、表1に示すように、タングステンにあっては、溶解量のほぼ全量の95重量%であり、コバルトにあっては、溶解量の90重量%であった。しかし、溶融塩浴の温度を873Kとすることにより、溶融塩浴の蒸発損失が認められた。
上述した実験例6、7、15、16から、アルカリ塩化物としてNaClとKClを用い、アルカリ硝酸塩としてKNOを用いた溶融塩浴によりWC−Co超硬合金を溶解するときには、KNOの含有量を大きくすることが有利である。
そして、実験例17は、溶媒塩浴をアルカリ塩化物であるLiClとKClのみにより構成したものであって、その組成をLiClを58mol%、KClを42mol%とした。本実験例では、WC−Co超硬合金を浸漬した溶融塩浴を973Kまで加熱したが、WC−Co超硬合金の溶解は認められなかった。
上述した実験例から、アルカリ塩化物とアルカリ硝酸塩を均一に溶融した溶融塩浴を用いることにより、WC−Co超硬合金を溶解し、その後の化学処理によりタングステンとコバルトを回収できることが分かった。
ところで、アルカリ塩化物とアルカリ硝酸塩を均一に溶融した溶融塩浴を用いてWC−Co超硬合金を溶解するとき、溶解塩浴の蒸発損を抑制し、反応に用いる容器の劣化を防止するためには、できるだけ低温で操業する必要がある。
そこで、溶融塩浴の蒸発損を抑え、熱分解損失を抑えることができる773K以下の温度でWC−Co超硬合金を溶解可能とする溶融塩浴を鋭意研究した。
表2に、773KにおいてWC−Co超硬合金を溶解可能とする溶融塩浴を示す。表2に示す溶融塩浴は、いずれもアルカリ塩化物とアルカリ硝酸塩を均一に溶融したものである。以下、表2に示す実験例を説明する。
Figure 0006224601
表2に示す実験例では、表2に示すとおりの組成とされた溶融塩浴をステンレス鋼(SUS304)製の反応容器に充填し、この溶融塩浴を773Kに加熱した。この溶融塩浴中に、前述した実験例と同様に、大きさを12.6mm×8.1mm×4.5mmとし、重量を6.3gとするWC−Co超硬合金を3時間浸漬した後の溶解量を計量した。
実験例18は、アルカリ塩化物としてNaClとKClを用い、アルカリ硝酸塩としてKNOを用い、その組成を、NaClを9mol%、KClを6mol%とし、KNOを85mol%とした。実験例18において、溶融塩浴中へのWC−Co超硬合金の溶解量は2.91gであった。
実験例19は、アルカリ塩化物としてNaClとKClを用い、アルカリ硝酸塩としてKNOを用い、その組成を、NaClを7.2mol%、KClを4.8mol%とし、KNOを88mol%とした。実験例19において、溶融塩浴中へのWC−Co超硬合金の溶解量は4.83gであった。
実験例20は、アルカリ塩化物としてNaClとKClを用い、アルカリ硝酸塩としてKNOを用い、その組成を、NaClを6mol%、KClを4mol%とし、KNOを90mol%とした。実験例20において、溶融塩浴中へのWC−Co超硬合金の溶解量は5.73gであった。
実験例21は、アルカリ塩化物としてNaClとKClを用い、アルカリ硝酸塩としてKNOを用い、その組成を、NaClを3mol%、KClを2mol%とし、KNOを95mol%とした。実験例21において、溶融塩浴中へのWC−Co超硬合金の溶解量は5.30gであった。
実験例22は、アルカリ塩化物としてNaClとKClを用い、アルカリ硝酸塩としてKNOを用い、その組成を、NaClを1.2mol%、KClを0.8mol%とし、KNOを98mol%とした。実験例22において、溶融塩浴中へのWC−Co超硬合金の溶解量は5.12gであった。
実験例23は、アルカリ塩化物としてNaClとKClを用い、アルカリ硝酸塩としてKNOを用い、その組成を、NaClを0.6mol%、KClを0.4mol%とし、KNOを99mol%とした。実験例23において、溶融塩浴中へのWC−Co超硬合金の溶解量は3.91gであった。
実験例24は、アルカリ塩化物としてNaClとKClを用い、アルカリ硝酸塩としてNaNOを用い、その組成を、NaClを12mol%、KClを8mol%とし、NaNOを80mol%とした。実験例24において、溶融塩浴中へのWC−Co超硬合金の溶解量は1.76gであった。
実験例25は、アルカリ塩化物としてNaClとKClを用い、アルカリ硝酸塩としてNaNOを用い、その組成を、NaClを9mol%、KClを6mol%とし、NaNOを85mol%とした。実験例25において、溶融塩浴中へのWC−Co超硬合金の溶解量は0.86gであった。
上述した実験例から、溶融アルカリ塩化物中に少量の溶融アルカリ硝酸塩を加えることで、アルカリ硝酸塩の蒸発を抑え、熱分解を抑制し得る温度773K以下の温度でWC−Co超硬合金を溶解できる溶融塩浴を得ることが分かった。
なお、実験例18〜25から、アルカリ硝酸塩としてKNOを用いたときには、溶融塩浴中にアルカリ塩化物を1mol%程度添加するのみでWC−Co超硬合金の溶解可能である。アルカリ硝酸塩としてNaNOを用いた場合には、実用的な溶解量を得るためには、溶融塩浴中にアルカリ塩化物を15mol%以上含有することが望ましい。
次に、アルカリ塩化物としてCsClを加え、さらに、ハライド成分としてフッ化物を加えた溶融塩浴を用いて超硬合金を溶解した実験例を表3に示す。
表3に示す実験例の溶融塩浴においても、表2に示す実験例と同様に、773Kの温度の溶融塩浴中に6.3gのWC−Co超硬合金を3時間浸漬しその溶解量を計量した。
なお、773Kは、溶融塩浴の蒸発損を抑え、熱分解損失を抑えることができる温度である。
Figure 0006224601
実験例26は、KNO19mol%に、NaCl48mol%とKCl32mol%を加え、さらにCsCl1mol%を添加して均一溶融した溶融塩浴を用いてWC−Co超硬合金を溶解した。この溶融塩浴は、塩基性のCsClを添加することにより、アルカリ硝酸塩であるKNOによる酸化によって生成した超硬合金表面の酸化被膜を分解する効果が得られ773Kにおいて6.3gのWC−Co超硬合金を3時間浸漬したとき3.99gを溶解することができた。
実験例27は、KNO18mol%に、NaCl48mol%とKCl29mol%を加え、さらに、フッ化物であるKF3mol%と同じくフッ化物であるCsF1mol%を添加して均一に溶融した溶融塩浴を用いてWC−Co超硬合金を溶解した。この溶融塩浴は、塩基性のKFとCsFが加えられたことにより、アルカリ硝酸塩であるKNOによる酸化によって生成した超硬合金表面の酸化被膜を分解し、溶融オキシタングステンハライド錯イオンの生成を加速する効果が得られ、773Kにおいて6.3gのWC−Co超硬合金を3時間浸漬したとき2.19gを溶解することができた。
実験例28は、KNO13mol%に、NaCl48mol%とKCl29mol%とKF3mol%とCsF1mol%とCsNOを加え、さらに、NaSO5mol%を添加して均一溶融した溶融塩浴を用いてWC−Co超硬合金を溶解した。この溶融塩浴は、塩基性のKFとCsFが添加され、溶融塩浴の粘性を低下するCsNOが添加されたことにより、アルカリ硝酸塩であるKNOによる酸化によって生成した超硬合金表面の酸化被膜を分解し、溶融オキシタングステンハライド錯イオンの生成を加速する効果があり、773Kにおいて6.3gのWC−Co超硬合金を3時間浸漬したとき1.87gを溶解することができた。
実験例29は、KNO20mol%に、NaCl41mol%とKF39mol%と加え、均一溶融した溶融塩浴を用いてWC−Co超硬合金を溶解した。この溶融塩浴を用いて、773Kにおいて6.3gのWC−Co超硬合金を3時間浸漬したとき6.29gを溶解することができた。
実験例29から、塩基性のKFの添加量を高めることにより、酸化剤であるKNOによって生成される超硬合金表面の酸化被膜を分解して溶融タングステン酸錯イオンの生成を加速する効果が大きく、773Kにおいて6.3gのWC−Co超硬合金のほぼ全量を溶解することができた。
上述した実験例18〜29により溶融塩浴中にWC−Co超硬合金を溶解して生成される得られる凝固塩を、前述した実験例4〜12、実験例15、16と同様に、温水中に溶解すると、タングステン成分は、水に可溶なタングステン錯塩として抽出され、コバルト成分は、水に対して不溶なCoO及びCoOとして抽出される。これら水に可溶なタングステン錯塩と水に対して不溶なCoO及びCoOは、例えば濾紙を用いて濾過することにより、分離独立して抽出することができる。
ところで、溶融塩浴中に溶出された凝固塩を溶解した水溶液を濾過して得られたタングステン錯塩が溶解された水溶液をイオン交換樹脂によって処理すると、2価のタングステン酸イオン(WO 2−)が、1価の陰イオンCl、F、NO よりも、選択的にイオン交換樹脂中の陽イオンに捕捉される。WO 2−を捕捉したイオン交換樹脂に塩化アンモニウム(NHCl)などの溶離剤を加えると、イオン交換樹脂からWO 2−が離脱され、タングステン酸アンモニウムの水溶液を生成することができる。ここで生成されたタングステン酸アンモニウム水溶液を蒸発乾個して熱分解し、さらに、水素還元することで純タングステンを分離回収できる。
〔タングステン、コバルトの分離回収の実施例〕
次に、上述した溶融塩浴を用いて溶解したWC−Co超硬合金から純粋なタングステンとコバルトを回収する具体的な実施例を説明する。以下の説明では、上述した実験例8に示す溶融塩浴により溶解したWC−Co超硬合金から純粋なタングステンとコバルトを回収した例を挙げて説明する。
例えば、前述した実験例8で説明したように、溶融塩浴中にWC−Co超硬合金を浸漬して溶解すると、タングステン成分は、タングステン錯塩として溶融塩浴中に溶解され、コバルト成分は、コバルト酸化物であるCoO及びCoOとして溶融塩浴中に溶解される。
次いで、タングステン錯塩とコバルト酸化物CoO及びCoOが溶解した溶融塩浴を凝固し、タングステン錯塩とCoO 及びCoOを含む凝固塩を得る。この凝固塩に温水を加え水溶液とし、これを濾過すると、水に不溶なCoO及びCoOと水に可溶なタングステン錯塩とが分離回収される。
タングステン錯体が溶解している濾液にCaClを添加すると、濾液中にCaWO が生成される。ここで生成された化合物についてX線回折を施した。その結果を図1のX線分光分析(XRD)した図に示す。図1において、CaWOにピークが認められ、CaWOが生成されていることが示されている。
ここで得られるCaWOは、難溶性であるため濾液中に沈降する。この濾液を濾過することによりCaWOを分離回収することができる。
ここで回収されたCaWOを、353Kの沸騰塩酸に投入し、酸化剤硝酸を数滴滴下すると、CaWOはタングステン酸(HWO)に変化する。ここで得られた化合物についてX線回折を施した。その結果を図2のX線分光分析(XRD)図に示す。図2において、HWOにピークが認められ、HWOが生成されていることが示されている。
WOは難溶性であるため、水溶液に析出する。そこで、HWOが析出した水溶液を濾過し、HWOを分離回収する。分離回収したHWOをアンモニア水に投入し、24時間静置するとAPTが析出される。ここで析出されたAPTを図3に示す。
APTが析出されたアンモニア水を蒸発乾固して得られたAPTの結晶を873Kの酸素又は大気中で2時間熱分解した。ここで得られた素材にX線回折を施した。その結果を図4のX線分光分析(XRD)図に示す。図4においてWOにピークが認められ、WOが生成されていることが示されている。
そして、APTの結晶から生成されたWOを1123Kで1.5時間水素熱還元した。この水素熱還元した生成物にX線回折を施した。その結果を図5のX線分光分析(XRD)図に示す。図5には、タングステンのみにピークが認められ、純粋なタングステンが生成されていることが認められる。このタングステンの回収率は95%であった。
そして、溶融塩浴に溶解したWC−Co超硬合金からコバルトを回収するには、タングステン錯塩とCoO及びCoOが溶解した溶融塩浴を凝固した凝固塩に温水を加え水溶液とし、これを濾過する。このとき、濾紙上に残滓として回収される水に不溶なCoO及びCoOの粉体として回収する。ここで回収されたCoO及びCoOの粉体を773Kで3時間水素熱還元した。この還元した生成物にX線回折を施した。その結果を図6に示す。図6から明らかなように、コバルトにのみピークが認められ、純粋なコバルトが生成されていることが認められる。このコバルトの回収率は90%であった。
以上の実験例からも、MCl(M=Li,Na,K)の群から選択される2種以上のアルカリ塩化物と、NNO(N=Li,Na,K)の群から選択されるアルカリ硝酸塩とを均一溶融させた本発明に係る溶融塩浴は、WC−Co超硬合金の溶解に用いて極めて有用であり、しかも、工業的なタングステン及びコバルトの回収に用いことができる。

Claims (12)

  1. WC−Co超硬合金を溶解するための溶融塩浴であって、
    アルカリ塩化物MCl(M=Li,Na,K)の群から選択されるアルカリ塩化物を1mol%以上含有し、アルカリ硝酸塩NNO (N=Na,K)の群から選択されるアルカリ硝酸塩を99mol%以下含有していることを特徴とするWC−Co超硬合金溶解用の溶融塩浴。
  2. 前記アルカリ塩化物は、前記アルカリ塩化物MCl(M=Li,Na,K)の群から2種以上選択され、前記アルカリ塩化物は、前記アルカリ硝酸塩NNO (N=Na,K)の群から1種以上選択されていることを特徴とする 請求項1記載のWC−Co超硬合金溶解用の溶融塩浴。
  3. 前記アルカリ塩化物を1〜81mol%以上含有し、前記アルカリ硝酸塩を99〜19mol%以下含有してことを特徴とする請求項1記載のWC−Co超硬合金溶解用の溶融塩浴。
  4. 前記アルカリ塩化物は、MCl(M=Li,Na,K)の群から選択される2種以上とCsClとからなることを特徴とする請求項1記載のWC−Co超硬合金溶解用の溶融塩浴。
  5. 前記NNO(N=Na,K)の群から選択される少なくと1種以上のアルカリ硝酸塩の一部をCsNO で置換したことを特徴とする請求項1記載のWC−Co超硬合金溶解用の溶融塩浴。
  6. 前記MCl(M=Li,Na,K)の群から選択される2種以上のアルカリ塩化物の一部を、MF(M=Li,K,Cs)の群から選択される1種以上のフッ化物で置換してなることを特徴とする請求項1記載のWC−Co超硬合金溶解用の溶融塩浴。
  7. 前記NNO(N=Na,K)の群から選択される1種以上のアルカリ硝酸塩の一部をNaSOで置換したことを特徴とする請求項1記載のWC−Co超硬合金溶解用の溶融塩浴。
  8. 前記NNO(N=Na,K)の群から選択された1種以上のアルカリ硝酸塩の一部を、1mol%以下のCsNO と5mol%以下のNa SO で置換したことを特徴とする請求項6記載のWC−Co超硬合金溶解用の溶融塩浴。
  9. 前記請求項1〜8のいずれか1項に記載され溶融塩浴にWC−Co超硬合金を浸漬し、上記WC−Co超硬合金を浸漬した溶融塩浴を773〜973Kまで昇温し、上記昇温した状態を一定時間保持して上記溶融塩浴中にWC−Co超硬合金を溶解し、
    次いで、上記WC−Co超硬合金が溶解した上記溶融塩浴を凝固して凝固塩を生成し、その後、上記凝固塩に加水して生成された水溶液を濾過し、上記水溶液中から、上記WC−Co超硬合金が溶解して析出されたタングステン由来のタングステン錯塩と、コバルト由来のコバルト酸化物を分離回収することを特徴とするタングステンとコバルトの分離回収方法。
  10. 前記請求項9記載の方法で分離回収されたタングステン錯塩が溶解された水溶液中のタングステン酸イオン(WO 2− )イオンをイオン交換樹脂に吸着し、このタングステン酸イオン(WO 2− )イオンを吸着したイオン交換樹脂を含む水溶液に塩化アンモニウム(NH Cl)を加え、タングステン酸アンモニウムを生成し、このタングステン酸アンモニウムを熱分解してWO を生成し、このWO を水素熱還元してタングステンを回収する方法。
  11. 前記請求項9記載の方法で分離回収された前記タングステン由来のタングステン錯塩にCaCl を加えてCaWO を析出し、このCaWO を沸騰塩酸に浸漬してH WO を析出し、このH WO をアンモニア水に浸漬してAPT(パラタングステン酸アンモニウム(NH 10 (H 12 42 ))を生成し、次いで、上記APTを熱分解してWO を生成し、このWO を水素熱還元してタングステンを回収する方法。
  12. 前記請求項9記載の方法で分離回収されたコバルト酸化物を、水素熱還元してコバルトを回収する方法。
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