JP5569934B2 - 第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法 - Google Patents

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Description

本発明は、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタル等の第5族元素及び/又は第6族元素を含有する使用済みの超硬工具、各種金属製品等から第5族元素及び/又は第6族元素を回収、リサイクルする際などにおいて、その回収、リサイクルを効率化することのできる、第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法である。
より具体的には、使用済みの超硬工具、各種金属製品等から第5族元素及び/又は第6族元素をアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、これらの混合水酸化物、又は、前記水酸化物のいずれかを主成分として含むものの溶融物中に効率的かつ制御可能に溶解する溶解方法に関するものである。
従来から資源の有効利用を目的として各種元素について、回収、リサイクルの促進が進められてきている。超硬工具、各種金属製品、触媒等への需要が多いタングステン、モリブデン、ニオブ、タンタル等の第5族元素及び/又は第6族元素についても、その資源の偏在や希少性等から回収、リサイクルに対する期待は非常に大きいものがある。
しかしながら、使用済みの超硬工具、各種金属製品等から第5族元素や第6族元素を回収、リサイクルする従来の方法は、一般的に、不純物の除去ができない、多くの工程を必要とする、エネルギー多消費で経済コストも高いなどの問題点を有している。
例えば、タングステンを回収、リサイクルする従来の方法についてみると、亜鉛処理法と酸化−湿式法の2つが実際に稼働している(非特許文献1)。
亜鉛処理法は、超硬工具スクラップと亜鉛を不活性ガス雰囲気中で加熱し、亜鉛をコバルトと反応させ、コバルト・亜鉛合金を形成し、この合金化に伴う体積膨張により超硬合金にクラックを生じさせ、さらに、亜鉛を減圧蒸発させることによって分離除去して超硬合金スクラップの粉砕を容易化した後、ボールミル等で所定の粒度まで粉砕して再利用するものである。この方法は工程が簡単であるためコスト的には非常に有利ではあるが、合金組成の調整や不純物除去ができず、元の組成のままで再利用することになるため、用途に適した組成のスクラップを予め選別しなければならないという問題点を有している。
酸化―湿式法は、超硬工具スクラップを酸化焙焼し、これを水酸化ナトリウム溶液で溶解してタングステン酸ナトリウム(Na2WO4)の形とすること等からなるものである。この方法は、スクラップ中の不純物を分離、除去できることから、様々な組成に対応可能であるが、酸化焙焼はスクラップの表面から進むため一度に内部まで完全に酸化させることができず、酸化焙焼−水酸化ナトリウム溶解を数度繰り返す必要がある等の問題点を有している。
また、実用化されていないが、超硬工具スクラップを溶融状態のNaNO3と反応させてNa2WO4を生成させ、これを水で溶解してNa2WO4溶液を作り、さらにNa2WO4溶液をイオン交換樹脂に通して、吸着、溶離するなどしてパラタングステン酸アンモニウム((NHWO)を生成する、といったプロセスも検討されている(非特許文献1)。しかし、このプロセスは、溶融NaNO3との反応が非常に激しく安全性の確保が困難であり、大量に発生するNOxの処理設備も必要となる。さらに、超硬工具スクラップはチッ化チタン(TiN)等で被覆されていることも多く、このようなスクラップを処理するためにはあらかじめ被覆材をボールミル等で除去する必要があるなど多くの問題点を有している。
さらに、特殊鋼スラグからのタングステン、モリブデンの回収法として、特殊鋼吹製時の溶滓にソーダ灰または苛性ソーダを加えて、タングステン、モリブデンを水溶性の塩の組成に変換せしめて冷却凝固し、湿式粉砕装置により残留金属粒をスラグより分離すると同時に、スラグ中のタングステン、モリブデン塩を水に溶解する方法も知られている(特許文献1)。しかし、この方法は、特殊鋼吹製時の溶滓を対象とするもので、使用済みの超硬工具、各種金属製品等に適用できるものではない。
一方、タングステンやモリブデンは水酸化ナトリウム水溶液中で陽極酸化すれば溶解することが知られている。この条件では、主要な不純物であるFeやNi等はほぼ溶解しないことから、この陽極酸化による溶解方法は、比較的不純物が少ないタングステンやモリブデンの溶液が得られるという特徴があり、反応の制御も容易であるなど、優れた点が多い。しかし、逆にこれら不溶性の不純物が反応物表面に残留するため、反応の進行とともに内部で酸化溶解されたタングステンやモリブデンの溶液中への拡散が困難になる。そのため、電流値を非常に低くするか、酸素発生等の副反応を伴いつつも電圧を上げてある程度の電流値を確保するかのいずれかを選択する必要があり、電流値を低くした場合は生産性が低く、電圧を上げてある程度の電流値を確保する場合は消費電力が高くなるので、これらの理由から電解を利用したタングステンやモリブデンをはじめとした第5族元素や第6族元素の回収、リサイクルはこれまで実用化されてこなかった。
特開昭50−161500号公報
「金属資源レポート」Vol.38 No.4 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(2008年11月)P407−417
上述のような背景から、本発明は、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタル等の第5族元素や第6族元素を含む使用済みの超硬工具、各種金属製品、触媒、及びこれらの製造工程で出る工程内廃棄物等から、第5族元素や第6族元素をアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、これらの混合水酸化物、又は、前記水酸化物のいずれかを主成分として含むものの溶融物中に効率的かつ制御可能に、廃棄物等の種類によっては選択的に、溶解する方法を提供することを課題としている。
また、本発明は、第5族元素や第6族元素が溶解している水溶液を得る方法を提供することを課題としている。
さらに、本発明は、上記溶解方法を用いた第5族元素や第6族元素の回収方法を提供することを課題としている。
反応媒体として溶融アルカリ金属水酸化物又は溶融アルカリ土類金属水酸化物を用いて第5族元素及び/又は第6族元素の含有物を陽極酸化することで、選択的かつ迅速に第5族元素及び/又は第6族元素を酸化溶解することができるとの知見を得て、本発明に至ったものである。また、第5族元素及び/又は第6族元素が酸化溶解され、該元素濃度の増加したアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物を水に溶解することで比較的高純度な第5族元素及び/又は第6族元素のオキソ酸塩の水溶液を得ることもできる。
すなわち、本発明は以下のことを特徴としている。
1.アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、又は、これらの混合水酸化物の400〜600℃の溶融物中において、第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質を陽極酸化し、第5族元素及び/又は第6族元素を前記溶融物中に溶解する第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
2.アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、又は、これらの混合水酸化物の400〜600℃の溶融物中において、第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質を陽極酸化し、第5族元素及び/又は第6族元素を前記溶融物中に溶解した後、第5族元素及び/又は第6族元素の濃度の増加した前記溶融物を水に溶解させて第5族元素及び/又は第6族元素のオキソ酸塩の水溶液とする第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
3.アルカリ金属水酸化物として水酸化ナトリウムを用いる上記1又は2に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
4.第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質が、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタルのうちの少なくとも1種を含むものである上記1〜3のいずれかに記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
5.第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質が、使用済みの超硬工具、触媒、及び/又は、おもりである上記1〜4のいずれかに記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
6.第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質を予め、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、これらの混合水酸化物、又は、前記水酸化物のいずれかを主成分として含むものの溶融物中に浸漬する予備浸漬工程を具備する、上記1〜5のいずれかに記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
7.第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質を予め浸漬する溶融物は、第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質を陽極酸化し、第5族元素及び/又は第6族元素を溶解する際の溶融物とは別に設けられたものである、上記6に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
8.第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質は、第5、6族元素以外の元素で構成されるセラミックスを表面被覆材及び/又はバインダーの主成分乃至副成分として具備乃至含有するものであり、予備浸漬工程において、溶融物中に、第5、6族元素以外の元素で構成されるセラミックスを含む表面被覆材及び/又はバインダーを溶解する、上記6又は7に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
9.予備浸漬工程に用いる溶融物として水酸化ナトリウムを用いる上記6〜8のいずれかに記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
10.上記1〜9のいずれかに記載の溶解方法を用いる、第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質から第5族元素及び/又は第6族元素を回収する回収方法。
本発明によれば、1V程度の電圧でも平均して50mA/cm2以上の電流を流すことができ、電流効率も高いことから、少ない電力で迅速に溶解対象の物質からタングステン、モリブデン、ニオブ、タンタル等の第5族元素及び/又は第6族元素を溶解することができる。また、その溶解は、物質中の不純物の混入が少ない選択的なものであり、他の手法に比べて溶解の制御も容易であり、その上、単一の操作で第5族元素及び/又は第6族元素をほぼ全量溶解できることから、工業化する上で非常に有利である。
処理対象物がチッ化チタン、チッ化アルミ、アルミナ、シリカ、炭化チタン、炭窒化チタン、チタンアルミナイトライド、アルミクロムナイトライドを始めとしたセラミックスを表面被覆材やバインダーの主成分乃至副成分として具備乃至含有している場合には、予め浸漬して溶解処理を行うことにより、表面に露出する該セラミックスを溶解除去できる。これは、対象となる第5族元素及び/又は第6族元素と該セラミックスとをいずれも溶解できる溶融物が用意でき、かつ該セラミックス由来の不純物の混入が大きな問題にならない場合には別途設ける必要は無いが、それ以外の場合は、対象となる第5族元素及び/又は第6族元素を溶解するのに適した溶融物と、該セラミックスの溶解に適した溶融物をそれぞれ用意して用いることで、その後の第5族元素及び/又は第6族元素の陽極酸化や溶解の効率化、溶融物中におけるセラミックス由来の不純物量の低減化が可能となる。
図1は、実施例2と比較例1について、タングステン合金廃棄物を1Vの定電圧で陽極酸化した際の電流値の時間変化を示した図である。
本発明の溶解乃至回収対象の元素は、第5族元素及び/又は第6族元素であり、具体的には、W、Mo、Cr、V、Nb、Ta等である。そのうち、特に実用面での期待が大きいW、Ta、Moが望ましい。
これらの元素を含む溶解乃至回収対象の物質としては、該元素を金属として含むものでも、また、炭化物等として含むものであってもよく、使用済みの超硬工具、各種金属製品、触媒、及びこれらの製造工程で出る工程内廃棄物が挙げられるが、これらに限定されず、これらの元素の少なくとも1種を含む物質であり、陽極として電圧を印加できる形態であれば、どのようなものでもよい。
そのような第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質は、各種プラスチック等の有機物を表面被覆材等として具備乃至含有していてもよいし、また、第5族元素や第6族元素以外の元素で構成されるセラミックスを表面被覆材やバインダーの主成分乃至副成分として具備乃至含有していてもよい。第5族元素や第6族元素以外の元素で構成されるセラミックスとしては、チッ化チタン、チッ化アルミ、アルミナ、シリカ、炭化チタン、炭窒化チタン、チタンアルミナイトライド、アルミクロムナイトライド等が挙げられる。
本発明の溶解方法に用いるアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物は、陽極酸化の際の電解質であり、また、第5族元素及び/又は第6族元素を溶解する溶媒でもある。その具体例としては、それぞれ水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、および水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムが挙げられる。実用的には、反応性等の点でアルカリ金属水酸化物が望ましく、そのうち、特に、水酸化ナトリウムが好適に用いられる。
これらの水酸化物は、単体でも、また、混合したもの(混合水酸化物)であっても良いし、さらに、陽極酸化や溶解性を大きく低下させない範囲で、他の成分や不純物が混合乃至混入しても良い。混合される他の成分としては、粘度や導電性の調整等のための他の水酸化物や電解質等が挙げられる。
本発明において、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、これらの混合水酸化物、又は、前記水酸化物のいずれかを主成分として含むものは、溶融状態で用いられるが、その温度は、一般的には融点以上であればよく、使用温度は、第5族元素や第6族元素の溶解性、拡散性、用いる装置材料の耐熱性、経済性、ランニングコスト等から決定される。前記溶融物の温度は、高温にするほど第5族元素や第6族元素の溶解性、拡散性が高くなる点で有利であるが、一方で、装置材料の耐熱性、経済性等の点で不利であるため、実用的には、通常400〜600℃程度が好適に使用できる。
本発明の溶解方法に用いる装置としては、特に限定されず、陽極酸化に従来使用されているもので耐熱性及び耐アルカリ性を有するものであれば、そのまま使用できるし、また、耐熱性の改良等を加えることにより使用することもできる。そのような装置としては、バッチ式のものだけでなく、連続式のものも使用しうる。
陽極酸化の際に陰極との間に印加する電圧は、限定されないが、高すぎると陽極酸化の電流効率低下と望ましくない副反応が起こり、さらには消費エネルギーも増加する。逆に低すぎると十分な反応速度が得られないため、これらを総合的に考慮して決定することができる。溶解をバッチ式で行う場合、処理期間中印加する電圧を一定にしても良いが、処理時間短縮のため、溶解処理が制御可能な範囲で印加する電圧を変化させることもできる。また、電流を一定にしても良いが、この場合は電圧を確認して電流値や処理時間、処理物質の供給量等を調整する必要がある。
本発明方法では、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタル等の第5族元素や第6族元素は、陽極酸化され、タングステンやモリブデンを例にすると、WO 2−やMoO 2−で示されるイオンとして、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、これらの混合水酸化物、又は、前記水酸化物のいずれかを主成分として含むものの溶融物中に溶解すると考えられる。その際、溶解対象物が不純物を含んでいても、不純物であるFe,Ni等はほぼ溶解しない、または溶解しても陰極上に析出すると見込まれるため、第5族元素や第6族元素の溶解を選択的に行うことができる。前記溶融物中に溶解しない不純物のFe,Ni等は、溶解対象物の表面等に残留するが、NaWO、NaMoO等の第5族元素や第6族元素のオキソ酸塩は、それらの残留不純物にあまり影響を受けることなく、前記溶融物中に効率的かつ制御可能に溶解される。その際の詳細なメカニズムは必ずしも明確ではないが、NaWO、NaMoO等の第5族元素や第6族元素のオキソ酸塩は、前記溶融物に対し大きな溶解度を有すると共に、高温のため拡散速度も大きく、残留不純物の影響をあまり受けることなく効率的かつ制御可能に溶解されると考えられる。
また、第5族元素及び/又は第6族元素が溶解され、それら元素の濃度の増加した前記溶融物は、水に容易に溶解させることができ、その結果、第5族元素及び/又は第6族元素のオキソ酸塩の水溶液を得ることもできる。前記溶融物は、水に溶解する際、安全性の観点からは、その温度を予め融点未満、望ましくは100℃未満、より望ましくは50℃未満に低下しておくことが良い。
本発明の処理対象である第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質が、各種プラスチック等の有機物を表面被覆材等として具備乃至含有する場合や、チッ化チタン、チッ化アルミ、アルミナ、シリカ、炭窒化チタン、チタンアルミナイトライド、アルミクロムナイトライドを始めとした、第5族元素や第6族元素以外の元素で構成されるセラミックスを表面被覆材やバインダーの主成分乃至副成分として具備乃至含有する場合には、該物質を予め、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、これらの混合水酸化物、又は、前記水酸化物のいずれかを主成分として含むものの溶融物中に通電することなく浸漬することができる。そのような予備処理により、表面に露出する各種プラスチック等の有機物は、水素、CO2、低分子の気体等に分解除去できるし、また、表面に露出するチッ化チタン、チッ化アルミ、アルミナ、シリカ、炭窒化チタン、チタンアルミナイトライド、アルミクロムナイトライドを始めとしたセラミックスを含む表面被覆材やバインダーは、溶解除去できるため、その後の第5,6族元素の陽極酸化や溶解を効率的に行うことができる。また、該予備処理に用いる溶融物を、第5,6族元素の陽極酸化、溶解に用いる溶融物と別に設けることにより、第5,6族元素の溶解した溶融物中における前記有機物由来の不純物量や前記セラミックス由来の不純物量を低減することができる。該予備処理に用いる溶融物の温度は、分解する有機物や溶解するセラミックスの種類に応じて適宜決定される。
このような表面に露出するチッ化チタン、チッ化アルミ、アルミナ、シリカ、炭窒化チタン、チタンアルミナイトライド、アルミクロムナイトライドを始めとしたセラミックスを溶解する溶解方法は、前述のような陽極酸化、溶解方法の予備処理としてだけでなく、第5,6族元素を含む物質から第5,6族元素を回収するための様々な処理方法においても、前記セラミックスを溶解除去するために採用することができる。
なお、このような通電しない予備浸漬処理において、第5族元素や第6族元素は、金属や炭化物である場合にはほとんど溶解せず、窒化物や酸化物である場合には多少溶解するものの、通電して陽極酸化する場合に較べ溶解量は少ないので、その後の陽極酸化・溶解工程における溶解量に大きな影響を及ぼさないと考えられる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
450℃で溶融した水酸化ナトリウム中において、タングステン線を陽極、白金線を陰極として定電流電解を行った。電解後にタングステン線を回収、洗浄して重量変化を測定したところ、20mgの重量減少が認められた。通電量は63Cであったので、6電子反応とすると電流効率は100%であった。
(実施例2)
タングステン合金廃棄物として廃携帯電話から取り出した振動モーターのおもり(組成 W:93〜97wt%、Ni:2〜5wt%、Cu,Fe:0〜2wt%)を用い、これにφ0.5mmのNi線を巻きつけて陽極とし、1×2cmのNi板を陰極として用いて450℃で溶融した水酸化ナトリウム中で1Vの定電圧を印加した。約13時間でタングステンが全量溶解し、電流がほぼゼロになった。その際の電流値の変化を図1の実線で示す。電流値は時間と共に低下したが、平均すると約50mAであった。おもりの表面積は1cm2弱であったので、電流密度にして50mA/cm2以上の値である。なお、約6時間の時点で電流値が一時的に増加しているが、これは電解液のサンプリングのために電解を一時中断したためである。電解後の溶融水酸化ナトリウムを冷却、固化し、水で溶解後にろ過し、ろ液中のタングステン濃度をICP発光分析法(ICP−AES)で測定したところ、全量で744mgのタングステンが溶解していたことが分かった。この際、溶解した他の金属の濃度は、測定誤差を見込んで合計してもタングステン濃度の1%未満であり、廃棄物中に含まれたNi,Cu,Feはほとんど溶解せず、タングステンが選択的に溶解していたことが分かった。また、電解時の通電量は2500Cであったことから、6電子反応と仮定して電流効率を算出すると94%であった。
(比較例1)
実施例2で用いたものと同じ振動モーターのおもりを用い、これにφ0.5mmのNi線を巻きつけて陽極とし、1×2cmのNi板を陰極として用いて、室温の10M水酸化ナトリウム水溶液中で1Vの定電圧を印加し、電流値の変化を観測した。その結果を図1の点線で示す。印加初期は約10mAであったが、すぐに低下し、約7時間で2mA以下となった。実施例2より長い約16時間電解した時の通電量及びおもりの重量変化からすると、電流効率は100%近かったものの、タングステンは全体の6%程度しか溶解していなかったことから、タングステンの全量あるいは大部分を溶解するには膨大な時間を要することが分かった。
(実施例3)
450℃で溶融した水酸化ナトリウム中において、φ1mmモリブデン線を陽極、1×2cmのNi板を陰極として1Vの定電圧を38分間印加した。電解後にモリブデン線を回収、洗浄して重量変化を測定したところ、52.9mgの重量減少が認められた。通電量は315Cであったので、6電子反応とすると電流効率は101%であった。
(実施例4)
450℃で溶融した水酸化ナトリウム中において、φ1mmタンタル線を陽極、1×2cmのNi板を陰極として1Vの定電圧を54分間印加した。電解後にタンタル線を回収、洗浄して重量変化を測定したところ、7.0mgの重量減少が認められた。通電量は15Cであり、タンタルは5価が最も安定とされるため5電子反応を仮定して電流効率を算出すると124%であった。4電子反応とすると電流効率は100%になるため、この系でタンタルは4価のイオンとして溶解したと推測される。
(実施例5)
超硬工具の一例として市販のスローアウェイチップを用い、これにφ1mmのNi線を巻きつけて陽極とし、1×2cmのNi板を陰極として用いて450℃で溶融した水酸化ナトリウム中で1Vの定電圧を1時間印加した。被覆材の影響を評価するため、チップは未被覆のものとチッ化チタン/アルミナ等がコートされた2種類を購入し、実験に供した。また、比較のため別途用意した溶融水酸化ナトリウム中に同温度同一時間チップを浸漬する実験も併せて行った。電解後の溶融水酸化ナトリウムを冷却、固化し、水で溶解後にろ過し、ろ液中のタングステン等の濃度をICP発光分析法(ICP−AES)で測定した。また、チップの実験前後の重量変化を測定した。その結果、電解試料では未被覆および被覆のチップでそれぞれ1040および620Cの通電があり、重量減少は221および130mg、タングステン溶解量は188および108mgであった。炭化タングステンが10電子反応で溶解すると仮定して重量変化をもとに電流効率を算出すると、未被覆および被覆のチップでそれぞれ104および103%であった。同様に、溶解したタングステン重量をもとに計算すると、未被覆および被覆のチップでそれぞれ95および91%であった。いずれも100%に近い値で本手法の有効性を示している。なお、いずれの値も100%から多少ずれているのは主にコバルトの溶解に起因するものである。ただし、ICP−AESの結果から、溶融水酸化ナトリウム中に溶存していたコバルトはタングステンに対して2wt%未満であり、溶解したコバルトの大部分は陰極表面で粉末状に析出していた。このため、電解を継続して行えば、溶融水酸化ナトリウム中では溶解したタングステンが蓄積して結果的に不純物の少ないタングステン溶液を得ることができ、陰極側では、コバルトが金属粉末として析出することから回収して再利用することが可能と考えられる。一方で、通電しなかった比較試料では、チッ化チタン/アルミナ等がコートされた試料で約1mgの重量減少が認められたが、未被覆試料の重量変化は測定誤差範囲内であり、ICP−AESではいずれのケースでもタングステンの溶解は確認されなかった。しかし、チッ化チタン/アルミナ等をコートしたチップでは、通電しない場合であっても被覆層が除去されており、蛍光X線装置で分析しても被覆材に由来するチタンやアルミニウムは検出されなかった。この結果は、溶融水酸化ナトリウムに浸漬することでこれら被覆材の溶解、除去が可能であることを示している。
本発明の溶解方法によれば、使用済みの超硬工具、各種金属製品、触媒、及びこれらの製造工程で出る工程内廃棄物等から、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタル等の第5族元素や第6族元素をアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、これらの混合水酸化物、又は、前記水酸化物のいずれかを主成分として含むものの溶融物中に効率的かつ制御可能に、廃棄物等の種類によっては選択的に、溶解することができ、さらに、水に溶解することでそれら元素のオキソ酸塩の水溶液を得ることもできる。そして、そのような溶解方法を利用することにより、それら元素の回収、リサイクルを効率的に実施することができる。

Claims (10)

  1. アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、又は、これらの混合水酸化物の400〜600℃の溶融物中において、第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質を陽極酸化し、第5族元素及び/又は第6族元素を前記溶融物中に溶解する第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
  2. アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、又は、これらの混合水酸化物の400〜600℃の溶融物中において、第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質を陽極酸化し、第5族元素及び/又は第6族元素を前記溶融物中に溶解した後、第5族元素及び/又は第6族元素の濃度の増加した前記溶融物を水に溶解させて第5族元素及び/又は第6族元素のオキソ酸塩の水溶液とする第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
  3. アルカリ金属水酸化物として水酸化ナトリウムを用いる請求項1又は2に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
  4. 第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質が、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタルのうちの少なくとも1種を含むものである請求項1〜3のいずれかに記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
  5. 第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質が、使用済みの超硬工具、触媒、及び/又は、おもりである請求項1〜4のいずれかに記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
  6. 第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質を予め、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、これらの混合水酸化物、又は、前記水酸化物のいずれかを主成分として含むものの溶融物中に浸漬する予備浸漬工程を具備する、請求項1〜5のいずれかに記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
  7. 第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質を予め浸漬する溶融物は、第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質を陽極酸化し、第5族元素及び/又は第6族元素を溶解する際の溶融物とは別に設けられたものである、請求項6に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
  8. 第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質は、第5、6族元素以外の元素で構成されるセラミックスを表面被覆材及び/又はバインダーの主成分乃至副成分として具備乃至含有するものであり、予備浸漬工程において、溶融物中に、第5、6族元素以外の元素で構成されるセラミックスを含む表面被覆材及び/又はバインダーを溶解する、請求項6又は7に記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
  9. 予備浸漬工程に用いる溶融物として水酸化ナトリウムを用いる請求項6〜8のいずれかに記載の第5族元素及び/又は第6族元素の溶解方法。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の溶解方法を用いる、第5族元素及び/又は第6族元素を含む物質から第5族元素及び/又は第6族元素を回収する回収方法。
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