JP2019039710A - 金属材料中の炭化物および/または窒化物の抽出方法、その炭化物および/または窒化物の分析方法、その金属材料中の固溶炭素量および/または固溶窒素量の分析方法、およびそれらに用いられる電解液 - Google Patents

金属材料中の炭化物および/または窒化物の抽出方法、その炭化物および/または窒化物の分析方法、その金属材料中の固溶炭素量および/または固溶窒素量の分析方法、およびそれらに用いられる電解液 Download PDF

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Abstract

【課題】メタラジー的にマスバランスが取れる、正確な炭化物および/または窒化物の抽出方法、分析方法、そのための電解液の提供。
【解決手段】金属材料を電解液中でエッチングし、金属材料中の炭化物および/または窒化物を抽出する方法において、
0.5〜20体積%のトリエチレンテトラミンを含んでなる電解液を用いることを特徴とする、炭化物および/または窒化物の抽出方法、
その炭化物および/または窒化物の分析方法、
その金属材料中の固溶炭素量および/または固溶窒素量の分析方法、および
それらに用いられる電解液。
【選択図】図4

Description

本願発明は、金属材料を電解液中でエッチングし金属材料中の炭化物および/または窒化物を抽出する際に、トリエチレンテトラミンを含んでなる電解液を用いる炭化物および/または窒化物の抽出方法、その炭化物および/または窒化物の分析方法、その金属材料中の固溶炭素量および/または固溶窒素量の分析方法、およびその電解液に関係する。
金属材料は、微量添加元素や様々な熱処理によって、材料マトリックス中に存在する介在物や析出物の種類、アスペクト比などの形状、寸法等を制御して、金属材料に求められる強度や特性をコントロールすることが広く実施されている。
従って、介在物及び/又は析出物の観察や、その成分、分量を測定することは金属材料の品質管理や製造プロセスの解析を行う上で、重要な意味を持つ。
介在物や析出物の観察をSEM等で行うためには、マトリックス中に埋没した状態の介在物や析出物を観察表面に露出させる必要があり、従来から、各種電解質溶液中で電解することで、介在物や析出物を試料表面に露出させて、観察可能な状態としている。
近年、金属材料の製造技術の進歩により、介在物や析出物の種類が多様化すると共に、微細分散化も進んでおり、観察に際しては、マトリックス(Fe)のみを選択的に溶解すると共に、介在物や析出物に関しては、それらが微細粒子であっても、確実に観察表面に保持して、溶解しないような電解液が求められる。
また、これらの介在物や析出物を同定・定量分析する場合には、同様に、電解質溶液中で金属試料のマトリックスを溶解させ、介在物や析出物を電解残渣として回収し、これを同定・定量分析することが行われている。
この定量分析の場合には、金属材料のマトリックス部分のみを効率良く電解すると共に、Fe分を確実に電解液中に溶解して保持すると共に、その他の介在物や析出物に相当する部分を電解残渣として確実に回収できることが要求される。
特に、介在物や析出物として、金属材料中の炭素および/または窒素の一部は、鋼を構成する成分や、熱処理条件により炭化物および/または窒化物を析出形成し、その量や形態は、鋼の性質に著しい影響を与える。また、金属材料中の炭素および/または窒素の一部は、炭化物および/または窒化物として析出せず、鋼中に固溶して存在することもあり、それらの固溶炭素および/または固溶窒素も鋼の組成に影響を与える。そのため、介在物や析出物としての炭化物および/または窒化物、および金属材料中に固溶する固溶炭素および/または固溶窒素を精緻に測定することが必要とされている。なお、炭化物および/または窒化物には、炭窒化物も含まれる。炭窒化物の例として、チタン炭窒化物、Ti(C,N)等が挙げられ、そのCとNの混合比率は0〜100%まで任意に変化し得る。
特許文献1には、鉄鋼試料のための電解液組成物と、それを用いた介在物や、析出物の分析方法が記載されている。
この電解液組成物は、従来の電解液が酸性のものが多かったのに対して、アルカリ性のトリエタノールアミンが添加されていることにより、微細な介在物や析出物であっても、溶解され難くなり、これらの介在物や析出物の粒子が鋼材試料表面に残留し易く、鉄鋼試料を電解液から取り出し乾燥後、そのままの状態でSEM等による観察や分析を可能としている。
また、特許文献2には、鉄鋼試料中の介在物や析出物の抽出用非水溶媒系電解液と、それを用いた鉄鋼試料の電解抽出方法に関する発明が開示されている。
この電解液は、無水マレイン酸と、塩化テトラメチルアンモニウムと、メタノールを所定の割合で含むものであり、一度に大量の鉄鋼試料を電解する能力に優れた電解液であり、液中に含まれる無水マレイン酸が、鉄錯体を生成し、Fe水酸化物等の沈殿生成を阻止する特徴を有する。
一方、特許文献3には、鉄鋼試料を対象とする技術ではないが、含銅鉱物中における不純物元素の砒素を銅イオンと沈降分離するために、砒素鉱物の浮遊抑制剤として、トリエチレンテトラミン(TETA)や、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を使用する技術が開示されている。
金属試料における介在物や析出物をSEM等でその場で観察するためには、試料を電解して、マトリックスを構成するFe成分を、Feイオンキレート剤で電解液中に保持し、介在物や析出物が試料表面に残留するように電解する。
一方、介在物や析出物の定量分析であれば、マトリックスのFe分をキレート剤によって電解液中に保持し、電解によって試料から離脱した介在物や析出物を溶解しないような電解液を用いて、これらを電解残渣として回収し、該残渣を同定・定量分析する。
したがって、介在物や析出物の同定・定量分析のための残渣回収を目的とする電解液については、Fe分を電解液中にキレート錯体として溶解状態を維持できることに主眼が置かれており、電解液中での介在物や析出物に対するコンタミネーションなどについては、特段の配慮がなされていなかった。
また、特許文献1、3は、炭化物、窒化物については言及していない。特許文献2は、析出物の一形態として、炭化物、窒化物が含まれると記載している。ただし、上記のとおり、介在物や析出物に対するコンタミネーションなどについては、特段の配慮をしておらず、炭化物、窒化物等の析出物の抽出への影響が懸念される。
特許文献4は、鉄鋼材料中の炭素を固溶炭素と析出炭素の形態別に定量する方法を開示している。
具体的には、予め鋼中の全炭素量を求めておき、そこから鋼中の析出物炭素量を差し引いて、固溶炭素量を求めている。鋼のマトリックスを溶解し、ろ過捕集した鋼中析出物抽出残渣を酸素気流中で加熱して一酸化炭素と二酸化炭素の量を測定することにより、鋼中の析出物炭素量は、求められる。この加熱の前に、前記鋼中析出物抽出残渣を300℃〜320℃以下で予備加熱し、析出物中に混入した固溶炭素を燃焼除去することを特徴としている。
ただし、鉄鋼試料から析出物を抽出する際に、特段の配慮はされていない。
特許文献5は、結晶粒内の固溶炭素量を制御することにより、疲労特性と成形性に優れた高強度鋼板を提供するものである。
固溶炭素量を測定する手段として、3D−AP(三次元アトムプローブ)を用いることを開示している。より具体的には、測定対象から針状試料を作成し、作成した針状試料の原子の二次元分布像を三次元アトムプローブによって針状試料の深さ方向に複数取得して、得られた複数の二次元分布像を再構築して実空間での原子の三次元分布像を求め、固溶Cの量を測定している。
この方法によって、固溶炭素量を精緻に測定することが可能であるが、より簡便な測定方法が求められる。
非特許文献1は、内部摩擦法(スネークピーク)に関する文献であり、金属材料の内部における音波または機械的振動の減衰を利用して、金属材料の内部にある不純物原子等を調べられることが開示されている。
内部摩擦法(スネークピーク)を利用することにより、固溶状態にある格子間不純物の濃度を知ることができると述べられているが、介在物や析出物についての測定については明示されていない。また、より簡便な測定方法も望まれている。
特開2002−303620号公報 特開2000−137015号公報 特開2011−156521号公報 特開2006−250598号公報 特開2017−66505号公報
鉄鋼その他の金属の内部摩擦について(橋口、鉄と鋼、Vol.60(1974),No12,P1706)
従来の電解技術を用いて、金属材料から炭化物および/または窒化物を抽出し、それらに含まれる炭素量および/または窒素量が、実際よりも少なく評価されているおそれがあることを本発明者は知見した。
金属材料の全炭素量は、JIS G1211に基づくCS炭素定量方法によって精緻に測定可能であり、金属材料の全窒素量は、JIS G1228に基づく窒素定量方法によって精緻に測定可能である。したがって、原理的には、金属材料の全炭素量から、抽出された炭化物に含まれる炭素量を差し引くことにより、金属材料に固溶する固溶炭素量が求められるはずである。同様に、固溶窒素量も求められるはずである。
ところが、このようにして求められた固溶炭素量は、例えば、600ppmとなることがあり、これは図1の鉄−炭素平行状態図(金属熱処理のあれとこれ! http://netusyori.seesaa.net/article/170671567.html より引用)によるαフェライトの炭素固溶限界である200ppmを遥かに超越している。同様に、上記の手法で求めた固溶窒素量も、実際よりも高いことが懸念される。
したがって、メタラジー的にマスバランスが取れる、正確な炭化物および/または窒化物の抽出方法、分析方法、そのための電解液が求められていた。
本願発明者は、上記の原因について詳細に検討し、以下の知見を得た。従来の電解技術を用いて金属材料から炭化物および/または窒化物を抽出した場合に、それらに含まれる炭素量および/または窒素量が、実際よりも少なく評価されているおそれがある。ところが、電解液として、トリエチレンテトラミン(TETA)を含む電解液を用いた場合に、抽出された炭化物および/または窒化物に含まれる炭素量および/または窒素量が、従来法の場合より高く評価された。この抽出物中の炭素量および/または窒素量を、金属材料の全炭素量および/または窒素量から差し引いて、求めた金属材料に固溶する固溶炭素量および/または固溶窒素量は、文献値等と整合しており、すなわち、メタラジー的にマスバランスが取れた値であった。
本願発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)金属材料を電解液中でエッチングし、金属材料中の炭化物および/または窒化物を抽出する方法において、
0.5〜20体積%のトリエチレンテトラミンを含んでなる電解液を用いることを特徴とする、炭化物および/または窒化物の抽出方法。

(2)前記炭化物はセメンタイト(FeC)を含んでなることを特徴とする、(1)に記載の炭化物および/または窒化物の抽出方法。

(3)前記窒化物は窒化アルミニウム(AlN)を含んでなることを特徴とする、(1)または(2)に記載の炭化物および/または窒化物の抽出方法。

(4)前記電解液は、
アセチルアセトン、無水マレイン酸、マレイン酸、トリエタノールアミン、サリチル酸、サリチル酸メチルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むFeイオンに対する錯体形成剤;
テトラメチルアンモニウムクロライド(TMAC)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化リチウム(LiCl)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む電解質;および
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む溶媒、を含んでなることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の炭化物および/または窒化物の抽出方法。

(5)前記金属材料は、1質量%以下のCu、3質量%以下のSiを含むことを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の炭化物および/または窒化物の抽出方法。

(6)
前記エッチング後の電解液をフィルターに通し、捕集した残渣として炭化物および/または窒化物を抽出する際に、前記フィルターが4フッ化エチレン樹脂製フィルターであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の炭化物および/または窒化物の抽出方法。

(7)(1)〜(6)のいずれか1項に記載の炭化物および/または窒化物の抽出方法で抽出した炭化物および/または窒化物を分析することを特徴とする、炭化物および/または窒化物の分析方法。

(8)(7)に記載の方法を用いて、前記抽出した炭化物に含有される炭素量を分析し、および/または、前記抽出した窒化物に含有される窒素量を分析し、
前記金属材料中に含有される全炭素量および/または全窒素量を分析し、
下記の式により、前記金属材料中の固溶炭素量および/または固溶窒素量の分析方法。

(固溶炭素量)=(金属材料中に含有される全炭素量)−(抽出した炭化物に含有される炭素量)

(固溶窒素量)=(金属材料中に含有される全窒素量)−(抽出した窒化物に含有される窒素量)

(9)金属材料をエッチングし、金属材料中の炭化物および/または窒化物を抽出する際に用いる電解液であって、
0.5〜20体積%のトリエチレンテトラミン;
アセチルアセトン、無水マレイン酸、マレイン酸、トリエタノールアミン、サリチル酸、サリチル酸メチルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むFeイオンに対する錯体形成剤;
テトラメチルアンモニウムクロライド(TMAC)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化リチウム(LiCl)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む電解質;および
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む溶媒、を含んでなる電解液。
・本願発明によれば、金属材料から炭化物および/または窒化物を正確に抽出することができ、それらの炭素量および/または窒素量を正確に分析することができ、さらに金属材料中に固溶する固溶炭素量および/または固溶窒素量を正確に分析することができる。すなわち、メタラジー的にマスバランスが取ることが可能な、正確な炭化物および/または窒化物の抽出方法、分析方法、そのための電解液が提供される。
鉄−炭素平行状態を示したものである。 本願発明に係る電解液を使用した電解装置の見取り図の一例を示すものである。 鉄鋼材料の各種析出物の電気分解曲線を示したものである。 金属試料の炭素に関する電解残渣および固溶分の分析結果を示すグラフである。 金属試料の窒素に関する電解残渣および固溶分の分析結果を示すグラフである。
本願発明により、金属材料を電解液中でエッチングし、金属材料中の炭化物および/または窒化物を抽出する方法において、
0.5〜20体積%のトリエチレンテトラミンを含んでなる電解液を用いることを特徴とする、炭化物および/または窒化物の抽出方法、が提供される。
本発明では、金属材料中の炭化物および/または窒化物の抽出を行う。すなわち、金属材料を電解質溶液中でエッチングすることで、マトリックス(Fe等)を選択的に溶解し、金属材料に含まれる介在物や析出物等の炭化物および/または窒化物を試料表面に露出させる。これにより、炭化物および/または窒化物を観察可能な状態にできる。
一般に、金属試料中の微粒子の抽出方法としては、例えば、酸溶液中で金属試料の鉄マトリックスを溶解する酸分解法、ヨウ素メタノール混合溶液あるいは臭素メタノール混合溶液中で金属試料の鉄マトリックスを溶解するハロゲン溶解法、非水溶媒系定電流電解法、又は、非水溶媒系定電位電解(SPEED:Selective Potentiostatic Etching by Electrolytic Dissolution Method)法等が挙げられる。これらの内、非水溶媒を用いるSPEED法は、溶媒中に微粒子が分散された際に、組成やサイズの変化が起こり難く、不安定な微粒子でも安定的に抽出できるため好適である。本実施形態に関して、図2を参照しながら、非水溶媒系定電位電解法(SPEED法)による金属材料中の微粒子の評価方法を例に取り、説明を行うが、本発明における抽出の方法はSPEED法に限定されるものではない。
初めに、金属試料4を、例えば、20mm×40mm×2mmの大きさに加工して、表層のスケール等の酸化皮膜等を化学的研磨又は機械的研磨等により除去し、金属層を出しておく。逆に、酸化皮膜層に含まれる微粒子を解析する場合は、そのままの形態で残しておく。
次に、この金属試料を、SPEED法を用いて電解する。具体的には、電解槽10に電解溶液9を満たし、その中に金属試料4を浸漬させて、参照電極7を金属試料4に接触させる。白金電極6と金属試料4を電解装置8に接続する。一般的に上記電解法を用いると、金属試料4のマトリックスとなる金属部分の電解電位に比べて、析出物等の炭化物および/または窒化物の電解電位は、高い電解電位を持つ。そこで、電解装置8を用いて金属試料4のマトリックスを溶解し、かつ炭化物および/または窒化物等を溶解しない電解電位の間に、電圧を設定することにより、マトリックスのみを選択的に溶解することが可能となる。表面マトリックス部分のFeが電解溶出された試料表面には、炭化物および/または窒化物等を含む介在物或いは析出物5が浮き出し、SEM等による観察に適した状態となる。さらに、電解を続けて、炭化物および/または窒化物等を含む介在物や析出物を試料表面から離脱させて、電解残渣11として回収し、電解液から濾過分離して、同定・定量分析に供することもできる。
なお、炭化物とは、金属試料中に含まれる元素と炭素との化合物であり、FeC、NbC、Cr、MoC、VC等であってもよい。一般的に、マトリックスの主成分がFeであるので、FeC(セメンタイト)の含有率が高く、FeC(セメンタイト)の分析精度が高いことが、マスバランス精度の向上に役立つ。
また、窒化物とは、金属試料中に含まれる元素と窒素との化合物であり、FeN、TiN、AlN、CrN、Mo等であってもよい。
本願発明に係る金属材料用の電解液は、トリエチレンテトラミンを含む。トリエチレンテトラミンを含む電解液を用いた場合、抽出された炭化物および/または窒化物に含まれる炭素量および/または窒素量を正確に分析することができ、すなわち、メタラジー的にマスバランスをとることができる。
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、その理由として以下が考えられる。電解電位は、マトリックスを溶解し、かつ炭化物および/または窒化物等を溶解しないように、設定される。図3は、鉄鋼材料の各種析出物の電気分解曲線を示したものである。図3に示されるとおり、炭素鋼やステンレス鋼等のFeマトリックスの電解電位は相対的に低く、介在物や析出物等の電解電位は相対的に高い。この関係を利用して、それらの中間の電位で電解して、鉄マトリックスのみを溶解し、介在物等を溶解しないのが、電解抽出の原理である。
しかしながら、抽出対象であるFeCやAlN等は、析出対象物の中では相対的に低い電位で分解するので溶解しやすく、電解電位が設定値よりも高めに変動した場合に溶解する可能性がある。そして、マトリックスから溶解したFeイオン等が電解電位に影響を与える可能性がある。さらに、電解液にはマトリックス(Fe)以外の金属が、マトリックス(Fe)に比すれば相対的には僅かであるが、溶出することがある。溶解対象ではなかった抽出対象物が、電解電位の変動によって溶解しることもある。それらの溶解イオン等が電解電位に影響を及ぼし、抽出対象であるFeCやAlN等が溶解する可能性がある。
ここで、トリエチレンテトラミンは、電解電位を安定させる効果があり、これにより電解電位の変動を防ぎ、マトリックスのみを電解し、抽出対象物を電解することはないことが考えられる。トリエチレンテトラミンは、キレート剤として作用し、電解液中に溶解した各種イオン(Feイオン等)の錯体を形成し、それらのイオンが電解電位に影響を与えることを防ぐことが考えられる。また、トリエチレンテトラミンが、抽出対象である炭化物や窒化物(FeCやAlN)等の錯体を形成する等により、抽出対象を電解されないように保護していることも考えられる。
上記では、トリエチレンテトラミンによる電気分解の安定化の観点から検討した。これに代えて、またはこれに加えて、電解液中のイオンによって、抽出対象である炭化物や窒化物(FeCやAlN)等を溶解する可能性も考えられる。
電解液にはマトリックス(Fe)以外の金属が、マトリックス(Fe)に比すれば相対的には僅かであるが、溶出することがある。溶出し得る金属が複数存在する場合、その溶解度の差に応じて、溶解しやすい金属から溶出することになる。例えば、電解液中に溶解度の小さい金属イオン(例えばCu2+)と、溶解度の大きい金属の化合物(例えばMnS)とが存在しているとき、溶解度の大きい金属イオン(Mn2+)が溶出し、溶解度の小さい金属イオン(Cu2+)を含む化合物(CuS)が生成することが知られている。この置換反応は、電解液や鋼材試料表面等で進行し、副作用的に他の析出物等の溶解に影響を与えていることが考えられる。例えば、CuとMnの置換反応が生じて、MnSが溶解される際に、付近の炭化物や窒化物(FeCやAlN)等も溶解されることが考えられる。特に、FeCは、MnS等の介在物を核として成長することがあると考えられており(参考文献:鉄と鋼,Vol.80(1994)No.4,p64,古原、下畑、和田、牧)、核であるMnS等の介在物が溶解すると、FeCにもその影響が及ぶと考えられる。
ここで、トリエチレンテトラミンは、キレート剤として作用し、電解液中に溶解した各種イオン(Cuイオン等)の錯体を形成し、上記の置換反応を抑制することができ、炭化物や窒化物(FeCやAlN)等の介在物や析出物への影響を低減することができると考えられる。なお、トリエチレンテトラミンは、比較的溶解度の高いCuイオンやNiイオン等に対する錯体形成能力(選択性)が高く、CuやNiイオンに対して高い捕捉効果が発揮される。
電解液に含まれるトリエチレンテトラミンの体積割合は、0.5〜20体積%である。体積%の基準は、トリエチレンテトラミンを含む電解液全体の体積を100体積%とする。0.5体積%未満では、トリエチレンテトラミンによる効果が十分に得られない。20体積%を超えると、相対的に電解液中の他成分である、電解質、溶媒等の割合が低下し、電解操作に支障を生じるおそれがある。費用対効果や対象試料等の観点から、トリエチレンテトラミンの体積割合を、下限値を1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上としてもよく、上限値を19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下としてもよい。
本願発明に係る金属材料用の電解液、即ち、炭化物および/または窒化物を含む介在物や析出物を観察するために表面のFeマトリックスを電解したり、炭化物および/または窒化物を含む介在物や析出物を定量分析するために、Feマトリックスを電解し、残渣を回収したりするための電解に用いる電解液は、好ましくは、
(1)Feイオンに対する錯体形成剤、
(2)電解液に導電性を担保させる為の電解質、
(3)形成されたFe等の錯体を液中に保持するための溶媒、
を含む。
マトリックスの主成分はFeであり、Feマトリックスが電解されると、電解液中にFeイオンが生じる。Feイオンに対する錯体形成剤としては、アセチルアセトン、無水マレイン酸、マレイン酸、トリエタノールアミン、サリチル酸、サリチル酸メチルの中から1種類以上を選択してもよい。
電解質には、テトラメチルアンモニウムクロライド(TMAC)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化リチウム(LiCl)の中から1種類以上を選択することができる。
溶媒は、トリエチレンテトラミン、各種錯体形成剤、これらとFe等の錯体を溶解状態で保持できるものである必要があり、非水溶媒であってもよい。水溶液系電解液では相対的に低い電解電圧(例えば−300mV以下)でも各種の析出物が分解するのに対し、非水溶媒系電解液は安定した電解領域が広く、超合金、高合金、ステンレスから炭素鋼までほとんどすべての金属材料に適用することができる。非水溶媒系電解液を用いた場合、主として、マトリックスの溶解と、溶解したFeイオンとキレート剤との(錯体化)反応が起こるだけであり、炭化物および/または窒化物を含む介在物或いは析出物5は溶解することなく、母材上で”in situ”な状態での三次元観察と分析を行う事ができる。非水溶媒としては、電解を円滑に進め、しかも、錯体化可能な有機化合物と支持電解質とを溶解する化合物が適しており、例えば、低級アルコール、例えば、メタノール、エタノール、又はイソプロピルアルコールを用いることができる。メタノール、又はエタノール、あるいはこれらの混合物を選択することができる。また、これらのアルコールと同程度かそれ以上の極性(双極子モーメント等)を有す溶媒であれば使用できる。
本願発明に係る電解液は、上記以外の成分として、必要に応じて、SDSなどの粒子分散剤を含んでもよい。
従来の定電位電解法では、電解溶液として、例えば、10質量%アセチルアセトン(以降“AA”と称す)−1質量%テトラメチルアンモニウムクロライド(以降“TMAC”と称す)−メタノール溶液、又は10質量%無水マレイン酸−2質量%TMAC−メタノール溶液が用いられている。これらの電解溶液では、電解溶出されたFeが錯体を生成し、生成したFe錯体が電解液中に溶解する観点で好ましいため、多用されている。この成分比は、対象とする金属試料等に応じて適宜調整してもよい。
電解液は、電解槽中で攪拌されてもよい。これにより、電解液が鋼材試料表面に接触しやすくなり、電解が促進される。攪拌の手段は、特に限定されないが、気泡発生器によるバブリング、マグネチックスターラーによる渦流等を用いてもよい。または、トリエチレンテトラミンまたはこれを含む電解液の液滴を鋼材試料の近傍に滴下してもよい。電解液が金属試料表面に接触しやすいように、バブリングであれば100cc/分、好ましくは200cc/分、スターラーであれば100rpm、好ましくは200rpmを、下限としてもよい。バブリング量やスターラー回転数が高すぎると、電解対象物(金属試料)表面の剥離等の問題を生じる。そのため、バブリングであれば600cc/分、好ましくは500cc/分、スターラーであれば600rpm、好ましくは500rpmを上限としてもよい。
なお、一般的な電解操作において電解液の攪拌を行う場合、攪拌によって生じる電解液の流れが電解対象物に接触しないように、攪拌操作が行われる。これは、攪拌によって生じた電解液の流れが電解対象物に影響を与えないようにするという考えに基づく。本発明では、トリエチレンテトラミンを含む電解液によって、電解電位を安定化させたり、電解液中イオンの析出物等への影響を低減したりするという観点から、攪拌等によって生じる電解液の流れが電解対象物(金属試料)に接触するように、電解液を攪拌または供給してもよい。
また、バブリングのための気体としては窒素ガスやヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが挙げられる。酸素や水素等の活性ガスは、電解液中の溶存酸素濃度に影響を与えるおそれがあり、電解対象物に影響を与えるおそれがあるため、好ましくない。
本発明における金属材料とは、金属元素を主成分とする材料を指す。金属材料は鉄鋼材料を含み、鉄鋼材料とは、鉄を主成分とする材料を指す。
本発明で取り扱う金属材料は、炭素(C)を含有してもよい。Cは任意添加元素であり、含有しなくてもよいが、0.001%未満に低減すると、精錬コストが大幅に増加すし、またCは鋼の強度を高めるために有効な元素であるので、十分な強度を得るためにC含有量の下限値を0.001%以上としてもよい。一方、C含有量が多くなると、炭化物を起点とする割れが発生しやすくなる。そのため、C含有量の上限値を2.0%としてもよい。
本発明で取り扱う金属材料は、窒素(N)を含有してもよい。Nは任意添加元素であり、含有しなくてもよいが、0.0001%未満に低減すると、精錬コストが大幅に増加するので、下限を0.0001%としてもよい。また、N含有量が多くなると、鋼の鋳造時にブリスターと称されるふくれ状の表面欠陥が生じることがある。従って、N含有量の上限を0.05質量%以下としてもよい。
本発明で取り扱う金属材料は、珪素(Si)を含有してもよい。Siは任意元素であり、含有されなくてもよい。Siは、強度を確保したり、溶接性を向上させたりする観点から、鋼材に添加される元素であって、求める性能に応じて適宜添加してもよい。ただし、Si含有量が3.0%を超えると、温間圧延での圧延性、および加工性が低下する。そのため、Si含有量の上限を3.0質量%以下としてもよい。Si含有量の下限は特に限定されないが、0.001%未満にするにはコストの上昇を招く場合があることから、これを下限としてもよい。
本発明で取り扱う金属材料は、銅(Cu)を含有してもよい。Cuは任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Cuは、微細な析出物を形成して鋼の強度を高める。Cu含有量が0.001%未満であれば、上記効果が得られない。一方、Cu含有量が1.0%を超えると、割れが発生しやすくなり、また成形性が低下する。したがって、Cu含有量の上限は1.0%としてもよい。
本発明で取り扱う金属材料は、アルミニウム(Al)を含有してもよい。Alは任意元素であり、含有されなくてもよい。精錬において脱酸剤としてAlが添加された場合、その一部が鉄鋼材料に含有されることが多い。Alは、鉄鋼材料中でアルミナとして残留するほか、AlN等の析出物や固溶元素として存在する。適正範囲のAlを含有するほうが、鉄鋼材料の機械的性質が優れる。一方、Al含有量が3質量%超であると、脆化により冷間加工が困難となる。一方、Al含有量が0.500%を超えれば、フェライトの粒界を脆化させ、張り出し成形性が低下する。したがって、Al含有量を0.001〜3.0%としてもよい。
エッチング後の電解液をフィルターに通し、捕集した残渣として炭化物および/または窒化物を抽出する際に、前記フィルターが4フッ化エチレン樹脂製フィルターであってもよい。炭化物および/または窒化物を含む介在物や析出物5や残渣11の同定・定量分析するために、電解液から介在物或いは析出物5や残渣11を濾し採るフィルターについては、従来使用されているニュークリポアフィルター(GE社製)では、溶解損傷して残渣を濾し採ることが難しい。特に、キレート剤がトリエチレンテトラミンを含むときに、フィルターの損傷が顕著である。4フッ化エチレン樹脂製フィルターであれば、キレート剤がトリエチレンテトラミンを含むときであっても、溶解損傷が少ないので、好ましい。
本発明により、上記の方法により抽出した炭化物および/または窒化物を分析することも提供される。炭化物および/または窒化物について、XRFにより概略組成分析を行い、またはJIS G1211に基づくCS炭素定量方法および/または、JIS G1228に基づく窒素定量方法によって精緻に測定を行うことも可能である。また、表面分析手法として、SEMによる観察、EDSによる元素解析等を用いてもよい。エッチングの途中で、炭化物および/または窒化物が抽出される試料の表面を分析することにより、時系列で炭化物および/または窒化物の抽出される状況を観測することもできる。本発明によれば、電解液中のトリエチレンテトラミンによる電気分解の安定化や電解液中のイオンによる影響の低減等の作用により、炭化物および/または窒化物を正確に抽出でき、すなわち、メタラジー的にマスバランスが得られる。
また、本発明により、金属材料中の固溶炭素量および/または固溶窒素量の分析方法も提供される。上述した、抽出された炭化物および/または窒化物それぞれに含有される炭素量および/または窒素量の分析に加えて、金属材料中に含有される全炭素量および/または全窒素量を分析し、それらの差し引きにより(下記式参照)、固溶炭素量および/または固溶窒素量が求められる。

(固溶炭素量)=(金属材料中に含有される全炭素量)−(抽出した炭化物に含有される炭素量)

(固溶窒素量)=(金属材料中に含有される全窒素量)−(抽出した窒化物に含有される窒素量)

なお、金属材料中に含有される全炭素量および/または全窒素量は、抽出された炭化物および/または窒化物と同様に、JIS G1211に基づくCS炭素定量方法および/または、JIS G1228に基づく窒素定量方法によって精緻に測定を行うことが可能である。
本発明によれば、炭化物および/または窒化物を正確に抽出でき、固溶炭素および/または固溶窒素を含めて、メタラジー的に正確なマスバランスが得られる。
さらに本願発明により、上記の炭化物および/または窒化物の抽出方法に用いる電解液も提供される。
以下、実施例を通じて、本願発明について説明する。ただし、本願発明は、以下の実施例に限定して解釈されるべきではない。
本願発明に係る電解液を使用した電解によって、金属試料における介在物或いは析出物の炭素量および窒素量の定量分析を行った。対照例として、従来の電解液を用いて電解した比較例を用意した。
本実施例においては、金属試料として、本実施例においては、鉄鋼試料として、0.4質量%Cu含有する鋼材を、1350℃×30minの加熱処理で溶体化した後、水中で急冷した試料を用いた。なお、この鋼材を成分分析したところ、Si 3.3%,Mn770ppm,P60ppm,S245ppm,Sol.Al270ppmが含まれていた。

電解液は、以下の2種類を用意した。
(1)4%MS:従来から知られている、4質量%サリチル酸メチル+1質量%サリチル酸+1質量%塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を対照例としたもの。
(2)5%TETA:トリエチレンテトラミン(TETA)5体積%+1質量%塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)の電解液。
なお、溶媒は(1)〜(2)のいずれでもメタノールとした。
夫々の電解液を用いて、金属試料(鉄鋼試料)を1g相当電解して、抽出された電解残渣(炭化物および/または窒化物を含む介在物および析出物)に含まれる炭素と窒素の含有量をそれぞれ、JIS G1211に基づくCS炭素定量方法および、JIS G1228に基づく窒素定量方法によって、定量した。なお、いずれの場合もPt電極を陰極として、電解を行った。また、電解残渣のXRF測定から、FeCおよびAlNの存在が認められた。
また、夫々の電解液で電解する前の、金属試料(鉄鋼試料)を1gに含まれる全炭素量および全窒素量をそれぞれ、JIS G1211に基づくCS炭素定量方法および、JIS G1228に基づく窒素定量方法によって、定量した。
上述した、抽出された電解残渣に含有される炭素量および/または窒素量を、金属材料(鉄鋼材料)中に含有される全炭素量および/または全窒素量をから差し引くことにより(下記式参照)、金属試料(鉄鋼試料)1g中の固溶炭素量および/または固溶窒素量を求めた。

(固溶炭素量)=(鉄鋼材料中に含有される全炭素量)−(抽出した炭化物に含有される炭素量)

(固溶窒素量)=(鉄鋼材料中に含有される全窒素量)−(抽出した窒化物に含有される窒素量)
結果を図4、図5に示す。図4は、炭素についてのマスバランスを示しており、図5は窒素についてのマスバランスを示している。
これらの図のそれぞれの帯グラフにおいて、全体の高さが、金属試料(鉄鋼試料)に含まれる全炭素量または全窒素量を濃度で示したものであり、色の薄い部分が抽出された電解残渣(炭化物および/または窒化物を含む介在物および析出物)に含まれる炭素または窒素の含有量を濃度で示したものであり、色の濃い部分が金属試料(鉄鋼試料)に含まれる固溶炭素量または固溶窒素量を濃度で示したものである。
電解液が異なることを除いて、同じ条件で電解および定量分析を行った。それにもかかわらず、図4、図5において、従来法の電解液を用いた場合よりも、本発明例の電解液を用いた場合の方が、電解残渣(炭化物および/または窒化物を含む介在物および析出物)に含まれる炭素または窒素の含有量が高いという結果が得られた。別の言い方をすると、従来法の電解液を用いた場合よりも、本発明例の電解液を用いた場合の方が、金属試料(鉄鋼試料)に含まれる固溶炭素量または固溶窒素量が低いという結果が得られた。そして、本発明例の電解液を用いた場合の方が、メタラジー的に整合性の高い結果であった。例えば、固溶炭素量が、従来法の場合は、600ppmを超えており、これは図1の鉄−炭素平行状態図によるαフェライトの炭素固溶限界である200ppmを遥かに超越している。一方、本発明の場合、固溶炭素量は88ppmであり、メタラジー的に妥当な結果が得られた。このように、本発明によれば、炭化物および/または窒化物を正確に抽出でき、固溶炭素および/または固溶窒素を含めて、メタラジー的に正確なマスバランスが得られることが確認された。
また、本発明例の電解液に関して、トリエチレンテトラミン(TETA)の濃度を0.5体積%から20体積%の範囲で変動させた場合でも、電解や分析に問題は生じることはなく、メタラジー的に正確なマスバランスが得られることが確認された。
本願発明に係る電解液を用いて金属試料を電解することで、炭化物および/または窒化物を正確に抽出でき、固溶炭素および/または固溶窒素を含めて、メタラジー的に正確なマスバランスが得られ、化学分析の精度向上を図ることができる。
4 金属試料
5 介在物・析出物
6 電極(陰極側)
7 参照電極
8 電源(ポテンショスタット)
9 電解液
10 電解槽
11 電解残渣

Claims (9)

  1. 金属材料を電解液中でエッチングし、金属材料中の炭化物および/または窒化物を抽出する方法において、
    0.5〜20体積%のトリエチレンテトラミンを含んでなる電解液を用いることを特徴とする、炭化物および/または窒化物の抽出方法。
  2. 前記炭化物はセメンタイト(FeC)を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の炭化物および/または窒化物の抽出方法。
  3. 前記窒化物は窒化アルミニウム(AlN)を含んでなることを特徴とする、請求項1または2に記載の炭化物および/または窒化物の抽出方法。
  4. 前記電解液は、
    アセチルアセトン、無水マレイン酸、マレイン酸、トリエタノールアミン、サリチル酸、サリチル酸メチルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むFeイオンに対する錯体形成剤;
    テトラメチルアンモニウムクロライド(TMAC)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化リチウム(LiCl)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む電解質;および
    メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む溶媒、を含んでなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化物および/または窒化物の抽出方法。
  5. 前記金属材料は、1質量%以下のCu、3質量%以下のSiを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭化物および/または窒化物の抽出方法。
  6. 前記エッチング後の電解液をフィルターに通し、捕集した残渣として炭化物および/または窒化物を抽出する際に、前記フィルターが4フッ化エチレン樹脂製フィルターであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の炭化物および/または窒化物の抽出方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の炭化物および/または窒化物の抽出方法で抽出した炭化物および/または窒化物を分析することを特徴とする、炭化物および/または窒化物の分析方法。
  8. 請求項7に記載の方法を用いて、前記抽出した炭化物に含有される炭素量を分析し、および/または、前記抽出した窒化物に含有される窒素量を分析し、
    前記金属材料中に含有される全炭素量および/または全窒素量を分析し、
    下記の式により、前記金属材料中の固溶炭素量および/または固溶窒素量の分析方法。

    (固溶炭素量)=(金属材料中に含有される全炭素量)−(抽出した炭化物に含有される炭素量)

    (固溶窒素量)=(金属材料中に含有される全窒素量)−(抽出した窒化物に含有される窒素量)
  9. 金属材料をエッチングし、金属材料中の炭化物および/または窒化物を抽出する際に用いる電解液であって、
    0.5〜20体積%のトリエチレンテトラミン;
    アセチルアセトン、無水マレイン酸、マレイン酸、トリエタノールアミン、サリチル酸、サリチル酸メチルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むFeイオンに対する錯体形成剤;
    テトラメチルアンモニウムクロライド(TMAC)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化リチウム(LiCl)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む電解質;および
    メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む溶媒、を含んでなる電解液。
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