JP6609401B2 - カリクレイン7産生促進剤 - Google Patents
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Description
また、ヒト表皮角化細胞におけるKLK7発現量は、カルシウム、ビタミンD3、レチノイン酸といった細胞分化に影響を与える分子によって変動することが知られている(非特許文献1)。また、KLK7は、銅イオンや亜鉛イオン等の遷移金属イオンがKLK7アミノ酸側鎖のヒスチジン残基にμMオーダーで共有結合することで阻害されることが知られている(非特許文献2)。
KLK7産生促進剤としては、既に塩化カルシウム、レチノイン酸が知られているが、さらに皮膚外用剤への応用に適した物質の探索が望まれている。
(1)チオレドキシン、シリビン、6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート含有ワサビ抽出物、パントテン酸またはその塩、セダノリド、環状フォスファチジン酸から選ばれる1種以上からなるカリクレイン7産生促進剤。
(2)(1)に記載のカリクレイン7産生促進剤を含有する組成物。
(3)医薬品、化粧品、食品、飲料のいずれかであることを特徴とする(2)に記載の組成物。
KLK7は分子質量27,525Daの分泌タンパク質である。KLK7は、角質層の細胞間どうしの結合部分を切断することにより皮膚表面からの細胞の落屑を促し、組織中では皮膚で多く発現される一方、脳、乳腺、脊髄、腎臓等でも発現が見られる。
皮膚の弾力性低下や、シワの増加は、皮膚内のKLK7量が低下しているか否かを指標として評価することができる。KLK7産生促進剤により、皮膚内のKLK7量を増加させることで皮膚の抗老化作用が期待できる。
ヒト組換え体チオレドキシンとはヒトオリゴペプチド−4と称されるE.coliを使った組換え体のペプチドで、市販品としては、オリエンタル酵母工業株式会社製「組換え型ヒト・チオレドキシン」やアリスタヘルスアンドニュートリションサイエンス株式会社製「rhuTRX」を用いることができる。
チオレドキシンを高含有する清酒抽出物としては、市販品のアリスタヘルスアンドニュートリションサイエンス株式会社製「清酒TRX」を用いることができる。
「KLK7産生促進効果の測定方法」
細胞は、NHEK-Neo(ヒト表皮角化細胞、新生児皮膚由来、Life Technologies Japan社製)を用いた。培養液は、EpiLife(登録商標)Medium with 60μM Calcium(Life Technologies Japan社製)にHumedia−KG2増殖添加剤セット(倉敷紡績株式会社製)を加えた培地を用いた。
Cell Lysate サンプルはPierce(登録商標)BCA Protein Assay Kit(Pierce社製)にて全タンパク量を定量した。
また、KLK7タンパク発現量は、ELISA法で測定した。
ELISAプレートは、Phosphate Buffered Saline (PBS) with Tween(登録商標)20 (PBS-T) (タカラバイオ株式会社製)300μL/wellで3回洗浄した。ブロッキング溶液はReagent Diluent Concentrate(×10蒸留水希釈、R&D systems社製)200μL/wellを滴下し、シーリングして37℃1hインキュベートした。ブロッキング終了後、ELISAプレートをPBS-T 300μL/wellで3回洗浄した。Cell Lysateサンプルを50倍Pierce RIPA Buffer(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)で希釈した溶液を100μL/well添加した。併せて、別途のwellに抗原として精製KLK7タンパク試料(KLK7,Recombinant,CF,Human、R&D systems社製)を250,000pg/mlから公比1/2で希釈して7点でKLK7タンパク発現量の検量線を作成した。この抗原−抗体反応は37℃1.5hインキュベートで行った。抗原−抗体反応終了後、ELISAプレートをPBS-T 300μL/wellで3回洗浄した。Detection抗体として、anti-Kallilrein7,goat-poly,Biotin (R&D systems社製)0.2μg/ml(希釈培養液はPBS-T、タカラバイオ株式会社製)を100μL/well滴下し、37℃1hインキュベートした。反応終了後、ELISAプレートをPBS-T 300μL/wellで3回洗浄した。引き続き、Streptavidin-HRP反応としてStreptavidin-HRP(R&D Systems社製)の500倍希釈溶液(希釈培養液はPBS-T、タカラバイオ株式会社製)を100μL/well滴下し、37℃30minインキュベートした。反応終了後、ELISAプレートをPBS-T 300μL/wellで3回洗浄した。発色反応として、室温にてTMB One Solution(Promega社製)を100μL/well滴下し、10分間反応させ、反応終了液として0.5N硫酸を100μL/wellを加えて、全量200μL/wellで吸光度450nmをプレートリーダー(装置名:SPECTRAMAX190、モレキュラーデバイス社製)にて読み取って、検量線に対するKLK7タンパク発現量を算出した。
予め測定した全タンパク量との比でKLK7タンパク発現量(pg/μg protein)を求めた。
チオレドキシンのKLK7産生促進効果
チオレドキシンとして、ヒト組換え体チオレドキシン(rhuTRX、アリスタヘルスアンドニュートリションサイエンス株式会社製)を用いて、KLK7産生促進効果を測定した。測定結果を図1に示す。KLK7タンパク発現量は各群n=3, mean±S.D.で表記した。rhuTRXは1〜10μg/mlの範囲で、濃度依存的に細胞内KLK7を増加させた。
また、既にKLK7産生促進が知られている塩化カルシウムは1mMから0.1mMにおいて、レチノイド(All trans レチノイン酸、和光純薬工業株式会社製)は100nMから10nM添加でそれぞれKLK7発現量が増加していることを確認し、試験系が妥当であることを確認した。図1中のCaCl2は塩化カルシウムを表し、RAはAll trans レチノイン酸を表す。なお、All trans レチノイン酸は脂溶性に富む化合物で、そのままでは培養液に溶解できないので、まずAll trans レチノイン酸をDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解し、そのDMSO溶液を培養液に希釈したため、レチノイドの試験系は、DMSOを0.025%含有している。
ヒト組み換え体チオレドキシンは、塩化カルシウム、レチノイドと比較して、KLK7の産生を促進した。
シリビンのKLK7産生促進効果
シリビン(Sigma-Aldrich社製)のKLK7産生促進効果を測定した。測定結果を図3に示す。KLK7タンパク発現量は各群n=2の平均値で表記した。シリビンは0.05mg/ml添加で細胞内KLK7の産生を促進した。その他にビタミンC(和光純薬工業株式会社製)、ビタミンE(関東化学株式会社製)、CoQ10(Sigma社製)、アスタキサンチン(Sigma社製)、レスベラトロール(和光純薬工業株式会社製)、αリポ酸(Sigma社製)の効果を調べたが、KLK7産生促進効果は認められなかった。この試験系で、コントロール以外のサンプルは、DMSOを0.025%含有する。
6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート含有ワサビ抽出物のKLK7産生促進効果
6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート含有ワサビ抽出物として、金印株式会社製、金印ワサビスルフィニルKPC−1を用いて、KLK7産生促進効果を測定した。測定結果を図4に示す。KLK7タンパク発現量は各群n=3, mean±S.D.で表記した。金印ワサビスルフィニルKPC−1は5μg/mlから50μg/mlにおいて、細胞内KLK7の産生を促進した。図4中の「KPC−1」は金印株式会社製 金印ワサビスルフィニルKPC−1を表す。
パントテン酸カルシウムのKLK7産生促進効果
パントテン酸カルシウム(Sigma-Aldrich社製 D-Pantothenic acid hemi calcium salt)を用いて、KLK7産生促進効果を測定した。測定結果を図5に示す。KLK7タンパク発現量は各群n=3, mean±S.D.で表記した。パントテン酸カルシウムは10μg/mlから100μg/mlにおいて濃度依存的に細胞内KLK7タンパク発現量を増加させた。
セダノリドのKLK7産生促進効果
セダノリド(Enzo Life Science社製 (+)−Sedanolide)を用いて、KLK7産生促進効果を測定した。測定結果を図6に示す。KLK7タンパク発現量は各群n=3, mean±S.D.で表記した。セダノリドは0.5μg/mlから5μg/mlにおいて濃度依存的に細胞内KLK7タンパク発現量を増加させた。
環状フォスファチジン酸のKLK7産生促進効果
環状フォスファチジン酸(SANSHO株式会社製 cPA)を用いて、KLK7産生促進効果を測定した。測定結果を図7に示す。KLK7タンパク発現量は各群n=3, mean±S.D.で表記した。環状フォフファチジン酸は5μg/mlから15μg/mlにおいて濃度依存的に細胞内KLK7タンパク発現量を増加させた。
Claims (3)
- チオレドキシン(チオレドキシンリダクターゼを含むものを除く)からなる皮膚におけるカリクレイン7産生促進剤(レドックス制御機構の正常化、または、皮膚炎予防治療を目的として使用するものを除く)。
- 請求項1に記載のカリクレイン7産生促進剤を含有する皮膚におけるカリクレイン7産生促進用の組成物(レドックス制御機構の正常化、または、皮膚炎予防治療を目的として使用するものを除く。チオレドキシンリダクターゼを含むものを除く)。
- 医薬品、化粧品、食品、飲料のいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の皮膚におけるカリクレイン7産生促進用の組成物(レドックス制御機構の正常化、または、皮膚炎予防治療を目的として使用するものを除く。チオレドキシンリダクターゼを含むものを除く)。
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