JP6608491B2 - 医療支援システム及び医療支援方法 - Google Patents
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Description
そして、この地域包括ケアシステムを実現するため、従来から介護と医療との連携が広く求められている。例えば、介護施設等が保有する介護関連情報と医療機関が保有する医療関連情報とを、情報処理技術を利用して互いに共有することができれば、高齢者等の健康状態を平常時から病気の罹患期、さらには退院後の生活に至るまで一貫して把握することができ、各高齢者等に応じた最適な介護や医療等を行なうことができる。
また、特許文献2には、ネットワークを利用した高齢者情報管理システムが記載されている。具体的には、特許文献2のシステムでは、高齢者の健康状態や各種の要望や相談を随時把握できるようにし、医療機関等に高齢者の情報を伝達している。
このように表現の異なる状況では、介護と医療との連携が上手くいかないというのは当然である。医療側としては、介護従事者等も医療について勉強しなければ介護と医療との連携が図れない旨主張する。しかし、介護側にとっても、介護の視点は高齢者等の生活を支える面が中心になっており、介護従事者等が利用する表現は、高齢者等の日々の生活に密着した健康状態をわかりやすく示すものである。そのため、介護の現場において、急に医療用語を使用するように変更したとしても上手くいくとは言い難く、逆に日々の介護業務に支障をきたすおそれが生じる。
これを避けるためには、介護側においても入院の適切なタイミングを判断することが重要であるが、健康の阻害・増悪をいち早く見つけ出すためには、医療の現場において各患者の健康状態に応じて医師が常に頭の中で繰り返す診断過程や治療に結び付く経験から生まれる感覚が必要である。しかし、介護側においてもそのような感覚を共有することは、一朝一夕に実現できるものではなく、現実的には困難である。
このように、本発明では、介護の現場で行われる介護的判断と医療の現場で行われる医療的判断の双方の専門的判断を重要視して点数化すると共に、専門性の異なる介護従事者等と医療従事者とを結びつける共通言語を設定した。これにより、介護従事者等と医療従事者の双方が、高齢者等の健康状態を容易、迅速、正確に判断することができる。その結果、介護と医療とを好適に連携させた地域包括ケアシステムを実現することができる。
また、高齢者等の健康状態を点数化及び共通言語化することによって、誰が見ても理解できるものとなり、入院判定の理由を客観的且つ論理的に把握することができる(可視化)。特に、入院の最適なタイミングを見誤ることがないので、高齢者等の尊厳の保持と自立生活を支援しつつ「ほぼ在宅時々入院」のスタイルを確立し、高齢者等の生活を好適に支援することができる。一方、介護従事者等及び医療従事者にとっても、自分たちの実施した業務がどのように反映されているか客観的且つ論理的に理解することができるので、高齢者等の健康管理に直接参加しているという満足感を得ることができる。
また、介護従事者等にとっては、一定のルールに従って同一同質の業務を遂行できるようになるので(業務の標準化)、自己判断という責務に追われる介護従事者等の業務量及びストレスを緩和することができる。
本実施形態は、介護従事者等の支援が必要な者と関連のある者(以下、介護従事者)と、医療従事者との間において、高齢者等の支援が必要な者の情報を共有し、介護と医療との連携を実現することができる医療支援システムの発明に関するものである。
なお、本実施形態でいう介護とは、高齢者、障害者、病人等を介抱して世話をすること等の狭義の意味での介護に限定されず、支援が必要な者(以下、被介護者)に対し、広く一般的な世話等、生活していくうえで何等かの支援をすることをいう。
また、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
先ず、本実施形態に係る医療支援システムSを用いることによって実現する、介護と医療とを好適に連携させた地域包括ケアシステムの概略について説明する。
図1及び図2は、介護と医療とが連携した地域包括ケアシステムを概念的に示す図である。
上記環境にある被介護者は、図1に示すように、地域の介護サービス、訪問看護ステーション、在宅医療のかかりつけ医等に支えられて生活している。また、健康状態が悪化したとき等は、入院設備の整った病院等の医療機関に入院することにより、「ほぼ在宅時々入院」という個人の尊厳を保持しつつ自分らしい生活を送ることができる。
本実施形態の医療支援システムSは、上記のうち、特に、体調不良・増悪に応じて、かかりつけ医等に往診・外来する際、又は医療機関に入院する際の判断において関与する。
次に、医療支援システムS、すなわち、介護と医療との連携を実現するシステム(装置)の構成について図3を参照しながら説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る医療支援システムSの概略構成図である。
具体的には、医療支援システムSは、医療機関側に備えられた本装置1と、医療機関側に設置され、本装置1と院内LAN等のローカルネットワークにより通信可能に接続された医療従事者用端末2と、介護施設等に設置され、インターネットや3G、4G等の通信ネットワークNを介して通信可能に接続された介護従事者用端末3と、から構成される。また、医療従事者用端末2と介護従事者用端末3には、それぞれ音声入力装置4が通信可能に接続されている。
つまり、本実施形態において、介護と医療との連携は、上記の装置群がシステムとして機能することにより実現される。
なお、医療従事者用端末2及び介護従事者用端末3は、少なくともデータ通信が可能であり、受信したデータを表示することができるものであれば特に限定されるものではなく、医療支援のための専用端末の他、汎用のパソコン、タブレット端末、スマートフォン及び携帯電話・PHS等の各種デバイスが利用可能である。
次に、本装置1の詳細構成について説明する。
本装置1は、医療機関が管理しているサーバコンピュータによって構成されており、制御やデータの計算・加工を行う演算部としてのCPU、読み出し専用の記憶装置としてのROM、メインメモリ(主記憶装置)としてのRAM、通信ネットワークN等を通じて各種情報端末等の通信可能な機器とデータの送受信を行う通信用インターフェース、補助記憶装置としてのハードディスクドライブ、入力装置、及び、出力装置を構成要素として有する。
ハードディスクドライブは記憶部として機能し、各種情報がデータベース化して記憶されている。また、このハードディスクドライブに記憶されているデータの中には、本装置1を動作させ医療支援装置として機能させるための各種プログラムが予めインストールされており、これらのプログラムがCPUによって読み出されて実行されることにより、医療支援装置としての機能が発揮される。
本装置1の構成を機能面から改めて説明すると、本装置1は、図4に示すように、健康情報取得部11、点数算出部12、共通言語変換部13、入院要否判定部14、結果表示部15、搬送時間予測部16、道路交通情報取得部17及び履歴情報記憶部18と、を主な構成要素として有している。これらは、本装置1が実行する各種データ処理を担うものであり、本装置1を構成する上述のハードウェア構成機器とインストールされたプログラムとが協働することによって構成されている。以下、各機能部について個別に説明する。
ここで、健康情報とは、キーボードや音声等により入力されたデータであって、体温、血圧、血糖値、SpO2等の数値データの他、脱水様症状、食事量、嘔吐、下痢等の症状を含め、被介護者の健康状態を判断するために必要な内容が総合的に含まれている情報である。また、健康情報には、介護従事者の観察や気付きによるつぶやき等のテキストデータや音声データ又はそれらのテキストデータや音声データから抽出したキーワードも含まれる。なお、体温、血圧、血糖値、SpO2等の数値データは、被介護者に装着したウェラブル生体計測器等の自動計測器から定時に自動的に転送されることとしてもよい。
本実施形態では、被介護者の健康状態を迅速に把握するため、評価項目として大項目、その大項目を細分化する小項目、さらにつぶやき項目を設定し、それぞれの項目ごとに自動的に点数化する(第一アセスメントロジック)。このとき、評価項目ごとに点数の重み付けが設定されており、例えば、意識状態、呼吸状態、循環器状態等の生命に直結する評価項目については、点数の比重が大きくされている。
図5は、評価項目のうち大項目の一例を示す表であり、図6は、評価項目のうちつぶやき項目の一例を示す表である。
具体的には、大項目として、1.脱水様症状(1.0点、意識状態)、2.食事量低下(1.0点、意識状態)、3.尿量減少(回数)(1.0点、循環器状態)、4.嘔吐(1.0点、意識状態)、5.下痢(1.0点、意識状態)、6.血糖異常(2.1点、意識状態)、7.発熱38度以上(2.1点、意識状態)、8.SpO2 90%以下(3.1点、呼吸器状態)、9.血圧 90以下(3.1点、循環器状態)、10.下血・吐血(4.1点、循環器状態)、11.意識障害(5.1点、意識状態)、12.嘔吐1回+SpO2 90%以下(5.1点、意識状態+呼吸器状態)の12項目が設定されている。
具体的には、1.脱水様症状には、小項目としてa.水分摂取低下とb.食事量低下とがあり、それぞれ上記a.又はb.のうち一つに該当する場合は0点、同時に二つに該当する場合は1.0点を加点するよう設定されている。6.血糖異常には、小項目としてa.80以下:1点、b.70以下:2点、c.400以上:2点、d.500以上:3点を加点するよう設定されている。7.発熱38度以上には、小項目としてa.39度以上:1点を加点するよう設定されている。8.SpO2 90%以下には、小項目としてa.85〜89%:0点、b.80〜84%:1点を加点するよう設定されている。9.血圧90以下にチェックを入れると、小項目であるa.80〜99:0点、b.70〜79:1点、c.180以上:0点、d.200以上:1点を加味するよう設定されている。一方、2.食事量低下、3.尿量減少(回数)、4.嘔吐、5.下痢、10.下血・吐血、12.嘔吐1回+SpO2 90%以下には、小項目については特に設定されていない。
なお、上記小項目は一例であり、適宜変更等されることもあり得る。
例えば、つぶやき項目としては、「肺雑やや聞かれる」、「状態悪化」、「コール時発熱」、「夜間嘔吐」、「痰絡み」、「解熱剤にて夜間対応」、「下肢の浮腫」、「多量の嘔吐」、「食残嘔吐」、「点滴、抗生剤の指示」、「誤嚥性肺炎疑い」、「覚醒不良」、「水分摂取量少ない」、「活気がない」、「腹痛」、「尿混濁」、「介護師の不安」等、その他医療に必要な言葉がキーワードとして適宜設定されている。
なお、上記キーワードは一例であり、これに限定されるものではない。例えば、本システムを継続して運用することによって、キーワードを追加・蓄積していくことも可能である。また、一律の点数ではなく、キーワードごとに細かく点数設定をすることも可能である。
図7に示すように、本実施形態では、介護と医療とを結び付けるための手段である共通言語として、専門用語に頼ることを防ぎ誰もが容易に理解できるように、健康状態を天気に比喩した天気予報の表現を用いている。そして、この天気予報の表現を用いてなるべく言葉を聞いただけで健康状態を直接理解できるように、それぞれに点数の幅をもたせて7つに分類されており、点数算出処理により算出した点数に応じて被介護者の健康状態がその7つの分類のいずれかに振り分けられる構成である。
具体的には、0点の場合は「晴れ健康」、0.1〜1.0点の場合は「晴れのち曇り健康」、1.1〜2.0点の場合は「曇り健康」、2.1〜3.0点の場合は「曇りのち雨健康」、3.1〜4.0点の場合は「小雨健康」、4.1〜5.0点の場合は「大雨健康」、5.1点以上の場合は「豪雨雷健康」と設定されている。
また、上記天気予報の表現ごとに対処方法等も設定されている。例えば、「晴れ健康」、「晴れのち曇り健康」の場合は経過観察、さらに「晴れのち曇り健康」の場合は経過判定日数(3日)続くようなら入院とする。「曇り健康」の場合は経過観察及び往診依頼、さらに、経過判定日数(2日)続くようなら入院とする。「曇りのち雨健康」の場合は往診依頼、経口薬投与、さらに、経過判定日数(2日)で軽快しなければ入院とする。「小雨健康」の場合は厳重観察及び翌日再報告、さらに、経過判定日数(1日)で軽快しなければ入院とする。「大雨健康」の場合は当日中に入院、そして、介護タクシー等で入院とする。「豪雨雷健康」の場合は緊急入院、そして、救急車利用で入院とする。
例えば、合計点数が、2.1点の場合は上記共通言語では「曇りのち雨健康」となり、入院の必要はないと判定され、往診依頼を促し経口薬等で対処となる。なお、この場合でも、経時的変化も把握して同じような状態が2日経っても軽快しなければ入院の必要性有りと判定される。一方、合計点数が4.1点の場合は、上記共通言語では「大雨健康」となり、入院の必要有りと判定され、当日中に入院となる。
例えば、80〜89歳であれば1点加点又は90歳以上であれば2点加点等のように、年齢に応じて加点する。また、点数自体は基準値を超えているが、年齢がまだ若い場合や、過去の健康状態を示す数値からの変動量が少ない場合、すなわち、普段の体調とあまり変化がないような場合等は、一律に入院の必要有りとは判定せず、被介護者ごとに属性や経時的変化等の個別の事情も考慮して総合的に入院の要否を判定する。
本実施形態における入院の要否判定も上記に準じて行う。
例えば、介護従事者及び医療従事者の双方が視認できるように、報告書や一覧表のような形式で、被介護者ごとに氏名、年齢、性別等の属性の他、各項目の点数及びそれらを合計した合計点数(総合点数)、共通言語として健康状態を天気に比喩した天気予報の表現、次にその被介護者が取るべき行動、すなわち、入院要否等を表示する。
また、どの地域やどこの介護施設等にどのような健康状態の被介護者が存在するかを地図上に表示する。具体的には、共通言語である天気予報の表現を用いて、被介護者の健康状態を示す天気予報図として地図上に晴れマークや雨マーク等を表示する。さらに、入院の必要がある被介護者については、地図上に介護施設等の現在位置から医療機関までの搬送時間や医療機関への到着時間を表示する。このとき、搬送ルートを表示してもよい。
具体的には、被介護者がいる介護施設等の現在位置情報から入院先の医療機関までの距離やルートに、後述する道路交通情報取得部17により取得した道路交通情報から得られた道路の渋滞や規制に関する情報を加味して、その介護施設等から医療機関まで搬送時間を計算する。また、このとき、混雑状況等を考慮したうえで、併せて時間的に最短な搬送ルートを検索する。
具体的には、不図示の外部データベースに蓄積又はその外部データベースから配信されている、将来の渋滞予測や現在の渋滞情報、車線規制、通行止め、交通規制等のリアルタイムな道路交通情報を、通信ネットワークNを介して取得する。
履歴情報データ18aには、コード番号等の被介護者を識別する情報、被介護者の氏名、年齢、生年月日、性別、住所等の属性を示す情報、被介護者の病歴や被介護者の健康状態を報告日時と関連付けて示す情報等が含まれる。
また、本装置1は、一のサーバ装置によって構築されたものに限られず、複数台のサーバ装置を用いて構築されたものであってもよい。
次に、本実施形態に係る医療支援方法について説明する。
本実施形態に係る医療支援方法は、コンピュータとして機能する本装置1を用いることで実現され、換言すると、本装置1が実行する医療支援処理では、本実施形態に係る医療支援方法が適用されている。
以下、本実施形態に係る医療支援方法の説明として、本装置1による処理の流れと当該処理中の各工程について説明する。
図8は、医療支援処理の流れを示すフローチャートである。
本装置1を構成するコンピュータにより実行される医療支援処理は、図8の流れにしたがって進行する。
具体的には、健康情報取得部11により、介護従事者用端末3から入力された被介護者の健康状態を示す健康情報を、通信ネットワークNを介して受信し取得する。
具体的には、第一アセスメントロジックに基づいて、取得した健康情報を、評価項目として予め設定された上述の大項目、小項目、つぶやき項目ごとに点数化し、項目ごとの点数及びそれらの点数を合計した合計点数を算出する。
図9は、点数算出処理の流れを示すフローチャートである。図10は、この点数算出処理にて参照されるつぶやき評価項目の一例を示す図である。
なお、ここでは、上述の健康情報取得処理にて、介護従事者の観察や気付きによるつぶやき等のテキストデータを取得した場合を一例に挙げて説明する。
図10に示すように、つぶやき評価項目は、状態1〜状態n(例えばn=15)までそれぞれ規定されており、それぞれの状態を示すテキストデータの文字列が前半部分と後半部分とに分割されて規定されており、それらを組み合わせることによって、一つの状態を示すものである。
例えば、状態1では、前文字列に「呼吸」「息」「声」・・・等と規定されており、後文字列に「音が」「雑音」「ガサガサ」「いつもと違う」「かれて」「枯れて」・・・等と規定されている。また、状態2では、前文字列に「だんだん」「段々」「より」「少し」「少しづつ」「少しずつ」「顏色が」・・・等と規定されており、後文字列に「悪」「わる」「苦」「くる」「息苦し」「よくな」「良くな」・・・等と規定されている。このとき、文字列のキーワードは、同じ意味であっても、漢字、平仮名、片仮名、送り仮名の有無等、介護従事者の様々なつぶやきの記入方法や表現方法に対応できるようになっている。
まず、前文字列の検査を行うため、配列内前文字列の文字が空白か否かを判断する(S203)。空白の場合(S203:YES)、マッチング処理をn回行ったか否かを判断し(S204)、既にn回行っている場合は(S204:YES)、ループ終了として処理を終了する。n回行っていない場合は(S204:NO)、n回終了まで前文字列の検査を繰り返す。
一方、配列内前文字列の文字が空白ではない場合(S203:NO)、つぶやき文字列内に前文字列があるか否かを判断し(S205)、前文字列がある場合(S205:YES)、つぶやき文字列の最初から前文字列前までを一つの文字列Aとし、前文字列後からつぶやき文字列の最後までを文字列Bとする処理を行う(S206)。
続いて、後文字列の検査を行うため、配列内後文字列の文字が空白か否かを判断する(S207)。空白の場合(S207:YES)、前文字列の検査に戻るが、配列内後文字列の文字が空白ではない場合(S207:NO)、AB文字列内に後文字列があるか否かを判断し(S208)、後文字列がある場合(S208:YES)、引き続き、後文字列の位置は前文字から10文字以内に出現しているか否かを判断する(S209)。10文字以内に出現している場合(S209:YES)、戻り値として、チェック項目マスタの状態1と状態評価を得る(S210)。そして、熱発と嘔吐は既にチェックされていれば除く処理をした後(S211)、マッチング処理をn回行ったか否かを判断し(S212)、既にn回行っている場合は(S212:YES)、ループ終了として処理を終了する。n回行っていない場合は(S212:NO)、n回終了まで前文字列の検査から繰り返す。
具体的には、図7に示すように、健康状態を天気に比喩して7つに分類した天気予報の表現を共通言語とし、合計点数に応じて被介護者の健康状態をその7つの分類のいずれかに振り分けることにより、共通言語に変換する。
具体的には、第二アセスメントロジックに基づいて、合計点数を基準値である点数と比較する。また、ここでは、履歴情報記憶部18から該当する被介護者に関する履歴情報を読出し、その履歴情報に含まれる被介護者の年齢等の属性、過去の病歴、過去の健康状態との変動量等も判定要素に含め、総合的に入院の要否を判定する。
図11は、入院要否判定処理の流れを示すフローチャートである。図12は、合計点数の変化と入院パターンとの関係性を示す概略図である。
そして、日付の新しい順に4回(4日)分の合計点数と判定マスタのデータとを比較する処理を行う。まず、合計点数が4.1以上であるか否かを判断し(S302)、合計点数が4.1以上であれば(S302:YES)、メール通知を行い(S303)、入院判断等の欄に要入院を示す入院コメントを出力し(S304)、警告表示の欄等に「○○してください」等の対処法コメントを出力する(S305)。
また、合計点数が4.1以上でなければ(S302:No)、次に、本日の合計点数が3.1以上であり、かつ、昨日の合計点数が0.1以上であるか否かを判断し(S306)、上記条件に該当すれば(S306:YES)、メール通知を行い(S303)、入院判断等の欄に要入院を示す入院コメントを出力し(S304)、警告表示の欄等に「○○してください」等の対処法コメントを出力する(S305)。
また、上記条件に該当しなければ(S306:No)、次に、本日、前日、前々日の合計点数が1.1以上であるか否かを判断し(S307)、上記条件に該当すれば(S307:YES)、メール通知を行い(S303)、入院判断等の欄に要入院を示す入院コメントを出力し(S304)、警告表示の欄等に「○○してください」等の対処法コメントを出力する(S305)。
また、上記条件に該当しなければ(S307:No)、次に、4回全ての合計点数が0.1以上であるか否かを判断し(S308)、上記条件に該当すれば(S308:YES)、メール通知を行い(S303)、入院判断等の欄に要入院を示す入院コメントを出力し(S304)、警告表示の欄等に「○○してください」等の対処法コメントを出力する(S305)。
一方、上記条件に該当しなければ(S308:No)、最後に、本日の合計点数が0.1以上であるか否かを判断し(S309)、本日の合計点数が0.1以上であれば(S309:YES)、入院判断の欄等に「○○してください」等の対処法コメントを出力する(S310)。本日の合計点数が0.1以上でなければ(S309:NO)、そのまま処理を終了する。
具体的には、その介護施設等から医療機関までの距離やルートに、道路交通情報取得部17により取得した道路交通情報から得られた道路の渋滞や規制等に関する情報を加味して、その介護施設等から医療機関までの搬送時間を計算する。このとき、混雑状況等を考慮したうえで、併せて時間的に最短な搬送ルートを検索する。
具体的には、上記に関する内容を報告書や一覧表のような形式又は介護施設等の位置情報と共に地図上に表示する。
次に、上記処理を実行する本装置1を含む医療支援システムSの利用方法の一例について、具体的な事例を用いて説明する。
図13は、医療支援システムSを利用した介護施設と医療機関の業務の流れを関連付けて示す概念図であり、ここでは入院の必要がある被介護者がいる場合の流れを示す図である。図14は、被介護者の健康状態を示す天気予報図の一例を示す図である。図15は、健康情報入力前の被介護者一覧表の一例を示す図である。図16は、吹き出し説明文の一例を示す図である。図17は、結果表示後の被介護者一覧表の一例を示す図である。図18は、被介護者の健康状態を示す天気予報図の一例を示す図である。
なお、介護施設等の介護従事者及び医療機関の医療従事者、特にリーダーや医師等の責任ある立場にある者は、携帯電話・PHSを所持し、いつでもどこでも常に連絡を受けることができる状態にある。
医療支援システムSは、音声入力装置4を介して介護従事者の音声が介護従事者用端末3に入力されたら、自動的に起動するように構成してもよい。また、被介護者によるナースコール等をトリガーとして自動的に起動することもできる。
特に、自宅介護の被介護者がこの医療支援システムSに登録して医療サービスを望む時、医療機関側が認知せずにその該当する個人を登録していない場合であっても、事務局等のシステム管理者が、医療支援システムSから情報を得て医療機関側に伝達することにより、特定の介護施設等に入所していない被介護者であっても、この介護と医療とを連携させた地域包括システムに参加することが可能である。
具体的には、図15に示すような被介護者の情報が掲載された一覧表(入居者状態報告一覧)の画面が介護従事者用端末3の画面上に表示されるので、介護従事者は、その画面を見ることにより確認する。
入居者状態報告一覧に表示される被介護者の情報は、数値の悪い順番、すなわち、健康状態が良くない順番で表示することとしてもよい。このとき、本日の数値データがないときは前日の数値データが悪い順番に表示することとしてもよい。また、特別に健康状態の良くない被介護者については、経過が一目で把握できるように、数日前から本日までの複数の日にまたがる数値データ等を表示することとしてもよい。
具体的には、図15の入居者状態報告一覧の症状欄にて予め指定されている大項目について、その項目ごとに該当するものがある場合はクリック等して適宜選択する。この大項目は、被介護者の健康状態を判断するために医療従事者側が必要とする内容を具体的に示したものである。また、大項目には、必要に応じて小項目が設定されており、こちらについても該当するものがある場合は必要に応じてクリック等して適宜選択する。例えば、大項目の下の欄をクリックすると小項目を示すポップアップマークが表示され、その中から該当する小項目を選択することができる。さらに、備考欄や不図示のつぶやき項目欄等に、介護従事者が気付いた点等についてコメントを直接入力する。
ここで、入力方法は、キーボードから入力する方法であってもよいし、マイク等の音声入力装置4を通じて音声入力する方法であってもよい。また、大項目の一部、例えば、SpO2、血圧、熱、血糖、尿量等については、被介護者に装着したウェラブル生体計測器等の自動計測器から定刻になると数値が自動的に転送され、入居者状態報告一覧に自動入力される構成としてもよい。
なお、入居者状態報告一覧では、例えば、施設名、報告者名、職種等の欄にはポップアップ機能が付加されており、簡単に施設名、報告者名、職種等を選択することができる。また、日付欄は、コンピュータと連動し当日の日付が表示されるようになっている。
そして、その合計点数を、健康状態を示す指標であって介護従事者と医療従事者の双方において共通の認識が可能な共通言語に変換する。本実施形態では、健康状態を天気に比喩して7つに分類した天気予報の表現を共通言語とし、合計点数に応じて被介護者の健康状態をその7つの分類のいずれかに振り分けることにより、共通言語に変換する。
具体的には、図17に示すような点数や天気予報を反映した入居者状態報告一覧を作成し、表示する。例えば、東京花子さん(被介護者)であれば、脱水症状、発熱38.1度以上、食思不振、嘔吐に該当するので、それぞれの項目に加算された点数と、それらを合計した合計点数である「5.1」点が表示される。また、共通言語の天気予報としては、その合計点数に対応した「豪雨雷健康」を表示させる。
また、図18に示すように、所定範囲の地域内に存在する各介護施設等と医療機関の位置情報を表示する地図上においても、天気予報図として表示する。例えば、△△介護センターの東京花子さんが「豪雨雷健康」に相当する場合、地図上の△△介護センターの位置に「豪雨雷健康」を示す天気予報マークと東京花子さんの情報を表示させる。この天気予報マークは、介護従事者用端末3や医療従事者用端末2上でクリック等すると、救急車出動の要否や通院や入院等の判断も含まれた医療必要度を確認することができる。
なお、実際には、すぐに点数が算出されると共に共通言語に変換されるので、介護従事者の体感的には入力するとほぼ同時に点数が表示されることになる。
このとき、連携する介護施設等ごとにそれぞれ入居者状態報告一覧を確認してもよいが、健康状態が悪化している重篤な被介護者がいる介護施設等を天気予報図上において一目で判別できるので、地図上から該当する介護施設等をクリック等して選択し、その詳細内容を確認すると効率的である。例えば、東京花子さんがいる△△介護センターの位置には「豪雨雷健康」を示す天気予報マークが表示され点滅等することにより目立って表示されるので、医療従事者は、優先的に△△介護センターをクリック等して選択して東京花子さんの情報を表示させることができる。このとき、表示される情報には、東京花子さんの履歴情報をもとに、過去の経過が経時的に表示されたグラフや表を表示させることもできる。また、例えば、東京花子さんのように要確認の被介護者がいる場合は、ハイライト表示されているので、医療従事者側においても見落としのリスクが軽減される。
なお、入院の必要性が高いと予想される被介護者がいる場合は、医療機関の医療従事者の中でも、医師や担当者等の責任ある立場にある者が所持する携帯電話・PHSに自動的に連絡する構成としてもよい。また、項目ごとに緊急度を設定しておき、例えば、意識障害等の場合は緊急連絡する構成としてもよい。
具体的には、本実施形態では、4.1点以上が当日中に入院、5.1以上が緊急入院と基準値の点数を設定しており、例えば、東京花子さんの場合であれば、過去の健康状態等も考慮しつつ、合計点数「5.1」点とその基準値とを比較し、緊急入院に該当すると判定する。また、道路交通情報から得られた道路の渋滞や規制等に関する情報を加味して、東京花子さんがいる△△介護センターから□□病院までの搬送時間を計算する。このとき、複数の医療機関がある場合は、最短時間で搬送できる医療機関を優先的に選択する。
なお、先に表示した共通言語である天気予報と、この最終判定結果の情報を同時に表示することとしてもよい。
なお、看取りが決定している患者に関しては、その旨を表示されているので、適宜対応する。
医療機関側は、医療従事者用端末2にて、受信した診療情報提供書を閲覧して確認し、入院カルテを作成する。
なお、本実施形態では、当日中入院とは介護タクシー等利用による入院であり、緊急入院とは救急車利用による入院として区別する。
以上のように、本実施形態によれば、専門性の違う医療と介護の双方を結び付ける共通言語として、天気予報の手法を用い、大項目・小項目・つぶやき項目を入力するといった一定のルールによって点数化した結果(被介護者の健康状態)を7つに分類して天気予報の表現に自動的に振り分け、入院の要否を決定する。
これにより、専門用語に頼ることを防ぎ、どこの介護施設等(地域)に雨が降っている等、被介護者の健康状態を誰もが一目瞭然に把握することができ、被介護者の健康状態を介護従事者及び医療従事者の双方が迅速且つ的確に把握することができ、入院の要否を決定することができる。
そのため、介護と医療との連携を迅速且つ正確に行うことができ、介護と医療とを連携させた地域包括システムを好適に推進することができる。また、被介護者の立場としても「ほぼ在宅時々入院」のスタイルを確立することができ、被介護者がその人らしい生活を安心して送ることがきるように支援することができる。
これにより、業務の標準化が図られ、自己判断という責務に追われる介護従事者の業務量及びストレスを緩和することができる。
また、このように点数化することにより、医師が常に頭の中で繰り返される診断過程や治療に結び付く経験から生まれる感覚を、介護従事者も共有することができる。一方、介護従事者のつぶやき等も点数化することにより、介護従事者が日々の生活の中で感じ取った僅かな変化等の感覚を、医療従事者の側でも共有することができる。
また、職員満足度の向上という面からも、介護従事者及び医療従事者は、自分たちの行った業務が論理的に理解でき、被介護者の健康管理に参加しているという実感を介護従事者及び医療従事者の双方に与えることができる。
また、本実施形態では、主に介護施設等にいる被介護者について説明したが、被介護者がいる各家庭においても当然利用することができる。例えば、介護施設や高齢者施設用の画面、在宅患者用の画面、施設管理者用の画面、医療機関用の画面、スーパーユーザー用の画面等の専用の初期画面や情報入力画面をそれぞれ用意することにより、各種施設のみでなく在宅患者にまで健康管理ができ、遠隔治療に好適に対応することも可能である。
また、本実施形態においては、被介護者の健康状態を判断する際に加点方式としたが、減点方式等でもあってもよい。
すなわち、上記の実施形態では、健康情報取得部11、点数算出部12、共通言語変換部13、入院要否判定部14、結果表示部15、搬送時間予測部16、道路交通情報取得部17及び履歴情報記憶部18が一台のコンピュータによって実現されることとした。ただし、これに限定されるものではなく、複数台のコンピュータによって医療支援装置が構成されてもよい。例えば、点数算出部12等を介護従事者用端末側に備えることとしてもよい。
また、日本の財政において、もし2025年度までに基礎的財政収支の均衡をするためには、仮に2%台の経済成長が継続されたとしても、年間収支を約30兆円改善する必要がある(例えば消費増税だけで対応するなら税率25%の換算)。そのため、高齢化による医療や介護のために向けられる財政支出は、財政健全化の鍵にならざるを得ない。
本発明の医療支援システムは、医療と介護の労働現場を効率化し、人材不足を補い、高いサービスの質を保ちつつ、日本政府の財政健全化に資することから、社会にとって必要不可欠なシステムとなると期待される。
また、本発明の医療支援システムは、全世界の高齢化社会を見据えて、日本だけではなく中国、韓国等をはじめ、高齢化社会が進んでいる各国においても当然利用可能である。
2 医療従事者用端末
3 介護従事者用端末
4 音声入力装置
11 健康情報取得部
12 点数算出部
13 共通言語変換部
14 入院要否判定部
15 結果表示部
16 搬送時間予測部
17 道路交通情報取得部
18 履歴情報記憶部
18a 履歴情報データ
18b 統計データ
S 医療支援システム
N 通信ネットワーク
Claims (10)
- 支援が必要な者と関連のある者と、医療従事者との間で、支援が必要な者の情報を、コンピュータを介して共有する医療支援システムであって、
前記コンピュータは、
前記支援が必要な者の健康状態を示す健康情報を取得する健康情報取得部と、
予め規定した医療機関の評価項目にしたがって前記健康情報を数値化して採点し、前記支援が必要な者の健康状態を示す点数を算出する点数算出部と、
前記点数を、健康状態を示す指標であって前記支援が必要な者と関連のある者と前記医療従事者の双方において共通の認識が可能な共通言語に変換する共通言語変換部と、
前記点数又は前記共通言語を表示する結果表示部と、
を備えたことを特徴とする医療支援システム。 - 前記健康情報取得部は、前記支援が必要な者と関連のある者が入力したテキストデータから予め設定された所定のキーワードを抽出することを特徴とする請求項1に記載の医療支援システム。
- 前記健康情報取得部は、前記支援が必要な者と関連のある者が音声入力した音声データから予め設定された所定のキーワードを抽出することを特徴とする請求項1に記載の医療支援システム。
- 前記点数算出部は、前記評価項目ごとに比重を変えて点数を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医療支援システム。
- 前記結果表示部は、前記支援が必要な者に対する次の行動を指示する内容を含む表示を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の医療支援システム。
- 前記結果表示部は、前記点数又は前記共通言語を前記支援が必要な者の位置情報と共に地図上に表示することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の医療支援システム。
- 前記共通言語は、前記支援が必要な者の健康状態を天気に比喩した天気情報を示す文字又は図柄であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の医療支援システム。
- 前記コンピュータは、
前記支援が必要な者の属性及び過去の健康状態を示す履歴情報を前記支援が必要な者ごとに記憶する履歴情報記憶部をさらに備え、
前記履歴情報記憶部は、前記支援が必要な者の過去の入院日数を示す情報を入院時の前記点数又は前記共通言語と関連付けて記憶することを特徴とすることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の医療支援システム。 - 前記コンピュータは、
道路の渋滞又は規制を示す道路交通情報を取得する道路交通情報取得部と、
前記支援が必要な者の位置情報と前記道路交通情報とを連動させて医療機関までの搬送時間を予測する搬送時間予測部とをさらに備え、
前記結果表示部は、前記支援が必要な者の前記医療機関への搬送時間又は到着時間を表示することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の医療支援システム。 - コンピュータによって、支援が必要な者と関連のある者と、医療従事者との間で、支援が必要な者の情報を共有する医療支援方法であって、
前記コンピュータが、
前記支援が必要な者の健康状態を示す健康情報を取得する健康情報取得処理と、
前記健康情報取得処理によって取得した健康情報を、予め規定した医療機関の評価項目にしたがって前記健康情報を数値化して採点し、前記支援が必要な者の健康状態を示す点数を算出する点数算出処理と、
前記点数算出処理によって算出した前記点数を、健康状態を示す指標であって前記支援が必要な者と関連のある者と前記医療従事者の双方において共通の認識が可能な共通言語に変換する共通言語変換処理と、
前記点数算出処理によって算出した前記点数又は前記共通言語変換処理によって変換した前記共通言語を表示する結果表示処理と、
を実行することを特徴とする医療支援方法。
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