JP6597728B2 - エンジン - Google Patents

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Description

本発明は、複数の気筒が形成されたエンジン本体と、各気筒に導入される吸気が流通する吸気通路と、各気筒から排出される排気が流通する排気通路と、前記排気通路に設けられるタービンと、前記排気通路と前記吸気通路とに接続されて前記排気通路を流通する排気の一部を前記吸気通路に還流するEGR通路とを備えたエンジンに関する。
従来より、エンジンにおいて、過給等のために排気通路にタービンを設けることが行われている。また、このタービンの駆動力を高めるための各種検討がなされている。
例えば、特許文献1には、ターボ過給機を備えた2ロータのロータリーピストンエンジンが開示されている。このエンジンでは、2つのロータ収容室の間に配置されたインターミディエイトハウジングに各ロータ収容室と連通する第1の排気ポートが設けられるとともに、インターミディエイトハウジングと対向する2つのサイドハウジングに各ロータ収容室と連通する第2の排気ポートであって第1の排気ポートよりも早い時期に開口する排気ポートが設けられている。また、2つの第1の排気ポートが共通の集合通路に接続されているとともに、2つの第2の排気ポートがそれぞれ独立して独立通路部に接続されている。そして、これら集合通路と2つの独立通路部とが全てタービンの上流端に接続されている。
特開2016−89720号公報
前記特許文献1のエンジンでは、各ロータ収容室のより早い時期に開口する排気ポートにそれぞれ独立して独立通路部が接続されているが、これら独立通路部に加えて各ロータ収容室のより遅い時期に開口する排気ポートに接続された集合通路もタービンに接続されている。そのため、エンジン本体から独立通路部内に向けては高い圧力の排気が導出されるが、この排気の一部が集合通路側に膨張してしまうため、タービンに導入される排気の圧力を十分に高い状態に維持することができず、タービンの駆動力を十分に高めることができないという問題がある。
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、タービンの駆動力をより効果的に高めることのできるエンジンを提供することを目的とする。
前記課題を解決するためのものとして、本発明は、複数の気筒が形成されたエンジン本体と、各気筒に導入される吸気が流通する吸気通路と、各気筒から排出される排気が流通する排気通路と、前記排気通路に設けられるタービンと、前記排気通路と前記吸気通路とに接続されて前記排気通路を流通する排気の一部を前記吸気通路に還流するEGR通路とを備えたエンジンであって、前記タービンは、排気のエネルギーを受けて回転する複数の翼を備えたタービン本体と、当該タービン本体を内側に収容するタービンハウジングとを備え、前記タービンハウジングの内側空間は、その上流端から前記タービン本体までの部分において、前記タービン本体の回転軸方向について並び且つ前記タービン本体の周方向の全周にわたって互いに独立するように形成された複数の吸入通路に区画されており、前記エンジン本体は、前記各気筒から前記排気通路に排気を導出する排気ポートを備え、前記各気筒の排気ポートは、それぞれ第1排気ポートと、当該第1排気ポートよりも開口時期が遅い第2排気ポートとを備え、前記排気通路は、前記各気筒の第1排気ポートに接続される第1排気通路部と、前記各気筒の第2排気ポートに接続される第2排気通路部とを備え、前記第1排気通路部は、1または排気行程が連続しない2以上の気筒の第1排気ポートと前記吸入通路とを個別に接続する複数の第1独立通路部と、前記タービンハウジングの下流端に接続される下流側通路部とを備え、前記第2排気通路部は、複数の第2排気ポートに接続される複数の第2独立通路部と、当該各第2独立通路部が集合した集合通路部とを有し、前記第2排気通路部は、その下流端が前記下流側通路部に接続されており、
前記EGR通路は、前記集合通路部と前記吸気通路とに接続されており、前記各吸入通路の上流端は前記各第1独立通路部の下流端とのみ接続されており、前記第2排気通路部は、前記各気筒の第2排気ポートから排出された排気であって、EGRガスとして前記吸気通路に還流される排気を除いた全ての排気が前記タービンをバイパスするように、前記第2排気ポートと前記下流側通路部とをつないでいることを特徴とするものである(請求項1)。
本発明によれば、1または排気行程が互いに連続しない2以上の気筒の各第1排気ポートとタービンの吸入通路とが個別に第1独立通路部によって接続されている。そのため、第1独立通路部間での排気干渉を抑制して高圧の排気をタービンに導入することができる。特に、各吸入通路が、タービンハウジングの内側空間の上流端から前記タービン本体までの部分において、前記タービン本体の回転軸方向について並び且つ前記タービン本体の周方向の全周にわたって互いに独立するように形成されており、タービン本体まで互いに独立していることで前記排気干渉を確実に抑制することができる。詳細には、タービンハウジングは、タービン本体の外周を囲み下流側ほど流路面積が小さくなるように構成されたタービンスクロール部と、タービンスクロール部の上流端から上流側に延びる吸入部とを備えている。そして、本発明では、この吸入部とタービンスクロール部とにおいてタービンハウジングの内側空間が、各吸入通路に区画されて、各吸入通路にそれぞれ第1独立通路部が接続されている。そのため、第1独立通路部内の排気をタービン本体に対して下流向きに高い速度で導出することができ、一方の第1独立通路部から導出された排気が他の第1独立通路部への回り込むのを抑制することができる。
しかも、本発明では、第1排気ポートが第2排気ポートよりも早く気筒内の圧力がより高いタイミングで開口するように構成されるとともに、各第2排気ポートに接続される第2独立通路部の下流端が第1排気通路部のうちタービンハウジングの下流端に接続される下流側通路部に接続されて、第2独立通路部がタービンを迂回して第1排気通路部に接続されている。そのため、第1排気ポートから第1独立通路部に高圧の排気を導出することができるとともに、この第1排気ポートから排出された高圧の排気が第2独立通路部側に膨張するのを回避することができ、タービンにより確実に高圧の排気を導入してタービンの駆動力をより効果的に高めることができる。
さらに、本発明では、開口時期が遅く比較的圧力の低い排気が導出される第2排気ポートに接続される第2排気通路部にEGR通路が接続されるとともに、この第2排気通路部のうち各第2排気ポートに接続される第2独立通路部が集合する集合通路部にEGR通路が接続されている。そのため、EGR通路内の圧力脈動を小さく抑えて、各気筒により均一にEGRガスを導入することができる。
前記構成において、前記第2排気通路部の集合通路部には、前記EGR通路との接続部分よりも下流側に設けられて当該集合通路部を開閉可能な排気開閉弁を備えるのが好ましい(請求項)。
この構成によれば、排気開閉弁を閉じ側にすることでEGR通路に流入する排気の量を高めることができ、各気筒に流入するEGRガスの量をより確実に確保することができる。
前記構成において、前記エンジン本体は、複数のロータと、当該各ロータを収容する前記気筒としての複数のロータ収容室と、当該各ロータの外周をそれぞれ囲む複数のロータハウジングと、前記各ロータの側方に設けられる複数のサイドハウジングとを備えるロータリーピストンエンジンであり、前記各第1排気ポートは、前記各サイドハウジングに形成されており、前記各第2排気ポートは、前記各ロータハウジングに形成されているのが好ましい(請求項)。
この構成によれば、第1排気ポートの開口面積を大きく確保して、第1排気ポートを介してタービンに導出される排気のエネルギーを高くすることができる。
前記とは別の構成として、前記エンジン本体は、第1ロータと、第2ロータと、これらロータを収容する前記気筒としての複数のロータ収容室と、これら第1ロータと第2ロータとの間に配置されるインターミディエイトハウジングと、前記第1ロータを挟んで前記インターミディエイトハウジングと対向する第1サイドハウジングと、前記第2ロータを挟んで前記インターミディエイトハウジングと対向する第2サイドハウジングとを備えるロータリーピストンエンジンであり、前記第1ロータの第1排気ポートは、前記第1サイドハウジングに形成されており、前記第2ロータの第1排気ポートは、前記第2サイドハウジングに形成されており、前記第1ロータの第2排気ポートおよび前記第2ロータの第2排気ポートは、ともに前記インターミディエイトハウジングに形成されているとしてもよい(請求項)。
この構成によれば、各第1排気ポートおよび第2排気ポートの開口面積を大きくしてこれらポートから排出される排気の量を多くすることができる。
以上説明したように、本発明のエンジンによれば、タービンの駆動力を高めつつ気筒内に適切にEGRガスを導入することができる。
本発明の実施形態にかかるロータリエンジンの概略構成図である。 エンジン本体の構成を説明するための概略断面図である。 図2のIII−III線断面図である。 ロータの頂部付近の概略拡大図である。 2つのロータ収容室で実施される各行程のタイミグを示した図である。 エキセン角とポートの開口面積との関係を示した図である。 ロータ収容室内の様子を示した概略断面図であり、(a)は排気上死点での図、(b)は排気上死点を過ぎた状態の図である。 ロータ収容室内の様子を示した概略断面図であり、(a)は吸気上死点での図、(b)は吸気上死点を過ぎた状態の図である。 図3のIX−IX線断面の一部を示した図である。 図3の一部を拡大した図である。 吸気ポート開閉弁の開閉領域を示した図である。 タービンの概略断面図である。 図11のXIII−XIII線断面図である。 サイド側独立通路部内の圧力とペリ側独立通路部内の圧力とを比較して示した図である。 排気ポート開閉弁の開閉領域を示した図である。 サイド側独立通路部内の圧力およびペリ側集合通路部内の圧力を示した図である。 ボルテックスチューブの概略断面図である。 本発明の第2実施形態に係るエンジンの概略構成図である。 本発明の第3実施形態に係るエンジン本体の概略構成図である。
(1)第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係るエンジン100の全体構成を概略的に示した図である。図1に示すように、第1実施形態では、エンジン100はロータリーピストンエンジン(以下、単にロータリエンジンという)からなるエンジン本体1を備える。以下では、適宜、図1の左右方向を前後方向という。
エンジン100は、前後方向に並ぶ2つのロータ収容室2(気筒、前側に位置する第1ロータ収容室2a、後側に位置する第2ロータ収容室2b)を有するエンジン本体1と、各ロータ収容室2に導入される吸気が流通する吸気通路30と、各ロータ収容室2から排出される排気が流通する排気通路50と、ターボ過給機70と、EGR装置90とを有する。このエンジン100は、例えば、エンジン本体1を走行用の駆動源として、車両に搭載される。
(1−1)エンジン本体
図2は、エンジン本体1の構成を説明するための概略断面図である。図3は、エンジン本体1の概略断面図である。なお、図2は、正確な断面図ではなく、後述する各ポート11、12、13、14等を模式的に示している(例えば、正確には後述するペリ排気ポート14と他のポート11、12、13とは同一平面上には存在しない)。また、後述するように吸気ポート11、12と排気ポート13、14とは互いに対向する異なる2つのサイドハウジング6に設けられているが、図3(および後述する図7、図8)では、これらポートの相対的な開閉時期を明確にするべく、これら吸気ポート11、12と排気ポート13、14とを同一サイドハウジング6上に示している。
エンジン本体1には、各ロータ収容室2を貫通して前後方向に延びる出力軸であるエキセントリックシャフト4が設けられている。エンジン本体1の各ロータ収容室2には、それぞれ、ロータ3(前側に位置する第1ロータ3a、後側に位置する第2ロータ3b)が収容されている。
各ロータ3は、側面視で略三角形状を有している。各ロータ3は、エキセントリックシャフト4に対して遊星回転運動するように支持されており、3つの頂部3rがロータ収容室2の内周面に沿って移動するようにエキセントリックシャフト4回りに回転する。
各ロータ3にはロータ収容室2の内側面との間の気密性を保つことを目的として多数のシール部材が設けられている。例えば、ロータ3の頂部3r付近を拡大して示した概略図である図4に示すように、ロータ3の各頂部3rには、前後方向に延びるアペックスシール101が取り付けられている。そして、アペックスシール101の前後方向の両端部には、アペックスシール101と連結される略円柱状のコーナーシール102が設けられている。また、ロータ3の前後方向の両側面には、それぞれ、各コーナーシール102どうしの間をロータ3の外周縁と略平行に延びるサイドシール103と、サイドシール103よりもロータ3の径方向内方に位置してロータ3の中心を中心とする円環状の2本のオイルシール104、104とが設けられている。2本のオイルシール104、104はロータ3の径方向に所定の隙間をあけて並んでいる。
エンジン本体1は、各ロータ3の外周をそれぞれ囲むロータハウジング5と、各ロータ3の前方および後方に設けられたサイドハウジング6、6を有している。
ロータハウジング5は、第1ロータ3aの外周を囲む第1ロータハウジング5aと、第2ロータ3bの外周を囲む第2ロータハウジング5bとを含む。また、サイドハウジング6は、第1ロータ3aの前方に位置する第1サイドハウジング6aと、第1ロータ3aの後方且つ第2ロータ3bの前方に位置する中央サイドハウジング6c(以下、インターミディエイトハウジング6cという)とを含む。ロータ収容室2はこれらロータハウジング5とサイドハウジング6、6とによって区画されている。
ロータハウジング5の内周面は、平行トロコイド曲線に沿って延びており、ロータ収容室2内は、ロータ3によって3つの作動室Aに区画されている。
このように構成されたロータリエンジン1では、ロータ3の回転に伴い3つの作動室Aがエキセントリックシャフト4回りに移動して、各作動室Aにて吸気、圧縮、膨張(燃焼)及び排気の各行程が行われる。また、各行程は、エキセントリックシャフト4が270度回転する期間実施される。
第1ロータ3aと第2ロータ3bとは、エキセントリックシャフト4の回転角度において互いに180度の位相差で回転しており、図5に示すように、第1ロータ収容室2aと第2ロータ収容室2bとでは、エキセントリックシャフト4の回転角度(エキセン角)において180度(180°EA、EA:エキセン角)ずれて、吸気、圧縮、膨張(燃焼)および排気の各行程がそれぞれ行われる。従って、2つのロータ収容室2間において各行程は重複する。
図3に示した例では、各ロータ3は、それぞれ、矢印で示すように時計回りに回転し、左上側の領域において概ね吸気行程が行われ、右上側の領域において概ね圧縮行程が行われ、右下側の領域において概ね膨張(燃焼)行程が行われ、左下側の領域において概ね排気行程が行われる。以下、適宜、図3の左右方向を単に左右方向として説明する。
各ロータハウジング5には、ロータ3の回転方向に沿って並ぶ2つの点火プラグ21、21が取り付けられている。また、第1サイドハウジング3aと第2サイドハウジング3bとには、各ロータ収容室2内に燃料を供給するためのインジェクタ(不図示)が取り付けられている。このインジェクタは、後述するプライマリ吸気ポート11内に燃料を噴射する。
(吸気ポートおよび排気ポートの詳細構造)
第1サイドハウジング6aには、第1ロータ収容室2aに吸気を導入するための2つの吸気ポート11、12が形成され、インターミディエイトハウジング6cには、第2ロータ収容室2bに吸気を導入するための2つの吸気ポート11、12が形成されている。これら吸気ポート11、12は、吸気行程が行われる領域に設けられている。図3の例では、吸気ポート11、12は、各ハウジング6a、6cの左上側の部分に形成されており、ロータ収容室2の内側面の左上側の部分に開口している。
ここで、ロータ3の頂部3rの前後方向の両端部に設けられたコーナーシール102は、サイドハウジング6の外周縁に沿って移動する。そのため、吸気ポートがサイドハウジング6の外周縁まで延びていると、吸気ポートにコーナーシール102が脱落するおそれがある。これに伴い、サイドハウジング6に形成された各吸気ポート11、12は、サイドハウジング6の外周縁からロータ3の径方向の内側に所定量離間するように形成されている。
1つのサイドハウジング6において、2つの吸気ポート11、12はロータ3の回転方向に並んでおり、吸気行程において下方の吸気ポート11の方が上方の吸気ポート12よりも早期に開口および閉口するようになっている。以下では、下側の吸気ポート11であってより早いタイミングで開口および閉口する吸気ポート11をプライマリ吸気ポート11といい、上側の吸気ポート12であってより遅いタイミングで開口および閉口する吸気ポート12をセカンダリ吸気ポート12という。
図6は、エキセントリックシャフトの回転角度であるエキセン角と各ポートの開口面積との関係を示した図である。図7(a)、図7(b)、図8(a)、図8(b)は、ロータ収容室2内の様子を示した概略図である。図7(a)は左側の作動室A1が排気上死点にある状態の図、図7(b)は左側の作動室A1が排気上死点をわずかに過ぎた状態の図である。図8(a)は上側の作動室A2が吸気下死点にある状態の図、図8(b)は上側の作動室A2が吸気下死点をわずかに過ぎた状態の図である
図6〜図8に示すように、プライマリ吸気ポート11は、排気上死点付近で開口を開始し、吸気下死点をわずかに超えた時期に閉口する。一方、セカンダリ吸気ポート12は、プライマリ吸気ポート11と同様に排気上死点付近で開口を開始する一方、吸気下死点よりも遅角側且つプライマリ吸気ポート11よりも遅角側の時期で閉口する。例えば、プライマリ吸気ポート11は吸気下死点後30°EA(EA:エキセン角)程度で閉口するのに対して、セカンダリ吸気ポート12はエキセン角で吸気下死点後90°EA程度で閉口する。
また、インターメディエイトハウジング6cには、第1ロータ収容室2aから排気を導出するためのサイド排気ポート(第1排気ポート)13が形成され、第2サイドハウジング6bには、第2ロータ収容室2bから排気を導出するためのサイド排気ポート(第1排気ポート)13が形成されている。吸気ポート11、12と同様に、インターメディエイトハウジング6c、第2サイドハウジング6bに設けられたサイド排気ポート13は、アペックスシール101の脱落を回避するために各ハウジング6b、6cの外周縁から所定量ロータ3の径方向の内側に所定量離間するように形成されている。
本実施形態では、さらに、各ロータハウジング5にもロータ収容室2から排気を導出するためのペリ排気ポート(第2排気ポート)14がそれぞれ形成されている。つまり、第1ロータハウジング5aには第1ロータ収容室2aから排気を導出するためのペリ排気ポート14が形成され、第2ロータハウジング5bには第2ロータ収容室2bから排気を導出するためのペリ排気ポート14が形成されている。
図6に示すように、ペリ排気ポート14は、サイド排気ポート13よりも遅い時期に開口するように配置されている。
図9は、図3のIX−IX線断面の一部を示した図である。図9に示すように、ペリ排気ポート14は、ロータハウジング5の前後方向中央を挟んで前方および後方に延びる略長方形状を有している。ペリ排気ポート14は、アペックスシール101の脱落を回避するべく、ロータハウジング5の前後方向の両縁付近、を除く部分に設けられている。例えば、ペリ排気ポート14の前後方向の寸法は、ロータハウジング5の前後方向の寸法の0.8倍程度に設定されている。
このように、ロータハウジング5にペリ排気ポート14が設けられることで、本実施形態では、エンジン本体1をより適正に稼働させることができる。
具体的には、ロータリエンジン1では、ロータ3の回転に伴ってロータ収容室2内の物質に遠心力が作用するため、燃焼後のガスや燃焼に伴って生成された煤および凝縮水はロータ収容室2の外周縁付近に溜まりやすい。そのため、前記のようにロータ収容室2の外周縁から離間するように形成されたサイド排気ポート13しか設けられていない場合には、燃焼後のガス等がロータ収容室2の外部に適切に排出されないおそれがある。そして、排出されなかった煤がアペックスシール101に付着してアペックスシール101とロータ収容室2の内周面との間の気密性が低下し、圧縮行程において混合気が適切に圧縮されず膨張仕事が低下するおそれがある。また、排出されなかった凝縮水が点火プラグ21等に悪影響をおよぼすおそれがある。また、ロータ収容室2内の煤が点火源となってロータ収容室2内で予期せず燃焼が開始するおそれがある。
これに対して、本実施形態では、ロータハウジング5にペリ排気ポート14が設けられていることで、ロータ収容室2の外周縁付近に溜まった煤をこのペリ排気ポート14からロータ収容室2外に排出することができる。特に、アペックスシール101に煤が付着した場合であっても、この煤をペリ排気ポート14内に脱落させることができる。詳細には、図3の一部を拡大した図10において、矢印で示すようにロータ3の頂部3rがペリ排気ポート14を通過する際、アペックスシール101がペリ排気ポート14の開口縁14rにロータ3の回転方向の下流側から上流側に向かって当接することで、アペックスシール101に付着している煤Cがペリ排気ポート14の開口縁14rによってアペックスシール101からかき落とされる。また、ロータ収容室2の外周縁付近に溜まった凝縮水をペリ排気ポート14から排出することができる。従って、膨張仕事を確保することができるとともに点火プラグ21等を適正に作動させること、および、適切な燃焼を実現できる。
各排気ポート13、14は、基本的に排気行程が行われる領域に設けられており、図3の例では、ロータ収容室2の内側面の左下側の領域に開口している。ただし、図6および図7(a)、(b)に示すように、サイド排気ポート13は、その閉口時期が排気上死点付近となるように設けられる一方、ペリ排気ポート14は、サイド排気ポート13よりも遅角側でかつその閉口時期が排気上死点を超えるように設けられている。これに伴い、吸気行程にある作動室Aにおいて、サイド排気ポート13が開口している期間と、各吸気ポート11、12が開口している期間とは重複しない一方、ペリ排気ポート14が開口している期間と、各吸気ポート11、12が開口している期間とは重複する。
ここで、サイド排気ポート13の開口面積は、サイド排気ポート13のロータ3の径方向についての寸法を大きくすることによって大きくすることができる。これに対して、ペリ排気ポート14の前後方向の寸法はロータハウジング5の前後方向の寸法によって規定される。そのため、ペリ排気ポート14の開口面積を大きくしようとすると、ロータ3の回転方向についてのペリ排気ポート14の寸法を大きくせねばならない。しかしながら、ペリ排気ポート14のこの回転方向の寸法を大きくすると、ペリ排気ポート14の開口開始時期が早くなる、あるいは、閉口時期が遅くなって、膨張行程中にペリ排気ポート14が開口する、あるいは、吸気行程中にペリ排気ポート14が開口する期間が過剰に長くなり、膨張仕事あるいは吸気効率が低下してしまう。そこで、本実施形態では、ペリ排気ポート14の開口開始時期と閉口時期とを適切な時期とし、サイド排気ポート13の開口面積を大きくすることで、排気ポート13、14全体での開口面積を確保している。これに伴い、図6に示すように、サイド排気ポート13の開口面積(最大値)は、ペリ排気ポート14の開口面積(最大値)よりも大きくなっている。
(1−2)吸気通路
吸気通路30は、1本の吸気上流側通路部31と、吸気上流側通路部31の下流端から延びる2つの分岐通路部32、33とを備える。
吸気上流側通路部31には、上流側から順に、エアクリーナー41、ターボ過給機70のコンプレッサ71、インタークーラ42、スロットルバルブ43が設けられている。
一方の分岐通路部32であるプライマリ吸気通路部32の下流側部分はさらに2つ通路部32a、32bに分岐しており、これら通路部32a、32bがそれぞれ独立して第1ロータ収容室2aのプライマリ吸気ポート11と第2ロータ収容室2bのプライマリ吸気ポート11とに接続されている。また、他方の分岐通路部33であるセカンダリ吸気通路部33の下流側部分もさらに2つの通路部33a、33bに分岐しており、これら通路部33a、33bがそれぞれ独立して第1ロータ収容室2aのセカンダリ吸気ポート12と第2ロータ収容室2bのセカンダリ吸気ポート12とに接続されている。
セカンダリ吸気ポート12にそれぞれ接続された2本の通路部33a、33bには、それぞれこの通路ひいてはセカンダリ吸気ポート12、12を開閉する吸気ポート開閉弁18、18が設けられている。
図11は、吸気ポート開閉弁18の開閉領域を示した図である。図11に示すように、本実施形態では、吸気ポート開閉弁18は、エンジン回転数が予め設定された吸気側基準回転数N1以下で且つエンジン負荷が予め設定された吸気側基準負荷Tq1よりも高い低速高負荷領域R1でエンジン本体1が運転されている場合に閉弁され、その他の領域R2では開弁される。
これは、次の理由による。
エンジン回転数が高い場合には、吸気脈動の作用によって吸気下死点を過ぎた後でも吸気ポートから作動室A内には吸気が導入される。そのため、エンジン回転数が高い場合には、吸気下死点を過ぎた後も比較的長い時間開口するセカンダリ吸気ポート12を開放することで吸気効率を高めることができる。
一方、エンジン回転数が低い場合にセカンダリ吸気ポート12が開放されて吸気下死点を過ぎた後長い時間吸気ポートが開放されていると、作動室A内の吸気がセカンダリ吸気ポート12およびこれに接続される吸気通路30に吹き返されて作動室A内の吸気量(新気量)が低減してしまう。そのため、エンジン回転数が低い場合には、セカンダリ吸気ポート12を閉鎖することで新気量を多くすることができる。ただし、エンジン負荷が低い場合は、必要な新気量は少なくなる。さらには、前記のように吸気の吹き返しを生じさせることで、スロットルバルブ43を絞る量を少なくすることができ、ポンピングロスを低減できる。そこで、本実施形態では、低速高負荷領域R1では、吸気ポート開閉弁18を閉弁してセカンダリ吸気ポート12を閉鎖し(セカンダリ吸気ポート12を介した吸気通路30と作動室Aとの間でのガスの流通を停止し)、その他の領域R2では吸気ポート開閉弁18を開弁してセカンダリ吸気ポート12を開放する(セカンダリ吸気ポート12を介した吸気通路30と作動室Aとの間でのガスの流通を許可する)。
(1−3)排気通路
排気通路50は、2つのペリ排気ポート14に接続されるペリ側排気通路部(第2排気通路部)51と、2つのサイド排気ポート13に接続されるサイド側排気通路部(第1排気通路部)54とを備える。
ターボ過給機70のタービン72は、サイド側排気通路部54に設けられている。一方、ペリ側排気通路部51の下流端は、タービン72を迂回してサイド側排気通路部54のタービン72よりも下流側の部分(後述する下流側通路部56)に接続されている。サイド側排気通路部54のうちペリ側排気通路部51との接続部分よりも下流側には、排気を浄化するための三元触媒等の浄化装置58が設けられている。
サイド側排気通路部54は、サイド側排気通路部54の上流側部分を構成して第1ロータ収容室2aのサイド排気ポート13に接続される第1サイド側独立通路部(第1独立通路部)55と、サイド側排気通路部54の上流側部分を構成して第2ロータ収容室2bのサイド排気ポート13に接続される第2サイド側独立通路部(第1独立通路部)55とを備える。
図12は、タービン72の概略断面図である。図13は、図12のXIII−XIII線断面図である。タービン72は、いわゆるラジアルタービンであり、外周に複数の羽根73を有しこれら羽根73に排気が衝突することで回転するタービン本体(いわゆるタービンインペラ)74と、タービン本体74を内側に収容するタービンハウジング75とを有している。
タービンハウジング75は、排気を内側に導入するための吸入部76と、吸入部76の下流端からタービン本体74の外周に沿って延びてタービン本体74を囲むタービンスクロール部77と、タービン本体74で膨張した後の排気を下流側に導出するための導出部78とを有する。本実施形態では、吸入部76は上下流方向にわたって流路面積が一定の略円管状を有している。
タービンスクロール部77の下流端には、タービン本体74に向かって突出して、吸入部76とタービンスクロール部77の下流側部分とを仕切る舌部79が設けられている。タービンスクロール部77は渦巻状を有しており、タービンスクロール部77の流路面積は舌部79(タービンスクロール部77の下流端)に向かって下流側ほど小さくなっている。
このように、タービンハウジング75の流路面積は、その上流端(吸入部76の上流端)から、タービンスクロール部77の上流端(吸入部76の下流端)までは一定とされ、その後、舌部79に向かって漸減していく。ここで、タービンハウジング75の舌部70の先端を通る部分であってタービンスクロール部77と吸入部76との境界部分は、この部分からタービン本体74に向かって流路面積が減少していくことに伴ってのど部80と呼ばれている。
本実施形態に係るタービン72は、いわゆるツインスクロールタービンであり、タービンハウジング75のうち吸入部76とタービンスクロール部77とからなる部分の内側空間は、タービン本体74の回転軸方向について並ぶ2つの空間に区画されており、この内側空間には、2つの独立した吸入通路81、81が形成されている。そして、一方の吸入通路81に第1サイド側独立通路部55が接続されて、他方の吸入通路81に第2サイド側独立通路部55が接続されている。
タービンスクロール部77の導出部78には、サイド側排気通路部54の下流側部分を構成する1本の下流側通路部56が接続されており、タービン本体74を回転させた後の排気はこの下流側通路部56に導入される。
前記のように構成されることで、一方のサイド排気ポート13から排出されて一方のサイド側独立通路部55を通りタービンハウジング75に流入した排気は、他方のサイド側独立通路部55に回り込むことなくタービン本体74の各羽根73に衝突する。そのため、本実施形態では、各サイド排気ポート13から排出された排気のエネルギーを高く維持したまま各羽根73に付与することができる。つまり、排気干渉によってタービン本体74に供給される排気のエネルギーが減少するのを回避でき、タービン本体74の駆動力を高めることができる。
特に、本実施形態では、サイド排気ポート13は、ペリ排気ポート14よりも早いタイミング、つまり、作動室A内の圧力がより高いタイミングで開口する。そのため、サイド側独立通路部55には高圧のブローダウンガス(排気ポートの開口とともに排出される高圧の排気)が流入し、サイド側独立通路部55内の圧力(実線)と、後述するペリ側独立通路部52内の圧力(破線)とを比較して示した図14に示されるように、サイド側独立通路部55およびタービン本体74に導入される排気の圧力は高く、より高いエネルギーがタービン本体74に供給される。
なお、図示は省略したが、各サイド側独立通路部55には、各サイド側独立通路部55の下流端付近と下流側通路部56とを連通して、各サイド側独立通路部55内の排気をタービン72を迂回して下流側通路部56に流すためのバイパス通路と、これを開閉するウエストゲートバルブとが設けられている。また、前記のように、タービンハウジング75の流路面積は、のど部80から下流側に向かって漸減する。そのため、のど部80よりも下流側では排気の流速は高められ、所定の通路からタービンハウジング75に流入した排気の他の通路への回り込みすなわち排気干渉は抑制されて、タービン本体74の駆動力を高めることができる。従って、タービンスクロール部77の内側空間のほぼ全体が2つの空間に区画された前記構成に代えて、タービンハウジング75の内側空間のうちその上流端から舌部79よりも上流側の部分までの空間が、2つに区画されるように構成してもよい。
ペリ側排気通路部51は、第1ロータ収容室2aのペリ排気ポート14と連通する第1ペリ側独立通路部(第2独立通路部)52と、第2ロータ収容室2bのペリ排気ポート14と連通する第2ペリ側独立通路部(第2独立通路部)52と、これら2つのぺリ側独立通路部52が集合したペリ側集合通路部(集合通路部)53とからなる。
各ペリ側独立通路部52には、それぞれ、各ペリ側独立通路部52ひいては各ペリ排気ポート14を開閉可能な排気ポート開閉弁61が設けられている。
前記のように、ロータ収容室2内の煤および凝縮水はペリ排気ポート14によって効果的に除去される。そこで、本実施形態では、エンジンの運転領域によらずエンジンを始動してから所定期間の間、ペリ排気ポート開閉弁61を開弁させてロータ収容室2内に溜まった煤および凝縮水を除去する。
また、本実施形態では、エンジン始動後において、排気ポート開閉弁61は図15に示すように制御される。具体的には、排気ポート開閉弁61は、エンジン回転数が予め設定された排気側基準回転数(基準回転数)N2以下且つエンジン負荷が予め設定された排気側基準負荷(第1基準負荷)Tq11以下の低速低負荷領域R11でエンジン本体1が運転されている場合に閉弁され、その他の領域R12で開弁される。
これは、次の理由による。
前記のように、本実施形態では、ペリ排気ポート14の開口期間と各吸気ポート11、12の開口期間とが重複しており、吸気行程にある作動室Aにおいてこれらのポート11、12、14がともに所定期間開口可能に構成されている。そのため、排気ポート開閉弁61を開弁してペリ排気ポート14を開放する(ペリ排気ポート14を介した排気通路50と作動室Aとの間でのガスの流通を許可する)と、吸気ポート11、12から作動室Aに流入した吸気によって作動室A内の排気(燃焼後のガス)をペリ排気ポート14側に押しやり掃気性能を高めることができる。
ただし、低速低負荷領域R11では、エンジン回転数およびエンジン負荷が低く吸気の圧力が燃焼後の作動室A内の圧力よりも低いことに伴い、ペリ排気ポート14を開放すると、作動室A内の排気が吸気ポート11、12側に流入して作動室A内への吸気の導入を阻害するおそれがある。そこで、本実施形態では、低速低負荷領域R11では排気ポート開閉弁61を閉弁してペリ排気ポート14を閉鎖し(ペリ排気ポート14を介した排気通路50と作動室Aとの間でのガスの流通を停止し)、これにより、作動室A内つまりロータ収容室2内への吸気の導入を促進する一方、その他の領域R2では排気ポート開閉弁61を開弁して前記のように掃気性能を高め、これにより、作動室A内つまりロータ収容室2内への吸気の導入を促進する。
(1−4)EGR装置
EGR装置90は、排気の一部を吸気に還流するための装置であり、排気通路50と吸気通路30とを連通するEGR通路91と、これを開閉するEGRバルブ92と、EGR通路91を通過してロータ収容室2に導入される排気であるEGRガスを冷却するEGRクーラ93とを備える。
EGR通路91は、ペリ側集合通路部53とプライマリ吸気通路部32とに接続されている。本実施形態では、EGR通路91は、ペリ側集合通路部53の途中部に、後述するボルテックスチューブ69を介して接続されている。また、EGR通路91は、プライマリ吸気通路部32の上流側部分であって各プライマリ吸気ポート11に向かって2つの通路に分岐する部分よりも上流側の部分に接続されている。従って、EGR通路91には、各ペリ排気ポート14から排出された排気のみが導入されるとともに、EGR通路91を流通するEGRガスはプライマリ吸気ポート11のみからロータ収容室2内に導入される。
このように、EGR通路91がペリ側集合通路部53に接続されていることで、本実施形態では、EGRガスをより適切に各ロータ収容室2に導入することができる。
図16は、サイド側独立通路部51内の圧力(破線)とペリ側集合通路部53内の圧力(実線)とを比較して示した図である。前記のように、ペリ排気ポート14からはブローダウン(サイド排気ポート13の開口に伴って高圧の排気が排出された)後の比較的低い圧力の排気が導入される。そのため、ペリ排気ポート14と連通するペリ側集合通路部53内の圧力は比較的低くなる。さらに、ペリ側集合通路部53が2つのペリ側排気ポート14と連通していることで、ペリ側集合通路部53内では各ペリ側排気ポート14から排出された排気の圧力脈動が平均化される。従って、ペリ側集合通路部53内の圧力変動幅は小さくなり、ペリ側集合通路部53に接続されたEGR通路91内の圧力変動も小さくなる。従って、各作動室Aおよび各ロータ収容室2に導入されるEGRガス量の変動は小さくなり、各作動室Aおよび各ロータ収容室2内にそれぞれ均一にEGRガスが導入される。なお、前記のように各ペリ排気ポート14からペリ側集合通路部53に導出される排気の圧力が小さいことから、一方のペリ排気ポート14からペリ側集合通路部53へ導出された排気が他方のペリ排気ポート14からペリ側集合通路部53への排気の導出に与える悪影響は小さく抑えられる。
また、前記のように、セカンダリ吸気ポート12には、主としてエンジン回転数が低い領域において、ロータ収容室2からの吹き返しが生じる。そのため、セカンダリ吸気ポート12にEGR通路91が接続されていると、セカンダリ吸気通路部33に吹き返された吸気が、EGR通路91からセカンダリ吸気通路部33へのEGRガスの流入を阻害するおそれがある。また、セカンダリ吸気ポート12にEGR通路91が接続されていると、所定の作動室Aからセカンダリ吸気通路部33に吸気とともに吹き返されたEGRガスが、他の作動室Aに流入して各作動室A内のEGRガス量が不適切になるおそれがある。これに対して、本実施形態では、閉口時期が早くロータ収容室2からの吹き返しがほとんどないプライマリ吸気ポート11およびプライマリ吸気通路部32にEGR通路91が接続されていることで、各ロータ収容室2および各作動室Aに適切な量のEGRガスを導入することができる。
また、ペリ側排気ポート14からペリ側排気通路部51には、圧力とともに温度の低い排気が導出される。そのため、EGRガスの温度をより低くすること、あるいは、EGRガスの温度を所定の温度に低下させつつEGRクーラ93の性能を低く抑えること(例えば、EGRクーラの容量を小さく抑えること)が可能となる。
ここで、前記のようにEGR通路91が接続されるペリ側集合通路部53内の圧力は比較的低い。そのため、エンジンの運転条件によってはEGR通路91の前後差圧が小さくなって十分なEGRガスをロータ収容室2内に導入できないおそれがある。これに対して、本実施形態では、ペリ側集合通路部53のうちEGR通路91の接続部分よりも下流側に、ペリ側集合通路部53を開閉する排気開閉弁63が設けられている。従って、この排気開閉弁63を閉じ側にすることで、前記の運転条件においても、ロータ収容室2内に適切な量のEGRガスを導入することができる。例えば、排気開閉弁63は、エンジン負荷が予め設定されたEGR基準負荷以下の領域において閉じ側に制御され、その開度は、吸気圧(吸気通路30内の圧力)に応じて変更される。あるいは、排気開閉弁63として、全閉と全開とに切り替えられるものが用いられて、吸気圧に応じて全閉と全開とに切り替えられる。なお、EGR通路91を介して吸気通路30から排気通路50に吸気が導入されるのを回避するべく、排気ポート開閉弁61の閉弁時には、排気開閉弁63は全閉とされる。
図17は、ボルテックスチューブ69の概略断面図である。ボルテックスチューブ69は、例えば、特開2002−70657に開示されているようなものを使用することができ、ここでは簡単に説明する。
図17に示すように、ボルテックスチューブ69は、旋回室64aが内側に区画された略円筒状の旋回流形成部64と、旋回流形成部64の一端に接続された暖気吐出部65と、旋回流形成部64の他端に接続された冷気吐出部66と、旋回流形成部64の周壁に形成されたガス導入部67とを有する。旋回室64aは、図17に示すようにその内側で旋回流Sが形成されるように構成されている。ボルテックスチューブ69では、ガス導入部67から高温高圧のガスが導入されると旋回室64a内でその外周面に沿い暖気吐出部65に向かう旋回流S1と、この旋回流S1の内側を通り暖気吐出部65側から冷気吐出部66に向かう旋回流S2とが生じ、これら旋回流S1、S2間での熱交換により、導入されたガスが高温のガスと低温のガスとに分離される。そして、高温のガスは暖気吐出部65から外部に導出されて、低温のガスは冷気吐出部66から外部に吐出される。
本実施形態では、このように構成されたボルテックスチューブ69のガス導入部67と暖気吐出部65にそれぞれペリ側集合通路部53の途中部が接続されて、冷気吐出部66にEGR通路91の上流端が接続されており、ボルテックスチューブ69を介して、ペリ側集合通路部53とEGR通路91とが接続されている。
このように構成されることで、ペリ側集合通路部53から排出された高温高圧のガスの一部は冷却されてEGR通路91に導入され、他部は下流側通路部56へと導出される。従って、本実施形態では、EGRガスの温度をより一層低くすること、あるいは、EGRガスの温度を所定の温度に低下させつつEGRクーラ93の性能をより一層低く抑えることができる。
ここで、前記の温度分離を実現するためには暖気吐出部65の圧力を十分に高くする必要がある。これに対して、本実施形態では、前記排気開閉弁63がペリ側集合通路部53の下流側部分に設けられており、この排気開閉弁63が閉じ側に制御されることで前記圧力が高く維持される。
なお、車両には、エンジンの各部を制御可能なECU(不図示)が設けられており、このECUによって、吸気ポート開閉弁18、排気ポート開閉弁61、排気開閉弁63、EGRバルブ92、スロットルバルブ43等が制御される。
(1−5)作用等
以上のように、本実施形態では、各ロータ収容室2のサイド排気ポート13とタービン72の各吸入通路81とが個別にサイド側独立通路部51によって接続されていることで、排気干渉によるエネルギーロスを回避して各ロータ収容室2から高いエネルギーを有する排気をタービン本体74に導入することができる。特に、本実施形態では、各吸入通路81が吸入部76とスクロール部77のほぼ全体にわたって独立しているため、排気干渉を確実に回避することができる。また、ペリ排気ポート14に接続されるペリ側排気通路部53がタービン72を迂回していることで、サイド側独立通路部51内の排気がペリ側排気通路部53側に膨張するのを回避することができ、サイド側独立通路部51から吸入通路81へより確実に高い圧力の排気を導入することができる。さらに、サイド排気ポート13の開口時期がペリ排気ポート14よりも早い時期に設定されていることで、より高圧のブローダウンガスをタービン本体41に導入することができる。従って、タービン72の駆動力を高くすることができる。
そして、排気行程が互いに重なる2つのロータ収容室2のペリ排気ポート14に共通して接続されるペリ側排気通路部53にEGR通路91が接続されていることで、前記のように、EGR通路91内での圧力脈動を小さく抑えて各ロータ収容室2により均一にEGRガスを導入することができる。
特に、本実施形態では、EGR通路91が吸気通路30のうち吸気の吹き返しの少ないプライマリ吸気通路部32に接続されていることによっても、各ロータ収容室2に適切な量のEGRガスを導入できる。
また、本実施形態では、ペリ側排気通路部53のうちEGR通路91が接続される部分よりも下流側に排気開閉弁63が設けられている。そのため、この排気開閉弁63を閉じ側にすることで、EGR通路91に導入される排気の量を多くすることができ、各ロータ収容室2内のEGRガス量をより確実に確保することができる。
また、本実施形態では、前記のように、タービン72が設けられたサイド側排気通路54と連通するサイド排気ポート13はサイドハウジング6に設けられており、これによってその開口面積が大きく確保されている。そのため、サイド側排気通路54を流通する排気の量を多くして、タービン72の駆動力をより確実に高めることができる。
(2)第2実施形態
第1実施形態では、各ロータハウジング5にペリ排気ポート52を設け、これらペリ排気ポート14に接続されるペリ側排気通路部51にEGR通路91を接続させた場合について説明したが、これに代えて、図18に示すように構成してもよい。図18では、第1実施形態と同じ構成要素には、第1実施形態と同じ符号を付している。
図18に示した本発明の第2実施形態に係るエンジンでは、各サイド側独立通路部55に連通するサイド排気ポート13がそれぞれ第1サイドハウジング6aと第2サイドハウジング6bに設けられている。また、各ロータハウジング5に排気ポートは設けられておらず、インターミディエイトハウジング6cに第1ロータ収容室2aと連通する排気ポート114と第2ロータ収容室2bと連通する第2排気ポート114が設けられている。そして、これら2つの第2排気ポート114、114が第2排気通路部251に接続されている。また、第2排気通路部251が、2つの第2排気ポート114にそれぞれ接続された第2独立通路部252、252と、2つの第2独立通路部252、252が集合した1本の集合通路部253とを有し、この集合通路部253にEGR通路91が接続されている。また、インターミディエイトハウジング6cに設けられた2つの排気ポート114、114の開口開始時期が、第1サイドハウジング6aおよび第2サイドハウジング6bに設けられたサイド排気ポート13、13の開口開始時期よりも遅くされている。
この第2実施形態に係るエンジンにおいても、第1実施形態と同様に、開口開始時期が遅い2つの排気ポート114、114に共通して接続され且つタービン72を迂回する第2排気通路部251の集合通路部253にEGR通路91が接続されるとともに、開口開始時期が早い2つのロータ収容室2のサイド排気ポート13とタービン72の2つの吸入通路81とがそれぞれ独立してサイド側独立通路部55により接続されていることで、タービン72の駆動力を高めつつ各ロータ収容室2により均一にEGRガスを導入することができる。
(3)第3実施形態
第1実施形態および第2実施形態では、エンジン本体がロータリエンジンである場合について説明したが、本発明に係るエンジン本体は複数の気筒を有するレシプロエンジンであってもよい。図19は、エンジン本体が多気筒のレシプロエンジンの場合の本発明の第3実施形態に係るエンジンの概略構成図である。図19では、第1実施形態と同じ構成要素には、第1実施形態と同じ符号を付している。
図19に示した例では、エンジン本体は直列4気筒の4サイクルエンジンであり、所定の方向に並ぶ4つの気筒を有している。具体的には、エンジン本体には、図19の左から順に第1気筒302a、第2気筒302b、第3気筒303c、第4気筒303dが形成されている。このエンジンでは、各行程が第1気筒302a→第3気筒303c→第4気筒303d→第2気筒303bの順で行われる。
エンジン本体には、各気筒302a〜dに、それぞれ2つの吸気ポート311、311と、2つの排気ポート313、314(第1排気ポート313、第2排気ポート314)とが設けられている。また、エンジン本体には、各吸気ポート311をそれぞれ開閉する吸気バルブ321と、各排気ポート313、314をそれぞれ開閉する排気バルブ323、324とが設けられている。
各気筒302a〜dにおいて、一方の排気バルブ323(以下、第1排気バルブ323という)の開弁開始時期は、他方の排気バルブ324(以下、第2排気バルブ324という)の開弁開始時期よりも早い時期に設定されており、第1排気バルブ323によって開閉される第1排気ポート313は、第2排気バルブ324によって開閉される第2排気ポート314よりも早い時期に開口を開始する。
各吸気ポート311は全て共通の吸気通路30に接続されている。
各気筒302a〜dの第1排気ポート313は、第1排気通路部354に接続されている。第1排気通路部354には、前記第1実施形態と同様の構造を有するタービン72が設けられている。第1排気通路部354は、タービン72の各吸入通路81と個別に接続される2本の第1独立通路部355、355と、タービン72の導出部78に接続される下流側通路部356とを有する。そして、一方の第1独立通路部355が、排気行程が互いに連続しない第1気筒302aと第4気筒302dの各第1排気ポート313、313と連通し、他方の第1独立通路部355が、排気行程が互いに連続しない第2気筒302bと第3気筒302cの各第1排気ポート313、313と連通している。詳細には、各第1独立通路部355はその上流側部分において2つに分岐しており、この分岐通路と各第1排気ポート313とが接続されている。
第2排気ポート314は、全て共通の第2排気通路部351に接続されている。詳細には、各排気ポート314からそれぞれ第2独立通路部352が延びており、これら第2独立通路部352が1本の集合通路部353に集合している。第2排気通路部351は、タービン72を迂回して下流側通路部356に接続されている。そして、集合通路部353の途中部と吸気通路30の途中部(スロットルバルブ43よりも下流側の部分)とがEGR通路91によって接続されている。また、第2排気通路部351のうちEGR通路91との接続部分よりも下流側の部分に、この部分を開閉する排気開閉弁63が設けられている。
このように構成された第3実施形態に係るレシプロエンジンにおいても、第1、第2実施形態と同様に、開口開始時期が遅い第2排気ポート324の全てに共通して接続され且つタービン72を迂回する第2排気通路部351の集合通路部353にEGR通路91が接続されるとともに、排気順序が連続しない気筒の第1排気ポート323であって開口開始時期が早い第1排気ポート323にそれぞれ独立して第2独立通路部355が接続されていることで、タービン72の駆動力を高めつつ各ロータ収容室2により均一にEGRガスを導入することができる。
(4)その他の変形例
前記のように、タービン70として、タービンハウジング75の内側空間のうちその上流端からのど部80までの空間、あるいは、のど部80を超えてタービンスクロール部77の下流端よりも上流側の部分までの空間のみが、2つに区画されたものを用いてもよい。
また、前記第1実施形態および第2実施形態では、各ロータ収容室2について吸気ポートが2つ設けられた場合について説明したが、これを一つとしてもよい。例えば、セカンダリ吸気ポート12を省略してもよい。また、前記ボルテックスチューブ69や排気開閉弁63は省略可能である。また、エンジン本体1は、車両の駆動源として用いられる場合に限らず、例えば、車両の駆動源としてモータを備えたハイブリッド車両に設けられてこのモータに電力を供給するための電力源として利用されてもよい。
13 サイド排気ポート(第1排気ポート)
14 ペリ排気ポート(第2排気ポート)
51 ペリ側排気通路(第2排気通路部)
52 ペリ側独立通路部(第2独立通路部)
53 ペリ側集合通路部(集合通路部)
54 サイド側排気通路(第1排気通路部)
55 サイド側独立通路部(第1独立通路部)
56 下流側通路部
72 タービン
81 吸入通路
91 EGR通路

Claims (4)

  1. 複数の気筒が形成されたエンジン本体と、各気筒に導入される吸気が流通する吸気通路と、各気筒から排出される排気が流通する排気通路と、前記排気通路に設けられるタービンと、前記排気通路と前記吸気通路とに接続されて前記排気通路を流通する排気の一部を前記吸気通路に還流するEGR通路とを備えたエンジンであって、
    前記タービンは、排気のエネルギーを受けて回転する複数の翼を備えたタービン本体と、当該タービン本体を内側に収容するタービンハウジングとを備え、
    前記タービンハウジングの内側空間は、その上流端から前記タービン本体までの部分において、前記タービン本体の回転軸方向について並び且つ前記タービン本体の周方向の全周にわたって互いに独立するように形成された複数の吸入通路に区画されており、
    前記エンジン本体は、前記各気筒から前記排気通路に排気を導出する排気ポートを備え、
    前記各気筒の排気ポートは、それぞれ第1排気ポートと、当該第1排気ポートよりも開口時期が遅い第2排気ポートとを備え、
    前記排気通路は、前記各気筒の第1排気ポートに接続される第1排気通路部と、前記各気筒の第2排気ポートに接続される第2排気通路部とを備え、
    前記第1排気通路部は、1または排気行程が連続しない2以上の気筒の第1排気ポートと前記吸入通路とを個別に接続する複数の第1独立通路部と、前記タービンハウジングの下流端に接続される下流側通路部とを備え、
    前記第2排気通路部は、複数の第2排気ポートに接続される複数の第2独立通路部と、
    当該各第2独立通路部が集合した集合通路部とを有し、
    前記第2排気通路部は、その下流端が前記下流側通路部に接続されており、
    前記EGR通路は、前記集合通路部と前記吸気通路とに接続されており、
    前記各吸入通路の上流端は前記各第1独立通路部の下流端とのみ接続されており、
    前記第2排気通路部は、前記各気筒の第2排気ポートから排出された排気であって、EGRガスとして前記吸気通路に還流される排気を除いた全ての排気が前記タービンをバイパスするように、前記第2排気ポートと前記下流側通路部とをつないでいることを特徴とするエンジン。
  2. 請求項1に記載のエンジンにおいて、
    前記第2排気通路部の集合通路部には、前記EGR通路との接続部分よりも下流側に設けられて当該集合通路部を開閉可能な排気開閉弁を備えることを特徴とするエンジン。
  3. 請求項1または2に記載のエンジンにおいて、
    前記エンジン本体は、複数のロータと、当該各ロータを収容する前記気筒としての複数のロータ収容室と、当該各ロータの外周をそれぞれ囲む複数のロータハウジングと、前記各ロータの側方に設けられる複数のサイドハウジングとを備えるロータリーピストンエンジンであり、
    前記各第1排気ポートは、前記各サイドハウジングに形成されており、
    前記各第2排気ポートは、前記各ロータハウジングに形成されている、ことを特徴とするエンジン。
  4. 請求項1または2に記載のエンジンにおいて、
    前記エンジン本体は、第1ロータと、第2ロータと、これらロータを収容する前記気筒としての複数のロータ収容室と、これら第1ロータと第2ロータとの間に配置されるインターミディエイトハウジングと、前記第1ロータを挟んで前記インターミディエイトハウジングと対向する第1サイドハウジングと、前記第2ロータを挟んで前記インターミディエイトハウジングと対向する第2サイドハウジングとを備えるロータリーピストンエンジンであり、
    前記第1ロータの第1排気ポートは、前記第1サイドハウジングに形成されており、
    前記第2ロータの第1排気ポートは、前記第2サイドハウジングに形成されており、
    前記第1ロータの第2排気ポートおよび前記第2ロータの第2排気ポートは、ともに前記インターミディエイトハウジングに形成されている、ことを特徴とするエンジン。
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