以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、図1の実施の形態に係る過給機付エンジンシステム(以下エンジンと略称する)の概略構成図である。また図2は、図1の部分側断面図である。
過給機付エンジンシステムは直列4気筒4サイクルのエンジン1を備えている。
エンジン1のシリンダブロック2には第1〜第4気筒3a、3b、3c、3d(これらを総称するときは気筒3という)が一水平線上に配設されている。各気筒3の構成は共通で、図2に示すように燃焼室4の上部には吸気Wiを吸入するための吸気ポート6と排気Weを排出するための排気ポート8とが設けられている。吸気ポート6にはこれを開閉する吸気バルブ7が、排気ポート8にはこれを開閉する排気バルブ9が、それぞれ設けられている。さらに図略のシリンダヘッドには、燃焼室4の頂部に火花を発生させる点火プラグ5が設けられている。その他、図略の燃料供給手段(燃料噴射弁など)が適宜位置に設けられている。
エンジン1の運転状態を検出するために、エンジン1には、クランク角度センサSW1、エンジン水温センサSW2、エアフローセンサSW3、吸気温度センサSW4が設けられている。また、このエンジン1を搭載した車両の運転状態を検出するために、車両には、アクセル開度センサSW5、車速センサSW6等が設けられている。
また本実施形態のエンジン1は、一般的な4気筒エンジンと同様、各気筒3が、クランク角180度(以下180°CAと表記する)ごとに順次点火時期を迎えるように互いに各行程をずらして運転されている。点火順序はいわゆる#1→#3→#4→#2(#xは第x気筒であることを示す)である。表1に、各気筒3の行程の遷移を示し、図3にタイミングチャートを示す。
表1並びに図3を参照して、各行は第1気筒3a〜第4気筒3d、各列は180°CA毎の行程の遷移を示す。表1に示すように、例えば第1気筒3aが膨張行程にあるとき、第2気筒3bは排気行程、第3気筒3cは圧縮行程、第4気筒3dは吸気行程にある。
なお図2は、第1気筒3aが膨張行程から排気行程への移行期(下死点付近)にある状態を示している。このとき、排気バルブ9が開いて排気Weが燃焼室4から排気ポート8へ排出され始める(ブローダウン)。
また表1並びに図3に示すように、第1気筒3aがブローダウンを開始しているときに第2気筒3bは、排気行程から吸気行程への移行期(上死点付近)にある。この移行期において、図示のように吸気バルブ7と排気バルブ9とが共に開弁している期間、いわゆるオーバラップ期間が設けられている。
各気筒3の排気ポート8には、排気マニホールド16の上流側を形成する4つの独立排気通路16a、16b、16c、16dが接続されている。
図2に示すように、排気マニホールド16の独立排気通路16a〜16dの上流端には図略のシリンダヘッドに固定されるフランジ16eが設けられ、このフランジ16eを介して排気マニホールド16の独立排気通路16a〜16dは、第1〜第4気筒3a〜3dの排気ポート8にそれぞれ接続されている。各独立排気通路16a〜16dは、全長にわたってφ36mmの円と同面積の開口面積S1に設定されている。
図4は図1の実施の形態に係る要部を示す外観斜視図である。図5は図1の実施の形態に係る要部を拡大して示す外観斜視図である。
図1、図4、図5に示すように、第1排気通路16aおよび第4排気通路16dは、その全長にわたって独立状態を維持するが、第2排気通路16bと第3排気通路16cとは、その下流側で集合され、補助集合排気通路16bcとなっている。従って排気マニホールド16の下流端付近では3つの独立排気通路(第1排気通路16a、補助集合排気通路16bc、第4排気通路16d)が形成されている。第1、第4排気通路16a、16dおよび補助集合排気通路16bcは、第1排気通路16aと第4排気通路16dとが補助集合排気通路16bcを両側から挟むように浅い角度で(略平行が好ましい)並列配置されており、全体として排気マニホールド16を構成する。以下、特に記す場合を除き、独立排気通路とは下流側の3つの独立排気通路を指すものとする。
第1排気通路16aと第4排気通路16d、および第2排気通路16bと第3排気通路16cとはそれぞれ互いに対称形状となっている。従って、第1排気通路長さLaと第4排気通路長さLdとは略等しくなっている。また、補助集合排気通路16bcの長さを含めた第2排気通路16bの長さを第2排気通路長さLb、補助集合排気通路16bcの長さを含めた第3排気通路16cの長さを第3排気通路長さLcとした場合、第2、第3排気通路長さLb、Lcは、それぞれ第1排気通路長さLaと略等しくなるように構成されている。
さらに本実施形態において、第1排気通路長さLaは200mm乃至はそれ以下となるように構成されている。また第1通路容積Vaと第4通路容積Vdとは略等しい。さらに、補助集合排気通路16bcの体積を含めた第2排気通路16bの体積を第2排気通路体積Vb、補助集合排気通路16bcの体積を含めた第3排気通路16cの体積を第3排気通路体積Vcとした場合、第2、第3排気通路体積Vb、Vcは、それぞれ第1排気通路体積Vaと略等しくなるように構成されている。
排気マニホールド16の下流側には、取付フレーム17が設けられており、図5に示すように、この取付フレーム17が各独立排気通路16a、16bc、16dの出口17a、17bc、17dを区画している。各出口17a、17bc、17dは、上流側の独立排気通路16a、16bc、16dと同様に、φ36mmの円形断面積と同面積の開口面積S1に設定されている。
排気マニホールド16は、取付フレーム17を介して可変排気バルブ30のハウジング31に接続されている。
可変排気バルブ30は、上記3つの独立排気通路16a、16bc、16dの独立状態を維持しつつ、各出口17a、17bc、17dの有効開口面積S2を変更するバルブである。ここで有効開口面積S2とは、排気Weが各出口17a、17bc、17dを流通することのできる出口17a、17bc、17d毎の開口面積をいい、以下の説明では、この有効開口面積S2と等しい円の直径を有効開口径D2という。
図6は、図1の実施形態に係る可変排気バルブ30の概略構成を示す斜視図であり、(A)は閉弁時、(B)は開弁時の状態を示すものである。
図4および図6を参照して、可変排気バルブ30は、排気マニホールド16と排気ターボ過給機50との間に介在するハウジング31と、ハウジング31内に収容され、排気マニホールド16の出口17a、17bc、17dの有効開口面積S2を変更するフラップ35と、フラップ35が排気Weの流れる方向と交差する軸周りで揺動するようにハウジング31に軸支されたフラップ軸37と、フラップ軸37を回転させるモータ等のアクチュエータ38と、フラップ軸37を介してフラップ35を開弁方向に付勢するリターンスプリング39とを備えている。
ハウジング31の上流端には、取付フレーム17が固定されており、これによって、ハウジング31には、排気マニホールド16の第1独立排気通路16a、第4独立排気通路16d、並びに補助集合排気通路16bcの各出口17a、17bc、17dが並列された状態で接続されている。
ハウジング31の下流端側には、フランジ31aが設けられ、このフランジ31aを介して排気ターボ過給機50のハウジング51と接合されている。ハウジング31は、排気ターボ過給機50のレイアウトの都合上、途中で下方に曲げられている。排気ターボ過給機50の設置位置によってはこのような曲げは不要である。また異なる曲げ角であってもよい。
ハウジング31内のフランジ31aよりも上流側には、各独立排気通路16a、16bc、16dからの排気Weが合流する集合部31cが区画されている。この集合部31cの上流側には、当該ハウジング31内を流れる排気Weの主流に直交して上方に膨出する膨出部31bが形成されており、フラップ35は、フラップ軸37の軸周りに回動することによって膨出部31b内に進退可能な状態で収容されている。
図6を参照して、フラップ35は、軽量化のために内部が空洞になっている中空体であり、その外周には、フラップ軸37を扇の要とする扇形の扇状面36を有する。フラップ35が膨出部31bから下方に突出するように回動すると、扇状面36は、ハウジング31に接続された排気マニホールド16の各出口17a、17bc、17dに対向し、排気マニホールド16から排出された排気Weの流量を絞る位置に変位する(図6(A)参照)。他方、フラップ35が膨出部31b内に入り込む位置に回動すると、扇状面36は、各出口17a、17bc、17dを開く位置に変位する(図6(B)参照)。
本実施形態では、可変排気バルブ30が全閉位置にある場合でも、僅かな排気We(例えば、全排気流の20%)が集合部31cに流れるように構成されている。
本実施形態では、排気Weの主流において、フラップ軸37よりも上流側で扇状面36が各出口17a、17bc、17dの有効開口面積S2を調整するように構成されている。また、フラップ軸37の水平線を通る直径が、可及的に集合部31cの内側に臨むように配置されている。従って、排気Weが扇状面36に当接することによってフラップ35に作用するフラップ軸37回りのトルクは、排気流を遮る板状のベーンがその回動軸よりも上流側にある構成に比べて小さくなり、ブローダウンによって排気流速Qeが大きい運転状況でも、振動しにくくなっている。
ハウジング31の膨出部31bの側部には、ウエストゲート用開口31eが形成されている。ウエストゲート用開口31eは、フラップ35が図6(B)に示す所定の開閉位置から全開位置に至る範囲で各出口17a、17bc、17dと連通する。ウエストゲート用開口31eは、ハウジング31の側部に形成された図略のウエストゲートバルブ機構によって開閉制御されるようになっている。なお、ウエストゲートバルブ機構自身は、周知の構成をそのまま流用することができるので、その詳細について説明は省略する。
図1、図2、並びに図4に示すように、ウエストゲート用開口31eは、排出通路61を介して、排気ターボ過給機50をバイパスし、主排気通路60の触媒63の上流側に接続されている。より詳細に説明すると、本実施形態において、触媒63は、排気ターボ過給機50の直下に配置され、排気ターボ過給機50に接続された主排気通路60は、当該排気ターボ過給機50と触媒63との間に湾曲部60aを形成している。そして、この湾曲部60aの円弧方向外周側に排出通路61の下流端が接続されることによって、ウエストゲート通路としての排出通路61の下流端は、主排気通路60に対し、当該触媒63の上流端に設けたテーパ部63aと同心に開口するように接続されている。なお本実施形態において、排出通路61には、クーラ64が設けられている。
図7は、本発明の実施形態に係る排気マニホールド及び可変排気バルブのハウジングの縦断面図であって、可変排気バルブが開弁状態にある状態を示す図である。
図7を参照して、ハウジング31の上流側には仕切板32が設けられている。仕切板32はフラップ軸37方向に離間して2枚設けられており、これら仕切板32が、それぞれ排気Weを下流側に導く流路を形成している。これら2枚の仕切板32は、各独立排気通路16a、16bc、16dの独立状態及び並列状態を維持している。
各仕切板32の後縁32aは、可変排気バルブ30が閉弁状態にあるときのフラップ35の扇状面36に沿うように成形されている。従って、取付フレーム17の下流側は、各仕切板32によって独立状態及び並列状態が維持された状態で絞られる。
また集合部31cは、仕切板32の後縁32aより下流側に形成されている。
次に、可変排気バルブ30のハウジング31内には、ハウジング31の曲げ方向に沿った導流板33が設けられている。導流板33は、仕切板32を通過した排気Weを、ハウジング31の曲がりに沿って円滑に流れるように導くように構成されている。特に、図7に示すように、可変排気バルブ30が閉弁状態のとき、仕切板32を通過した排気Weをハウジング31と導流板33とが囲むように配置されている。
また、ハウジング31内の集合部31cには、ハウジング31の曲げ外側壁面から内側に立設するように整流ガイド34が設けられている。整流ガイド34は排気Weの流れに沿って(平行に)立設され、またフラップ軸37方向に離間して2枚設けられている。整流ガイド34の湾曲部分内周側は、導流板33との間に隙間を隔てている。整流ガイド34は、排気方向に交差する方向(図7の紙面に平行でない方向)の旋回流を規制するために設けられている。これら2枚の整流ガイド34によって、排気Weの流れがより円滑となる。
次に、可変排気バルブ30のハウジング31(集合部31c)の下流側には、排気ターボ過給機50が接続されている。図1にも示すように、排気ターボ過給機50は、可変排気バルブ30と主排気通路60との間に接続されて、排気マニホールド16からの排気Weを主排気通路60に導くハウジング51と、このハウジング51内の主排気通路60上流端に配置されたタービンスクロール54と、図略の吸気通路に設けられたコンプレッサスクロール52と、このコンプレッサスクロール52と連結されるシャフト53とを備えたものであり、排気Weでタービンスクロール54を回転させることによりコンプレッサスクロール52を駆動し、吸気Wiを圧縮して吸気圧を上昇させる装置である。なお本実施形態の排気ターボ過給機50は、主に高速運転領域においてトルク増大作用の強い大型ターボである。
排気ターボ過給機50のハウジング51は、タービンスクロール54を囲繞するタービンケーシング51aと、このタービンケーシング51aと連続し、可変排気バルブ30のハウジング31と接合される接合ダクト51bとを一体に有している。
タービンケーシング51aは、タービンスクロール54のシャフト53回りに幾分偏心してタービンスクロール54を囲繞し、タービン室51cを区画する筒状の筐体である。タービンケーシング51aは、タービンスクロール54の回転方向において、下流側に行くにつれて内壁部分が近接するようにタービンスクロール54と偏心している。この結果、タービンスクロール54の周囲に導入された排気Weの流速は、スクロール下流端に対向する部位51dの近傍で最も高くなる。
接合ダクト51bは、タービンスクロール54の下流端からの距離を充分に確保できる周方向部位に排気Weを導くことができるように、タービンケーシング51aの一接線沿いに連続し、可変排気バルブ30のハウジング31と接合されている。本実施形態において、タービンスクロール54の外周部分は、可変排気バルブ30と接続する接合ダクト51bの下流端に臨むように、タービンケーシング51aに区画されるタービン室51cから接合ダクト51b内に突出している。
接合ダクト51bには、導流板33と連続して、タービン室51cにまで延びる整流板56が設けられている。整流板56は、可変排気バルブ30のフラップ35が有効開口面積S2を図7に示すように全閉状態に低減したときに、当該独立排気通路16a、16bc、16dの各出口17a、17bc、17dから吐出された排気Weの主流をタービンスクロール54の回転方向に倣う接線沿いに導いて、流量の低い運転時に、タービンスクロール54の駆動効率を高めるためのものである。本実施形態において、整流板56の下流側は、下流側に行くに連れてタービンスクロール54に近接するようにタービンスクロール54の外周沿いに湾曲しており、整流板56の終端56aとタービンケーシング51aのスクロール下流端に対向する部位51dとは、当該タービンスクロール54の周方向180°隔てたところで対向している。この結果、整流板56に沿って導かれた排気Weの流速が当該整流板56の終端56aで最も高く分布するとともに、タービンケーシング51a内に導かれてタービンスクロール54を駆動した排気Weもスクロール下流端で最速になる。ここで、整流板56の終端56aとタービンケーシング51aのスクロール下流端に対向する部位51dとが、当該タービンスクロール54の周方向180°隔てたところで対向しているため、整流板56の終端56aでタービンスクロール54に作用する排気Weと、スクロール下流端でタービンスクロール54に作用する排気Weとによって、タービンスクロール54に配設されたベーン55は、整流板56の終端56aとタービンケーシング51aのスクロール下流端に対向する部位51dのところで偶力Fcを受けることになる。この偶力Fcによって、タービンスクロール54には、大きなモーメント(トルク)が作用するとともに、タービンスクロール54を支持するシャフト53に作用する曲げモーメントは、小さくなる。
導流板33の下流部分は、排気ターボ過給機50の整流板56の上流端と滑らかに連続している。この結果、図7に示すように、可変排気バルブ30のフラップ35が有効開口面積S2を全閉状態に低減したときに、当該独立排気通路16a、16bc、16dの各出口17a、17bc、17dから吐出された排気Weの主流は、導流板33から滑らかに整流板56に導かれ、タービンスクロール54の接線沿いに導かれることになる。
本実施形態においては、排気ターボ過給機50の回転速度を検出するための回転速度センサSW7が設けられている(図1参照)。
また図1に示すように、エンジン1には可変バルブタイミング機構12が設けられている。本実施形態の可変バルブタイミング機構12は、吸気バルブ7および排気バルブ9の開弁期間を維持したまま、バルブ開閉弁時期を平行移動圧に前後させる、いわゆるVVT(Variable Valve Timing)である。VVTの方式としては、バルブタイミングを連続的に変化させるものでも、2以上の段階的に変化させるものでもよい。
なお本実施形態の可変バルブタイミング機構12は、吸気側の吸気VVT12i(吸気バルブタイミング変更手段)と排気側の排気VVT12e(排気バルブタイミング変更手段)とを備え、吸気バルブ7と排気バルブ9の双方においてバルブタイミングを変化させることができるように構成されている。
エンジン1の動作は、エンジン制御ユニット(ECU:Engine Control Unit)20によって電気的に制御される。エンジン制御ユニット20は、CPU、メモリ、カウンタタイマー群、インターフェース並びにこれらのユニットを接続するバス等を有するマイクロプロセッサで構成された制御ユニットである。
図1で説明したように、エンジン制御ユニット20には、入力要素として、クランク角度センサSW1、エンジン水温センサSW2、エアフローセンサSW3、吸気温度センサSW4、アクセル開度センサSW5、車速センサSW6、回転速度センサSW7等の各種検出手段が接続されている。他方、制御要素として、可変バルブタイミング機構12に設けられた電磁弁(図示せず)、可変排気バルブ30のアクチュエータ38等が接続されている。
かかる構成により、エンジン制御ユニット20は、燃料供給量、スロットル開度或いは点火時期といった一般的な燃焼制御に加え、可変バルブタイミング機構12の駆動制御を行う。さらにエンジン制御ユニット20は、可変排気バルブ30を駆動制御する可変排気バルブ制御手段としても機能する。
図8は、図1の実施の形態に係る運転状態に応じた制御を行うための運転領域の設定例を示す特性図である。
図8を参照して、同図に示す運転特性では、エンジン1の運転領域のうち、可変排気バルブ30によって、排気マニホールド16出口17a、17bc、17dの有効開口面積S2が絞られる過給運転領域R1と、出口17a、17bc、17dが全開で運転される運転領域R2とが図のように設定される。
過給運転領域R1では、独立排気絞り制御が実行されるように設定されている。独立排気絞り制御とは、可変排気バルブ制御手段としてのエンジン制御ユニット20が可変排気バルブ30を駆動し、独立排気通路16a、16bc、16dの各出口17a、17bc、17dの有効開口面積S2を最大面積時(可変排気バルブ30が全開のときの開口面積)よりも縮小させる制御であり、具体的にはエンジン制御ユニット20が可変排気バルブ30のアクチュエータ38に開度信号を送り、アクチュエータ38がフラップ軸37を回転駆動してフラップ35の回転角度を調節する制御である。
本実施形態では、エンジン制御ユニット20は、各入力要素からエンジン1(ないし車両)の運転状態を検出し、その運転領域を判定する。次いで、エンジン制御ユニット20は、各出口17a、17bc、17dの有効開口面積S2を決定し、決定された有効開口面積S2に基づいて、アクチュエータ38を駆動し、フラップ35を駆動して、出口17a、17bc、17dを適宜絞る。次いで、設定された有効開口面積S2に基づいて、排気バルブ9の開タイミングと吸気バルブ7の開閉タイミングとをVVT12e、12iで制御する。
図9は、図1の実施の形態に係るバルブタイミング変更制御の説明図である。横軸にはクランク角度θ(deg:°CA)を示し、第1気筒3aの上死点TDCを0°CAとする。縦軸には吸排気バルブ7、9の模式的な開弁量を示す。なお上段には、点火順序の隣り合う気筒のうち後に点火する方の気筒を示し、下段には、先に点火する方の気筒を示す。その一例として、上段に第1気筒3a、下段に第2気筒3bを示す。そして、第1気筒3aが膨張行程から排気行程への移行期(下死点付近)にあり、第2気筒3bが排気行程から吸気行程への移行期(上死点付近)にある状態を示している。これは図2に示す状態に相当する。
破線で示す排気バルブ開期間Pe1および吸気バルブ開期間Pi1は独立排気絞り制御を行わず、可変排気バルブ30が全開状態である場合(本実施形態においては例えば自然吸気領域)の特性である。ここで、排気Weの掃気を充分に行い、且つ吸気Wiをより多く吸入するため(或いは吸気Wiで排気Weを押し出すため)に、第2気筒3bの上死点付近において排気バルブ開期間Pe1と吸気バルブ開期間Pi1とが重複するオーバラップL2が設定されている。このオーバラップL2は、一般的な可変バルブタイミング制御と同様に、エンジン回転速度Neが高いほど排気バルブ9の閉弁時期を遅らせ、吸気バルブ7の開弁時期を進めることによって拡大される(排気VVT12eか吸気VVT12iの何れか一方で行ってもよい)。
一方、独立排気絞り制御の実行中では、実線で示す排気バルブ開期間Pe2および吸気バルブ開期間Pi2は、同じエンジン回転速度Neであっても図9のオーバラップL3で示すように、独立排気絞り制御を行わない場合のオーバラップL2よりも拡大されている。具体的には排気バルブ9の閉弁時期が遅らされ、吸気バルブ7の開弁時期が進められる。ここで、オーバラップL2が大きすぎると吸気負圧によって排気Weが逆流するおそれがある。しかし独立排気絞り制御では、エゼクタ効果によって排気Weが下流側に吸出されるので、そのような逆流が起こりにくい。すなわち、排気Weの逆流という弊害を抑制しつつオーバラップ量を増大させることができる。従って、本実施形態では、独立排気絞り制御中にオーバラップL2をオーバラップL3に拡大することにより、吸気量を増大させ、エンジントルクの増大をさらに促進するようにしているのである。
他方、オーバラップL2をオーバラップL3に拡大するに際し、排気バルブ閉弁時期を遅らせてオーバラップ量を増大しているので、独立排気絞り制御の実行時は、図9上段に示すように、排気バルブ開弁時期が期間L1だけ遅れることになる(開弁期間自体は平行移動圧に変更され、不変であるから)。このため、独立排気絞り制御の非実行時に比べ、ブローダウンガスを加勢し、顕著なエゼクタ効果を得ることができる。もっとも、排気バルブ9を排気下死点後に開くと排気抵抗が大きくなるので、排気バルブ開弁時期の遅延は、図示のように排気下死点直前までにとどめておくことが好ましい。
上述のような独立排気絞り制御によって、排気流によるエゼクタ効果を生じせしめ、排気ターボ過給機50の入力流量(排気ターボ過給機50に供給される単位時間当たりの排気Weの量)を増量し、タービンスクロール54の駆動力を増大させて、過給圧を向上させることができる。また、被吸出し流体である排気Weが吸出され、掃気が促進されるので、当該気筒3の排気抵抗が低減される。さらに、ブローダウンガスの圧力を高めて動圧過給性能を向上することができる。
図2、図7を参照して、より詳細に説明すると、上述のように図2の状態では、第1気筒3aが排気Weバルブ開弁直後、第2気筒3bがオーバラップ期間となっている。第1排気通路16aに導かれた排気We(ブローダウンガス)は可変排気バルブ30で絞られる。絞られたブローダウンガスは流速が増大し、圧力が低下する。この絞られたブローダウンガスがエゼクタ効果をもたらす駆動流体として機能し、補助集合排気通路16bc(および第2排気通路16b)を流れる被吸出し流体としての排気Weを吸出し、集合部31cに導入する。なお、第2気筒3bの排気バルブ9が閉じた後(オーバーラップ期間後)であっても、駆動流体のエゼクタ効果が存続している場合には、第2排気通路16bおよび補助集合排気通路16bcに残存する排気Weを吸出すことができ、掃気を促進することができる。図2では第1気筒3aがブローダウン状態にある場合を示しているが、表1、図3から明らかなように、他の場合も同様である。本実施形態では、3本の独立排気通路16a、16bc、16dの各出口17a、17bc、17dが取付フレーム17付近において略平行に並列配置され、ハウジング31に流入後も集合部31cに至るまで各出口17a、17bc、17dの並列配置が維持されるので、高いエゼクタ効果が得られる。
このエゼクタ効果によって吸い出された排気Weは、図7に示すように、導流板33から排気ターボ過給機50の整流板56に導かれ、タービンスクロール54の外周に沿って周回する。この結果、排気Weの主流は、タービンスクロール54のベーン55を駆動しながら下流側に回動する。このように、流量が比較的少ない運転領域においても、エゼクタ効果によって排気Weの流速を高めることができるとともに、この流速が高まった排気Weの主流が整流板56によってタービンスクロール54の回転方向に倣う接線沿いに導かれるので、タービンケーシング51a内の流速は、タービンスクロール54を回転させるのに好適な接線近傍部位が最も速くなるように分布する。この結果、タービンスクロール54の駆動力に寄与する流量が増加し、この流量分の増加がタービンスクロール54の運転効率を高めるので、全体としては少ない流量であってもタービン駆動力が増加し、背圧を抑制しつつ高い過給性能を発揮することができる。
以上説明したように本実施形態では、排気行程において生じるブローダウンによって動圧過給効果を奏することができるとともに、この動圧過給によって流速が高まった排気Weの主流が整流板56によってタービンスクロール54の回転方向に倣う接線沿いに導かれるので、タービンケーシング51a内の流速は、タービンスクロール54を回転させるのに好適な接線近傍部位が最も速くなるように分布する。この結果、流量が比較的少ない運転領域においても、タービンスクロール54の駆動力に寄与する流量が増加し、この流量分の増加がタービンスクロール54の運転効率を高めるので、全体としては少ない流量であってもタービン駆動力が増加し、背圧を抑制しつつ高い過給性能を発揮することができる。
また、本実施形態では、所定の過給運転領域でエゼクタ効果を奏するべく、集合部31bと排気マニホールド16との間で当該独立排気通路16a〜16dの出口17a〜17dの有効開口面積S2を変更可能に構成された可変排気バルブ30を備え、整流板56は、可変排気バルブ30が有効開口面積S2を低減したときの排気Weの主流を案内するものである。このため本実施形態では、排気マニホールド16の独立排気通路16a〜16dと可変排気バルブ30とによって、排気マニホールド16の出口17a〜17dにおいてエゼクタ効果を得ることができる。このエゼクタ効果によって、比較的低速低負荷運転領域であっても、排気ターボ過給機50の入力流量(排気ターボ過給機50に供給される単位時間当たりの排気の量)を増加することができる。また、エゼクタ効果によるブローダウンピークの高まりによって、動圧過給効果をさらに促進することができる。加えて、エゼクタ効果によって高まったブローダウンピークが、整流板56によって比較的高い流速を維持したままタービンスクロール54に導かれるので、一層動圧過給効果を高め、部分負荷運転領域であっても、排気エネルギを有効利用し、背圧の上がることなく所期の過給性能を得ることが可能になる。
また本実施形態では、可変排気バルブ30は、有効開口面積S2を低減したときに当該独立排気通路16a〜16dの出口17a〜17dから吐出された排気Weの主流を整流板56に導く導流板33を含んでいる。このため本実施形態では、独立排気通路16a〜16dの出口17a〜17dから吐出された排気Weの主流が導流板33から整流板56を経てタービンスクロール54に導かれるので、比較的流量の少ない部分負荷運転領域であっても、高い流速を維持することができる。この結果、単に部分負荷運転領域での過給性能を高めることができるばかりでなく、比較的大型の排気ターボ過給機50を採用することも可能になる。
さらに本実施形態においては、整流板56の終端56aとタービンケーシング51aのスクロール下流端に対向する部位51dとは、当該タービンスクロール54の周方向180°隔てたところで対向していることから、タービンスクロール54のベーン55に作用する偶力Fcによって、タービンスクロール54のトルクが向上する。また、タービンスクロール54の外周に一方向からトルクを作用させる場合に比べて、タービンスクロール54の軸に対する曲げモーメントを低減することができる。従って、比較的少ない流量であっても、高い駆動力でタービンをスムーズに回転させ、過給性能を高めることができる。
また本実施形態では、タービンスクロール54の外周部分は、可変排気バルブ30と接続する接合ダクト51bの下流端に臨むように、タービンケーシング51aに区画されるタービン室51cから接合ダクト51b内に突出している。このため本実施形態では、比較的流量が低い運転領域でも、整流板56に導かれた排気Weがタービンスクロール54を駆動しやすくなる結果、より効果的にタービンスクロール54のトルクを高めることができる。
他方、可変排気バルブ30が全開状態のとき、フラップ35がほぼ完全に膨出部31bに格納されて、フラップ35の一部が排気マニホールド16から連続する排気通路の壁面を形成している。従って第1排気通路16aからの排気Weは取付フレーム17を経てハウジング31に円滑に流入し、集合部31cから排気ターボ過給機50のハウジング51に導かれる。
次に、本実施形態におけるさらなる技術的特徴について説明する。
(1)動圧過給による過給能力の向上
本実施形態においては、上述のような独立排気通路16a〜16dを採用しているので、動圧過給効果を奏することができる。動圧過給は、排気のブローダウンを利用して排気ターボ過給機50の過給能力を高めるものである。よく知られているように、1排気行程当たりの有効な排気時間(以下、「ブローダウン期間」という)は、排気Weバルブ開弁直後の排気流速Qeのピーク値(以下、「ブローダウンピーク」という)が大きい程、短くなる。しかし、動圧過給の特性(流速で定まる圧力比)は、二次曲線的な特性を有する。そのため、ブローダウンピークが高い場合には、ブローダウン期間の短縮による目減り分を差引いても、ブローダウンピークが低い場合よりも時間平均したタービン駆動力が増大する。
図10は排気ブローダウン特性図(実測値)である。横軸に第1気筒3aのクランク角度θ(deg:上死点を0°CAとする)、縦軸に排気流速Qe(kg/s)を示す。図示の特性は、可変排気バルブ30による絞り効果のない場合(可変排気バルブ30が全開の場合)の特性である。ブローダウンは各気筒3の排気行程毎に180°CA周期で発生する。図示の例は、180°CAから360°CAの間に第1気筒3aにおいて発生しているブローダウンを示している。
特性C12は本実施形態の特性である。一方特性C102は、本実施形態よりも通路容積の大きい標準的な排気マニホールドで得られた特性である。特性C12の方が特性C102に対してブローダウンピークが大きく、その分、ブローダウン期間が短くなっている。このため特性C12のものは特性C102のものに比べ、動圧過給効果が高くなる。実測値では、特性C12のものは特性C102のものに対して単位時間当たりのタービンスクロール回転数が43%増大した。
またブローダウン期間が短縮されることによって、ブローダウンピーク後の排気圧力が低下し、排気抵抗が下がるとともに残留ガスが減って、吸気の充填量と耐ノック性が改善されるという効果もある。
特性C12のような大きな排気ブローダウンピークを得るための最も効果的な手段は、排気マニホールド16の容積を小さくすることである。そのためには図5に示す第1通路容積Va(≒第2通路容積Vb≒第3通路容積Vc≒第4通路容積Vd)を小さくすればよい。そして、有効開口面積を小さくすると排気抵抗が増大して好ましくないことを鑑みれば、第1通路容積Vaを小さくするには、第1排気通路16aの長さを可及的に短くすればよいということになる。具体的には第1排気通路16aの長さLa(図4に示す)を、第1排気通路16aの開口面積と同じ円の開口径D1(図2に示す)の6倍以下とすることが好ましい。本実施形態では上述のように開口径D1=φ36mm、長さLa≦200mmであるから、この条件を満たし、効果的な動圧過給が期待できる。
また上述のように、排気マニホールド16の第1通路容積Va〜第4通路容積Vdは、互いに略等しい。仮にこれらの独立排気通路の容積に互いに大きな差があると、エゼクタ効果による掃気促進効果も気筒間で大きくばらついてしまう。そうすると、掃気性に依存する耐ノッキング性能にも差が生じ、結果的に最も耐ノッキング性能の低い気筒3に合わせた設定が余儀なくされ、他の気筒3で耐ノッキング性能を向上してもそれが無駄になる。また、エゼクタ効果による上記吸気量増大効果にも気筒間ばらつきが生じてしまう。
本実施形態の構成によれば、第1通路容積Va〜第4通路容積Vdが互いに略等しいので、これらの問題がなく、エゼクタ効果の利点をより効果的に得ることができる。
ところで、一般的な過給機付エンジンにおいて、第1排気通路16aの長さLaと第4排気通路16dの長さLdとが略等しくなるように自然にレイアウトすれば、集合部31cを中央寄りに配置した本実施形態のような略対称のレイアウトとなる。そうすると第2排気通路16bと第3排気通路16cは、これらが互いに独立していれば、その長さが上記長さLaや長さLdに比べて短くなるのが自然である。これを無理に長さLaに揃えるためには不自然に迂回させる等のレイアウトが必要となる。これは排気抵抗の増大を招いたり、そのレイアウトを成立させるために長さLaや長さLdの短縮が妨げられたりして好ましくない。
本実施形態によれば、その小容積となりがちな第2排気通路16bと第3排気通路16cとを集合した補助集合排気通路16bcを設けているので、この補助集合排気通路16bcの長さを含む第2排気通路長さLbや第3排気通路長さLcを容易に第1排気通路長さLaや第4排気通路長さLdと略等しくし、結果として、第1通路容積Va〜第4通路容積Vdを互いに略等しく設定することができるのである。
なお、第2排気通路16bと第3排気通路16cとは、これらを集合させても相互の独立性が保たれている。表1並びに図3に示したように、第2気筒3bと第3気筒3cとは点火順序が隣り合っていないので、排気バルブ9が下死点前から開き始め、上死点後に閉じることを考慮に入れても第2気筒3bの排気バルブ9と第3気筒3cの排気バルブ9とが共に開いている期間はない。従って相互に排気干渉を起こすことがなく、第2気筒3bの排気行程においては補助集合排気通路16bcを擬似的に第2排気通路16bの延長とみなすことができ、第3気筒3cの排気行程においては補助集合排気通路16bcを擬似的に第3排気通路16cの延長とみなすことができるのである。
このように本実施形態では、4気筒エンジンでありながら、3つの独立排気通路で相互の独立関係を実現している。こうすることによりレイアウトのコンパクト化が図られ、ハウジング31や排気ターボ過給機50との接続部を小型化することができる。
なお排気マニホールド容積を小さくすると上述のように動圧過給効果が高くなるが、その反面、高速運転領域において排気温度が高くなる傾向となる。従って、例えば排気マニホールド16の材質として耐熱性の高い鋳鋼を用いたり、排気マニホールド16を水冷化したりして耐熱性の向上を図ることが好ましい。
(2)エゼクタ効果
上述したように、本実施形態においては、各独立排気通路16a、16bc、16dと可変排気バルブ30とを用いた独立排気絞り制御によって、大きなエゼクタ効果を得ることができる。
エゼクタ効果による利点は、主に次の3点が挙げられる。
第1に、排気ターボ過給機50の入力流量(排気ターボ過給機50に供給される単位時間当たりの排気Weの量)の増量である。排気Weバルブ開弁直後の入力流量は、通常のブローダウン時の排気流量に、エゼクタ効果によって吸出された排気流量が付加される結果、タービンスクロール54の駆動力が増大し、過給圧を向上させることができる。従って、整流板56で排気Weの流速をタービンスクロール54の接線部分で高速化させる作用と相俟って、部分負荷運転領域において、従来、背圧の低減を図るために排気ターボ過給機への排気の流通を回避していたような運転領域であっても、高い過給性能を発揮することができる。
第2に、排気Weの掃気促進である。エゼクタ効果によって被吸出し流体である排気Weが吸出され、掃気が促進されるので当該気筒3の排気抵抗が低減される。また掃気の促進によってオーバラップ期間での吸気が促進されるので、吸気量を増大させ、エンジントルクを増大させることができる。
第3に、動圧過給の促進である。上述のように、排気マニホールド16の容積を小さくすることで動圧過給の効果が得られるが、エゼクタ効果によって以下説明するようにその効果をさらに促進することができる。
可変排気バルブ30がない、又はあっても全開の場合であって、エゼクタ効果が期待できない場合、ブローダウンガスは集合部31cを介して他の排気通路に回り込む(逆流する)。これはその排気通路の容積が見かけ上増えたように作用する。これに対し可変排気バルブ30によるエゼクタ効果があると、ブローダウンガスは駆動流体として他の排気通路から被駆動流体である排気Weを吸出す。つまり他の排気通路に回り込むことがない。これは、動圧過給においては排気通路容積を削減したような作用をもたらす。
このように、全体の排気通路容積(排気マニホールド容積)が同じであれば、可変排気バルブ30によるエゼクタ効果を有する本実施形態は、エゼクタ効果のないものに比べ、より動圧過給を促進することができるのである。
以上、本実施形態の主要な技術的特徴である動圧過給効果およびエゼクト効果について説明したが、これらは密接に関連し、協働して過給性能を高め、さらには燃費の向上に寄与している。
図11は、過給運転領域R1における充填効率ηcを示すグラフである。横軸はエンジン回転速度Ne(rpm)、縦軸は充填効率ηc(%)を示す。特性C13は動圧過給と独立排気絞り制御とが併用された本実施形態の特性である。特性C103は比較対象のために示す特性であり、従来の一般的な排気マニホールド(可変排気バルブ30なし)を用いた場合の特性である。特性C13の充填効率ηcは特性C103に対して約20〜30ポイント増大している。これは動圧過給と可変排気バルブ30を用いた独立排気絞り制御とによる過給圧増大の効果である。
図12は、過給運転領域R1におけるエンジンの正味平均有効圧(BMEP)を示すグラフである。横軸はエンジン回転速度Ne(rpm)、縦軸は正味平均有効圧(kPa)を示す。特性C14は動圧過給と独立排気絞り制御とが併用された本実施形態の特性(図11の特性C13に対応する特性)である。特性C104は比較対象のために示す特性であり、図11の特性C103に対応する特性である。特性C14の正味平均有効圧は特性C104に対して約200〜400kPa増大している。これは動圧過給と可変排気バルブ30を用いた独立排気絞り制御とによって充填効率が増大(図11)した効果であって、すなわちエンジントルクが増大したことを示している。
次に、上記エゼクタ効果をより顕著に奏するために本実施形態で採用されている更なる技術について説明する。
図13は本実施形態における排気通路の有効開口比Rdと体積効率ηvとの関係を示すグラフである。横軸の上段は有効開口径D2(mm)を示す。
横軸の下段は有効開口比Rd(%)を示す。有効開口比Rdとは、各出口17a、17bc、17dの有効開口径D2に対する各開口径D1の面積比率である。すなわちRd=(D2/D1)2×100(%)、或いはRd=(S2/S1)×100(%)である。
図13に示す特性C15はエンジン回転速度Ne=1500rpmにおける特性、C16は同2000rpmにおける特性を示す。これらの特性から明らかなように、有効開口径D2=22〜28mmの範囲(有効開口比Rd:37〜61%の範囲)において体積効率ηvの特段に高い好適な範囲が存在する。これは、この好適範囲において特に顕著なエゼクタ効果が得られることを示している。従って、有効開口径D2をこの好適範囲に設定することにより、より高い過給効果が得られ、エンジントルクの一層の増大を図ることができる。
そして、動圧過給をエゼクト効果によって促進させた本実施形態において、整流板56による流速分布の偏在を図り、流量の少ない運転領域でタービンスクロール54に大きなトルクを作用させることにより、部分負荷運転領域において、背圧の上がることなく、過給性能を高めることができるのである。
上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、整流板56として、図14に示す構成を採用してもよい。図14は、本発明の別の実施形態に係る排気マニホールド及び可変排気バルブのハウジングの縦断面図であって、可変排気バルブが開弁状態にある状態を示す図である。
図14に示すように、整流板56は、可変排気バルブ30が有効開口面積S2を低減したときに当該独立排気通路16a〜16dの出口17a〜17dから吐出された排気Weの主流をタービンスクロール54の回転方向に倣う接線沿いに導くものであれば、終端56aがタービンスクロール54の上流端に近接した構成であってもよい。図14に示す構成では、整流板56の全長を短く設定することができることから、既存の排気ターボ過給機に整流板56を組み付けることが容易になる。
また、第1排気通路16a等の長さLa、容積Va、径D1、D2等の設定値は、上記各値に限定するものではない。これらはエンジンの大きさや排気量によって適宜好適な値としてよい。
また可変バルブタイミング機構によるバルブタイミング変更制御は、実行することの利点は多いが必ずしも必要ではなく、これがなくても本発明の基本的な効果を充分得ることができる。
また、可変排気バルブ30のフラップ35に代えて、位相によって流路を切り換えるロータを採用してもよい。
このように上述した実施の形態は、本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は上述した実施形態に限定されない。本発明の特許請求の範囲内で種々の変更が可能であることはいうまでもない。