以下、エンジンの吸気通路構造の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明は例示である。図1は、ここに開示するエンジンの吸気通路構造が適用されたエンジン1を例示する概略図である。また、図2は、そのエンジン1の構成を一部省略して示す斜視図であり、図3は、4つのシリンダ11周辺の構成を概略的に示す平面図である。
エンジン1は、FF方式の車両に搭載されるガソリンエンジン(特に、4ストローク式の内燃機関)であり、図1に示すように、機械駆動式の過給機(いわゆるスーパーチャージャ)34を備えた構成とされている。
また、本実施形態に係るエンジン1は、図3に示すように、列状に配置された4つのシリンダ(気筒)11を備えており、4つのシリンダ11が車幅方向に沿って並ぶような姿勢で搭載される、いわゆる直列4気筒の横置きエンジンとして構成されている。これにより、本実施形態では、4つのシリンダ11の配列方向(気筒列方向)であるエンジン前後方向が車幅方向と略一致していると共に、エンジン幅方向が車両前後方向と略一致している。
以下、特に断らない限り、前側とはエンジン幅方向の一方側(車両前後方向の前側)を指し、後側とはエンジン幅方向の他方側(車両前後方向の後側)を指し、左側とはエンジン前後方向(気筒列方向)の一方側(車幅方向の左側であり且つ、エンジンフロント側)を指し、右側とはエンジン前後方向(気筒列方向)の他方側(車幅方向の右側であり且つ、エンジンリア側)を指す。
また、以下の記載において、上側とはエンジン1を車両に搭載した状態(以下、「車両搭載状態」ともいう)における車高方向の上側を指し、下側とは車両搭載状態における車高方向の下側を指す。
(エンジンの概略構成)
この構成例では、エンジン1は、前方吸気後方排気式に構成されている。すなわち、エンジン1は、図3に示すように、4つのシリンダ11を有するエンジン本体10と、エンジン本体10の前側に配置され、吸気ポート17、18を介して各シリンダ11に連通する吸気通路30と、エンジン本体10の後側に配置され、排気ポート19、19を介して各シリンダ11に連通する排気通路50とを備えている。なお、図1では1つのシリンダ11のみを示す。
この構成例では、吸気通路30は、ガスを導く複数の通路と、過給機34やインタークーラ36等の装置と、これらの装置を迂回するエアバイパス通路(以下、単に「バイパス通路」という)40とが組み合わされてユニット化された吸気装置を構成している。
エンジン本体10は、吸気通路30から供給されたガスと燃料との混合気を、各シリンダ11内で、所定の燃焼順に従って燃焼させるように構成されている。具体的に、エンジン本体10は、シリンダブロック12と、その上に載置されるシリンダヘッド13とを有している。
シリンダブロック12の内部には、前述の4つのシリンダ11が形成されている。4つのシリンダ11は、クランクシャフト15の中心軸方向(つまり気筒列方向)に沿って列を成すように並んでいる。4つのシリンダ11は、それぞれ円筒状に形成されており、各シリンダ11の中心軸(以下、「気筒軸」という)は、互いに平行に延び、且つ気筒列方向に対して垂直に延びている。以下、図3に示す4つのシリンダ11を、気筒列方向に沿って右側から順に、1番気筒11A、2番気筒11B、3番気筒11C、及び4番気筒11Dと称する場合がある。
各シリンダ11内には、ピストン14が摺動自在に挿入されている。ピストン14は、コネクティングロッド141を介してクランクシャフト15に連結されている。ピストン14は、シリンダ11及びシリンダヘッド13と共に燃焼室16を区画する。燃焼室16の天井面90は、いわゆるペントルーフ形状である(詳しくは後述)。なお、ここでいう「燃焼室」は、ピストン14が圧縮上死点に至ったときに形成される空間の意味に限定されない。「燃焼室」の語は広義で用いる。
シリンダヘッド13には、1つのシリンダ11につき、2つの吸気ポート17、18が形成されている。2つの吸気ポート17、18は、それぞれ燃焼室16に連通しており、シリンダ11毎に、第1ポート17と、該第1ポート17に対して気筒列方向に隣接した第2ポート18とを有している。1番気筒11A〜4番気筒11Dのいずれにおいても、第1ポート17と第2ポート18が同じ順番で並んでいる。具体的には、図3に示すように、各シリンダ11において、気筒列方向に沿って右側から順に、第2ポート18と第1ポート17が並んでいる。
各吸気ポート17、18の上流端は、それぞれ、エンジン本体10一方側の外面(前側の外面であり、以下、「取付面」ともいう)10aに開口しており、吸気通路30を構成するダクトの下流端が接続されている。対して、各吸気ポート17、18の下流端は、それぞれ、燃焼室16の天井面90に開口している。
以下、1番気筒11Aに通じる第1ポートに対し、符号“17”ではなく“17A”を付すと共に、当該気筒11Aに通じる第2ポートに対し、符号“18”ではなく“18A”を付す場合がある。2番気筒11B〜4番気筒11Dについても同様である。例えば、3番気筒11Cに通じる第2ポートに対し、符号“18”ではなく“18C”を付す場合がある。
なお、2つの吸気ポート17、18は、いわゆるタンブルポート形状とされており、それぞれ、燃焼室16の中に流れ込んだガスが、燃焼室16においてタンブル流を生成するように構成されている。この構成については後述する。
また、2つの吸気ポート17、18は、各シリンダ11につき、通過するガスの流量が、スワールコントロールバルブ(Swarl Control Valve:SCV)81を介して絞られるように構成されたSCVポートを含む。本実施形態では、前述の第2ポート18がSCVポートとして構成されている。SCV81は、ガスの流動を制御するための流動制御デバイス80を構成している(図7を参照)。
すなわち、この構成例に係る吸気ポート17、18は、タンブル流の生成を促進する形状とされている一方、SCV81を介してスワール流の生成をコントロールするように構成されている。
2つの吸気ポート17、18には、それぞれ吸気バルブ21が配設されている。吸気バルブ21は、燃焼室16と吸気ポート17、18のそれぞれとの間を開閉する。吸気バルブ21は、吸気動弁機構によって所定のタイミングで開閉する。
吸気動弁機構は、この構成例では、図1に示すように、可変動弁機構である吸気電動VVT(Variable Valve Timing)23を有している。吸気電動VVT23は、吸気カムシャフトの回転位相を所定の角度範囲内で連続的に変更するよう構成されている。それによって、吸気バルブ21の開弁時期及び閉弁時期は、連続的に変化する。なお、吸気動弁機構は、電動VVTに代えて、液圧式のVVTを有していてもよい。
シリンダヘッド13にはまた、1つのシリンダ11につき、2つの排気ポート19、19が形成されている。2つの排気ポート19、19は、それぞれ燃焼室16に連通している。
2つの排気ポート19、19には、それぞれ排気バルブ22が配設されている。排気バルブ22は、燃焼室16と排気ポート19、19のそれぞれとの間を開閉する。排気バルブ22は、排気動弁機構によって所定のタイミングで開閉する。
排気動弁機構は、この構成例では、図1に示すように、可変動弁機構である排気電動VVT(Variable Valve Timing)24を有している。排気電動VVT24は、排気カムシャフトの回転位相を所定の角度範囲内で連続的に変更するよう構成されている。それによって、排気バルブ22の開弁時期及び閉弁時期は、連続的に変化する。なお、排気動弁機構は、電動VVTに代えて、液圧式のVVTを有していてもよい。
詳細は省略するが、このエンジン1は、吸気電動VVT23及び排気電動VVT24によって、吸気バルブ21の開弁時期と排気バルブ22の閉弁時期とに係るオーバーラップ期間の長さを調整する。これによって、燃焼室16の中の残留ガスを掃気したり、燃焼室16の中に熱い既燃ガスを閉じ込めたり(つまり、内部EGR(Exhaust Gas Recirculation)ガスを燃焼室16の中に導入したり)する。この構成例においては、吸気電動VVT23及び排気電動VVT24が内部EGRシステムを構成している。なお、内部EGRシステムは、VVTによって構成されるとは限らない。
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎にインジェクタ6が取り付けられている。インジェクタ6は、この構成例においては多噴口型の燃料噴射弁であり、燃焼室16の中に燃料を直接噴射するよう構成されている。
インジェクタ6には、燃料供給システム61が接続されている。燃料供給システム61は、燃料を貯留するよう構成された燃料タンク63と、燃料タンク63とインジェクタ6とを互いに連結する燃料供給路62とを備えている。燃料供給路62には、燃料ポンプ65とコモンレール64とが介設している。燃料ポンプ65は、コモンレール64に燃料を圧送する。燃料ポンプ65は、この構成例においては、クランクシャフト15によって駆動されるプランジャー式のポンプである。コモンレール64は、燃料ポンプ65から圧送された燃料を、高い燃料圧力で蓄えるよう構成されている。インジェクタ6が開弁すると、コモンレール64に蓄えられていた燃料が、インジェクタ6の噴口から燃焼室16の中に噴射される。
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に点火プラグ25が取り付けられている。点火プラグ25は、その先端が燃焼室16の中に臨むような姿勢で取り付けられており、燃焼室16の中の混合気を強制的に点火する。
吸気通路30は、図2に示すように、エンジン本体10前側の外面である取付面10aに接続されており、各シリンダ11の吸気ポート17、18を含んで構成されている。すなわち、吸気通路30は、燃焼室16に導入するガスが流れる通路であり、各吸気ポート17、18を介して燃焼室16に接続されている。吸気通路30の上流端部には、新気を濾過するエアクリーナ31が配設されている。吸気通路30の下流端近傍には、サージタンク38が配設されている。サージタンク38よりも下流の吸気通路30には、シリンダ11毎に2本ずつ分岐する独立通路39が設けられている。
詳細は後述するが、2本の独立通路39のうちの一方が第1ポート17に接続され、他方が第2ポート18に接続される。以下、前者の独立通路39に対して符号“391”を付す一方、後者に対して符号“392”を付す場合がある。このように、独立通路39の下流端が、各シリンダ11の吸気ポート17、18に接続されている。
吸気通路30におけるエアクリーナ31とサージタンク38との間には、スロットルバルブ32が配設されている。スロットルバルブ32は、その開度を調整することによって、燃焼室16に導入する新気の量を調整するよう構成されている。
吸気通路30において、スロットルバルブ32の下流には過給機34が配設されている。過給機34は、燃焼室16に導入するガスを過給するよう構成されている。この構成例において、過給機34は、エンジン1によって駆動される機械式の過給機である。この過給機34は、ルーツ式のスーパーチャージャとして構成されているものの、この構成はどのようなものであってもよい。例えば、リショルム式や遠心式のスーパーチャージャとしてもよい。
過給機34とエンジン本体10との間には、電磁クラッチ34aが介設されている。電磁クラッチ34aは、過給機34とエンジン1との間で駆動力を伝達させたり、駆動力の伝達を遮断したりする。後述の如く、ECU(Engine Control Unit)など、不図示の制御手段が電磁クラッチ34aの遮断及び接続を切り替えることによって、過給機34のオンとオフとが切り替わる。つまり、このエンジン1は、過給機34のオンとオフとを切り替えることにより、燃焼室16に導入するガスを過給する運転と、燃焼室16に導入するガスを過給しない運転とを切り替えることができるよう構成されている。
吸気通路30における過給機34の下流には、インタークーラ36が配設されている。インタークーラ36は、過給機34において圧縮されたガスを冷却するよう構成されている。この構成例におけるインタークーラ36は、水冷式に構成されている。
また、吸気通路30に組み込まれた各種の装置を結ぶ通路として、吸気通路30は、エアクリーナ31よりも下流側に配設され、エアクリーナ31によって浄化されたガスを過給機34へ導く第1通路33と、過給機34によって圧縮されたガスをインタークーラ36へ導く第2通路35と、インタークーラ36によって冷却されたガスをサージタンク38へ導く第3通路37とを有している。なお、サージタンク38から吸気ポート17、18にかけての流路長(ランナー長)を短くするべく、サージタンク38は、吸気ポート17、18の入口(上流端部)近傍に配設されている。なお、サージタンク38は、後述の上流側通路71と下流側通路72との間に介在し、ガスの流通を中継しているという点で、「中継部」を例示している。第2通路35及び第3通路37は、過給機34やインタークーラ36と共に、「過給通路」を構成している。
また、吸気通路30には、過給機34及びインタークーラ36を迂回するバイパス通路40が設けられている。バイパス通路40は、吸気通路30のうちスロットルバルブ32の下流部から過給機34の上流部にかけての部分と、サージタンク38とを互いに接続する。バイパス通路40には、該バイパス通路40を流れるガスの流量を調整するように構成されたバイパスバルブ41が配設されている。
過給機34をオフにしたとき(つまり、電磁クラッチ34aを遮断したとき)には、バイパスバルブ41を全開にする。これにより、吸気通路30を流れるガスは、過給機34をバイパスしてサージタンク38に流入し、独立通路39を介して燃焼室16に導入される。エンジン1は、非過給、つまり自然吸気によって運転する。
過給機34をオンにしたとき(つまり、電磁クラッチ34aを接続したとき)には、バイパスバルブ41の開度を適宜調整する。これにより、吸気通路30において過給機34を通過したガスの一部は、バイパス通路40を通って過給機34の上流に逆流する。バイパスバルブ41の開度を調整することによって、逆流量を調整することができるから、燃焼室16に導入するガスの過給圧を調整することができる。この構成例においては、過給機34とバイパス通路40とバイパスバルブ41とによって、過給システムが構成されている。
排気通路50は、エンジン本体10における後側の外面に接続されており、各シリンダ11の排気ポート19に連通している。排気通路50は、燃焼室16から排出された排気ガスが流れる通路である。排気通路50の上流部分は、詳細な図示は省略するが、シリンダ11毎に分岐する独立通路を構成している。それら独立通路の上流端が、各シリンダ11の排気ポート19に接続されている。排気通路50には、1つ以上の触媒コンバータ51を有する排気ガス浄化システムが配設されている。触媒コンバータ51は、三元触媒を含んで構成されている。なお、排気ガス浄化システムは、三元触媒のみを含むものに限らない。
吸気通路30と排気通路50との間には、外部EGRシステムを構成するEGR通路52が接続されている。EGR通路52は、既燃ガスの一部を吸気通路30に還流させるための通路である。EGR通路52の上流端は、排気通路50における触媒コンバータ51の下流に接続されている。EGR通路52の下流端は、吸気通路30における過給機34の上流、且つスロットルバルブ32の下流に接続されている。
EGR通路52には、水冷式のEGRクーラ53が配設されている。EGRクーラ53は、既燃ガスを冷却するよう構成されている。EGR通路52にはまた、EGRバルブ54が配設されている。EGRバルブ54は、EGR通路52を流れる既燃ガスの流量を調整するよう構成されている。EGRバルブ54の開度を調整することによって、冷却された既燃ガス、つまり外部EGRガスの還流量を調整することができる。
この構成例において、EGRシステム55は、EGR通路52及びEGRバルブ54を含んで構成されている外部EGRシステムと、前述した吸気電動VVT23及び排気電動VVT24を含んで構成されている内部EGRシステムとによって構成されている。
(吸気通路の構成)
以下、吸気通路30の構成について詳細に説明する。
図4は、ユニット化された吸気通路30の全体構成を前側から見て示す斜視図であり、図5は、吸気通路30の全体構成を後側から見て示す斜視図である。また、図6は、吸気通路30のうち過給機34側の通路構造を示す横断面図であり、図7は、その縦断面図である。また、図8は、サージタンク38周辺の縦断面を示す斜視図であり、図9は、図8とは別の縦断面を示す斜視図である。
吸気通路30を構成する各部は、いずれもエンジン本体10の前側、具体的には、前述の取付面10aの前側に配置されている。なお、取付面10aは、図6〜図7に示すように、シリンダヘッド13及びシリンダブロック12における前側の外面によって構成されている。
前述のように、吸気通路30は、ガスを導く複数の通路(具体的には、第1通路33、第2通路35、第3通路37、サージタンク38及び独立通路39)と、過給機34やインタークーラ36等の装置と、これらの装置を迂回するバイパス通路40とが組み合わされて構成されている。
最初に、これらの構成要素の概略的なレイアウトについて説明する。
図2、及び図4〜図8に示すように、過給機34は、サージタンク38を挟んで4つのシリンダ11に対して反対側に対向して配置されている。過給機34の後面と取付面10aとの間には、サージタンク38の寸法に応じた隙間が空いている。第1通路33は、過給機34の左側において気筒列方向に沿って延設されており、過給機34の左端に接続されている。また、過給機34とインタークーラ36とは、この順番で上下に並んでおり、同方向に隣接している。第2通路35は、過給機34の前部とインタークーラ36の前部とを接続するように上下に延設されている。サージタンク38は、過給機34と取付面10aとの間の隙間に配置されており、吸気ポート17、18の上流端部に対して、複数の独立通路39を挟んで反対側に対向して配置されている。第3通路37は、インタークーラ36及び過給機34と、取付面10aとの間の隙間を縫うように延設されており、インタークーラ36の後部とサージタンク38の底部とを接続している。バイパス通路40は、第1通路33の途中から分岐して上方へ延びた後、エンジン本体10の内方(右方)へ向かって延びるように形成されており、下流側において2股に分岐した上でサージタンク38の上部に接続されている。
次に、吸気通路30を構成する各部の構造について説明する。
第1通路33は、実質的に気筒列方向(左右方向)に延びる管状に形成されており、その上流側(左側)部分は、スロットルバルブ32が内蔵されたスロットルボディ33aによって構成されている。スロットルボディ33aは、金属製の短筒状に形成されており、図4〜図6に示すように、両端の開口を左右に向けた姿勢で、取付面10aに対して左方且つ前方に位置するように配置されている。スロットルボディ33aの上流端(左端)には、不図示の通路を介してエアクリーナ31が接続されている一方、スロットルボディ33aの下流端(右端)には、第1通路33の下流側(右側)部分である第1通路本体33bが接続されている。
第1通路本体33bは、図6に示すように、スロットルボディ33aを過給機34に接続するように構成されている。詳しくは、第1通路本体33bは、両端の開口を左右に向けた長筒状に構成されている。第1通路本体33bは、取付面10aの前方において、スロットルボディ33aと略同軸になるように配置されている。さらに詳しくは、第1通路本体33bは、気筒列方向の外側から内側(左側から右側)に向かうにつれて、次第に拡径するように形成されている。第1通路本体33bの上流端(左端)には、前述のようにスロットルボディ33aの下流端が接続されている一方、その下流端(右端)には、過給機34の吸入口が接続されている。
また、第1通路本体33bには、EGR通路52が合流する合流部33cが開口している。図6に示すように、合流部33cは、第1通路本体33bの上流側部分の後面に形成されており、EGR通路52の下流端が接続されている。合流部33cは、少なくともスロットルバルブ32よりも下流側に形成されるようになっている。
また、第1通路本体33bには、バイパス通路40へ分岐する不図示の分岐部も開口している。この分岐部は、第1通路本体33bにおいて、合流部33c近傍(ガスの流れ方向に関しては実質的に同じ位置)の上面に形成されており、バイパス通路40の上流端部(後述のバルブボディ41a)が接続されている(図4〜図5も参照)。なお、バイパス通路40の上流端は、図4等に示すように、過給機34、インタークーラ36、4組の吸気ポート17、18、及び各吸気ポート17、18に対して独立通路39を介して接続されたサージタンク38よりも気筒列方向の外側(左側)に位置している。
よって、エアクリーナ31で浄化されて第1通路33へ流入した新気は、スロットルバルブ32を通過した後、合流部33cから流入した外部EGRガスと合流する。そして、新気と外部EGRガスとが合流したガスは、自然吸気時には、前述の分岐部を介してバイパス通路40へ流入する一方、過給時には、バイパス通路40を逆流したガスと合流しつつ、第1通路本体33bの下流端から過給機34に吸い込まれるようになっている(図6の矢印A1を参照)。
以下、過給機34側の通路構造と、バイパス通路40側の通路構造と、各通路構造と密接に関連する吸気ポート17、18の構造とについて、順番に説明する。
−過給機側の通路構造−
まず、過給機34に吸入される側の通路構造について詳細に説明する。
前述の如く、本実施形態に係る過給機34は、ルーツ式のスーパーチャージャとして構成されている。詳しくは、過給機34は、気筒列方向に沿って延びる回転軸を有する一対のロータ(不図示)と、ロータを収容しているケーシング34bと、ロータを回転駆動する駆動プーリ34dとを備え、駆動プーリ34dに巻き掛けられた駆動ベルト(不図示)を介してクランクシャフト15に連結されている。駆動プーリ34dと、ロータとの間には、前述の電磁クラッチ34aが介設されており、電磁クラッチ34aの遮断及び接続を切り替えることによって、クランクシャフト15を介して過給機34へ駆動力を伝達したり、駆動力の伝達を遮断したりする。
ケーシング34bは、気筒列方向に延びる筒状に形成されており、ロータの収容空間と、過給機34を通過するガスの流路とを区画している。詳しくは、ケーシング34bは、気筒列方向に延び且つ左端と前面とが開口した略円筒状に形成されており、図6等に示すように、取付面10aの気筒列方向略中央の部分に対して、所定の間隔を空けるように且つ第1通路33と同軸になるように配置されている。
ケーシング34bの長手方向左端部には、ロータによって圧縮するガスを吸い込む吸入口が開口しており、第1通路33の下流端(右端)が接続されている。その一方で、ケーシング34bの前部には、図6〜図7に示すように、ロータによって圧縮されたガスを吐き出す吐出口34cが開口しており、第2通路35の上流端(上端)が接続されている。
駆動プーリ34dは、ケーシング34bに収容されたロータを回転駆動するように構成されている。詳しくは、駆動プーリ34dは、ケーシング34bの右端から突出し且つ、第1通路33及びケーシング34bの双方に対して略同軸に延びる軸状に形成されている。駆動プーリ34dの先端には駆動ベルトが巻き掛けられており、前述の如く、電磁クラッチ34aの切替状態に応じて、クランクシャフト15を過給機34に対して駆動連結するように構成されている。
第2通路35は、図4、及び図6〜図7等に示すように、過給機34をインタークーラ36に接続するように構成されている。過給機34とインタークーラ36とを上下に隣接させるべく、本実施形態に係る第2通路35は、エンジン1の上下方向に沿って延びるように形成されている。また、第2通路35は、図7に示すように、上下の両端が、それぞれ後方(エンジン本体10側)に向かって開口している。ここで、上側の開口部は、ケーシング34bの前部(具体的には吐出口34c)に接続されており、下側の開口部は、インタークーラ36の前部(具体的には、後述の開口部36d)に接続されている。
前述の如く、本実施形態に係るインタークーラ36は、水冷式に構成されており、図4〜図7に示すように、ガスの冷却機能を有するコア36aと、コア36aの側部に取り付けられるコア接続部36bと、コア36aを収容するクーラハウジング36cとを備えている。詳細は省略するが、コア接続部36bには、コア36aへ冷却水を供給する給水管と、コア36aから冷却水を排出する排水管とが接続されている。
コア36aは、直方状に形成されており、その一側面(後面)と取付面10aとが向かい合うような姿勢で支持されている。コア36aの前面がガスの流入面を構成している一方、コア36aの後面がガスの流出面を構成しており、それぞれ、コア36aにおいて最も広い面となっている。図示は省略するが、コア36aには、薄板材を扁平筒形にしたウォータチューブが複数配列されており、各ウォータチューブの外壁面には、波状のコルゲートフィンがロウ付け等により接続されている。このように構成することで、給水管から供給された冷却水は、各ウォータチューブに導入されて、高温のガスを冷却することになる。ガスを冷却したことで暖められた冷却水は、各ウォータチューブから排水管を介して排出される。また、コルゲートフィンを設けたことで、各ウォータチューブの表面積が増加して放熱効果が向上するようになっている。
コア接続部36bは、図4に示すように、矩形薄板状の部材であって、コア36aの右側面に取り付けられている。コア接続部36bを介して、給水管及び排水管と、ウォータチューブとが相互に接続されている。コア接続部36bは、インタークーラ36の右側壁部を構成しており、クーラハウジング36cと共に、コア36aの収容空間を区画している。
クーラハウジング36cは、過給機34を構成するケーシング34bの下方に配置されており、コア36aの収容空間を区画していると共に、吸気通路30のうち第2通路35と第3通路37との間に介設された流路を構成している。
具体的に、クーラハウジング36cは、前面と後面とが開口した矩形薄箱状に形成されており、ケーシング34bの下方位置において、その後面と取付面10aとが向かい合うような姿勢で支持されている。この後面は、ケーシング34bと同様に、エンジン本体10の取付面10aに対して所定の間隔(図7を参照)を空けて配置されている。
そして、クーラハウジング36cにおける前面側の開口部36dには、第2通路35の下流端が接続されている一方、後面側の開口部36eには、第3通路37の上流端が接続されている。また、クーラハウジング36cは、右側面も開口している。その開口部は、コア36aをクーラハウジング36cの内部に収容するときの挿入口として構成されており、コア接続部36bによって閉塞されるようになっている。
第3通路37は、サージタンク38及び独立通路39に対して一体的に形成された通路であって、図7及び図8に示すように、インタークーラ36をサージタンク38に接続するように構成されている。詳しくは、第3通路37は、上流側から順に、クーラハウジング36cに締結され、インタークーラ36を通過したガスが集合する集合部37aと、集合部37aに集合したガスをサージタンク38へ導く導入部37bとを有している。第3通路37は、少なくとも車両搭載状態においては、サージタンク38に対して下方に配設されている。
集合部37aは、前面側つまり、クーラハウジング36c側が開放された、前後の奥行の浅い箱状に形成されており、その開放部は、図7に示すように、クーラハウジング36c後面側の開口部36eに接続されている。集合部37aは、クーラハウジング36cの後面と、エンジン本体10の取付面10aとの隙間に位置するようになっている。また、集合部37aの後面にはさらに、導入部37bの上流端が接続されている。
導入部37bは、略上下方向に延びる曲管部として形成されており、その上流端は集合部37aの後面に接続されている一方、その下流端はサージタンク底面の中央部(図8〜図9を参照)に接続されている。この導入部37bは、図7等に示すように、集合部37aの後面から過給機34のケーシング34bの後面にかけての領域と、エンジン本体10の取付面10aとの間の隙間を縫うように延設されている。
さらに詳しくは、図8に示すように、導入部37bの上流側部分は、集合部37aとの接続部から右斜め上方へ向かって延びる(区間S2を参照)一方、それよりも下流側部分は、サージタンク38との接続部に向かって直上方へ延びる(区間S1を参照)ように形成されている。このように形成した結果、導入部37bの下流端部は、気筒列方向の一側から見たときに、独立通路39におけるガスの流れ方向に対して略直交する方向に延びるようになる(図7を参照)。
サージタンク38は、気筒列方向に延び、且つ同方向の両端が閉塞された略筒状に形成されている。このサージタンク38は、前述のように、吸気ポート17、18の反気筒側端部に対し、複数の独立通路39を挟んで反対側に対向して配置されている(図7を参照)。後述のように、複数の独立通路39をそれぞれ短筒状に形成すると、このような配置と相俟って、サージタンク38は、吸気ポート17、18の入口(上流端部)近傍に位置することになる。このことは、サージタンク38から吸気ポート17、18にかけての流路長(ランナー長)を短くする上で有効である。
また、図9に示すように、サージタンク38の底部には、第3通路37(導入部37b)の下流端部が接続されている。詳しくは、サージタンク38の内底面38aの中央部(具体的には、気筒列方向の中央部)には、略円形状の断面を有する導入口38bが開口しており、導入部37bの下流端部は、この導入口38bを介してサージタンク38に接続されている。
なお、導入口38bは、吸気ポート17、18よりも大径に形成されている。
また、サージタンク38において、導入口38bから気筒列方向の一端(1番気筒11A側の端)までの寸法と、その他端(4番気筒11D側の端)までの寸法とが実質的に等しくなっている。このような構成とすることで、吸気の分配性能を確保することが可能になり、ひいては充填効率の気筒間差を低減する上で有利になる。
また、図9に示すように、サージタンク38には、複数の独立通路39それぞれの上流端部が、対応する吸気ポート17、18の並ぶ順に従って列状に並んで接続されている。
具体的に、サージタンク38の後面には、2本で1組を成す独立通路39が気筒列方向に沿って並んだ状態で4組(つまり、計8本)形成されている。8本の独立通路39は、それぞれ、車両搭載状態において、後方に向かって略ストレートに延びる短筒状の通路として形成されており、その一端側(上流側)はサージタンク38内の空間に連通している一方、他端側(下流側)はエンジン本体10側(後側)に開口している。
4組の独立通路39は、それぞれ、4組の吸気ポート17、18の各々に対応するように配設されており、第3通路37、サージタンク38及び独立通路39等を成す部品をエンジン本体10に組み付けたときに、各独立通路39と、それに対応する吸気ポート17、18とが、それぞれ1本の通路を構成するようになっている。
前述のように、独立通路39は、1組につき、第1ポート17に対応する独立通路391と、第2ポート18に対応する独立通路392とから構成されている。よって、第3通路37、サージタンク38及び独立通路39等を成す部品をエンジン本体10に組み付けたときに、第1ポート17と、それに対応する独立通路391とが独立した1本の通路を構成する一方、第2ポート18と、それに対応する独立通路392とが独立した1本の通路を構成する。このようにして、計8本の独立した通路が構成されるようになっている。
そして、第2ポート18に接続される独立通路392には、図7に示すように、前述の流動制御デバイス80を構成するSCV81が配設されている。計8本の独立した通路のうち、SCVポートとしての第2ポート18を含んで構成され、且つ該第2ポート18を介して燃焼室16に接続された通路は、「下流側通路」を例示している。本構成例では、下流側通路に符号“72”を付すと共に、1番気筒11Aに対応する下流側通路72を第1下流側通路72Aと呼称し、2番気筒11Bに対応する下流側通路72を第2下流側通路72Bと呼称し、3番気筒11Cに対応する下流側通路72を第3下流側通路72Cと呼称し、4番気筒11Dに対応する下流側通路72を第2下流側通路72Dと呼称する場合がある。SCV81は、「流動制御弁」の例示である。
そして、SCV81は、図6〜図7に示すように、少なくとも所定開度(この例では、気筒軸方向に対して略垂直、好ましくは垂直となる開度)まで開動作するように構成された板状の弁体81aを有しており、その弁体81aの開度調整を通じて下流側通路72を流れるガスの流動を制御するよう構成されている。弁体81aの開度を絞ることで、第2ポート18を通過するガスの流量が低減されるため、4つの第1ポート17のうち、その第2ポート18と同じシリンダ11に接続された第1ポート17を通過するガスの流量を相対的に増やすことができる。なお、SCV81は、独立通路392ではなく、その独立通路392に接続される第2ポート18に配設してもよい。
SCV81は、機関出力軸方向に延びる弁軸82によって弁体81aが開動作されるように構成されており、この弁体81aは、サージタンク38の気筒列方向一側(右側)の外面に取付けられたアクチュエータ83によって作動するようになっている。SCV81、弁軸82及びアクチュエータ83が本構成例における流動制御デバイス80を構成している。
前述の如く、バイパス通路40の下流側部分は2股に分岐しており、分岐した各通路(以下、「分岐通路」44b、44cという)の下流端部は、両方とも、サージタンク38の上面に接続されている。
そのような接続構造を実現するべく、サージタンク38の上面には、気筒列方向に間隔を空けて配置され且つ、サージタンク38の内外を連通させるように構成された第1及び第2導入部38c、38dが設けられている。
そして、第1及び第2導入部38c、38dのうち、気筒列方向の一側(右側)に位置する第1導入部38cには、一方の分岐通路(以下、「第1分岐通路」ともいう)44bの下流端部が接続されている一方、他側(左側)に位置する第2導入部38dには、他方の分岐通路(以下、「第2分岐通路」ともいう)44cの下流端部が接続されている(図10も参照)。
具体的に、第1及び第2導入部38c、38dは、双方とも短筒状に形成されており、図8に示すように、サージタンク38の上面から気筒列方向に対して垂直に且つ、斜め上前方に向かって延びている。
第1導入部38cは、図8に示すように、サージタンク38において、2番気筒11Bの第2ポート18Bに対応する独立通路392付近の部位(第2下流側通路72Bの上流端部付近の部位)に対向するように配設されている。対して、第2導入部38dは、4番気筒11Dの第2ポート18Dに対応する独立通路392付近の部位(第4下流側通路72Dの上流端部付近の部位)に対向するように配設されている。第1及び第2導入部38c、38dの構成が、第1及び第2分岐通路44b、44cとサージタンク38との接続箇所を規定している。
つまり、過給時においては、エンジン1の運転に伴い、クランクシャフト15からの出力が、駆動ベルト及び駆動プーリ34dを介して伝達されて、ロータを回転させる。ロータが回転することにより、過給機34は、第1通路33から吸い込んだガスを、圧縮した上で吐出口34cから吐き出す。吐き出されたガスは、ケーシング34bの前方に配置された第2通路35に流入する。
図7の矢印A2に示すように、過給機34から吐出されて第2通路35に流入したガスは、過給機34の吐出口34cから前方に向かって流れた後、第2通路35に沿って下方へと流れる。下方へ流れたガスは、第2通路35の下部に至った後、インタークーラ36に向かって後方へ流れる。
続いて、図7の矢印A3に示すように、第2通路35を通過したガスは、前面側の開口部36dからクーラハウジング36cの内部に流入し、その前側から後方に向かって流れる。クーラハウジング36cの内部に流入したガスは、コア36aを通過する際に、ウォータチューブに供給された冷却水によって冷却される。冷却されたガスは、クーラハウジング36cにおける後面側の開口部36eから流出し、第3通路37に流入する。
そして、図7の矢印A4に示すように、インタークーラ36から第3通路37へ流入したガスは、集合部37aを通過した後、導入部37bの上流側部分に沿って右斜め上方へ流れ(図8の区間S1も参照)、その後、導入部37bの下流側部分に沿って直上方へ流れる(図8の区間S2も参照)。図7の矢印A5に示すように、導入部37bを通過したガスは、サージタンク38における、気筒列方向の略中央の空間に流入し、サージタンク38にて一時的に蓄えられた後、独立通路39を介して各シリンダ11の吸気ポート17、18へ供給される。
−バイパス通路側の通路構造−
次に、バイパス通路40側の通路構造について詳細に説明する。
図10は、バイパス通路40側の通路構造を上側から見て示す図であり、図11は、サージタンク38とバイパス通路40との接続構造を示す縦断面図であり、図12は、バイパス通路40からサージタンク38を介して燃焼室16へ至る通路構造を、閉状態にあるSCV81と併せて示す横断面図である。
バイパス通路40は、第1通路本体33b上面に設けられた分岐部から上方に向かって延びた後に、右方に向かって略ストレートに延びる(図4及び図5も参照)。バイパス通路40は、右方に向かって延びた部分がサージタンク38の中央付近(具体的には、気筒列方向における中央)に至ると、斜め下後方に向かうように向きを変えた後に、2股に分岐する。分岐した各々が、サージタンク38の上面に接続されるようになっている。
具体的に、バイパス通路40は、流れ方向に沿って上流側から順に、バイパスバルブ41が内蔵されたバルブボディ41aと、バルブボディ41aを通過したガスの流れ方向を変更する曲管部42と、曲管部42を通過したガスを右方に向かって導く直管部43と、直管部43を通過したガスを斜め下後方に向かって導いた後、2股に分岐してサージタンク38に接続される分岐管部44とから構成されている。
バルブボディ41aは、短筒状に形成されており、図5に示すように、第1通路33に対して上方且つ、過給機34に対して左方において、両端の開口を上下に向けた姿勢で配置されている。また、バルブボディ41aは、第1通路33と同様に、取付面10aの左端付近の部分よりも前方に位置している。バルブボディ41aの上流端(下端)には、第1通路33の分岐部が接続されている一方、バルブボディ41aの下流端(上端)には、曲管部42の上流端が接続されている。
曲管部42は、エルボ状の管継手として構成されており、第1通路33、ひいてはバルブボディ41aの上方位置において、下方と右方とに開口を向けた姿勢で配置されている。よって、曲管部42に流入したガスは、第1通路33におけるガスの主流に対して垂直な方向(直上方)に向かって流れた後、曲管部42の曲がり方向に従って流れの向きが変更される。その結果、曲管部42を流れるガスは、気筒軸方向視したとき(図10を参照)に、若干、後方へ流れつつ、気筒列方向の外側から内方(左側から右方)に向かって流れる。また、曲管部42は、第1通路33及びバルブボディ41aと同様に、取付面10aの左端付近の部分よりも前方に位置している。曲管部42の上流端(下端)には、既に述べたようにバルブボディ41aの下流端(上端)が接続されている一方、曲管部42の下流端(右端)には、直管部43の上流端が接続されている。
直管部43は、長筒状(具体的には、気筒列方向の一側(左側)から他側(右側)へ向かう方向に延びる筒状)に形成されており、図4〜図5から見て取れるように、第1通路33ないし過給機34の上方位置において、両端の開口を左右に向けた姿勢で配置されている。直管部43の上流端(左端)には、既に述べたように曲管部42の下流端(右端)が接続されている一方、直管部43の下流端(右端)には、分岐管部44の上流端が接続されている。
分岐管部44は、エルボ状に曲折された曲折通路44aと、その曲折通路44aの下流端からトーナメント状に分岐した2本の分岐通路44b、44cとから構成されており、過給機34ないしサージタンク38の上方位置において、曲折通路44aの上流端を左方に向けて且つ、分岐した2本の分岐通路44b、44cを両方とも斜め下後方に向けた姿勢で配置されている。
詳しくは、曲折通路44aは、左側から右方へ向かうにつれて、前方から斜め下後方へ向かうように、略直角に曲折されている。この曲折通路44aの後端部は、図10に示すように、気筒軸方向視したときに、略T字状に2本の分岐通路44b、44cに分岐している。
2本の分岐通路44b、44cの流路長は、実質的に同じであり、分岐した一方の分岐通路である第1分岐通路44bは、分岐箇所から気筒列方向に沿って右方へ延びた後、斜め下後方に向かうように曲折されている。対して、分岐した他方の分岐通路である第2分岐通路44cは、分岐箇所から気筒列方向に沿って左方へ延びた後、斜め下後方に向かうように曲折されている。2本の分岐通路44b、44cの各々の下流端部は、前述の如く、サージタンク38の上面に形成された第1導入部38c及び第2導入部38dの各々に接続されている。
バイパス通路40を構成する部品をサージタンク38に取り付けたとき、2本の分岐通路44b、44cの各々と、第1導入部38c及び第2導入部38dの各々とが、それぞれ1本の通路を構成するようになっている。これら2本の通路は、それぞれ、各々の下流端部(つまり、第1導入部38c及び第2導入部38dの各々)が下流側通路72の上流側に接続され、中継部としてのサージタンク38を介して燃焼室16へガスを供給するようになっており、双方とも「上流側通路」を例示している。本構成例では、上流側通路に符号“71”を付すと共に、第1分岐通路44b及び第1導入部38cに対応する上流側通路71を第1上流側通路71Aと呼称し、第2分岐通路44c及び第2導入部38dに対応する上流側通路71を第2上流側通路71Bと呼称する場合がある。
前述の下流側通路72は、そうした上流側通路71に対して、中継部としてのサージタンク38を介して接続されている。
自然吸気時において、バイパス通路40に流入したガスは、該バイパス通路40を成す各部41〜44を通過して各シリンダ11へ至る。
つまり、スロットルバルブ32を通過したガスは、バイパスバルブ41の開閉状況に応じて、第1通路33の途中からバイパスバルブ41のバルブボディ41aに流入する。
図10の矢印A6に示すように、バルブボディ41aを通過して曲管部42に流入したガスは、直上方に向かって流れた後、若干後方へ向いつつも、右方へ向かって流れる。
続いて、曲管部42を通過したガスは、図10の矢印A7に示すように、直管部43に沿って右方へ流れた後、分岐管部44に流入する。そして、同図の矢印A8〜A10に示すように、分岐管部44に流入したガスは、曲折通路44aを通過した後、第1分岐通路44bと第2分岐通路44cとに分配されて、分配された各々がサージタンク38に流入する(図11〜図12の矢印A9〜A10も参照)。サージタンク38に流入したガスは、独立通路39を介して各シリンダ11の吸気ポート17、18へ供給される。
対して、過給時においては、サージタンク38からバイパス通路40に逆流したガスは、バイパス通路40の各部41〜44を自然吸気時とは逆向きに通過して、第1通路33に流出する。
−吸気ポートの構成−
以下、吸気ポート17、18の構造について詳細に説明する。前述の如く、吸気ポート17、18としての第1ポート17及び第2ポート18は、双方とも、いわゆるタンブルポート形状とされている。このタンブルポート形状は、燃焼室16周辺の構成とも密接に関連するため、最初に燃焼室16周辺の構成について詳細に説明する。図13は、タンブルポート形状とされた吸気ポート構造と、燃焼室の構造とについて説明する図である。
燃焼室16の天井面90は、前述のようにペントルーフ形状であり、シリンダヘッド13の下面によって構成されている。具体的に、天井面90は、図13示すように、燃焼室16を機関出力軸方向視したときに、吸気側から気筒軸(簡便のため、図12〜図14においてのみ、符号“C”を付す)に向かって上り勾配となっている吸気側傾斜面と、排気側から気筒軸Cに向かって上り勾配となっている排気側傾斜面とによって構成されている。
吸気側傾斜面には、2つの吸気口93が開口している(図13には1つのみ図示)。詳細な図示は省略するが、2つの吸気口93は、機関出力軸方向に並んで配設されている。各吸気口93の周縁部には、それぞれ、リング状のバルブシートが配設されている。
第1ポート17と第2ポート18は、各々2つの吸気口93の各々に接続されている。便宜上、以下では第2ポート18に関連した構成についてのみ説明するが、第1ポート17の構成も同様である。
第2吸気ポート18には、前述の吸気バルブ21が配設されている。吸気バルブ21は、不図示の動弁機構(例えばDOHC式の機構)によって駆動されるよう構成されており、上下に往復動することによって、吸気口93を開閉する。
詳しくは、吸気バルブ21は、いわゆるポペットバルブとして構成されている。具体的に、吸気バルブ21は、上下に往復動するバルブステム(軸部)211と、バルブステム211の下端部に接続されかつ、燃焼室16の内側(内方側)から吸気口93に当接することにより、その吸気口93を燃焼室16の中から閉塞するよう構成されたバルブヘッド(傘部)212とを有している。
バルブステム211は、円筒状のバルブガイド(不図示)に挿し通されており、軸方向に上下動するようになっている。バルブステム211の下端部は、バルブヘッド212の傘裏212aに接続されている。一方、バルブステム211の上端部は、前述の動弁機構に連結されている。
バルブヘッド212は、その傘裏212aが吸気口93に設けられたバルブシート94に密着することによって、吸気口93を燃焼室16の内部から閉塞するようになっている。その状態から吸気バルブ21が下側に移動すると、傘裏212aとバルブシート94とが離隔して、吸気口93が開放される。このとき、傘裏212aとバルブシート94との間隔(いわゆるバルブリフト量)に応じて、第2ポート18から燃焼室16の中に流入する吸気の流量が調整される。
次に、第2ポート18のタンブルポート形状について説明する。この説明は、第1ポート17においても同様である。
第2ポート18の下流側部分は、機関出力軸に垂直な断面視において、気筒軸Cに対して斜めに傾斜している。具体的に、第2ポート18の下流端部は、図13に示すように、燃焼室16を機関出力軸方向視したときに、吸気側から気筒軸Cに向かうにつれて、燃焼室16に対して上方に離れた位置から下側(気筒軸C方向の燃焼室16側)に向かって延びており、天井面90の吸気口93に繋がっている。
ここで、第2ポート18の下流端部、特に、その下流端部の下半部は、この第2ポート18に対応する吸気バルブ21が吸気口93を開放したとき(少なくとも、吸気バルブ21のバルブリフト量が最大量になったとき)に、機関出力軸に垂直な断面視において、そのバルブヘッド212のうち、バルブステム211よりも気筒軸C側に位置する部分の傘裏212aと、その傘裏212aに対向する天井面90との間を指向するように延びている(図13の矢印a1〜a2を参照)。
このように構成すると、吸気バルブ21が吸気口93を開放したときに、第2ポート18から燃焼室16に流入した吸気は、傘裏212aと、それに対向する天井面90との間を流れるように導かれる。そのように導かれた吸気は、気筒軸Cを挟んで吸気バルブ21とは反対側(つまり、排気側)のシリンダ11内周面から縦方向(気筒軸C方向)の下側に向かって流れた後、吸気バルブ21へ向かって縦方向の上側へ流れる。こうして、燃焼室16に流入した吸気は、機関出力軸に平行な中心軸まわりの旋回流を生成するようになる。よって、燃焼室16において、タンブル流の強度が高まる。
(ガスの導入に関係する構成)
図14は、バイパス通路40からサージタンク38を介して燃焼室16へ至る通路構造を、開状態にあるSCV81と併せて示す横断面図である。また、図15は、サージタンク38周辺の流路構造を上側から見て示す平面図であり、図16は、その流路構造を後側から見て示す後面図である。図15〜図16は、双方とも、サージタンク38周辺の部材を鋳造するときの中子の形状に相当する。
エンジン1は、該エンジン1を運転するためのECUを備えている。ECUは、各種のセンサより出力された検知信号に基づいて、エンジン1の運転状態を判断すると共に、種々のアクチュエータの制御量を計算する。そして、ECUは、計算した制御量に対応する制御信号を、インジェクタ6、点火プラグ25、吸気電動VVT23、排気電動VVT24、燃料供給システム61、スロットルバルブ32、EGRバルブ54、過給機34の電磁クラッチ34a、バイパスバルブ41、及び流動制御デバイス80等に出力し、エンジン1を運転する。
エンジン1の運転領域は、例えばエンジン回転数と負荷とによって区分されるようになっており、ECUは、各運転領域に対応した運転状態を実現するように、各アクチュエータを制御する。
例えば、ECUは、所定負荷よりも低負荷側の運転領域(以下、「燃費領域」という)では、自然吸気によってエンジン1を運転する。具体的に、ECUは、電磁クラッチ34aを遮断すると共に、バイパスバルブ41を全開にする。
一方、ECUは、その所定負荷よりも高負荷側の運転領域(以下、「過給域」という)では、過給機34を駆動することにより、各シリンダ11に導入されるガスを過給する。具体的に、ECUは、電磁クラッチ34aを接続すると共に、バイパスバルブ41の開度を適宜調整する。
また、ECUは、燃費領域における低負荷側(燃費領域を、前記所定負荷とは異なる所定値によって低負荷側と高負荷側とに2分したときの低負荷側)の領域では、スワールの生成を促進するべく、弁体81aを閉動作させることにより、SCV81を閉じる。これにより、第1ポート17を通過するガスの流量が相対的に増大し、ガスのミキシングを促進することが可能になる。
対して、ECUは、燃費領域における高負荷側の領域から過給領域にかけては、ガスの導入量を確保するべく、弁体81aを前述の所定開度まで開動作させることにより、SCV81を開く。SCV81を開いた分、2つの吸気ポート17、18を通過するガスの総流量が相対的に増大し、燃焼室16において、多量の混合気を形成することが可能になる。
−流動制御弁に関係する構成−
近年、前述のSCV81やタンブルコントロールバルブ(Tumble Control Valve:TCV)といった流動制御弁を備えたエンジン1において、例えば熱効率の向上という観点から、ポンプ損失の低減が要求されている。ポンプ損失を低減するためには、バイパス通路40など、種々の通路を介して燃焼室16へ至るガスをスムースに導くことが求められる。
本願発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、SCV81をはじめとする流動制御弁の構成やレイアウトに関し、ガスを燃焼室16へ導く上で改善の余地があることに気付いた。
以下、流動制御弁としてのSCV81に関連した構成について詳細に説明する。
ここでは、便宜上、第1上流側通路71Aと第2下流側通路72Bとに関連する構成について説明するが、例えば、第2上流側通路71Bと第4下流側通路72Dとに関連する構成についても同様である。
図12〜図14に示すように、第1上流側通路71Aの下流端部(この構成例では第1導入部38cに相当しているため、以下では符号“38c”を付す)と、第2下流側通路72Bの上流端部(この構成例では独立通路392に相当しているため、以下では符号“392”を付す)とが、互いに異なる方向を指向するように構成されている。詳しくは、第1上流側通路71Aの下流端部38cは、斜め下後方を指向している一方、第2下流側通路72Bの上流端部392は、略後方を指向している。このことは、第1上流側通路71Aの下流端部38cが、第2下流側通路72Bの上流端部392に対して、所定の角度をもってサージタンク38に接続されていることに等しい。
また、図12に示すように、弁体81aが第2下流側通路72Bを閉塞しているときには、第1上流側通路71Aの下流端部38cは、弁体81aとは対向しないように構成されている。
具体的に、SCV81の弁体81aは、閉状態にあっては、上端側が後方に位置する一方、下端側が前方へ突き出すように傾斜した姿勢とされており、第2下流側通路72Bに対応する独立通路392を閉塞している。
そして、第1上流側通路71Aの下流端部38cの内壁面からガスの流れ方向に沿って延びる延長線L1、L2は、双方とも、閉状態にある弁体81aとは交わらないようになっている。なお、これらの延長線L1、L2は、図例では機関出力軸に垂直な断面視における延長線となっているが、これには限られない。少なくとも、弁軸82に垂直な断面視における延長線とすればよい。
この場合、例えば燃費領域において、第1上流側通路71Aの下流端部38cを介してサージタンク38へ流入したガスは、サージタンク38の内底面38aに吹き付けられた後、独立通路391、392を介して吸気行程にあるシリンダ11(つまり、サージタンク38に対して相対的に負圧となっているシリンダ11)へ吸い込まれることとなる。
図12と図14との比較から見て取れるように、SCV81の弁体81aは、閉状態から所定開度まで開くとき、機関出力軸に垂直な断面視において、反時計回り方向に回動する。
そのようにして弁体81aが所定開度まで開動作したとき、第1上流側通路71Aの下流端部38cは、弁体81a(特に、弁体81aの表面又は裏面)の少なくとも一部と向かい合うように構成されている。
具体的に、SCV81の弁体81aが所定開度まで開動作すると、弁体81aのうち閉状態において上端側とされていた部分は、独立通路392から後方へ突出して第2ポート18Bに没入する一方、弁体81aのうち閉状態において下端側とされていた部分は、独立通路392(つまり第2下流側通路72Bそのもの)から前方へ突出してサージタンク38の中に入り込む。
そして、第1上流側通路71Aの下流端部38cの内壁面からガスの流れ方向に沿って延びる延長線L1、L2のうち少なくとも一方は、開動作に伴ってサージタンク38へ入り込んだ部分と交わることになる。このことは、第1上流側通路71Aの下流端部38cと、弁体81a(特に、弁体81aの表面又は裏面)のうちの少なくとも一部、特に独立通路392から突出した一部とが対向していることに等しい。
この場合、例えば燃費領域において、第1上流側通路71Aの下流端部38cを介してサージタンク38へ流入したガスの少なくとも一部は、弁体81aのうち第2下流側通路72Bから突出した部分に吹き付けられた後、ガスが吹き付けられる弁体81aに対応するシリンダ11が吸気行程にあれば、その第2下流側通路72Bに導入されるようになる。
さらに、第2下流側通路72Bにおける内壁面を、気筒軸C方向において燃焼室16に近接した一方側(この構成例では下側)と、該燃焼室16から離間した他方側(この構成例では上側)とに2分すると、弁体81aは、所定開度まで開動作したとき、ガスの流れ方向に沿って上流側から下流側(前側から後側)に向かうにしたがって、下流側通路72における他方側の内壁面(この構成例では上側の内壁面)を指向するように延びている。
したがって、弁体81aに吹き付けられて第2下流側通路72Bに導入されたガスは、弁体81aが指向している上側の内壁面に沿って流れた後、燃焼室16へ導入される。
以上説明したように、例えばエンジン1の運転状態が燃費領域にある場合、流動制御弁としてのSCV81の弁体81aが所定開度まで開動作する。そのとき、図14に示すように、その弁体81a(特に、弁体81aの表面又は裏面)の少なくとも一部が、第1上流側通路71Aの下流端部38cと向かい合うようになっている。
すなわち、例えば第1上流側通路71Aの下流端部38cと、第2下流側通路72Bの上流端部392とが互いに異なる方向を指向していた場合、第1上流側通路71Aから流れ出るガスは、第2下流側通路72Bにはスムースに流入せず、その上流端部392の付近の壁部38aに衝突することになる。このことは、ガスをスムースに導く上で不都合である。
対して、図14に示すように、第1上流側通路71Aから流れ出たガスは、その下流端部38cに対して向かい合うよう構成された弁体81aに衝突するようになる。弁体81aが第2下流側通路72Bに設けられていることと、その第2下流側通路72Bが弁体81aの開動作に伴って開放されていることと、その第2下流側通路72Bは吸気行程においては相対的に負圧となること等を考慮すると、弁体81aに衝突したガスは、開放されている第2下流側通路72Bをスムースに流れるようになる。そのことで、燃焼室16までガスをスムースに導くことができる。
また、図14に示すように、第1上流側通路71Aの下流端部38cと、第2下流側通路72Bの上流端部392とが向かい合わないようになっているものの、そのような場合においてもなお、第1上流側通路71Aから流れ出るガスは、その下流端部38cと向かい合う弁体81aを介して第2下流側通路72Bへ導かれるようになる。そのことで、燃焼室16までガスをスムースに導く上で有利になる。
また、図14に示すように、第1上流側通路71Aから流れ出るガスは、第2下流側通路72Bの通路内まで至らずとも、そこから突出した弁体81aを介して第2下流側通路72Bに流れ込むようになる。このことは、第1上流側通路71Aと第2下流側通路72Bとの相対位置関係の自由度を保ちつつ、燃焼室16までガスをスムースに導くことができるという点で、吸気通路30全体のレイアウトを決定する上で有利になる。
また、第1上流側通路71Aと第2下流側通路72Bとの間にサージタンク38が介在すると、サージタンク38の形状やレイアウト次第では、ガスを燃焼室16まで導く上で不利となる可能性がある。
しかし、図14に示すように、弁体81aのうちの一部が、第2下流側通路72Bから突出してサージタンク38の中に入り込むようになる。この部分は、第1上流側通路71Aの下流端部38cと向かい合うようになっているから、前述の如く、燃焼室16までガスをスムースに導く上で有利になる。
また、前記実施形態によると、第2ポート18はタンブルポート形状である。よって、燃焼室16において、タンブル流の強度を高めることができる。
ここで、タンブル流の強度をさらに高めるためには、ガスの縦方向の流動を強くすることが求められる。そのための方策としては、第2ポート18を含んで構成される第2下流側通路72Bにおいて、気筒軸方向において燃焼室16から離間した上側の内壁面に沿ってガスを流すことが考えられる。このように構成すると、気筒軸方向において燃焼室16に近接した下側の内壁面に沿ってガスを流す場合と比較して、燃焼室16から離間させた分だけ縦方向の流動を強くすることが可能になる。
そこで、図14に示すように、弁体81aは、所定開度まで開動作したとき、ガスの流れ方向に沿って上流側から下流側に向かうにしたがって、第2下流側通路72Bにおける上側の内壁面を指向するように延びている。このように構成すると、弁体81aに沿って流れるガスは、図14の矢印A9’に示すように上側の内壁面に向かって流れると共に、その上側の内壁面に沿って流れるようになる。これにより、タンブル流の強度をさらに高めることが可能になる。
−ガスの吹き戻しに関係する構成−
前述のように、エンジン1は、その運転に際して、1番気筒11A、3番気筒11C、4番気筒11D、2番気筒11Bの順で燃焼を行うようになっている。
以下、燃焼順が前後し且つ、気筒列方向に隣接した2つのシリンダ11を、燃焼が発生する順に先発気筒及び後発気筒と称する場合がある。すなわち、このエンジン1の場合、2番気筒11Bを1組目の先発気筒とし且つ、1番気筒11Aを1組目の後発気筒とするペアと、3番気筒11Cを2組目の先発気筒とし且つ、4番気筒11Dを2組目の後発気筒とするペアとが構成されるようになっている。以下、特に断りが無い限り、1組目の先発気筒及び後発気筒について説明する。その場合、先発気筒に対しては、2番気筒11Bと同じ符号“11B”を付す一方、後発気筒に対しては、1番気筒11Aと同じ符号“11A”を付すことにする。
ところで、前記実施形態の如きエンジン1では、例えば筒内温度の確保、及びポンプ損失の低減等の観点から、前述の燃費領域において、内部EGRシステムを介してネガティブオーバーラップ期間(NVO)を設けることが考えられる。
具体的に、排気電動VVT24は、燃費領域においては、ECUから受けた制御信号にしたがって、排気バルブ22の閉時期(以下、「EVC」という)を排気上死点前の所定のクランク角に保持する。EVCの調整は、排気電動VVT24によって行われるようになっているため、EVCを略一定に保つと、EVOもまた、略一定に保たれる。こうして、排気電動VVT24は、EVCを排気行程中に設定する。
対して、吸気電動VVT23は、燃費領域においては、ECUから受けた制御信号にしたがって、吸気バルブ21の開時期(以下、「IVO」という)を排気上死点後の所定のクランク角に設定する。よって、この燃費領域においては、排気上死点を挟んで吸気バルブ21及び排気バルブ22が共に閉弁したネガティブオーバーラップ期間が設けられる。
なお、このエンジン1においては、吸気電動VVT23は、IVCを圧縮行程の前期から中期までの間に設定する。すなわち、このエンジン1においては、いわゆる、吸気バルブ21の“遅閉じ”を行うことができる。遅閉じを行うことで、ガスの充填量を少なくすることができる。
ネガティブオーバーラップ期間を設けることによって、燃焼室16の中に既燃ガスが閉じ込められる(いわば、内部EGRガスが導入される)。そのことで、燃焼室16の中の温度、特に着火前の温度が高まる。これにより、例えば、燃費性能を高めるべく、一般的な火花点火燃焼に代えて圧縮着火燃焼を行うときに、その燃焼を安定して行うことが可能になる。また、IVCを遅らせることになるため、ガスの充填量が低減する。燃費領域では充填量を少なくするが、ネガティブオーバーラップ期間を設けることに伴い、ミラーサイクルを実現することになるため、スロットリングを省略又は抑制することができる。そのことで、ポンプ損失が低減する。
ところが、このような制御を実行した場合、吸気行程から圧縮行程へ移行した直後、吸気バルブ21は開弁したままとなるから、ピストン14の上昇に伴って、シリンダ11内に導入された内部EGRガスが吸気側へ吹き戻るようになる。
特に、前記実施形態のように、サージタンク38を吸気ポート17、18の入口近傍に配設した場合、吸気側へ吹き戻されたガスが、吸気ポート17、18及び独立通路391、392を介してサージタンク38まで逆流する可能性がある。
その一方で、4気筒エンジンの場合、前述のように定義された先発気筒11Bが圧縮行程にあるとき、後発気筒11Aは、吸気行程の最中となる。よって、先発気筒11Bからガスが吹き戻されるとき、後発気筒11Aの内部は負圧となるから、先発気筒11Bと後発気筒11Aとが気筒列方向に隣接していることを考慮すると、ランナー長を短く構成したが故に、先発気筒11Bから吹き戻されたガスが、サージタンク38を介して吸気行程中の後発気筒11Aに吸入されてしまう可能性のあることに、本願発明者等は気付いた。
本願発明者等は、さらに検討を重ねた結果、バイパス通路40とサージタンク38との接続箇所次第では、先発気筒11Bから吹き戻されたガスの後発気筒11Aへの吸入が促進されてしまい、その結果、いわゆるプレイグニッション(以下、「プレイグ」ともいう)に至る虞があることを見出した。
例えば、周知のように、バイパス通路40をサージタンク38の気筒列方向中央部(この構成例の場合、2番気筒11Bと3番気筒11Cの間)に接続することが考えられる。
この場合、バイパス通路40及びサージタンク38の接続部と、先発気筒11Bに通じる独立通路39の上流端部と、後発気筒11Aに通じる独立通路39の上流端部とが、気筒列方向において、この順で並ぶことになる。そうすると、バイパス通路40からサージタンク38へ流入したガスは、サージタンク38の内部において、先発気筒11Bに対応する独立通路39の上流端部付近のスペースと、後発気筒11Aに対応する独立通路39の上流端部付近のスペースとを、この順で通過するような流動を形成する。そうすると、バイパス通路40からサージタンク38へ流入したガスが“追い風”となり、先発気筒から吹き戻されたガスを後発気筒側へ押し流してしまうことになる。具体的に、そのような追い風が発生すると、先発気筒11Bから吹き戻されたガスが後発気筒11A側へ押し流されることになる。
本願発明者等は、先発気筒11Bから吹き戻されたガスが、バイパス通路40から流入したガスによって押し流された結果、後発気筒11Aにおいてガスが過剰に吸入されてしまい、その結果、プレイグに至る虞があることに気付いた。
プレイグを抑制するためには、バイパス通路40から流入したガスが“向い風”となるように、バイパス通路40をサージタンク38の気筒列方向における端部(この構成例の場合、1番気筒11Aよりも右側、又は、4番気筒11Dよりも左側)に接続することが考えられる。
この場合、バイパス通路40及びサージタンク38の接続部と、後発気筒11Aに通じる独立通路39の上流端部と、先発気筒11Bに通じる独立通路39の上流端部とが、気筒列方向においてこの順で並ぶことになる。しかし、このように構成してしまうと、吹き戻されたガスの吸入こそ抑制されるものの、バイパス通路40から後発気筒11Aに至る流路長に対して、バイパス通路40から先発気筒11Bに至る流路長が長くなるため、先発気筒11Bにおいて応答性の悪化を招き得る。また、流路長が気筒間で異なると、充填効率などの状態量において、気筒間差が拡大する虞もあるため好ましくない。
プレイグを抑制するための別の方策としては、例えばサージタンク38の容量を大きくすることが考えられるものの、この場合、サージタンク38の容量を大きくした分だけ、吸気通路30全体の容積が増大するため、特に過給機34と組み合わせて構成したときに、過給レスポンスの低下を招く虞があるという点で好ましくない。また、このように構成してしまうと、吸気通路30の周辺部品のレイアウトにも支障を来たし得るため不都合である。
しかし、この構成例においては、前述のように、サージタンク38とバイパス通路40とが接続される第1導入部38cは、図15に示すように、2番気筒11Bの第2ポート18Bに対応する独立通路392付近の箇所に配設されている。その結果、バイパス通路40とサージタンク38との接続箇所は、気筒列方向において、複数の独立通路39のうち先発気筒11Bに対応する独立通路392の上流端部から、後発気筒11Aに対応する独立通路391の上流端部にかけての区間内に対向して設定されるようになっている。
しかも、この第1導入部38cに接続される第1分岐通路44bを通過するガスは、該第1分岐通路44bの延設方向に従って、気筒列方向において右側へ向かうように指向される。先発気筒としての2番気筒11Bに対して、後発気筒としての1番気筒11Aが右側に隣接していることを考慮すると、この第1分岐通路44bは、該第1分岐通路44bを流れるガスを、先発気筒11Bと後発気筒11Aとのうち、後発気筒11A寄りに指向させるように形成されているに等しい。
さらに詳しくは、第1分岐通路44bの下流端部は、図16に示すように、吸気通路30を後方から正面視したときに、2番気筒11Bの第2ポート18Bに接続された独立通路392の上流端部と相互に重なり合うように配設されている(図16の領域O1を参照)。
このように構成すると、後発気筒11Aが吸気行程にあるとき(つまり、サージタンク38の内部において、後発気筒11Aに対応する上流端部付近が負圧となるとき)、バイパス通路40からサージタンク38内へ流入したガスは、該ガスを後発気筒11A寄りに指向させたことと相俟って、先発気筒11Bから吹き戻されたガス(図15の矢印A11を参照)と合流しないまま、後発気筒11A側へ向かう流れ(図15の矢印A9を参照)を形成するようになる。
よって、先発気筒11Bから吹き戻されたガスにとって、バイパス通路40から流入したガスが“追い風”となり難くなる。その結果、先発気筒11Bから吹き戻されたガスの後発気筒11Aへの吸入を抑制し、ひいては、プレイグの発生を抑制することが可能になる。
しかも、バイパス通路40をサージタンク38の右端に接続した構成と比較して、充填効率などの気筒間差を縮小したり、先発気筒11Bと後発気筒11Aとで同程度の応答性を確保することが可能になる。
このことは、2組目の先発気筒(3番気筒11C)及び後発気筒(4番気筒11D)に関しても同様である。この場合、バイパス通路40とサージタンク38との接続箇所は、気筒列方向において、複数の独立通路39のうち先発気筒(3番気筒)11Cに対応する独立通路39の上流端部から、後発気筒(4番気筒)11Dに対応する独立通路39の上流端部にかけての区間内に対向して設定されるようになっている。また、第2導入部38dに接続される第2分岐通路44cは、該第2分岐通路44cを流れるガスを、先発気筒11Cと後発気筒11Dとのうち、後発気筒11D寄りに指向させる(つまり、左側に指向させる)ように形成されているに等しい。
そして、第2分岐通路44cの下流端部は、図16に示すように、吸気通路30を後方から正面視したときに、4番気筒11Dの第2ポート18Dに接続された独立通路392の上流端部と相互に重なり合うように配設されている(図16の領域O2を参照)。
このように構成することで、3番気筒11C及び4番気筒11Dにおいても、各シリンダ11の応答性を確保しつつ、ガスの吹き戻しに起因したプレイグの発生を抑制することができる。
《他の実施形態》
前記実施形態では、FF方式の車両に搭載される横置きのエンジン1について例示したが、この構成には限られない。例えばFR方式の車両に搭載される縦置きのエンジンとしてもよい。
また、前記実施形態では、直列4気筒エンジンについて例示したが、この構成には限られない。例えば、1気筒エンジンや直列6気筒エンジンとしてもよい。また、気筒数に応じて、バイパス通路40において分岐する通路の本数を変更してもよい。
また、前記実施形態では、流動制御デバイス80は、4つのSCV81の全てに対して共通の弁軸82とアクチュエータ83を用いて構成されていたが、この構成には限られない。例えば、SCV81の各々に対して、上下方向に延びる弁軸と、各弁軸を駆動するアクチュエータとを設けてもよい。また、弁軸82の延設方向に応じて、弁体81aの開き方向も変更されるところ、その変更に対応するようにバイパス通路40とサージタンク38との接続構造を変形してもよい。
また、第2通路35及び第3通路37によって構成される過給通路を上流側通路とみなしてもよい。この場合、特に第3通路37の形状やレイアウトに応じて、弁体81aの開き方向等を変更すればよい。
また、前記実施形態では、いわゆるスーパーチャージャとして構成された過給機34を例示したが、ターボチャージャとしてもよい。またそもそも、過給機34は必須ではない。