JP6595327B2 - 鋳型の積層造型方法 - Google Patents
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Description
本実施形態の鋳型の積層造型方法は、固体カルボン酸を耐火性粒子に被覆する被覆工程、前記固体カルボン酸を被覆した耐火性粒子を含む耐火性粒子層を形成する耐火性粒子層形成工程、及び前記固体カルボン酸が硬化剤として働く樹脂を含む粘結剤組成物を前記耐火性粒子層の所望の領域に供給する粘結剤組成物供給工程を含み、前記耐火性粒子層形成工程及び前記粘結剤組成物供給工程を順次繰り返して鋳型を製造する。本実施形態の鋳型の積層造型方法では、硬化剤である固体カルボン酸を耐火性粒子に被覆して用いていることから液体の硬化剤を用いる場合よりも流動性が高い。そのため、耐火性粒子層形成工程において、耐火性粒子及び硬化剤を精度よく供給することができる。
[固体カルボン酸]
前記固体カルボン酸は、融点が25℃以上のカルボン酸である。前記固体カルボン酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、無水乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、o−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸(没食子酸)、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、3,6−ジヒドロキシフタル酸、4−ヒドロキシフタル酸等が例示できるが、硫黄原子含有硬化剤を用いること無く実用的な鋳型の硬化速度及び鋳型強度を得る観点から、前記固体カルボン酸が2,6‐ジヒドロキシ安息香酸、シュウ酸、及びマレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種以上が好ましく、2,6‐ジヒドロキシ安息香酸がより好ましい。
更に、前記硬化剤は、前記固体カルボン酸以外の硬化剤として、例えばキシレンスルホン酸(特に、m−キシレンスルホン酸)及びトルエンスルホン酸(特に、p−トルエンスルホン酸)等のスルホン酸系化合物、リン酸系化合物、硫酸等を含有しても良い。ただし、スルホン酸や硫酸などの硫黄を含む酸を含有する硬化剤を使用した場合、焙焼再生時にSOxガスが発生するため、硬化剤中の硫黄を含む酸の含有量は、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましく、1質量%以下がより更に好ましく、硬化剤が硫黄を含む酸を含まず、硬化剤としてカルボン酸のみを含有することが好ましい。この場合、焙焼再生時のSOxガスの発生量をゼロにすることができる。
前記耐火性粒子は、天然砂であってもよく、人工砂であってもよい。当該天然砂としては、石英質を主成分とする珪砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、アルミナ砂等が例示できる。当該人工砂としては、合成ムライト砂、Al2O3を主成分とするAl2O3系の鋳物砂、SiO2/Al2O3系の鋳物砂、SiO2/MgO系の鋳物砂、SiO2/Al2O3/ZrO2系の鋳物砂、スラグ由来の鋳物砂等が例示できる。当該人工砂とは、天然より産出する鋳物砂ではなく、人工的に金属酸化物の成分を調製し、溶融または焼結した鋳物砂のことを表す。また、使用済みの耐火性粒子を回収した回収砂や、回収砂に再生処理を施した再生砂なども使用できる。前記再生砂は、鋳物のガス欠陥を抑制する観点から焙焼再生法で再生処理された再生砂(焙焼再生砂)が好ましい。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、鋳型強度向上の観点から、人工砂が好ましく、当該人工砂の中でも、合成ムライト砂、Al2O3系の鋳物砂、SiO2/Al2O3系の鋳物砂、及びSiO2/Al2O3/ZrO2系の鋳物砂からなる群より選ばれる少なくとも1種以上が好ましい。
耐火性粒子の粒子投影断面からの球形度=1の場合は直径(mm)を測定し、一方、球形度<1の場合は耐火性粒子の長軸径(mm)と短軸径(mm)を測定して(長軸径+短軸径)/2を求め、任意の100個の耐火性粒子につき、それぞれ得られた値を平均して平均粒径(mm)とする。長軸径と短軸径は、以下のように定義される。粒子を平面上に安定させ、その粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最小となる粒子の幅を短軸径といい、一方、この平行線に直角な方向の2本の平行線で粒子をはさむときの距離を長軸径という。
前記固体カルボン酸を被覆した耐火性粒子を含む耐火性粒子層を形成する手法は、特に限定されない。一例としては、コーターによって耐火性粒子を均一に広げ、耐火性粒子層を形成する手法が挙げられる。
[粘結剤組成物]
前記粘結剤組成物は、鋳型の製造に用いられ、前記固体カルボン酸が硬化剤として働く樹脂であれば特に限定されない。当該樹脂としては、フルフリルアルコール、フルフリルアルコールの縮合物、フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物、フルフリルアルコールと尿素とアルデヒド類の縮合物、尿素とエチレン尿素とアルデヒド類の縮合物、メラミンとアルデヒド類の縮合物、及び尿素とアルデヒド類の縮合物、フルフラール、5‐ヒドロキシメチルフルフラール、5‐アセトキシメチルフルフラール、2,5−ビスヒドロキシメチルフラン、レゾルシン、ピロガロールの群から選ばれる1種からなるものや、これらの群から選ばれる2種以上の混合物からなるものが使用できる。また、これらの群から選ばれる2種以上の共縮合物からなるものも使用できる。これらの中でも、鋳型強度及び硬化速度の観点から、フルフリルアルコール、フルフリルアルコールの縮合物及びフルフリルアルコールと尿素とアルデヒド類の縮合物、尿素とエチレン尿素とアルデヒド類の縮合物、フルフラール、5‐ヒドロキシメチルフルフラール、レゾルシンから選ばれる1種以上、並びにこれらの共縮合物を使用するのが好ましく、フルフリルアルコール、フルフリルアルコールの縮合物及びフルフリルアルコールと尿素とアルデヒド類の縮合物、尿素とエチレン尿素とアルデヒド類の縮合物、フルフラールがより好ましい。
〔試験例1〕
硬化剤組成物として固体カルボン酸である2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の55質量%メタノール溶液とし、これを耐火性粒子(花王株式会社製ムライト系人工砂 ルナモス♯110)1000質量部に対して1.8質量部添加し、気温25℃、湿度55%RHの環境で5分間混練し、混練砂を得た。得られた混練砂について、上端内径10cm、下端内径20cm、高さ30cmのスランプコーンを用いたJIS A 1101:2005のスランプ試験によってスランプ値及びスランプフローを測定し、スランプ値(スランプフロー(cm)/スランプコーン下端内径(cm))を求めて流動性を評価した。同様に、30分間メタノールを揮散させたもの、及び混練後12時間メタノールを揮散させたものについても流動性を評価した。当該スランプ比(スランプフローの比較値)が高いものほど流動性が高いことを示す。
硬化剤組成物の添加量を耐火性粒子100質量部に対して0.7質量部に変更した以外は試験例1と同様に評価した。
硬化剤組成物を液体スルホン酸であるキシレンスルホン酸/硫酸系硬化剤〔花王クエーカー社製 カオーライトナー硬化剤 US−3と、花王クエーカー社製 カオーライトナー硬化剤 C−21との混合物〕に変更した以外は試験例1と同様に評価した。なお、US−3とC−21の質量比(US−3/C−21)は、12/28である。
硬化剤組成物の添加量を耐火性粒子100質量部に対して0.7質量部に変更した以外は試験例3と同様に評価した。
硬化剤組成物を固体スルホン酸であるパラトルエンスルホン酸の55質量%メタノール溶液に変更した以外は試験例1と同様に評価した。
硬化剤組成物の添加量を耐火性粒子100質量部に対して0.7質量部に変更した以外は試験例5と同様に評価した。
〔固体カルボン酸被覆耐火性粒子の製造例〕
2,6‐ジヒドロキシ安息香酸55質量%メタノール溶液を耐火性粒子(花王株式会社製ムライト系人工砂 ルナモス♯100)1000質量部に対して7質量部添加し、混練しながらメタノールを揮散させて2,6‐ジヒドロキシ安息香酸が被覆した耐火性粒子(固体カルボン酸被覆耐火性粒子)を製造した。
前記2,6‐ジヒドロキシ安息香酸が被覆した耐火性粒子を平らな表面上に均一に拡げて耐火性粒子層を形成し、所望の領域に表2に記載の組成の粘結剤組成物を耐火性粒子100質量部に対して2.3質量部となるように供給した。一層の厚さは250μmとし、耐火性粒子層の形成と所望の領域への粘結剤組成物の供給を順次繰り返し、鋳型を造型した。なお、表2中に記載の尿素とエチレン尿素とホルムアルデヒドの共縮合物の製造例を以下に示す。
三ツ口フラスコに37%ホルムアルデヒド液100質量部と、エチレン尿素106質量部と、尿素25質量部とを混合し、100℃で3時間反応させ、尿素とエチレン尿素とホルムアルデヒドの共縮合物を得た。
Claims (5)
- 固体カルボン酸を耐火性粒子に被覆する被覆工程、前記固体カルボン酸を被覆した耐火性粒子を含む耐火性粒子層を形成する耐火性粒子層形成工程、及び前記固体カルボン酸が硬化剤として働く樹脂を含む粘結剤組成物を前記耐火性粒子層の所望の領域に供給する粘結剤組成物供給工程を含み、前記耐火性粒子層形成工程及び前記粘結剤組成物供給工程を順次繰り返して鋳型を製造する、鋳型の積層造型方法であって、
前記固体カルボン酸が、2,6−ジヒドロキシ安息香酸であり、
前記耐火性粒子層が、硫黄原子含有硬化剤を含まない、鋳型の積層造型方法。 - 固体カルボン酸で被覆した耐火性粒子である鋳型積層造型用耐火性粒子であって、
前記固体カルボン酸が、2,6−ジヒドロキシ安息香酸であり、
硫黄原子含有硬化剤を含まない、鋳型積層造型用耐火性粒子。 - 前記耐火性粒子が球形度0.95以上であり、Al2O3を主成分とする人工砂である請求項2に記載の鋳型積層造型用耐火性粒子。
- 前記耐火性粒子が焙焼再生砂である請求項2又は3に記載の鋳型積層造型用耐火性粒子。
- 請求項2〜4のいずれか1項に記載の鋳型積層造型用耐火性粒子、及び前記固体カルボン酸によって硬化する樹脂を含有する粘結剤組成物を含む鋳型の積層造型用キット。
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