本発明のキノフタロン化合物は、下記式(1):
で示される構造を有する。本発明は、上記式(1)中のX1〜X4の少なくとも1つは、−COOR2または−COOR3−O−R4であり、この際、R2およびR4は、それぞれ独立して、少なくとも1個の水酸基またはハロゲン原子を有する炭素原子数5〜12の分岐鎖のアルキル基であり、R3は、少なくとも1個の水酸基またはハロゲン原子を有する炭素原子数5〜12の分岐鎖のアルキレン基であることを特徴とする。
本明細書では、本願発明の式(1)のキノフタロン化合物を、「本発明のキノフタロン化合物」または「式(1)のキノフタロン化合物」とも称する。また、本明細書では、特記しない限値、置換基「−COOR2」または「−COOR3−O−R4」を、一括して、「本発明に係る置換基」または「特定の置換基」とも称する。
カラー液晶表示装置は、通常、カラーフィルター上に、液晶を駆動させるための透明電極および液晶を一定方向に配向させるための配向膜が順次配置されてなる構造を有する。上記カラーフィルターは、ガラス等の透明基板上に赤色、緑色及び青色の色相を有する微細なフィルタセグメントを配置した構造を有する。上記色素のうち、緑色フィルタセグメントでは、フタロシアニン化合物が緑色系色素として使用される。この際、上記緑色系色素に加えて、キノフタロン化合物(黄色系色素)が緑色系色素の補色のために調色用着色剤として使用される。
上記特許文献1に記載のキノフタロン化合物をフタロシアニン化合物と組み合わせて作製された緑色フィルタセグメントは十分な色純度や輝度を達成できている。しかし、近年の液晶パネルなどの表示特性の要求が高まっていることを鑑みると、より高い色純度や輝度が求められ、当該要求を満たすフタロシアニン化合物やキノフタロン化合物の開発が急務となっている。
上記事情を鑑みて、本願発明者は、鋭意検討を行った。その結果、特許文献1に記載のキノフタロン化合物とフタロシアニン化合物との混合物を塗布・乾燥(ベーク)すると、それぞれの化合物が樹脂中で移動してスタッキング(会合)することにより結晶化してしまう。このため、得られるカラーフィルター(緑色フィルタセグメント)は、双方の化合物が悪影響を及ぼしあった結果、ベーク後の塗膜(すなわち、カラーフィルター)の525nmにおける透過率が特に大きく低下して、その結果輝度が低下してしまうと推測した。これに対して、本発明のキノフタロン化合物は、上述したような特定の置換基が導入された3−ヒドロキシ−1H−インデン−1−オン部分を有する。上記特定の置換基は、水酸基またはハロゲン原子を有し、また、炭素数が大きくかつ分岐状であり嵩高い。このため、このような置換基が立体障害として作用して、キノフタロン化合物同士またはキノフタロン化合物とフタロシアニン化合物とのスタッキング(会合)を立体的に妨げて、結晶化を抑制・防止する。ゆえに、キノフタロン化合物をフタロシアニン化合物と組み合わせて作製した緑色フィルタセグメントは、ベーク後の塗膜での化合物(色素)の移動、スタッキング(ゆえに結晶化)が抑制・防止される。
また、本発明のキノフタロン化合物は、525nmにおける透過率が高いため、黄色の色純度が高い。また、本発明のキノフタロン化合物は、470nmの青色光および615nmの赤色光の透過率が低く(光遮蔽率が高く)、短波長側および長波長側双方からの光吸収スペクトルが鋭く立ち上がっている。このため、本発明のキノフタロン化合物は、シアン色のフタロシアニン色素と相性が非常に高いため、混合してもキノフタロン色素とフタロシアニン色素が相互に干渉しあうことなく互いのスペクトル性能を発揮できる。ゆえに、本発明のキノフタロン化合物を緑色系色素であるフタロシアニン化合物と組み合わせて作製されるカラーフィルター(緑色フィルタセグメント)は、輝度を有効に向上できる。
加えて、本発明のキノフタロン化合物は、溶剤溶解性が高い。さらに、本発明のキノフタロン化合物は、耐熱性に優れる。
なお、上記メカニズムは推測であり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
[キノフタロン化合物]
本発明のキノフタロン化合物は、下記式(1)で表される。
上記キノフタロン化合物は、キノリン環の2位に3−ヒドロキシ−1H−インデン−1−オン由来の基およびキノリン環の3〜8位のいずれかにイミド骨格の置換基を有する。3−ヒドロキシ−1H−インデン−1−オン由来の基を立体障害の大きい基とすることによって、色素同士の接触(結晶化)を抑制するため、輝度を向上できる。また、キノリン環の3〜8位のいずれかに立体障害の大きいイミド骨格の置換基を有することで、色素分子同士の会合による溶解度の低下や色純度の低下を抑制して、溶解性や色純度を向上できる。また、本発明のキノフタロン化合物は、1,3−インダンジオン骨格の有するヒドロキシル基と、キノリン環の窒素とが水素結合して、安定な構造となっている上、キノリン環の3〜8位のいずれかにイミド骨格の置換基を有する。このため、本発明のキノフタロン化合物は耐熱性に優れる。
なお、本明細書において、キノリン環の各位置は、下記を意味する。
上記式(1)において、R1は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、あるいは炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、nは0〜5の整数を表す。なお、R1が複数個存在する(nが2〜5の整数である)場合には、各R1は、同じであってもまたは異なるものであってもよい。また、本明細書において、「アルキル基」とは、特に規定しない限り、直鎖、分岐鎖、環状のいずれも含む。
ここで、R1としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。これらのうち、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。
R1としてのアルキル基は、炭素原子数1〜12個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数1〜8個の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、シクロヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などが挙げられる。
また、nは、0〜5の整数であり、好ましくは0〜3の整数であり、より好ましくは0〜2の整数であり、特に好ましくは0または1である。
上記式(1)において、X1〜X4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、−COOR2または−COOR3−O−R4を表わす。なお、X1〜X4は、同じであってもまたは相互に異なるものであってもよい。この際、X1〜X4の少なくとも1つは、−COOR2または−COOR3−O−R4を表わす。このように3−ヒドロキシ−1H−インデン−1−オン部分に嵩高い(立体障害性の高い)置換基を導入することによって、キノフタロン化合物同士または(緑色フィルタセグメントでの)キノフタロン化合物とフタロシアニン化合物との接触を立体的に妨げて、結晶化を抑制・防止する。ゆえに、キノフタロン化合物をフタロシアニン化合物と組み合わせて作製した緑色フィルタセグメントは、より高い輝度を発揮できる。ここで、嵩高い−COOR2または−COOR3−O−R4は、X1〜X4のいずれの位置に導入されてもよい。より高い立体障害性、結晶化のより高い抑制・防止効果などを考慮すると、少なくともX2が−COOR2または−COOR3−O−R4であることが好ましく、X2が−COOR2または−COOR3−O−R4でありかつX1、X3及びX4が水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましい。すなわち、好ましい実施形態によると、上記式(1)中、X2は、−COOR2または−COOR3−O−R4を表わす。より好ましい実施形態によると、上記式(1)中、X2は、−COOR2を表わす。当該実施形態によるキノフタロン化合物をフタロシアニン化合物と組み合わせて作製される緑色フィルタセグメントは、輝度をさらに有効に向上できる。なお、X1〜X4のうち、−COOR2または−COOR3−O−R4以外の残りの置換基は、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であるが、水素原子であることが好ましく、本発明の効果を損なわない範囲で、炭素数1〜3のアルキル基であってもよい。
上記置換基:−COOR2または−COOR3−O−R4において、R2およびR4は、それぞれ独立して、少なくとも1個の水酸基またはハロゲン原子を有する炭素原子数5〜12の分岐鎖のアルキル基を表わす。ここで、−COOR2および−COOR3−O−R4双方が3−ヒドロキシ−1H−インデン−1−オン部分に導入された場合では、R2およびR4は、同じであってもまたは相互に異なるものであってもよい。また、上記置換基:−COOR3−O−R4において、R3は、少なくとも1個の水酸基またはハロゲン原子を有する炭素原子数5〜12の分岐鎖のアルキレン基を表わす。
R2およびR4としての炭素原子数5〜12の分岐鎖のアルキル基は、特に制限されないが、イソペンチル基((CH3)2CHCH2CH2−)、ネオペンチル基((CH3)3CCH2−);
1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−エチル−2−メチルプロピル基;
1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、5,5−ジメチルペンチル基、1,2−ジメチルペンチル基、1,3−ジメチルペンチル基、1,4−ジメチルペンチル基、1,5−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、2,5−ジメチルペンチル基、3,4−ジメチルペンチル基、3,5−ジメチルペンチル基、4,5−ジメチルペンチル基;
いずれかの位置にメチル基を分岐鎖として有するヘプチル基、いずれかの位置にエチル基を分岐鎖として有するヘキシル基(例えば、2−エチルヘキシル基)、いずれかの2箇所にメチル基を分岐鎖として有するヘキシル基、いずれかの位置にプロピル基を分岐鎖として有するペンチル基、いずれかの3箇所にメチル基を分岐鎖として有するペンチル基(例えば、2,2−ジメチル−4−メチルペンチル基)、いずれかの2箇所にメチル基およびエチル基を分岐鎖として有するペンチル基;
いずれかの位置にメチル基を分岐鎖として有するオクチル基、いずれかの位置にエチル基を分岐鎖として有するヘプチル基、いずれかの2箇所にメチル基を分岐鎖として有するヘプチル基、いずれかの位置にプロピル基を分岐鎖として有するヘキシル基、いずれかの3箇所にメチル基を分岐鎖として有するヘキシル基、いずれかの2箇所にメチル基およびエチル基を分岐鎖として有するヘキシル基、いずれかの2箇所にメチル基およびプロピル基を分岐鎖として有するペンチル基、いずれかの2箇所にエチル基を分岐鎖として有するペンチル基;
いずれかの位置にメチル基を分岐鎖として有するノニル基、いずれかの位置にエチル基を分岐鎖として有するオクチル基、いずれかの2箇所にメチル基を分岐鎖として有するオクチル基、いずれかの位置にプロピル基を分岐鎖として有するヘプチル基、いずれかの3箇所にメチル基を分岐鎖として有するヘプチル基、いずれかの2箇所にメチル基およびエチル基を分岐鎖として有するヘプチル基、いずれかの2箇所にエチル基を分岐鎖として有するヘキシル基、いずれかの2箇所にメチル基およびプロピル基を分岐鎖として有するヘキシル基;
いずれかの位置にメチル基を分岐鎖として有するデシル基、いずれかの位置にエチル基を分岐鎖として有するノニル基、いずれかの2箇所にメチル基を分岐鎖として有するノニル基、いずれかの位置にプロピル基を分岐鎖として有するオクチル基、いずれかの3箇所にメチル基を分岐鎖として有するオクチル基、いずれかの2箇所にメチル基およびエチル基を分岐鎖として有するオクチル基、いずれかの2箇所にエチル基を分岐鎖として有するヘプチル基、いずれかの2箇所にメチル基およびプロピル基を分岐鎖として有するヘプチル基、いずれかの2箇所にプロピル基を分岐鎖として有するペンチル基;ならびに
いずれかの位置にメチル基を分岐鎖として有するウンデシル基、いずれかの位置にエチル基を分岐鎖として有するデシル基、いずれかの2箇所にメチル基を分岐鎖として有するデシル基、いずれかの位置にプロピル基を分岐鎖として有するノニル基、いずれかの3箇所にメチル基を分岐鎖として有するノニル基、いずれかの2箇所にメチル基およびエチル基を分岐鎖として有するノニル基、いずれかの2箇所にエチル基を分岐鎖として有するオクチル基、いずれかの2箇所にメチル基およびプロピル基を分岐鎖として有するオクチル基、いずれかの2箇所にプロピル基を分岐鎖として有するヘキシル基、
などが挙げられる。これらのうち、より高い立体障害性、結晶化のより高い抑制・防止効果などを考慮すると、R2およびR4は、炭素原子数5〜10の分岐鎖のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数6〜8の分岐鎖のアルキル基であることがより好ましい。
R3としての炭素原子数5〜12の分岐鎖のアルキレン基は、特に制限されず、上記炭素原子数5〜12の分岐鎖のアルキル基から水素原子を1個除いた基が具体的に例示され、上記炭素原子数5〜12の分岐鎖のアルキル基の結合手から最も遠位に存在する水素原子を1個除いた基であることが好ましい。ここで、「炭素原子数5〜12の分岐鎖のアルキル基の結合手から最も遠位に存在する水素原子を1個除いた基(アルキレン基)」とのことばは、例えば、ネオペンチル基((CH3)3CCH2−)の場合には−CH2(CH3)2CCH2−であることを意味する。より高い立体障害性、結晶化のより高い抑制・防止効果などを考慮すると、R3は、炭素原子数5〜10の分岐鎖のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数6〜8の分岐鎖のアルキレン基であることがより好ましい。
上記R2〜R4は、少なくとも1個の水酸基(−OH)またはハロゲン原子を有する。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。これらのうち、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。溶解性の点から、R2〜R4は、親水性部分を有することが好ましい。ゆえに、R2〜R4は、少なくとも1個の水酸基(−OH)を有することが好ましい。
また、R2〜R4に存在する水酸基(−OH)およびハロゲン原子の数は、特に制限されず、R2〜R4の炭素数に応じて適宜選択されうる。より高い立体障害性、結晶化のより高い抑制・防止効果などを考慮すると、特定の置換基(−COOR2または−COOR3−O−R4)に存在する水酸基(−OH)およびハロゲン原子の合計数は、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは2〜7個、さらに好ましくは2〜5個、特に好ましくは2または3個である。
R2〜R4に存在する分岐鎖の数もまた、特に制限されず、1個以上存在すればよく、R2〜R4の炭素数に応じて適宜選択されうる。より高い立体障害性、結晶化のより高い抑制・防止効果などを考慮すると、特定の置換基(−COOR2または−COOR3−O−R4)に存在する分岐鎖の合計数は、少なくとも2個、より好ましくは2〜6個、さらに好ましくは2〜4個、特に好ましくは2または3個である。なお、本明細書において、分岐鎖とは、アルキル基またはアルキレン基の構造のうち最も長い炭素鎖を主鎖とし、この主鎖から分岐して伸長する炭素鎖を分岐鎖とする。また、R2〜R4に存在する分岐鎖が4級炭素であると、525nmの透過率が高くなり、溶解性も向上するので好ましい。
すなわち、本発明の好ましい実施形態では、上記式(1)において、R2およびR4は、それぞれ独立して、少なくとも2個の水酸基および/または少なくとも2個の分岐鎖を有する炭素原子数5〜8の分岐鎖のアルキル基を表わし、R3は、少なくとも1個の水酸基および/または少なくとも2個の分岐鎖を有する炭素原子数5〜8の分岐鎖のアルキレン基を表わす。
R2〜R4に存在する水酸基(−OH)およびハロゲン原子の位置は、特に制限されないが、より高い立体障害性、結晶化のより高い抑制・防止効果などを考慮すると、水酸基(−OH)またはハロゲン原子がR2、R3またはR4を構成する主鎖または分岐鎖の末端に存在することが好ましく、水酸基(−OH)またはハロゲン原子と主鎖との間に少なくとも1個の炭素原子を有するアルキレン基が存在することがより好ましい。
式(1)において、X5は、下記式(2)または(3)で表される置換基である。好ましくは、X5は、下記式(2)で表される置換基である。
式(2)において、Yは炭素数4〜16の無置換または置換基を有する非芳香族の環状構造であり、環はヘテロ原子を含んでいてもよい。Yにおける炭素数4〜16の無置換または置換基を有する非芳香族の環状構造としては、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカンなどのシクロアルカン;シクロブテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのシクロアルケン;ビシクロヘキサンなどの二環式アルカン;ノルボルナン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン)、ノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン)、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2−エン、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプタン、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)などの多環式化合物;アゼチジン(アザシクロブタン)、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ヘキサメチレンイミン、オキタセン(1,3−プロピレンオキシド)、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ヘキサメチレンオキシド、チエタン(トリメチレンスルフィド)、チオラン(テトラヒドロチオフェン)、チアン、1,4−ジチアン、ヘキサメチレンスルフィド、などの酸素原子、硫黄原子または/および窒素原子を含む非芳香族複素環;などが挙げられる。
式(3)において、Z1およびZ2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、直鎖もしくは分岐鎖の炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、またはアルキルアミノ基であり、あるいはZ1およびZ2が一緒になって非芳香族の環を形成してもよい。
Z1およびZ2におけるハロゲン原子の具体例は、上記R1の欄で記載したものが挙げられる。
Z1およびZ2における炭素原子数1〜8のアルキル基の具体例は、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。
Z1およびZ2における炭素原子数1〜8のアルコキシ基とは、具体的には、メチルオキシ(メトキシ)基、エチルオキシ(エトキシ)基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1,2−ジメチルプロピルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、1,3−ジメチルブチルオキシ基、1−イソプロピルプロピルオキシ基、1,2−ジメチルブチルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、1,4−ジメチルペンチルオキシ基、2−メチル−1−イソプロピルプロピルオキシ基、1−エチル−3−メチルブチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基などが挙げられる。
Z1およびZ2における炭素原子数1〜8のアルキルチオ基(−SR、R=アルキレン)とは、具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、ネオペンチルチオ基、1,2−ジメチルプロピルチオ基、n−ヘキシルチオ基、1,3−ジメチルブチルチオ基、1−イソプロピルプロピルチオ基、1,2−ジメチルブチルチオ基、n−ヘプチルチオ基、1,4−ジメチルペンチルチオ基、2−メチル−1−イソプロピルプロピルチオ基、1−エチル−3−メチルブチルチオ基、n−オクチル基、2−エチルヘキシルチオ基などが挙げられる。
Z1およびZ2における炭素原子数1〜8のアルキルアミノ基(−NHRまたは−NRR’、RおよびR’=アルキル)とは、具体的には、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、n−オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基などが挙げられる。
また、Z1およびZ2が一緒になって非芳香族の環を形成する場合、非芳香族系の環としては、例えば、シクロブテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのシクロアルケン;ノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン)、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2−エンなどの二環式アルケン;1,4−ジオキサン−2−エン、1,4−ジチアン−2−エン、2−ピロリン、ジヒドロピランなどの酸素原子、硫黄原子または/および窒素原子を含む非芳香族複素環;などが挙げられる。
本発明において、X5が式(2)で表される場合、Yがシクロヘキサン骨格を有することが好ましく、さらに好ましくは、シクロヘキサン骨格および橋架け環状構造を有する(多環式化合物である)のが好ましい。特に、Yが、ノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン)、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2−エンなどの二環式アルケンであるのが好適である。X5が式(3)で表される場合、Z1およびZ2が水素原子、またはZ1およびZ2が一緒になって非芳香族系の環を形成するのが好ましい。非芳香族系の環としては、二環式アルケン(好ましくは、シクロヘキセン)、または非芳香族系複素環(好ましくは1,4−ジチアン−2−エン)であるのが好ましい。Yは、シクロヘキサン、シクロヘキセンまたはノルボルネン由来の基であることがより好ましく、シクロヘキサンまたはシクロヘキセン由来の基であることが特に好ましい。
また、場合によってアルキル基、非芳香族の環状構造に存在する置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、複素環基、アリール基、ヒドロキシ基、アシル基、アルキル基、フェニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、オキシアルキルエーテル基などが例示できるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基が複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであっても良い。上記置換基よりその一部をより具体的な例を挙げて以下に示す。
まず、上記アルキル基、非芳香族の環状構造に場合によっては存在する置換基のうちハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子、好ましくはフッ素原子または塩素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。
上記アルキル基、非芳香族の環状構造に場合によっては存在する置換基のうちアルコキシ基としては、例えば、炭素原子数1〜8のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基が挙げられる。
上記アルキル基、非芳香族の環状構造に場合によっては存在する置換基のうち複素環基としては、炭素原子数2〜10であり、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を含む複素環基が含まれ、単環式複素環基に限らず、複数の複素環が縮合した縮合複素環基、複素環と炭化水素環(非芳香族性炭化水素環または芳香族炭化水素環)とが縮合(オルソ縮合、オルソアンドペリ縮合など)した縮合複素環基であってもよい。複素環基は、非芳香族性であってもよく芳香族性であってもよい。さらに、複素環と炭化水素環とが縮合した縮合複素環基においては、複素環または炭化水素環のいずれかが結合手を有していてもよい。ヘテロ原子として窒素原子を有する複素環基としては、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基などの5員または6員単環式複素環基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基などの5員または6員複素環が炭化水素環に縮合した縮合複素環基などが例示でき、ヘテロ原子として酸素原子を有する複素環基としては、フリル基(例えば、テトラヒドロフルフリル基)などの5員または6員単環式複素環基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基などの5員または6員複素環が炭化水素環に縮合した縮合複素環基などが例示できる。ヘテロ原子として硫黄原子を有する複素環基には、チエニル基などの5員または6員単環式複素環基、チアントレニル基などの5員または6員複素環が炭化水素環に縮合した縮合複素環基などが含まれる。また、異種のヘテロ原子を有する複素環基としては、モルホリニル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基などの5員または6員単環式複素環基、フェノキサチイニル基などの5員または6員複素環が炭化水素環に縮合した縮合複素環基などが挙げられる。好ましい複素環基には、ヘテロ原子として少なくとも窒素原子を有する5または6員の複素環基(ピロリル、ピリジルなど)、ヘテロ原子として少なくとも窒素原子を有する5または6員の複素環基と芳香族炭化水素類が縮合した複素環基(例えば、カルバゾリル基)などが含まれる。これらのうち、耐熱性、有機溶媒への溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、具体的には、テトラヒドロフルフリル基、4−ピコリル基などが好ましい。
上記アルキル基、非芳香族の環状構造に場合によっては存在する置換基のうちアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
アシル基としては、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基、ベンゾイル基、p−t−ブチルベンゾイル基など等が挙げられ、これらのうち、アセチル基、エチルカルボニル基が好ましい。
上記アルキル基、非芳香族の環状構造に場合によっては存在する置換基のうちアルキル基とは、炭素原子数1〜20個、好ましくは炭素原子数1〜8個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基であり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。これらのうち、メチル基およびエチル基が好ましい。
上記アルキル基、非芳香族の環状構造に場合によっては存在する置換基のうちハロゲン化アルキル基とは、炭素原子数1〜20個、好ましくは炭素原子数1〜8個の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基の一部がハロゲン化されたものであり、クロロメチル基、ブロモメチル基、トリフルオロメチル基、クロロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、ブロモエチル基、クロロプロピル基、ブロモプロピル基などが挙げられる。
上記アルキル基、非芳香族の環状構造に場合によっては存在する置換基のうちハロゲン化アルコキシル基とは、炭素原子数1〜20個、好ましくは炭素原子数1〜8個の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシル基の一部がハロゲン化されたものであり、クロロメトキシ基、ブロモメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、クロロエトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、ブロモエトキシ基、クロロプロポキシ基、ブロモプロポキシ基などが挙げられる。
上記アルキル基、非芳香族の環状構造に場合によっては存在する置換基のうちアルキルアミノ基とは、炭素原子数1〜20個、好ましくは炭素原子数1〜8個のアルキル部位を有するアルキルアミノ基であり、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基などが挙げられる。これらのうち、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基およびn−ブチルアミノ基が好ましい。
上記アルキル基、非芳香族の環状構造に場合によっては存在する置換基のうちアルキルカルボニルアミノ基としては、アセチルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、n−プロピルカルボニルアミノ基、イソプロピルカルボニルアミノ基、n−ブチルカルボニルアミノ基、イソブチルカルボニルアミノ基、sec−ブチルカルボニルアミノ基、t−ブチルカルボニルアミノ基、n−ペンチルカルボニルアミノ基、n−ヘキシルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、n−ヘプチルカルボニルアミノ基、3−ヘプチルカルボニルアミノ基、n−オクチルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
上記アルキル基、非芳香族の環状構造に場合によっては存在する置換基のうちアリールアミノ基としては、フェニルアミノ基、p−メチルフェニルアミノ基、p−t−ブチルフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジ−p−メチルフェニルアミノ基、ジ−p−t−ブチルフェニルアミノ基等が挙げられる。
上記アルキル基、非芳香族の環状構造に場合によっては存在する置換基のうちアリールカルボニルアミノ基としては、ベンゾイルアミノ基、p−クロロベンゾイルアミノ基、p−メトキシベンゾイルアミノ基、p−t−ブチルベンゾイルアミノ基、p−トリフロロメチルベンゾイルアミノ基、m−トリフロロメチルベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
上記アルキル基、非芳香族の環状構造に場合によっては存在する置換基のうちアルコキシカルボニル基とは、アルコキシル基のアルキル基部分にヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数1〜8個、好ましくは1〜5個のアルコキシカルボニル基、またはヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数3〜8個、好ましくは5〜8個の環状アルコキシカルボニル基を示す。具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基などが挙げられる。これらのうち、メトキシカルボニル基およびエトキシカルボニル基が好ましい。
上記アルキル基、非芳香族の環状構造に場合によっては存在する置換基のうちアルキルアミノカルボニル基としては、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、n−プロピルアミノカルボニル基、n−ブチルアミノカルボニル基、sec−ブチルアミノカルボニル基、n−ペンチルアミノカルボニル基、n−ヘキシルアミノカルボニル基、n−ヘプチルアミノカルボニル基、n−オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ジエチルアミノカルボニル基、ジ−n−プロピルアミノカルボニル基、ジ−n−ブチルアミノカルボニル基、ジ−sec−ブチルアミノカルボニル基、ジ−n−ペンチルアミノカルボニル基、ジ−n−ヘキシルアミノカルボニル基、ジ−n−ヘプチルアミノカルボニル基、ジ−n−オクチルアミノカルボニル基等が挙げられる。
上記アルキル基、非芳香族の環状構造に場合によっては存在する置換基のうちアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、ネオペンチルチオ基、1,2−ジメチルプロピルチオ基、n−ヘキシルチオ基、1,3−ジメチルブチルチオ基、1−イソプロピルプロピルチオ基、1,2−ジメチルブチルチオ基、n−ヘプチルチオ基、1,4−ジメチルペンチルチオ基、2−メチル−1−イソプロピルプロピルチオ基、1−エチル−3−メチルブチルチオ基、n−オクチル基、2−エチルヘキシルチオ基等が挙げられる。
なお、場合によって存在する置換基は、置換される基と同じになることはない。例えば、アルキル基がアルキル基で置換されることはない。
上記のうち、溶解性や吸収波長の観点から、非芳香族の環状構造に場合によっては存在する置換基は、特にアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1〜3の低級の直鎖または分岐鎖のアルキル基であることがより好ましく、メチル基またはエチル基であることが特に好ましい。
本発明において、式(1)で表されるキノフタロン化合物のX5が、キノリン環の4位または8位に置換していることが好ましく、キノリン環の8位に置換していることがより好ましい。すなわち、式(1)で表される化合物は下記式(1−A)または下記式(1−B):
(式(1−A)および(1−B)中、R1、X1〜X5、およびnは式(1)中と同義である)
で表される化合物であることが好ましく、下記式(1−A)で表される化合物であることがより好ましい。キノフタロン化合物が上記構造であれば、キノリン環の4位または8位に立体障害の大きい基X5が置換することで、結晶化をより有効に抑制・防止でき、輝度をより有効に向上できる。また、色素分子同士の会合による溶解度の低下や色純度の低下が特に抑制されるため、溶解性、色純度の観点から好ましい。
なお、式(1)の化合物は、上記共通構造において、下記のような構造の互変異性体が存在するが、これらの互変異性体についても本発明の権利範囲内のものである。
式(1)で表される化合物の好適な実施形態として、R1、X1〜X5の好ましい形態を以下に例示する。
R1は好ましくはnが0である。
好ましい実施形態のひとつとしては、X2が特定の置換基(−COOR2または−COOR3−O−R4)でありかつX1、X3及びX4が水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である。より好ましい実施形態のひとつとしては、X2が−COOR2でありかつX1、X3及びX4が水素原子である。
好ましい実施形態のひとつとしては、R2およびR4は、それぞれ独立して、少なくとも2個の水酸基および/または少なくとも2個の分岐鎖を有する炭素原子数5〜10の分岐鎖のアルキル基を表わし、R3は、少なくとも1個の水酸基および/または少なくとも2個の分岐鎖を有する炭素原子数5〜10の分岐鎖のアルキレン基を表わす。
また、好ましい実施形態のひとつとしては、X5が下記式:
からなる群から選択される置換基である。より好ましい実施形態のひとつとしては、X5が下記式:
からなる群から選択される置換基である。
より具体的には、本発明の式(1)のキノフタロン化合物は、下記構造を有することが好ましい。すなわち、本発明の好ましい実施形態では、式(1)のキノフタロン化合物は下記化合物からなる群より選択される。なお、各構造を有するキノフタロン化合物を、下記化合物番号によって称することもある。例えば、下記最初のキノフタロン化合物を「キノフタロン化合物(1)」とも称する。
本発明のキノフタロン化合物の製造方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適宜利用することができる。以下、キノフタロン化合物の製造方法の一実施形態を記載する。なお、本発明は下記方法に限定されるものではない。
まず、下記式(I)で表される8−アミノ−2−メチルキノリン誘導体(以下、単に「アミノキノリン誘導体」とも称する);
と、無水コハク酸誘導体(II−1)または無水マレイン酸誘導体(II−2);
とを、反応させることによって、下記式(III−1)または(III−2):
で表される化合物が得られる。上記式(I)〜(III−2)において、R1、Y、Z1、Z2、およびnは、所望のキノフタロン化合物の構造によって規定され、具体的には、これらの定義は、式(1)で表される化合物と同様の定義であるため、ここでは説明を省略する。
この際、アミノキノリン誘導体と、無水コハク酸誘導体または無水マレイン酸誘導体(以下、当該2つの化合物を合わせて「ジカルボン酸無水物」とも称する。)との反応モル比は、化合物により適宜設定されるが、通常、アミノキノリン誘導体:ジカルボン酸無水物=1:0.95〜1.50である。
上記反応は、無溶媒下であるいは有機溶媒中で行われてもよいが、好ましくは有機溶媒中で行われる。この際使用される溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、スルホラン、安息香酸、ベンゾニトリル、テトラリン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなどが挙げられる。溶媒の使用量は反応により適宜調整されるが、アミノキノリン誘導体およびジカルボン酸無水物の合計の濃度が、通常10〜50重量%となるような量である。
また、アミノキノリン誘導体とジカルボン酸無水物との反応条件は、反応が進行して式(III−1)または(III−2)で表される化合物が得られる条件であれば特に制限されない。具体的には、反応温度は、通常40〜200℃、好ましくは40〜160℃で、反応時間は、通常3〜60時間程度、好ましくは5〜45時間である。なお、上記反応において、必要に応じて、酸やアルカリなどの触媒を用いてもよい。
次に、上記(III−1)または(III−2)で表される化合物(以下、当該2つの化合物を合わせて「キノフタロン中間体」とも称する。)と、置換フタル酸無水物もしくは置換フタル酸とを反応させてキノフタロン化合物を得ることができる。例えば、フタル酸無水物として、トリメリット酸無水物:
とを、反応させることによって下記式(IV−1):
で表される化合物が得られる。上記式(IV−1)において、R1、X5、およびnは、所望のキノフタロン化合物の構造によって規定され、具体的には、これらの定義は、式(1)で表される化合物と同様の定義であるため、ここでは説明を省略する。
この際、キノフタロン中間体と、トリメリット酸無水物との反応モル比は、化合物により適宜設定されるが、通常、キノフタロン中間体:トリメリット酸無水物=1:0.95〜1.50である。
上記反応は、無溶媒下であるいは有機溶媒中で行われてもよいが、好ましくは有機溶媒中で行われる。この際使用される溶媒としては、スルホラン、安息香酸、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ベンゾニトリル、テトラリン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、トリメチルベンゼン、ニトロベンゼンなどが挙げられる。溶媒の使用量は反応により適宜調整されるが、キノフタロン中間体およびトリメリット酸無水物の合計の濃度が、通常10〜50重量%となるような量である。
また、キノフタロン中間体とトリメリット酸無水物との反応条件は、反応が進行して式(IV−1)で表される化合物が得られる条件であれば特に制限されない。具体的には、反応温度は、通常120〜240℃、好ましくは130〜200℃で、反応時間は、通常1〜50時間程度、好ましくは1.5〜30時間である。なお、上記反応において、必要に応じて、金属塩などの触媒を用いても良い。
上記反応により得られた式(IV−1)で表される化合物(カルボン酸中間体)は、必要であれば適宜精製工程を行ってもよい。具体的には、反応生成物をメタノールなどの低級アルコールに注いで、析出物を得て、これを濾取・洗浄し、乾燥する方法などが使用できる。なお、精製工程は、上記方法に限定されず、適宜公知の精製方法が同様にしてまたは適宜修飾して適用できる。
次に、上記にて得られたカルボン酸中間体を、溶媒中、塩素化剤の存在下で反応させることによって、下記式(V−1):
で表される化合物(酸塩化物中間体)が得られる。
ここで、塩素化剤は、特に制限されないが、例えば、塩化チオニル、オキサリルクロリド等が挙げられる。また、塩素化剤の使用量は、カルボン酸中間体のカルボキシル基を十分塩素化できる量であれば特に制限されない。具体的には、塩素化剤の使用量は、カルボン酸中間体1モルに対して、2モル以上であることが好ましく、2〜10モルであることがより好ましい。
また、上記反応において、溶媒は、特に限定されず、カルボン酸中間体の種類などによって適宜選択される。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等の塩素化溶媒などが挙げられる。上記溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。溶媒の使用量は反応により適宜調整されるが、カルボン酸中間体の濃度が、通常5〜50重量%となるような量である。また、上記反応を促進するために、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン等の塩基を添加してもよい。塩基を使用する際の塩基の使用量は、特に制限されず、所望の反応の促進効果に応じて適宜選択できる。例えば、塩基は、カルボン酸中間体に対して、1〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%の量で使用される。
また、カルボン酸中間体の塩素化反応条件は、反応が進行して所望の酸塩化物中間体が得られる条件であれば特に制限されない。具体的には、反応は、通常0〜70℃の温度で、好ましくは還流下で、0.5〜20時間程度、好ましくは1〜10時間で行われる。上記反応後、溶媒を留去して濃縮して、塩素化剤を留去することが好ましい。
上記により、塩素化剤が留去されたところで、酸塩化物中間体(または酸塩化物中間体を含む反応液)と、式:H−COOR2または式:H−COOR3−O−R4で表される化合物(特定置換基導入化合物)とを、塩基の存在下で、反応させることによって、目的とするキノフタロン化合物が得られる。
ここで、特定置換基導入化合物は、式:H−COOR2または式:H−COOR3−O−R4で表され、ここで、R2〜R4は、上記式(1)で規定したのと同様であるため、ここでは説明を省略する。また、特定置換基導入化合物の添加量は、酸塩化物中間体の−C(=O)Cl基の位置に導入できる量であれば特に制限されない。具体的には、特定置換基導入化合物の添加量は、カルボン酸中間体1モルに対して、好ましくは1〜10モル、より好ましくは1.5〜5モルである。
また、塩基としては、上記反応を触媒できるものであれば特に制限されないが、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、ジアザビシクロウンデセン等が挙げられる。塩基の使用量は、特定置換基導入化合物が効率よく酸塩化物中間体の−C(=O)Cl基と置換する量であれば特に制限されない。具体的には、塩基の使用量は、特定置換基導入化合物1モルに対して、0.2〜5モルであることが好ましく、0.5〜2モルであることがより好ましい。
また、上記酸塩化物中間体、特定置換基導入化合物及び塩基に加えて、さらに溶媒を加えてもよい。ここで、溶媒としては、上記反応物を溶解できるものであれば特に制限されず、上記反応物の種類に応じて適宜選択できる。具体的には、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ベンゾニトリル、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。溶媒の使用量は反応により適宜調整されるが、酸塩化物中間体および特定置換基導入化合物の合計の濃度が、通常5〜50重量%となるような量である。
また、酸塩化物中間体および特定置換基導入化合物との反応条件は、反応が進行して所望のキノフタロン化合物が得られる条件であれば特に制限されない。具体的には、反応は、通常20〜150℃の温度で、好ましくは還流下で、0.5〜20時間程度、好ましくは1〜10時間で行われる。
上記反応により得られたキノフタロン化合物は、必要であれば適宜精製工程を行ってもよい。具体的には、反応生成物をヘキサンなどの溶媒に注いで、析出物を得て、これを濾取・洗浄し、乾燥する方法、反応生成物をヘキサンなどの溶媒に注いで、析出物を得て、これを濾取し、濾物をクロマトグラフィー等の適当な手段でさらに精製する方法などが使用できる。なお、精製工程は、上記方法に限定されず、適宜公知の精製方法が同様にしてまたは適宜修飾して適用できる。
上記方法に代えて、例えば、国際公報第2013/081140号に記載の方法(特に国際公報第2013/081140号 段落「0118」〜「0143」に記載の方法)に従って、本発明のキノフタロン化合物を合成してもよい。
上記の方法により、本発明のキノフタロン化合物が合成できる。
本発明のキノフタロン化合物は、第1の吸収ピークとして400〜440nmと、第2の吸収ピークとして450〜480nmとに吸収ピークを有する。本発明においては、第2の吸収ピークが長波長側からの鋭い立ち上がりと強い吸収を有しているため、470nmでの透過率が低くなり、黄色系色素(黄色系色素化合物)として好適に使用できる。
本発明のキノフタロン化合物は、500nmにおける透過率が高く、青色光の代表的な波長である470nmにおける透過率が低い(光遮蔽率が高い)ため、黄色純度が高く、輝度の高いカラーフィルター着色剤として好適である。本発明のキノフタロン化合物において、470nmでの透過率としては、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下、特に好ましくは30%以下である。なお、470nmでの透過率は、小さい方が好ましいため、特に下限は制限されないが、実質的に0%以上である。または、本発明のキノフタロン化合物を用いてなる緑色フィルタセグメントにおいて、470nmでの透過率としては、好ましくは20%以下、より好ましくは14%以下、さらに好ましくは13.5%以下、特に好ましくは13.0%以下である。なお、緑色フィルタセグメントの470nmでの透過率は、小さい方が好ましいため、特に下限は制限されないが、実質的に0%以上である。ここで、「緑色フィルタセグメントの470nmでの透過率」は下記実施例における「(c)カラーフィルターの評価」の項で測定された値である。また、500nmでの透過率としては、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは78%以上、特に好ましくは80%以上である。なお、500nmでの透過率は、大きい方が好ましいため、特に上限は制限されないが、実質的に100%以下である。または、本発明のキノフタロン化合物を用いてなる緑色フィルタセグメントにおいて、525nmでの透過率としては、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは87%以上、特に好ましくは90%以上である。なお、緑色フィルタセグメントの525nmでの透過率は、大きい方が好ましいため、特に上限は制限されないが、実質的に100%以下である。ここで、「緑色フィルタセグメントの525nmでの透過率」は下記実施例における「(c)カラーフィルターの評価」の項で測定された値である。
また、本発明のキノフタロン化合物において、470nmでの透過率(T470)と、500nmでの透過率(T500)とは、透過率が、好ましくは35%以上、より好ましくは45%以上、さらに好ましくは55%以上、特に好ましくは60%以上、もっとも好ましくは62%以上の差を有する。なお、透過率の差は、大きい方が好ましいため、特に上限は制限されないが、実質的に100%以下である。または、本発明のキノフタロン化合物を用いてなる緑色フィルタセグメントにおいて、470nmでの透過率(T470)と、525nmでの透過率(T525)とは、透過率が、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは77%以上、特に好ましくは78%以上の差を有する。なお、透過率の差は、大きい方が好ましいため、特に上限は制限されないが、実質的に100%以下である。吸収波長がこのような関係となることで、黄色純度の高いキノフタロン化合物となりうるため好ましい。
なお、上述のキノフタロン化合物の吸収スペクトルの吸収ピーク、透過率は、後述する方法により作製したキノフタロン化合物を含有する黄色カラーフィルターを紫外可視分光光度計を用いて測定された値を意味する。
また、本発明のキノフタロン化合物は、溶剤、特にシクロヘキサノン(CHN)又はN−メチルピロリドン(NMP)、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等との溶解性(相溶性)に優れ、より好ましくはシクロヘキサノン、N−メチルピロリドンとの溶解性(相溶性)に優れる。本発明のキノフタロン化合物の溶剤溶解性は、特に限定されず、高いほど好ましい。例えば、本発明のキノフタロン化合物を溶解するのに必要なCHNの量に対するキノフタロン化合物の濃度は、0.5重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、2重量%以上であることがさらに好ましい。また、本発明のキノフタロン化合物を溶解するのに必要なNMPの量に対するキノフタロン化合物の濃度は、0.5重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、2重量%以上がさらに好ましく、6重量%以上が特に好ましい。
このように、本発明のキノフタロン化合物は、耐熱性、溶剤溶解性に優れるため、種々の用途、特にカラーフィルター用着色剤に好適に使用されうる。
以下、本発明のキノフタロン化合物の用途として、カラーフィルター用着色剤を例に挙げて説明する。すなわち、本発明の他の形態は、本発明のキノフタロン化合物を含む着色剤、カラーフィルター用着色剤である。以下では、本発明のキノフタロン化合物を含むカラーフィルター用着色剤について、詳述するが、本発明は、下記形態に限定されない。このため、他の用途の着色剤に本発明のキノフタロン化合物を使用する場合には、キノフタロン化合物を本発明の化合物に置換する以外は、当該分野における既知の着色剤と同様のものが使用できる。
本発明のカラーフィルター用着色剤は、本発明のキノフタロン化合物を色素として含む以外は、特開2011−197669号公報、特開2011−197670号公報など、従来と同様のカラーフィルター用着色剤でありうる。
本発明のカラーフィルター用着色剤の組成は、本発明のキノフタロン化合物を色素として含む以外は公知の組成と同様でありうる。例えば、本発明のカラーフィルター用着色剤は、色素、樹脂及び溶剤を含む。
本発明のカラーフィルター用着色剤は、本発明のキノフタロン化合物を色素として含有することが必須である。ここで、本発明のキノフタロン化合物の配合量は特に制限されないが、着色剤の総重量に対して、1〜40重量%が好ましく、3〜30重量%がより好ましい。このような範囲であれば、適切な色濃度の着色剤が得られうる。なお、本発明のキノフタロン化合物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
また、本発明のカラーフィルター用着色剤は、他の顔料又は染料を併用してもよい。他の顔料又は染料は、特に制限されず、公知の顔料又は染料が使用できる。なお、上記他の顔料又は染料は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
本発明のカラーフィルター用着色剤で用いられる他の顔料又は染料としては、例えば、緑色系色素が挙げられる。緑色系色素を使用することにより、カラーフィルターとして使用した場合、その色純度や輝度を特に向上することができる。この際、本発明で用いられるキノフタロン化合物は、緑色系色素の補色のために使用されうる。使用できる緑色系色素としては、特に制限されないが、具体的には、国際公開第2011/010733号、国際公開第2011/105603号、特開2010−265254号公報、特開2009−108135号公報、特開2003−161827号公報等の公報に記載されたフタロシアニン顔料およびフタロシアニン染料がフタロシアニン化合物として好適に用いられうる。すなわち、好ましい形態によると、本発明の着色剤は、緑色系フタロシアニン化合物をさらに含む。上述したように、本発明のキノフタロン化合物は立体障害の高い置換基を有するため、本発明のキノフタロン化合物及びフタロシアニン化合物を含む塗膜中でキノフタロン化合物同士またはキノフタロン化合物とフタロシアニン化合物との接触が立体的に妨げられ、結晶化が抑制・防止される。ゆえに、キノフタロン化合物をフタロシアニン化合物と組み合わせて作製した緑色フィルタセグメントは、ベーク後の塗膜での化合物(色素)の移動(ゆえに結晶化)が抑制・防止される。また、本発明のキノフタロン化合物は、フタロシアニン化合物と組み合わせても、相互の相性が非常に良好であるため、混合してもキノフタロン色素とフタロシアニン色素が相互に干渉しあうことなく互いのスペクトル性能を発揮できる。ゆえに、本発明のキノフタロン化合物を緑色系色素であるフタロシアニン化合物と組み合わせて作製されるカラーフィルター(緑色フィルタセグメント)は、輝度を有効に向上できる。
上記緑色系色素(特にフタロシアニン化合物)は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、緑色系色素を使用する際の緑色系色素の配合量は、本発明のキノフタロン化合物による効果を阻害せしない程度であれば特に制限されず、所望の色純度や輝度などを考慮して適宜選択しうる。緑色系色素の配合量は、着色剤の総重量に対して、2〜20重量%が好ましく、3〜10重量%がより好ましい。
また、本発明のカラーフィルター用着色剤は、必要に応じて、公知の樹脂(感光性樹脂組成物)の化合物を添加してもよい。本発明に用いることのできる樹脂(感光性樹脂組成物)は、光の作用によって化学反応を起こし、その結果、溶媒に対する溶解度または親和性に変化を生じたり、液状より固体状に変化するものであればよい。例えば、アクリル系またはマレイミド系樹脂液をバインダー樹脂(ベースポリマー)とし、これに各種のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルからなる感光性モノマー(光重合性モノマー)、光重合開始剤を加えてなる光重合型の感光性樹脂組成物、あるいは光二量化するアクリル系樹脂液を用いてなる光二量化型の感光性樹脂組成物などが挙げられるが、中でも光重合型の感光性樹脂組成物が好ましい。
前記アクリル系またはマレイミド系樹脂としては、それを構成するモノマー、オリゴマーのうち10重量%以上がアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよびマレイミド基を有する化合物から選ばれた1種以上であり、アクリル酸、メタクリル酸またはマレイミド基を有する化合物を好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは5〜35重量%、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸を好ましくは10〜90重量部、さらに好ましく30〜80重量%含むものである。
アクリル系を構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2一ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、マレイン酸、フマル酸、N−フェニルマレイミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートプレポリマー等が例示できる。
マレイミド系樹脂を構成するモノマーとしては、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、N―メチルフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミド等の芳香族置換マレイミドのほか、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のアルキル置換マレイミドが例示できる。
また、本発明の感光性樹脂組成物の成分となり得る感光性モノマーとしては、前記のアクリル系樹脂を構成するモノマーが挙げられるが、好ましくはトリメチロールプロパントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
本発明の樹脂は、市販品を使用してもよい。具体的には、(株)日本触媒製のアクリル系バインダーなどが挙げられる
上記樹脂は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、樹脂の配合量は、本発明のキノフタロン化合物による効果を阻害せしない程度であれば特に制限されず、所望の色純度や輝度などを考慮して適宜選択しうる。樹脂の配合量は、着色剤の総重量に対して、1〜50重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。
光重合型の感光性樹脂組成物の組成成分となり得る光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインアルキルエーテル系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、フェニルケトン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物およびアントラキノン系化合物などが挙げられる。より具体的には、イルガキュア369、イルガキュア907(両者とも日本チバガイギー(株)製)などのアセトフェノン系化合物などが挙げられる。
光重合開始剤の添加量は、特に限定されるものではないが、アセトフェノン系化合物(IRGACURE(イルガキュア)369など)については、着色剤組成物中の不揮発分(溶媒を除いた成分)を100重量部とした際に、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜10重量部の割合で添加されることが望ましい。または、光重合開始剤の配合量は、着色剤の総重量に対して、0.1〜10重量%が好ましく、0.3〜5重量%がより好ましい。
また、本発明のカラーフィルター用着色剤組成物には、必要に応じて、熱重合防止剤等の任意成分を添加することができる。上記熱重合防止剤は、保存安定性改良の目的で添加されるものであり、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−(メルカプトベンゾイミダゾール)など用いることができる。また、必要に応じて、光劣化防止剤を添加してもよい。
本発明のカラーフィルター用着色剤は、さらに溶剤を含むことができる。
溶媒としては、黄色系色素化合物を溶解できるものであれば特に制限されない。例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、テトラリン、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、n−プロパノール、n−ブタノール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、2−エチルヘキサノール、ブトキシエタノール、ジアセトンアルコール、ベンズアルデヒド、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジブチルケトン、メチル−イソブチルケトン、メチル−イソアミルケトン、アセトフェノン、メチラール、フラン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸アミル、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、ニトロエタン、2−ニトロプロパン、ニトロベンゼン、ジメチルスルオキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。中でも、沸点と粘性の観点で、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドンなどが好ましい。
カラーフィルター用着色剤における溶媒の配合量は、特に制限はないが、着色剤の総重量に対して、5〜85重量部が好ましく、30〜80重量部がより好ましい。また、当該溶剤とは、例えば、上記に示す樹脂の成分で溶剤に溶解している場合には、当該溶剤を含めた合計量を意味する。
また、本発明のカラーフィルター用着色剤は、さらに分散剤を含んでもよい。特に、色素として顔料を用いる場合は、分散剤を用いることで、着色剤の分散安定性が増すため、分散剤を含むことが好ましい。また、通常、黄色系色素や緑色系色素を含む染料は、ポリマー樹脂に溶解するので、分散剤は必須ではない。しかし、カラーフィルター中では染料が高濃度(例えば、約30重量%)になることがあるため、その凝集、析出を防止するために分散剤を用いると、輝度、コントラストの向上効果を奏しうる。
ここで、本発明に用いられる分散剤としては、公知の分散剤が使用できる。かかる分散剤の代表例としては、例えば、有機溶剤系ではポリウレタン系高分子量湿潤分散剤、ポリアクリレートなどのカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボン酸基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩など;水性では(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子化合物;ラウリル硫酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、ステアリン酸ナトリウム、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤があげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
また、本発明のカラーフィルター用着色剤組成物は、必要に応じて、公知の分散助剤等の化合物を添加してもよい。これらの化合物は、顔料と分散剤との仲介をする化合物で、顔料表面と分散剤とに電気的、化学的に吸着し、分散安定性を向上させる機能を持つと考えられている。
このような分散助剤としては例えば、ポリカルボン酸型高分子活性剤、ポリスルホン酸型高分子活性剤等のアニオン性活性剤、ポリオキシエチレン、ポリオキシレンブロックポリマー等のノニオン系の活性剤があるが、好ましいものとして、アントラキノン系、フタロシアニン系、金属フタロシアニン系、キナクリドン系、アゾキレート系、アゾ系、イソインドリノン系、ピランスロン系、インダンスロン系、アンスラピリミジン系、ジブロモアンザンスロン系、フラバンスロン系、ペリレン系、ペリノン系、キノフタロン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系等の有機顔料を母体とし、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、カルボンアミド基、スルホンアミド基等の置換基を導入した顔料誘導体が挙げられる。これらの中でもフタロシアニン系及び金属フタロシアニンスルホンアミド化合物は特に有効である。
上記形態のカラーフィルター用着色剤は、公知の方法によって製造できる。例えば、本発明のカラーフィルター用着色剤は、本発明のキノフタロン化合物を必須成分とし、さらに要すれば、上述した他の色素(顔料又は染料)、溶剤、樹脂、分散剤、分散補助剤、など他の添加物等が配合されていてもよい。カラーフィルター用着色剤としては、キノフタロン化合物を含み、さらに、溶媒と、他の色素(顔料又は染料)と、重合開始剤を含む樹脂(感光性樹脂組成物)と、を含むと好ましい。この際、各成分は、上記定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。本発明のカラーフィルター用着色剤の製造方法は、特に制限されないが、上記成分を混合し、溶解させることで得られる。
背景技術の欄でも説明したが、液晶ディスプレイや撮像装置等に用いるカラーフィルターは一般に、ガラスなどの透明基板に、赤、緑、青の三原色画素と、これらの画素間に設けられた遮光層であるブラックマトリックスとを形成することにより製造されている。
カラーフィルターの作製方法は、従来公知の知見を適宜参照し、あるいは組み合わせて適用することができる。例えば、特開平10−160921号公報で開示されている方法が、カラーフィルターを作製する上で好ましいが、無論これらに限定されるわけではない。
次に、カラーフィルター用着色剤をガラス基板上に塗布する工程について述べる。まず、ガラス基板上にブラックマトリックスを形成する。次に、本発明のキノフタロン化合物と、必要に応じて、他の緑色系色素、溶媒、樹脂(感光性樹脂組成物)、分散剤等を含有してなる着色剤をガラス基板上にスピンコート等により塗布し、乾燥する。次に、その後、必要に応じフォトマスクを介し露光する。その後、必要に応じ、アルカリ現像を行い、着色パターン(着色層)を得る。その後、必要に応じ、透明なオーバーコート層(保護膜)を形成して着色層の保護と表面の平坦化を行う。さらに、必要に応じ、透明導電膜を形成する。このようにして、カラーフィルターとすることができる。すなわち、本発明は、キノフタロン化合物、緑色系フタロシアニンおよび樹脂を含む着色剤組成物を硬化した着色硬化物および上記着色硬化物を含むカラーフィルターを包含する。
本発明のキノフタロン化合物は、カラーフィルター作成時の乾燥工程に充分耐えうる耐熱性を保持しており、乾燥工程後において525nmにおける透過率が高く、470nmにおける透過率が低い(光遮蔽率が高い)。そのため、本発明のキノフタロン化合物を、黄色色素として単独で用いた場合でも、また、緑の画素の調色のための黄色色素として用いた場合でも、本発明のカラーフィルター用着色剤に含まれるキノフタロン化合物によって、カラーフィルターが鮮やかな黄色を発色する、すなわち、本発明のカラーフィルター(特に緑色フィルタセグメント)は高い輝度を有する。また、本発明のカラーフィルター用着色剤に含まれるキノフタロン化合物は、溶剤溶解性にも優れるため、当該カラーフィルター用着色剤中において安定した溶解状態が維持されうる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「重量%」および「重量部」を意味する。
合成例1:カルボン酸中間体(1)の合成
国際公開第2013/081140号明細書の(中間体(6)の合成)及び(キノフタロン化合物(8)の合成)と同様にして、以下のようにして、カルボン酸中間体(1)を合成した。
(中間体(1)の合成)
下記反応に従って、中間体(1)を合成した。詳細には、50mLの2つ口反応容器に、cis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物1.94g、8−アミノ−2−メチルキノリン2.00g、及びN−メチルピロリドン15gを加えた。この混合物を40℃で2時間撹拌させた後、100℃に昇温してさらに40時間反応させた。反応溶液を水にゆっくりと排出し、析出物を濾取した。濾物をビーカーに移し、少量のメタノールで撹拌して洗浄し、さらに水を加えて撹拌した後、濾過することで、中間体(1)を3.16g、収率84.9%で得た。
(カルボン酸中間体(1)の合成)
下記反応に従って、カルボン酸中間体(1)を合成した。詳細には、25mlの反応容器に、上記で得られた中間体(1)2.0g、トリメリット酸無水物1.44g、及び安息香酸15gを加え、180℃に昇温し10時間反応させた。加熱終了後、放冷してからメタノールにゆっくりと排出した後、析出物を濾取した。濾物をビーカーに移し、少量のメタノールで撹拌して洗浄した後、濾過した。濾物を60℃で終夜減圧乾燥して、カルボン酸中間体(1)を1.87g、収率59.5%で得た。
合成例2:カルボン酸中間体(2)の合成
(中間体(2)の合成)
国際公開第2013/081140号明細書の(中間体(5)の合成)と同様にして、中間体(2)を合成した。
すなわち、下記反応に従って、中間体(2)を合成した。詳細には、50mLの2つ口反応容器に、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物2.31g、8−アミノ−2−メチルキノリン2.00g、及びジメチルホルムアミド6.01gを加えた以外は、上記中間体(1)と同様の方法により、中間体(2)を3.38g、収率91.3%で得た。
(カルボン酸中間体(2)の合成)
上記合成例1の(カルボン酸中間体(1)の合成)において、中間体(1)の代わりに、上記で得られた中間体(2)を使用する以外は、合成例1の(カルボン酸中間体(1)の合成)に記載の方法と同様にして、下記構造を有するカルボン酸中間体(2)を合成した。
合成例3:カルボン酸中間体(3)の合成
(中間体(3)の合成)
国際公開第2013/081140号明細書の(中間体(1)の合成)と同様にして、中間体(3)を合成した。
すなわち、下記反応に従って、中間体(3)を合成した。詳細には、100mLの2つ口反応容器に、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物5.00g、8−アミノ−2−メチルキノリン4.81g、及びジメチルホルムアミド39gを加えた以外は、上記中間体(1)と同様の方法により、中間体(3)を8.85g、収率95.6%で得た。
(カルボン酸中間体(3)の合成)
上記合成例1の(カルボン酸中間体(1)の合成)において、中間体(1)の代わりに、上記で得られた中間体(3)を使用する以外は、合成例1の(カルボン酸中間体(1)の合成)に記載の方法と同様にして、下記構造を有するカルボン酸中間体(3)を合成した。
合成例4:カルボン酸中間体(4)の合成
(中間体(4)の合成)
国際公開第2013/081140号明細書の(中間体(4)の合成)と同様にして、中間体(4)を合成した。
すなわち、下記反応に従って、中間体(4)を合成した。詳細には、50mLの2つ口反応容器に、マレイン酸無水物1.36g、8−アミノ−2−メチルキノリン2.00g、及びジメチルホルムアミド6.01gを加えた以外は、上記中間体(1)と同様の方法により、中間体(4)を2.50g、収率83.0%で得た。
(カルボン酸中間体(4)の合成)
上記合成例1の(カルボン酸中間体(1)の合成)において、中間体(1)の代わりに、上記で得られた中間体(4)を使用する以外は、合成例1の(カルボン酸中間体(1)の合成)に記載の方法と同様にして、下記構造を有するカルボン酸中間体(4)を合成した。
合成例5:カルボン酸中間体(5)の合成
(中間体(5)の合成)
国際公開第2013/081140号明細書の(中間体(6)の合成)の類似の方法に従って、中間体(5)を合成した。
すなわち、下記反応に従って、中間体(5)を合成した。詳細には、50mLの2つ口反応容器に、4−メチル−シクロヘキサンジカルボン酸無水物2.55g、8−アミノ−2−メチルキノリン2g、及びジメチルホルムアミド 11.4gを加えた以外は、上記中間体(1)と同様の方法により、中間体(5)を3.7g、収率94.9%で得た。
(カルボン酸中間体(5)の合成)
上記合成例1の(カルボン酸中間体(1)の合成)において、中間体(1)の代わりに、上記で得られた中間体(5)を使用する以外は、合成例1の(カルボン酸中間体(1)の合成)に記載の方法と同様にして、下記構造を有するカルボン酸中間体(5)を合成した。
参考例1:フタロシアニン(1)の合成
以下のようにして、フタロシアニン化合物(1)[ZnPc−{α−(2,6−(CH3)2)C6H3O}x,{β−(2,6−(CH3)2)C6H3O}2.8−xCl13.2](0≦x<2.8)を合成した。
100mlフラスコに、テトラクロロフタロニトリル(TCPN)10.64g、2,6−ジメチルフェノール3.42gおよびベンゾニトリル(BN)49gを投入し、マグネチックスターラーを用いて、内温が100℃に安定するまで約30分攪拌した。次に、この混合物に、炭酸カリウム4.26gを投入して約12時間反応させることで、2,6−ジメチルフェノキシ基がランダムに導入されたフタロニトリル化合物を含む反応液を得た。その後、この反応液を吸引ろ過し、液中のフタロニトリル化合物の濃度が約80重量%となるまで濃縮した。
次に、上記にて得られた濃縮液を、1−オクタノールで、液中のフタロニトリル化合物の濃度が約40重量%になるように希釈した後、窒素流通下(窒素ガスの流通速度:10ml/min)、マグネチックスターラーを用いて、内温160℃に安定するまで約1時間攪拌した。この混合物に塩化亜鉛1.5gを投入して、約10時間反応させた。冷却後、反応液を、得られるフタロシアニン化合物質量の和の30倍に相当する量のメタノール(約300g)中に滴下し、30分間攪拌した。その後、フタロシアニン化合物重量の和の10倍量に相当する蒸留水(約100g)を30分かけて滴下し、滴下終了後、さらに30分間攪拌して、結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、晶析時と同量のメタノール及び蒸留水を加えて、30分間攪拌することで、洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約90℃で一晩真空乾燥し、約10.22g(収率93.5モル%)のフタロシアニン化合物(1)を得た。
実施例1:キノフタロン化合物(1)の合成
下記反応に従って、キノフタロン化合物(1)を合成した。詳細には、300mlの三口フラスコに、撹拌下で、上記合成例1で合成したカルボン酸中間体(1)10g、トルエン100g、塩化チオニル(SOCl2;以下、同様)10g、及びジメチルホルムアミド(DMF;以下、同様)1gを投入し、還流下にて約3時間反応させることによって、酸塩化物中間体(1)を含む反応液を得た。
次に、この反応液から塩化チオニルを留去するために濃縮を行い、塩化チオニルが留去できたところで、新たにトルエン100g、トリメチロールプロパン5.7g、及びトリエチルアミン(Et3N)3.6gを投入し、還流下で約3時間反応させた。その後、反応液量が初めの20体積%程度になるまで濃縮を行った後、ヘキサン100mlに投入して、沈殿を得た。得られた沈殿物をろ別し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:70体積%酢酸エチル−30体積%ヘキサン混合液)で精製することで、キノフタロン化合物(1)を4.53g、収率36.4%で得た。
実施例2:キノフタロン化合物(2)の合成
下記反応に従って、キノフタロン化合物(2)を合成した。詳細には、300mlの三口フラスコに、撹拌下で、上記合成例2で合成したカルボン酸中間体(2)10g、トルエン100g、塩化チオニル10g、及びジメチルホルムアミド1gを投入し、還流下にて約3時間反応させることによって、酸塩化物中間体(2)を含む反応液を得た。
次に、この反応液から塩化チオニルを留去するため濃縮を行い、塩化チオニルが留去できたところで、新たにトルエン100g、トリメチロールプロパン5.75g、及びトリエチルアミン(Et3N)3.3gを投入し、還流下で約3時間反応させた。その後、反応液量が初めの20体積%程度になるまで濃縮を行った後、ヘキサン100mlに投入して、沈殿を得た。得られた沈殿物をろ別し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:70体積%酢酸エチル−30体積%ヘキサン混合液)で精製することで、キノフタロン化合物(2)を4.27g、収率34.2%で得た。
実施例3:キノフタロン化合物(3)の合成
下記反応に従って、キノフタロン化合物(3)を合成した。詳細には、300mlの三口フラスコに、撹拌下で、上記合成例3で合成したカルボン酸中間体(3)10g、トルエン100g、塩化チオニル10g、及びジメチルホルムアミド1gを投入し、還流下にて約3時間反応させることによって、酸塩化物中間体(3)を含む反応液を得た。
次に、この反応液から塩化チオニルを留去するため濃縮を行い、塩化チオニルが留去できたところで、新たにトルエン100g、トリメチロールプロパン5.59g、及びトリエチルアミン(Et3N)3.2gを投入し、還流下で約3時間反応させた。その後、反応液量が初めの20体積%程度になるまで濃縮を行った後、ヘキサン100mlに投入して、沈殿を得た。得られた沈殿物をろ別し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:70体積%酢酸エチル−30体積%ヘキサン混合液)で精製することで、キノフタロン化合物(3)を4.05g、収率32.7%で得た。
実施例4:キノフタロン化合物(4)の合成
下記反応に従って、キノフタロン化合物(4)を合成した。詳細には、300mlの三口フラスコに、撹拌下で、上記合成例4で合成したカルボン酸中間体(4)10g、トルエン100g、塩化チオニル10g、及びジメチルホルムアミド1gを投入し、還流下にて約3時間反応させることによって、酸塩化物中間体(4)を含む反応液を得た。
次に、この反応液から塩化チオニルを留去するため濃縮を行い、塩化チオニルが留去できたところで、新たにトルエン100g、トリメチロールプロパン6.51g、及びトリエチルアミン(Et3N)3.7gを投入し、還流下で約3時間反応させた。その後、反応液量が初めの20体積%程度になるまで濃縮を行った後、ヘキサン100mlに投入して、沈殿を得た。得られた沈殿物をろ別し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:70体積%酢酸エチル−30体積%ヘキサン混合液)で精製することで、キノフタロン化合物(4)を3.35g、収率26.1%で得た。
実施例5:キノフタロン化合物(5)の合成
下記反応に従って、キノフタロン化合物(5)を合成した。詳細には、300mlの三口フラスコに、撹拌下で、上記合成例5で合成したカルボン酸中間体(5)10g、トルエン100g、塩化チオニル10g、及びジメチルホルムアミド1gを投入し、還流下にて約3時間反応させることによって、酸塩化物中間体(5)を含む反応液を得た。
次に、この反応液から塩化チオニルを留去するため濃縮を行い、塩化チオニルが留去できたところで、新たにトルエン100g、ジ(トリメチロールプロパン)10.38g、及びトリエチルアミン(Et3N)3.2gを投入し、還流下で約2時間反応させた。その後、反応液量が初めの20体積%程度になるまで濃縮を行った後、ヘキサン100mlに投入して、沈殿を得た。得られた沈殿物をろ別し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:70体積%酢酸エチル−30体積%ヘキサン混合液)で精製することで、キノフタロン化合物(5)を5.35g、収率36.1%で得た。
実施例6:キノフタロン化合物(6)の合成
下記反応に従って、キノフタロン化合物(6)を合成した。詳細には、300mlの三口フラスコに、撹拌下で、上記合成例2で合成したカルボン酸中間体(2)10g、トルエン100g、塩化チオニル10g、及びジメチルホルムアミド1gを投入し、還流下にて約3時間反応させることによって、酸塩化物中間体(6)を含む反応液を得た。
次に、この反応液から塩化チオニルを留去するため濃縮を行い、塩化チオニルが留去できたところで、新たにトルエン100g、3−クロロ−2,2−ジメチル−1−プロパノール5.26g、及びトリエチルアミン(Et3N)3.3gを投入し、還流下で約6時間反応させた。その後、反応液量が初めの20体積%程度になるまで濃縮を行った後、ヘキサン100mlに投入して、沈殿を得た。得られた沈殿物をろ別し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:70体積%酢酸エチル−30体積%ヘキサン混合液)で精製することで、キノフタロン化合物(6)を4.03g、収率32.9%で得た。
実施例7:キノフタロン化合物(7)の合成
下記反応に従って、キノフタロン化合物(7)を合成した。詳細には、300mlの三口フラスコに、撹拌下で、上記合成例2で合成したカルボン酸中間体(2)10g、トルエン100g、塩化チオニル10g、及びジメチルホルムアミド1gを投入し、還流下にて約3時間反応させることによって、酸塩化物中間体(7)を含む反応液を得た。
次に、この反応液から塩化チオニルを留去するため濃縮を行い、塩化チオニルが留去できたところで、新たにトルエン100g、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール6.27g、及びトリエチルアミン(Et3N)3.3gを投入し、還流下で約5時間反応させた。その後、反応液量が初めの20体積%程度になるまで濃縮を行った後、ヘキサン100mlに投入して、沈殿を得た。得られた沈殿物をろ別し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:70体積%酢酸エチル−30体積%ヘキサン混合液)で精製することで、キノフタロン化合物(7)を4.26g、収率33.4%で得た。
実施例8:キノフタロン化合物(8)の合成
下記反応に従って、キノフタロン化合物(8)を合成した。詳細には、300mlの三口フラスコに、撹拌下で、上記合成例2で合成したカルボン酸中間体(2)10g、トルエン100g、塩化チオニル10g、及びジメチルホルムアミド1gを投入し、還流下にて約3時間反応させることによって、酸塩化物中間体(8)を含む反応液を得た。
次に、この反応液から塩化チオニルを留去するため濃縮を行い、塩化チオニルが留去できたところで、新たにトルエン100g、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール6.27g、及びトリエチルアミン(Et3N)3.3gを投入し、還流下で約5時間反応させた。その後、反応液量が初めの20体積%程度になるまで濃縮を行った後、ヘキサン100mlに投入して、沈殿を得た。得られた沈殿物をろ別し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:70体積%酢酸エチル−30体積%ヘキサン混合液)で精製することで、キノフタロン化合物(8)を3.80g、収率29.8%で得た。
実施例9
以下の方法(a)及び(b)に従って、上記実施例1で合成された調色用のキノフタロン化合物(1)及び上記参考例1で合成されたフタロシアニン化合物(1)を含むカラーフィルターを作製した。
(a)レジスト溶液(カラーフィルター用着色剤組成物)の調製
下記表1に示される組成で混合して溶解し、レジスト溶液(1)(着色剤組成物(1))を調製した。なお、下記表1において、アクリル系バインダーポリマーとして、アクリル系バインダーポリマー((株)日本触媒製、固形分濃度 37.6重量%、溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA):プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)=7:3(体積比))使用した。なお、キノフタロン化合物(1)は、レジスト溶液中に良好に溶解し、沈殿物は認められなかった。
(b)塗膜板の作製
ガラス基板を、予めアセトンで表面を拭った。このガラス基板に対して、上記(a)で得られたレジスト溶液(1)(着色剤組成物(1))を、1600rpm、1.5秒の条件でスピンコートし、80℃で30分間プリベークして、塗膜(1)をガラス基板上に形成した(プリベーク後サンプル(1))。その後、塗膜(1)(プリベーク後サンプル(1))に、UV照射して硬化させた後、230℃で30分間ポストベークして、硬化膜(1)を形成し、カラーフィルター(1)を得た(ポストベーク後サンプル(1))。
このようにして得られたカラーフィルター(1)について、下記(c)に従って、透過率を測定した。また、このカラーフィルター(1)について、下記(c)に従って、耐熱性及び溶解度(溶解性)を評価した。結果を表2に示す。
(c)カラーフィルターの評価
<透過率の測定>
上記で得られたカラーフィルター(1)(ポストベーク後のコーティングガラス板)の吸収スペクトルについて、日立分光光度計U−2910を用いて吸収波形を測定し、波長470nmにおける透過率%T(470nm)、波長525nmにおける透過率%T(525nm)、および波長615nmにおける透過率%T(615nm)を求めた。
<耐熱性の評価>
プリベーク後サンプル(1)およびカラーフィルター(1)(ポストベーク後サンプル(1))について、吸収スペクトルを測定し、以下のように耐熱性をΔEとして評価した。ΔEは、プリベーク後サンプル(1)について測定した吸収スペクトルにおける波長380〜780nmの範囲の面積をPrとし、カラーフィルター(1)(ポストベーク後サンプル(1))について測定した吸収スペクトルにおける波長380〜780nmの範囲の面積をPosとした場合に、式:[(Pr−Pos)/Pr]×100(%)によって算出される値である。ΔEが小さいほど、着色剤組成物としての耐熱性が高いといえる。
<溶解度(溶解性)の評価>
キノフタロン化合物(1)を30mgをバイヤル瓶に秤り、室温(20℃)下で、シクロヘキサノン(CHN)を加え、キノフタロン化合物(1)を溶解させるための必要最小限量のCHNの重量を求めた。求めた溶媒重量におけるキノフタロン化合物の濃度(重量%)(溶媒100重量部に対するキノフタロン化合物の重量(重量部)の割合(%))を算出し、溶解度(溶解性)とした。
実施例10〜16
実施例9において、キノフタロン化合物(1)の代わりに、キノフタロン化合物(2)〜(8)をそれぞれ使用する以外は、実施例9と同様の操作を行い、それぞれ、塗膜(2)〜(8)(プリベーク後サンプル(2)〜(8))及び硬化膜(2)〜(8)を形成し、カラーフィルター(2)〜(8)(ポストベーク後サンプル(2)〜(8))を得た。
このようにして得られたカラーフィルター(2)〜(8)について、実施例9と同様にして、透過率を測定した。また、これらのカラーフィルター(2)〜(8)について、実施例9と同様にして、耐熱性及び溶解度(溶解性)を評価した。結果を表2に示す。
比較例1
国際公開第2013/081140号 段落「0243」〜「0245」に記載の方法に従って、下記構造を有するキノフタロン化合物(7)−1を合成した。この化合物を、本比較例1では、キノフタロン化合物(9)とする。
実施例9において、キノフタロン化合物(1)の代わりに、このキノフタロン化合物(9)を使用する以外は、実施例9と同様の操作を行い、それぞれ、塗膜(9)(プリベーク後サンプル(9))及び硬化膜(9)を形成し、カラーフィルター(9)(ポストベーク後サンプル(9))を得た。
このようにして得られたカラーフィルター(9)について、実施例9と同様にして、透過率を測定した。また、このカラーフィルター(9)について、実施例9と同様にして、耐熱性及び溶解度(溶解性)を評価した。結果を表2に示す。
比較例2
国際公開第2013/081140号 段落「0207」〜「0209」に記載の方法に従って、下記構造を有するキノフタロン化合物(1)−3を合成した。この化合物を、本比較例1では、キノフタロン化合物(10)とする。
実施例9において、キノフタロン化合物(1)の代わりに、このキノフタロン化合物(10)を使用する以外は、実施例9と同様の操作を行い、それぞれ、塗膜(10)(プリベーク後サンプル(10))及び硬化膜(10)を形成し、カラーフィルター(10)(ポストベーク後サンプル(10))を得た。
このようにして得られたカラーフィルター(10)について、実施例9と同様にして、透過率を測定した。また、このカラーフィルター(10)について、実施例9と同様にして、耐熱性及び溶解度(溶解性)を評価した。結果を表2に示す。
上記表2の結果から、実施例1〜8のキノフタロン化合物(1)〜(8)を用いて作製カラーフィルター(1)〜(8)は、本発明に係る特定の置換基を持たない比較例1〜2のキノフタロン化合物(9)〜(10)を用いて作製カラーフィルター(9)〜(10)に比して、525nmにおける透過率(%T(525nm))が有意に高いことが分かる。これは、本発明のキノフタロン化合物が黄色色素としての色純度が高いことによるものと考察される。
また、実施例1〜8のキノフタロン化合物(1)〜(8)を用いて作製カラーフィルター(1)〜(8)は、本発明に係る特定の置換基を持たない比較例1〜2のキノフタロン化合物(9)〜(10)を用いて作製カラーフィルター(9)〜(10)に比して、470nmの青色光、615nmの赤色光の透過率が低い(光遮蔽率が高い)ことが分かる。ゆえに、本発明のキノフタロン化合物を用いたカラーフィルターは、緑色の色純度に優れる。このことは、本発明のキノフタロン化合物(黄色色素)が混合するシアン色のフタロシアニン色素と非常に相性が高いことに起因し、キノフタロン色素とフタロシアニン色素が相互に干渉しあうことなく互いのスペクトル性能を発揮できているためであると考察される。これに対して、比較例1〜2のキノフタロン化合物(黄色色素)は、単体(フタロシアニン化合物と混合しない形態)では非常に高い525nmの透過率を有しているが、フタロシアニン化合物と混合すると、フタロシアニン化合物と互いに干渉しあい、結果として525nmの透過率が大きく低下しまうと考察される。
したがって、本発明のキノフタロン化合物をフタロシアニン化合物と組み合わせて作製されるカラーフィルターによれば、高い色純度及び輝度を発揮できる。