JP6590566B2 - 表面修飾ito粒子の製造方法 - Google Patents
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先ず、ITOからなる母粒子を溶媒に分散させた分散液を調製する。ITO分散液の調製に用いられる溶媒(分散媒)としては、エタノール又は2−ブタノール等のアルコール系溶媒や、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶媒等を使用することができる。このとき、調整する分散液の固形分濃度は1〜30質量%に調整するのが好ましい。母粒子に用いられるITO粒子は、例えば平均粒径が10〜200nmであり、粉末(粒子)のb値がマイナスの値を示すものが望ましいが、例えば次の方法により得られた多結晶ITO粒子を好適に使用することができる。なお、平均粒径とは、SEMで観察した50個の粒子について計測した平均値であり、異方性の粒子の場合は長軸の平均値をいう。また、粉末のb値とは、色差計(スガ試験機社製 型式名:分光測色計 SC-T)を用い、粉体セルにITO粉末を充填して反射光を測定した粉末の黄色性を表す指標である。粉末のb値がマイナスの値を示すものが望ましい理由は、キャリアとなる自由電子が多く存在し、低抵抗な粒子であるからである。また、後述の実施例において使用した多結晶ITO粒子は、上記方法にて測定した粉末のb値は全てマイナスの値を示すものである。
また、上記調製したITO分散液とは別に、表面処理剤としてシランカップリング剤が含まれる表面処理液を予め調製しておく。表面処理剤として使用されるシランカップリング剤には、3−アミノプロピルトリメトキシシラン又は3−アミノプロピルトリエトキシシランのいずれか、或いは3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを用いる。表面処理液は、これらのシランカップリング剤を水以外の極性溶媒で希釈させ、所望の濃度に調整することにより調製される。水以外の極性溶媒としては、アルコールやケトン、エーテル等が好ましい。表面処理液中に含まれるシランカップリング剤の濃度は0.5〜5g/Lとするのが好ましい。下限値未満では、収率が低下する場合があり、一方、上限値を超えるとシランカップリング剤同士が結合する等の理由から表面処理が不均一になる場合がある。
次に、上記調製したITO分散液に上記調製した表面処理液を加え、スターラー等を用いて十分に混合することにより混合液を調製する。また、ITO分散液に表面処理液を添加する際、表面処理液とともに、混合液中のシランカップリング剤の濃度が5質量%以下となる割合で、水以外の極性溶媒を希釈剤として加えるのが望ましい。これは、混合液中のシランカップリング剤濃度が高いと水を加えた際に粒子を形成し、膜を形成した際に導電性を損なう懸念があるからである。なお、表面処理剤に予め極性溶媒を加えて希釈させ、これをITO分散液へ添加する方法であっても良い。水以外の極性溶媒としては、上述の表面処理液の調製に使用される極性溶媒と同様、アルコールやケトン、エーテル等が好ましい。
次に、上記調製した混合液に、水を添加して所望の条件で撹拌する。ここで添加する水はイオン交換水や純水だけではなく、酸性や塩基性の水溶液を加えることで、更に加水分解を促進させることができる。この工程により、表面処理されたITO粒子を含有するコロイド溶液が調製される。このときに、混合液中に含まれるシランカップリング剤が有するアルコキシ基の加水分解反応が進行するとともに、その加水分解させたシランカップリング剤により、母粒子であるITO粒子が表面処理される。このように、シランカップリング剤を単に母粒子と混合して表面処理するのではなく、加水分解させた後のシランカップリング剤によって表面処理を行うことで、シランカップリング剤をより高い結合力にて母粒子表面に結合させることができる。その技術的理由は、シランカップリング剤が有するアルコキシ基が加水分解することによりシラノール基を生成し、このシラノール基を介して、加水分解処理後のシランカップリング剤が母粒子表面に結合するためと考えられる。撹拌は、スターラー等を用いて10〜60℃の温度で5〜50時間の条件で行うのが好ましい。撹拌時の温度が低すぎると、表面処理を十分に行うために必要となる処理時間が長くなり過ぎて、生産効率が悪くなる場合がある。一方、撹拌時の温度が高すぎると、シランカップリング剤同士が結合した粒子が生じる場合がある。また、撹拌時間が短すぎると、加水分解反応が十分に進行しない、或いはシラノール基と母粒子表面に有する反応性基との結合反応が十分に進まない場合がある。
次に、上記撹拌後のコロイド溶液中に含まれる表面処理後の母粒子を洗浄する。洗浄液としては、例えばエタノールや2−ブタノール等のアルコールが挙げられるが、最終的に得られる分散液(後述のITO導電膜形成用塗料)の分散媒に極性溶媒を使用する場合には、その分散媒と同じ極性溶媒を使用するのが好ましい。具体的には、上記コロイド溶液を遠心分離機等により固液分離することにより固形分を回収する。回収した固形分に洗浄液としてのアルコール等を添加して、好ましくは超音波やボルテックスミキサー等により再分散させる。この操作を、好ましくは2〜5回繰り返し行うことにより、母粒子に吸着しなかったシランカップリング剤等を十分に除去する。
上記方法により得られた表面修飾ITO粒子を透明導電材料に用い、塗布方式によってITO導電膜を形成するには、該粒子を含有する塗料を調製する。回収した固形分を、所望の分散媒に再分散させることにより、ITO導電膜形成用塗料が調製される。なお、洗浄に使用した分散媒と最終的な塗料の調製に使用する分散媒が異なる場合には、上述の洗浄を行った後に溶媒置換や乾燥させ、その後、所望の分散媒に再分散させてもよい。塗料の濃度は分散媒100質量%に対して好ましくは10〜40質量%の割合となるように混合し、ミキサーで攪拌することにより調製する。分散媒としては、エタノール、2−ブタノール、1−プロパノール等のアルコール系溶媒が例示される。分散媒に対する表面修飾ITO粒子の割合が少なすぎると導電膜に十分な厚さの膜を形成するのが困難となり、一方、表面修飾ITO粒子の割合が多すぎると分散液の粘度が高く、塗布が困難となる。
ITO導電膜は、例えば次のようにして形成される。予めITO導電膜を形成するための基材を作製しておく。この基材は、片面にポリウレタンが塗布されたポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルムであって、このフィルムのうちポリウレタンが塗布されていない面をガラス基板上に両面粘着テープ等を用いて貼付けて作製される。先ず、上記調製したITO導電膜形成用塗料を、ガラス基板上に固定された基材上にバーコート法、ダイコート法、ドクターブレード法等の一般的な塗布方法により塗布した後に、乾燥させることにより、ITO塗布膜を形成する。次にこのITO塗布膜が形成された基材をガラス基板から剥離し、基材のうち塗布膜の形成面にPETフィルムやポリイミドフィルム等の別のフィルムを重ね合せ、この状態でロールプレス機にてロール圧力500〜2000kg/cm、送り出し速度0.1〜10cm/分の条件で圧力を加えた後に、別のフィルムを剥離する。これにより基材上にITO導電膜が形成される。
上記方法により得られたITO導電膜の表面抵抗率を以下の方法にて測定するとともに、その高温下における耐久性を評価する。先ず、形成したITO導電膜の測定点を予め定めておき、その測定点における測定値をITO導電膜の表面抵抗率とする。表面抵抗率の測定は、一つのITO導電膜につき、ITO導電膜形成直後の表面抵抗率(初期抵抗率)と、初期抵抗率測定後であって、加湿等の湿度制御を行わない大気中、80℃の温度で240時間保持した後の表面抵抗率(高温処理後の抵抗率)の2回行う。そして、この測定した2つの表面抵抗率から、下記式(1)より、高温処理前後における表面抵抗率の変化率を求める。なお、表面抵抗率の測定には、抵抗測定器(三菱化学アナリティック製のLoresta AP-410))を使用する。また、初期抵抗率において、形成直後のITO導電膜とは、ITO導電膜形成後1時間以内のITO導電膜をいう。
変化率 = [高温処理後の抵抗率/ 初期抵抗率] (1)
先ず、前述した方法により、スズ含有水酸化インジウムの棒状粒子を作製し、この棒状粒子を焼成した後、還元処理することにより、平均長さLが0.1μm、平均直径Dが0.05μmの多結晶ITO粒子を得た。なお、スズ含有水酸化インジウムの棒状粒子の作製に際し、前述した超音波の周波数は34kHz、その付与時間は60分とし、スズ及びインジウムの塩には塩酸塩を用い、アルカリにはアンモニアを使用した。また、得られたケーキを110℃で乾燥した。更に、この棒状粒子の焼成は窒素ガス雰囲気で、800℃、3時間行った。焼成後の還元処理は、水素ガスを3質量%添加した窒素ガス雰囲気で300℃で、2時間行った。
以下の表1のように、シランカップリング剤の種類、シランカップリング剤の濃度又は
水の添加量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして表面修飾ITO粒子、ITO導電膜形成用塗料及びITOフィルムを得た。
先ず、分散媒としてのエタノール39.5gに、表面処理剤としての3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.5gを徐々に滴下して表面処理液を調製した。この表面処理液を30分間撹拌した。次に、前述した方法で得られた多結晶ITO粒子10gを、上記調製した表面処理液に添加し、超音波ホモジェナイザーで30分間分散させることにより、表面修飾ITO粒子及びその分散液(ITO導電膜形成用塗料)を作製した。
表1に示すように、シランカップリング剤の種類を変更したこと以外は、比較例1と同様にして表面修飾ITO粒子、ITO導電膜形成用塗料及びITOフィルムを得た。
実施例1〜9及び比較例1〜3でITOフィルムについて、基材上に形成されたITO導電膜の表面抵抗率及びその高温下における耐久性を評価した。その結果を以下の表1に示す。
Claims (8)
- ITOからなる母粒子をアルコール系溶媒、エーテル系溶媒又はケトン系溶媒に分散させた分散液を調製する工程と、
前記分散液に、シランカップリング剤として3−アミノプロピルトリメトキシシラン又は3−アミノプロピルトリエトキシシランのいずれかが含まれる表面処理液と、水以外の極性溶媒を添加し、混合して混合液を調製する工程と、
前記混合液に水を添加して撹拌することにより、前記混合液中のシランカップリング剤を加水分解させるとともに、前記加水分解させたシランカップリング剤により前記母粒子を表面処理する工程と
を含む表面修飾ITO粒子の製造方法。 - 前記表面処理液中に含まれる前記シランカップリング剤の濃度が0.5〜5g/Lである請求項1記載の表面修飾ITO粒子の製造方法。
- 前記水の添加量が水添加後の前記混合液100%に対し、体積基準で10〜90%である請求項1又は2記載の表面修飾ITO粒子の製造方法。
- 前記母粒子を表面処理する工程の後、表面処理後の前記母粒子をアルコールで洗浄する工程を更に含む請求項1ないし3いずれか1項に記載の表面修飾ITO粒子の製造方法。
- ITOからなる母粒子をアルコール系溶媒、エーテル系溶媒又はケトン系溶媒に分散させた分散液を調製する工程と、
前記分散液に、シランカップリング剤として3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを含む表面処理液を添加し、混合して混合液を調製する工程と、
前記混合液に水を添加して撹拌することにより、前記混合液中のシランカップリング剤を加水分解させるとともに、前記加水分解させたシランカップリング剤により前記母粒子を表面処理する工程と
を含む表面修飾ITO粒子の製造方法。 - 前記表面処理液中に含まれる前記シランカップリング剤の濃度が0.5〜5g/Lである請求項5記載の表面修飾ITO粒子の製造方法。
- 前記水の添加量が水添加後の前記混合液100%に対し、体積基準で10〜30%である請求項5又は6記載の表面修飾ITO粒子の製造方法。
- 前記母粒子を表面処理する工程の後、表面処理後の前記母粒子をアルコールで洗浄する工程を更に含む請求項5ないし7いずれか1項に記載の表面修飾ITO粒子の製造方法。
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