JP6589564B2 - アモルファス積層コアおよびアモルファス積層コアの製造方法 - Google Patents

アモルファス積層コアおよびアモルファス積層コアの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、トランスや誘導加熱装置(電気加熱装置)などの電機機器に使用されるアモルファス積層コアおよびその製造方法に関する。
従来から、地球温暖化防止のために二酸化炭素など、温室効果を有するガスの排出量を削減するニーズは大きく、トランスや誘導加熱装置など、コア(鉄心)を使用する電機機器の高効率化が要求されている。その要求に対して、これまでは、フェライトで製作した磁性コアや、方向性あるいは無方向性のケイ素鋼板などの軟磁性薄材料で製作した積層コアなどが多く用いられてきている。しかしながら、近年、電機機器の更なる高効率化の要求があり、その要求に応えるため、前述したコアを用いる場合よりも高効率の電機機器を実現することができるコアが求められている。このような背景の下、低損失、高透磁率、高強度、耐食性といった磁気特性および機械特性に優れたアモルファス薄板材が注目されている。
アモルファス薄板材をコアとして使用するためには、薄板材から積層コアを製造する方法が必要である。この種の技術として、特許文献1〜3に記載の技術がある。
特許文献1には、アモルファス薄板材から、かしめ用貫通穴を含むコア片の外形を打ち抜くことによりコア片を作製し、作製した複数のコア片を積層し、積層した複数のコア片のかしめ用貫通穴に棒状体を挿入し、挿入した棒状体をプッシュバックすることにより、積層した複数のコア片をかしめることが記載されている。
特許文献2には、アモルファス巻鉄心をモールド成形して金型に入れ、その中に樹脂を注入して真空含浸を施し、金型とアモルファス巻鉄心との隙間に樹脂を多量に含浸させることにより樹脂付鉄心を作製し、その後、樹脂付鉄心を丸刃で扇型状に切断することが記載されている。
特許文献3には、厚さ約25μmのアモルファス薄板材の表裏に厚さ0.5〜10μm程度の絶縁樹脂を塗布し、絶縁樹脂が塗布されたアモルファス薄板材を複数枚積層した積層体をワイヤー放電加工で所定の形状に切断した後、その切断面をエッチング処理することが記載されている。
特許第3869731号公報 特許第5255996号公報 特開2008−198898号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、コア片をかしめる。したがって、積層コアのかしめ部分に応力が過大に集中し、積層コアとしての品質が劣化する虞がある。また、特許文献1に記載の技術では、金型でコア片を打ち抜く。アモルファス金属は薄く、硬く、脆い。このため、アモルファス金属を金型で打ち抜くと、金型の摩耗が激しく、寿命が短くなる。また、コアの形状毎に金型を準備する必要があり、製造コストが非常に高くなる。
また、特許文献2に記載の技術は、モータのコアに特化した技術である。したがって、任意の形状のアモルファス積層コアを製造することは容易ではない。
また、特許文献3に記載の技術では。約25μmのアモルファス薄板材に対して、厚さ0.5〜10μm程度の絶縁樹脂を積層前に塗布する。したがって、積層コアとしての占積率(コア全体に占めるアモルファス薄板材の割合)が98%〜60%となる。よって、積層コアとしての品質が不安定になる虞がある。
また、アモルファス金属は、一般的には、液体急冷法の一種である片ロール法によって製造される。片ロール法は、ノズルから高速で回転するロールに溶融金属を吹き出し、吹き出した溶融金属をロール面との接触面で連続的に急冷することにより、結晶化する前に凝固させることによりのアモルファス薄板材を製造する方法である。片ロール法で製造されるアモルファス薄板材では、ロールに接している面は平滑であるが、ロールに接していない面は急冷皺が残っており、数μmの凹凸が発生する。
また、絶縁樹脂を塗布するには塗布工程が必要であり、素材として高価になることや、コアとした場合に占積率が悪化してしまうことなどから、一般的には、アモルファス薄板材に絶縁樹脂は塗布されていない。
このような数μmの凹凸のあり、且つ、絶縁樹脂が塗布されていないアモルファス薄板材を複数枚積層して使用する場合に、特許文献3に記載の技術のように、コアの切断後にエッチング処理を行うと、コアの切断面のみならず、アモルファス薄板材の凹凸により発生している各層間の隙間にもエッチング処理液が浸透し、アモルファス薄板材の表裏が荒らされる虞がある。その結果、コアとしての性能劣化を招く虞がある。よって、絶縁樹脂が塗布されていないアモルファス薄板材を使用する場合には実質上エッチング処理は困難である。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、絶縁樹脂が塗布されていない薄板状のアモルファス金属から、高品質、且つ、任意の形状のアモルファス積層コアを製造できるようにすることを目的とする。
本発明のアモルファス積層コアは、積層された複数の鉄系アモルファス金属板により構成される積層体であって、厚み部分に切断面を有する積層体と、前記積層体の切断面を含む領域に形成された、厚みが1μm以上の化合物と、前記化合物を覆う領域と、前記積層された複数のアモルファス金属板の間の領域とを含む領域に形成された樹脂と、を有し、前記化合物は、前記アモルファス金属板中の金属を含む絶縁作用を有する化合物であり、鉄を含む水酸化物、鉄を含むフッ化物、鉄を含むりん酸塩、鉄を含むシュウ酸塩、または鉄を含むクロム酸塩であることを特徴とする。
本発明のアモルファス積層コアの製造方法は、アモルファス積層コアの製造方法であって、表面に樹脂が形成されていない複数のアモルファス金属板を製造し、前記複数のアモルファス金属板を積層して積層体を製造する積層体製造工程と、前記積層体を、その厚み部分に切断面が形成されるように、前記アモルファス積層コアの形状に合わせて切断する積層体切断工程と、ヤスリを用いて、あるいは、ワイヤー電極を用いて前記切断面に形成されたバリの少なくとも一部を除去するバリ取り工程と、前記バリ取り工程により前記バリが除去された前記切断面を含む領域に1μm以上の厚みを有する化合物を生成させる化合物生成工程と、前記化合物を覆う領域と、前記積層された複数のアモルファス金属板の間の領域とを含む領域に樹脂を形成する樹脂形成工程と、を有し、前記化合物は、前記アモルファス金属板中の金属を含む絶縁作用を有する化合物であることを特徴とする。
本発明によれば、絶縁樹脂が塗布されていない薄板状のアモルファス金属から、高品質、且つ、任意の形状のアモルファス積層コアを製造することができる。
アモルファス積層コアの製造過程の一例を概念的に示す図である。 積層体切断工程の一例を説明する図である。 バリ取り工程の第1の例を説明する図である。 バリ取り工程の第2の例を説明する図である。 化合物生成工程の一例を説明する図である。 樹脂形成工程の一例を説明する図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
トランスや誘導加熱装置などの電機機器に使用されるコアの形状には様々な形状があり、例えば、C型、E型、I型、T型などがある。以下に説明する本実施形態の方法では、任意の形状のコアを製造することができるが、その一例として、E型コアを製造する場合について説明する。
図1は、アモルファス積層コアの製造過程の一例を概念的に示す図である。図1では、複数の薄板状のアモルファス金属(アモルファス金属板)を積層したものを、その厚み方向に沿って切った場合の断面を示す。尚、図1では、アモルファス積層コアの製造過程を分かりやすくするため、構成の一部を省略・誇張して示す。例えば、図1では、薄板状のアモルファス金属を2枚だけ積層させた状態を示しているが、実際には、より多くの薄板状のアモルファス金属が積層される(図1の各図の下に付している「・・・」はこのことを表している)。以下に、本実施形態のアモルファス積層コアの一例を、その製造方法の一例とともに説明する。
(積層体製造工程)
まず、薄板状のアモルファス金属を製造する。本実施形態では、片ロール法を用いて、薄板状のアモルファス金属を製造する。ただし、薄板状のアモルファス金属を製造する方法は、片ロール法を用いる方法に限定されない。例えば、双ロール法を用いて薄板状のアモルファス金属を製造してもよい。また、本実施形態では、アモフファス金属として、鉄系アモルファス金属(Fe-B、Fe-B-Si、Fe-B-Cなど)を用いる。
本実施形態では、薄板状のアモルファス金属の表面に絶縁樹脂を塗布する工程を行わない。本実施形態では、このように絶縁樹脂が塗布されていない複数のアモルファス薄板材を積層させて積層体1とする。尚、以下の説明では、「薄板状のアモルファス金属」を必要に応じて「アモルファス薄板材」と称する。また、積層とは、相互に隣接する2つのアモルファス薄板材の板面が相互に対向するように、複数のアモルファス薄板材を積み重ねることをいう。
(積層体切断工程)
次に、アモルファス薄板材をアモルファス積層コアの形状に合わせて切断する。
図2は、積層体切断工程の一例を説明する図である。
ワイヤー放電加工用の固定枠(図示せず)に積層体1をはめ込み、積層体1をはめ込んだ状態の固定枠をワイヤー放電加工装置の装置本体内(装置本体は図示せず)にセット(固定)した後、ワイヤー放電加工装置を動作させることにより、積層体1を切断する。
本実施形態では、アモルファス積層コア(積層体1)をボルトで固定するものとする。したがって、このボルトを通すための穴(ボルト固定用の穴)を積層体1に形成する必要がある。コアの切断予定部2の切断を行う前に、ボルト固定用の穴の切断予定部3の切断を、例えば、パイプ電極を用いた放電加工により行い、ボルト固定用の穴を事前に貫通させておく。そして、ボルト固定用の穴にボルトを通して積層体1を固定する。この状態で、ワイヤー放電加工用の固定枠(図示せず)に積層体1をはめ込む。そして、ワイヤー電極4と積層体1との間に数kVの高電圧を印加し(ワイヤー電極4に電気的に接続される電源装置は図示せず)、積層体1とワイヤー電極4との間に放電を発生させ、コアの切断予定部2に沿って積層体1を切断する。これにより、積層体1の厚み部分に切断面が形成される。
切断予定部2、3の切断に関しては、油中または水中のどちらで行ってもよく、切断面に錆びを発生させてはいけない厳格なコアに関しては油中で行うのが好ましい。本実施形態では、以上の手順で積層体1を切断する。
以上のように本実施形態では、コアの切断予定部2の切断方法として、ワイヤー放電加工を採用する。以下に、その理由を説明する。
コアの一般的な切断方法には、機械的切断方法(丸刃による切断、ウォータジェットによる切断など)と、溶融切断方法(レーザービームによる切断、電子ビームによる切断、ワイヤー放電加工による切断など)がある。これらの切断方法の原理、特徴を整理すると以下のようになる。
まず、丸刃による切断について説明する。アモルファス薄板材は、薄く、硬く、脆い。このため、積層された複数のアモルファス薄板材を丸刃により直接切断すると、切断面を直角に切断することは可能であるものの、切断面に割れが入る。その対策として、特許文献2には、アモルファス薄板材を事前にモールド成形することが必要であることが開示されている。しかしながら、前述したように、特許文献2に記載の技術では、任意の形状には切断できない。
次に、ウォータジェットによる切断について説明する。ウォータジェットによる切断方法は、研削液(水と研磨材の混合液)を高圧で被切断物の切断予定部に噴射することにより被切断物を切断する方法である。ウォータジェットによる切断では、任意の形状に被切断物を切断することは可能であるものの、丸刃による切断と同様に切断面に割れが入る。したがって、その対策として、被切断物を事前にモールド成形することが必要である。また、ウォータジェットによる切断では、被切断物の厚さが厚くなる(積層枚数が多くなる)と、研削液が拡散するので切断面が直角にならない。
次に、レーザービームによる切断について説明する。レーザービームによる切断方法は、被切断物の切断予定部にレーザービームを照射することで、被切断物の表面で光エネルギーを熱エネルギーに変換し、その熱エネルギーにより被切断物を溶融して切断する方法である。レーザービームによる切断では、任意の形状に被切断物を切断することは可能であるものの、被切断物の厚さが厚くなる(積層枚数が多くなる)と、熱拡散の影響で切断面が直角にならない。また、レーザービームによる切断では、切断面が部分的または全面的に溶着した状態になる。
次に、電子ビームによる切断について説明する。電子ビームによる切断方法は、真空中で細く絞った電子ビームを被切断物に照射することで、そのエネルギーを熱エネルギーに変換し、その熱エネルギーにより被切断物を局所的に溶融して切断する方法である。電子ビームによる切断では、任意の形状に被切断物を切断することは可能であるものの、被切断物の厚さが厚くなる(積層枚数が多くなる)と、熱拡散の影響で切断面が直角にならない。また、電子ビームによる切断では、切断面が部分的または全面的に溶着した状態になる。
最後に、ワイヤー放電加工による切断について説明する。ワイヤー放電加工による切断は、水中または油中で被切断物とワイヤー電極との間に数kVの高電圧を印加して放電を発生させることにより、被切断物を溶融して切断する方法である。ワイヤー放電加工による切断では、被切断物の厚さが厚くなっても(積層枚数が多くなっても)、切断面を直角にすることが可能である。また、切断面は部分的または全面的に溶着した状態になるが、任意の形状に被切断物を切断することが可能である。
以上のことから、本実施形態では、切断面に溶着した状態は残るが、事前にモールド成形が不要であり、且つ、被切断物の厚さが厚くなっても板面に対して切断面を直角にすることができ、且つ、任意の形状に被切断物の切断が可能なワイヤー放電加工による切断を採用することとした。ただし、積層体1を切断する方法は、ワイヤー放電加工による切断に限定されない。例えば、ウォータジェットによる切断、レーザービームによる切断、または電子ビームによる切断などを採用することができる。これらの方法では、例えば、積層体1の厚みが薄い場合には、切断面を板面に対して直角にすることができるからである。
以上のようにしてコアの切断予定部2に沿って積層体1を切断すると、図1の一番上の図に示すように、積層体1を構成するアモルファス薄板材の切断面には、バリ110a〜110dが形成される。尚、以下の説明では、積層体切断工程により切断された積層体1を必要に応じて積層コアと称する。
(バリ取り工程)
積層体切断工程の後、積層コア(アモルファス薄板材)の切断面に形成されたバリ110a〜110dの少なくとも一部を除去する。
図3は、バリ取り工程の第1の例を説明する図である。尚、図3〜図6では、表記の都合上、ボルト固定用の穴に通されているボルトの図示を省略しているが、積層コアは、このボルトにより固定された状態のままとなっている。
図3に示す例では、ヤスリ6を用いて、積層コア5の切断面に形成されたバリ110a〜110dを除去する。ヤスリ6を回転させながら積層コア5の切断面に沿って移動させることにより、積層コア5の切断面に形成されたバリ110a〜110dを除去する。尚、積層コア5の切断面に沿ってヤスリ6を移動させる装置は、精密に位置を制御ができる装置であればどのような装置であってもよい。
図4は、バリ取り工程の第2の例を説明する図である。
図4に示す例では、ワイヤー電極4を用いて、積層コア5の切断面に形成されたバリ110a〜110dを除去する。例えば、積層体切断工程で用いるワイヤー放電加工装置と同じ装置を用いてバリ取り工程を実行することができる。ただし、積層体切断工程における切断時よりも、ワイヤー電極4に印加する電圧を抑制して放電現象を抑制しつつ、積層コア5とワイヤー電極4との間の隙間を適切に保ち、積層コア5の切断面(の溶着部)に対して放電処理を行い、バリ110a〜110dを除去する。このような放電処理の回数を多くすると、バリ取り効果が大きくなる。放電処理の回数は、例えば、事前に実験を行い確認し決定するとよい。
以上のようにして積層コア5の切断面に形成されたバリ110a〜110dを除去すると、図1の上から2番目の図に示すように、積層コア5の切断面に形成されたバリ110a〜110dが除去される。ただし、この図に示すように、バリ取り工程により、バリを完全に除去することは容易ではなく、バリ110a〜110d(の一部)が残った状態になる。
(化合物生成工程)
バリ取り工程の後、積層コア5切断面を含む領域に、例えばFe(鉄)を含む酸化物を生成させる。
図5は、化合物生成工程の一例を説明する図である。
前述したようにバリ取り工程によりバリ110a〜110dを完全に除去することは容易ではないため、バリ取り工程後の積層コア5の表裏抵抗(上面と底面との間の電気抵抗)を電気抵抗測定テスターで測定すると1Ω以下になる場合がある。この状態で積層コア5に磁界を印加すると、各層間(相互に隣接しているアモルファス薄板材の間)で点接触しているバリ110a〜110dの部分を経由し、渦電流の閉ループが形成され、積層コア5の渦電流損が大きくなる。
以上の知見の下、本発明者らは、積層コア5の表裏抵抗を大きくすることが必要であることに想到した。具体的には、各層間で点接触しているバリの部分の接触抵抗を大きくして、バリの部分を経由して流れる渦電流を小さくし、積層コア5の損失を減少させる必要があることを見出した。
そして、種々の実験を行い、積層コア5の切断面に、Fe(鉄)を含む酸化物を付着させたところ、積層コア5の表裏抵抗を数Ω〜数十Ωまで増大させることができ、積層コア5の渦電流損の抑制に成功した。これは、積層コア5の端面に付着させたFeを含む酸化物が絶縁体であるため、このFeを含む酸化物が、前述したバリ110a〜110dの部分の接触抵抗の上昇に寄与したためと考えられる。
このことから、Feを含む酸化物だけでなく、Feを含む絶縁作用を有する化合物につき、その効果を検討したところ、Feを含む水酸化物、Feを含むフッ化物、Feを含むりん酸塩、Feを含むシュウ酸塩、およびFeを含むクロム酸塩にて同様の効果が得られることを見出した。
以下に、これらの化合物を積層コア5の端面に付着させる方法の一例を説明する。
例えば、所定の温度および湿度(例えば、温度65℃、湿度93%RH)に設定した恒温恒湿装置7の中に、バリ取り工程によりバリ110a〜110dが除去された積層コア5を置き、この状態を2時間保持することにより、Feを含む水酸化物(FeOOH)を積層コア5の端面に付着させることができる。また、大気中あるいは水性ガスを含む加熱炉内に、バリ取り工程によりバリ110a〜110dが除去された積層コア5を置き、加熱炉内で積層コア5を150〜450℃に加熱することにより、Feを含む酸化物(Fe3O4)を積層コア5の端面に付着させることができる。Feを含む水酸化物は、Fe(OH)2あるいはFe(OH)3でもよい。また、Feを含む酸化物は、FeOあるいはFe2O3でもよい。すなわち、Feを含む酸化物あるいはFeを含む水酸化物であれば、組成を限定するものではない。
前述したように、積層コア5の端面に付着させる物質は、Feを含む酸化物、Feを含む水酸化物以外にも、Feを含むフッ化物、Feを含むりん酸塩、Feを含むシュウ酸塩、またはFeを含むクロム酸塩であってもよい。これらは、積層コア5の端面のFeと反応して析出する金属塩であり、積層コア5の端面を均一且つ緻密に被覆し、さらに、密着性がよいため、その後に付着させる樹脂との密着性もよい。
フッ化物を積層コア5の端面に付着させる場合には、例えば、フッ素と金属(主にTiやZr)とを含む酸性水溶液を、りん酸塩を積層コア5の端面に付着させる場合には、例えば、りん酸と金属(主にZnやNi、Mn、Ca)とを含む酸性水溶液を、シュウ酸塩を積層コア5の端面に付着させる場合には、例えば、シュウ酸とフッ化アンモニウムとを含む酸性水溶液を、クロム酸塩を積層コア5の端面に付着させる場合には、例えば、クロム酸水溶液を、それぞれ用意する。
そして、用意した水溶液中に積層コア5を浸漬させる。また、用意した水溶液を積層コア5の端面にスプレー等により接液してもよい。その後、乾燥および水洗を行い、積層コア5を乾燥させる。乾燥温度は40℃以上が好ましい。
また、積層コア5の端面に付着させる物質の厚みは1μm以上であるのが好ましい。この厚みが薄いと、バリの部分の接触抵抗を大きくすることができず、積層コア5の渦電流損を十分に低減させることができない。一方、積層コア5の端面に付着させる物質の厚みの上限値は特に限定されないが、積層コア5の端面に付着させる物質の厚みがある程度厚くなると、それ以上厚くしても、積層コア5の渦電流損の低減効果が飽和し、積層コア5の鉄損は大きく低減しない。したがって、積層コア5の端面に付着させる物質の厚みを厚くすることは、アモルファス積層コアの製造面から考えると非効率である。このような観点から、例えば、積層コア5の端面に付着させる物質の厚みを40μm以下にすることができる。
以上のようにして、図1の上から3番目の図に示すように、積層コア5の端面には、前述した物質(Feを含む酸化物、Feを含む水酸化物、Feを含むフッ化物、Feを含むりん酸塩、Feを含むシュウ酸塩、およびFeを含むクロム酸塩のうちの1種)120a、120bが、Feを含む絶縁作用を有する化合物として付着する。
(樹脂形成工程)
化合物生成工程により、Feを含む絶縁作用を有する化合物120a、120bを積層コア5の端面に付着させた後、積層コア5に樹脂を含浸させる。
図6は、樹脂形成工程の一例を説明する図である。本実施形態では、真空含浸を行う。図6に示す例では、まず、積層コア5の全体が樹脂9に浸るように積層コア5と樹脂9をSUSタンク8に入れる。そして、真空ポンプ10でSUSタンク(ステンレス製のタンク)8内の空気を吸引し、その状態を、樹脂9から発生する気泡がなくなるまで継続する。これにより、積層コア5の端面の領域と、積層コア5を構成するアモルファス薄板材の表面および裏面の領域と、相互に隣接する2つアモルファス薄板材の間の領域に、樹脂9が形成される。尚、所定の真空度になるまで、SUSタンク8内の空気を吸引してもよい。
以上のようにして真空含浸を行うことにより、積層コア5に樹脂9を付着させる目的は以下の3つである。
絶縁樹脂が塗布されていないアモルファス薄板材を使用しているので、ワイヤー放電加工により積層体1を切断しただけでは、アモルファス薄板材が1枚1枚バラバラの状態である。このような観点から、真空含浸を行う第1の目的は、各層間に樹脂を浸透させ、各アモルファス薄板材を接着することで積層コアとして成形することである。
絶縁樹脂が塗布されていないアモルファス薄板材を使用した場合でも、各アモルファス薄板材の表面には、自然酸化膜(を含む絶縁膜)が存在する。このため磁界強度が小さい領域ではコアとしての性能は発揮するが、磁界強度を大きくしていくとコアが絶縁破壊し、コアの損失が急激に増加する。このような観点から、真空含浸を行う第2の目的は、磁界強度を大きくした場合のコアの絶縁破壊を防止することである。
化合物生成工程において、例えば、温度65℃、湿度93%RHに設定した恒温恒湿装置7の中に、バリ取り工程によりバリ110a〜110dが除去された積層コア5を置き、この状態を2時間保持することにより、積層コア5の切断面にFeを含む水酸化物(FeOOH)を付着させる場合においては、大気中に積層コア5を放置しておくと水酸化物の付着が進展する。このような観点から、真空含浸を行う第3の目的は、水酸化物の付着の進展を阻止することである。
真空含浸時の温度は、常温でも、175℃程度の高い温度でもよい。
また、真空含浸に使用する樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂など使用することができ、使用するコアの耐熱温度やコアを使用する電機機器の絶縁階級によって使い分けるとよい。
以上のようにして、図1の一番下の図に示すように、Feを含む絶縁作用を有する化合物120a、120bを覆うように積層コア5の表面に樹脂130aが形成されると共に、積層コア5を構成するアモルファス薄板材の間の領域に樹脂130b、130cが形成される。
そして、ボルト固定用の穴からボルトを外す。
以上のようにしてアモルファス積層コアが得られる。
[実施例]
次に、実施例を説明する。
<実施例1>
本実施例では、バリ取り工程および化合物生成工程の有無が、アモルファス積層コアの品質に与える影響を調査した。
(薄板材製造工程)
板幅170mm×長さ500mm×厚さ0.028mmの絶縁樹脂が塗布されていないアモルファス薄板材を700枚準備した。アモルファス薄板材は片ロール法で製造した。これら700枚のアモルファス薄板材を積層させて、厚さが19.6mmの積層体1を構成した。
(積層体切断工程)
積層体1に対してコアの切断予定部とボルト固定用の穴の切断予定部とを設定し、ボルト固定用の穴の切断予定部の切断を行うことにより、ボルト固定用の穴を形成した。尚、ボルト固定用の穴の切断予定部は、コアの切断予定部よりも内側に設定される。このボルト固定用の穴にボルトを通して積層体1を固定した。この状態で、ワイヤー放電加工用の固定枠に積層体1をはめ込み、積層体1をはめ込んだ状態の固定枠をワイヤー放電加工装置の装置本体内にセット(固定)した。そして、ワイヤー放電加工により、外径150mm、内径90mmのリング状に積層体1を切断し、積層コアを形成した。ワイヤー放電加工による切断は油中で行った。
(バリ取り工程)
ボルト固定用の穴に通したボルトによりコアを固定したままの状態で、ヤスリを用いて積層コアの切断面を研磨することにより、積層コアの切断面に形成されたバリを除去した。
(化合物生成工程)
バリを除去した積層コアを、湿度93%RH、温度65℃に設定した恒温恒湿装置内に2時間曝露した。これにより、積層コアの切断面にFeを含む水酸化物(FeOOH)を付着させた。Feを含む水酸化物(FeOOH)の厚みは20μmであった。
ここで、Feを含む水酸化物の厚みは、全ての測定が終了した後、以下のようにして測定した。アモルファス積層コアを、アモルファス薄板材の厚み方向に沿って切断して、エポキシ樹脂に埋め込み硬化させた後、研磨を行い、観察断面を得た。そして、埋め込み樹脂を走査型電子顕微鏡に入れ、加速電圧15kVにて、観察断面に形成されているFeを含む水酸化物の厚みを観察した。任意の5か所の厚みの平均値を、Feを含む水酸化物の厚みとした。
(樹脂形成工程)
積層コアの切断面にFeを含む水酸化物を生成させた後、常温で真空含浸を行い、積層コアの表面(積層コア5の切断面、上面および底面)と各層間(アモルファス薄板材の間)にポリエステル樹脂を付着させた。
[[発明例]]
発明例では、以上の薄板材製造工程、積層体切断工程、バリ取り工程、化合物生成工程、および樹脂形成工程の全てを行った。
その結果、真空含浸後の積層コア(アモルファス積層コア)厚さは20.1mmであり占積率は約97%と高い数値を得た。また、アモルファス積層コアの表裏抵抗は、電気抵抗測定テスターで測定した結果、約15Ωであった。また、周波数10kHz、磁束密度0.3Tの条件でアモルファス積層コアを励磁し、アモルファス積層コアの損失(鉄損)をパワーメーターで測定した結果、アモルファス積層コアの損失(鉄損)は、約100W/kgであった。
[[比較例1]]
本比較例では、以上の薄板材製造工程、積層体切断工程、バリ取り工程、化合物生成工程、および樹脂形成工程のうち、薄板材製造工程、積層体切断工程、バリ取り工程、および樹脂形成工程を行い、化合物生成工程を行わなかった。すなわち、本比較例では、化合物生成工程を行わないこと以外は、発明例と同一の条件でアモルファス積層コアを製造した。
その結果、真空含浸後のコア(アモルファス積層コア)の厚さは20.1mmであり占積率は約97%と高い数値を得た。また、アモルファス積層コアの表裏抵抗は、電気抵抗測定テスターで測定した結果、約1.5Ωであり、発明例に比べて小さな値になった。また、周波数10kHz、磁束密度0.3Tの条件でアモルファス積層コアを励磁し、アモルファス積層コアの損失(鉄損)をパワーメーターで測定した結果、アモルファス積層コアの損失(鉄損)は、約150W/kgであり、発明例に比べて大きな値になった。
[[比較例2]]
本比較例では、以上の薄板材製造工程、積層体切断工程、バリ取り工程、化合物生成工程、および樹脂形成工程のうち、薄板材製造工程、積層体切断工程、化合物生成工程、および樹脂形成工程を行い、バリ取り工程を行わなかった。すなわち、本比較例では、バリ取り工程を行わないこと以外は、発明例と同一の条件でアモルファス積層コアを製造した。
その結果、真空含浸後のコア(アモルファス積層コア)の厚さは20.1mmであり占積率は約97%と高い数値を得た。また、アモルファス積層コアの表裏抵抗は、電気抵抗測定テスターで測定した結果、約0.2Ωであり、発明例および比較例1に比べて小さな値になった。また、周波数10kHz、磁束密度0.3Tの条件でアモルファス積層コアを励磁し、アモルファス積層コアの損失(鉄損)をパワーメーターで測定した結果、アモルファス積層コアの損失(鉄損)は、約240W/kgであり、発明例および比較例1に比べて大きな値になった。
以上のように、発明例では、全ての処理工程を実施し、比較例1では、化合物生成工程を省略し、比較例2では、バリ取り工程を省略した。各々の結果を比較すると、化合物生成工程を省略した比較例1とバリ取り工程を省略した比較例2では、全ての処理工程を実施した発明例に比べ、アモルファス積層コアの品質が劣る結果となった(すなわち、表裏抵抗が小さくなり、鉄損が大きくなった)。以上の結果から、コアの切断面のバリを取ることと、その後、コアの切断面に酸化物等(Feを含む絶縁作用を有する化合物)を付着させることが重要であることが分かる。
[実施例2]
本実施例では、化合物生成工程でコアの端面に付着される物質の厚みおよび種類の違いが、アモルファス積層コアの品質に与える影響を調査した。本実施例では、何れも、薄板材製造工程、積層体切断工程、バリ取り工程、および樹脂形成工程については、実施例1で説明したのと同じ条件で実施した。すなわち、本実施例では、化合物生成工程の条件が実施例1と異なる。
まず、Feを含む酸化物の厚みを異ならせたアモルファス積層コアを製造した。
化合物生成工程では、バリを除去した積層コアを、湿度93%RH、温度65℃に設定した恒温恒湿装置内に曝露し、積層コアの端面にFeを含む酸化物を形成させた。恒温恒湿装置内における積層コアの曝露時間を適宜変更することで、Feを含む酸化物の厚みを変化させた。その後、恒温恒湿装置からコアを取り出し、130℃に設定した乾燥炉内でコアを2時間乾燥した。コアの端面に生成された酸化物は、Fe2O3とFe3O4の混合物であることを確認した。
この他、Feを含む酸化物を形成しないで(化合物生成工程を実施せずに)アモルファス積層コアを製造した。前述したように、何れの場合も、薄板材製造工程、積層体切断工程、バリ取り工程、および樹脂形成工程については、実施例1で説明したのと同じ条件で実施した。すなわち、化合物生成工程の条件、有無以外は、何れも同一の条件でアモルファス積層コアを製造した。表1に、それぞれのアモルファス積層コアにおける付着物(Feを含む酸化物)の種類・組成式、(付着物の)厚み、表裏抵抗、および鉄損を示す。尚、付着物の厚みの測定方法は、実施例1で説明した方法と同じである。
Figure 0006589564
表1において、表裏抵抗は、前述したように、アモルファス積層コアの上面と底面との間の抵抗である。ここでは、電気抵抗測定テスターによって表裏抵抗を測定した。また、実施例1と同様に、周波数10kHz、磁束密度0.3Tの条件でアモルファス積層コアを励磁し、アモルファス積層コアの損失(鉄損)をパワーメーターで測定した。
ここでは、実用上の観点から、表裏抵抗が2Ωを上回り、且つ、鉄損が120W/kgを下回る場合を良(発明例)とした。表1に示すように、Feを含む絶縁作用を有する化合物(付着物)の厚みが1μmを下回ると、表裏抵抗が低下し、鉄損が大きくなることが分かる。
次に、化合物生成工程において、Feを含む絶縁作用を有する化合物として、Feを含む水酸化物、Feを含むフッ化物、Feを含むりん酸塩、Feを含むシュウ酸塩、およびFeを含むクロム酸塩のそれぞれを用いてアモルファス積層コアを製造した。
以下に、それぞれの化合物の生成方法を説明する。
・Feを含む水酸化物
バリを除去した積層コアを、湿度93%RH、温度65℃に設定した恒温恒湿装置内に1時間曝露し、積層コアの端面にFeを含む水酸化物を形成させた。その後、恒温恒湿装置から積層コアを取り出し、積層コアの端面に生成された水酸化物は、水酸化鉄であることを確認した。
・Feを含むフッ化物
Tiを2質量%含むTiフッ化物とフッ酸を含有する50℃の水溶液の浸漬槽に積層コアを浸漬し、この状態を3分間保持した後、積層コアを浸漬槽から取り出した。浸漬槽から取り出した積層コアをイオン交換水で水洗し、50℃で乾燥させた。積層コアの端面には、Feを含むフッ化物を有する化合物が生成されていたことを確認した。
・Feを含むりん酸塩
第一リン酸亜鉛を2質量%含むりん酸塩処理液を60℃に加温したものを、積層コア全体にスプレーにより付着させた。その後、水道水で1分間、イオン交換水で1分間、積層コアを水洗し、50℃で乾燥させた。積層コアの端面には、リン酸亜鉛鉄が生成されていたことを確認した。
・Feを含むシュウ酸塩
2質量%のフッ化アンモニウムと5質量%のシュウ酸四水和物を含む水溶液を40℃に加温し、この加温した水溶液の浸漬槽に積層コアを浸漬し、この状態を2分間保持した後、積層コアを浸漬槽から取り出した。浸漬槽から取り出した積層コアをイオン交換水で水洗し、50℃で乾燥させた。積層コアの端面には、シュウ酸鉄を含む化合物が生成されていたことを確認した。
・Feを含むクロム酸塩
1.2質量%のクロム酸ナトリウム、3.5質量%の75%りん酸、0.3質量%の酸性フッ化ナトリウムを含む水溶液を40℃に加温し、この加温した水溶液の浸漬槽に積層コアを浸漬し、この状態を2分間保持した後、積層コアを浸漬槽から取り出した。浸漬槽から取り出した積層コアを、水道水で1分間、イオン交換水で1分間水洗し、50℃で乾燥させた。積層コアの端面には、Feを含むクロメート被膜が生成されていたことを確認した。
表2に、それぞれのアモルファス積層コアにおける付着物(Feを含む絶縁作用を有する化合物)の種類・組成式、(付着物の)厚み、表裏抵抗、および鉄損を示す。尚、付着物の厚みの測定方法は、実施例1で説明した方法と同じである。
Figure 0006589564
表2に示すように、Feを含む水酸化物、Feを含むフッ化物、Feを含むりん酸塩、Feを含むシュウ酸塩、またはFeを含むクロム酸塩を、Feを含む酸化物に代えて用いても、Feを含む酸化物を用いた場合と同様に、表裏抵抗が2Ωを上回り、且つ、鉄損が120W/kgを下回るアモルファス積層コアを得ることができることが分かる。
(まとめ)
従来、絶縁樹脂が塗布されたアモルファス薄板材を使用する場合には、背景技術で説明した特許文献3に記載の技術のように、コアの切断面の溶着したバリをエッチング処理により除去する方法がある。しかしながら、絶縁樹脂が塗布されていない複数のアモルファス薄板材を積層してワイヤー放電加工による切断を行うと、絶縁被膜が塗布されている場合に比べ、コアの切断面が更に溶着しやすくなり、また、背景技術で説明したようにエッチング処理を行うことが容易ではない。一方で、絶縁樹脂が塗布されていないアモルファス薄板材であっても、厳密に言えば自然酸化膜程度の絶縁膜は存在する。このため、磁界強度の低い領域では、アモルファス薄板材を巻回して製造した巻鉄心として使用することが可能であり、これまでは、巻鉄心による適用が主流となっていた。しかしながら、絶縁樹脂が塗布されていないアモルファス薄板材を巻回さずに積層させたコアとして、高品質、且つ、任意の形状のアモルファス積層コアを製造することができなかった。
そこで、本実施形態では、まず、絶縁樹脂が塗布されていない複数のアモルファス薄板材を積層させて積層体1を構成する。この積層体1を切断して積層コア5を形成し、この切断により積層コア5に形成されたバリ110a〜110dの少なくとも一部を除去した後、積層コア5の切断面に、Feを含む絶縁作用を有する化合物120a、120bを生成させる。その後、Feを含む絶縁作用を有する化合物120a、120bを覆うように、積層コア5の表面および層間に樹脂130a〜130cを形成する。したがって、絶縁樹脂が塗布されていないアモルファス薄板材から、高品質、且つ、任意の形状のアモルファス積層コアを製造することができる。よって、トランス、誘導加熱装置、回転電機など、コアを有する電機機器に本実施形態のアモルファス積層コアを適用すれば、高効率、且つ、低コストの電機機器を製造することが可能となる。
また、本実施形態では、複数のアモルファス薄板材を積層させた積層体1を切断する。したがって、金型で1枚ごとにアモルファス薄板材をコアの形状に打ち抜き、この打ち抜き後のアモルファス薄板材を積層する場合に比べ、アモルファス積層コアの品質を向上させることができる。
すなわち、金型で1枚ごとにアモルファス薄板材を打ち抜く場合には、打ち抜き後の複数のアモルファス薄板材を、それらの端部を揃えて積層することは容易ではない。また、アモルファス金属は薄く、硬く、脆いため、金型の刃部の摩耗が発生する。したがって、切断に重要な上刃と下刃とのクリアランスの管理が容易ではなく、切断回数が増加するとともにアモルファス薄板材の切断面にバリが徐々に増加していく。このため、アモルファス積層コアの品質が不安定になる。また、アモルファス積層コアの形状を変更する毎に、金型も変更する必要があり多額の費用も必要である。これに対し、本実施形態では、複数のアモルファス薄板材を積層させた積層体1をコアの形状に切断するので、このような問題を解決することができる。
本実施形態では、アモルファス金属として、鉄系アモルファス金属を用いる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、アモルファス金属は鉄系に限定されない。例えば、コバルト系アモルファス金属(Co-B、Co-Fe-Si-Bなど)を用いてもよい。尚、鉄系アモルファス金属以外のアモルファス金属を用いる場合には、Feを含む絶縁作用を有する化合物の代わりに、アモルファス金属中の金属を含む絶縁作用を有する化合物がコアの切断面に生成されるようにする。
尚、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
1:積層体、2:コアの切断予定部、3:ボルト固定用の穴の切断予定部、4:ワイヤー電極、5:積層コア、6:ヤスリ、7:恒温恒湿装置、8:SUSタンク、9:樹脂、10:真空ポンプ、110a〜110d:バリ、120a〜120b:Feを含む絶縁作用を有する化合物、130a〜130c:樹脂

Claims (7)

  1. 積層された複数の鉄系アモルファス金属板により構成される積層体であって、厚み部分に切断面を有する積層体と、
    前記積層体の切断面を含む領域に形成された、厚みが1μm以上の化合物と、
    前記化合物を覆う領域と、前記積層された複数のアモルファス金属板の間の領域とを含む領域に形成された樹脂と、を有し、
    前記化合物は、前記アモルファス金属板中の金属を含む絶縁作用を有する化合物であり、鉄を含む水酸化物、鉄を含むフッ化物、鉄を含むりん酸塩、鉄を含むシュウ酸塩、または鉄を含むクロム酸塩であることを特徴とするアモルファス積層コア。
  2. アモルファス積層コアの製造方法であって、
    表面に樹脂が形成されていない複数のアモルファス金属板を製造し、前記複数のアモルファス金属板を積層して積層体を製造する積層体製造工程と、
    前記積層体を、その厚み部分に切断面が形成されるように、前記アモルファス積層コアの形状に合わせて切断する積層体切断工程と、
    ヤスリを用いて、あるいは、ワイヤー電極を用いて前記切断面に形成されたバリの少なくとも一部を除去するバリ取り工程と、
    前記バリ取り工程により前記バリが除去された前記切断面を含む領域に1μm以上の厚みを有する化合物を生成させる化合物生成工程と、
    前記化合物を覆う領域と、前記積層された複数のアモルファス金属板の間の領域とを含む領域に樹脂を形成する樹脂形成工程と、を有し、
    前記化合物は、前記アモルファス金属板中の金属を含む絶縁作用を有する化合物であることを特徴とするアモルファス積層コアの製造方法。
  3. 前記アモルファス金属板は、鉄系アモルファス金属板であることを特徴とする請求項に記載のアモルファス積層コアの製造方法。
  4. 前記化合物生成工程は、前記バリ取り工程により前記バリが除去された前記切断面を含む領域に、鉄を含む酸化物、鉄を含む水酸化物、鉄を含むフッ化物、鉄を含むりん酸塩、鉄を含むシュウ酸塩、または鉄を含むクロム酸塩を、前記化合物として生成させることを特徴とする請求項に記載のアモルファス積層コアの製造方法。
  5. 前記樹脂形成工程は、真空含浸により、前記化合物を覆う領域と、前記積層された複数のアモルファス金属板の間の領域とを含む領域に樹脂を形成することを特徴とする請求項の何れか1項に記載のアモルファス積層コアの製造方法。
  6. 前記積層体製造工程は、片ロール法を用いて、前記複数のアモルファス金属板を製造することを特徴とする請求項の何れか1項に記載のアモルファス積層コアの製造方法。
  7. 前記積層体切断工程は、ワイヤー放電加工により、前記積層体を切断することを特徴とする請求項の何れか1項に記載のアモルファス積層コアの製造方法。
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