以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯機の側面断面図である。ドラム式洗濯機本体1の内側には、有底円筒状の水槽2が収容されている。水槽2は、バネ24とダンパ19によって弾性的に支持されている。水槽2の内部には、有底円筒状のドラム3が収容されている。ドラム3は、ドラム式洗濯機本体1正面側に水槽2の開口部2aを通してドラム3内に通じる開口部3bが設けられている。ドラム3は、ドラム軸3aまわりに回転可能に回転軸14により支持され、ドラム軸3aは水平に構成されている。なお、ドラム軸3aは、正面側から底面側に向けて下向きに傾斜して配置されていてもよい。水槽2は、開口部2aを正面側とし、ドラム軸3aに合わせて水平もしくは傾斜して配置される。
また、図1に示すように、ドラム式洗濯機本体1の内部で水槽2の下方には、ドラム3を回転駆動するための駆動モータ12が取り付けられている。駆動モータ12の回転駆動は、モータプーリ5からベルト6を介してドラム3の回転軸14に設けられたドラムプーリ4に伝達される。これにより、駆動モータ12がドラム3を回転駆動する。
ドラム3の内部には、洗濯物18を持ち上げて落とすことができるバッフル7が設けられている。ドラム3が回転駆動されることにより、バッフル7によって持ち上げられた洗濯物18は、ドラム3の上部から水面等に叩きつけられ、叩き洗いの機械力によって洗浄がなされる。さらに、ドラム3には、複数の透孔20が設けられている。透孔20を介して水槽2からドラム3内に通水および通気が行なわれる。
また、ドラム式洗濯機本体1の正面側には、開口部3bに対応して扉21が開閉自在に設けられている。水槽2の開口部2aは、その口縁に環状のシール材(図示せず)が装着されている。シール材の前面側は、扉21の背面側に当接して密閉している。これにより、上下左右、前後に揺動する水槽2の開口部2aが動いても、シール材が変形し、扉21の背面側へ押圧することにより密閉性が維持されている。
ドラム3の開口部3b側には、ボールバランサ8が設けられている。図2(a)は、本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯機のボールバランサ8の正面図、図2(b)は、ボールバランサ8の内周面を示す図、図2(c)は、ボールバランサ8の断面図である。
ボールバランサ8は、ドラム3の開口部3b側に配置された環状容器81と、環状容器
81内を移動可能な金属からなる複数の転動体9と、環状容器81内に貯留される粘性流体23とを有している。リング状となる環状容器81は、ドラム軸3aと軸線を一致するように設置されている。
環状容器81の内部空間82には、転動体9と粘性流体23を収納する収納部82aが設けられ、収納部82a内周面8aから内周方向に向かって膨出した空間となる膨出部82bを形成している。収納部82aと膨出部82bは連通しており、粘性流体23が収納部82aと膨出部82bとの間を移動可能となっている。膨出部82bには、膨出部82bの内周面から収納部82a側に向かって突起体11を形成している。突起体11は、膨出部82b底面から収納部82a内周面8aに突出しない高さに形成している。また、膨出部82bは、収納部82aの一方の内側面から転動体9の半径より狭い範囲に形成されている。これにより、突起体11が転動体9と接触しない構成としている。
本実施の形態1では、粘性流体23は、低粘性で温度変化による粘性変化が小さく、引火性の無い塩化カルシウム水溶液を用いている。より詳細には、4cSt程度の塩化カルシウム水溶液であって、マイナス30℃でも凍らないものを用いている。なお、他の粘性のある流体で、低粘性で温度変化が小さく、引火性の無いものであれば同様の効果が得られることから、塩化カルシウム水溶液の他に、水、塩水、シリコンオイル等の油類が使用可能であるが、これらに限定するものではない。
転動体9は、鋼球の表面にゴムを均一にコーティングした略球状のボール状のものを用いているが、転動する形状であれば、略球状以外に、例えば、略円柱状など、他の形状でもよい。
図2(b)は、環状容器81の下部の内周面8aを示した図である。図2(b)左側の図は上面図、右側の図は断面図である。環状容器81には、ドラム3のドラム軸3a方向において、例えば、ドラム3の奥側をドラム軸背面側B、手前をドラム軸正面側Aとした場合、膨出部82bは、ドラム軸正面側Aにのみ設けている。突起体11は、膨出部82bの全幅にわたって形成されている。
次に、図4は、本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯機の環状容器81と環状容器81内の転動体9と粘性流体23とを近似的に短い区間の距離の直線として表したものを示している。粘性流体23は、突起体11により進行方向に掻きあげられながら推進力110を発生させ、その推進力110が抗力111となって転動体9を進行方向へ移動させる。
抗力111は、環状容器81と、転動体9と、粘性流体23と、粘性流体23の流速とによって決定され、下記の近似式(1)によって表現される。
Dp=Cd・S・(ρ・V2)/2・・・・・(1)
Dpは抗力111の値、Cdは粘性流体23の粘性係数、Sは転動体9の投影面積、ρは摩擦抵抗、Vは流速である。抗力111の値Dpが流速Vの二乗に比例していることから抗力111の大きさは、粘性流体23の流速により決まり、流速は転動体9と環状容器81の隙間および粘性流体23の粘性により決まる。
本実施の形態では、突起体11は、三角形状として等間隔に配置しているが、その形状はこれに限定するものではなく、転動体9への抗力が発生するものであれば他の構成とすることが可能である。
次に、図3により制御部13の詳細を説明する。図3は、本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯機の制御ブロック図である。制御部13は、駆動モータ12の駆動の指示
はもちろん、振動検知部10など各種センサ出力を含め、すべての入出力制御をタイマーで管理できるシステムを具備している。制御部13は、駆動モータ12等を制御し、洗い、すすぎ、脱水等の工程を制御する。
振動検知部10は、洗い、すすぎ、脱水などの一連の工程における水槽2の振動を検知するもので、水槽2の正面側の上部に設けられている。なお、振動検知部10の取り付け位置は、水槽2の背面側の上部でも同様な効果が得られ、また、振動検知部10は、ドラム3や駆動モータ12等の振動系の振動を検知することができる位置であれば、どこに取り付けられていてもよい。
振動検知部10は、洗い、すすぎ、脱水などの一連の工程における水槽2の振動を検知し、各工程における振動値を制御部13が分析した後、駆動モータ12に対して指令を出すことで、最適なモータ制御を行っている。振動検知部10は、少なくとも一つの加速度センサを有し、水槽2の上下方向、左右方向、前後方向のうちの少なくとも一つの方向の振動を検知している。なお、加速度センサとしては、半導体加速度センサ、圧電型加速度センサなどのいずれでも良く、さらに多軸方向(2軸方向もしくは3軸方向)の加速度センサでも良い。
電流検知部101は、駆動モータ12に印加する電流の値を検知する。制御部13は、電流検知部101で検知した電流に基づき、環状容器81内の転動体9の移動状態を検知して判断する。制御部13は、ハードウェア構成として、CPU、メモリ、ドライバ回路などを具備した電気回路であり、制御部13内のメモリに記憶させたプログラムに従って、駆動モータ12などの周辺機器を動かしている。
判定部131は、アンバランス状態に応じた脱水起動方法を判定する。判定部131は、駆動モータ12の回転数および電流検知部101の電流値変動からドラム3の回転位置を検出する回転位置検知部103と、衣類量を電流検知部101の値から判断する衣類量判定部102と、ドラム3の回転が一定回転数以下の時に、アンバランス位置を算出するアンバランス位置算出手段30と、振動検知部10の振動値から洗濯物18によるアンバランス量を検知するアンバランス量算出手段31とから構成される。アンバランス位置算出手段30は、ドラム3内の洗濯物18によるアンバランス状態を、電流検知部101からドラム3の回転方向の位置と、振動検知部10の振動値からドラム3の奥行き方向の位置を判定する。アンバランス位置算出手段30がアンバランス位置を算出するドラム3の回転数が一定回転数以下の時とは、例えば、ボールバランサ8内の転動体9がドラム3と共回りしない回転数であり、本実施の形態では、120rpmとしている。
以上のように構成されたドラム式洗濯機のボールバランサ8について、以下、その動作を図1〜図5に基づいて説明する。
図1、図2および図3において、ドラム式洗濯機が排水後に脱水を行う場合、制御部13は、駆動モータ12に駆動電圧を印加させる。制御部13は、駆動モータ12を低速回転から高速回転に移行させ、ドラム3の回転速度を徐々に上昇させる。本実施の形態では、駆動モータ12は、永久磁石同期モータを用いており、駆動モータ12のロータ位置を検知する。これにより、駆動モータ12の脱調を防止することで、安全、かつ高速に回転速度を上昇させることができる。
次に、本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯機のボールバランサ8の動作を説明する。ドラム3が低速で回転している状態では、粘性流体23は、摩擦力と遠心力により回転方向側に移動して偏った状態となるが、外周側に移動していない。図4に示すように、突起体11が隣接する突起体11間の粘性流体23を進行方向に押し上げることで、粘
性流体23の流速Vを加速することができる。その結果、粘性流体23には、加速された流速Vにより、抗力111が近似式(1)に示したDp値となって発生し、転動体9は、抗力111に押されることで進行方向への推進力が増すこととなる。
図5は、本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯機のボールバランサ8の動作模式図であり、図5(a)は、ドラム3の停止状態におけるボールバランサ8の状態を示すもので、底部に転動体9が偏っている状態を示す。図5(b)は、アンバランス状態検知工程における低速回転数で回転している状態を示す。図5(b)の状態は、転動体9がドラム3と共回りしない状態で、左側部に転動体9が偏って位置し、維持されている状態を示している。なお、図5(b)は、ドラム3が、ドラム3やボールバランサ8を正面視して時計回りに回転している状態である。また、粘性流体23は、図示していないが、図5(a)のドラム停止状態では、転動体9と同様に底部に偏っている。図5(b)のドラム3の低速回転状態では、粘性流体23は、ドラム3の左側部に偏って位置している。
まず、制御部13は、脱水工程開始前に、洗濯物18によるアンバランス状態を把握し、脱水起動時にアンバランス状態に応じた起動方法を選定する。アンバランス状態を把握するために、ドラム3を低速の一定回転数で回転させる。一定の回転数は、洗濯物18がドラム3の内壁に張付き状態でかつ水槽2の共振回転数以下の回転数であり、本実施の形態では、例えば120rpmとしている。
図5(b)は、ドラム3が低速回転で回転している状態を示している。
ドラム3が回転を開始すると、ドラム3の回転数の上昇に伴ってボールバランサ8内の粘性流体23は、遠心力と、環状容器81との摩擦抵抗と、突起体11による推進力によって環状容器81の外周側に移動する。ドラム3は、低速回転で回転するため、粘性流体23は、図5(b)に図示していないが、転動体9と同様に、環状容器81の左側部分に位置している。
転動体9は、粘性流体23からの抗力によって、図5(b)に示すように、環状容器81の底部から左側部に位置する。図5(b)は、ドラム3が時計回りの回転時の場合を示し、ドラム3と共回りしない状態を示している。ドラム3が反時計回りに回転する場合であれば、転動体9は右側部に位置する。
次に、転動体9がドラム3と共回りをしていない状態で、振動検知部10が検知する振動値からアンバランス位置算出手段30およびアンバランス量算出手段31によって洗濯物18のアンバランス状態を検知する。その算出結果から、アンバランス状態に応じた脱水起動方法を判定部131が判定する。転動体9が図5(b)の左側部に位置している状態で、ドラム3の回転円周上方向における洗濯物18のアンバランス状態の位置を電流検知部101が駆動モータ12の電流変動値から判定する。
判定結果に基づいて、ドラム3の回転数を高くすると、粘性流体23の抗力111により転動体9が環状容器81の上方に移動し、環状容器81の頂点を超えてドラム3の回転に共回りを始める。転動体9が環状容器81の頂点を越える位置を、転動体9が洗濯物18のアンバランス状態を解消できる位置になるようにドラム3の回転を制御し、水槽2およびドラム3の振動を最小化するように脱水起動を行なう。
ドラム3の回転数が上昇した状態では、粘性流体23は、遠心力および収納部82a内面との摩擦力により収納部82a外周に広がり、突起体11に接触しない状態となっており、粘性流体23が突起体11により推進力を得ることはなく、転動体9は、遠心力と収納部82a内面との摩擦力によって移動する。
突起体11は、環状容器81の内周側に形成しているので、ドラム3の回転が増大した後は、粘性流体23が環状容器81外周側に移動し、突起体11に接触しなくなる。従って、突起体11における抗力が粘性流体23に働かないため、粘性流体23の転動体9に対する抗力が弱くなり、粘性流体23と転動体9は、アンバランスを打ち消すように力学現象通りに自由に移動可能となる。
低速回転数でのアンバランス状態を検知するためには、低速回転数では転動体9が移動せず、低速回転数を超えた時点で転動体9が移動してドラム3に共回りし、転動体9が共回りする回転数は、水槽2の共振回転数より低い回転数とする必要がある。
本実施の形態では、低速回転数は、120rpmとしているが、80〜150rpmでもよく、水槽2の共振回転数以下であればよい。転動体9が共回りする回転数は、本実施の形態では、135rpmとし、水槽2の共振回転数は、200〜260rpmとしている。
環状容器81内の粘性流体23は、例えば、ドラム式洗濯機の使用温度範囲が5℃から40℃である場合において、給水に温水を使用する場合には、ドラム3内の温度は、60℃まで上昇する。さらに、ドラム式洗濯機の内部でヒータにより温水を作る構成の場合には、粘性流体23は、最大90℃までの温度に上昇することが想定される。従って、粘性流体23の温度は、寒冷地の0℃(水が凍らない限界)から最高温度90℃までの温度範囲で変化することが想定される。温度変化により、粘性流体23の粘性が大幅に変化すると、環状容器81内の転動体9の移動速度に影響する。
粘性流体23として高粘性の粘性流体を用いた場合には、温度変化時(0℃〜90℃)の粘性変化が大きい。低速の回転数では、温度変化による粘性変化により、転動体9が移動する場合と移動しない場合とが発生するため、同一の低速回転数(例えば、120rpm)に固定することができない。転動体9が移動し、ドラム3と共回りする場合は、アンバランス状態の検知が正しくできない。また、転動体9がドラム3と共回りをすることで転動体9が環状容器81の底部に維持されていないために、回転円周方向のアンバランス位置を検知する回転位置検知部103の回転位置を検知することができない。その結果、脱水起動時に起動するタイミングが検知できないため、起動時にアンバランス状態の位置に対応した状態で転動体9を位置させ、起動することができない。
本実施の形態においては、低粘性の粘性流体23を用いる。低粘性の粘性流体23を用いることで、温度変化時の粘性変化を小さくすることができ、同一の低速回転数で転動体9を移動させないことが可能である。
環状容器81の膨出部82bに突起体11を設けない、あるいは、膨出部82bを形成せずに環状容器81内周面8aを平面に構成した構成では、粘性流体23の転動体9に対する抗力が小さくなり、転動体9がドラム3と共回りする回転数が水槽2の共振回転数(例えば200〜260rpm)を超えるなど、振動をさらに大きくなる。従って、環状容器81内周面8aの形状を平面とする構成などでは、低粘性の粘性流体の使用は困難である。
また、突起体11を設けず、粘性流体23の量を増量した場合、低粘性であるため、転動体9が簡単には移動しないために100〜150rpmの回転数では転動体9が移動せず、水槽2の共振回転数(例えば200〜260rpm)以上で移動するなどの課題がある。また、粘性流体23を更に増量して環状容器81内に満水状態とすることも考えられるが、温度変化による粘性流体23の膨張、収縮があるため実現困難であった。
従って、突起体11がない場合には、低速の回転数では、転動体9を移動できず、さらに高速の回転数(例えば200rpm以上)で転動体9が移動することになる。高速の回転数は、水槽2の共振回転数(200〜260rpm)と重なる回転数であるため、振動検知部10が検知する値が共振による振動が含まれるために正しいアンバランスの状態(位置と量)を検知することができない。
本実施の形態では、突起体11を設けることにより、低粘性の粘性流体23を使用しても、低速回転数(例えば、120rpmを超える135rpm)で転動体9を移動することができるため、低速回転の120rpmで振動検知部10が、正しくアンバランス状態(位置と量)を算出し、その後、水槽2の共振回転数以下の低速回転数(例えば135rpm)で、最適な転動体9の配置をおこなう起動方法で脱水起動することで、アンバランス状態に応じた最適な脱水起動を実現することができる。
本発明のドラム式洗濯機は、突起体11を設けることにより、突起体11が発生させる粘性流体23の加速により転動体9への抗力111を発生させることで、低粘性の粘性流体23であって、温度変化が、例えば0〜90℃の範囲で、大きく変わった場合でも、粘性変化も小さく抗力による転動体9の移動速度もほぼ一定となり、安定して低速の回転数で転動体9を環状容器81の左側部に維持し、それ以上の回転数で、かつ水槽2の共振回転数以下の状態で転動体9を移動させることができる。
図2(c)は、環状容器81の断面図である。この図2(c)は環状容器81の製造上の構成を示すもので、環状容器81は蓋部81bと略コの字部81aとから構成され、粘性流体23および転動体9の収容後に溶接されるものである。略コの字部81aは、膨出部82bが、略コの字部81aの開口部側に配置されることで、金型による製造が容易に行え、経済性に優れている。従って、膨出部82bおよび突起体11を環状容器81の内周面8aのドラム軸正面側Aに設けることが容易に実現可能である。
ここではドラム軸正面側Aに膨出部82bおよび突起体11を設ける構成としているが、ドラム軸背面側Bに蓋部81bがある場合は、略コの字部81aの開口部がドラム軸背面側Bにある構成となるため、膨出部82bおよび突起体11は、ドラム軸背面側Bの方に設ける構成となる。
この構成により、環状容器81製造上の容易性を実現するとともに、転動体9を突起体11と接触させずに動作させることができ、粘性流体23に転動体9に対する抗力111を与えることができ、かつ転動体9と突起体11を接触させずに損失を抑制した状態で洗濯物18によるアンバランスを解消する動作を効率よく行なうことができる。
以上の構成により、環状容器81内に収容される粘性流体23を流体が温度変化の小さい低粘性を用いて突起体11により低粘性流体に抗力を発生させ、その抗力により押された粘性流体23が転動体9を移動させるように働き、低粘性流体を用いても、転動体9を容易に移動させることができる。
その結果、低粘性の流体を収容した安定したバランサとして機能させることができ、本来の脱水起動時から高速回転までの広い範囲で安定した動作をおこない、洗濯物によるアンバランスを解消する動作を効率よくおこなうことができる。
なお、偏心荷重のアンバランスによるドラムの振れ回りの振動幅は、ドラム3のどの場所でも同じと考えられるが、実際には、ドラム底面3b近傍では底面に直結された回転軸14が振動の一部を吸収するため振動幅が小さく、ドラム開口部3bの近傍の場合は振動
幅が大きい。
本実施の形態では、アンバランスの解消能力の高いボールバランサ8をドラム開口部3b側に配置しているので、アンバランスを効率よく低減することが可能となる。
また、ボールバランサ8をドラム底面3b側のドラム端周部近傍に配設してもよい。ボールバランサ8は、ドラム底面3b側のドラム端周部近傍に配設することにより、回転軸14を含む回転機構に対する負荷を軽減することが可能となる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2を図6から図8に基づいて説明する。なお、実施の形態1と同一部品は同一符号を付して説明を省略する。
図6は、ボールバランサ8をドラム軸正面側Aから見た断面図、図7は、図6におけるA−A断面図、図8は、図7におけるB−B断面図である。
ボールバランサ8の環状容器81には、内部空間82が設けられている。内部空間82には、転動体9と粘性流体23を収納する収納部82aが設けられ、収納部82aの内周側側面に、収納部82aから側方に向かって膨出した空間となる膨出部82bを形成している。収納部82aと膨出部82bは連通しており、粘性流体23が収納部82aと膨出部82bとの間を移動可能となっている。膨出部82bには、膨出部82b底面から収納部82aに向かって突起体11を形成している。突起体11は、膨出部82bから収納部82aに突出しない高さに形成している。また、膨出部82bは、環状容器81の一方の内側面から転動体9の半径より狭い幅で形成している。これにより、転動体9が突起体11に接触しないように構成している。
実施の形態2の構成においては、ドラム3が回転を開始すると、ドラム3の回転数の上昇に伴ってボールバランサ8内の粘性流体23は、遠心力と、環状容器81との摩擦抵抗と、突起体11による推進力によって環状容器81の外周の回転方向側に移動する。転動体9は、粘性流体23からの抗力によって、環状容器81の回転方向側に移動する。
ドラム3の回転数がさらに増大すると、やがて、ボールバランサ8内の粘性流体23は、遠心力により環状容器81の最上部を越えた状態となる。
転動体9は、環状容器81内面との摩擦抵抗と、粘性流体23の抗力によってさらにドラム3の回転方向側に移動する。
ドラム3の回転数の上昇に伴って、ボールバランサ8内の粘性流体23は、環状容器81内面との摩擦抵抗と、突起体11の作用によって移動速度が増大し、環状容器81外周に、より広がった状態となる。
転動体9は、環状容器81内面との摩擦抵抗と粘性流体23の抗力によって、環状容器81の最上部に向かって押し上げられ、転動体9が環状容器81の最上部を越えて回転移動を開始する。
本実施の形態では、140rpmの回転数以上では、転動体9が環状容器81の最上部を連続的に越えて回転移動し、転動体9がドラム3と共回りの状態となる。転動体9の共回りの状態とは、転動体9と環状容器81が同じ回転数もしくは転動体9が環状容器81からやや遅れた回転数で共に回転をする状態をいう。
この状態では、粘性流体23は、環状容器81の外周に広がり、環状容器81内周側の突起体11に接触しない状態となっている。転動体9は、粘性流体23からの抗力を受けることなく、遠心力と、環状容器81内面との摩擦抵抗によって回転する。転動体9は、粘性流体23の抗力の影響を受けないので、ドラム3内にアンバランスを解消する方向に自由に移動することが可能となり、効率よくアンバランスを解消することができる。
本実施の形態2においても、突起体11は、環状容器81の内周側に形成しているので、ドラム3の回転が増大した後は、ボールバランサ8の粘性流体23が環状容器81外周側に移動し、突起体11に接触しなくなる。従って、突起体11における抗力が粘性流体23に働かないため、粘性流体23の転動体9に対する抗力が弱くなり、粘性流体23と転動体9がアンバランスを打ち消すように力学現象通りに自由に移動可能となる。
(実施の形態3)
本実施の形態3の実施例1を図9に基づいて説明する。図9は、環状容器81内部の突起体11をドラム軸正面側Aから見た断面図である。なお、上記実施の形態と同一部品は同一符号を付して説明を省略する。
図9に示すように、本実施の形態3における突起体11の実施例1において、突起体11は、ドラム3の回転方向の進行方向に面する突起A面11Aの面積を後進行方向に面する突起B面11Bの面積よりも大きくしている。
突起体11の進行方向に面する突起A面11Aの面積を大きくすることにより、粘性流体23への推進力を高めることができる。粘性流体23の推進力により転動体9への抗力111をより大きくすることにより、より早く移動させることができ、洗濯物18によるアンバランスを解消する動作を効率よく行なうことができる。
本実施の形態の突起体11を備えることにより、突起体11により回転時に発生する推進力110として転動体9に対して推進方向に、より大きな推進力を加えることができ、転動体9に抗力111が働くことで、より早い速度で転動体9が移動する。従って、転動体9がドラム3と共に共回り回転数を低下でき、所望の回転数である120rpm近傍よりやや高い回転数で維持することができる。その結果、低粘性の粘性流体23を使用し、温度変化が大きい場合でも、下限の共回り回転数を維持し、安定した共回り回転数を実現できる。
突起体11は、三角形の山状の形状を進行方向と逆方向で異なる形状としたものを等間隔で配置しているが、その形状はこれに限定するものではなく、転動体9への抗力111が発生するものであれば、同等の作用を発生することが可能である。また、その抗力111による転動体9の移動がドラム3の回転数を所望の回転数となるように調整するものであれば、この形状に限定するものではない。
図10は、本実施の形態3における実施例2の突起体11をドラム軸正面側Aから見た断面図である。
突起体11は、ドラム3の回転方向の進行方向に面する突起D面11Dを、進行方向に凹状の形状に形成するとともに、その面積を進行方向の逆方向に面する突起C面11Cの面積よりも大きくしている。進行方向に面する突起D面11Dを凹状に形成することにより、粘性流体23に対する抵抗を大きくし、進行方向へ抗力111を加えることができる。
本実施の形態の突起体11を備えることにより、突起体11により回転時に発生する推
進力110として転動体9に対して推進方向に、より大きな推進力を加えることができ、転動体9に抗力111が働くことで、より早い速度で転動体9が移動する。従って、転動体9がドラム3と共に共回り回転数を低下でき、所望の回転数である120rpm近傍よりやや高い回転数で維持することができる。その結果、低粘性の粘性流体23を使用し、温度変化が大きい場合でも、下限の共回り回転数を維持し、安定した共回り回転数を実現できる。
図11は、本実施の形態3における実施例3の突起体11の進行方向から見た断面図である。
突起体11は、ドラム軸背面側Bの突起体B点111Bの高さをドラム軸正面側Aの突起体A点111Aの高さより高い形状にしているが、逆であってもよい。転動体9に加わる抗力111の大きさは、粘性流体23の流速で決まるため、突起体11の高さを調整することによって、粘性流体23の流速を最適化することができる。
図12に示すように、隣接する突起体11間の粘性流体23を突起体11が進行方向に押し上げることで、粘性流体23の流速Vを加速することができる。その結果、加速された流速Vにより、抗力111が近似式(1)に示したDp値となって発生し、転動体9は、その抗力111に押されることで進行方向への推進力が増すこととなる。
本実施の形態3においても、突起体11は、環状容器81の内周側に形成しているので、ドラム3の回転が増大した後は、ボールバランサ8の粘性流体23が環状容器81外周側に移動し、突起体11に接触しなくなる。従って、突起体11における抗力が粘性流体23に働かないため、粘性流体23の転動体9に対する抗力が弱くなり、粘性流体23と転動体9がアンバランスを打ち消すように力学現象通りに自由に移動可能となる。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4を図13乃至図21に基づいて説明する。なお、上述した実施の形態と同一部品は、同一符号を付して説明を省略する。
図13は、本発明の実施の形態4におけるドラム式洗濯機の概略断面図である。図13に示すように、ドラム3の開口部3b側を前端部、開口部3bの反対側を後端部として、前端部にバランサ8Aが設けられ、後端部にバランサ8Bが設けられている。バランサ8Aおよび8Bは、環状の容器状に形成されており、環状容器81内に、粘性流体23Aおよび23Bと、転動体9Aおよび9Bを収容して構成している。
なお、本実施の形態においては、転動体9Aおよび9Bは、鋼球表面にゴムのコーティングをしたボールを用いている。また、粘性流体23Aおよび23Bは、4cSt以下の低粘性の塩化カルシウム水溶液を用いている。
ドラム3を駆動する駆動モータ12がベルト6を介して回転軸14に回転動力を加えることで、ドラム3は、水槽2内で回転する。ドラム3の回転時における水槽2の振動値を計測する振動検知部10が、水槽2の上部前方に設けられている。
図14(a)は、本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯機本体1のドラム3の前端部に設けるバランサ8Aの断面図である。図14(c)は、バランサ8Aの突起体11の要部拡大断面図である。図14(b)は、本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯機本体1のドラム3の後端部に設けるバランサ8Bの断面図である。図14(d)は、バランサ8Bの突起体11の要部拡大断面図である。図14(e)は、図14(c)の垂直方向断面図である。
ドラム3の前端部に配設したバランサ8Aと、後端部に備えたバランサ8Bは、同一構造をしている。バランサ8Aは、図15に示すように、ドラム3の前端部から見た状態でA面27が前側となるように配置している。バランサ8Bは、ドラム3の前端部から見た状態でA面と相対向するB面28が前側となるように配置している。これにより、バランサ8Aとバランサ8Bは、前後逆向きにドラム3に備え付けた構造としている。
図14(a)〜(e)に示すように、バランサ8Aおよび8Bの環状容器81内には、内周面25と外周面26との間に収納部82aが形成され、収納部82a内を転動体9Aおよび9Bと、粘性流体23Aおよび23Bとが移動するように構成されている。収納部82aの内周面25側には、内周側に向かって膨出部82bを膨出形成し、膨出部82bに突起体11を複数設けている。収納部82a内周面25の突起体11が形成されていない平坦面は、転動体9Aおよび9Bの半径よりも幅広く形成されている。また、突起体11は、内周面25の突起体11が形成されていない平坦面から突出しないように、平坦面に対して少許奥まらせて形成されている。これにより、転動体9Aおよび9Bが突起体11に接触しないように構成している。
突起体11は、鋸歯状に形成されている。突起体11の回転方向側の面は、法線に対して鋭角に形成され、回転方向とは反対側の面は、法線に対して鈍角に形成され、中央部分がやや高くなるような緩やかな曲線に形成されている。
ドラム3の前端部に配設したバランサ8Aは、図15に示すように、ドラム3が脱水工程時のドラム3の回転方向C1に回転すると、粘性流体23Aが集まっているドラム3の下方位置で突起体11間の空間により粘性流体23Aを掬い上げながら回転し、突起体11の回転方向側の面で粘性流体23Aを押すように作用する。
一方、ドラム3の後端部に配設したバランサ8Bにおいては、図15に示すように、突起体11の回転方向側の面は、法線に対して鈍角に形成されており、回転方向先行側から後行側になるに従って内径側から外径側となる曲面形状になっている。
ドラム3が回転方向C1に回転すると、バランサ8Bの突起体11は、回転方向側の曲面により粘性流体23Bを押すように作用するが、突起体11の回転方向側の面が鈍角に形成されているため、バランサ8Aの突起体11が粘性流体23Aを掬い上げるように作用する力よりも弱い。よって、バランサ8Bの粘性流体23Bは、バランサ8Aの粘性流体23Aに比較して少許遅い流速となる。
なお、バランサ8Bの突起体11が粘性流体23Bを押す力は、突起体11の回転方向側の面の法線に対する角度により調整することが可能である。
図16は、バランサ8AおよびBにおける転動体9Aおよび9B、粘性流体23Aおよび23Bの動作を説明する概略断面図である。
本実施の形態において、転動体9Aおよび9Bの回転移動を開始する回転数(回転移動開始回転数)とは、バランサ8Aおよび8Bの内部に収納された転動体9Aおよび9Bがドラム3の回転数の上昇に伴って、バランサ8Aおよび8Bの環状容器81の上方側に移動し、環状容器81の最上部を越えて回転移動を開始する回転数をいう。
図16は、脱水工程におけるドラム3を示し、図16中、左側の状態は、ドラム3が停止している状態を示している。図16中、左下の100Aは、ドラム3の前端部に配設したバランサ8Aの状態を示し、左上の100Bは、ドラム3の後端部に配設したバランサ
8Bの状態を示している。図に示すように、ドラム3が停止している状態では、転動体9Aおよび9Bと、粘性流体23Aおよび23Bは、ドラム3の底部に偏っている。洗濯物18のアンバランスも底部に偏った状態となっている。
図16中、中央は、ドラム3が正回転(C1)の方向に120rpmで回転している状態を示している。この時、洗濯物18のアンバランスがドラム3の内面に張り付いている状態とする。図16中、中央下の101Aは、バランサ8Aの状態を示し、中央上の101Bは、バランサ8Bの状態を示している。
ドラム3が回転を開始すると、ドラム3の回転数の上昇に伴って、バランサ8Aおよび8B内の粘性流体23Aおよび23Bが、遠心力とによりバランサ8Aおよび8Bの環状容器81の収納部82a外周側に移動する。また、粘性流体23Aおよび23Bは、バランサ8Aおよび8Bの環状容器81内面と粘性流体23Aおよび23Bとの摩擦抵抗と、突起体11の作用により、ドラム3の回転方向側に移動する。
バランサ8Aの突起体11は、突起体11間の空間が粘性流体23Aを押し易い形状となっているのに対し、バランサ8Bの突起体11は、粘性流体23Bを押し出す作用が弱い形状となっている。これにより、バランサ8A内の粘性流体23Aは、バランサ8B内の粘性流体23Bよりも早い流速となり、バランサ8A内の粘性流体23Aは、バランサ8B内の粘性流体23Bよりもドラム3の回転方向側に移動した状態となる。
ドラム3の回転数がさらに増大すると、やがて、バランサ8A内の粘性流体23Aは、遠心力によりバランサ8Aおよび8Bの環状容器の最上部を越えて環状容器81の収納部82a外周側に広がった状態となる。
転動体9Aおよび9Bは、バランサ8Aおよび8Bの環状容器内面との摩擦抵抗と、粘性流体23Aおよび23Bの流速によってドラム3の回転方向側に移動する。バランサ8Aの転動体9Aは、突起体11により押される粘性流体23Aによってバランサ8Bの転動体9Bよりもドラム3の回転方向側に移動する。
これにより、バランサ8Aおよび8Bにおいて、転動体9Aおよび9Bは、同期のずれた、非同期の状態で移動する。ドラム3の120rpmの回転数による遠心力では、転動体9Aおよび9Bは、ドラム3の回転に共回りする状態にはなっていない。
図16中、右側の状態は、ドラム3の回転数が上昇し、ドラム3が正回転(C1)の方向に140rpmで回転している状態を示している。図16中、右下の102Aは、バランサ8Aの状態を示し、右上の102Bはバランサ8Bの状態の状態を示している。
ドラムの回転数の上昇に伴って、バランサ8Aおよび8B内の粘性流体23Aおよび23Bは、遠心力と、突起体11の作用によって移動速度が増大し、バランサ8Aおよび8Bの環状容器外周に、より広がった状態となる。バランサ8Aにおいては、粘性流体23Aに対する突起体11の作用が強いため、粘性流体23Aは、環状容器81の外周部のほぼ全周にわたって張り付いた状態となる。
バランサ8Aにおいては、転動体9Aは、バランサ8Aの環状容器81内面との摩擦抵抗と粘性流体23Aの流速によって、バランサ8Aの環状容器81の最上部に向かって押し上げられ、転動体9Aが環状容器81の最上部を越えて回転移動を開始する。
140rpmの回転数以上では、転動体9Aがバランサ8Aの環状容器81の最上部を連続的に越えて回転移動し、転動体9Aがバランサ8Aの環状容器81と共回りの状態と
なる。転動体9Aの共回りの状態とは、転動体9Aと環状容器81が同じ回転数もしくは転動体9Aが環状容器81からやや遅れた回転数で共に回転をする状態をいう。
バランサ8Aの粘性流体23Aは、環状容器81の外周側に張り付いた状態となり、環状容器81内周側の膨出部82bに形成した突起体11には接触しなくなる。そのため、粘性流体23Aには、突起体11の押す力が作用せず、粘性流体23Aには、遠心力と、環状容器81との摩擦抵抗による推進力が作用する。この状態での粘性流体23Aの推進力は、突起体11の作用する状態の推進力より弱くなり、粘性流体23Aと転動体9Aは、アンバランスを解消する方向に力学現象通りに自由に移動可能となる。
バランサ8Bにおいては、ドラム3が140rpmで回転している状態では、転動体9Bは、120rpmで回転している状態のときよりも上端部側に移動して、偏った状態で環状容器81の底部から最上部までの間に留まった状態となる。バランサ8Bは、ドラム3の回転数が160rpmを超過すると、転動体9Bが回転移動を開始する。
バランサ8Bにおいても、粘性流体23Bは、環状容器81の外周側に張り付いた状態となり、環状容器81内周側の膨出部82bに形成した突起体11には接触しなくなる。そのため、粘性流体23Bには、突起体11の押す力が作用せず、粘性流体23Bの推進力がより弱くなり、粘性流体23Bと転動体9Bは、アンバランスを解消する方向に力学現象通りに自由に移動可能となる。
本実施の形態では、バランサ8Aの転動体9Aは、ドラム3の回転数が140rpm以上の状態で回転移動を開始し、バランサ8Bの転動体9Bは、ドラム3の回転数が160rpm以上の状態で回転移動を開始するように設定している。
本実施の形態では、ドラム3の前端部に配設するバランサ8Aの転動体9Aが、ドラム3の後端部に配設するバランサ8Bの転動体9Bよりも先に回転移動を開始するようにしているが、ドラム3の後端部に配設するバランサの転動体が先に回転移動を開始するように、バランサ8Aおよび8Bを前後逆にドラム3に取り付けるように構成してもよい。
次に、図17は、本実施の形態と対比するための比較装置である。比較装置は、同一構成のバランサ8Aおよび8Bを用い、バランサ8Aおよび8BのA面27が同一方向を向くように、ドラム3の前端部および後端部に配設した構成である。バランサ8Aおよび8Bの突起体11は、法線に対して鋭角な面が回転方向側を向いており、粘性流体23Aおよび23Bを押し易い形状の面が回転方向側に向いている。これにより、ドラム3が正回転方向(C1)に140rpm以上の回転数で回転した状態で、転動体9Aおよび9Bが回転移動を開始する構成である。
図17に示す比較装置は、ドラム3が正回転方向に140rpm以上の回転数で回転した状態で、転動体9Aおよび9Bがバランサ8Aおよび8Bの環状容器の最上部を越えて回転移動を開始する。両方のバランサ8Aおよび8Bの転動体9Aおよび9Bがほぼ同時に回転移動を開始するため、転動体9Aおよび9Bがアンバランスとして作用する。即ち、転動体9Aおよび9Bが、ドラム3の前端部と後端部で同位相(円周状の同位相位置)に回転移動を行う。従って、ドラム3には、アンバランスを補正するべきバランサ8Aおよび8Bの両方の補正量がアンバランス量として作用することになる。
ドラム3に対する洗濯物18のアンバランス位置が、ドラム3の前端部と後端部の転動体9Aおよび9Bの回転移動と同位相となった場合は、さらにアンバランス状態が増加することになり、振動を増長する状態となる。
図18は、本実施の形態と、図17に示す比較装置における、ドラム3の回転数と左右振動値を示している。左右振動値は、水槽2の上部前端部に設けた振動検知部10により検出している。
また、L1は、起動時における振動値限度であり、ドラム式洗濯機本体1の水槽2が振動することによりドラム式洗濯機本体1の外枠と衝突することを防止するために設定された値である。また、時間T1は、起動時に120rpmでドラム3を回転させ、振動検知部10の振動値を計測し、洗濯物18のアンバランス状態を判定するための時間である。この回転数では、バランサ8Aおよび8Bの転動体9Aおよび9Bは、回転移動しない。
さらに、振動波形S2は、本実施の形態の振動波形を示し、振動波形S21は、ドラム3が回転数140rpmで回転している状態(R1点:時間t11)である。ドラム3の前端部に配設したバランサ8Aの転動体9Aのみが回転移動を開始した状態の振動検知部10の振動値変化を示している。また、振動波形S22は、160rpmでドラム3が回転している状態(R2点:時間t12)である。振動波形S22は、ドラム3後端部のバランサ8Bの転動体9Bが回転移動を開始した際の振動検知部10の振動値変化を示している。
図18に示すように、時間T1経過後、ドラム3の回転数が140rpmとなると、バランサ8Aの転動体9Aがバランサ8Aの環状容器の最上部を越えて回転移動を開始するため、水槽2の振動は波形S21に示すように増長することはない。ドラム3の回転数が160rpmまで上昇すると、バランサ8Bの転動体9Bが環状容器の最上部を越えて回転移動を開始する。転動体9Bの回転移動の開始時には、すでに転動体9Aが回転移動している。従って、転動体9Aと転動体9Bの回転移動は、ドラム3の円周方向に対する位相が異なる(重なり合わない)ため、振動波形S22に示すようにドラム3の振動は増長しない。その結果、水槽2の振動は、増長が抑制される。
また、例えば、洗濯物18のアンバランス位置と転動体9Bの回転移動が同位相(重なり合った)位置に移動した場合には、転動体9Aが転動体9Bに対して異なった位相(重なり合わない)に回転移動する。これにより、転動体9Aが、洗濯物18と転動体9Bによる合成されたアンバランス状態を補正するように作用し、ドラム3の振動の増長を抑制することができる。
以上の通り、前端部に位置するバランサ8Aの転動体9Aと、後端部に位置するバランサ8Bの転動体9Bとの間で、回転移動を開始する回転数に差を設ける構成としている。この構成により、ドラム3の振動の増長を防止することができる。これは、ドラム3の回転方向に対して非対称形状の突起体11を内周面に設けた同一構成のバランサを、突起体11が逆方向になるようにドラム3の前端部と後端部とに配置することで容易に実現することができる。
次に、図18の振動波形S1は、図17に示す比較装置の振動波形を示すものである。比較装置は、ドラム3の前端部と後端部に配設したバランサ8Aおよび8Bの転動体9Aおよび9Bがドラム3の回転数140rpm(時間t11)の状態で同時に回転移動を開始する。比較装置では、転動体9Aおよび9Bが同位相で移動するために、バランサ8Aおよび8Bの補正量を越えたアンバランス状態として動作し、振動検知部10の振動値が増長していることがわかる。
図18に示す試験結果は、本実施の形態と比較装置のドラム3を一定回転加速度で、回転数を上昇させる場合を示している。本実施の形態は、回転加速度の条件を変えた場合であってもドラム3の回転数140rpmの状態でドラム3前端部のバランサ8Aの転動体
9Aが回転移動を開始し、ドラム3の回転数160rpmの状態でドラム3後端部のバランサ8Bの転動体9Bが回転移動を開始する。なお、転動体9Aが回転移動を開始する時間t11と転動体9Bが回転移動を開始する時間t12は回転加速度により変化する。
本実施の形態では、回転加速度を変化させた場合であっても、転動体9Aが回転移動を開始する時間t11と転動体9Bが回転移動を開始する時間t12には、差が生じる。これにより、転動体9Aと転動体9Bが回転移動する位置は、ドラム3の円周方向の位置(位相)が異なるため、ドラム3の振動の増長を抑制できる。従って、転動体9Aが回転移動を開始する時間t11と転動体9Bが回転移動を開始する時間t12を最適化することで振動の最小化を図ることができる。
次に、図19は、本実施の形態において、バランサ8Aの転動体9Aが環状容器の最上部を越えて回転移動を開始する条件を設定するためのドラム3の回転数と、バランサ8A内に収容する粘性流体23Aの液量との関係を示すものである。なお、バランサ8Aと8Bは、同一条件となるように粘性流体23Aおよび23Bの液量を調整している。
バランサ8Aおよび8Bは、環状容器81に突起体11を48個形成している。粘性流体23Aおよび23Bは、塩化カルシウム水溶液であり、粘度4cStとし、450g用いている。転動体9Aおよび9Bは、同一構成であり、20個用いている。転動体9Aおよび9Bは、外径がφ21、質量が30g/個である。転動体9Aおよび9Bは、内部を鋼球とし、表面にEPDMのゴムを均一にコーティングしており、ゴムの硬度を70としている。
図19は、上記の条件で、粘性流体23Aおよび23Bである塩化カルシウム水溶液の液量を変化させた場合の転動体9Aおよび9Bが回転移動を開始する回転数特性を示したものである。CS1がバランサ8Aの転動体9Aが回転移動を開始する回転数特性を示し、CS2がバランサ8Bの転動体9Bが回転移動を開始する回転数特性を示している。転動体9Aおよび9Bが回転移動を開始する回転数は、CS1とCS2に示すように、粘性流体23Aおよび23Bの液量を調整しても、一定回転数の差が生じる。粘性流体23Aおよび23Bである塩化カルシウム水溶液の液量の増加と共に転動体9Aおよび9Bの回転移動を開始する回転数は低下する。
洗濯物18に懸かる重力とドラム3の回転による遠心力とが均衡し、洗濯物18がドラム3の内面に張り付き状態となる回転数が約90〜110rpmである。水槽2の一次共振回転数が約190〜210rpmである。従って、100rpm以上、200rpm以下の範囲で転動体9Aおよび9Bが回転移動を開始し、転動体9Aと転動体9Bが回転移動を開始する回転数に約10〜20rpmの差を維持できることを条件に設定する。
洗濯物18のアンバランス状態を検知するために、振動検知部10で振動値が測定でき、かつ転動体9Aおよび9Bが回転移動を開始しないドラム3の回転数は120rpmである。ドラム3の回転数120rpm以上で、転動体9Aと転動体9Bが回転移動を開始する回転数に20rpm程度の差を維持できることを条件とすると、図19に基づいて、塩化カルシウム水溶液は450gとなる。
本実施の形態では、粘性流体23Aおよび10Bの粘度を4cStとしているが、粘性流体23Aおよび23Bの粘度を上げる場合には、図19に示すCS1およびCS2は、全体的に回転数が下がる方向に移行する。よって、回転数を140rpmおよび160rpmに設定する場合は、粘性流体23Aおよび23Bの液量を減少させることで調整が可能である。
バランサ8Aおよび8Bの環状容器81の内面と外面との間の間隔の寸法誤差、転動体9Aおよび9Bの外径の寸法誤差により、環状容器81と転動体9Aおよび9Bとの間の隙間のばらつきが生じる。
図20は、本実施の形態のドラム3を回転させた状態で、バランサ8Aにおける環状容器と転動体9Aとの隙間のばらつきによる回転特性を計測したものである。環状容器と転動体9Aおよび9Bとの間の隙間のばらつきは、バランサ8Aとバランサ8Bが同一条件となるように調整して計測している。
隙間のばらつきが最大(MAX)の場合をCS4とし、ばらつきが最小(MIN)の場合をCS5とし、ばらつきが中間(CENTER)の場合をCS1として示している。この結果によれば、転動体9Aとバランサ8Aの環状容器81の隙間が大きくなるに従って転動体9Aの回転移動を開始する回転数が、高回転数側に移行することがわかる。本実施の形態では、このばらつき回転数を約10rpmとなるように隙間を設定する。
本実施の形態では、バランサ8Aおよび8Bの環状容器81と転動体9Aおよび9Bとの隙間を1mmとしている。この隙間を調整することにより、転動体9Aおよび9Bの回転移動開始回転数を調整することができる。隙間を減少すると、粘性流体23Aおよび23Bを回転方向に推進する推進力が強くなる傾向がある。従って、転動体9Aおよび9Bに対する推進力も強くなるため、図19に示すCS1およびCS2は、全体的に回転数が下がる方向に移行する。
また、隙間を大きくすると、転動体9Aおよび9Bの移動開始回転数と粘性流体23Aおよび23Bの液量との関係は、図20に示すCS1側からCS4側へ移行する。逆に、隙間を小さくすると、CS1側からCS5側へ移行する。
よって、バランサ8Aおよび8Bの環状容器81と転動体9Aおよび9Bとの隙間のばらつきは、粘性流体23Aおよび10Bの液量を増減させることで調整が可能である。
なお、バランサ8Aおよび8Bの環状容器81と転動体9Aおよび9Bとの隙間は、環状容器81の内外径の調整、或いは、転動体9Aおよび9Bの直径の調整により調整可能である。このような調整を行う場合でも、粘性流体23Aおよび23Bの液量を調整することで、転動体9Aおよび9Bが回転移動するドラム3の回転数を調整することが可能である。
また、図21は、本実施の形態のバランサ8Aの転動体9Aの表面にコーティングしているEPDMゴムの硬度のばらつきによる転動体9Aの転々移動開始回転数の変化を示している。なお、バランサ8Aの転動体9Aとバランサ8Bの転動体9Bの硬度のばらつきは同一条件となるように調整して計測している。
図21は、バランサ8Aの転動体9Aの表面の硬度のばらつきによる最大硬度(MAX)をCS6とし、最小硬度(MIN)をCS7とし、中間硬度(CENTER)をCS1として示している。図18に示すように、転動体9Aの硬度が上がるに従って転動体9Aの回転移動を開始する回転数が、高回転数側に移行する。
上記試験の結果、転動体9Aおよび9Bと、粘性流体23Aおよび23Bとからなる移動体を収納したバランサ8Aおよび8Bを、ドラム3の前端部と後端部に配置し、バランサ8Aおよび8Bは、環状容器内周面に回転方向に対して非対称の突起体11を設け、非対称の突起体11の方向が逆となるようにドラム3に配置する。
この構成により、転動体9Aおよび9Bが回転移動を開始する回転数を、水槽2の一次共振回転数(190〜210rpm)以下で、かつ洗濯物18のドラム3の内周面への張り付き状態を維持できる回転数(90〜110rpm)以上に設定することができる。さらに、ドラム3の前端部および後端部に配置したバランサ8Aおよび8B内の転動体9Aおよび9Bの回転移動を開始する回転数の差を約10〜20rpmに設定することができる。
本実施の形態では、バランサ8Aおよび8B内の粘性流体23Aおよび23Bとして塩化カルシウム水溶液を用い、その粘度を4cSt、液量を450gとしている。また、転動体9Aおよび9Bを鋼球として、その表面にEPDMゴムのコーティングを施して、硬度70度としている。さらに、突起体11の形状を一例として図示しているが、これらの構成に限定するものではない。
例えば、粘性流体23Aおよび23Bとして、水、シリコンオイルを用いてもよい。粘性流体23Aおよび23Bとして用いる流体は1cSt以外の粘度としてもよい。粘性流体23Aおよび23Bの液量、転動体9Aおよび9Bの摩擦係数を調整することにより、転動体9Aおよび9Bが回転移動を開始する回転数を、水槽2の一次共振回転数(190〜210rpm)以下で、かつ洗濯物18のドラム3の内周面への張り付き状態を維持できる回転数(90〜110rpm)以上に設定することができる。
また、転動体9Aおよび9Bの中心となる球体として、鋼球に相当する比重を有する金属製球、ガラス球、ゴム球を用いてもよい。さらに、転動体9Aおよび9B表面のコーティング材として、EPDM、シリコンゴム、ナイロン、ウレタン、ポリエチレンなど、バランサ8Aおよび8Bの環状容器内面と転動体9Aおよび9B表面との間で摩擦を発生させる材料であれば、他の材料を用いてもよい。
転動体9Aおよび9B表面の硬度は、転動体9Aおよび9Bが回転移動を開始する回転数が、水槽2の一次共振回転数(190〜210rpm)以下で、かつ洗濯物18のドラム3の内周面への張り付き状態を維持できる回転数(90〜110rpm)以上に設定することができるように粘性流体23Aおよび23Bの粘度、液量等の調整によって可能な範囲であればよい。
また、本実施形態では、突起体11を48個形成しているが、48個に限定するものではない。突起体11の個数を減少すると、粘性流体23Aおよび23Bを回転方向に推進する推進力が弱くなるため、転動体9Aおよび9Bに対する抗力も弱くなる。従って、図19に示すCS1およびCS2は、全体的に回転移動開始回転数が上昇する方向に移行する。
バランサ8Aおよび8Bに形成する突起体11の個数を異ならせることにより、転動体9Aおよび9Bが回転移動するドラム3の回転数を調整することが可能である。
よって、転動体9Aおよび9Bが回転移動するドラム3の回転数を140rpmおよび160rpmに設定する場合は、粘性流体23Aおよび23Bの液量を増加させることで調整が可能である。逆に、突起体11の形成数量を増加する場合は、粘性流体23Aおよび23Bの液量を減少させることにより調整することが可能である。
また、突起体11の高さ、突起体11の法線に対する角度によっても、粘性流体23Aおよび23Bを回転方向に推進する推進力は、変化する。このような場合であっても、粘性流体23Aおよび23Bの液量を減少させることにより、転動体9Aおよび9Bが回転移動するドラム3の回転数を調整することが可能である。
本実施の形態では、転動体9Aおよび9Bの表面硬度を70度としている。硬度が変化すると、バランサ8Aおよび8Bの環状容器内面と転動体9Aおよび9Bとの摩擦係数が変わる。これにより、転動体9Aおよび9Bの回転移動開始回転数が変化する。
転動体9Aおよび9Bの硬度が高くなると、図21に示すCENTER(CS1)からMAX(CS6)側へ転動体9Aおよび9Bの回転移動開始回転数が上昇する方向へ移行する。逆に、転動体9Aおよび9Bの硬度が低くなると、CENTER(CS1)からMIN(CS7)側へ回転移動開始回転数が下降する方向へ移行する。
即ち、転動体9Aおよび9Bの硬度が高くなると、転動体9Aおよび9Bが移動しやすく(摩擦が小さい)なる。また、転動体9Aおよび9Bの硬度が低くなると、転動体9Aおよび9Bが移動し難く(摩擦が大きい)なる。
従って、転動体9Aおよび9Bの硬度が高くなる場合は、粘性流体23Aおよび23Bの液量を増量することで調整ができる。逆に、転動体9Aおよび9Bの硬度が低くなる場合は、粘性流体23Aおよび23Bの液量を減量することで調整が可能である。
また、バランサ8Aおよび8Bの環状容器と転動体9Aおよび9Bの隙間についても、粘性流体23Aおよび10Bの粘度、転動体9Aおよび9B表面の摩擦抵抗、突起体11の形状、突起体11の数量などを調整することにより上述した転動体9Aおよび9Bの回転移動開始回転数の条件に設定することが可能であって、本実施の形態に限定するものではない。
ドラム3の前端部と後端部に配設したバランサ8Aの転動体9Aの回転移動開始回転数と、バランサ8Bの転動体9Bの回転移動開始回転数との間で一定回転数の差を有する構成であれば、上述した条件に限定するものではない。バランサ8Aの転動体9Aとバランサ8Bの転動体9Bの回転移動開始回転数が相違する構成であれば、脱水起動時にバランサ8Aおよび8Bの転動体9Aおよび9Bが同時に移動を開始する構成(比較装置)におけるアンバランスの発生を防止することができるものである。
ドラム3の回転方向に対して非対称形状の突起体11は、粘性流体23Aに対して回転方向に掻き揚げながら回転方向に推進力を発生させるものであり、その推進力によって転動体9Aを回転方向へ移動させるものである。
従って、突起体11は、バランサ8Aの転動体9Aとバランサ8Bの9Bの移動回転数が異なるようにすることができる形状であれば、どのような形状であってもよい。よって、実施の形態の形状や個数に限定するものではなく、バランサ8Aとバランサ8Bの突起体に形成する突起体11の個数を異ならせてもよい。また、バランサ8Aとバランサ8Bの転動体9Aおよび9Bの数量を異ならせてもよい。ドラム3の前端部および後端部に配設するバランサ8Aおよび8Bの転動体9Aおよび9Bの回転移動を開始する回転数に所望の差を得られるように設定することであれば、本発明を達成することができる。
本実施の形態では、バランサ8Aおよび8B内に、転動体9Aおよび9B、粘性流体23Aおよび23Bを収納しているが、転動体のみ、或いは、粘性流体のみであってもよい。転動体9Aおよび9Bは、球体にて説明しているが、バランサ8Aおよび8Bの環状容器内を自在に移動可能な形状であれば、円柱状など他の形状であってもよい。
また、本実施の形態は、バランサ8Aの転動体9Aがドラム3の回転数140rpmで回転移動を開始し、バランサ8Bの転動体9Bがドラム3の回転数160rpmで回転移
動を開始するよう設定しているが、転動体9Aおよび9Bが回転移動を開始する回転数は、ドラムの形状や重量等の条件により適宜選択されるものであり、回転数を限定するものではない。
(実施の形態5)
図22(a)は、本発明の実施の形態5におけるドラム式洗濯機本体1のドラム3の前端部に設けるバランサ8Aの断面図である。図22(c)は、バランサ8Aの突起体11Aの要部拡大断面図である。図22(b)は、ドラム3の後端部に設けるバランサ8Bの断面図である。図22(d)は、バランサ8Bの突起体11Bの要部拡大断面図である。図22(e)は、図22(c)の垂直方向断面図である。
図22(a)〜(e)に示すように、バランサ8Aおよび8Bの環状容器81の内周面25側には、それぞれ突起体11Aおよび11Bが複数設けられている。突起体11Aおよび11Bは、鋸歯状に形成し、回転方向側の面が、法線に対して略直角になるように形成し、突起体11Aおよび11B間に粘性流体23Aおよび23Bが収納される空間を有している。突起体11Bは、突起体11Aより低く形成されている。従って、ドラム3の回転に伴って突起体11Aが粘性流体23Aを押すように作用する力は、突起体11Bが粘性流体23Bを押すように作用する力よりも強くなる。突起体11Aおよび11Bが粘性流体23Aおよび23Bを押し出す作用は、本実施の形態においては、隣り合う突起体11A間の容積と、隣り合う突起体11B間の容積が異なることにより異ならせている。
突起体11Aおよび11Bは、突起体11Aおよび11B間の間隔が同じ間隔になるように形成している。また、突起体11Aおよび11Bは、バランサ8Aおよび8Bの環状容器に同じ個数形成している。突起体11Aおよび11Bは、突起体11Aおよび11Bの高さが異なるのみとなるように形成している。
バランサ8Aおよび8Bは、ドラム3が脱水工程時のドラム3の回転方向C1に回転すると、粘性流体23Aおよび23Bが集まっているドラム3の下方位置で突起体11Aおよび11Bにより粘性流体23Aおよび23Bを掬い上げながら回転し、突起体11Aおよび11Bの回転方向側の面が粘性流体23Aおよび23Bを押して推進力を与えるように作用する。
突起体11Aは、突起体11Bより高く形成しているので、突起体11Aが粘性流体23Aに作用する推進力は、突起体11Bが粘性流体23Bに対して作用する推進力よりも強くなる。よって、バランサ8Bの粘性流体23Bは、バランサ8Aの粘性流体23Aに比較して少許遅い流速となる。
ドラム3の回転が増加するに従って、バランサ8Aの粘性流体23Aは、環状容器81の外周側に張り付いた状態となり、環状容器81内周側の膨出部82bに形成した突起体11Aには接触しなくなる。そのため、粘性流体23Aには、突起体11Aの押す力が作用せず、粘性流体23Aには、遠心力と、環状容器81との摩擦抵抗による推進力が作用する。この状態での粘性流体23Aの推進力は、突起体11Aの作用する状態の推進力より弱くなり、粘性流体23Aと転動体9Aは、アンバランスを解消する方向に力学現象通りに自由に移動可能となる。
更にドラム3の回転が増加すると、バランサ8Bにおいても、粘性流体23Bは、環状容器81の外周側に張り付いた状態となり、環状容器81内周側の膨出部82bに形成した突起体11Bには接触しなくなる。そのため、粘性流体23Bには、突起体11Bの押す力が作用せず、粘性流体23Bの推進力がより弱くなり、粘性流体23Bと転動体9Bは、粘性流体23Bの推進力にかかわらず、アンバランスを解消する方向に力学現象通り
に自由に移動可能となる。
本実施の形態5は、前端部に位置するバランサ8Aの転動体9Aと、後端部に位置するバランサ8Bの転動体9Bとの間で、回転移動を開始する回転数に差を設けることができる。従って、この構成により、ドラム3の振動の増長を防止することができる。これは、バランサ8Aおよび8Bのそれぞれの環状容器内面に形成した突起体11Aと11Bの形状を異ならせることで容易に実現することができる。
本実施の形態5では、突起体11Aおよび11Bの粘性流体23Aおよび23Bに作用する推進力を異ならせる形態として、突起体11Aと突起体11Bの高さを変えることにより、隣り合う突起体11A間の容積と隣り合う突起体11B間の容積を異ならせているが、突起体11Bの回転方向側の面を法線に対する角度を変化させた形態としてもよい。突起体11Bが粘性流体23Bを押すように作用する力は、突起体11Bの回転側の面の法線に対する角度によって任意に調整することができる。
例えば、図9に示す突起体11と同様に、突起体11は、ドラム3の円周方向の一方の突起A面11Aの面積を、他方の突起B面11Bの面積よりも大きく形成する。この突起体11を形成したボールバランサ8をドラム3の前端部と後端部に前後逆向きに装着する。これにより、一方のボールバランサ8の突起体11が回転方向側に突起A面11Aが位置し、他方のボールバランサ8の突起体11が回転方向側に突起B面11Bを位置させることができる。
また、図10に示す突起体11と同様に、ドラム3の回転方向の進行方向に面する突起D面11Dを、進行方向に凹状の形状に形成するとともに、その面積を進行方向の逆方向に面する突起C面11Cの面積よりも大きく形成する。進行方向に面する突起D面11Dを凹状に形成することにより、粘性流体23に対する抵抗を大きくし、突起C面11Cよりも進行方向へ抗力111を大きく加える構成にすることができる。この構成においても、突起体11を形成したボールバランサ8をドラム3の前端部と後端部に前後逆向きに装着することで、ドラム3回転時の粘性流体23Aおよび23Bに作用する推進力を異ならせることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態6では、図示しないが、バランサ8Aの粘性流体23Aとバランサ8Bの粘性流体23Bの液量を異ならせている。本実施の形態6では、バランサ8Aの粘性流体23Aを、バランサ8Bの粘性流体23Bより多くしている。
突起体11は、鋸歯状に形成され、回転方向側の面が、法線に対して略直角になるように形成し、突起体11間に粘性流体23Aおよび23Bが収納される空間を有している。
ドラム3の前端部に配設したバランサ8Aと、後端部に備えたバランサ8Bは、同一構造をしている。バランサ8Aおよび8Bは、突起体11が同じ方向に向くようにドラム3に配設される。
ドラム3に配設したバランサ8Aおよび8Bは、ドラム3が脱水工程時のドラム3の回転方向C1に回転すると、粘性流体23Aおよび23Bが集まっているドラム3の下方位置で突起体11間の空間により粘性流体23Aおよび23Bを掬い上げながら回転し、突起体11の回転方向側の面で粘性流体23Aおよび23Bを押すようにして推進力を与えるように作用する。
ドラム3の後端部に配設したバランサ8Bは、バランサ8Aよりも粘性流体23Bの液
量が少ない。よって、バランサ8Bの突起体11が粘性流体23Bに与える推進力は、バランサ8Aの突起体11が粘性流体23Aに与える推進力より少ない。従って、バランサ8Bの粘性流体23Bは、バランサ8Aの粘性流体23Aに比較して少許遅い流速となる。
本実施の形態6は、前端部に位置するバランサ8Aの転動体9Aと、後端部に位置するバランサ8Bの転動体9Bとの間で、回転移動を開始する回転数に差を設けることができる。従って、この構成により、ドラム3の振動の増長を防止することができる。
本実施の形態6においても、突起体11は、環状容器81の内周側に形成しているので、ドラム3の回転が増大した後は、バランサ8Aおよび8Bの粘性流体23Aおよび23Bが環状容器81外周側に移動し、突起体11に接触しなくなる。従って、粘性流体23Aおよび23Bの転動体9に対する抗力が弱くなり、バランサ8Aにおいては粘性流体23Aと転動体9が、バランサ8Bにおいては粘性流体23Bと転動体9がアンバランスを打ち消すように力学現象通りに自由に移動可能となる。
バランサ8Aの粘性流体23Aとバランサ8Bの粘性流体23Bとに、異なる粘性の流体を用いても同様の効果を奏する。
(実施の形態7)
本実施の形態7では、図示しないが、バランサ8Aの転動体9Aの硬度とバランサ8Bの転動体9Bの硬度とを異ならせている。
図21に示すように、硬度が変化することにより転動体9Aが回転移動を開始する時間が異なる。バランサ8Aの転動体9Aが回転移動を開始する時間と、バランサ8Bの転動体9Bが回転移動を開始する時間との差が、所望の回転数となるように転動体9Aの硬度と転動体9Bの硬度を選択する。
本実施の形態7は、前端部に位置するバランサ8Aの転動体9Aと、後端部に位置するバランサ8Bの転動体9Bとの間で、回転移動を開始する回転数に差を設けることができる。従って、この構成により、ドラム3の振動の増長を防止することができる。
また、転動体9Aの中心となる球体の材料と転動体9Bの中心となる球体の材料を異ならせてもよい。材料を異ならせることにより、転動体9Aと転動体9Bの重量が異なる。重量が異なることにより、粘性流体23Aおよび23Bの推進力による移動量が異なる。従って、転動体9Aの重量と転動体9Bの重量を適宜選択することにより、バランサ8Aの転動体9Aが回転移動を開始する時間と、バランサ8Bの転動体9Bが回転移動を開始する時間との差が、所望の回転数となるように設定することができる。
転動体9Aおよび9Bの重量は、転動体9Aおよび9Bの中心となる球体の材料および直径を調整することにより設定することが可能である。
さらに、バランサ8Aの環状容器に収納する転動体9Aの数量とバランサ8Bの環状容器に収納する転動体9Bの数量とを異ならせてもよい。
転動体9Aの数量と転動体9Bの数量を適宜選択することにより、バランサ8Aの転動体9Aが回転移動を開始する時間と、バランサ8Bの転動体9Bが回転移動を開始する時間との差が、所望の回転数となるように設定することができる。
また、バランサ8Aの環状容器81の収納部82aとバランサ8Bの環状容器81の収
納部82aが内面の摩擦抵抗を異ならせて形成し、転動体9Aと転動体9Bの受ける抗力が異なるように形成することもできる。
バランサ8Aとバランサ8Bの転動体9Aおよび9Bの数量を異ならせても同様の効果が得られる。
本実施の形態7においても、突起体11は、環状容器81の内周側に形成しているので、ドラム3の回転が増大した後は、バランサ8Aおよび8Bの粘性流体23Aおよび23Bが環状容器81外周側に移動し、突起体11に接触しなくなる。従って、粘性流体23Aおよび23Bの転動体9に対する抗力が弱くなり、粘性流体23Aおよび23Bと転動体9がアンバランスを打ち消すように力学現象通りに自由に移動可能となる。
(実施の形態8)
上述した実施の形態1から実施の形態7は、バランサ8Aの環状容器81とバランサ8Bの環状容器81を同じ大きさに形成している。
本実施の形態8は、図示しないが、一方の環状容器81を、他方の環状容器81より小さく形成している。小さい環状容器81は、内部空間も小さくなる。従って、転動体9Aおよび9bの硬度、重量、数量、また、粘性流体23Aおよび23Bの液量、粘性を適宜選択することにより、バランサ8Aの転動体9Aが回転移動を開始する時間と、バランサ8Bの転動体9Bが回転移動を開始する時間との差が、所望の回転数となるように設定することができる。
また、バランサ8Aの環状容器とバランサ8Bの環状容器を同じ大きさに形成し、一方の環状容器の内部空間を他方の環状容器の内部空間より小さく形成してもよい。
この場合も、転動体9Aおよび9bの硬度、重量、数量、また、粘性流体23Aおよび23Bの液量、粘性を適宜選択することにより、バランサ8Aの転動体9Aが回転移動を開始する時間と、バランサ8Bの転動体9Bが回転移動を開始する時間との差が、所望の回転数となるように設定することができる。
本実施の形態8においても、突起体11は、環状容器81の内周側に形成しているので、ドラム3の回転が増大した後は、バランサ8Aおよび8Bの粘性流体23Aおよび23Bが環状容器81外周側に移動し、突起体11に接触しなくなる。従って、粘性流体23Aおよび23Bの転動体9に対する抗力が弱くなり、粘性流体23Aおよび23Bと転動体9がアンバランスを打ち消すように力学現象通りに自由に移動可能となる。
(実施の形態9)
図23は、本発明の実施の形態9におけるドラム式洗濯機の側面断面図である。なお、上述した実施形態と同一部品は同一符号を付して説明を省略する。
本実施の形態9においては、ドラム開口部3b側のドラム端周部近傍にボールバランサ8が設けられ、反対側のドラム底面側のドラム端周部近傍に流体バランサ31が設けられている。ボールバランサ8は、実施の形態1から実施の形態8のいずれかの構成を有するものであり、同一符号を付して説明を省略する。流体バランサ31は、環状容器81の内部に錘として粘性流体23が半分程度封入されている。この粘性流体23は、通常の水あるいは冬季の凍結防止を考慮して塩水、シリコンオイル等が用いられる。
図24に示されるように、ドラム3が停止している状態では、洗濯物18はドラム底面3b側の下部に位置する傾向があり、流体バランサ31を構成する環状容器81の内部に
ある流体23は下部に留まっている。さらに、ボールバランサ8の環状容器81の内部にある複数個の転動体9も下部に集まっている。なお、図24では、ボールバランサ8の環状容器81の内部にある粘性流体23は記載していないが、常に複数の転動体9と環状容器81との間に適量存在している。
本実施の形態においては、ボールバランサ8がアンバランス状態を解消する補正能力が高く、流体バランサ31がアンバランス状態を補正する動作が流体の特性上俊敏に動作する特性を有している。ドラム3の開口部および底面部にボールバランサ8と流体バランサ31を配置することにより、それぞれの特性を生かしたアンバランス解消動作を行なうことで、効率よくアンバランスを低減することができる。
なお、偏心荷重のアンバランスによるドラムの振れ回りの振動幅は、ドラム3のどの場所でも同じと考えられるが、実際には、ドラム底面3b近傍では底面に直結された回転軸14が振動の一部を吸収するため振動幅が小さく、ドラム開口部3bの近傍の場合は振動幅が大きい。
本実施の形態では、振動幅が大きいドラム開口部3bにアンバランスの解消能力の高いボールバランサ8を配置しているので、振動幅が大きいすなわち加振力が大きいことでボールバランサ8内の転動体9の移動が促進され、アンバランスを効率よく低減することが可能となる。
また、ボールバランサ8をドラム底面3b側のドラム端周部近傍に配設し、流体バランサ31をドラム開口部3b側のドラム端周部近傍に配設してもよい。ボールバランサ8は、流体バランサ31に比較してアンバランスを解消する補正能力が高いため、ドラム底面3b側のドラム端周部近傍に配設することにより、回転軸14を含む回転機構に対する負荷を軽減することが可能となる。さらに、ドラム3がドラム底面3b側が低く傾斜した構成においては、アンバランスの発生確率がドラム底面3b側が高くなるため、アンバランス解消能力が高いボールバランサ8をドラム底面側3bに配置することによりアンバランスの解消の効果が高くなる。
本実施の形態9においても、突起体11は、環状容器81の内周側に形成しているので、ドラム3の回転が増大した後は、ボールバランサ8粘性流体23が環状容器81外周側に移動し、突起体11に接触しなくなる。従って、粘性流体23の転動体9に対する抗力が弱くなり、粘性流体23と転動体9がアンバランスを打ち消すように力学現象通りに自由に移動可能となる。
ボールバランサ8のアンバランス解消能力と、流体バランサ31のアンバランス解消能力があいまって、効率よくドラム3のアンバランスを低減できる。
(実施の形態10)
本発明の実施の形態10を図25から図27に基づいて説明する。上記実施の形態と同一部品は同一符号を付して説明を省略する。
図25は、ボールバランサ8をドラム軸正面側Aから見た断面図、図26は、図25におけるC−C断面図、図27は、図26におけるD−D断面図である。
ボールバランサ8の環状容器81は、粘性流体23と転動体9を収納する内部空間82を有している。環状容器81における内部空間82の内周側の角部には、突起体11を形成している。突起体11は、転動体9に接触しない位置と高さに形成している。
突起体11は、図9に示す突起体11と同様に、ドラム3の円周方向に対する一方の突起A面11Aの面積を、他方の突起B面11Bの面積よりも大きく形成している。これにより、ボールバランサ8をドラム3に装着する際に、突起A面11Aと突起B面11Bのどちらを回転方向に向けるかによって、粘性流体23の抗力を調整することが可能となる。これにより、製品に組み込む際に、突起体11の回転方向側の形状を選択することによって、粘性流体23の抗力を調整することができる。また、ボールバランサ8をドラム3の前端部と後端部に装着する構成において、突起体11の回転方向側の形状を選択することにより、前端部と後端部に装着するボールバランサ8の粘性流体23の抗力を異ならせることができ、共通のボールバランサ8を用いて、安価に構成することができる。
実施の形態10の構成においては、ドラム3が回転を開始すると、ドラム3の回転数の上昇に伴ってボールバランサ8内の粘性流体23は、遠心力と、環状容器81との摩擦抵抗と、突起体11による推進力によって環状容器81の外周の回転方向側に移動する。転動体9は、粘性流体23からの抗力によって、環状容器81の回転方向側に移動する。
ドラム3の回転数がさらに増大すると、やがて、ボールバランサ8内の粘性流体23は、遠心力により環状容器81の最上部を越えた状態となる。
転動体9は、環状容器81内面との摩擦抵抗と、粘性流体23の抗力によってさらにドラム3の回転方向側に移動する。
ドラム3の回転数の上昇に伴って、ボールバランサ8内の粘性流体23は、環状容器81内面との摩擦抵抗と、突起体11の作用によって移動速度が増大し、環状容器81外周に、より広がった状態となる。
転動体9は、環状容器81内面との摩擦抵抗と粘性流体23の抗力によって、環状容器81の最上部に向かって押し上げられ、転動体9が環状容器81の最上部を越えて回転移動を開始する。
140rpmの回転数以上では、転動体9が環状容器81の最上部を連続的に越えて回転移動し、転動体9がドラム3と共回りの状態となる。転動体9の共回りの状態とは、転動体9と環状容器81が同じ回転数もしくは転動体9が環状容器81からやや遅れた回転数で共に回転をする状態をいう。
この状態では、粘性流体23は、環状容器81の外周に広がり、環状容器81内周側の突起体11に接触しない状態となっている。転動体9は、粘性流体23からの抗力を受けることなく、遠心力と、環状容器81内面との摩擦抵抗によって回転する。転動体9は、粘性流体23の抗力の影響を受けないので、ドラム3内にアンバランスを解消する方向に自由に移動することが可能となり、効率よくアンバランスを解消することができる。
本実施の形態10においても、突起体11は、環状容器81の内周側に形成しているので、ドラム3の回転が増大した後は、バランサ8Aおよび8Bの粘性流体23Aおよび23Bが環状容器81外周側に移動し、突起体11に接触しなくなる。従って、突起体11における抗力が粘性流体23Aおよび23Bに働かないため、粘性流体23Aおよび23Bの転動体9に対する抗力が弱くなり、粘性流体23Aおよび23Bと転動体9がアンバランスを打ち消すように力学現象通りに自由に移動可能となる。
なお、実施の形態1〜10について、実施の形態間の組み合わせを否定するものではなく、全ての組み合わせが可能である。本発明の内容を逸脱しない範囲で、実施の形態1〜10以外にも、様々に変更することが可能である。