以下、本発明について詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下「本実施形態」という。)により本発明が限定されるものではない。
本実施形態に係る2成分形硬化性組成物(以下「本実施形態の組成物」という。)は、有機ポリイソシアネート化合物と水酸基を有するポリサルファイドポリマーを含む水酸基含有化合物を反応させて得られるポリサルファイド含有プレポリマー(以下、ポリサルファイド含有プレポリマーを単に「プレポリマー」という場合もある。)を含む主剤と、金属イオンを含有する水を含む硬化剤を含有する2成分形硬化性組成物であり、これをシーリング材組成物として用いることができる。
<主剤>
本実施形態の組成物の主剤は、有機ポリイソシアネート化合物と水酸基を有するポリサルファイドポリマーを含む水酸基含有化合物を反応させて得られるポリサルファイド含有プレポリマーを含むものである。ポリサルファイド含有プレポリマーは、具体的には、有機ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基(NCO基)が水酸基を有するポリサルファイドポリマーを含む水酸基含有化合物の水酸基(OH基)に対して過剰となるように反応させて得られ、そのプレポリマー中にはイソシアネート基を有するものである。
ポリサルファイド含有プレポリマーの製造方法としては、有機ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と水酸基を有するポリサルファイドポリマーを含む水酸基含有化合物の水酸基のモル比(イソシアネート基/水酸基)が1.2/1〜10/1、好ましくは1.4/1〜2.2/1となる範囲で同時あるいは逐次に反応させて、ポリサルファイド含有プレポリマー中にイソシアネート基が残存するようにして製造する方法がある。
なお、ポリサルファイド含有プレポリマーは、プレポリマー中のイソシアネート基が湿気等の水と反応し尿素結合を形成して硬化させることにより、1成分形硬化性組成物としても使用することができる。
イソシアネート基/水酸基のモル比が1.2/1を下回ると、得られるポリサルファイド含有プレポリマーの架橋点が少なくなりすぎ、本実施形態の組成物の硬化後の伸びや引張強度等のゴム物性が低下して接着性が乏しいものとなる。イソシアネート基/水酸基のモル比が10/1を超えると、水と反応したときに炭酸ガスの発生量が多くなって発泡の原因となる。
ポリサルファイド含有プレポリマー中のイソシアネート基の含有量は、0.3〜15質量%が好ましく、特に0.5〜5質量%が好ましい。イソシアネート基の含有量が0.3質量%未満の場合は、前記と同様の理由でゴム物性が低下して十分な接着性が得られない。イソシアネート基の含有量が15質量%を超える場合も、前記と同様の理由で炭酸ガスによる発泡が生じ好ましくない。
ポリサルファイド含有プレポリマーの製造の際に使用する有機ポリイソシアネート化合物は、その化合物中にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。有機ポリイソシアネート化合物としては、具体的には、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。また、これらの有機ポリイソシアネート化合物を変性して得られる変性ポリイソシアネートが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、具体的には、TDI(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、あるいはこれらの混合物のトルエンジイソシアネート)、MDI(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI)、あるいはこれらの混合物のジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルエーテルジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDIまたはポリメリックMDI)が挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネートが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、シクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)が挙げられる。
変性ポリイソシアネートとしては、上述の有機ポリイソシアネート化合物を変性して得られるカルボジイミド変性ポリイソシアネート、ビウレット変性ポリイソシアネート、アロファネート変性ポリイソシアネート、イソシアヌレート変性ポリイソシアネートが挙げられる。
有機ポリイソシアネート化合物は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの有機ポリイソシアネート化合物のうち、芳香族ポリイソシアネートの中ではTDI、MDIが好ましく、脂肪族ポリイソシアネートの中ではHDI、脂環族ポリイソシアネートの中ではIPDI、H6XDIが好ましい。
また、ポリサルファイド含有プレポリマーの耐候性という観点から、特に脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが好ましい。
ポリサルファイド含有プレポリマーの製造の際に使用する水酸基を有するポリサルファイドポリマーを含む水酸基含有化合物は、その化合物中に1つ以上の水酸基を有する化合物であり、かつ、少なくとも水酸基を有するポリサルファイドポリマーを含むものである。水酸基を有するポリサルファイドポリマーを含む水酸基含有化合物の水酸基が有機ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応することで、ポリサルファイド含有プレポリマーを得ることができる。また、ポリサルファイド含有プレポリマーの製造の際に水酸基を有するポリサルファイドポリマーと水酸基を有するポリサルファイドポリマー以外の水酸基含有化合物を併用することもできる。
水酸基を有するポリサルファイドポリマーは、そのポリマー中に水酸基と、ポリマー骨格としてポリマー骨格(主鎖)中にサルファイド結合またはポリサルファイド結合をそれぞれ有するものである。
水酸基を有するポリサルファイドポリマーのポリマー骨格としては、サルファイド結合またはポリサルファイド結合を有するポリマーであれば特に制限されない。また、ポリマー骨格中に例えば、ジエチルホルマール骨格、エーテル結合、ウレタン結合、エステル結合を有していても良い。さらに、ポリマー中のサルファイド結合またはポリサルファイド結合の位置は、特に限定されない。
水酸基を有するポリサルファイドポリマーとしては、具体的には、例えば、下記式(4)で示されるものが挙げられる。
(但し、式中、Xの平均値は1〜5であり、nは2〜50の整数である。R
1は炭素数2〜16のアルキル基またはエーテル結合含有アルキル基である。R
2は炭素数1〜100のアルキル基またはエーテル結合含有アルキル基である。)
前記R1としては、−CH(CH3)CH2−、−CH2CH2−O−CH2CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2−O−CH2−O−CH2CH2−、−CH(CH3)CH2−O−CH(CH3)−O−CH(CH3)CH2−、−CH2CH2−O−(CH2CH2−O)p−CH2CH2−(p=1から30)が挙げられる。前記R1は、粘度が低く作業性や硬化性が良好な点から、−CH2CH2−O−CH2−O−CH2CH2−(エチルホルマール基)が好ましい。
前記R2としては、−CH(CH3)CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH(CH3)C(=O)O−CH2(C3H6O)n(C3H6)−、−CH2CH2C(=O)O−CH2(C3H6O)n(C3H6)−、−CH2CH(CH3)C(=O)O−CH2(C2H4O)n(C2H4)−、−CH2CH2C(=O)O−CH2(C2H4O)n(C2H4)−が挙げられる。
この具体例で表される水酸基を有するポリサルファイドポリマー中、−(R1−Sx)−で示される構造単位は、主鎖の全て(100質量%)を形成しているのが好ましく、他の構造単位を含有する場合であっても5〜95質量%を形成しているのが好ましい。
上述の水酸基を有するポリサルファイドポリマーとしては市販品を用いることができ、その具体例としては、本明細書の実施例で使用したAKZO NOBEL社製のTHIOPLASTポリマー、東レ・ファインケミカル社製(東レチオコール社製)のLP282ポリマーが挙げられる。
水酸基を有するポリサルファイドポリマーの数平均分子量(Mn)は、500〜100,000であるのが好ましく、500〜20,000であるのがより好ましい。なお、本発明において数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(Gel Permeation Chromatography:GPC)によって測定されたものである。
水酸基を有するポリサルファイドポリマーは、例えば、特開平4−363325号公報、特開2010−116452号公報に記載されているように、ポリサルファイドポリマーに水酸基含有の(メタ)アクリレートを付加反応させる方法により製造することができる。また、ポリサルファイドポリマーにエポキシを反応させる方法により製造することができる。
水酸基を有するポリサルファイドポリマーは、ポリサルファイドポリマーを変性し末端に水酸基を有する変性ポリサルファイドポリマーとしてもよい。水酸基を有する変性ポリサルファイドポリマーは、水酸基を有し、主鎖にサルファイド結合またはポリサルファイド結合を有するポリマーである。
水酸基を有するポリサルファイドポリマー(水酸基を有する変性ポリサルファイドポリマー)以外の水酸基含有化合物としては、ポリオキシアルキレンポリオール、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を挙げることができる。なお、本発明において「(メタ)アクリル」とは「アクリルおよび/またはメタクリル」、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味する。
ポリオキシアルキレンポリオールは、末端が水酸基であり有機ポリイソシアネート化合物と反応してウレタン結合(基)を形成するものである。ポリサルファイド含有プレポリマーの製造の際にポリオキシアルキレンポリオールを使用すると貯蔵安定性がより改善される。また、本実施形態の組成物の硬化後のゴム物性(伸びや引張接着性等)の調整が比較的容易となり、ゴム物性に優れた硬化物を得やすい。
ポリオキシアルキレンポリオールとしては、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンエチレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。
ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量(Mn)としては、200〜20,000が好ましい。数平均分子量(Mn)が200未満では硬化物がもろくなり、数平均分子量(Mn)が20,000を超えると硬化物の物性が柔らかくなる。
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体としては、ポリサルファイド含有プレポリマーの粘度の点から、アルコール性水酸基含有(メタ)アクリル系単量体が好ましい。具体的には、エタンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,14−テトラデカンジオールジアクリレート、1,15−ペンタデカンジオールジアクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の多価アルコールのモノ(メタ)アクリレート類または水酸基残存ポリ(メタ)アクリレート類が挙げられる。これらはいずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。また場合により炭素数9以下の(メタ)アクリル系単量体の1種または2種以上と炭素数10以上の(メタ)アクリル系単量体の1種または2種以上とを組み合わせて使用してもよい。
本実施形態の組成物の主剤は、更に、潜在性硬化剤を含むことができる。潜在性硬化剤としては、水と反応して活性水素基を生成する(加水分解型)潜在性硬化剤が挙げられる。この潜在性硬化剤は、密閉状態すなわち湿気等の水を遮断した状態では硬化剤として機能しないが、密閉状態を開封(開放)し湿気等の水と接触させると加水分解して活性水素基を生成する。生成した活性水素基はポリサルファイド含有プレポリマーと反応し架橋硬化して硬化物となる。
水と反応して活性水素基を生成する潜在性硬化剤としては、具体的には、ポリアミンとカルボニル化合物との反応物であるケチミン化合物、エナミン化合物;アミノアルコールとカルボニル化合物との反応物であるオキサゾリジン化合物等のアミン系潜在性硬化剤を挙げることができる。本実施形態の組成物の硬化時間の短縮や保存安定性の観点から、オキサゾリジン化合物を使用することが好ましい。
オキサゾリジン化合物を潜在性硬化剤として用いることにより、本実施形態の組成物は、貯蔵安定性に優れると共に、硬化性に優れ、硬化時間を大幅に短縮することができる。また、オキサゾリジン化合物の配合量を調整することで、本実施形態の組成物の硬化速度を調整することができ、硬化時の耐発泡性も良好にすることができる。
オキサゾリジン化合物は、酸素原子と窒素原子とを含む飽和5員環の複素環であるオキサゾリジン環を分子内に1個以上、好ましくは1〜6個有する化合物である。オキサゾリジン化合物は、水と反応して加水分解を受け、オキサゾリジン環が2級アミノ基とアルコール性水酸基を生成(再生)することにより、ポリサルファイド含有プレポリマーの潜在性硬化剤として機能する。ポリサルファイド含有プレポリマーのイソシアネート基が水と反応すると尿素結合を形成して硬化するが、この際、炭酸ガスも発生し、硬化物の中に炭酸ガスによる気泡が生じて外観の悪化、硬化物の破断、接着性の低下等の不具合を生じることがある。一方、ポリサルファイド含有プレポリマーとオキサゾリジン化合物とを混合したものを水と反応させた場合は、まず水とオキサゾリジン化合物が優先的に反応し、オキサゾリジン化合物のオキサゾリジン環が2級アミノ基とアルコール性水酸基(活性水素基)を生成する。次に生成した活性水素基(特に2級アミノ基)がイソシアネート基と優先的に反応するため、水とイソシアネート基の反応による炭酸ガスの発生を抑制し、本実施形態の組成物の硬化時の発泡を防止できる。
また、ポリサルファイド含有プレポリマーに使用する有機ポリイソシアネート化合物として、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートを使用すると本実施形態の組成物の硬化速度が極端に遅延してしまう場合がある。本実施形態の組成物にポリサルファイド含有プレポリマーとオキサゾリジン化合物を併用すると、本実施形態の組成物の硬化速度を速められ、後述する硬化促進触媒の使用量を低減することができる。
オキサゾリジン化合物としては、ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物、エステル基含有オキサゾリジン化合物、オキサゾリジンシリルエーテル化合物、カーボネート基含有オキサゾリジン化合物が挙げられる。これらのオキサゾリジン化合物は、水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の水酸基と、有機ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基や有機カルボン酸化合物のカルボキシル基とを反応させる等により得られる。これらのオキサゾリジン化合物のうち、製造し易く粘度が低いという観点からウレタン結合含有オキサゾリジン化合物が好ましい。
水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物としては、具体的には、アルカノールアミンの2級アミノ基と、ケトン化合物またはアルデヒド化合物のカルボニル基との脱水縮合反応により得られるN−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンが挙げられる。この水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の製造方法としては、アルカノールアミンの2級アミノ基1モルに対し、アルデヒド化合物またはケトン化合物のカルボニル基を1モル以上、好ましくは1〜1.5モル、更に好ましくは1〜1.2モル使用し、トルエン、キシレン等の溶媒中で、加熱、還流し、副生する水を除去しながら脱水縮合反応を行う方法が挙げられる。過剰のアルデヒド化合物やケトン化合物は蒸留により除去すればよい。
アルカノールアミンとしては、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(2−ヒドロキシプロピル)アミンが挙げられる。ケトン化合物としては、アセトン、ジエチルケトン、イソプロピルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−tert−ブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが挙げられる。アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2−メチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、2−メチルペンチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、3,5,5−トリメチルヘキシルアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物;ベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、トリメチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、イソプロピルベンズアルデヒド、イソブチルベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、ジメトキシベンズアルデヒド、トリメトキシベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物が挙げられる。これらはいずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の製造の容易さと、得られる本実施形態の組成物が硬化するときの発泡防止性に優れている点で、アルカノールアミンとしてはジエタノールアミンが好ましく、ケトン化合物またはアルデヒド化合物のうちアルデヒド化合物が好ましく、さらにイソブチルアルデヒド、2−メチルペンチルアルデヒド、ベンズアルデヒドが好ましい。
水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の具体的な例として、2−イソプロピル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2−(1−メチルブチル)−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2−フェニル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジンが挙げられる。
ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物としては、有機ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の水酸基とをイソシアネート基/水酸基のモル比が0.9/1〜1.2/1、好ましくは0.95/1〜1.05/1となるように使用し、有機溶剤の存在下または不存在下に50〜120℃の温度で反応させて得られるものが好適に挙げられる。
ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物の製造に用いられる有機ポリイソシアネート化合物は、上述のポリサルファイド含有プレポリマーの製造に用いられるのと同様のものが挙げられる。このうちウレタン結合含有オキサゾリジン化合物の結晶化度を低下させ、本実施形態の組成物の作業性を良好にできる点で、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートが好ましく、特にキシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が好ましい。
エステル基含有オキサゾリジン化合物は、上述の水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物とジカルボン酸またはポリカルボン酸の低級アルキルエステルとの反応によって得ることができる。
オキサゾリジンシリルエーテル化合物は、上述の水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物と、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシランとの脱アルコール反応により得られる。
カーボネート基含有オキサゾリジン化合物は、上述の水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物とジアリルカーボネート等のカーボネートとを、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールを用いて反応させることによって得ることができる。
これらのオキサゾリジン化合物は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、オキサゾリジン化合物は、ポリサルファイド含有プレポリマーのイソシアネート基と5〜35℃の室温(または常温)で反応するアミノ基や水酸基等の活性水素含有官能基、あるいはイソシアネート基を有していないことが好ましい。これはポリサルファイド含有プレポリマーの粘度上昇やオキサゾリジン化合物の発泡防止性能の低下を防止するためである。但し、上述のウレタン結合含有オキサゾリジン化合物の製造において、モル比の選択により少量の活性水素含有官能基やイソシアネート基が分子内に残存する場合があるが、この場合は本実施形態の目的を達成する上で有していないとみなすことができる。なお、前記「少量」とは、分子内に残存する活性水素含有官能基またはイソシアネート基の量が、好ましくはオキサゾリジン化合物1g当たり、0.05ミリモル以下、さらに好ましくは0.02ミリモル以下である。
潜在性硬化剤としてオキサゾリジン化合物を使用する場合の配合量は、ポリサルファイド含有プレポリマーのイソシアネート基1モルに対して、オキサゾリジン化合物が加水分解して生成(再生)する2級アミノ基の活性水素が0.1〜1モルとなるように配合するのが好ましく、0.3〜1モルとなるように配合するのがより好ましい。オキサゾリジン化合物が加水分解して生成(再生)する2級アミノ基の活性水素が0.1モル未満では発泡防止が不十分となり好ましくない。
本実施形態の組成物の主剤は、更に、上述の潜在性硬化剤の反応促進剤として、カルボン酸シリルエステル化合物を含むことができる。本実施形態の組成物では、ポリサルファイド含有プレポリマーと潜在性硬化剤としてオキサゾリジン化合物を組み合わせた場合、カルボン酸シリルエステル化合物を含むのが好ましい。カルボン酸シリルエステル化合物は、オキサゾリジン化合物の反応促進剤(以下「開環触媒」という場合もある。)として用いられる。反応促進剤(開環触媒)はオキサゾリジン化合物が水と反応して活性水素基を生成するのを促進させる。
カルボン酸シリルエステル化合物は、下記式(5)および(6)で表されるカルボン酸シリルエステル基を含み、下記式(5)で表されるカルボン酸シリルエステル基の基数Mと下記式(6)で表されるカルボン酸シリルエステル基の基数Nとが下記式(7)の関係を満たすものが好ましい。
R1COO−Si≡ ・・・(5)
R2COO−Si≡ ・・・(6)
0.10≦M/(M+N)≦0.80 ・・・(7)
(式中、R1は炭素数13〜21、好ましくは13〜17の1価の炭化水素基を表し、R2は炭素数5〜11、好ましくは7〜11のアルキル基を表す。)
カルボン酸シリルエステル化合物は、上記式(5)および(6)で表されるカルボン酸シリルエステル基をそれぞれ異なる分子中に有する化合物を併用するものであっても、これらのカルボン酸シリルエステル基を同一分子中に有する化合物自体または当該化合物を含有するものであってもよい。中でも、本実施形態の組成物や開環触媒の生産性の観点から後者であるのが好ましい。なお、本実施形態においては、後者の態様として、上記式(5)および(6)で表されるカルボン酸シリルエステル基のケイ素(Si)原子が同一原子である態様も含むものとする。
上記式(5)中、R1の炭素数13〜21の1価の炭化水素基としては、具体的には、例えば、アルケニル基等の不飽和またはアルキル基等の飽和の1価の脂肪族炭化水素基;シクロへキシル基等の1価の脂環族炭化水素基;フェニル基、トリル基、ベンジル基、スチリル基等の1価の芳香族含有炭化水素基;が挙げられる。具体的には、アルキル基として、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基が好適に例示される。
上記式(6)中、R2の炭素数5〜11のアルキル基としては、具体的には、例えば、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1−メチルへキシル基、2−メチルへキシル基、3−メチルへキシル基、4−メチルへキシル基、5−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−ウンデシル基が挙げられる。中でも、1−エチルペンチル基、n−ウンデシル基であるのが好ましい。
一方、上記式(7)で示されるように、上記式(5)で表されるカルボン酸シリルエステル基の基数Mと上記式(6)で表されるカルボン酸シリルエステル基の基数Nの割合(M/(M+N))は、0.10〜0.80の範囲であり、0.20〜0.80の範囲であるのが好ましい。
カルボン酸シリルエステル化合物は、上記式(5)および(6)で表されるカルボン酸シリルエステル基を包含する下記式(8)および(9)で表されるシロキサン単位を有するのが好ましい。
上記式(8)、上記式(9)中、R
1は炭素数13〜21の1価の炭化水素基を表し、R
2は炭素数5〜11のアルキル基を表し、R
3は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基を表す。
ここで、上記式(8)中のR1および上記式(9)中のR2は、それぞれ、上記式(5)中において説明したR1および上記式(6)中において説明したR2と同様である。また、上記式(8)および(9)中、R3の置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、ビニル基、アリル基等の1価の脂肪族炭化水素基;シクロへキシル基等の1価の脂環族炭化水素基;フェニル基、トリル基、ベンジル基、スチリル基等の1価の芳香族炭化水素基;およびこれらを組合せた基;が挙げられる。具体的には、アルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基が好適に例示される。中でも、メチル基、フェニル基であるのが好ましい。
上記式(8)で表されるシロキサン単位としては、具体的には、下記式(I)の各式で表されるシロキサン単位が好適に例示される。
上記式(9)で表されるシロキサン単位としては、具体的には、下記式(II)の各式で表されるシロキサン単位が好適に例示される。
上記式(8)および(9)で表されるシロキサン単位は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
カルボン酸シリルエステル化合物が、更に、下記式(10)で表されるエーテル含有シリル基を有するのが好ましく、カルボン酸シリルエステルが、上記式(5)および(6)で表されるカルボン酸シリルエステル基ならびに下記式(10)で表されるエーテル含有シリル基を同一分子中に有する化合物であるのがより好ましい。
R6O−(R5O)r−R4−Si≡ ・・・(10)
(上記式(10)中、R4およびR5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R6は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはR13−(CO)−で表される有機基(R13は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)を表し、rは1以上の整数を表す。rが2以上の整数の場合、複数のR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
上記式(10)中、R4の置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基としては、具体的には、例えば、エチレン基、トリメチレン基(−CH2CH2CH2−)、プロピレン基(−CH(CH3)−CH2−)、テトラメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基が挙げられる。中でも、エチレン基、トリメチレン基が好ましい。
上記式(10)中のR5は、上記式(10)中のR4と同様であるが、rが2以上である場合、複数のR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。なお、上記式(10)中、−(OR5)r−は、その配列について特に制限されず、例えば、ランダム、ブロック、ランダムとブロックとの混合による配列が挙げられる。中でも、R5がエチレン基およびプロピレン基であるのが好ましい。即ち、−(OR5)r−が、−(OCH2CH2)−で表される繰返し単位と、−(OCH(CH3)CH2)−で表される繰返し単位とからなるのが好ましい。
また、上記式(10)中、R6としては、例えば、アルキル基、ビニル基、アリル基等の1価の脂肪族炭化水素基;シクロへキシル基等の1価の脂環式炭化水素基;フェニル基、トリル基、ベンジル基、スチリル基等の1価の芳香族炭化水素基;およびこれらを組合せた基;が挙げられる。具体的には、アルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基が好適に例示される。中でも、n−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基であるのが好ましい。
上記式(10)中、rの1以上の整数としては、5以上の整数であるのが好ましく、10〜100であるのがより好ましい。
カルボン酸シリルエステル化合物が、上記式(10)で表されるエーテル含有シリル基を包含する下記式(11)で表されるシロキサン単位を有するのが好ましい。
上記式(11)中、R3は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基を表し、R4およびR5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R6は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはR13−(CO)−で表される有機基(R13は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)を表し、rは1以上の整数を表す。rが2以上の整数の場合、複数のR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。ここで、上記式(11)中のR3は、上記式(8)および(9)中において説明したR3と同様である。また、上記式(11)中のR4、R5およびR6ならびにrは、それぞれ、上記式(10)中において説明したR4、R5およびR6ならびにrと同様である。
上記式(11)で表されるシロキサン単位としては、具体的には、下記式(III)で表されるシロキサン単位が好適に例示される。
上記式(11)で表されるシロキサン単位は、それぞれ1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
カルボン酸シリルエステル化合物として、上記式(8)および(9)で表されるシロキサン単位および上記式(11)で表されるシロキサン単位を、分子内部および分子末端の何れか一方または両方に含むポリシロキサンを用いるのが好ましい。
本実施形態においては、上記式(8)、(9)および(11)で表されるシロキサン単位は、その配列について特に限定されず、例えば、ランダム、ブロック、ランダムとブロックとの混合による配列が挙げられる。
上記ポリシロキサンは、上記式(8)、(9)および(11)で表されるシロキサン単位以外のシロキサン単位を有することができ、このようなシロキサン単位としては、例えば、下記式(12)で表されるシロキサン単位等が挙げられる。
上記式(12)中、R8は、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し、R9は、水素原子または1価の炭化水素基を表す。1価の炭化水素基としては、例えば、アルケニル基等の不飽和またはアルキル基等の飽和の1価の脂肪族炭化水素基;シクロへキシル基等の1価の脂環族炭化水素基;フェニル基、トリル基、ベンジル基、スチリル基等の1価の芳香族含有炭化水素基;が挙げられる。具体的には、アルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基が好適に例示される。中でも、メチル基、フェニル基であるのが好ましい。
上記式(12)で表されるシロキサン単位としては、具体的には、下記式(13)または(14)で表されるシロキサン単位が好適に例示される。
上記ポリシロキサンの分子末端は特に限定されず、末端基としては、例えば、−SiR10 3、−Si(OR10)3、−Si(R10)2(OH)(式中、R10は、炭素数1〜12の炭化水素基、具体的には、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し、複数のR10はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で表される基が挙げられ、特に、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基が好適に例示される。
上記ポリシロキサンの重合度は2〜1,000であるのが好ましく、10〜100であるのがより好ましい。ポリシロキサンの重合度がこの範囲であると、取り扱い性が良好となる。
上記ポリシロキサンのうち、上記式(8)および(9)で表されるシロキサン単位を有するポリシロキサンとしては、例えば、下記式(15)で表されるポリシロキサンが挙げられる。
上記式(15)中、R1は炭素数13〜21の1価の炭化水素基を表し、R2は炭素数5〜11のアルキル基を表し、R3は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基を表す。R10は炭素数1〜12の炭化水素基、具体的には、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し同一であっても異なっていてもよく、上記式(15)におけるaおよびbはそれぞれ独立に1以上の整数を表す。
ここで、上記式(15)中のR1およびR2は、それぞれ、上記式(5)中において説明したR1および上記式(6)中において説明したR2と同様であり、上記式(15)中のR3は、上記式(8)および(9)中において説明したR3と同様である。
上記式(15)中のaは、上記式(5)で表されるカルボン酸シリルエステル基を有するシロキサン単位、即ち、上記式(8)で表されるシロキサン単位の繰り返し単位数を表し、1以上の整数であり、1〜100であるのが好ましく、1〜50であるのがより好ましい。
上記式(15)中のbは、上記式(6)で表されるカルボン酸シリルエステル基を有するシロキサン単位、即ち、上記式(9)で表されるシロキサン単位の繰り返し単位数を表し、1以上の整数であり、1〜100であるのが好ましく、1〜50であるのがより好ましい。
上記式(15)中、カルボン酸シリルエステル基を有する2つのシロキサン単位のそれぞれは、その配列について特に限定されず、例えば、ランダム、ブロック、ランダムとブロックとの混合による配列が挙げられる。
上記式(15)で表されるポリシロキサンの具体例としては、下記式(16)で表されるポリシロキサンが挙げられる。
上記式(16)中、カルボン酸シリルエステル基を有する2つのシロキサン単位のそれぞれは、その配列について特に限定されず、例えば、ランダム、ブロック、ランダムとブロックとの混合による配列が挙げられる。
上記式(8)および(9)で表されるシロキサン単位を有するポリシロキサンの製造方法は特に限定されず、例えば、後述するSi−H基含有ポリシロキサンと所定のカルボン酸と反応させる方法により製造することができる。また、この反応には、触媒として、パラジウム、ロジウム、ニッケル、白金のような第VIII族の遷移金属錯体を使用することができる。
一方、このポリシロキサンのうち、上記式(8)および(9)で表されるシロキサン単位ならびに上記式(11)で表されるシロキサン単位を有するポリシロキサンとしては、具体的には、下記式(17)で表されるオルガノシロキサンが好適に例示される。
(R1COO)a(R2COO)bR3 cR7 dSiO(4−a−b−c−d)/2 ・・・(17)
0.10≦a/(a+b)≦0.8 ・・・(18)
1≦c<2 ・・・(19)
0.001≦d<1 ・・・(20)
1.95≦a+b+c+d≦2.60 ・・・(21)
上記式(17)中、R1は炭素数13〜21の1価の炭化水素基を表し、R2は炭素数5〜11のアルキル基を表し、R3は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基を表す。また、式中、R7は、−R4−(OR5)r−OR6で表されるポリエーテル含有基を表し、R4およびR5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R6は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはR13−(CO)−で表される有機基(R13は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)を表し、rは1以上の整数を表す。rが2以上の整数の場合、ポリエーテル含有基中の複数のR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、上記式(17)から(21)におけるa、b、cおよびdは、上記式(18)から(21)の関係を満たす数を表す。
ここで、上記式(17)中のR1およびR2は、それぞれ、上記式(5)中において説明したR1および上記式(6)中において説明したR2と同様である。また、上記式(17)中のR3は、上記式(8)および(9)中において説明したR3と同様である。また、上記式(17)中のR7が表すポリエーテル含有基(−R4−(OR5)r−OR6)中のR4、R5およびR6ならびにrは、それぞれ、上記式(10)中において説明したR4、R5およびR6ならびにrと同様である。
上記式(18)から(21)の関係を満たす数を表すa、b、cおよびdは、それぞれ、0.01≦a≦1.0、0.05≦b≦1.0、1.0≦c≦1.3、0.005≦d≦0.05であるのが好ましい。
上記式(17)中、カルボン酸シリルエステル基の合計基数に対するポリエーテル含有基の割合、即ち、d/(a+b)は、0.01〜0.7であるのが好ましく、0.01〜0.5であるのがより好ましい。
このようなオルガノシロキサンとしては、例えば、下記式(22)で表されるポリシロキサンが挙げられる。
上記式(22)中、R1は炭素数13〜21の1価の炭化水素基を表し、R2は炭素数5〜11のアルキル基を表し、R3は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基を表す。R4およびR5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R6は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはR13−(CO)−で表される有機基(R13は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)を表し、rは1以上の整数を表す。rが2以上の整数の場合、ポリエーテル含有基中の複数のR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R10は、炭素数1〜12の炭化水素基、具体的には、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し同一であっても異なっていてもよい。また、上記式(22)におけるa、bおよびdはそれぞれ独立に1以上の整数を表す。
ここで、上記式(22)中のR1およびR2は、それぞれ、上記式(5)中において説明したR1および上記式(6)中において説明したR2と同様であり、上記式(22)中のR3は、上記式(8)および(9)中において説明したR3と同様であり、上記式(22)中のR4、R5およびR6ならびにrは、それぞれ、上記式(10)中において説明したR4、R5およびR6ならびにrと同様である。
上記式(22)中のaおよびbは、それぞれ、上記式(15)中において説明したaおよびbと同様である。また、上記式(22)中のdは、上記式(10)で表されるエーテル含有シリル基を有するシロキサン単位、即ち、上記式(11)で表されるシロキサン単位の繰り返し単位数を表し、1以上の整数であり、1〜10であるのが好ましく、1〜5であるのがより好ましい。
上記式(22)中、カルボン酸シリルエステル基を有する2つのシロキサン単位のそれぞれとエーテル含有シリル基を有するシロキサン単位とは、その配列について特に限定されず、例えば、ランダム、ブロック、ランダムとブロックとの混合による配列が挙げられる。
上記式(22)で表されるオルガノシロキサンの具体例としては、下記式(23)で表されるポリシロキサンが挙げられる。
上記式(23)中、a、bおよびdはそれぞれ独立に1以上の整数を表し、s、tはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、s+tは1以上である。
ここで、上記式(23)中のaおよびbは、それぞれ、上記式(15)中において説明したaおよびbと同様であり、上記式(23)中のdは、上記式(22)中において説明したdと同様である。また、上記式(23)中、sは−OCH2CH2−の繰り返し単位数を表し、tは−OCH2CH(CH3)−の繰り返し単位数を表す。上記式(23)のsおよびtは、上記式(10)または(11)中のrと、r=s+tの関係にある。s+tは1以上であり、5以上であるのが好ましく、10〜100であるのがより好ましい。また、上記式(23)中、−OCH2CH2−と−OCH(CH3)CH2−とは、その配列について特に限定されず、例えば、ランダム、ブロック、ランダムとブロックとの混合による配列が挙げられる。
上記式(23)中、カルボン酸シリルエステル基を有する2つのシロキサン単位のそれぞれとエーテル含有シリル基を有するシロキサン単位とは、その配列について特に限定されず、例えば、ランダム、ブロック、ランダムとブロックとの混合による配列が挙げられる。
上記式(23)で表されるオルガノシロキサンのより具体的な例としては、下記式(24)で表されるポリシロキサンが挙げられる。
上記式(8)および(9)で表されるシロキサン単位ならびに上記式(11)で表されるシロキサン単位を有するポリシロキサンの製造方法は特に限定されず、例えば、後述するSi−H基含有ポリシロキサンとアルケニルエーテルとを反応させて上記式(11)で表されるシロキサン単位を形成した後、これに所定のカルボン酸を反応させて式(8)および(9)で表されるシロキサン単位を形成してポリシロキサンを製造する方法;Si−H基含有ポリシロキサンとアルケニルエーテルと所定のカルボン酸とを同時に反応させる方法;により製造することができる。また、これらの反応には、触媒として、白金、ロジウム、パラジウム、ニッケルのような第VIII族の遷移金属触媒を使用することが望ましく、具体的には、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金−ビニルシロキサン錯体等を好適に使用することができる。なお、触媒の使用量は特に限定されず、金属分で50ppm以下であるのが好ましく、20ppm以下であるのがより好ましい。
前者の製造方法としては、具体的には、例えば、後述するSi−H基含有ポリシロキサンとアルケニルエーテルとを、触媒として白金等の第VIII族の遷移金属錯体を添加して反応させ、次いで所定のカルボン酸を反応させる方法が好ましい態様の1つとして挙げられる。
この製造方法においては、Si−H基含有ポリシロキサンとアルケニルエーテルとが相溶しない場合は、トルエン、キシレン等の炭化水素系の溶媒を用いることができる。これにより速やかに反応が進行する。反応温度は60〜120℃、特に80〜110℃が好ましい。
カルボン酸との反応においても、Si−H基含有ポリシロキサンとアルケニルエーテルとの反応と同様に触媒として第VIII族の遷移金属錯体を使用することができる。カルボン酸との反応温度は通常80〜110℃である。特に反応初期では、反応温度を低く、反応後期では高くすることが、安全性、効率の点で好ましい。
上記ポリシロキサンの製造に用いる上記Si−H基含有ポリシロキサンは、特に限定されず、その具体例としては、下記式(25)で表されるアルキルハイドロジェンシロキサン単位を有するポリシロキサンが挙げられる。
上記式(25)中、R11は、メチル基、エチル基、または、フェニル基である。
上記式(25)で表されるアルキルハイドロジェンシロキサン単位を有するポリシロキサンは、特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、下記式(IV)の各式で表されるポリシロキサンが挙げられる。
上記Si−H基含有ポリシロキサンは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記ポリシロキサンの製造に用いる上記アルケニルエーテルは、特に限定されず、その具体例としては、下記式(26)で表されるアルケニルエーテルが挙げられる。
CH2=CH−R12−(OR5)r−OR6 ・・・(26)
上記式(26)中、R5は置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R6は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはR13−(CO)−で表される有機基(R13は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)を表し、R12は存在しない(単結合である)かまたはメチレン基を表し、rは1以上の整数を表す。rが2以上の整数の場合、ポリエーテル含有基中の複数のR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
ここで、上記式(26)中のR5、R6およびrは、それぞれ、上記式(10)中において説明したR5、R6およびrと同様である。
上記式(26)で表されるアルケニルエーテルとしては、例えば、下記式(V)の各式で表されるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体が挙げられる。
下記のエチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体を表す式において、sは−OCH2CH2−の繰り返し単位数を表し、tは−OCH(CH3)CH2−の繰り返し単位数を表し、s、tはそれぞれ独立に0以上の整数である。また、s+tは1以上であり、5以上であるのが好ましく、10〜100であるのがより好ましい。なお、上記式(26)のrと下記式(V)の各式s、tとは、r=s+tの関係にある。中でも、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体であって、分子量が500以上のものが好ましい。アルケニルエーテルは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記ポリシロキサンの製造に用いる所定のカルボン酸は、上記式(8)で表されるシロキサン単位を形成するためのカルボン酸として、例えば、トリデシル酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)等を用いることができ、上記式(9)で表されるシロキサン単位を形成するためのカルボン酸として、例えば、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)、ドデシル酸(ラウリン酸)を用いることができる。中でも、上記式(8)で表されるシロキサン単位を形成するためのカルボン酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸が好ましく、上記式(9)で表されるシロキサン単位を形成するためのカルボン酸としては、カプリン酸、ラウリン酸が好ましい。また、これらのカルボン酸は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
反応促進剤(開環触媒)としては、カルボン酸シリルエステル化合物以外に、硬化促進効果が優れている点で、金属系触媒、アミン系触媒、有機カルボン酸系触媒、燐酸エステル系触媒、p−トルエンスルホニルモノイソシアネート、p−トルエンスルホニルモノイソシアネートと水との反応物を使用することができる。
金属系触媒やアミン系触媒としては、添加剤として後述するポリサルファイド含有プレポリマーの硬化促進触媒として挙げるのと同様の有機金属化合物、第3級アミン類、第3級アミン類とカルボン酸の塩類が挙げられる。
有機カルボン酸系触媒としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、2−エチルヘキサン酸(オクチル酸)、オクテン酸、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪族カルボン酸、マレイン酸、アクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸、フタル酸、安息香酸、サリチル酸等の芳香族カルボン酸が挙げられる。
燐酸エステル系触媒としては、正燐酸エステル化合物、亜燐酸エステル化合物が挙げられる。正燐酸エステル化合物としては、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート等の酸性燐酸エステル化合物が挙げられ、亜燐酸エステル化合物としては、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト等の亜憐酸トリエステル化合物、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト等の亜燐酸ジエステル化合物が挙げられる。
p−トルエンスルホニルモノイソシアネートと水との反応物は、本実施形態の組成物に配合する前にp−トルエンスルホニルモノイソシアネートと水とを予め反応させて得られるものであっても良いし、p−トルエンスルホニルモノイソシアネートを本実施形態の組成物に配合している間に水を添加して反応させたもの、あるいは本実施形態の組成物中に存在する水と反応させたものであってもよい。
本実施形態の組成物では、カルボン酸シリルエステル化合物を単独で用いることができるが、カルボン酸シリルエステル化合物とカルボン酸シリルエステル化合物以外の上記反応促進剤(開環触媒)を組み合わせて用いてもよい。カルボン酸シリルエステル化合物やカルボン酸シリルエステル化合物以外の上記反応促進剤(開環触媒)は、本実施形態の組成物の硬化促進効果を向上させることができる。特にカルボン酸シリルエステル化合物は、貯蔵安定性も向上させることができる。
オキサゾリジン化合物の開環触媒の配合量は、ポリサルファイド含有プレポリマー100質量部に対して、0.001質量部〜10質量部が好ましく、さらに0.1質量部〜10質量部が好ましい。0.001質量部未満だと加水分解促進の効果が少なく、10質量部を超えると本実施形態の組成物の貯蔵安定性や硬化物の耐水性、耐熱性を悪化させるため好ましくない。
<硬化剤>
本実施形態の組成物の硬化剤は、金属イオンを含有する水を含むものである。主剤のポリサルファイド含有プレポリマーは、プレポリマーのイソシアネート基が金属イオンを含有する水と反応し尿素結合を形成して架橋硬化する。また、金属イオンを含有する水は、主剤に水と反応して活性水素基を生成する潜在性硬化剤を配合した場合、潜在性硬化剤とも反応して活性水素基を生成させる。潜在性硬化剤から生成した活性水素基はポリサルファイド含有プレポリマーのイソシアネート基と反応して尿素結合(ウレタン結合)を形成して架橋するため、主剤に水と反応して活性水素基を生成する潜在性硬化剤を配合すると、本実施形態の組成物は硬化時の発泡防止性に優れ、硬化速度の調整も容易となる。
本実施形態の組成物は、主剤と硬化剤を混合して硬化させる際に、硬化剤に単に水を配合するよりも金属イオンを含有する水を配合させた方が混合後の組成物の深部硬化性に優れるものとなる。また、養生シートや養生テープを剥がす際に、養生シートや養生テープ上に残った組成物がきれいに剥がれ、意匠上の不具合を生じない。
特に本実施形態の組成物の主剤にポリサルファイド含有プレポリマーおよび水と反応して活性水素基を生成する潜在性硬化剤に加えて、カルボン酸シリルエステル化合物を配合すると本実施形態の組成物の深部硬化性が顕著に優れたものとなる。その作用については必ずしも明確ではないが、金属イオンを含有する水がカルボン酸シリルエステル化合物と反応して酸化合物を生成し、酸化合物が水と反応して活性水素基を生成する潜在性硬化剤の活性水素基の生成をより促進させるためであると考えられる。ポリサルファイド基含有プレポリマーのイソシアネート基は、水よりも生成した活性水素基と優先的に反応するため、活性水素基の生成が促進されることで組成物の硬化が速まると考えられる。
金属イオンを含有する水は、具体的に例えば、金属塩と水を混合し、金属塩を水に溶解させて得ることができる。金属イオンを含有する水の製造方法としては、具体的には、攪拌機を備えた樹脂製、ガラス製、金属製等の混合容器に金属塩と水を入れて攪拌し金属塩を溶解させる方法がある。金属塩が水へ溶解しづらい場合は、必要に応じて加温してもよい。
金属イオンとしては、水の存在下でイオン化している金属であれば特に制限なく使用することができる。金属イオンの中でも、水の存在下でイオン化しやすく、入手も比較的容易な点でアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンが好ましい。特に本実施形態の組成物の深部硬化性に優れることからアルカリ金属イオンが好ましい。これらはいずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
アルカリ金属イオンとしては、具体的には、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオンが挙げられる。これらのうち、入手のしやすさや汎用性の点からナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましい。
アルカリ土類金属イオンとしては、具体的には、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオンが挙げられる。
金属イオンの配合量は、水100質量部に対し1〜30質量部が好ましく、さらに1〜20質量部が好ましい。金属イオンの配合量が1質量部未満であると本実施形態の組成物の深部硬化性を速める効果に乏しい場合がある。
金属塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を挙げることができる。これらはいずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
アルカリ金属塩としては、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ金属と無機酸との塩、アルカリ金属と有機酸との塩が挙げられる。
アルカリ金属のハロゲン化物としては、塩化リチウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウムが挙げられる。
アルカリ金属と無機酸との塩としては、硫酸リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、リン酸水素カリウムが挙げられる。
アルカリ金属と有機酸の塩としては、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ペンタン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ギ酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、ペンタン酸カリウム、シュウ酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸カリウムが挙げられる。
アルカリ土類金属塩としては、アルカリ土類金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属と無機酸との塩、アルカリ土類金属と有機酸との塩が挙げられる。
アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウムが挙げられる。
アルカリ土類金属と無機酸の塩としては、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウムが挙げられる。
アルカリ土類金属と有機酸の塩としては、ギ酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、ギ酸バリウム、酢酸バリウムが挙げられる。
水は、本実施形態の主剤のポリサルファイド含有プレポリマーのイソシアネート基と反応するもの、好ましくは水と反応して活性水素基を生成する潜在性硬化剤、カルボン酸シリルエステル化合物とも反応するものであれば特に制限されない。本実施形態の硬化剤は、金属イオンを含有する水を含むことにより、主剤と硬化剤とを混合した後の組成物の深部硬化性を速めることができる。
水としては、具体的には、水道水、地下水、蒸留水、イオン交換水を挙げることができる。
金属イオンを含有する水の配合量は、ポリサルファイド含有プレポリマー100質量部に対し0.1〜5質量部が好ましく、さらに0.1〜3質量部が好ましく、特に0.1〜2質量部が好ましい。また、主剤にポリサルファイド含有プレポリマーに加えて、水と反応して活性水素基を生成する潜在性硬化剤やカルボン酸シリルエステル化合物を配合する場合の金属イオンを含有する水の配合量は、ポリサルファイド含有プレポリマー、水と反応して活性水素基を生成する潜在性硬化剤、カルボン酸シリルエステル化合物の合計量100質量部に対し0.1〜6質量部が好ましく、さらに0.1〜4質量部が好ましく、特に0.1〜3質量部が好ましい。
本実施形態の組成物は、更に、本発明の目的を損なわない範囲で、上述した各成分以外に必要に応じて各種の添加剤を含有することができる。添加剤は、本実施形態の主剤に配合してもよく、硬化剤に配合してもよく、本実施形態の主剤と硬化剤を混合する際に配合してもよい。添加剤の配合のしやすさから、主剤に配合するか、または、主剤と硬化剤を混合する際に配合するのが好ましい。
添加剤としては、充填剤、揺変性付与剤、老化防止剤、光硬化性不飽和化合物、光重合開始剤、希釈用樹脂、硬化促進触媒、接着性付与剤、貯蔵安定性改良剤(脱水剤)、着色剤、溶剤が挙げられる。これらの添加剤は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
充填剤としては、炭酸カルシウムが挙げられる。炭酸カルシウムとしては、特に限定されず、例えば、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、コロイダル炭酸カルシウムが挙げられる。
炭酸カルシウム以外の充填剤としては、各種形状の有機または無機のものが挙げられる。例えば、マイカ、カオリン、ゼオライト、グラファイト、珪藻土、白土、クレー、タルク、スレート粉、アルミニウム粉末、亜鉛粉末、炭酸マグネシウム、アルミナ、酸化チタン等の無機粉末状充填剤;ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状充填剤;木粉、クルミ穀粉、もみ殼粉、パルプ粉、木綿チップ、ゴム粉末、さらにポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等の熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂の粉末等の有機系充填剤の他、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の難燃性付与充填剤も挙げられる。充填剤の平均粒径は、0.01〜1,000μmのものが好ましい。
揺変性付与剤としては、有機表面処理炭酸カルシウムが挙げられる。有機表面処理炭酸カルシウムとしては、脂肪酸、ロジン酸等の樹脂酸、脂肪酸エステル、高級アルコール付加イソシアネート化合物等により表面処理された有機表面処理炭酸カルシウムが挙げられる。有機表面処理炭酸カルシウムは、公知の方法で製造することができ、具体的に例えば、炭酸カルシウムに揺変性付与効果を与える目的と二次凝集を防ぐ目的で、脂肪酸やロジン酸等の樹脂酸の金属塩あるいはエステル等で微粉末状の炭酸カルシウムの表面を処理して脂肪酸表面処理炭酸カルシウムや樹脂酸表面処理炭酸カルシウム等の有機表面処理炭酸カルシウムを製造することができる。脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸等の炭素数10〜25の脂肪酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウムの塩が好ましい。
脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウムの市販品としては、カルファイン200(丸尾カルシウム社製)、ライトン26−A(備北粉化工業社製)、白艶華CC、CCR、R06、VIGOT−10、VIGOT−15、STAVIGOT−15A、ビスコライトMBP(以上、白石工業社製)、NCC#3010、NCC#1010(以上、日東粉化工業社製)が挙げられる。また、変性脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウムとしては、ライトンA−4(備北粉化工業社製)が挙げられ、脂肪酸エステルで表面処理された炭酸カルシウムとしては、シーレッツ200(丸尾カルシウム社製)、スノーライトSS(丸尾カルシウム社製)が挙げられる。これらはいずれも1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
有機表面処理炭酸カルシウムは、炭酸カルシウムの二次凝集を抑制することができると共に、本実施形態の組成物に揺変性を付与する効果を与えることができる。また、有機表面処理炭酸カルシウムは、本実施形態の組成物の揺変性および作業性(ヘラ仕上げ性)に寄与し、表面が疎水性であるため貯蔵安定性にも寄与する。
有機表面処理炭酸カルシウムの平均粒径は、0.01〜0.5μmが好ましく、0.03〜0.15μmがより好ましい。また、有機表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積は、5〜200m2/gが好ましく、10〜60m2/gがより好ましい。有機表面処理炭酸カルシウムの平均粒径が0.01μmを下回るかあるいはBET比表面積が200m2/gを超えると、本実施形態の組成物の粘度が上昇し作業性が悪化するため好ましくない。また、有機表面処理炭酸カルシウムの平均粒径が0.5μmを上回るかあるいはBET比表面積が5m2/gを下回ると、本実施形態の組成物に対する揺変性付与効果がなくなるため好ましくない。
有機表面処理炭酸カルシウムの配合量は、ポリサルファイド含有プレポリマー100質量部に対して、好ましくは20〜300質量部であり、より好ましくは50〜300質量部である。有機表面処理炭酸カルシウムの配合量が20質量部未満では、本実施形態の組成物に対する揺変性付与効果が著しく低下するため好ましくない。また、有機表面処理炭酸カルシウムの配合量が300質量部を超えると、本実施形態の組成物の粘度が高くなり作業性が悪化するため好ましくない。
老化防止剤は、本実施形態の組成物の硬化後の酸化や光劣化、熱劣化を防止して、耐候性、耐熱性を更に向上させる。老化防止剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を挙げることができる。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピベリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジル)セバケート、メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピベリジンが挙げられる。また、ADEKA社製のアデカスタブシリーズのLA−52、LA−57、LA−62、LA−67、LA−77、LA−82、LA−87等の分子量1,000未満の低分子量ヒンダードアミン系光安定剤、同じくLA−63P、LA−68LDあるいはBASF社製のCHIMASSORBシリーズの119FL、2020FDL、944FD、944LD等の分子量1,000以上の高分子量ヒンダードアミン系光安定剤、および、TINUVIN765等のTINUVINシリーズのヒンダードアミン系光安定剤も挙げられる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、BASF社製のIRGAFOS XPシリーズのIRGANOX1010(ぺンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])、IRGANOX1035(チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])、IRGANOX1076(オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、IRGANOX1135(ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ、C7−C9側鎖アルキルエステル)、IRGANOX1520L(4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール)等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、その他に、N,N′−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオアミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノールが挙げられる。
上記以外の老化防止剤としては、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)、N,N′−ジナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)、2,2,4−トリメチル−1,3−ジヒドロキノリン(TMDQ)、N−フェニル−1−ナフチルアミン(PAN)、トリス(トリデシル)フォスファイトが挙げられる。
これらの老化防止剤は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。特に、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を単独または両方用いるのが本実施形態の組成物の耐候性に優れるため好ましい。
老化防止剤の配合量は、本実施形態の組成物の耐候性付与の観点から、ポリサルファイド含有プレポリマー100質量部に対して0.1〜10質量部配合するのが好ましく、0.5〜5質量部配合するのがより好ましい。
光硬化性不飽和化合物は、所定の光が照射されることにより硬化するものである。光硬化性不飽和化合物は、その分子内に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する多官能エチレン性光硬化性不飽和化合物であることが好ましい。多官能エチレン性光硬化性不飽和化合物は、光重合開始剤により生成された活性基(ラジカル)を有効に受けて、効率良くラジカル重合による高分子化(硬化)がなされる。このような多官能エチレン性光硬化性不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル、アリル化合物、ビニルエーテル化合物、ビニルエステル化合物、ケイ皮酸エステル化合物が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、2官能以上のエポキシ樹脂とエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸との反応から得られるエポキシ(メタ)アクリレート、多価芳香族イソシアネート、多価脂肪族イソシアネートと2価アルコールの(メタ)アクリル酸モノエステルを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、多価アルコールの(メタ)アクリレートが挙げられる。アリル化合物としては、フタル酸、アジピン酸、マロン酸等のジアリルエステルが挙げられる。ビニルエーテル化合物としては、多価アルコールのビニルエーテル化合物が挙げられる。ビニルエステル化合物としては、ジビニルスクシネート、ジビニルフタレートが挙げられる。また、一個のエチレン性不飽和結合を有するいわゆる単官能モノマーも適宜併用できる。これらはいずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
光硬化性不飽和化合物は、ポリサルファイド含有プレポリマー100質量部に対して1〜10質量部配合するのが好ましく、2〜8質量部配合するのがより好ましく、4〜6質量部配合するのが更に好ましい。
光重合開始剤は、光によってモノマーを重合させうるものであり、特に限定されない。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、硫黄化合物、アゾ化合物、パーオキサイド化合物、ホスフィンオキサイド系化合物が挙げられる。具体的には、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4′−ビス(ジメチルアミノベンゾフェノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、下記式(27)で表される1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロ等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物;が挙げられる。これらはいずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、光安定性、光開裂の高効率性、表面硬化性、樹脂との相溶性、低揮発、低臭気という点から、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンが好ましい。1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの市販品としては、例えば、イルガキュア184(BASF社製)が挙げられる。
光重合開始剤の配合量は、ポリサルファイド含有プレポリマー100質量部に対して0.01〜2質量部配合するのが好ましく、0.1〜1質量部配合するのがより好ましい。光重合開始剤の配合量が0.01質量部を下回ると、本実施形態の組成物を硬化して得られる硬化物のタック抜けに時間がかかるからであり、2質量部を超えると、本実施形態の組成物の貯蔵安定性が悪化する傾向にあるからである。
希釈用樹脂は、本実施形態の組成物を希釈して粘度を下げ作業性を向上させると共に、硬化物のモジュラス、伸び等のゴム物性を調節するために使用するものである。希釈用樹脂としては、数平均分子量(Mn)が、500〜100,000、好ましくは500〜50,000、より好ましくは500〜20,000、更に好ましくは500〜10,000の高分子量で極性基を有する室温で液状の希釈用樹脂を好適に挙げることができる。数平均分子量(Mn)が500未満であると、本実施形態の組成物の硬化後、硬化物の表面に移行(ブリード)し易く、硬化物の表面を粘着させ塵や埃等の付着による表面汚染を発生させるため好ましくない。極性基としては、ポリサルファイド含有プレポリマーと相溶性の良好なエステル基、エーテル基(オキシアルキレン基)、ウレタン基が挙げられる。これらの極性基の種類と個数は、それぞれ分子中に単独で有していてもよいし複数有していてもよい。更に希釈用樹脂は、その分子中にポリサルファイド含有プレポリマーのイソシアネート基と反応性を有する官能基を実質的に有しない希釈用樹脂であることが好ましい。
希釈用樹脂としては、具体的には、例えば、ポリオキシアルキレン系樹脂、ジカルボン酸類とグルコール類とのポリエステル系樹脂、低粘度の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体樹脂、これらの混合物が挙げられる。これらのうち、粘度が低く、ポリサルファイド含有プレポリマーとの相溶性が良好であることや、本実施形態の組成物の作業性が良好な点でポリオキシアルキレン系樹脂が好ましい。
前記ポリオキシアルキレン系樹脂としては、ポリオキシエチレンモノオールやポリオキシプロピレンモノオール等のポリオキシアルキレンモノオールのアルキルエーテル化やアルキルエステル化誘導体樹脂、糖類系多価アルコールのポリオキシアルキレン化樹脂のアルキルエーテル化やアルキルエステル化誘導体樹脂、室温で液状のポリオキシアルキレン系ウレタン樹脂が挙げられる。これらはいずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
希釈用樹脂の配合量は、本実施形態の硬化物のゴム物性等の観点から、ポリサルファイド含有プレポリマー100質量部に対して、5〜200質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましい。
硬化促進触媒は、ポリサルファイド含有プレポリマーのイソシアネート基と水との反応、潜在性硬化剤と水との反応、潜在性硬化剤から生成(再生)した活性水素とポリサルファイド含有プレポリマーのイソシアネート基との反応を促進し、本実施形態の組成物の深部硬化性を速めるために使用する。
硬化促進触媒としては、具体的には、有機金属化合物、アミン類が挙げられる。これらはいずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機金属化合物としては、例えば、オクチル酸錫、ナフテン酸錫等の2価の有機錫化合物、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等の4価の有機錫化合物、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、錫系キレート化合物の旭硝子社製EXCESTAR C−501、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトンマグネシウム、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンマンガン等の各種金属のキレート化合物、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類、その他、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、ビスマス等の錫以外の各種金属と、オクチル酸、ステアリン酸、ナフテン酸等の各種有機酸との金属有機酸塩が挙げられる。
アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン−7(DBU)、1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン(DABCO)、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等の第3級アミン類、あるいはこれらのアミン類とカルボン酸の塩類が挙げられる。
これらのうち、反応速度が高く、毒性および揮発性の比較的低い液体である点から有機金属化合物が好ましく、更に有機錫化合物や金属キレート化合物が好ましく、特にジブチル錫ジラウレートが好ましい。
接着性付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂、アルキルチタネート類、有機ポリイソシアネートが挙げられる。
貯蔵安定性改良剤(脱水剤)としては、本実施形態の組成物の主剤に存在する水と反応する化合物であり、具体的には、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、p−トルエンスルホニルモノイソシアネートが挙げられる。
着色剤としては、酸化チタンや酸化鉄等の無機系顔料、銅フタロシアニン等の有機系顔料、カーボンブラックが挙げられる。
溶剤としては、本実施形態の組成物中の他の成分との相溶性が良好で、かつ、他の成分と反応しないものが好ましい。具体的に例えば、ジメチルカーボネート等のカーボネート系溶剤、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル系溶剤、n−ヘキサン等の脂肪族系溶剤、シクロヘキサン等の脂環族系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ミネラルスピリットや工業ガソリン等の石油留分系溶剤等の有機溶剤が挙げられる。上述の溶剤はいずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。溶剤は、十分に脱水し乾燥させてから用いるのが好ましい。溶剤は、近年の環境保全意識の高まりのなかで、その使用量はできるだけ抑えることが好ましいため、本実施形態の組成物全量中に10質量%未満となるように使用するのが好ましい。
本実施形態の組成物を製造する方法は特に限定されない。主剤の製造方法としては、例えば、ポリサルファイド含有プレポリマーに加えて、必要により、潜在性硬化剤、カルボン酸シリルエステル化合物、各種の添加剤とを乾燥窒素等の不活性ガス雰囲気下で、ロール、ニーダー、万能攪拌機、混合ミキサー等の撹拌装置を用いて十分に混練し均一に混合する方法がある。均一に混合した主剤は、湿気等の水を遮断できる密閉容器(例えば、紙管カートリッジ、金属製や樹脂製の缶、アルミパック)に充填し保管することができる。硬化剤の製造方法としては、例えば、上述した金属イオンを含有する水の製造方法がある。金属イオンを含有する水を製造する際に、必要により、各種の添加剤を配合することもできる。製造した硬化剤を密閉容器(例えば、金属製や樹脂製の缶、アルミパック、樹脂製フィルムパック)に充填し保管することができる。
本実施形態の組成物は、主剤と硬化剤を混合し2成分形硬化性組成物として使用することができる。また、主剤と硬化剤と添加剤をそれぞれ混合し多成分形硬化性組成物として使用することもできる。混合方法としては、例えば、真空脱泡混合機、ドラム回転式ミキサー等の混合装置を用いて各成分を十分に混練し均一に混合する方法がある。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<合成例1>
[ポリサルファイド含有プレポリマー(P−1)の合成]
攪拌機、温度計、窒素導入管および加熱・冷却装置の付いた反応容器に、窒素ガス気流下で、ポリオキシプロピレンジオール(エクセノール3020、数平均分子量3,200、旭硝子社製)を220gと、ポリオキシプロピレントリオール(エクセノール5030、数平均分子量5,100、旭硝子社製)を100gと、ペンタエリスリトールトリアクリレート(M−305、分子量298.3、東亞合成社製)を5gと、THIOPLAST HTPS−350(数平均分子量2700、AKZO NOBEL社製)を3g仕込み、攪拌しながらヘキサメチレンジイソシアネート(デスモジュールH、分子量168、住化バイエルウレタン社製)を35.6gと、ジブチル錫ジラウレートを0.05g加えた後、加温して70℃から80℃で2時間攪拌して反応させた。イソシアネート基含有量が理論値(2.44質量%)以下となった時点で室温まで冷却して反応を終了させ、ポリサルファイド含有末端イソシアネートプレポリマー(P−1)を合成した。得られたポリサルファイド含有末端イソシアネートプレポリマー(P−1)は、滴定によるイソシアネート基含有量2.08質量%、常温で粘稠な液体であった。
<合成例2>
[反応促進剤(カルボン酸シリルエステル化合物(CS−1))の合成]
カルボン酸成分としてステアリン酸133.3g、カルボン酸成分としてラウリン酸219.0gに、トルエンを濃度50質量%となるように添加した後、3質量%濃度の塩化白金イソプロピルアルコール溶液を所定量(Si−H基含有ポリシロキサン100gに対して10μL)添加し、80℃のカルボン酸混合溶液を調製した。次いで、調製したカルボン酸混合溶液に、当量のSi−H基含有ポリシロキサン(KF99、Si−H0.0156当量/g、信越化学工業社製)100.0gをゆっくり滴下し、滴下終了後、反応温度を90℃に上げ、水素の発生が認められなくなるまで撹拌した。その後、トルエンを留去することにより、カルボン酸シリルエステル化合物(CS−1)を得た。
<合成例3>
[潜在性硬化剤(ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物(O−1))の合成]
攪拌機、温度計、エステル管および加熱・冷却装置の付いた反応容器に、ジエタノールアミン(分子量105)を435gとトルエンを183g仕込み、攪拌しながらイソブチルアルデヒド(分子量72.1)を328g添加した後、加温して110℃から150℃で3時間、副生する水を系外に除去しながら還流脱水反応をおこなった。除去した水の量は74.5gであった。次いで、50hPaから70hPaに減圧しながら加熱し、トルエンと未反応のイソブチルアルデヒドを除去し、中間の反応生成物である2−イソプロピル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジンを得た。得られた2−イソプロピル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン659gに、さらにヘキサメチレンジイソシアネート(分子量168)を348g加え、80℃で8時間反応させた。滴定による実測NCO含有量が0.0質量%となった時点を反応終点とし、分子内にウレタン結合とオキサゾリジン環2個を有するウレタン結合含有オキサゾリジン化合物(O−1)を得た。得られたウレタン結合含有オキサゾリジン化合物(O−1)は、室温で半透明の液体であった。
<組成物の作製>
(主剤の調製)
攪拌機、窒素導入管および加熱・冷却装置付き混練容器に、窒素ガス気流下で、合成例1で得たポリサルファイド含有末端イソシアネートプレポリマー(P−1)を100g仕込み、攪拌しながら、予めそれぞれ100℃から110℃の乾燥機中で乾燥して水分含有量を0.05質量%以下にした重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製)を25gと酸化チタン(R−820、石原産業社製)を10g仕込み、内容物が均一になるまで混合した。次いで、予めジメチルカーボネートを5gに下記ヒンダードアミン系光安定剤(TINUVIN765、BASF社製)を1.5gとヒンダードフェノール系酸化防止剤(IRGANOX1010、BASF社製)を1.5gを溶解した溶解液を8g、カルボン酸シリルエステル化合物(CS−1)を0.2g、光硬化性不飽和化合物(アロニックスM−8030、東亞合成社製)を4g、光重合開始剤(IRGACURE184、BASF社製)を0.1g、有機表面処理炭酸カルシウム(ビスコライトMBP、白石工業社製)を100g、ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物(O−1)8g、希釈用ポリオキシアルキレン系樹脂(GPA3000、三洋化成工業社製)を32g、および有機溶剤(エクソールD40、エクソンモービル社製)を18g仕込み、さらに内容物が均一になるまで混合した。次いで、50hPaから70hPaで減圧脱泡し、ペーパーカートリッジ容器に充填、密封して、主剤を調製した。得られた主剤は、室温で硬化する白色ペースト状液体であった。
(硬化剤W−1の調製)
水を9g、塩化ナトリウムを1g混合容器に仕込み、均一に混合し溶解させて硬化剤W−1を調製した。
(硬化剤W−2の調製)
水を9g、塩化カリウムを1g混合容器に仕込み、均一に混合し溶解させて硬化剤W−2を調製した。
得られた主剤と硬化剤を表1に示す配合量仕込み、均一に混合して本実施形態の組成物(実施例1〜2)を得た。なお、比較として水のみを使用した硬化剤を用い表に示す配合量で主剤と均一に混合して比較の組成物(比較例1)を得た。なお、実施例1〜2および比較例1の組成物が均一になるまでの混合時間は15分間であった。
<組成物の評価>
実施例1〜2および比較例1の組成物を用いて下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。
[タックフリータイム]
スレート板上に、実施例1〜2および比較例1の組成物をおおよそ幅20mm×高さ10mm×長さ100mmのビード状に打設し、5℃40%RHまたは23℃50%RHの環境下に静置した。この組成物の表面に厚さ0.1mmのポリエチレン製フィルムを接触させ組成物がポリエチレン製フィルムに付着しないまでの時間を測定した。
[深部硬化性]
厚さ10mmのポリエチレン製角型バックアップ材を2枚重ねて厚さ20mmとし、これを用いて縦50mm×横50mmの四角枠をスレート板上に作製した。次いで、枠内に実施例1〜2および比較例1の組成物を直ちに打設し、厚さ20mmになるようヘラで平らにならして試験体を作製した。試験体を5℃40%RHの環境下に所定時間静置した後、組成物の断面が見えるようにカッターで切り、表面硬化部を取り出してその硬化物の厚さを測定した。
[硬度]
厚さ10mmのポリエチレン製角型バックアップ材を2枚重ねて厚さ20mmとし、これを用いて縦50mm×横50mmの四角枠をスレート板上に作製した。次いで、枠内に実施例1〜2および比較例1の組成物を直ちに打設し、厚さ30mmになるようヘラで平らにならして試験体を作製した。試験体を5℃40%RHの環境下に所定時間静置した後、日本ゴム協会標準規格(SRIS)0101によりアスカーC硬度を測定した。
[養生テープ剥がし性]
スレート板上に幅12mm×厚さ17mm×長さ300mmのアルミニウム板を平行に並べて、幅17mm×深さ17mm×長さ300mmの目地が出来るようにし、この状態でアルミニウム板をスレート板に固定した。次いで、目地際に沿って養生テープ(マスキングテープ、幅17mm、カモ井加工紙社製)をアルミニウム板上に貼付し試験体を作成した。
試験体の目地に実施例1〜2および比較例1の組成物を直ちに打設し、ヘラで組成物表面を平らにならした後、5℃40%RHまたは23℃50%RHの環境下で組成物を養生し、5時間後、8時間後、24時間後に養生テープを剥がした。養生テープを剥がした際の状況を目視で確認し、下記の評価基準で養生テープ剥がし性を評価した。
基準
○:養生テープ上の組成物がきれいに剥がれ、意匠上の不具合を生じない
△:養生テープ上の組成物が部分的に養生テープに引っ張られて目地際に若干のバリが生じ、意匠上の不具合を生じる
×:養生テープ上の組成物が養生テープに引っ張られてきれいに剥がれず、養生テープを無理に引っ張るとバリが生じて目地上または目地際にバリが残り、意匠上の不具合を生じる
[養生シート剥がし性]
スレート板上に幅12mm×厚さ17mm×長さ300mmのアルミニウム板を平行に並べて、幅17mm×深さ17mm×長さ300mmの目地が出来るようにし、この状態でアルミニウム板をスレート板に固定した。次いで、目地際に沿って養生シート(ポリマスカー(布テープ+ポリエチレンシート、大塚刷毛製造社製)をアルミニウム板上に貼付し試験体を作成した。
試験体の目地に実施例1〜2および比較例1の組成物を直ちに打設し、ヘラで組成物表面を平らにならした後、5℃40%RHまたは23℃50%RHの環境下で組成物を養生し、5時間後、8時間後、24時間後に養生シートを剥がした。養生シートを剥がした際の状況を目視で確認し、下記の評価基準で養生シート剥がし性を評価した。
基準
○:養生シート上の組成物がきれいに剥がれ、意匠上の不具合を生じない
△:養生シート上の組成物が部分的に養生シートに引っ張られて目地際に若干のバリが生じ、意匠上の不具合を生じる
×:養生シート上の組成物が養生シートに引っ張られてきれいに剥がれず、養生シートを無理に引っ張るとバリが生じて目地上または目地際にバリが残り、意匠上の不具合を生じる
表1の結果から、本実施形態の組成物は、組成物の表面硬化性(タックフリータイム)が比較例1の組成物と同じであり、主剤と硬化剤を混合した後の可使時間を十分に確保できることが分かる。また、本実施形態の組成物は、低温時(5℃40%RH)の深部硬化性に優れ、低温時の硬度も高いことが分かる。従って、本実施形態の組成物は内部硬化するまでの養生期間を短縮することができ、工期の短縮に繋がる。
また、本実施形態の組成物(実施例1〜2)は、5℃40%RHおよび23℃50%RHの環境下で、5時間後、8時間後、24時間後に養生テープや養生シートを剥がすと、表面硬化にムラがなく組成物がきれいに剥がれて意匠上の不具合が生じず、施工時の作業性に優れている。一方、比較例1の組成物は、5℃40%RHの環境下では硬化が遅く、養生テープや養生シートを剥がすとペースト状のバリが生じて意匠上の不具合が生じる。また、23℃50%RHの環境下でも硬化が遅く、表層部が硬化しているものの内部が硬化していないため、養生テープや養生シートを剥がすとバリが生じて意匠上の不具合が生じる(5時間後、8時間後)。
上述の通り、本実施形態の組成物は、主剤と硬化剤を混合した後の可使時間を十分に確保できると共に深部硬化性、養生テープや養生シートの剥がし性に優れるから、建築用、土木用に好適に使用することができる。また、本実施形態の組成物は、シーリング材組成物として好適に使用することができる。特に深部硬化性に優れることから、組成物の硬化時に発生する変位(本実施形態の組成物を使用した際に被着体となる部材間の動きによる変位)の影響を軽減できるため、ワーキングジョイント用の硬化性組成物およびそれを用いたシーリング材組成物として好適である。