以下の第一実施形態ないし第六実施形態は、湯水混合栓装置に関し、特に、サーモカートリッジと、サーモカートリッジを収容するハウジングと、を備える湯水混合栓装置に関する。
第一実施形態の湯水混合栓装置について図1ないし図5に基いて説明する。
湯水混合栓装置1は、図1に示されるように、サーモカートリッジ11と、ハウジング12と、を備える。
サーモカートリッジ11は、図2、図3に示されるように、ケーシング2と、ケーシング2に収容される温度調節機構3と、を有する。
ケーシング2は、図3に示されるように、内外に連通する湯入口21、水入口22および混合水出口23が形成された筒20を有する。第一実施形態では、ケーシング2の筒20の外面201は、円筒の外面の形状をしている。ケーシング2の筒20の一部に、湯入口21および水入口22が形成されている。また、ケーシング2の筒20の中心軸200の方向の両端が開口しており、この筒20の両端に形成される開口の一方が混合水出口23となっている。
また、ケーシング2の筒20の外面201には、後述する第一フランジ24、第二フランジ25および第三フランジ26が設けられる。
サーモカートリッジ11は、湯入口21より流入する湯および水入口22より流入する水が内部で混合されて混合水を生成し、混合水を混合水出口23から吐出する。そして、温度調節機構3により、混合水の温度変化に応じて、湯入口21より流入する湯および水入口22より流入する水の流量を調節するものである。温度調節機構3については後述する。
ハウジング12は、図4に示されるように、内外に連通するハウジング湯入口41およびハウジング水入口42が形成された筒4を有する。さらに、ハウジング12の筒4の中心軸400の方向の一端に、サーモカートリッジ11が挿入される挿入開口40を有する。第一実施形態では、ハウジング12の筒4の内面43は、円筒の内面の形状をしている。ハウジング12の筒4の一部に、ハウジング湯入口41およびハウジング水入口42が形成されている。そして、ハウジング12の筒4の中心軸400の方向の両端が開口しており、この筒4の両端に形成される開口の一方が挿入開口40となっている。
図1に示されるように、ケーシング2は、ハウジング12内の所定位置に収容されるように設計されている。さらに説明すると、ケーシング2は、所定の向きで、挿入開口40よりハウジング12内に挿入され、ハウジング12に対して所定位置に位置するまで中心軸400の方向に移動される。
ハウジング12内の所定位置に収容されたケーシング2の第一フランジ24、第二フランジ25および第三フランジ26が、ケーシング2の外面201とハウジング12の内面43との間の空間13を中心軸400の方向に仕切るものである。ケーシング2には、ケーシング2がハウジング12内に所定の向きで所定位置に位置する状態で中心軸400の方向に挿入開口40側より順に、第一フランジ24、第二フランジ25および第三フランジ26が離間して設けられる。第一実施形態では、第一フランジ24、第二フランジ25および第三フランジ26は、ケーシング2の中心軸200の方向に見て、外郭形状が円形状をしたものである。第一フランジ24と第二フランジ25との距離の大きさL0は、第二フランジ25と第三フランジ26との距離の大きさL0と同じに形成されている。
ケーシング2に形成される湯入口21は、図3に示されるように、ケーシング2の第一フランジ24および第二フランジ25の間に形成される。ケーシング2に形成される水入口22は、ケーシング2の第二フランジ25および第三フランジ26の間に形成される。ケーシング2の第一フランジ24に対する第三フランジ26側(単に第三フランジ26側という)の端部の開口が、混合水出口23となっている。ケーシング2内の第三フランジ26に対する第一フランジ24側(単に第一フランジ24側という)の端部と湯入口21との間に、湯入口21からケーシング2内に流入する湯が第一フランジ24側に流れないようにする栓34が設けられている。
ハウジング12に形成されるハウジング湯入口41は、図1に示されるように、ケーシング2がハウジング12内の所定位置に収容された状態で、ハウジング12の第一フランジ24および第二フランジ25の間に対応する位置に形成される。また、ハウジング12に形成されるハウジング水入口42は、ケーシング2がハウジング12内の所定位置に収容された状態で、ハウジング12の第二フランジ25および第三フランジ26の間に対応する位置に形成される。
図1に示されるように、ケーシング2がハウジング12内の所定位置に収容された状態で、第一フランジ24、第二フランジ25および第三フランジ26の外面(端面)が、ハウジング12の内面43に接触または近接するように位置する。すなわち、第一フランジ24、第二フランジ25および第三フランジ26の直径(d1、d2、d3)が、これらに対応するハウジング12の内面43の直径すなわち内径(D1、D2)と比較して、同じかまたは若干小さく形成されるもので、この点については後述する。このようにして、第一フランジ24、第二フランジ25および第三フランジ26により、ケーシング2の外面201とハウジング12の内面43との間の空間13が中心軸200の方向に仕切られる。
第一実施形態では、図1、図2に示されるように、第一フランジ24、第二フランジ25および第三フランジ26の外面にそれぞれ、シール部材241、251、261が設けられている。シール部材241、251、261は、Oリングにより構成されているが、特にOリングに限定されない。第一実施形態では、第一フランジ24、第二フランジ25および第三フランジ26の外面にそれぞれ、周方向を長手方向とする溝240、250、260が形成されており、この溝240、250、260にOリングからなるシール部材241、251、261がそれぞれ挿入されている。これにより、ケーシング2の外面201とハウジング12の内面43との間の空間13が、第一フランジ24、第二フランジ25および第三フランジ26により、より確実に中心軸200の方向に仕切られやすくなる。また、この場合、第一フランジ24、第二フランジ25および第三フランジ26に設けられたシール部材241、251、261の外面がなす円の直径が、実質的な第一フランジ24、第二フランジ25および第三フランジ26の直径となる。すなわち、シール部材241、251、261を含めて第一フランジ24、第二フランジ25および第三フランジ26が構成される。
ケーシング2の外面201とハウジング12の内面43との間の空間13のうち、第一フランジ24および第二フランジ25の間に形成される空間が、湯流路131を構成し、第二フランジ25および第三フランジ26の間に形成される空間が、水流路132を構成する。
ケーシング2の外面201の第一フランジ24と第二フランジ25の間の部分(すなわち湯流路131に対応する部分)の直径の長さd0は、ケーシング2の外面201の第二フランジ25と第三フランジ26の間の部分(すなわち水流路132に対応する部分)の直径の長さd0と同じに形成されている。
次に、ハウジング12内にサーモカートリッジ11が収容されてなる湯水混合栓装置1の基本的な動作について、図3および図5に基いて説明する。
サーモカートリッジ11は、上述したようにケーシング2と温度調節機構3とを備えるもので、ケーシング2については上述した通りであり、以下に温度調節機構3について説明する。
図3に示されるように、温度調節機構3は、弁体5と、弁体5に力をかけるバイアスばね6および感温ばね7と、バイアスばね受け部31と、バイアスばね6を移動させる操作部32(図2参照)と、感温ばね受け部33と、を備える。
弁体5は、ケーシング2の筒20の内面202に沿って、ケーシング2の中心軸200の方向に移動する。第一実施形態では、弁体5は、外筒51および内筒52を備えている。外筒51は、ケーシング2の中心軸200の方向に見て、円形状をしたものである。ケーシング2の内面202は、円筒の内面の形状をしている。外筒51の外面の直径が、ケーシング2の内面202の直径(内径)と比較して、同じかまたは若干小さく形成されている。このようにして、外筒51の外面とハウジング12の内面43との間に湯や水が流れやすい隙間が形成されにくく、かつ、外筒51がケーシング2の中心軸200の方向に移動可能となる。
内筒52は、ケーシング2の中心軸200の方向に見て、円形状をしたものである。内筒52の外面の直径は、外筒51の内面の直径(内径)よりも小さく、内筒52の内面の内径は、ケーシング2の中心軸200の方向に見たバイアスばね6の外径よりも大きい。内筒52は、外筒51と同心円状となるように周方向の一部において外筒51と連結されて、外筒51に固定される。内筒52は、第三フランジ26側の端部に蓋53が設けられている。内筒52は、第一フランジ24側の端部は開口しており、この端部に形成される開口54よりバイアスばね6が挿入される。この蓋53の第一フランジ24側の面が、バイアスばね6の第三フランジ26側の端部を受ける受け面531となっている。
外筒51の内面と内筒52の外面の間の空間が、湯と水が混合されて混合水が生成される混合室55となる。
この弁体5は、ケーシング2の中心軸200の方向に第三フランジ26側に移動することで、図5Aに示されるように湯入口21の開口面積を大きくするとともに水入口22の開口面積を小さくする。また、弁体5は、第一フランジ24側に移動することで、図5Bに示されるように湯入口21の開口面積を小さくするとともに水入口22の開口面積を大きくする。
バイアスばね6は、弁体5に、ケーシング2の中心軸200の方向に沿って、混合水出口23に向けて力をかけて、弁体5を押す。バイアスばね6は、第一実施形態ではコイルばねにより構成されている。バイアスばね6は、第一フランジ24側の端部がバイアスばね受け部31に受けられる。バイアスばね受け部31は、第三フランジ26側に向けて突出するように、栓34に設けられている。バイアスばね受け部31は、第三フランジ26側を向く面が、バイアスばね6の第一フランジ24側の端部を受ける受け面312となっている。バイアスばね受け部31には、バイアスばね6がケーシング2の中心軸200の方向に伸縮するように、第三フランジ26側に向けて突出するガイド棒311が設けられている。ガイド棒311は、バイアスばね6を構成するコイルばねの内部に挿入される。バイアスばね受け部31は、ケーシング2の中心軸200の方向に移動可能に設けられる。
バイアスばね受け部31の移動は、操作部32(図2参照)が操作されることにより行われる。操作部32は、ケーシング2の中心軸200の方向を長手方向とする操作軸の第一フランジ24側の端部に設けられている。操作軸には、外面に雄ねじが形成されている。栓34には、第一フランジ24側に向けて突出する筒が設けられ、この筒の内面に操作軸の雄ねじがねじ込まれる雌ねじが形成されている。栓34は、例えば栓34およびケーシング2に設けられる突起および溝等からなる回転止めにより、ケーシング2に対して回転しないように構成されている。
操作軸が軸周りに回転することで雄ねじが回転し、雄ねじがねじ込まれている雌ねじを有する栓34が、雄ねじの回転に伴ってケーシング2の中心軸200の方向に移動する。これにより、栓34に設けられたバイアスばね受け部31がケーシング2の中心軸200の方向に移動する。この操作部32は、使用者が混合水の温度を設定するための温度設定ダイヤル等に連結される。
感温ばね7は、弁体5に、ケーシング2の中心軸200の方向に沿って、第一フランジ24側に向けて力をかけて、弁体5を押す。感温ばね7は、第一実施形態では形状記憶合金からなるコイルばねにより構成されている。感温ばね7は、第三フランジ26側の端部が感温ばね受け部33に受けられる。感温ばね受け部33は、ケーシング2内の混合水出口23の近傍に、ケーシング2内に向けて突出するように設けられている。
感温ばね受け部33は、周方向の一部においてケーシング2と連結されて、ケーシング2に固定され、周方向において感温ばね受け部33とケーシング2とが連結されていない部分は、流路となる。感温ばね受け部33は、第一フランジ24側を向く面が、感温ばね7の第三フランジ26側の端部を受ける受け面331となっている。感温ばね受け部33には、感温ばね7がケーシング2の中心軸200の方向に伸縮するように、第一フランジ24側に向けて突出するガイド棒332が設けられている。ガイド棒332は、感温ばね7を構成するコイルばねの内部に挿入される。感温ばね7は、第一フランジ24側の端部が、内筒52の蓋53に、第一フランジ24側に向けて力をかけて、蓋53を押す。
サーモカートリッジ11は、使用者が混合水の設定温度を変えないにもかかわらず、吐出する混合水の温度が変化した場合、湯入口21より流入する湯および水入口22より流入する水の流量を自動的に調節して、混合水の温度を設定温度に維持するものである。以下にサーモカートリッジ11による温度調節について説明する。
図3に示される状態で、一定の温度および流量の湯および水が流入して、一定の温度および流量の混合水が吐出されて定常状態となっているとする。このとき、混合水中に位置する感温ばね7の温度は混合水の温度と同じであり、感温ばね7はこの温度に応じた形状(特にコイルばねの長さ)をなしている。弁体5は、感温ばね7とバイアスばね6とに互いに反対方向に押されて釣り合っている。
このとき、流入する湯または水の温度または流量が何らかの原因で変化すると、混合水の温度が変化する。
例えば、圧力低下等により流入する湯の流量が減少すると、混合水の温度が低下する。混合水の温度が低下すると、感温ばね7の温度が混合水の温度と同様に低下し、感温ばね7は低下した温度に応じた長さに縮もうとし、感温ばね7が弁体5を押す力が減少する。感温ばね7が弁体5を押す力が減少すると、バイアスばね6が伸びて、図5Aに示されるように感温ばね7とバイアスばね6とが弁体5を押す力が釣り合う位置まで弁体5が第三フランジ26側に移動する。図3に示される状態と比較して、湯入口21の開口面積が大きくなって流入する湯の流量が増加するとともに、水入口22の開口面積が小さくなって流入する水の流量が減少する。これにより、混合水の温度が上昇して、元の設定温度に戻る。
また、例えば、圧力低下等により流入する水の流量が減少すると、混合水の温度が上昇する。混合水の温度が上昇すると、感温ばね7の温度が混合水の温度と同様に上昇し、感温ばね7は上昇した温度に応じた長さに伸びようとし、感温ばね7が弁体5を押す力が増加する。感温ばね7が弁体5を押す力が増加すると、バイアスばね6が縮んで、図5Bに示されるように感温ばね7とバイアスばね6とが弁体5を押す力が釣り合う位置まで弁体5が第一フランジ24側に移動する。図3に示される状態と比較して、湯入口21の開口面積が小さくなって流入する湯の流量が減少するとともに、水入口22の開口面積が大きくなって流入する水の流量が増加する。これにより、混合水の温度が低下して、元の設定温度に戻る。
このようにして、サーモカートリッジ11は、混合水の温度を設定温度に維持するものである。なお、実際には、サーモカートリッジ11は、混合水の温度を厳密に設定温度に維持するのは困難であるが、一般的な使用者が温度変化を感じにくい程度に混合水の温度を維持することができればよい。感温ばね7およびバイアスばね6は、混合水の温度を設定温度に可及的に近い温度に維持するように定められる。
設定温度の調節は、操作部32(図2参照)が操作されることにより行われる。操作部32が操作されると、栓34およびバイアスばね受け部31を介してバイアスばね6がケーシング2の中心軸200の方向に沿って移動し、感温ばね7とバイアスばね6とが弁体5を押す力が釣り合う位置に弁体5が移動する。弁体5により湯入口21の開口面積および水入口22の開口面積が定まり、混合水の温度が設定される。
なお、第一実施形態で利用される温度調節機構3は、上述した温度調節機構3に限定されず、既存の様々な温度調節機構3が適宜利用可能である。すなわち、第一実施形態で利用されるサーモカートリッジ11は、上述したケーシング2と、ケーシング2に収容される既存の様々な温度調節機構3を備えていればよい。
第一実施形態では、第一フランジ24の直径d1が第二フランジ25の直径d2および第三フランジ26の直径d3よりも大きく、かつ、第二フランジ25の直径d2が第三フランジ26の直径d3と同じに形成される。
第一実施形態では、ハウジング12の内面43は、ケーシング2がハウジング12内の所定位置に収容された状態で、第一フランジ24と対向する箇所の内径D1が第一フランジ24の直径d1以上の第一径となるように形成される。第一フランジ24と対向する箇所の内径D1は、第一フランジ24に設けられたシール部材241のハウジング12に嵌められていない状態における直径よりも小さく形成されている。
第一実施形態ではさらに、ハウジング12の内面43は、ケーシング2がハウジング12内の所定位置に収容された状態で、第二フランジ25と対向する箇所および第三フランジ26と対向する箇所の内径D2が第一径未満で第二フランジ25および第三フランジ26の直径d3以上の第二径となるように形成される。第二フランジ25と対向する箇所および第三フランジ26と対向する箇所の内径D2は、第一フランジ24の直径d1よりも小さく形成されている。また、第二フランジ25と対向する箇所および第三フランジ26と対向する箇所の内径D2は、第二フランジ25および第三フランジ26に設けられたシール部材251、261のハウジング12に嵌められていない状態における直径よりも小さく形成されている。
第一実施形態では、ハウジング12は、挿入開口40より第一径を有する第一内面431および第二径を有する第二内面432を順に有するように形成される。
サーモカートリッジ11は、ハウジング12の挿入開口40より、図1に示される所定の向き、すなわち第三フランジ26側から挿入される。第三フランジ26の直径d3は、第一内面431の内径D1よりも小さいため、第三フランジ26は、第一内面431に嵌め込まれずにハウジング12の奥へ移動する。第二フランジ25の直径d2も、第一内面431の内径D1よりも小さいため、第二フランジ25は、第一内面431に嵌め込まれずにハウジング12の奥へ移動する。
第三フランジ26に設けられたシール部材261の直径は、第二内面432の内径D2よりも大きいため、第三フランジ26(さらに詳しくはシール部材261)は、第二内面432に嵌め込まれて、ハウジング12の内面43との摩擦を生じながらハウジング12の奥へ移動する。
第二フランジ25に設けられたシール部材251の直径は、第二内面432の内径D2よりも大きいため、第二フランジ25(さらに詳しくはシール部材251)は、第二内面432に嵌め込まれて、ハウジング12の内面43との摩擦を生じながらハウジング12の奥へ移動する。ここで、図1に示されるように、第二フランジ25は、ハウジング12の内面43との摩擦を生じながら移動する距離が短くなるように、所定位置において第二内面432の端部に位置するように定められている。
第一フランジ24に設けられたシール部材241の直径は、第一内面431の内径D1よりも大きいため、第一フランジ24(さらに詳しくはシール部材241)は、第一内面431に嵌め込まれて、ハウジング12の内面43との摩擦を生じながらハウジング12の奥へ移動する。
第一実施形態においては、ハウジング12が第一内面431および第二内面432を有している。このため、第二フランジ25および第三フランジ26は、第一内面431に嵌め込まれない状態で、すなわちハウジング12の内面43との摩擦を生じない状態で、ハウジング12の奥へ移動することができる。これにより、ハウジング12の内面43が円筒内面状をしている場合と比較して、フランジ(さらに詳しくは、第二フランジ25および第三フランジ26に設けられたシール部材251、261)と、ハウジング12の内面43の互いに擦れる部分が損傷しにくくなる。
特に、樹脂または金属等を材料とする金型による成形により、ハウジング12が形成される場合に有効である。例えば特許文献1に示される湯水混合栓装置1のように、ハウジング12が鋳物で形成される場合、ハウジング12の内面43は、複雑な凹凸を有することが可能であり、所定位置でのみフランジとハウジング12の内面43とが接触するような形状をとることができる。これに対し、金型による成形によりハウジング12が形成される場合、ハウジング12の内面43は、複雑な凹凸を有することができない。しかしながら、ハウジング12の内面43を、第一内面431および第二内面432を順に有する簡単な段構造とするだけで、成形品としてのハウジング12からの脱型を確保しつつ、上述したようにフランジとハウジング12の内面43の摩擦を抑えることができる。
次に、第二実施形態の湯水混合栓装置1について図6に基いて説明する。なお、第二実施形態の湯水混合栓装置1は、第一実施形態の湯水混合栓装置1と大部分において同じであり、同じ部分については同符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
第二実施形態では、第二フランジ25の直径d2が第三フランジ26の直径d3より大きく形成される。さらに、第二フランジ25と対向する箇所の内径D2が第一径未満で第二フランジ25の直径d2以上の第二径となるように形成される。第二フランジ25と対向する箇所の内径D2は、第一フランジ24の直径d1よりも小さく形成されている。また、第二フランジ25と対向する箇所の内径D2は、第二フランジ25に設けられたシール部材251のハウジング12に嵌められていない状態における直径よりも小さく形成されている。
さらに、第三フランジ26と対向する箇所の内径D3が第二径未満で第三フランジ26の直径d3以上の第三径となるように形成される。第三フランジ26と対向する箇所の内径D3は、第二フランジ25の直径d2よりも小さく形成されている。また、第三フランジ26と対向する箇所の内径D3は、第三フランジ26に設けられたシール部材261のハウジング12に嵌められていない状態における直径よりも小さく形成されている。
ハウジング12は、挿入開口40より第一径を有する第一内面431、第二径を有する第二内面432に加えて、第三径を有する第三内面433を順に有するように形成される。
第三フランジ26の直径d3は、第一内面431および第二内面432の内径D1、D2よりも小さいため、第三フランジ26は、第一内面431のみならず第二内面432に嵌め込まれずにハウジング12の奥へ移動する。
第二実施形態においては、ハウジング12が第一内面431、第二内面432および第三内面433を有している。このため、第三フランジ26は、第一内面431のみならず第二内面432に嵌め込まれない状態で、すなわちハウジング12の内面43との摩擦を生じない状態で、ハウジング12の奥へ移動することができる。これにより、より一層、フランジと、ハウジング12の内面43の互いに擦れる部分が損傷しにくくなる。
次に、第三実施形態の湯水混合栓装置1について図7に基いて説明する。なお、第三実施形態の湯水混合栓装置1は、第一実施形態の湯水混合栓装置1と大部分において同じであり、同じ部分については同符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
第三実施形態では、第二フランジ25と第三フランジ26との距離の大きさL1が、第一フランジ24と第二フランジ25との距離の大きさL0よりも長く形成されている。
第一実施形態のように、第一フランジ24と第二フランジ25との距離の大きさL0が、第二フランジ25と第三フランジ26との距離の大きさL0と同じ場合、第二内面432の内径D2が第一内面431の内径D1より小さいことから、水流路132の容積および流路面積が湯流路131の容積および流路面積より小さくなる。第三実施形態では、水流路132の容積および流路面積を、湯流路131の容積および流路面積に一致または近似させることが可能となる。
これにより、サーモカートリッジ11の湯入口21から流入する湯の流量および水入口22から流入する水の流量を、第一実施形態の湯水混合装置に対して同じまたは近似させることが可能となる。
次に、第四実施形態の湯水混合栓装置1について図8に基いて説明する。なお、第四実施形態の湯水混合栓装置1は、第二実施形態の湯水混合栓装置1と大部分において同じであり、同じ部分については同符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
第四実施形態では、第二フランジ25と第三フランジ26との距離の大きさL1が、第一フランジ24と第二フランジ25との距離の大きさL0よりも長く形成されている。
第二実施形態のように、第一フランジ24と第二フランジ25との距離の大きさL0が、第二フランジ25と第三フランジ26との距離の大きさL0と同じ場合、第二内面432の内径D2が第一内面431の内径D1より小さいことから、水流路132の容積および流路面積が湯流路131の容積および流路面積より小さくなる。第四実施形態では、水流路132の容積および流路面積を、湯流路131の容積および流路面積に一致または近似させることが可能となる。
これにより、サーモカートリッジ11の湯入口21から流入する湯の流量および水入口22から流入する水の流量が、第二実施形態の湯水混合装置に対して同じまたは近似させることが可能となる。
次に、第五実施形態の湯水混合栓装置1について図9に基いて説明する。なお、第五実施形態の湯水混合栓装置1は、第一実施形態の湯水混合栓装置1と大部分において同じであり、同じ部分については同符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
第五実施形態では、ケーシング2の外面201の第一フランジ24と第二フランジ25の間の部分の直径の大きさd4は、ケーシング2の外面201の第二フランジ25と第三フランジ26の間の部分の直径の大きさd0よりも大きく形成されている。
第一実施形態のように、ケーシング2の外面201の第一フランジ24と第二フランジ25の間の部分の直径の大きさd0が、ケーシング2の外面201の第二フランジ25と第三フランジ26の間の部分の直径の大きさd0と同じ場合、第二内面432の内径D2が第一内面431の内径D1より小さいことから、水流路132の容積および流路面積が湯流路131の容積および流路面積より小さくなる。第五実施形態では、水流路132の容積および流路面積を、湯流路131の容積および流路面積に一致または近似させることが可能となる。
これにより、サーモカートリッジ11の湯入口21から流入する湯の流量および水入口22から流入する水の流量を同じまたは近似させることが可能となる。
次に、第六実施形態の湯水混合栓装置1について図10に基いて説明する。なお、第六実施形態の湯水混合栓装置1は、第二実施形態の湯水混合栓装置1と大部分において同じであり、同じ部分については同符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
第六実施形態では、ケーシング2の外面201の第一フランジ24と第二フランジ25の間の部分の直径の大きさd4は、ケーシング2の外面201の第二フランジ25と第三フランジ26の間の部分の直径の大きさd0よりも大きく形成されている。
第二実施形態のように、ケーシング2の外面201の第一フランジ24と第二フランジ25の間の部分の直径の大きさd0が、ケーシング2の外面201の第二フランジ25と第三フランジ26の間の部分の直径の大きさd0と同じ場合、第二内面432の内径D2が第一内面431の内径D1より小さいことから、水流路132の容積および流路面積が湯流路131の容積および流路面積より小さくなる。第六実施形態では、水流路132の容積および流路面積を、湯流路131の容積および流路面積に一致または近似させることが可能となる。
これにより、サーモカートリッジ11の湯入口21から流入する湯の流量および水入口22から流入する水の流量を同じまたは近似させることが可能となる。
なお、第一実施形態ないし第六実施形態は本発明の湯水混合栓装置1の例であって、本発明の湯水混合栓装置1は第一実施形態ないし第六実施形態に限定されるものではない。
たとえば、湯入口21と水入口22の位置、ハウジング湯入口41とハウジング水入口42の位置がいれかわっていてもよい。また、たとえばケーシング2の外面201の断面形状が厳密な円形をなしていなくてもよい。
以上、述べた第一実施形態ないし第六実施形態から明らかなように、本発明に係る第1の形態の湯水混合栓装置1は、サーモカートリッジ11と、内外に連通するハウジング湯入口41およびハウジング水入口42が形成された筒4を有し、この筒4の中心軸400の方向の一端にサーモカートリッジ11が挿入される挿入開口40を有するハウジング12と、を備える。サーモカートリッジ11は、内外に連通する湯入口21、水入口22および混合水出口23が形成された筒20を有するケーシング2と、ケーシング2に収容される温度調節機構3と、を有する。サーモカートリッジ11は、湯入口21より流入する湯および水入口22より流入する水が混合された混合水を混合水出口23から吐出し、温度調節機構3により混合水の温度変化に応じて湯入口21より流入する湯および水入口22より流入する水の流量を調節するものである。ケーシング2には、ケーシング2がハウジング12内の所定位置に収容された状態でケーシング2の外面201とハウジング12の内面43との間の空間13を中心軸400の方向に仕切る第一フランジ24、第二フランジ25および第三フランジ26が中心軸400の方向に挿入開口40側より順に離間して設けられる。ケーシング2には、第一フランジ24および第二フランジ25の間に湯入口21が形成され、第二フランジ25および第三フランジ26の間に水入口22が形成される。ハウジング12には、ケーシング2がハウジング12内の前記所定位置に収容された状態で第一フランジ24および第二フランジ25の間にハウジング湯入口41が形成され、第二フランジ25および第三フランジ26の間にハウジング水入口42が形成される。第一フランジ24の直径d1が第二フランジ25の直径d2および第三フランジ26の直径d3よりも大きく、かつ、第二フランジ25の直径d2が第三フランジ26の直径d3と同じに形成される。ハウジング12の内面43は、ケーシング2がハウジング12内の前記所定位置に収容された状態で、第一フランジ24と対向する箇所の内径D1が第一フランジ24の直径d1以上の第一径となり、第二フランジ25と対向する箇所および第三フランジ26と対向する箇所の内径D2が前記第一径未満で第二フランジ25および第三フランジ26の直径d3以上の第二径となり、挿入開口40より前記第一径を有する第一内面431および前記第二径を有する第二内面432を順に有するように形成される。
第1の形態によれば、第二フランジ25および第三フランジ26と、ハウジング12の内面43との互いに擦れる部分が損傷しにくい。
本発明に係る第2の形態の湯水混合栓装置1は、サーモカートリッジ11と、内外に連通するハウジング湯入口41およびハウジング水入口42が形成された筒4を有し、この筒4の中心軸400の方向の一端にサーモカートリッジ11が挿入される挿入開口40を有するハウジング12と、を備える。サーモカートリッジ11は、内外に連通する湯入口21、水入口22および混合水出口23が形成された筒20を有するケーシング2と、ケーシング2に収容される温度調節機構3と、を有する。サーモカートリッジ11は、湯入口21より流入する湯および水入口22より流入する水が混合された混合水を混合水出口23から吐出し、温度調節機構3により混合水の温度変化に応じて湯入口21より流入する湯および水入口22より流入する水の流量を調節するものである。ケーシング2には、ケーシング2がハウジング12内の所定位置に収容された状態でケーシング2の外面201とハウジング12の内面43との間の空間13を中心軸400の方向に仕切る第一フランジ24、第二フランジ25および第三フランジ26が中心軸400の方向に挿入開口40側より順に離間して設けられる。ケーシング2には、第一フランジ24および第二フランジ25の間に湯入口21が形成され、第二フランジ25および第三フランジ26の間に水入口22が形成される。ハウジング12には、ケーシング2がハウジング12内の前記所定位置に収容された状態で第一フランジ24および第二フランジ25の間にハウジング湯入口41が形成され、第二フランジ25および第三フランジ26の間にハウジング水入口42が形成される。第一フランジ24の直径d1が第二フランジ25の直径d2および第三フランジ26の直径d3よりも大きく、かつ、第二フランジ25の直径d2が第三フランジ26の直径d3より大きく形成される。ハウジング12の内面43は、ケーシング2がハウジング12内の前記所定位置に収容された状態で、第一フランジ24と対向する箇所の内径D1が第一フランジ24の直径d1以上の第一径となり、第二フランジ25と対向する箇所の内径D2が前記第一径未満で第二フランジ25の直径d2以上の第二径となり、第三フランジ26と対向する箇所の内径D3が前記第二径未満で第三フランジ26の直径d3以上の第三径となり、挿入開口40より前記第一径を有する第一内面431、前記第二径を有する第二内面432および前記第三径を有する第三内面433を順に有するように形成される。
第2の形態によれば、第二フランジ25および第三フランジ26と、ハウジング12の内面43との互いに擦れる部分が損傷しにくい。
本発明に係る第3の形態の湯水混合栓装置1では、第1または第2の形態との組み合わせにより実現される。第3の形態の湯水混合栓装置1は、第二フランジ25と第三フランジ26との距離の大きさL1が、第一フランジ24と第二フランジ25との距離の大きさL0よりも長く形成されている。
第3の形態によれば、サーモカートリッジ11の湯入口21から流入する湯の流量および水入口22から流入する水の流量を同じまたは近似させることが可能となる。
本発明に係る第4の形態の湯水混合栓装置1では、第1または第3の形態との組み合わせにより実現される。第4の形態の湯水混合栓装置1は、ケーシング2の外面201の第一フランジ24と第二フランジ25の間の部分の直径の大きさd4は、ケーシング2の外面201の第二フランジ25と第三フランジ26の間の部分の直径の大きさd0よりも大きく形成されている。
第4の形態によれば、サーモカートリッジ11の湯入口21から流入する湯の流量および水入口22から流入する水の流量を同じまたは近似させることが可能となる。