JP6585856B2 - 複合樹脂材料および成形体 - Google Patents

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Description

本発明はポリクロロトリフルオロエチレンおよびカーボンナノチューブを含む複合樹脂材料および該複合樹脂材料を用いて作製された成形体に関する。
半導体部品や自動車部品等の分野において、樹脂材料とカーボンナノチューブ等のカーボンナノ材料とを複合化させた新しい導電性材料の開発、実用化が期待されている。カーボンナノ材料の導電性材料への利用にあたっては、樹脂材料に対するカーボンナノ材料の分散性が問題となる場合があり、カーボンナノ材料の分散性向上を目的とする種々の試みがなされている。
例えば、特許文献1には、亜臨界または超臨界状態の二酸化炭素を使用する、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂の粒子とカーボンナノ材料とを含む複合樹脂材料粒子の製造方法が記載されている。
特許文献2には、ケトン系溶媒を使用してポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂の粒子とカーボンナノ材料とを複合化させる複合樹脂粒子の製造方法が記載されている。
特開2014−34591号公報 特開2015−30821号公報
半導体部品に金属不純物や表面吸着化学物質等の汚染物質が含まれていると、該半導体部品から得られる半導体製品の信頼性に悪影響を及ぼし得る。そのため、半導体の製造においては、金属不純物や表面吸着化学物質等の汚染物質をウェーハ等から除去するための洗浄工程が重要な工程とされており、種々の洗浄方法が検討されている。例えば、オゾン水を用いる洗浄方法や、硫酸および過酸化水素等を用いるSPM洗浄などが行われている。本発明者らは、カーボンナノ材料を含む導電性材料を用いて作製された成形体を例えばオゾン水等を用いて洗浄処理すると、体積抵抗率が増加して導電性が低下する場合があることを見出した。また、帯電防止性が求められる成形体においても、硫酸等の強酸により体積抵抗率が増加して帯電防止性が低下する場合がある。そこで、本発明者らは、オゾン水を用いる洗浄処理等を行っても体積抵抗率が増加しにくい材料について検討した。
したがって本発明は、低い体積抵抗率を有すると共に、オゾン水を用いる洗浄処理等を行っても体積抵抗率が増加しにくい樹脂成形体を与える樹脂材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、以下に説明する本発明の複合樹脂材料により上記目的を達成できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の好適な態様を包含する。
〔1〕ポリクロロトリフルオロエチレンおよびカーボンナノチューブを含み、500μm以下の平均粒子径を有する、複合樹脂材料。
〔2〕複合樹脂材料の総量に基づいて0.01〜2.0質量%のカーボンナノチューブを含む、前記〔1〕に記載の複合樹脂材料。
〔3〕BET法により測定して1.0〜6.0m/gの比表面積を有する、前記〔1〕または〔2〕に記載の複合樹脂材料。
〔4〕JIS K6911に従い測定して1.0×10Ω・cm以下の体積抵抗率を有する、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の複合樹脂材料。
〔5〕ポリクロロトリフルオロエチレンは0.8cm/sec以上のフロー値を有する、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の複合樹脂材料。
〔6〕前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の複合樹脂材料を用いて作製された成形体。
〔7〕カーボンナノチューブの平均長さは50μm以上である、〔6〕に記載の成形体。
〔8〕成形体は、板、棒、フィルム、シート、塊、管形状からなる群から選択される形状を有する、前記〔6〕または〔7〕に記載の成形体。
本発明の複合樹脂材料を用いて作製した成形体は、低い体積抵抗率を有すると共に、例えばオゾン水等を用いる洗浄処理等を行っても体積抵抗率の増加が生じにくい。
図1は、実施例3で得た樹脂材料を用いて圧縮成形により作製した成形体中のCNT画像である。 図2は、実施例3で得た樹脂材料を用いて溶融混練により作製した成形体中のCNT画像である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更、追加、削除をすることができる。
本発明の複合樹脂材料は、ポリクロロトリフルオロエチレンおよびカーボンナノチューブを含む。本発明の複合樹脂材料は、ポリクロロトリフルオロエチレンとカーボンナノチューブを複合化させた材料であり、ポリクロロトリフルオロエチレンの粒子の少なくとも表面および/または表層にカーボンナノチューブが存在する。例えば、ポリクロロトリフルオロエチレンの粒子表面にカーボンナノチューブの少なくとも一部が担持または埋没されている。カーボンナノチューブは、ポリクロロトリフルオロエチレンの粒子表面に付着して担持されていてもよいし、一部が埋没して担持されていてもよいし、ポリクロロトリフルオロエチレンの粒子の表層に完全に埋没していてもよい。
本発明の複合樹脂材料は、500μm以下の平均粒子径を有する。平均粒子径が500μmより大きいと、カーボンナノチューブが均一に分散した成形体が得られず、特に薄い成形体においては、成形体の体積抵抗率を十分に低減することができない。本発明の複合樹脂材料は、好ましくは250μm以下、より好ましくは100μm以下、さらにより好ましくは50μm以下、特に好ましくは25μm以下、極めて好ましくは12μm以下の平均粒子径を有する。平均粒子径が上記の上限以下であると、最終的に得られる成形体の体積抵抗率を低減しやすいため好ましい。本発明の複合樹脂材料の平均粒子径の下限値は特に限定されないが、通常1μm以上である。複合樹脂材料の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒子径を意味するメジアン径(D50)であり、レーザー回折散乱粒度分布装置を用いて測定される。
本発明の複合樹脂材料は、ポリクロロトリフルオロエチレンとカーボンナノチューブを複合化させ、上記の範囲の平均粒子径を有することにより、本発明の複合樹脂材料を用いて作製した成形体の体積抵抗率を効果的に低下させ、成形体に帯電防止性および/または導電性を付与することができる。また、オゾン水等を用いる洗浄処理による体積抵抗率の増加を抑制することができる。
本発明の複合樹脂材料に含まれるポリクロロトリフルオロエチレン(以下において、「PCTFE」とも称する)としては、クロロトリフルオロエチレン(以下において、「CTFE」とも称する)の単独重合体、および、CTFEとCTFEと重合可能な少なくとも1種の単量体との共重合体が挙げられる。オゾン水等を用いる洗浄処理による体積抵抗率の増加を抑制しやすい観点から、PCTFEは、CTFEに基づく構成単位を、PCTFE中の全構成単位に基づいて90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらにより好ましくは98〜100モル%含有することが好ましい。PCTFE中の各構成単位の量は、本発明の複合樹脂材料の溶融NMR分析、フッ素含有量分析および赤外吸収スペクトル分析等から求めることができる。
PCTFEがCTFEとCTFEと重合可能な単量体(a)との共重合体である場合、単量体(a)としては、特に限定されないが、例えばテトラフルオロエチレン、エチレン、ビニリデンフルオライド、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、次の式(I):
CX=CX(CF (I)
〔式中、X、X及びXは、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子を表し、Xは、水素原子、フッ素原子または塩素原子を表し、nは1〜10の整数を表す〕
で表されるビニル単量体、および、次の式(II):
CF=CF−OCH−Rf (II)
〔式中、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す〕
で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体、不飽和カルボン酸等が挙げられる。PCTFEは、CTFEと1種類の上記単量体(a)との共重合体であってもよいし、CTFEと2種以上の上記単量体(a)との共重合体であってもよい。
パーフルオロ(アルキルビニル)エーテルとしては、例えばパーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、および、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)が挙げられる。
上記式(I)で表されるビニル単量体としては、例えばヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(1,1,2−トリハイドロ−1−ヘキセン)、パーフルオロ(1,1,5−トリハイドロ−1−ペンテン)、次の式(III):
C=CXRf (III)
〔式中、Xは、H、FまたはCFであり、Rfは炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基である〕
で表されるパーフルオロ(アルキル)エチレン等が挙げられる。パーフルオロ(アルキル)エチレンとしては、パーフルオロ(ブチル)エチレンが好ましい。
上記式(II)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rfが炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF=CF−OCH−CFCFがより好ましい。
不飽和カルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アコニット酸等の炭素数3〜6の不飽和脂肪族カルボン酸類等が挙げられ、炭素数3〜6の不飽和脂肪族ポリカルボン酸類であってもよい。不飽和脂肪族ポリカルボン酸類としては、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アコニット酸等が挙げられ、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の酸無水物が可能であるものは酸無水物であってもよい。
単量体(a)は、テトラフルオロエチレン、エチレン、ビニリデンフルオライド、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、および、上記式(I)で表されるビニル単量体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の複合樹脂材料において、PCTFEは、好ましくは0.8cm/sec以上、より好ましくは1.0cm/sec以上のフロー値を有する。フロー値が上記の下限以上であると、複合樹脂組成物の機械的特性および成形性を高めやすいため好ましい。フロー値の上限は、例えば2.0cm/secである。フロー値は、フローテスター(例えば、島津製作所製「CFT−500C」)を用いて、温度230℃、荷重100kgfで、直径1mm×長さ1mmのオリフィスに通して押し出し、1秒間あたりに流れる樹脂の体積として測定したものである。
本発明の複合樹脂材料において、PCTFEは、好ましくは130〜290℃、より好ましくは160〜270℃、さらにより好ましくは180〜250℃の融点を有する。融点が上記の下限以上であると、成形性を向上しやすいため好ましく、上記の上限以下であると、樹脂の最適な機械特性を得やすいため好ましい。PCTFEの融点は、ASTM−D4591に準拠し、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される。
本発明の複合樹脂材料に含まれるPCTFEの量は、複合樹脂材料の総量に基づいて好ましくは98.0質量%以上、より好ましくは99.5質量%以上、さらにより好ましくは99.8質量%以上である。PCTFEの量が上記の下限以上であると、複合樹脂材料の機械的特性および成形性を高めやすいため好ましい。PCTFEの量の上限は、特に限定されないが、99.99質量%程度である。複合樹脂材料に含まれるPCTFEの量は、炭素成分分析法により測定される。
本発明の複合樹脂材料に含まれるカーボンナノチューブ(以下において「CNT」とも称する)は、炭素原子の六員環で構成される1枚または複数枚のグラフェンシートが円筒状に巻かれた構造を有する。CNTは、1枚のグラフェンシートが同心円状に巻かれた単層CNT(シングルウォールカーボンナノチューブ)、または、2枚以上の複数のグラフェンシートが同心円状に巻かれた多層CNT(マルチウォールカーボンナノチューブ)である。上記のカーボンナノ材料を単独で用いてもよいし、これらを組み合わせて用いてもよい。PCTFEの粒子と複合化させやすく、体積抵抗率を低くしやすい観点からは、カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。
本発明の複合樹脂材料に含まれるカーボンナノチューブの量は、複合樹脂材料の総量に基づいて好ましくは0.01〜2.0質量%、より好ましくは0.02〜0.5質量%、さらにより好ましくは0.025〜0.2質量%である。カーボンナノチューブの量が上記の下限以上であると、帯電防止性または導電性を高めるために体積抵抗率を低下させやすいため好ましい。カーボンナノチューブの量が上記の上限以下であると、体積抵抗率を効率的に低下させやすいため好ましい。複合樹脂材料に含まれるカーボンナノチューブの量は、炭素成分分析法により測定される。
本発明の複合樹脂材料は、JIS Z8830に準拠し測定して、好ましくは1.0〜6.0m/g、より好ましくは1.5〜3.0m/g、さらにより好ましくは2.0〜3.0m/gの比表面積を有する。比表面積が上記の下限以上であると、PCTFE粒子とカーボンナノチューブとの密着性を高めやすい観点から好ましく、上記の上限以下であると、複合樹脂材料の製造しやすさの観点から好ましい。複合樹脂材料の比表面積は、具体的には、定容量式ガス吸着法である比表面積/細孔分布測定装置(例えば日本ベル製BELSORP−miniII)を用いて、一般的な比表面積の測定方法であるBET法により測定した。
本発明の複合樹脂材料は、本発明の複合樹脂材料が帯電防止性が求められる用途に使用される一態様において、JIS K6911に従い測定して好ましくは1.0×10Ω・cm以下、より好ましくは1.0×10Ω・cm以下、さらにより好ましくは1.0×10Ω・cm以下の体積抵抗率を有する。体積抵抗率が上記の上限以下であると良好な帯電防止性を得られる。また、本発明の複合樹脂材料は、本発明の複合樹脂材料が導電性が求められる用途に使用される一態様において、JIS K6911に従い測定して好ましくは1.0×10Ω・cm以下、より好ましくは1.0×10Ω・cm以下、さらにより好ましくは1.0×10Ω・cm以下の体積抵抗率を有する。体積抵抗率が上記の上限以下であると良好な導電性を得られる。複合樹脂材料の体積抵抗率の下限値は特に限定されず、0Ω・cm以上であってよいが、通常10Ω・cm以上である。複合樹脂材料の体積抵抗率は、JIS K6911に従い成形素材または切削加工した試験片を用いて、抵抗率計(例えば三菱化学アナリテック製「ロレスター」または「ハイレスター」)により測定される。例えば圧縮成形(コンプレッション成形)により作製したφ110×10mmの試験片を用いて測定した場合に、複合樹脂材料が上記体積抵抗率を示すことが好ましい。
ここで、帯電防止性材料または導電性材料の製造において、体積抵抗率を低下させる目的で樹脂に導電性材料等を添加すると、樹脂本来の機械的強度が低下する場合がある。本発明の複合樹脂材料によれば、理由は明らかではないが、上記好ましい範囲の体積抵抗率を有する場合であっても機械的強度の低下が抑制された樹脂成形体を得ることができる。具体的には、本発明の複合樹脂材料は、以下のような機械的強度を有することが好ましい。
本発明の複合樹脂材料は、好ましくは1000〜2100MPa、より好ましくは1200〜1900MPa、さらにより好ましくは1300〜1800MPaの引張弾性率を有する。複合樹脂材料の引張弾性率は、JIS K7137-2-Aに従いダンベル試験片を用いて、5kN荷重、1mm/minの速度にて、引張試験機(例えば株式会社エー・アンド・デイ製「テンシロン万能材料試験機」)にて測定される。
本発明の複合樹脂材料は、好ましくは30〜55MPa、より好ましくは35〜50MPa、さらにより好ましくは35〜45MPaの引張強度を有する。複合樹脂材料の引張強度は、上記引張弾性率と同様の試験片および試験機を用いて測定される。
本発明の複合樹脂材料は、好ましくは4.0〜7.0%、より好ましくは4.5〜6.5%、さらにより好ましくは5.0〜6.0%の引張伸び(最大点)を有する。複合樹脂材料の引張伸びは、上記引張弾性率と同様の試験片および試験機を用いて測定される。
本発明の複合樹脂材料は、好ましくは15〜60%、より好ましくは20〜60%、さらにより好ましくは25〜55%、特に好ましくは30〜50%の引張伸び(破断点)を有する。複合樹脂材料の引張伸びは、上記引張弾性率と同様の試験片および試験機を用いて測定される。
本発明の複合樹脂材料は、好ましくは1000〜1500MPa、より好ましくは1100〜1400MPa、さらにより好ましくは1100〜1300MPaの圧縮弾性率を有する。複合樹脂材料の圧縮弾性率は、φ8×20mmの試験片を用いて、5kN荷重、1mm/minの速度にて、圧縮試験機(例えば株式会社エー・アンド・デイ製「テンシロン万能材料試験機」)にて測定される。
本発明の複合樹脂材料は、好ましくは8〜15MPa、より好ましくは9〜14MPa、さらにより好ましくは10〜13MPaの圧縮強度(1%変形)を有する。複合樹脂材料の圧縮強度は、上記圧縮弾性率と同様の試験片および試験機を用いて測定される。
本発明の複合樹脂材料は、好ましくは1300〜2100MPa、より好ましくは1450〜1950MPa、さらにより好ましくは1500〜1800MPaの曲げ弾性率を有する。複合樹脂材料の曲げ弾性率は、厚さ4mm×幅10mm×長さ80mmの試験片を用いて、5kN荷重、10mm/minの速度にて、曲げ試験機(例えば株式会社エー・アンド・デイ製「テンシロン万能材料試験機」)にて測定される。
本発明の複合樹脂材料は、好ましくは50〜90MPa、より好ましくは65〜80MPa、さらにより好ましくは65〜75MPaの曲げ強度を有する。複合樹脂材料の曲げ強度は、上記曲げ弾性率と同様の試験片および試験機を用いて測定される。
上記機械的強度を測定するための各試験片の製造方法を説明する。まず、本発明の複合樹脂材料を金型に入れ、必要に応じて適切な前処理(例えば、予備乾燥、造粒等)を行い、200℃以上の温度で2時間以上加熱する。所定時間加熱後、所定の圧力で圧縮しながら冷却を行い成形体を製造する。得られた成形体をそのまま試験片として用いてもよいし、該成形体から切削加工により試験片を作製してもよい。
本発明の複合樹脂材料は、ポリクロロトリフルオロエチレンとカーボンナノチューブを複合化させた材料である。本発明の複合樹脂材料を製造するための方法は、好ましくは上記のような物性を有し、ポリクロロトリフルオロエチレンの少なくとも表面および/または表層にカーボンナノチューブが存在する複合樹脂材料が得られる限り特に限定されない。例えば、特開2014−34591号に記載されるような方法で亜臨界または超臨界状態の二酸化炭素を用いて、または、特開2015−30821号に記載されるような方法でケトン系溶媒を用いて、ポリクロロトリフルオロエチレンの粒子とカーボンナノチューブとを複合化することにより製造することができる。
亜臨界または超臨界状態の二酸化炭素を用いてポリクロロトリフルオロエチレンの粒子とカーボンナノチューブとを複合化する製造方法について、以下に具体的に説明する。まず第1工程において、カーボンナノチューブを溶媒に分散させて、カーボンナノチューブ分散液を調製する。溶媒としては、水、アルコール系溶媒(エタノール、n−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等)、エステル系溶媒(酢酸エチル等)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等)、ケトン系溶媒(メチルエチルケトン、アセトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノン等)、脂肪族炭化水素系溶媒(ヘキサン、ヘプタン等)、芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、ベンゼン等)、塩素化炭化水素系溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等)が挙げられる。1種類の溶媒を使用してもよいし、2種以上の溶媒を組み合わせて使用してもよい。ポリクロロトリフルオロエチレンとカーボンナノチューブとを複合化させやすい観点からは、ポリクロロトリフルオロエチレンの粒子表面を膨潤させやすい溶媒を使用することが好ましく、具体的にはケトン系溶媒を使用することが好ましい。
カーボンナノチューブ分散液に含まれる溶媒の量は、溶媒中にカーボンナノチューブを単一分散させやすい観点から、カーボンナノチューブ分散液に含まれるカーボンナノチューブ100質量部に対して、好ましくは20,000〜1,000,000質量部、より好ましくは30,000〜300,000質量部、さらにより好ましくは50,000〜200,000質量部である。
本発明の複合樹脂材料の製造に使用するカーボンナノチューブは、好ましくは50〜600μm、より好ましくは50〜300μm、さらにより好ましくは100〜200μmの平均長さを有する。カーボンナノチューブの平均長さは、走査型電子顕微鏡(SEM、FE−SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)により測定される。
カーボンナノチューブは、従来の製造方法によって製造できる。具体的には、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法などの気相成長法、気相流動法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco法、オイルファーネス法等が挙げられる。市販のカーボンナノチューブ、例えばNanocyl製「NC7000」を使用してもよい。
溶媒にカーボンナノチューブを分散させる際、カーボンナノチューブの分散性を高める目的で分散剤を使用してもよい。分散剤としては、例えばアクリル系分散剤、ポリビニルピロリドン、ポリアニリンスルホン酸等の合成ポリマー、DNA、ペプチド、有機アミン化合物等が挙げられる。1種類の分散剤を使用してもよいし、2種以上の分散剤を組み合わせて使用してもよい。最終的に得られる成形体中に残存する分散剤の量を低減しやすい観点からは、分散剤が、本発明の複合樹脂材料の成形温度よりも低い温度の沸点を有することが好ましい。分散剤を使用する場合、カーボンナノチューブ分散液に含まれる分散剤の量は、カーボンナノチューブ、溶媒および分散剤の種類や量によって適宜選択してよい。例えば、使用する分散剤の量は、カーボンナノチューブ100質量部に対して好ましくは100〜6,000質量部、より好ましくは200〜3,000質量部、さらにより好ましくは300〜1,000質量部である。
上記第1工程において水を溶媒として用いる場合、後述する第2工程の前に、カーボンナノチューブ分散液をアルコール系溶媒等と混合する。これは、続く第2工程において添加するPCTFE粒子と水との親和性が低く、溶媒として水を用いるカーボンナノチューブ分散液中にPCTFE粒子を分散させることが難しいためである。そこで、アルコール系溶媒を混合することにより、PCTFE粒子とカーボンナノチューブ分散液との親和性を高めることができる。
次に、第2工程において、カーボンナノチューブ分散液にPCTFE粒子を添加し撹拌して、カーボンナノチューブおよびPCTFE粒子が分散した混合スラリーを調製する。
カーボンナノチューブ分散液にPCTFE粒子を添加すると、分散液中のカーボンナノチューブがPCTFE表面に緩やかに吸着する。ここで、溶媒の温度、カーボンナノチューブおよびPCTFE粒子の分散濃度、PCTFE粒子の添加速度等を適宜調整することにより、カーボンナノチューブおよびPCTFE粒子の高い分散状態を維持しつつ、カーボンナノチューブをPCTFE表面に吸着させることができる。このような方法により、カーボンナノチューブを、低い添加濃度であっても、PCTFE粒子の表面に均一に分散させることができる。また、長尺のカーボンナノチューブを用いる場合であっても、その性質を損なうことなく、PCTFE粒子の表面に均一に分散させることができる。PCTFE粒子の添加は、PCTFE粒子をそのまま添加してもよいし、PCTFE粒子を溶媒にあらかじめ分散させたPCTFE粒子の分散液の形態で添加してもよい。
本発明の複合樹脂材料の製造に使用するPCTFE粒子は、好ましくは5〜500μm、より好ましくは8〜250μm、さらにより好ましくは10〜100μm、特に好ましくは10〜50μm、極めて好ましくは10〜25μmの平均粒子径を有する。PCTFE粒子の平均粒子径が上記の上限以下であることが、複合樹脂材料から作製した成形体におけるカーボンナノチューブの分散性を高めやすく、帯電防止性および/または導電性を均一に高めやすいため好ましい。PCTFE粒子の平均粒子径が上記の下限以上であることが、複合樹脂材料の製造しやすさの観点から好ましい。PCTFE粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒子径を意味するメジアン径(D50)であり、レーザー回折散乱粒度分布装置を用いて測定される。
本発明の複合樹脂材料の製造に使用するPCTFE粒子は、JIS Z8830に従い測定して好ましくは1.0〜6.0m/g、より好ましくは1.5〜3.0m/g、さらにより好ましくは2.0〜3.0m/gの比表面積を有する。PCTFE粒子の比表面積が上記の上限以下であることが、PCTFE粒子とカーボンナノチューブとの密着性を高めやすい観点から好ましく、上記の下限以上であることが、複合樹脂材料の製造しやすさの観点から好ましい。PCTFE粒子の比表面積は、具体的には、定容量式ガス吸着法である比表面積/細孔分布測定装置を用いて、一般的な比表面積の測定方法であるBET法により測定される。
本発明の複合樹脂材料におけるPCTFEについて上記に述べた、PCTFEの構造、フロー値および融点に関する記載は、これらは複合化前後で変化しない特性であるため、本発明の複合樹脂材料の製造に使用するPCTFE粒子についても同様にあてはまる。
上記好ましい範囲の平均粒子径や比表面積を有するPCTFE粒子の製造方法は特に限定されないが、例えば、CTFEを単独重合、または、CTFEおよびCTFEと重合可能な少なくとも1種の単量体を共重合し、重合後に反応性重合体を含む分散液を噴霧乾燥させる方法、得られるPCTFE重合体をハンマーミル、ターボミル、カッティングミル、ジェットミル等の粉砕機を使用して機械的に粉砕する方法、得られるPCTFE重合体を室温未満の温度で機械的に粉砕する凍結粉砕などが挙げられる。所望の平均粒子径および比表面積を有するPCTFE粒子を得やすい観点からは、凍結粉砕によりPCTFE粒子を製造することが好ましい。
凍結粉砕によりPCTFE粒子を製造する場合、PCTFE粒子を液化炭酸ガスや液体窒素等の冷却媒体で冷却しながら粉砕を行う。粉砕時の温度は、好ましくは−200℃〜20℃、より好ましくは−180℃〜−20℃、さらにより好ましくは−150℃〜−50℃である。
上記範囲の平均粒子径を有するPCTFE粒子は、篩や気流を用いる分級工程により平均粒子径を調整して製造してもよい。
次に第3工程において、第2工程で得た混合スラリーを耐圧容器に供給し、耐圧容器内で二酸化炭素が亜臨界または超臨界状態となる温度および圧力を維持しながら、二酸化炭素を特定の速度で供給し、耐圧容器内に二酸化炭素を充満させる。二酸化炭素としては、液化二酸化炭素、気液混合の二酸化炭素、気体の二酸化炭素のうちいずれを使用してもよい。ここで、二酸化炭素が超臨界状態とは、臨界点以上の温度および臨界点以上の圧力にある状態をいい、具体的には31.1℃以上の温度および72.8気圧以上の圧力にある状態をいう。また、亜臨界状態とは、臨界点以上の圧力および臨界点以下の温度にある状態をいう。
第3工程において、混合スラリーに含まれていた溶媒および分散剤が二酸化炭素中に溶け込み、混合スラリー中に分散していたカーボンナノチューブがPCTFE粒子に付着する。
二酸化炭素の供給速度は、カーボンナノチューブ同士の凝集を抑制し、PCTFE粒子の表面にカーボンナノチューブを均一に付着させやすい観点から、例えば混合スラリーに含まれる分散剤1mgに対して好ましくは0.25g/分以下、より好ましくは0.07g/分以下、さらにより好ましくは0.05g/分以下である。
続く第4工程において、二酸化炭素が亜臨界または超臨界状態となる温度および圧力を所定時間保持しながら、二酸化炭素を、二酸化炭素中に溶け込んだ溶媒および分散剤と共に耐圧容器から排出する。
次に、第5工程において、第4工程の状態を維持しながら分散剤と親和性の高いエントレーナを耐圧容器中に添加する。これにより、残存する分散剤を効率的に除去することができる。エントレーナとしては、例えば、第1工程においてカーボンナノチューブ分散液を調製する際に使用した溶媒を使用してよい。具体的には、第1工程において有機溶媒を使用した場合にはエントレーナとして同様の有機溶媒を使用してよい。第1工程において溶媒として水を使用した場合には、エントレーナとしてアルコール系溶媒を使用することが好ましい。なお、第5工程は分散剤を効率的に除去するための任意の工程であり、必須の工程ではない。例えばエントレーナを添加せず、第4工程を維持することにより、分散剤を除去することも可能である。
次に、第6工程において、耐圧容器の圧力を下げることにより耐圧容器中の二酸化炭素を除去し、本発明の複合樹脂材料を得ることができる。ここで、二酸化炭素の除去方法によっては、複合樹脂材料に二酸化炭素や溶媒が残存する場合がある。そのため、得られる複合樹脂材料を真空にさらしたり、加熱することにより、残存する二酸化炭素や溶媒を効率的に除去することができる。
本発明はまた、本発明の複合樹脂材料を用いて作製された成形体に関する。本発明の複合樹脂材料を用いて作製された成形体は、帯電防止性および/または導電性に優れると共に機械的強度も維持しており、エレクトロニクス分野、電機、機械、車輌等の種々の用途に好適である。例えば、コンデンサーもしくは電池用の集電体、放熱板、放熱部品、エレクトロ二クス部品、半導体製造装置用部品、軸受、帯電防止が必要なノズル、ホース、チューブ、容器、シート、ガスケット、パッキン、導電性のコントロールが必要なコピー機の定着ロール表面などの用途に好適である。成形体の形状は特に限定されないが、例えば板、棒、フィルム、シート、塊、管(筒)形状からなる群から選択される形状を有していてよい。
本発明の成形体の成形方法は、公知慣用の方法を使用してよく、成形体の用途や所望される形状によって適宜選択すればよい。例えば圧縮成形(コンプレッション成形)、ホットコイニング成形、プレス成形、SMC法、マッチドダイ法、金属や樹脂、織布、不織布などとの積層成形などの成形方法が挙げられる。機械的特性、電気的特性、成形性の観点から、圧縮成形(コンプレッション成形)・ホットコイニング成形により成形体を製造することが好ましい。
本発明の成形体は、ポリクロロトリフルオロエチレンを含む複合樹脂材料を用いて作製されたものであるため、溶融混練等により複合樹脂材料に剪断力を与える方法、例えば押出成形法や射出成形法等を用いると、カーボンナノチューブが切断され、導電性が低下し、その結果、体積抵抗率が高くなる。その観点から、本発明の成形体は剪断力を複合樹脂材料に与えない方法、例えば圧縮成形(コンプレッション成形)により成形体を製造することが好ましい。圧縮成形は、例えば本発明の複合樹脂材料を金型に入れ、必要に応じて適切な前処理(例えば、予備乾燥、造粒等)を行い、200℃以上の温度で2時間以上加熱し、所定時間加熱後、所定の圧力で圧縮しながら冷却を行う方法であることが好ましい。従って、本発明の好ましい態様では、成形時におけるカーボンナノチューブの切断が抑制されるため、本発明の成形体に含まれるカーボンナノチューブは、好ましくは50〜300μm、より好ましくは70〜250μm、さらに好ましくは100〜200μmの平均長さを有する。平均長さは実施例の項に記載の方法により測定できる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
〔平均粒子径D50の測定〕
本発明の複合樹脂材料および本発明の複合樹脂材料の製造に使用するPCTFE粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布装置(日機装製「MT3300II」)により粒度分布を測定し、平均粒子径D50を得た。
〔比表面積の測定〕
本発明の複合樹脂材料および本発明の複合樹脂材料の製造に使用するPCTFE粒子の比表面積の測定は、JIS Z8830に従い、比表面積/細孔分布測定装置(日本ベル製BELSORP−miniII)を用いて行った。
〔体積抵抗率の測定〕
圧縮成形(コンプレッション成形)によりφ110×10mmの試験片を作製し、測定試料とした。
体積抵抗率の測定は、JIS K6911に従い、抵抗率計(三菱化学アナリテック製「ロレスター」または「ハイレスター」)を用いて行った。
〔機械的強度の測定〕
(引張弾性率、引張強度、引張伸び(破断点))
圧縮成形(コンプレッション成形)によりJIS K7137-2-Aに従うダンベル試験片を作製し、測定試料とした。
引張弾性率、引張強度および引張伸び(破断点)の測定は、上記測定試料を用いて、JIS K7137-2-Aに従い、5kN荷重、1mm/minの速度にて、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製「テンシロン万能材料試験機」)を用いて行った。
(圧縮弾性率、圧縮強度(1%変形))
圧縮成形(コンプレッション成形)によりφ8×20mmの試験片を作製し、測定試料とした。
圧縮弾性率および圧縮強度(1%変形)の測定は、上記測定試料を用いて、JIS K7181に従い、5kN荷重、1mm/minの速度にて、圧縮試験機(株式会社エー・アンド・デイ製「テンシロン万能材料試験機」)を用いて行った。
(曲げ弾性率、曲げ強度)
圧縮成形(コンプレッション成形)により厚さ4mm×幅10mm×長さ80mmの試験片を作製し、測定試料とした。
曲げ弾性率および曲げ強度の測定は、上記測定試料を用いて、JIS K7171に従い、5kN荷重、10mm/minの速度にて、曲げ試験機(株式会社エー・アンド・デイ製「テンシロン万能材料試験機」)を用いて行った。
〔成形体の作製〕
後述する実施例および比較例で得た複合樹脂材料を素材成形用金型に一定量、均一に充填して、成形体寸法に応じて予備乾燥などの適切な前処理を行った。前処理実施後、金型を200℃以上に設定した熱風循環式電気炉で2時間以上加熱させて樹脂を溶融させる。所定時間加熱後、電気炉から金型を取り出し、油圧プレスを用いて25kg/cm以上の面圧で加圧圧縮しながら常温付近まで金型を冷却したのち、複合樹脂材料を用いた成形体を取得した。
〔硫酸過水(SPM)浸漬処理〕
ガラスビーカー中で98%硫酸と30%過酸化水素水を2:1の重量比で混合して硫酸過水を調製した。調製した硫酸過水の温度が反応熱によって最高温度に達した所に、後述する実施例および比較例の複合樹脂材料から得たJIS K7137-2-Aに従うダンベル試験片を入れ、24時間浸漬させた。24時間浸漬後、硫酸過水の調製、24時間浸漬を繰り返して行い、累積で7日間浸漬した試験片について、JIS K6911に従い体積抵抗率および重量変化率の測定を行った。
〔IPA浸漬処理〕
ガラスビーカー中にIPAを注ぎ入れ、そこに後述する実施例および比較例の複合樹脂材料から得たJIS K7137-2-Aに従うダンベル試験片を入れ、7日間浸漬させた。7日間浸漬した試験片について、JIS K6911に従い体積抵抗率および重量変化率の測定を行った。
〔シンナー浸漬処理〕
ガラスビーカー中にシンナーを注ぎ入れ、そこに後述する実施例および比較例の複合樹脂材料から得たJIS K7137-2-Aに従うダンベル試験片を入れ、7日間浸漬させた。7日間浸漬した試験片について、JIS K6911に従い体積抵抗率および重量変化率の測定を行った。
〔過酸化水素浸漬処理〕
ガラスビーカー中に過酸化水素水(30%)を注ぎ入れ、そこに後述する実施例および比較例の複合樹脂材料から得たJIS K7137-2-Aに従うダンベル試験片を入れ、7日間浸漬させた。7日間浸漬した試験片について、JIS K6911に従い体積抵抗率および重量変化率の測定を行った。
〔塩酸(HCl)浸漬処理〕
ガラスビーカー中に塩酸(38%)を注ぎ入れ、そこに後述する実施例および比較例の複合樹脂材料から得たJIS K7137-2-Aに従うダンベル試験片を入れ、7日間浸漬させた。7日間浸漬した試験片について、JIS K6911に従い体積抵抗率および重量変化率の測定を行った。
〔アンモニア浸漬処理〕
ガラスビーカー中にアンモニア(28%)を注ぎ入れ、そこに後述する実施例および比較例の複合樹脂材料から得たJIS K7137-2-Aに従うダンベル試験片を入れ、7日間浸漬させた。7日間浸漬した試験片について、JIS K6911に従い体積抵抗率および重量変化率の測定を行った。
〔SC−1浸漬処理〕
ガラスビーカー中でアンモニア(28%)と過酸化水素水と純水を1:1:5の重量比で混合してSC−1を調整した。そこに後述する実施例および比較例の複合樹脂材料から得たJIS K7137-2-Aに従うダンベル試験片を入れ、7日間浸漬させた。7日間浸漬した試験片について、JIS K6911に従い体積抵抗率および重量変化率の測定を行った。
〔SC−2浸漬処理〕
ガラスビーカー中で塩酸(38%)と過酸化水素水と純水を1:1:6の重量比で混合してSC−を調整した。そこに後述する実施例および比較例の複合樹脂材料から得たJIS K7137-2-Aに従うダンベル試験片を入れ、7日間浸漬させた。7日間浸漬した試験片について、JIS K6911に従い体積抵抗率および重量変化率の測定を行った。
〔樹脂粒子〕
以下の実施例および比較例において、次の表1に示すPCTFE粒子または変性ポリテトラフルオロエチレン(変性PTFE)粒子を使用した。なお、PCTFE粒子2および3は、PCTFE粒子1を、液体窒素を用いて−196℃で粉砕し、振動篩機等で分級することにより製造した。
Figure 0006585856
〔実施例1〕
水を溶媒としたカーボンナノチューブ分散液(分散剤=0.15質量%、カーボンナノチューブ=0.025質量%)500gにエタノールを3,500g加えて希釈した。さらに、PCTFE粒子2を1,000g添加して混合スラリーを作製した。
次いで、作製した混合スラリーを耐圧容器に供給し、耐圧容器内の混合スラリーに含まれる分散剤1mgに対して0.03g/分の供給速度で液化二酸化炭素を供給し、耐圧容器内の圧力を20MPa、温度を50℃となるまで昇圧・昇温させた。上記圧力および温度を3時間保持しながら二酸化炭素を、二酸化炭素中に溶け込んだ溶媒(水、エタノール)および分散剤と共に耐圧容器から排出させた。
次いで、耐圧容器内の圧力、温度を大気圧、常温まで下げることにより耐圧容器内の二酸化炭素を除去し、CNT複合樹脂材料を得た。
〔実施例2〕
CNTの量を得られる複合樹脂材料に基づいて0.05質量%としたこと以外は実施例1と同様にして実施例2の樹脂材料を得た。
〔実施例3〕
CNTの量を得られる複合樹脂材料に基づいて0.1質量%としたこと以外は実施例1と同様にして実施例3の樹脂材料を得た。
〔実施例4〕
CNTの量を得られる複合樹脂材料に基づいて0.125質量%としたこと以外は実施例1と同様にして実施例4の樹脂材料を得た。
〔実施例5〕
CNTの量を得られる複合樹脂材料に基づいて0.15質量%としたこと以外は実施例1と同様にして実施例5の樹脂材料を得た。
〔実施例6〕
PCTFE2に代えてPCTFE3を用いたこと以外は実施例3と同様にして実施例6の樹脂材料を得た。
〔比較例1〕
CNTを複合化させていないPCTFE1を比較例1とした。
〔比較例2〕
PCTFE2に代えてPCTFE1を用いたこと以外は実施例3と同様にして比較例2の樹脂材料を得た。
〔比較例3〕
CNTを複合化させていないPCTFE2を比較例3とした。
〔比較例4〕
PCTFE2に代えて変性PTFE粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較例4の樹脂材料を得た。
〔比較例5〕
CNTの量を得られる複合樹脂材料に基づいて0.05質量%としたこと以外は比較例4と同様にして比較例5の樹脂材料を得た。
〔比較例6〕
PFAとカーボンファイバーを層状に交互に重ね合わせ固めた成形体を比較例6の樹脂材料とした。
〔比較例7〕
PTFEに充填剤としてグラファイトを15質量%添加し比較例の樹脂原料を得た。
〔比較例8〕
PTFEに充填剤としてカーボンファイバーを15質量%添加し比較例8の樹脂原料を得た。
上記の実施例および比較例で得た樹脂材料の平均粒子径および比表面積を上記測定方法に従い測定した。結果を表2に示す。また、上記の実施例および比較例で得た樹脂材料を用いて上記の方法に従い作製した成形体について測定した体積抵抗率も表2に示す。
Figure 0006585856
上記の実施例および比較例で得た樹脂材料を用いて上記の方法に従い作製した成形体について、引張弾性率、引張強度、引張伸び(破断点)を測定した結果を表3に示す。
Figure 0006585856
上記の実施例3および比較例5〜8で得た樹脂材料を用いて上記の方法に従い作製した成形体について、IPA浸漬処理後、シンナー浸漬処理後、過酸化水素水浸漬処理後、SPM浸漬処理後、HCl浸漬処理後、SC−1浸漬処理後、SC−2浸漬処理後、およびアンモニア水浸漬処理後の体積抵抗率を測定した結果を表4に示す。
Figure 0006585856
上記の実施例3および比較例5〜8で得た樹脂材料を用いて上記の方法に従い作製した成形体について、IPA浸漬処理後、シンナー浸漬処理後、過酸化水素水浸漬処理後、SPM浸漬処理後、HCl浸漬処理後、SC−1浸漬処理後、SC−2浸漬処理後、およびアンモニア水浸漬処理後の重量変化率を測定した結果を表5に示す。
Figure 0006585856
上記の実施例1〜3および比較例3〜5で得た樹脂材料を用いて上記の方法に従い作製した成形体について、圧縮弾性率、圧縮強度、曲げ弾性率および曲げ強度を測定した結果を表6に示す。
Figure 0006585856
実施例3で得た樹脂材料を用いて圧縮成形(上記成形体の作製)により作製した成形体中のCNT画像を図1に示した。図1に示すCNTの平均長さは、100μmであった。
実施例3で得た樹脂材料を用いて溶融混練により作製した成形体中のCNT画像を図2に示した。より詳細には、該成形体は、溶融混練により作製した。図2に示すCNTの平均長さは、30μmであった。なお、平均長さは、走査型電子顕微鏡(SEM、FE−SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、スケールでの測定により算出できる。

Claims (7)

  1. ポリクロロトリフルオロエチレンおよびカーボンナノチューブを含み、500μm以下の平均粒子径を有し、BET法により測定して1.0〜6.0m/gの比表面積を有する、複合樹脂材料。
  2. 複合樹脂材料の総量に基づいて0.01〜2.0質量%のカーボンナノチューブを含む、請求項1に記載の複合樹脂材料。
  3. JIS K6911に従い測定して1.0×10Ω・cm以下の体積抵抗率を有する、請求項1または2に記載の複合樹脂材料。
  4. ポリクロロトリフルオロエチレンは0.8cm/sec以上のフロー値を有する、請求項1、2または4に記載の複合樹脂材料。
  5. 請求項1、2、4または5に記載の複合樹脂材料を用いて作製された成形体。
  6. カーボンナノチューブの平均長さは50μm以上である、請求項6に記載の成形体。
  7. 成形体は、板、棒、フィルム、シート、塊、管形状からなる群から選択される形状を有する、請求項6または7に記載の成形体。
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