JP6583592B1 - モータ制御装置及びこれを備えた電動パワーステアリング装置 - Google Patents

モータ制御装置及びこれを備えた電動パワーステアリング装置 Download PDF

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Abstract

操舵トルクに感応してモータ電気角の推定角度を進角させる補正を行う構成とすることで、簡易な構成で操舵方向に対して遅れる方向に作用する推定角度誤差を補正することが可能なモータ制御装置及び電動パワーステアリング装置を提供する。モータ制御装置(25)は、バックアップ電気角検出回路(24B)を備え、そのセンサ間誤差補正部(54)において、所定トルク値(Tht)以上の操舵トルク(Th)の入力に対して1以上となる進角ゲイン(Gad)を算出し、この進角ゲイン(Gad)を出力軸角速度(ωos)に乗算して操舵方向に対して遅れる方向の推定角度誤差を補正するための進角後舵角速度(ωosc)を算出する。そして、バックアップ電気角検出回路(24B)の推定角度演算部(55)において、進角後舵角速度(ωosc)を積算し、その積算値に基づきモータ回転角(θm)の推定値である第2のモータ回転角(θm2)を演算する。

Description

本発明は、電動パワーステアリング装置に搭載された電動モータを駆動制御するモータ制御装置に関する。
従来、電動パワーステアリング装置に搭載された電動モータのモータ電気角度を検出するモータ位置センサが故障した場合のバックアップ技術として、例えば、特許文献1〜2に開示された技術がある。
特許文献1の技術は、電動パワーステアリング装置においてコラム出力軸側に舵角センサを搭載し、操舵補助力を発生する電動モータの逆起電圧情報から算出した推定角度と、舵角センサの検出情報から算出した推定角度とを操舵速度で切り替えて使用するものである。
ここで、電動パワーステアリング装置は、通常、電動モータに減速ギヤを介してステアリングシャフトを接続する構成となっている。そのため、出力軸舵角情報とモータ電気角との間には、ギヤ等の機械コンプライアンス特性(バックラッシュ、非線形弾性特性、弾性変形等)や舵角センサの検出誤差特性等の誤差要因の特性が介在する。また、減速ギヤを介在する構成では、出力軸舵角情報を用いてモータ電気角度を推定する場合、舵角センサの誤差による影響がギヤ比倍されるためモータ角度演算誤差として大きく現れる。また、減速ギヤや舵角センサなどの誤差要因による誤差の影響は、操舵トルクが大きいほど手感として顕著に現れるものである。
即ち、上記特許文献1の従来技術では、上記誤差要因による角度誤差が現れる操舵状態及び環境状態となったときに、出力軸舵角から算出した推定角度には誤差が発生し、結果、脱調やトルク発生効率の低下によるアシスト不足等の挙動を発生させる可能性がある。
また、特許文献2に記載の技術は、機械コンプライアンス特性がモータ出力トルクと相関があることを利用して、モータ位置センサが正常であるとき、出力トルク関連情報と、出力軸舵角より導かれた推定電気角度と実際の電気角度との誤差特性との関係を学習する。そして、モータ位置センサが異常となった場合に、上記出力トルク関連情報より誤差特性を得て、この誤差特性で推定角度を補正して補正後の推定角度を推定電気角度として使用している。
特開2016−96608号公報 特許第6183424号公報
上記特許文献2の従来技術では、上記誤差要因による角度誤差の影響を解決することは可能であるが、誤差特性の学習には多くのメモリと複雑な学習手法を必要とする場合が多い。加えて、学習結果に対する妥当性の自己評価手法も考えると、実現手法の複雑化が懸念される。
ここで、機械コンプライアンス特性は上述したように、主にバックラッシュ、非線形弾性特性、弾性変形であり、これはヒステリシス+バネ特性として近似的に捉えることができる。このことから、入出力の特性で見ると入力に対し出力は遅れ特性として近似できることは物理的に明らかである。即ち、モータ角度を入力とし、操舵角度を出力とすると、機械コンプライアンス特性による影響は、常に遅れ側の誤差を発生させているものと考えることができる。
本発明は、上記の点に基づいてなされたものであり、操舵トルクに感応して推定角度を進角させる補正を行う構成とすることで、簡易な構成で操舵方向に対して遅れる方向に作用する推定角度誤差を補正することが可能なモータ制御装置及びこれを備えた電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係るモータ制御装置は、ステアリングの舵角を検出する舵角検出部で検出した前記舵角に基づき舵角速度を算出する舵角速度算出部と、前記舵角速度算出部で算出した前記舵角速度に基づきステアリングシャフトに操舵補助力を付与する電動モータのモータ電気角を推定するモータ電気角推定部と、前記電動モータのモータ電気角を検出するモータ電気角検出部の正常時は該モータ電気角検出部で検出した前記モータ電気角に基づき前記電動モータを駆動制御し、前記モータ電気角検出部の異常時は前記モータ電気角推定部で推定した推定モータ電気角に基づき前記電動モータを駆動制御するモータ駆動制御部と、前記ステアリングシャフトに伝達される操舵トルクを検出する操舵トルク検出部で検出した前記操舵トルクに基づき、前記推定モータ電気角の進角量を補正するための進角ゲインを設定する進角ゲイン設定部と、前記進角ゲイン設定部で設定した前記進角ゲインを前記舵角速度に乗算した乗算結果に基づき進角後舵角速度を算出する進角後舵角速度算出部と、を備える。そして、前記モータ電気角推定部は、前記進角後舵角速度算出部で算出した前記進角後舵角速度を積算して、その積算値に基づき前記モータ電気角を推定し、前記進角ゲイン設定部は、予め設定した所定トルク値以上の操舵トルクの入力時のみに、操舵方向に対して遅れる方向の角度誤差を打ち消す方向に前記推定モータ電気角を進角するための前記進角ゲインを設定する。
また、上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係るモータ制御装置は、前記角度誤差を発生する誤差要因の特性である誤差特性に基づき、前記進角後舵角速度の前記進角ゲインによる増加部分の積算量である進角補正量の限界値である進角補正限界値を算出する進角補正限界値算出部と、前記進角補正量が前記進角補正限界値算出部で算出した前記進角補正限界値を超えないように前記モータ電気角推定部の前記進角後舵角速度の積算処理を制御する進角補正量制御部とを備える。
また、上記目的を解決するために、本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置は、上記モータ制御装置を備える。
本発明によれば、舵角速度に基づきモータ電気角を推定する構成において、所定トルク値以上の操舵トルクの入力に対して、推定モータ電気角を操舵方向に対して遅れる方向の角度誤差を打ち消す方向に進角させるための進角後舵角速度を算出することが可能となる。例えば、所定トルク値を、角度誤差による影響が手感として現れるか否かの境界値に設定することで、手感として現れるタイミングでのみ補正を行うことが可能となる。これにより、従来と比較して簡単な構成で上記誤差要因による操舵方向に対して遅れる方向の角度誤差を低減することが可能となる。
また、誤差発生要因の誤差特性に基づき進角量を制限する構成としたので、過度な進角による角度誤差の発生を抑制し、良好な進角補正を行うことが可能となる。
また、上記効果を有するモータ制御装置を含んで電動パワーステアリング装置を構成するので、モータ電気角検出部に異常が発生した場合でも電動モータをモータ電気角推定値により駆動制御することができ電動パワーステアリング装置の操舵補助機能の継続が可能となる。
第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置を搭載した車両の一構成例を示す図である。 第1実施形態に係る操舵トルクセンサを示す概略構成図である。 第1実施形態に係るモータ制御装置の具体的構成を示す回路図である。 第1実施形態に係る制御演算装置の具体的構成を示すブロック図である。 第1実施形態に係るモータ電気角検出回路の具体的構成を示すブロック図である。 異常判定マップの一例を示す図である。 第1実施形態に係るバックアップ電気角検出回路の具体的構成を示すブロック図である。 (a)は、正方向回転時における各線間逆起電圧の波形例を示す図であり、(b)は、逆方向回転時における各線間逆起電圧の波形例を示す図である。 モータ回転方向と、各線間逆起電圧の符号と、中間角度と、絶対角度領域との関係を示す図である。 絶対角度領域判定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。 中間角度シフト演算処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。 補正電気角算出処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。 減速ギヤによる影響を説明するための模式図である。 減速ギヤの機械コンプライアンス特性の一例を示す図である。 第1実施形態に係る進角ゲインマップの一例を示す図である。 減速ギヤ誤差特性マップの一例を示す図である。 第1実施形態に係る進角補正限界値算出処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。 (A)及び(B)は、進角補正限界値の算出方法を説明するための図である。 第1実施形態に係る進角許可判定部の具体的構成を示すブロック図である。 進角補正量の算出方法を説明するための図である。 進角許可判定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。 進角許可判定部の具体的な動作を説明するための図であり、進角補正限界値と、進角補正量と、モータ出力トルクと、操舵方向との関係を示すタイムチャートである。 第2実施形態に係るバックアップ電気角検出回路の具体的構成を示すブロック図である。 出力軸回転角センサの検出誤差を説明するための図である。 出力軸角速度(舵角速度)とセンサ検出誤差との関係を示す図である。 第2実施形態に係る合成誤差特性算出処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。 第2実施形態に係る進角補正限界値算出処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。 第3実施形態に係る進角許可判定部の具体的構成を示すブロック図である。 第3実施形態に係る進角ゲインマップの一例を示す図である。
次に、図面に基づき、本発明の第1〜第3実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、寸法の関係や比率等は現実のものとは異なる場合があることに留意すべきである。
また、以下に示す第1〜第3実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
(第1実施形態)
(構成)
本発明の実施形態に係る車両2は、図1に示すように、左右の転舵輪となる前輪2FR及び2FLと後輪2RR及び2RLとを備えている。前輪2FR及び2FLは、電動パワーステアリング装置1によって転舵される。
電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール11を有し、このステアリングホイール11に運転者から作用される操舵力がステアリングシャフト12に伝達される。このステアリングシャフト12は、入力軸12aと出力軸12bとを有する。入力軸12aの一端はステアリングホイール11に連結され、他端は操舵トルクセンサ13を介して出力軸12bの一端に連結されている。
そして、出力軸12bに伝達された操舵力は、ユニバーサルジョイント14を介してロアシャフト15に伝達され、更に、ユニバーサルジョイント16を介してピニオンシャフト17に伝達される。このピニオンシャフト17に伝達された操舵力はステアリングギヤ18を介してタイロッド19に伝達され、転舵輪としての前輪2FR及び2FLを転舵させる。ここで、ステアリングギヤ18は、ピニオンシャフト17に連結されたピニオン18aとこのピニオン18aに噛合するラック18bとを有するラックアンドピニオン形式に構成されている。したがって、ステアリングギヤ18は、ピニオン18aに伝達された回転運動をラック18bで車幅方向の直進運動に変換している。
ステアリングシャフト12の出力軸12bには、操舵補助力を出力軸12bに伝達する操舵補助機構20が連結されている。この操舵補助機構20は、出力軸12bに連結した例えばウォームギヤ機構で構成される減速ギヤ21と、この減速ギヤ21に連結された操舵補助力を発生する電動モータ22とを備えている。
操舵トルクセンサ13は、ステアリングホイール11に付与されて入力軸12aに伝達された操舵トルクThを検出する。この操舵トルクセンサ13は、図2に示すように、入力軸12a及び出力軸12b間に介挿したトーションバー13aと、入力軸12a側に配置した入力軸回転角センサ13bと、出力軸12b側に配置した出力軸回転角センサ13cとを備えている。
入力軸回転角センサ13bは、入力軸12aの回転角度である入力軸回転角θisを検出する。
出力軸回転角センサ13cは、出力軸12bの回転角度である出力軸回転角θosを検出する。
そして、操舵トルクセンサ13は、操舵トルクThを、トーションバー13aの捩れ角変位、即ち入力軸回転角センサ13bと出力軸回転角センサ13cとの角度差とトーションバー13aの剛性値とから演算して検出するように構成されている。
また、電動モータ22は、本実施形態において3相ブラシレスモータであり、図示しない環状のモータロータと環状のモータステータとを備えている。モータステータは、径方向内側に突出する複数の極歯を円周方向に等間隔に備えて構成され、各極歯には励磁用コイル(図3に示すA相モータ巻線La、B相モータ巻線Lb及びC相モータ巻線Lc)が巻き回されている。そして、モータステータの内側に、モータロータが同軸に配設されている。モータロータは、モータステータの極歯と僅かの空隙(エアギャップ)をもって対向し且つ外周面に円周方向に等間隔に設けられた複数の磁石を備えて構成されている。以下、A相モータ巻線La、B相モータ巻線Lb及びC相モータ巻線Lcを「3相モータ巻線La〜Lc」と略記する場合がある。
モータロータはモータ回転軸に固定されており、モータステータの3相モータ巻線La〜Lcにモータ制御装置25を介して3相交流電流を流すことでモータステータの各歯が所定の順序に励磁されてモータロータが回転し、この回転に伴ってモータ回転軸が回転する。
更に、電動モータ22は、図1及び図3に示すように、ロータの回転位置を検出するレゾルバから構成された回転位置センサ23を備えている。この回転位置センサ23からの検出値がモータ電気角検出回路24に供給されてこのモータ電気角検出回路24でモータ電気角θmを検出する。以下、回転位置センサ23を、「レゾルバ23」と記載する場合がある。なお、回転位置センサ23は、レゾルバに限らず、例えば、ロータリーエンコーダ等の他のセンサから構成してもよい。
モータ制御装置25には、直流電流源としてのバッテリー27から直流電流が入力されている。ここで、バッテリー27の負極は接地され、その正極はエンジン始動を行うイグニッションスイッチ28(以下、「IGNスイッチ28」と記載する場合がある)を介してモータ制御装置25に接続されると共に、IGNスイッチ28を介さず直接、モータ制御装置25に接続されている。
(モータ制御装置25の構成)
次に、モータ制御装置25の具体的構成を説明する。
モータ制御装置25は、図3に示すように、モータ電気角θmを検出するモータ電気角検出回路24と、モータ電圧指令値を演算する制御演算装置31と、この制御演算装置31から出力される、後述する3相のモータ電圧指令値Va、Vb及びVcが入力されるモータ駆動回路32とを備えている。以下、区別する必要が無い場合に、モータ電圧指令値Va、Vb及びVcを、「モータ電圧指令値V」と略記する場合がある。
更に、モータ制御装置25は、モータ駆動回路32の出力側と電動モータ22の3相モータ巻線La〜Lcとの間に介挿されたモータ相電流遮断回路33と、モータ駆動回路32とモータ相電流遮断回路33との間に設けられた電圧検出回路40と、バッテリー27とモータ駆動回路32との間に設けられたノイズフィルタ43とを備えている。
モータ駆動回路32は、制御演算装置31から出力される3相のモータ電圧指令値Vが入力されてゲート駆動信号を形成するゲート駆動回路41と、このゲート駆動回路41から出力されるゲート駆動信号が入力されるインバータ回路42とを備えている。
モータ駆動回路32は、更に、ノイズフィルタ43とインバータ回路42との間に介挿された電源遮断回路44を備えている。加えて、インバータ回路42の下側アームと接地との間に介挿され、下側アームから接地に流れる直流電流を検出する電流検出回路45A、45B及び45Cを備えている。
以下、電流検出回路45A、45B及び45Cを「電流検出回路45A〜45C」と略記する場合がある。
具体的に、電流検出回路45Aは、A相モータ巻線Laから出力されるA相モータ電流Iaを検出し、電流検出回路45Bは、B相モータ巻線Lbから出力されるB相モータ電流Ibを検出し、電流検出回路45Cは、C相モータ巻線Lcから出力されるC相モータ電流Icを検出する。
以下、A、B及びC相モータ電流Ia、Ib及びIcを「モータ相電流Ia〜Ic」と略記する場合がある。
電圧検出回路40は、それぞれインバータ回路42の各上側アームと各下側アームとの接続点と、電動モータ22の3相モータ巻線La〜Lcとの接続ラインの各電圧を検出する。
具体的に、電圧検出回路40は、A相モータ巻線Laとの接続ラインの電圧であるモータ相電圧Vaと、B相モータ巻線Lbとの接続ラインの電圧であるモータ相電圧Vbと、C相モータ巻線Lcとの接続ラインの電圧であるモータ相電圧Vcとを検出する。
以下、モータ相電圧Va、Vb及びVcを「モータ相電圧Va〜Vc」と略記する場合がある。
ゲート駆動回路41は、制御演算装置31からモータ電圧指令値Vが入力されると、このモータ電圧指令値Vと三角波のキャリア信号Scとをもとにパルス幅変調(PWM)した6つのゲート駆動信号を形成する。そして、これらゲート駆動信号をインバータ回路42に出力する。
インバータ回路42には、ノイズフィルタ43及び電源遮断回路44を介してバッテリー27のバッテリー電力が入力されている。加えて、入力側の電源遮断回路44との接続ラインと接地との間に平滑用の電解コンデンサである平滑用コンデンサCAが介挿されている。この平滑用コンデンサCAは、インバータ回路42に対するノイズ除去機能及び電源供給補助機能を備えている。
このインバータ回路42は、スイッチング素子としての6個の電界効果トランジスタQ1〜Q6を有し、2つの電界効果トランジスタを直列に接続した3つのスイッチングアームSWAa、SWAb及びSWAcを並列に接続した構成を有する。そして、各電界効果トランジスタQ1〜Q6のゲートにゲート駆動回路41から出力されるゲート駆動信号が入力されることにより、各スイッチングアームSWAa、SWAb及びSWAcの電界効果トランジスタ間の接続点からA相モータ電流Ia、B相モータ電流Ib、C相モータ電流Icがモータ相電流遮断回路33を介して電動モータ22の3相モータ巻線La、Lb及びLcに通電される。
なお、インバータ回路42の電界効果トランジスタのゲートにゲート駆動信号としてパルス幅変調(PWM)信号が入力されることから、インバータ回路42から出力されるA相電流Ia、B相電流Ib及びC相電流Icはデューティー比が制御される矩形波信号となる。
電源遮断回路44は、2つの電界効果トランジスタQC1及びQC2がソース同士を接続して寄生ダイオードが逆向きとなる直列回路構成を有する。そして、電界効果トランジスタQC1のドレインがノイズフィルタ43の出力側に接続され、電界効果トランジスタQC2のドレインがインバータ回路42の各電界効果トランジスタQ1、Q3及びQ5のドレインに接続されている。
モータ相電流遮断回路33は、3つの電流遮断用の電界効果トランジスタQA1、QA2及びQA3を有する。電界効果トランジスタQA1のソースが電圧検出回路40を介してインバータ回路42のスイッチングアームSWAaの電界効果トランジスタQ1及びQ2の接続点に接続され、ドレインがA相モータ巻線Laに接続されている。また、電界効果トランジスタQA2のソースが電圧検出回路40を介してインバータ回路42のスイッチングアームSWAbの電界効果トランジスタQ3及びQ4の接続点に接続され、ドレインがB相モータ巻線Lbに接続されている。更に、電界効果トランジスタQA3のソースが電圧検出回路40を介してインバータ回路42のスイッチングアームSWAcの電界効果トランジスタQ5及びQ6の接続点に接続され、ドレインがC相モータ巻線Lcに接続されている。
そして、モータ相電流遮断回路33の電界効果トランジスタQA1〜QA3は寄生ダイオードDのアノードをインバータ回路42側として各々が同一の向きに接続されている。
(制御演算装置31の構成)
次に、制御演算装置31の具体的構成を説明する。
ここで、制御演算装置31には、図3に示すように、電圧検出回路40で検出したモータ相電圧Va〜Vcと、電流検出回路45A〜45Cから出力されるモータ相電流Ia、Ib及びIcとがA/D変換部31cを介して入力されている。更に、制御演算装置31には、モータ電気角検出回路24から出力されるモータ電気角θmが入力されている。
なお更に、制御演算装置31には、図4に示すように、操舵トルクセンサ13で検出された操舵トルクTh及び車速センサ26で検出された車速Vsが入力されている。
また、制御演算装置31は、図示省略するが、CPUと、所定領域に予めCPUで実行される制御プログラムや制御プログラムの実行時に使用するデータ等を格納しているROMと、ROMから読み出したデータやCPUの演算過程で必要な演算結果を格納するためのワークメモリとしてのRAMとを有している。
更に、制御演算装置31は、図4に示すように、操舵補助電流指令値Iを算出する操舵補助電流指令値演算部34と、電動モータ22の速度情報を演算するモータ速度情報演算部35とを備えている。加えて、モータ速度情報演算部35で演算したモータ速度情報に基づいて、操舵補助電流指令値演算部34で算出した操舵補助電流指令値Iに対して補償値を生成する補償値生成部36と、加算部37とを備えている。更に、補償値生成部36で補償された補償後操舵補助電流指令値I’に基づいてd−q軸電流指令値を算出し、これを3相電流指令値に変換するd−q軸電流指令値演算部38を備えている。なお更に、モータ駆動回路32に対するモータ電圧指令値Vを算出する電圧指令値演算部39を備えている。
操舵補助電流指令値演算部34は、入力された操舵トルクTh及び車速Vsをもとに操舵補助電流指令値算出マップ(図示略)を参照して電流指令値でなる操舵補助電流指令値Iを算出する。この操舵補助電流指令値算出マップは、横軸に操舵トルクThをとり、縦軸に操舵補助電流指令値Iをとる放物線状の曲線で表される特性線図で構成されている。
操舵補助電流指令値演算部34は、演算した操舵補助電流指令値Iを、加算部37及び補償値生成部36にそれぞれ出力する。
モータ速度情報演算部35は、モータ角速度演算部35aと、モータ角加速度演算部35bとを備えている。
モータ角速度演算部35aは、入力されたモータ電気角θmを微分してモータ角速度ωmを演算する。そして、演算したモータ角速度ωmをモータ角加速度演算部35b、補償値生成部36等の予め設定された各出力先へと出力する。
モータ角加速度演算部35bは、入力されたモータ角速度ωmを微分してモータ角加速度αmを演算する。そして、演算したモータ角加速度αmを補償値生成部36等の予め設定された各出力先へと出力する。
補償値生成部36は、収斂性補償部36aと、慣性補償部36bと、SAT推定フィードバック部36cと、加算部36d及び36eとを備えている。
収斂性補償部36aは、モータ角速度演算部35aから入力されたモータ角速度ωmに基づき、車両のヨーの収斂性を改善するためにステアリングホイール11が振れ回る動作に対して、ブレーキをかけるように、収斂性補償値Icoを算出する。収斂性補償部36aは、算出した収斂性補償値Icoを加算部36eに出力する。
慣性補償部36bは、モータ角加速度演算部35bから入力されたモータ角加速度αmに基づき、電動モータ22の慣性により発生するトルク相当分を補償して慣性感又は制御応答性の悪化を防止するための慣性補償値Iiを算出する。慣性補償部36bは、算出した慣性補償値Iiを加算部36dに出力する。
SAT推定フィードバック部36cは、入力された操舵トルクTh、モータ角速度ωm、モータ角加速度αm及び操舵補助電流指令値Iに基づいてセルフアライニングトルクSATを推定演算する。SAT推定フィードバック部36cは、演算したセルフアライニングトルクSATを加算部36dに出力する。
加算部36dは、入力された慣性補償値IiとセルフアライニングトルクSATとを加算して、加算結果を加算部36eに出力する。
加算部36eは、加算部36dの加算結果と収斂性補償部36aで算出した収斂性補償値Icoとを加算し、その結果を指令補償値Icomとして加算部37に出力する。
加算部37は、操舵補助電流指令値演算部34から入力された操舵補助電流指令値Iに、補償値生成部36から入力された指令補償値Icomを加算し、補償後の操舵補助電流指令値I’をd−q軸電流指令値演算部38に出力する。
d−q軸電流指令値演算部38は、d軸指令電流算出部38aと、誘起電圧モデル算出部38bと、q軸指令電流算出部38cと、2相/3相変換部38dとを備えている。
d軸指令電流算出部38aは、補償後操舵補助電流指令値I’とモータ角速度ωmとに基づいてd軸電流指令値Idを算出する。
誘起電圧モデル算出部38bは、モータ回転角θm及びモータ角速度ωmに基づいてd−q軸誘起電圧モデルEMF(electromotive force)のd軸EMF成分Ed(θ)及びq軸EMF成分Eq(θ)を算出する。
q軸指令電流算出部38cは、誘起電圧モデル算出部38bから出力されるd軸EMF成分Ed(θ)及びq軸EMF成分Eq(θ)とd軸指令電流算出部38aから出力されるd軸電流指令値Idと補償後操舵補助電流指令値I’とモータ角速度ωmとに基づいてq軸電流指令値Iqを算出する。
2相/3相変換部38dは、d軸指令電流算出部38aから出力されるd軸電流指令値Idとq軸指令電流算出部38cから出力されるq軸電流指令値IqとをA相電流指令値Ia、B相電流指令値Ib及びC相電流指令値Icに変換する。そして、これら3相の電流指令値Ia、Ib及びIcを電圧指令値演算部39に出力する。
電圧指令値演算部39は、入力されたA相電流指令値Ia、B相電流指令値Ib及びC相電流指令値Icと、電流検出回路45A〜45Cで検出したモータ相電流Ia〜Icとに基づいてモータ電圧指令値Vを算出する。
具体的に、電圧指令値演算部39は、2相/3相変換部38dから入力されたA相電流指令値Ia、B相電流指令値Ib及びC相電流指令値Icから、電流検出回路45A〜45Cから入力されたA相モータ電流Ia、B相モータ電流Ib及びC相モータ電流Icの各検出値を減算して電流偏差ΔIa、ΔIb及びΔIcを算出する。更に、これら電流偏差ΔIa、ΔIb及びΔIcについて例えばPI制御演算又はPID制御演算を行ってモータ駆動回路32に対する3相のモータ電圧指令値Vを算出する。そして、算出した3相のモータ電圧指令値Vを、ゲート駆動回路41に出力する。
(モータ電気角検出回路24)
次に、第1実施形態に係るモータ電気角検出回路24の具体的な構成を説明する。
モータ電気角検出回路24は、図5に示すように、レゾルバ23からの信号に基づき第1のモータ電気角θm1を演算するメイン電気角検出回路24Aと、出力軸回転角センサ13cからの信号に基づき第2のモータ電気角θm2を演算するバックアップ電気角検出回路24Bとを備えている。加えて、レゾルバ23の異常判定結果に基づき、第1のモータ電気角θm1及び第2のモータ電気角θm2のうちから出力するモータ電気角を選択する電気角選択部24Cを備えている。
また、モータ電気角検出回路24は、図示省略するが、CPUと、所定領域に予めCPUで実行される制御プログラムや制御プログラムの実行時に使用するデータ等を格納しているROMと、ROMから読み出したデータやCPUの演算過程で必要な演算結果を格納するためのワークメモリとしてのRAMとを有している。
メイン電気角検出回路24Aは、角度演算部51と、レゾルバ異常診断部52とを備えている。
角度演算部51は、レゾルバ23から出力される電動モータ22の回転角に応じた正弦波信号sinθ及び余弦波信号cosθに基づいて第1のモータ電気角θm1を演算する。そして、演算した第1のモータ電気角θm1を電気角選択部24Cに出力する。
レゾルバ異常診断部52は、レゾルバ23の異常を判定し、判定結果を示す異常検出信号SArを電気角選択部24Cに出力する。具体的に、レゾルバ23から入力されたsinθ及びcosθに基づいて異常判定用マップを参照してsinθ及びcosθの組み合わせが正常であるか異常であるかを判定する。
ここで、異常判定用マップは、図6に示すように、横軸にsinθを、縦軸にcosθをそれぞれとった構成を有し、原点G(0,0)を中心に3つの同心円及び2つの四角形が描かれるように構成されている。まず、3つの同心円について説明すると、一番内側は(sinθ)2+(cosθ)2=Pmin、真ん中は(sinθ)2+(cosθ)2=1、一番外側は(sinθ)2+(cosθ)2=Pmaxの円が描かれている。大きな四角形αは一辺が2・Pmaxの正方形であり、小さな四角形βは一辺が2・(Pmin/√2)の四角形である。ここで、正常領域とは大きな四角形αと小さな四角形βに囲まれた斜線部の範囲を示し、それ以外の領域は異常範囲を示す。なお、上述した判定基準のPmin及びPmaxは検出の精度やモータの極数などの影響を考慮して設定され、PmaxとPminとにより異常検出精度を調整できる。このPmax及びPminを適切に設定することにより、モータ駆動中の故障やレゾルバ23の異常を検出することができる。そして、(sinθ)2+(cosθ)2=1は通常の正常の判定基準であり、(sinθ)2+(cosθ)2=Pmin及び(sinθ)2+(cosθ)2=PmaxはPmin<(sinθ)2+(cosθ)2<Pmaxの正常範囲を示すためのものであり、通常の正常の判定基準より広いことになる。
レゾルバ異常診断部52は、レゾルバ23が異常であると判定した場合に、論理値「1」の異常検出信号SArを電気角選択部24Cに出力し、レゾルバ23が正常であると判定した場合に、論理値「0」の異常検出信号SArを電気角選択部24Cに出力する。
図5に戻って、バックアップ電気角検出回路24Bは、電動モータ22の線間逆起電圧に基づいてモータ電気角θmの推定角度である第2のモータ電気角θm2を補正するための補正角度θeを算出する逆起電圧角度補正値算出部53を備えている。加えて、減速ギヤ21の機械コンプライアンス特性に基づき出力軸回転角θosの角速度である出力軸角速度ωosを補正するセンサ間誤差補正部54を備えている。更に、出力軸角速度ωos及び補正後の出力軸角速度ωosc(以下、「進角後舵角速度ωosc」と称す)の積算によって第2のモータ電気角θm2を演算する推定角度演算部55を備えている。
ここで、逆起電圧角度補正値算出部53で算出される補正角度θeは、モータ側の情報から算出されるため出力軸角速度ωos及び進角後舵角速度ωoscの積算によって算出される推定電気角度よりも正確で信頼性が高いものである。そのため、第1実施形態の推定角度演算部55は、補正許可のタイミングで補正角度θeが入力されると、現在の積算値を強制的に補正角度θeに変更する補正を行うように構成されている。
電気角選択部24Cは、メイン電気角検出回路24Aのレゾルバ異常診断部52から出力される異常検出信号SArが異常なしを表す論理値「0」であるときに、メイン電気角検出回路24Aから出力される第1のモータ電気角θm1を選択する。そして、選択した第1のモータ電気角θm1を、モータ電気角θmとして前述した制御演算装置31に出力する。一方、異常検出信号SArが異常ありを表す論理値「1」であるときに、バックアップ電気角検出回路24Bから出力される第2のモータ電気角θm2を選択する。そして、選択した第2のモータ電気角θm2を、モータ電気角θmとして制御演算装置31に出力する。
(逆起電圧角度補正値算出部53)
次に、逆起電圧角度補正値算出部53の具体的な構成について説明する。
逆起電圧角度補正値算出部53は、図7に示すように、出力軸角速度演算部53aと、逆起電圧演算部53bと、絶対角度領域判定部53cと、補正角度算出部53dとを備えている。
出力軸角速度演算部53aは、出力軸回転角センサ13cからの出力軸回転角θosを微分して、出力軸角速度ωosを演算する。そして、演算した出力軸角速度ωosを、絶対角度領域判定部53cと、補正角度算出部53dと、センサ間誤差補正部54とにそれぞれ出力する。
逆起電圧演算部53bは、まず、電圧検出回路40から入力されたモータ相電圧Va〜Vcに基づいて下記(1)式〜(3)式の演算を行って線間電圧Vab、Vbc、Vcaを算出する。
Vab=Va−Vb ……(1)
Vbc=Vb−Vc ……(2)
Vca=Vc−Va ……(3)
次に、算出した線間電圧Vab、Vbc、Vcaと、電流検出回路45A〜45Cから入力されたモータ相電流Ia〜Icとに基づいて下記(4)式〜(6)式の演算を行ってA−B間逆起電圧EMFab、B−C間逆起電圧EMFbc、C−A間逆起電圧EMFcaを算出する。以下、A−B間逆起電圧EMFab、B−C間逆起電圧EMFbc、C−A間逆起電圧EMFcaを総じて「各線間逆起電圧値EMF」と記載する場合がある。
EMFab=Vab−{(Ra+s・La)・Ia−(Rb+s・Lb)・Ib}…(4)
EMFbc=Vbc−{(Rb+s・Lb)・Ib−(Rc+s・Lc)・Ic}…(5)
EMFca=Vca−{(Rc+s・Lc)・Ic−(Ra+s・La)・Ia}…(6)
ここで、Ra、Rb、Rcはモータ各相の巻線抵抗、La、Lb、Lcはモータ各相のインダクタンス、sはラプラス演算子で、ここでは微分演算(d/dt)を表している。
逆起電圧演算部53bは、算出した各線間逆起電圧値EMFを絶対角度領域判定部53cに出力する。
絶対角度領域判定部53cは、入力された出力軸角速度ωosと各線間逆起電圧値EMFとに基づき、電動モータ22の360[deg]の電気角度の領域を60[deg]毎に区分した角度領域のうちから、実際のモータ電気角θmの位置する領域(以下、「絶対角度領域Z」と称す)を推定する。
以下、実際のモータ電気角θmの位置する絶対角度領域を推定する原理について説明する。
電動モータ22の各線間逆起電圧値EMFとモータ電気角θmとの関係は、図8(a)及び(b)並びに図9に示すように、電動モータ22の正方向回転時と逆方向回転時とでは、各線間逆起電圧値EMFの符号関係が異なっている。例えば、実際のモータ電気角θmが0〜60[deg_el]の絶対角度領域Z内に位置しており、その回転方向が逆転(正方向回転から逆方向回転)したと想定すると、電動モータ22の各線間逆起電圧値EMFの正負の符号関係は、図9に示すように、同図中の上から順番に表記すると「+,−,+」から「−,+,−」に変わることになる。従って、電動モータ22の回転方向が判明したとすると各線間逆起電圧値EMFの符号関係からモータ電気角θmの位置する角度領域(絶対角度領域Z)を推定することができる。
そして、60[deg]毎に区分した各絶対角度領域において、絶対角度領域が隣り合う領域へと移行する際、推定対象であるモータ電気角θmはその領域境界角度上に存在している。このことに基づき、第1実施形態では、絶対角度領域が隣り合う領域へ移行したときに、移行前の絶対角度領域と移行後の絶対角度領域との境界角度に基づき補正角度θeを算出する。
しかし、各線間逆起電圧値EMFの演算値にノイズが混入した場合、絶対角度領域の切り替わり境界線付近で各線間逆起電圧値EMFの符号関係が切り替わり易くなるため、隣り合う領域への領域判定時にハンチングをおこし易くなるといった懸念がある。
そこで、第1実施形態においては、図9に示すように、絶対角度領域の中間角度θcを算出すると共に、中間角度θcが変化したときに、その変化量と移行方向とに基づいて、中間角度θcをシフトした新たなシフト後中間角度θc_shtを算出する。このシフト後中間角度θc_shtは、ハンチング時には移動しない構成となっている。即ち、絶対角度領域Zの移行だけでなくシフト後中間角度θc_shtの変化の有無も判定することで、補正角度θeをより正確に算出するようにしている。
即ち、第1実施形態の絶対角度領域判定部53cは、実際のモータ電気角θmの位置する絶対角度領域Zを推定すると共に、シフト後中間角度θc_shtを算出し、推定した絶対角度領域Z及び算出したシフト後中間角度θc_shtを補正角度算出部53dに出力する。
補正角度算出部53dは、入力された絶対角度領域Zに基づき、今回の絶対角度領域Zは、前回の絶対角度領域Z(n−1)に対して隣り合う領域へと移行したか否かを判定する。加えて、移行したと判定した場合に、入力されたシフト後中間角度θc_shtに基づき、今回のシフト後中間角度θc_shtは、前回のシフト後中間角度θc_sht(n−1)に対して変化しているか否かを判定する。更に、第1実施形態では、変化していると判定した場合に、この変化した方向を示す符号と入力された出力軸角速度ωosの符号とに基づき、変化した方向(符号)と入力された出力軸角速度ωosの方向(符号)とが同じであるか否かを判定する。そして、同じであると判定した場合に、前回の絶対角度領域Z(n−1)と今回の絶対角度領域Zとの境界角度を補正角度θeに設定する。
補正角度算出部53dは、更に、補正角度θeによる補正を行うタイミングと、補正角度θeによる補正を行わないタイミングとを示す補正タイミング情報を設定する。
具体的に、補正を実行時は、補正許可を示す補正タイミング情報をセンサ間誤差補正部54と、推定角度演算部55とにそれぞれ出力すると共に、補正角度θeを推定角度演算部55に出力する。一方、補正不実行時は、補正不許可を示す補正タイミング情報をセンサ間誤差補正部54と、推定角度演算部55とにそれぞれ出力する。
(絶対角度領域判定処理)
次に、図10に基づき、上記絶対角度領域判定部53cで実行される絶対角度領域判定処理について詳しく説明する。ここで、絶対角度領域判定処理は、モータ電気角検出回路24のCPU(不図示)にて実行される第2のモータ電気角θm2を算出するメインプログラムにて呼び出されて実行されるサブプログラムである。
モータ電気角検出回路24のCPUにて絶対角度領域判定処理が実行されると、図10に示すように、まず、ステップS101に移行する。
ステップS101では、絶対角度領域判定部53cにおいて、逆起電圧演算部53bにて演算された各線間逆起電圧値EMF及び出力軸角速度演算部53aで演算された出力軸角速度ωosを読み込み、ステップS103に移行する。
ステップS103では、絶対角度領域判定部53cにおいて、読み込んだ各線間逆起電圧値EMFの絶対値の最大値と所定の閾値Thvとを比較する。この所定の閾値Thvは、電動モータ22が低回転である場合に、各線間逆起電圧値EMFの絶対値が小さく、その符号関係の取得値の信頼性が低いと考えられる値を判定不感帯とするために予め設定される。そして、各線間逆起電圧値EMFの絶対値の最大値が、この所定の閾値Thv以上であると判定した場合(Yes)は、ステップS105に移行する。一方、各線間逆起電圧値EMFの絶対値の最大値が、上記所定の閾値Thv未満であると判定した場合(No)は、ステップS115に移行する。
ステップS105に移行した場合は、絶対角度領域判定部53cにおいて、判定不感帯の状態値である不感帯状態値「F=0」を設定して、ステップS107に移行する。
ステップS107では、絶対角度領域判定部53cにおいて、読み込んだ各線間逆起電圧値EMFからそれらの符号情報を取得してステップS109に移行する。
ステップS109では、絶対角度領域判定部53cにおいて、読み込んだ出力軸角速度ωosの符号情報を取得して、ステップS111に移行する。
ステップS111では、絶対角度領域判定部53cにおいて、ステップS107で取得した各線間逆起電圧値EMFの符号情報と、ステップS109で取得した出力軸角速度ωosの符号情報とに基づき、図9に示すテーブルを参照して絶対角度領域Z及び中間角度θcを判定する。その後、ステップS113に移行する。
ステップS113では、絶対角度領域判定部53cにおいて、ステップS111で判定した中間角度θcに基づき、中間角度シフト演算処理を実行して、シフト後中間角度θc_shtを算出する。そして、算出したシフト後中間角度θc_shtと、ステップS105で設定した不感帯状態値「F=0」と、ステップS111で判定した絶対角度領域Zとを補正角度算出部53dに出力して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。
一方、ステップS103において閾値未満と判定されてステップS115に移行した場合は、絶対角度領域判定部53cにおいて、不感帯状態値「F=1」を設定する。そして、設定した不感帯状態値「F=1」を補正角度算出部53dに出力して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。
即ち、各線間逆起電圧値EMFが小さく、その符号関係の取得値の信頼性が低いと考えられる場合は、以降の処理を実行せずに不感帯状態値「F=1」を出力して元の処理に復帰する。
(中間角度シフト演算処理)
次に、図11に基づき、上記ステップS113で実行される中間角度シフト演算処理について詳しく説明する。
上記ステップS113において中間角度シフト演算処理が実行されると、図11に示すように、まず、ステップS201に移行する。
ステップS201では、絶対角度領域判定部53cにおいて、上記ステップS111で判定された今回の中間角度θcと前回の中間角度θc(n−1)との差分値Sht(Sht=θc(n−1)−θc)を演算して、ステップS203に移行する。
ステップS203では、絶対角度領域判定部53cにおいて、差分値Shtが「0」か否かを判定することで今回の中間角度θcと前回の中間角度θc(n−1)とが一致しているか否かを判定する。そして、差分値Shtが「0」であり一致していると判定した場合(Yes)は、ステップS205に移行し、差分値Shtが「0」ではなく一致していないと判定した場合(No)は、ステップS207に移行する。
ステップS205に移行した場合は、絶対角度領域判定部53cにおいて、中間角度θcの移行がないとして、シフト後中間角度θc_shtとして、前回のシフト後中間角度θc_sht(n−1)を設定して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。
一方、ステップS207に移行した場合は、絶対角度領域判定部53cにおいて、中間角度θcの移行があるとして、差分値Shtが60[deg]又は−300[deg]であるか否かを判定する。そして、60[deg]又は−300[deg]であると判定した場合(Yes)は、ステップS209に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS211に移行する。
ステップS209に移行した場合は、絶対角度領域判定部53cにおいて、中間角度θcから30[deg]を減算した値をシフト後中間角度θc_shtとして設定し、一連の処理を終了して元の処理に復帰する。
一方、ステップS211に移行した場合は、絶対角度領域判定部53cにおいて、差分値Shtが−60[deg]又は300[deg]であるか否かを判定する。そして、−60[deg]又は300[deg]であると判定した場合(Yes)は、ステップS213に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS215に移行する。
ステップS213に移行した場合は、絶対角度領域判定部53cにおいて、中間角度θcに30[deg]を加算した値をシフト後中間角度θc_shtとして設定し、一連の処理を終了して元の処理に復帰する。
一方、ステップS215に移行した場合は、絶対角度領域判定部53cにおいて、今回の中間角度θcをシフト後中間角度θc_shtとして設定し、一連の処理を終了して元の処理に復帰する。
(補正電気角算出処理)
次に、図12に基づき、上記補正角度算出部53dで実行される補正電気角算出処理の具体的な処理内容について詳しく説明する。補正電気角算出処理は、上記メインプログラムにおいて上記絶対角度領域判定処理の次に続けて実行されるサブプログラムの処理となる。
モータ電気角検出回路24のCPUにて補正電気角算出処理が実行されると、図12に示すように、まず、ステップS301に移行する。
ステップS301では、補正角度算出部53dにおいて、入力された不感帯状態値Fが「F=0」か否かを判定する。「F=0」であると判定した場合(Yes)は、ステップS303に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS315に移行する。
ステップS303に移行した場合は、補正角度算出部53dにおいて、入力された今回の絶対角度領域ZとRAM等のメモリに保持した前回の絶対角度領域Z(n−1)とに基づき、絶対角度領域Zが隣り合う領域へと移行したか否かを判定する。そして、移行したと判定した場合(Yes)は、ステップS305に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS315に移行する。
ステップS305に移行した場合は、補正角度算出部53dにおいて、入力された今回のシフト後中間角度θc_shtとRAM等のメモリに保持した前回のシフト後中間角度θc_sht(n−1)とに基づき、シフト後中間角度が変化したか否かを判定する。そして、変化したと判定した場合(Yes)は、ステップS307に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS315に移行する。
ステップS307に移行した場合は、補正角度算出部53dにおいて、絶対角度領域の移行方向に対応する符号情報と、入力された出力軸角速度ωosの符号情報とを取得する。ここで、符号情報は、モータ回転方向を基準に正方向回転の回転方向であれば「+」となり、逆方向回転の回転方向であれば「−」となる。更に、取得した符号情報に基づき、両者の符号が一致したか否かを判定することで絶対角度領域の移行方向と出力軸回転方向とは同方向か否かを判定する。そして、符号が一致しており同方向であると判定した場合(Yes)は、ステップS309に移行し、符号が不一致であり同方向ではないと判定した場合(No)は、ステップS315に移行する。
ステップS309に移行した場合は、補正角度算出部53dにおいて、補正タイミングフラグCTFを補正を許可する「1」に設定して、ステップS311に移行する。
ステップS311では、補正角度算出部53dにおいて、補正角度θeとして、前回の絶対角度領域Z(n−1)と今回の絶対角度領域Zとの境界角度を設定する。その後、ステップS313に移行する。
ステップS313では、補正角度算出部53dにおいて、補正角度θeを推定角度演算部55に出力すると共に、値が「1」の補正タイミングフラグCTFをセンサ間誤差補正部54及び推定角度演算部55にそれぞれ出力する。その後、一連の処理を終了して元の処理に復帰する。
一方、ステップS301、S303、S305、S307において「No」と判定されてステップS315に移行した場合は、補正角度算出部53dにおいて、補正タイミングフラグCTFを補正を不許可とする「0」に設定して、ステップS317に移行する。
ステップS317では、補正角度算出部53dにおいて、値が「0」の補正タイミングフラグCTFをセンサ間誤差補正部54及び推定角度演算部55にそれぞれ出力する。その後、一連の処理を終了して元の処理に復帰する。
(センサ間誤差補正部54)
次に、センサ間誤差補正部54の具体的な構成について説明する。
ここで、第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置1は、図13に示すように、出力軸回転角センサ13cと電動モータ22との間に減速ギヤ21が介在する。この減速ギヤ21には通常、バックラッシュ、弾性変形等の機械コンプライアンス特性が存在する。
この機械コンプライアンス特性は、例えば、図14に示すように、モータ出力トルクTmに感応してねじれ角度(モータ機械角度)が変化する。また、中央部分はヒステリシス特性となっており、これは主に減速ギヤ21のバックラッシュ等に起因する特性となる。このねじれ特性は環境条件、製造条件によっても変化し、図14中の実線で示す中央値に対して点線で示す最小値と破線で示す最大値とで大きなバラツキ幅を持つ。本特性を例にとると最大30[deg]程の角度推定誤差が発生することが見込まれる。この影響により、モータトルク効率が低下するため効果的なアシストができず、結果、操舵が重くなり車両操舵に影響を及ぼす。
また、減速ギヤ21の機械コンプライアンス特性は、図13に示すように、ねじれ特性であることから出力軸回転角センサ13c側からの推定誤差としては、必ず操舵方向に対し遅れる側の誤差となる。
第1実施形態において、センサ間誤差補正部54は、上記推定角度演算部55に入力する前の出力軸角速度ωosに対して、上記機械コンプライアンス特性による誤差を補正するための処理を行うものである。
このセンサ間誤差補正部54は、図7に示すように、進角ゲイン算出部61と、乗算部62と、モータトルク相当値算出部63と、減速ギヤ誤差特性算出部64と、進角補正限界値算出部65と、進角許可判定部66とを備えている。
進角ゲイン算出部61は、操舵トルクセンサ13からの操舵トルクThに基づき、進角ゲインマップを用いて入力された出力軸角速度ωosを進角補正するための進角ゲインGadを算出する。そして、算出した進角ゲインGadを乗算部62に出力する。
具体的に、進角ゲインマップは、図15に示すように、操舵トルクThの絶対値|Th|が所定トルク値Tht未満の間は進角ゲインGadが「1」となる不感帯となっている。そして、第1実施形態では、絶対値|Th|が所定トルク値Tht以上になると、この絶対値|Th|が大きくなるほど予め設定した傾きで「1」よりも大きな値に線形に増加する特性を有している。この所定トルク値Thtは、例えば上記機械コンプライアンス特性による誤差がドライバーに手感となって現れるか否かの境界値に設定されている。具体的には、例えば事前に実験等を行って、実際の車両の操舵フィールを確認して、許容可能な操舵トルクThの絶対値|Th|を所定値として設定する。なお、進角ゲインマップは、一定の傾きで線形に変化する構成に限らず、複数の傾きで多段階に線形変化する構成や、非線形に変化する構成とするなど他の構成としてもよい。
乗算部62は、入力された出力軸角速度ωosに、入力された進角ゲインGadを乗算して出力軸角速度ωosを進角補正し、この進角補正後の出力軸角速度ωosである進角後舵角速度ωoscを進角許可判定部66に出力する。
ここで、進角補正とは、操舵トルクThの絶対値|Th|が上記所定トルク値Tht以上となる状況において、1よりも大きい進角ゲインGadを出力軸角速度ωosに乗算することで、誤差分を打ち消す方向の進角量が大きくなるように出力軸角速度ωosを増速(操舵方向に大きく)する補正である。なお、絶対値|Th|が上記所定トルク値Tht未満となる不感帯では、進角ゲインGadが「1」となるため、入力された出力軸角速度ωosがそのまま進角後舵角速度ωoscとして進角許可判定部66に出力されることになる。
モータトルク相当値算出部63は、モータ出力トルクTmに相当するモータトルク相当値Tm’を算出する。第1実施形態では、モータ相電流Ia〜Icに基づき、モータトルク相当値Tm’としてq軸電流Iqを算出する。そして、算出したモータトルク相当値Tm’(Iq)を減速ギヤ誤差特性算出部64に出力する。
具体的に、モータトルク相当値算出部63は、公知の三相−二相変換方法を用いてq軸電流Iqを算出する。例えば、モータ相電流Ia〜Icの三相静止座標系を、まず、二相のα−β座標系(二相直交静止座標系)に変換し、次いで、α−β座標系をd−q座標系(回転座標系)に変換することでq軸電流Iqを求める。
なお、実装可能であれば、実際のモータ出力トルクTmを直接測定し、モータトルク相当値Tm’に代えて、測定したモータ出力トルクTmを用いる構成としてもよい。
減速ギヤ誤差特性算出部64は、入力されたモータトルク相当値Tm’に基づき減速ギヤ誤差特性マップを用いて減速ギヤ誤差特性Sgを算出する。そして、算出した減速ギヤ誤差特性Sgを進角補正限界値算出部65に出力する。
具体的に、第1実施形態では、減速ギヤ誤差特性マップとして、図16に示すように、バラツキ幅の中央値を用いたマップを用意する。但し、中央値と最大/最小の乖離幅分は角度推定誤差が発生しアシスト効率が低下するため、この幅を許容アシスト効率低下分まで狭める必要があり、その調整を行ったものを減速ギヤ誤差特性マップとして用意することが望ましい。
また、減速ギヤ誤差特性マップ中央のモータ出力トルク範囲では、ヒステリシス特性で演算する。即ち、図16中の矢印線に示すように、モータ出力トルクがマイナス側からプラス側へと変化する方向では、下側且つ右側のマップ値を用い、モータ出力トルクがプラス側からマイナス側へと変化する方向では上側且つ左側のマップ値を用いる。
進角補正限界値算出部65は、逆起電圧角度補正値算出部53から入力された補正タイミングフラグCTFと、減速ギヤ誤差特性算出部64から入力された減速ギヤ誤差特性Sgとに基づき、補正角度θeによる補正タイミングからの進角補正量の限界値である進角補正限界値SgLを算出する。そして、算出した進角補正限界値SgLを進角許可判定部66に出力する。
ここで、逆起電圧に基づき算出した補正角度θeによる角度補正がなされると、そのときの機械コンプライアンス特性の誤差状態にかかわらず第2のモータ電気角θm2が補正角度θeに補正される。即ち、図16の0[deg]が常に初期位置とはならない状態となる。従って、第1実施形態では、補正角度θeによる補正がなされたタイミングの誤差状態を基準とし、基準時の機械コンプライアンス特性の誤差と現在の誤差との差分から進角補正限界値SgLを求めている。
ここで、操舵トルクThが大きくなると機械コンプライアンス特性による誤差が発生するようになるが、誤差発生時以外にも操舵トルクThが大きくなるシチュエーションとしては、以下の2つのシチュエーションが考えられる。
S1) 操舵速度を速くしたとき
S2) ラックエンドへの押し当て、タイヤの縁石ヒット等
上記S1)のシチュエーションに関しては、操舵速度が速い状態のため上記逆起電圧角度補正値算出部53にて線間逆起電圧値EMFに基づき算出した補正角度θeによる角度補正が動作可能となるため影響を無視することが可能である。一方、上記S2)のシチュエーションに関しては、操舵速度が低速度のため電動モータ22も低回転となり上記不感帯状態値Fが「1」となって補正角度θeによる角度補正機能が動作できない状態となる。この状態では、上記進角ゲインGadによる進角補正によって第2のモータ電気角θm2が過剰に進角してしまい、アシスト効率の低下、及び脱調を引き起こす可能性が考えられる。
この問題を回避するため、第1実施形態では、進角補正限界値算出部65にて上記進角補正限界値SgLを算出し、進角許可判定部66にて進角補正限界値SgLを進角ゲインGadにより進角できる限界の進角量として扱うことで、過剰な進角を抑制するようにした。
即ち、進角許可判定部66は、補正角度θeによる補正タイミングからの進角ゲインGadによる進角量(進角補正更新量Cr)の合計量(以下、「進角補正量Ct」と称す)が、進角補正限界値SgLを超えるような進角を不許可にする制御を行う。加えて、進角補正限界値SgLから遠ざかる方向の進角を不許可とする制御を行う。換言すると、進角補正量Ctが進角補正限界値SgLを超えない範囲で、進角補正限界値SgLへと近づく方向の進角を許可する制御を行う。従って、進角許可判定部66は、進角許可時に進角後舵角速度ωoscを最終舵角速度ωscとして推定角度演算部55に出力し、進角不許可時に出力軸角速度ωosをそのまま最終舵角速度ωscとして推定角度演算部55に出力する。
(進角補正限界値算出処理)
次に、図17及び図18に基づき、上記進角補正限界値算出部65で実行される進角補正限界値算出処理の具体的な処理内容について説明する。進角補正限界値算出処理は、上記メインプログラムにおいて呼び出されて実行されるサブプログラムの処理となる。
モータ電気角検出回路24のCPUにて進角補正限界値算出処理が実行されると、図17に示すように、まず、ステップS501に移行する。
ステップS501では、進角補正限界値算出部65において、減速ギヤ誤差特性Sg及び補正タイミングフラグCTFを読み込んで、ステップS503に移行する。
ステップS503では、進角補正限界値算出部65において、補正タイミングフラグCTFが「0」から「1」に変化したか否かを判定し、「0」から「1」に変化したと判定した場合(Yes)は、ステップS505に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS507に移行する。
ここで、第1実施形態では、前回の補正タイミングフラグCTF(n−1)をRAM等のメモリに記憶保持しておく構成となっている。
ステップS505に移行した場合は、進角補正限界値算出部65において、補正タイミングフラグCTFが「0」から「1」に変化したタイミングを基準タイミングとして、そのときのモータトルク相当値Tm’に対応する減速ギヤ誤差特性Sgを基準誤差特性Sg0として設定する。その後、ステップS507に移行する。
具体的に、進角補正限界値算出部65は、ステップS501で読み込んだ減速ギヤ誤差特性Sgを基準誤差特性Sg0に設定し、この基準誤差特性Sg0をRAM等のメモリに記憶保持する。
ステップS507では、進角補正限界値算出部65において、ステップS501で読み込んだ減速ギヤ誤差特性Sgからメモリに記憶された基準誤差特性Sg0を減算して、進角補正限界値SgLを算出する。その後、ステップS509に移行する。
ステップS509では、進角補正限界値算出部65において、ステップS507で算出した進角補正限界値SgLを進角許可判定部66に出力して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。
ここで、図18(A)及び(B)に基づき、進角補正限界値の算出処理について具体例を挙げて説明する。
例えば、図18(A)に示すように、ねじれ角が減速ギヤ誤差特性マップ上のマイナスの最大値となる同図(A)中の「ON」のタイミングで補正角度θeによる補正が行われたとする。この場合は、同図(A)中の四角印で示す「ON」のタイミングに対応するねじれ角の値が基準誤差特性Sg0として設定される。その後、モータ出力トルクTmがプラス方向に変化していき、ねじれ角が減速ギヤ誤差特性マップ上の下側及び右側のヒステリシス部分を通ってプラスの最大値となる図18(A)中の白丸で示す(1)の値へと変化したとする。この場合は、同図(A)中の白丸で示す値から四角印で示す値(基準誤差特性Sg0)を減算したものが、(1)の時点での進角補正限界値SgLとなる。即ち、図18(A)中の上矢印線(a)の長さ分の角度量が進角補正限界値SgLとなる。なお、上矢印線は進角補正限界値SgLがプラス符号となる場合を示している。
引き続き、モータ出力トルクTmが減少してマイナス方向へと変化していき、ねじれ角が減速ギヤ誤差特性マップ上の上側及び左側のヒステリシス部分を通って同図(A)中の三角印で示す(2)の値へと変化したとする。この場合は、同図(A)中の三角印で示す値から四角印で示す値(基準誤差特性Sg0)を減算したものが、(2)の時点での進角補正限界値SgLとなる。即ち、図18(A)中の上矢印線(b)の長さ分の角度量が進角補正限界値SgLとなる。
一方、例えば、図18(B)に示すように、モータ出力トルクTmがプラス側で増加している途中において、ねじれ角が減速ギヤ誤差特性マップの右側のヒステリシス部分の値となったとする。そして、同図(B)中の「ON」のタイミングで補正角度θeによる補正が行われたとする。この場合も、同図(B)中の四角印で示す「ON」のタイミングの値が基準誤差特性Sg0として設定される。その後、モータ出力トルクTmがプラス方向に増加して、ねじれ角が図18(B)中の白丸で示す(1)の値へと変化したとする。この場合は、同図(B)中の白丸で示す値から四角印で示す値(基準誤差特性Sg0)を減算したものが、(1)の時点での進角補正限界値SgLとなる。即ち、図18(B)中の上矢印線(a)の長さ分の角度量が進角補正限界値SgLとなる。
引き続き、モータ出力トルクTmがプラスの最大値となった後でマイナス方向側に向かって変化していき、ねじれ角が減速ギヤ誤差特性マップ上の上側及び左側のヒステリシス部分を通って同図(B)中の三角印で示す(2)の値へと変化したとする。この場合も、同図(B)中の三角印で示す値から四角印で示す値(基準誤差特性Sg0)を減算したものが、(2)の時点での進角補正限界値SgLとなる。但し、図18(B)に示す例では、三角印で示す値の方が四角印で示す値(基準誤差特性Sg0)よりもマイナス側に大きな値となっており、減算結果がマイナスとなる。即ち、図18(B)中の下矢印線(b)の長さ分の角度量が進角補正限界値SgLとなり且つマイナスの値となる。
なお、図18(A)及び(B)の減速ギヤ誤差特性マップは、説明用の簡略化したマップであり、図16の減速ギヤ誤差特性マップとは異なるものである。
(進角許可判定部66)
次に、図19に基づき進角許可判定部66の具体的な構成について説明する。
進角許可判定部66は、図19に示すように、減算部66a及び66cと、加算部66bと、符号取得部66d及び66eと、一致判定部66fと、角速度切替部66gと、進角補正量過去値切替部66hと、信号遅延部66iとを備えている。
減算部66aは、乗算部62から入力された進角後舵角速度ωoscから、出力軸角速度演算部53aから入力された出力軸角速度ωosを減算して、進角補正更新量Crを算出する。そして、算出した進角補正更新量Crを加算部66bに出力する。即ち、減算部66aでは、進角補正による出力軸角速度ωosの各操舵方向への増加分を算出している。
加算部66bは、減算部66aから入力された進角補正更新量Crに、信号遅延部66iから入力された前回の進角補正量Ctである進角補正量過去値Ct(n−1)を加算して、進角補正量Ctを算出する。そして、算出した進角補正量Ctを減算部66cに出力する。
減算部66cは、進角補正限界値算出部65から入力された進角補正限界値SgLから、加算部66bから入力された進角補正量過去値Ct(n−1)を減算して、進角方向情報dsを算出する。そして、算出した進角方向情報dsを符号取得部66eに出力する。
符号取得部66dは、出力軸角速度演算部53aから入力された出力軸角速度ωosの符号を取得して、取得した符号情報を一致判定部66fに出力する。例えば、プラス符号の場合は「操舵方向=1」を、マイナス符号の場合は「操舵方向=−1」を、「ωos=0」の場合は「操舵方向=0」を一致判定部66fに出力する。
符号取得部66eは、減算部66cから入力された進角方向情報dsの符号を取得して、取得した符号情報を進角方向として一致判定部66fに出力する。例えば、プラス符号の場合は「進角方向=1」を、マイナス符号の場合は「進角方向=−1」を、「ds=0」の場合は「進角方向=0」を一致判定部66fに出力する。
一致判定部66fは、符号取得部66dから入力された操舵方向と、符号取得部66eから入力された進角方向とを比較して、両者が一致しているか否かを判定する。そして、この判定結果Paを角速度切替部66gと進角補正量過去値切替部66hとにそれぞれ出力する。例えば、一致していると判定した場合は「Pa=1」を出力し、一致していないと判定した場合は「Pa=0」を出力する。
角速度切替部66gは、一致判定部66fから入力された判定結果Paに基づき、最終舵角速度ωscとして推定角度演算部55に出力する角速度を、出力軸角速度演算部53aから入力された出力軸角速度ωosと、乗算部62から入力された進角後舵角速度ωoscとのいずれか一方に切り替える。
具体的に、角速度切替部66gは、判定結果Paが一致を示す「1」のときに進角後舵角速度ωoscを最終舵角速度ωscとして出力し、判定結果Paが不一致を示す「0」のときに出力軸角速度ωosを最終舵角速度ωscとして出力する。即ち、操舵方向と進角方向とが一致しているときは、進角後舵角速度ωoscによる進角量の補正を許可し、不一致のときは進角量の補正を不許可とする。
即ち、「現在の進角補正量Ct>進角補正限界値SgL」となるときは、進角方向が「−1」のときのみ進角を許可する。一方、「現在の進角補正量Ct<進角補正限界値SgL」となるときは、進角方向が「1」のときのみ進角を許可する。
進角補正量過去値切替部66hは、一致判定部66fから入力された判定結果Paに基づき、信号遅延部66iに出力する進角補正量を、加算部66bから入力された進角補正量Ctと、信号遅延部66iから入力された進角補正量過去値Ct(n−1)とのいずれか一方に切り替える。
具体的に、進角補正量過去値切替部66hは、判定結果Paが一致を示す「1」のときに進角補正量Ctを出力し、判定結果Paが不一致を示す「0」のときに進角補正量過去値Ct(n−1)を出力する。即ち、進角補正を行う場合は信号遅延部66iで保持する進角補正量過去値Ct(n−1)を今回の進角補正量Ctに更新し、進角補正を行わない場合は前回の値(Ct(n−1))をそのまま保持する。
信号遅延部66iは、進角補正量過去値切替部66hから入力された値を1制御期間遅延して出力するものである。即ち、1制御期間遅延した進角補正量である進角補正量過去値Ct(n−1)を加算部66b及び進角補正量過去値切替部66hに出力する。
加えて、信号遅延部66iは、補正角度算出部53dから入力された補正タイミングフラグCTFに基づき、「CTF=1」が入力されたタイミングで、保持している進角補正量過去値Ct(n−1)を「0」にリセットする処理を行う。即ち、信号遅延部66iは、進角補正量過去値Ct(n−1)を「0」にリセットすることで、進角補正量Ctを「0」にリセットしている。
ここで、第1実施形態では、加算部66bにて、進角補正更新量Crに進角補正量過去値Ct(n−1)を加算することで進角補正量Ctを算出している。これは、進角補正更新量Crの積分によって進角補正量Ctを算出していることを意味する。
また、補正角度θeによる補正が行われたタイミング(CTF=0→1)では、基準誤差特性Sg0が更新されると共に進角補正限界値SgLが「0」にリセットされる。これにより、基準位置が更新されるため、これに合わせて進角補正量Ctを「0」にリセットする必要がある。即ち、第1実施形態では、図20に示すように、補正角度θeによる補正タイミングで進角補正量Ctを「0」にリセットして、そこから現在までの進角補正更新量Crを積分し、現在までの進角補正量Ctを算出している。
(進角許可判定処理)
次に、図21に基づき、上記進角許可判定部66で実行される進角許可判定処理の具体的な処理内容について説明する。進角許可判定処理は、上記メインプログラムにおいて呼び出されて実行されるサブプログラムの処理となる。
モータ電気角検出回路24のCPUにて進角許可判定処理が実行されると、図21に示すように、まず、ステップS601に移行する。
ステップS601では、減算部66aにおいて、入力された進角後舵角速度ωoscから、入力された出力軸角速度ωosを減算して、進角補正更新量Crを算出する。そして、算出した進角補正更新量Crを加算部66bに出力して、ステップS603に移行する。
ステップS603では、加算部66bにおいて、入力された進角補正更新量Crに、入力された進角補正量過去値Ct(n−1)を加算して、進角補正量Ctを算出する。そして、算出した進角補正量Ctを減算部66cと進角補正量過去値切替部66hとにそれぞれ出力する。その後、ステップS604に移行する。
ステップS604では、符号取得部66dにおいて、入力された出力軸角速度ωosから操舵方向を算出して、算出した操舵方向を一致判定部66fに出力して、ステップS605に移行する。
具体的に、符号取得部66dは、例えば符号関数signを用いて、「操舵方向=sign(ωos)」から操舵方向を算出する。
ステップS605では、減算部66cにおいて、入力された進角補正限界値SgLから、入力された進角補正量Ctを減算して進角方向情報dsを算出すると共に、算出した進角方向情報dsを符号取得部66eに出力する。引き続き、符号取得部66eにおいて、進角方向情報dsから進角方向を算出し、算出した進角方向を一致判定部66fに出力して、ステップS607に移行する。
具体的に、符号取得部66eは、例えば符号関数signを用いて、「進角方向=sign(ds=SgL−Ct)」から進角方向を算出する。
ステップS607では、一致判定部66fにおいて、入力された操舵方向及び進角方向をに基づき、進角方向と操舵方向とが同方向か否かを判定する。そして、同方向であると判定した場合(Yes)は、進角許可を示す判定結果「Pa=1」を角速度切替部66g及び進角補正量過去値切替部66hにそれぞれ出力して、ステップS609に移行する。一方、そうでないと判定した場合(No)は、進角不許可を示す判定結果「Pa=0」を角速度切替部66g及び進角補正量過去値切替部66hにそれぞれ出力して、ステップS613に移行する。
ステップS609に移行した場合は、角速度切替部66gにおいて、入力された判定結果「Pa=1」に基づき、最終舵角速度ωscとして進角後舵角速度ωoscを推定角度演算部55に出力する。その後、ステップS611に移行する。
ステップS611では、進角補正量過去値切替部66hにおいて、入力された判定結果「Pa=1」に基づき、信号遅延部66iの保持値(Ct(n−1))を、ステップS603で算出した進角補正量Ctに更新する。その後、一連の処理を終了して元の処理に復帰する。
一方、ステップS607において同方向ではないと判定されステップS613に移行した場合は、角速度切替部66gにおいて、入力された判定結果「Pa=0」に基づき、舵角速度として出力軸角速度ωosを推定角度演算部55に出力する。その後、ステップS615に移行する。
ステップS615では、進角補正量過去値切替部66hにおいて、入力された判定結果「Pa=0」に基づき、信号遅延部66iの保持値(Ct(n−1))を更新せずにそのまま保持する。その後、一連の処理を終了して元の処理に復帰する。
(推定角度演算部55)
次に、図19に基づき推定角度演算部55の具体的な構成について説明する。
推定角度演算部55は、図19に示すように、整合部55aと、積分部55bとを備えている。
整合部55aは、出力軸回転角センサ13cと電動モータ22との間に減速ギヤ21が介在することから、最終舵角速度ωscを介在後のものに整合させるための演算を行う。具体的に、進角許可判定部66から入力された最終舵角速度ωscに対して、減速比RGr及び極対数Pを乗算する。そして、乗算後の最終舵角速度ωsc’を、積分部55bに出力する。
積分部55bは、入力された最終舵角速度ωsc’を積算し、この積算値を第2のモータ電気角θm2として電気角選択部24Cに出力する。
また、積分部55bは、補正角度算出部53dから入力された補正タイミングフラグCTFと補正角度θeとに基づき、入力された補正タイミングフラグCTFが「1」のときに、積算値を入力された補正角度θeに変更する処理を行う。即ち、第2のモータ電気角θm2を補正角度θeに補正する処理を行う。
(動作)
次に、図22に基づき、第1実施形態の動作を説明する。
IGNスイッチ28がオフ状態であって車両2が停止していると共に、操舵補助制御処理も停止している作動停止状態であるときには、モータ制御装置25の制御演算装置31及びモータ電気角検出回路24が非作動状態となっている。
このため、制御演算装置31及びモータ電気角検出回路24で実行される各種処理は停止されている。この状態では、電動モータ22は作動を停止しており、ステアリング機構への操舵補助力の出力を停止している。
この作動停止状態からIGNスイッチ28をオン状態とすると、制御演算装置31及びモータ電気角検出回路24が作動状態となり、モータ電気角θmの検出処理、操舵補助制御処理等の各種処理を開始する。このとき、レゾルバ23が正常であるものとする。
このときには、異常検出信号SArが異常なしを表す値となり、電気角選択部24Cは、メイン電気角検出回路24Aで演算した第1のモータ電気角θm1をモータ電気角θmとして制御演算装置31に出力する。
制御演算装置31では、このモータ電気角θmに基づいてd軸電流指令値Id及びq軸電流指令値Iqを算出する。そして、d軸電流指令値Id及びq軸電流指令値Iqに基づきモータ駆動回路32に対する3相のモータ電圧指令値Va、Vb及びVcを算出し、算出した3相のモータ電圧指令値Va、Vb及びVcをモータ駆動回路32に出力する。これにより、モータ駆動回路32によってインバータ回路42が駆動制御され電動モータ22が駆動制御(転流制御)される。
一方、バックアップ電気角検出回路24Bでは、レゾルバ23が異常になった際、第2のモータ電気角θm2の算出処理が行われる。ここで、中間角度θc及びシフト後中間角度θc_shtの初期値は、レゾルバ23が異常となる前の正常値に近い値に設定される。その他の信号は初期値「0」で初期化される。
即ち、バックアップ電気角検出回路24Bの逆起電圧角度補正値算出部53は、まず、出力軸回転角θosを微分して出力軸角速度ωosを算出し、モータ相電圧Va〜Vc及びモータ相電流Ia〜Icに基づき各線間逆起電圧値EMFを算出する。次に、各線間逆起電圧値EMFの絶対値と所定の閾値Thvとを比較し、所定の閾値Thv以上であると判定した場合に不感帯状態ではない(F=0)と判定する(ステップS103のYes及びS105)。一方、所定の閾値Thv未満であると判定した場合に不感帯状態である(F=1)と判定する(ステップS103のNo及びS115)。
不感帯状態ではないと判定した場合は、次に、各線間逆起電圧値EMFの符号を取得し(ステップS107)、出力軸角速度ωosの符号を取得する(ステップS109)。そして、取得した符号情報と、図9に示すマップ情報とに基づき絶対角度領域Z及び中間角度θcを判定する(ステップS111)。ここで、出力軸角速度ωosの符号からモータ回転方向(正方向、逆方向)が解るので、モータ回転方向と各線間逆起電圧値EMFの符号関係とから絶対角度領域Z及び中間角度θcを一意に判定することができる。例えば、モータ回転方向が正方向で各線間逆起電圧値EMFの符号関係が(+,−,−)である場合は、絶対角度領域Zは「60〜120[deg_el]」となり、中間角度θcは「90[deg]」となる。
次に、判定した今回の中間角度θcと前回の中間角度θc(n−1)と前回のシフト後中間角度θc_sht(n−1)とに基づきシフト後中間角度θc_shtを演算する(ステップS113)。
例えば、前回のθc(n−1)が30[deg]で今回のθcが90[deg]の場合、差分値Sht(=θc−θc(n−1))が60[deg]となる(ステップS201、S203のNo)。そのため、今回のシフト後中間角度θc_shtは、「θc_sht=θc−30[deg](ステップS209)」から60[deg]となる。
引き続き、逆起電圧角度補正値算出部53は、不感帯状態値が「F=0」であるため(ステップS301のYes)、今回の絶対角度領域Zが前回の絶対角度領域Z(n−1)に対して、隣り合う領域に移行したものであるか否かを判定する(ステップS303)。
ここで、前回の絶対角度領域Z(n−1)が「0〜60[deg_l]」で、今回の絶対角度領域Zが「60〜120[deg_el]」であるとする。この場合は、隣り合う領域に移行しているので(ステップS303のYes)、次に、シフト後中間角度θc_shtが変化しているか否かを判定する(ステップS305)。
また、前回のシフト後中間角度θc_shtは0[deg]であるとする。上記したように0〜60[deg_l]から60〜120[deg_el]への移行では、今回のシフト後中間角度θc_shtは60[deg]となるので、シフト後中間角度θc_shtは変化していると判定される(ステップS305のYes)。
引き続き、出力軸角速度ωosの符号と領域移行方向の符号(ここでは正方向を「+」とする)とに基づき、移行方向と出力軸回転方向とが同方向であるか否かを判定する(ステップS307)。ここでは、出力軸角速度ωosの符号が「+」であるとして、同方向であると判定されたとする(ステップS307のYes)。これにより、隣り合う領域への移行が確定する。
続いて、前回と今回の絶対角度領域の境界角度を補正角度θeとして設定し(ステップS309)、次いで補正タイミングフラグCTFを「1」に設定する(ステップS311)。ここでは、補正角度θeは、絶対角度領域0〜60[deg_l]と60〜120[deg_el]との境界角度である60[deg]に設定される。その後、値が「1」の補正タイミングフラグCTF(以下、「補正タイミングフラグCTF(1)と称す)を、センサ間誤差補正部54及び推定角度演算部55にそれぞれ出力し、補正角度θeを推定角度演算部55に出力する(ステップS313)。
一方、バックアップ電気角検出回路24Bのセンサ間誤差補正部54は、進角ゲイン算出部61にて、入力された操舵トルクThから図15のマップ情報を用いて進角ゲインGadを算出する。そして、算出した進角ゲインGadを乗算部62に出力する。第1実施形態では、操舵トルクThが所定トルク値Tht以上である場合に進角ゲインGadとして「1」よりも大きい値が出力され、所定トルク値Tht未満である場合に進角ゲインGadとして「1」が出力される(図15参照)。
乗算部62は、入力された出力軸角速度ωosに入力された進角ゲインGadを乗算して、進角後舵角速度ωoscを算出する。そして、算出した進角後舵角速度ωoscを進角許可判定部66に出力する。
また、センサ間誤差補正部54のモータトルク相当値算出部63は、モータ相電流Ia〜Icに基づき、モータトルク相当値Tm’としてq軸電流Iqを算出する。そして、算出したモータトルク相当値Tm’を減速ギヤ誤差特性算出部64に出力する。
減速ギヤ誤差特性算出部64は、図16に示すマップ情報を用いて、入力されたモータトルク相当値Tm’に対応する角度誤差(ねじれ角度)を減速ギヤ誤差特性Sgとして算出し、算出した減速ギヤ誤差特性Sgを進角補正限界値算出部65に出力する。
進角補正限界値算出部65は、入力された減速ギヤ誤差特性Sgと補正タイミングフラグCTFとに基づき、進角補正限界値SgLを算出する。
具体的に、補正タイミングフラグCTFが「0」から「1」になる毎に、このタイミングで入力された減速ギヤ誤差特性Sgを基準誤差特性Sg0に設定する(ステップS501,S503のYes,S505)。即ち、補正タイミングフラグCTFが「0」から「1」に変化する毎に設定された基準誤差特性Sg0を入力された減速ギヤ誤差特性Sgに更新する。
そして、以降の進角補正限界値SgLの各算出タイミングにおいては、各算出タイミングで入力された減速ギヤ誤差特性Sgから設定された基準誤差特性Sg0を減算した減算結果を進角補正限界値SgLとして算出する(ステップS507)。そして、算出した進角補正限界値SgLを進角許可判定部66に出力する(ステップS509)。
また、進角許可判定部66は、減算部66aにおいて、入力された進角後舵角速度ωoscから入力された出力軸角速度ωosを減算して、進角補正更新量Crを算出する。そして、算出した進角補正更新量Crを加算部66bに出力する(ステップS601)。次に、加算部66bにおいて、進角補正更新量Crに進角補正量過去値Ct(n−1)を加算して進角補正量Ctを算出する。そして、算出した進角補正量Ctを減算部66cに出力する(ステップS603)。
続いて、符号取得部66eにて、符号関数を用いて出力軸角速度ωosの符号情報(sign(ωos))を算出する。そして、算出した符号情報を操舵方向として一致判定部66fに出力する(ステップS604)。
引き続き、減算部66cにて、進角補正限界値SgLから進角補正量Ctを減算して、進角方向情報dsを算出する。そして、算出した進角方向情報dsを符号取得部66dに出力する。続いて、符号取得部66dにて、符号関数を用いて進角方向情報dsの符号情報(sign(ds))を算出する。そして、算出した符号情報を進角方向として一致判定部66fに出力する(ステップS605)。
続いて、一致判定部66fにて、入力された進角方向及び操舵方向が同方向であるか否かを判定する(ステップS607)。そして、一致判定部66fは、同方向であると判定した場合に判定結果「Pa=1」を角速度切替部66g及び進角補正量過去値切替部66hにそれぞれ出力する(ステップS607のYes)。一方、同方向ではないと判定した場合に判定結果「Pa=0」を角速度切替部66g及び進角補正量過去値切替部66hにそれぞれ出力する(ステップS607のNo)。
続いて、角速度切替部66gは、「Pa=1」の場合に最終舵角速度ωscとして進角後舵角速度ωoscを推定角度演算部55に出力し(ステップS609)、「Pa=0」の場合に最終舵角速度ωscとして出力軸角速度ωosを推定角度演算部55に出力する(ステップS613)。
推定角度演算部55は、最終舵角速度ωscが入力されると、整合部55aにて、入力された最終舵角速度ωscに対して、減速比RGrと極対数Pを乗算して、この乗算結果ωsc’を積分部55bに出力する。積分部55bは、入力された乗算結果ωsc’を積分する。一方、積分部55bは、逆起電圧角度補正値算出部53から入力された補正タイミングフラグCTFが「0」から「1」に変化した場合に、そのときの積分値を逆起電圧角度補正値算出部53から入力された補正角度θeに変更する。
具体的に、推定角度演算部55では、進角方向と操舵方向とが一致しているときに進角後舵角速度ωoscを積算し、進角方向と操舵方向とが一致していないときに出力軸角速度ωosを積算することになる。
一方、進角補正量過去値切替部66hは、「Pa=1」の場合に進角補正量Ctを信号遅延部66iに出力し、信号遅延部66iは、保持している進角補正量過去値Ct(n−1)を、進角補正量Ctに更新する(ステップS611)。一方、進角補正量過去値切替部66hは、「Pa=0」の場合に進角補正量過去値Ct(n−1)を信号遅延部66iに出力する。即ち、信号遅延部66iは、保持している進角補正量過去値Ct(n−1)をそのまま保持する(ステップS615)。
また、信号遅延部66iは、逆起電圧角度補正値算出部53から入力された補正タイミングフラグCTFが「0」から「1」に変化した場合に、そのときの保持値を「0」にリセットする。
次に、進角許可判定部66の動作を、具体例を挙げて説明する。
図22の例は、例えばパーキングでの操舵でモータ出力がある程度大きくなる状況での操舵を示すものである。
図22において、同図中の上図では、縦軸が角度[deg]を示し、同図中の中図では、縦軸がモータ出力トルクTm[Nm]を示し、同図中の下図では、縦軸が操舵方向(出力軸角速度ωosの符号が+符号の場合は「1」、−符号の場合は「−1」)を示す。また、いずれの図においても横軸は時間[s]を示す。また、同図中の上図では、実線が進角補正量Ctを示し、破線が進角補正限界値SgLを示す。
図22中の(1)の期間では、ドライバーの「+」方向の操舵に応じて、モータ出力トルクTmがプラス側で大きくなっており、これに伴って進角補正限界値SgLもプラス側で大きくなっている。また、操舵方向の符号が「+」であり、且つ進角方向(sign(ds=SgL−Ct))の符号も「+」となっている。そのため、操舵方向と進角方向とが一致するので、進角許可判定部66は、進角後舵角速度ωoscの積算による進角を許可する。
続いて、図22中の(2)の期間では、ドライバーが保舵状態となり、モータ出力トルクTmの変化が止まるため進角補正限界値SgLの変化も止まる。一方、操舵方向の符号が「+」であり、且つ進角方向(sign(ds))も「+」となっている。そのため、操舵方向と進角方向とが一致するので、進角許可判定部66は、進角後舵角速度ωoscの積算による進角を許可する。
続いて、図22中の(3)の期間では、ドライバーの保舵状態が続いており、モータ出力トルクTmの変化及び進角補正限界値SgLの変化が止まった状態のままとなっている。また、上記(2)の期間での進角後舵角速度ωoscの積算による進角によって、進角補正量Ctと進角補正限界値SgLとが略一致した状態となっている。そのため、進角後舵角速度ωoscの積算を行った場合の進角方向(sign(ds))が「−」となる。また、このときの操舵方向は「+」となっているため、操舵方向と進角方向とが一致せず、進角許可判定部66は、進角後舵角速度ωoscの積算による進角を不許可とする。
引き続き、図22中の(4)の期間では、ドライバーは保舵状態を維持しているが、モータ出力トルクTmが下がり始める。これに伴って進角補正限界値SgLも下がっていく。この期間では、操舵方向は「+」となるが、進角方向(sign(ds))が「−」となる。そのため、操舵方向と進角方向とが一致せず、進角許可判定部66は、進角後舵角速度ωoscの積算による進角を不許可とする。
続いて、図22中の(5)の期間では、ドライバーが切り戻し操舵を行っており、モータ出力トルクTmが更に下がっていき、やがてモータ出力トルクTmがマイナス方向となり符号が「−」となる。これに伴って進角補正限界値SgLも下がっていき、やがて進角補正限界値SgLがマイナス値となり符号が「−」となる。この期間では操舵方向が「−」となっており、且つ進角方向(sign(ds))が「−」となる。そのため、操舵方向と進角方向とが一致するので、進角許可判定部66は、進角後舵角速度ωoscの積算による進角を許可する。
ここで、出力軸回転角センサ13cが舵角検出部に対応し、出力軸角速度演算部53aが舵角速度算出部に対応し、推定角度演算部55がモータ電気角推定部に対応し、制御演算装置31がモータ駆動制御部に対応する。
また、レゾルバ23及びメイン電気角検出回路24Aがモータ電気角検出部に対応し、進角ゲイン算出部61が進角ゲイン設定部に対応し、乗算部62が進角後舵角速度算出部に対応し、第2のモータ電気角θm2が推定モータ電気角に対応する。
また、操舵トルクセンサ13が操舵トルク検出部に対応し、進角許可判定部66が進角補正量制御部に対応し、出力軸角速度ωosがモータ回転方向情報に対応し、値が「1」のときの補正タイミングフラグCTFが補正タイミング情報に対応する。
また、逆起電圧角度補正値算出部53及び推定角度演算部55が逆起電圧角度補正部に対応し、モータ出力トルクTm及びモータトルク相当値Tm’がモータ出力トルク情報に対応し、減速ギヤ誤差特性Sgが角度誤差に対応し、基準誤差特性Sg0が基準角度誤差に対応する。
(第1実施形態の作用及び効果)
第1実施形態に係るモータ制御装置25は、出力軸角速度演算部53aが、出力軸回転角センサ13cで検出した出力軸回転角θosに基づき出力軸角速度ωosを算出する。推定角度演算部55が、出力軸角速度ωosに基づき電動モータ22のモータ電気角θmの推定値である第2のモータ電気角θm2を演算する。制御演算装置31が、レゾルバ23の正常時はメイン電気角検出回路24Aで算出した第1のモータ電気角θm1に基づき電動モータ22を駆動制御し、レゾルバ23の異常時は推定角度演算部55で算出した第2のモータ電気角θm2に基づき電動モータ22を駆動制御する。進角ゲイン算出部61が、操舵トルクThに基づき第2のモータ電気角θm2の進角量を補正するための進角ゲインGadを算出する。具体的に、進角ゲイン算出部61は、予め設定した所定トルク値Tht以上の操舵トルクThの入力時のみに、操舵方向に対して遅れる方向の角度誤差を打ち消す方向に第2のモータ電気角θm2を進角させるための進角ゲインGadを算出する。また、所定トルク値Thtとしては、角度誤差による影響がドライバーの手感として現れるか否かの境界値が設定されている。乗算部62が、進角ゲイン算出部61で算出した進角ゲインGadを出力軸角速度ωosに乗算して進角後舵角速度ωoscを算出する。そして、推定角度演算部55は、乗算部62で算出した進角後舵角速度ωoscを積算して、その積算値に基づき第2のモータ電気角θm2を演算する。
この構成であれば、予め設定した所定トルク値Tht以上の操舵トルクThの入力に対して、第2のモータ電気角θm2を操舵方向に対して遅れる方向の角度誤差を打ち消す方向に進角させるための進角後舵角速度ωosc算出することが可能となる。第1実施形態では、所定トルク値Thtを角度誤差による影響が手感として現れるか否かの境界値に設定したので、角度誤差による影響が手感として現れるタイミングでのみ補正を行うことが可能となる。これにより、従来と比較して簡単な構成で操舵方向に対して遅れる方向の角度誤差を低減することが可能となる。
また、第1実施形態に係るモータ制御装置25は、更に、逆起電圧角度補正値算出部53及び推定角度演算部55が、電動モータ22の各線間逆起電圧値EMFに基づき第2のモータ電気角θm2を補正する。
具体的に、第1実施形態では、逆起電圧角度補正値算出部53及び推定角度演算部55が、モータ電気角θmの1周期の角度範囲(360°の範囲)を60°毎に区分した絶対角度領域Zを算出する(図9参照)。加えて、モータ回転情報である出力軸角速度ωosと各線間逆起電圧値EMFの符号関係とに基づき、実際のモータ電気角θmの存在する絶対角度領域Zを判定すると共に絶対角度領域Zが隣り合う領域へと切り替わるタイミングを検出する。そして、検出したタイミング(補正タイミング)で移行前後の絶対角度領域の境界角度(補正角度θe)に基づき第2のモータ電気角θm2を補正する。第1実施形態では、積分部55bの積算値を境界角度(補正角度θe)に変更する補正を行う。
この構成であれば、絶対角度領域が隣り合う領域へと切り替わるタイミングで、前後の絶対角度領域の境界角度を用いて第2のモータ電気角θm2を補正することが可能となる。ここで、境界角度は既知の電気角となるため出力軸角速度ωosから求めた角度情報と比較して信頼性の高い角度情報となる。そして、この信頼性の高い角度情報で第2のモータ電気角θm2を補正することが可能となるので、モータ電気角θmの推定精度を向上することが可能となる。
また、第1実施形態に係るモータ制御装置25は、更に、絶対角度領域判定部53cが、各線間逆起電圧値EMFの最大値の絶対値|EMF|と所定の閾値Thvとを比較し、絶対値|EMF|が所定の閾値Thv以上となるときのみ境界角度による補正を行う。
ここで、モータ低回転時には各線間逆起電圧が微弱となって符号関係の取得値の信頼性が低くなる。
上記構成であれば、モータ低回転時に信頼性の低い境界角度による補正が行われるのを防ぐことが可能となり、モータ低回転時の推定精度の悪化を防ぐことが可能となる。
また、第1実施形態に係るモータ制御装置25は、更に、絶対角度領域判定部53cが、絶対角度領域Zの中間角度θcを算出する。更に、中間角度θcが移行するときのその移行方向を判定し、判定した移行方向に応じて中間角度θcをシフトした新たなシフト後中間角度θc_shtを算出する。補正角度算出部53dが、上記補正するタイミングを、絶対角度領域Zが隣り合う領域へ移行し且つシフト後中間角度θc_shtが変化したときとする。
ここで、絶対角度領域Zの切り替わり境界角度付近では各線間逆起電圧値EMFの符号関係が切り替わり易く、絶対角領域判定が隣り合う領域間でハンチングを起こす可能性がある。
上記構成であれば、シフト後中間角度θc_shtは、上記ハンチング時においては移動しない構成であるため、補正タイミング条件として追加することで一層正確に第2のモータ電気角θm2を補正することが可能となる。
また、第1実施形態に係るモータ制御装置25は、更に、進角補正限界値算出部65が、角度誤差を発生する誤差要因の誤差特性に基づき、進角後舵角速度ωoscの増加部分の積算量である進角補正量Ctの限界値である進角補正限界値SgLを算出する。進角許可判定部66が、進角補正量Ctが進角補正限界値算出部65で算出した進角補正限界値SgLを超えないように推定角度演算部55の進角後舵角速度ωoscの積算処理を制御する。
具体的に、逆起電圧角度補正値算出部53が、上記切り替わるタイミングを検出する毎に第2のモータ電気角θm2の補正タイミングを示す補正タイミングフラグCTF(1)を進角補正限界値算出部65及び進角許可判定部66に出力する。進角補正限界値算出部65が、入力された補正タイミングフラグCTF(1)に基づき補正タイミング毎に、そのときのモータトルク相当値Tm’(q軸電流Iq)に対応する減速ギヤ誤差特性Sgを基準誤差特性Sg0として算出する。そして、算出した基準誤差特性Sg0と以降の各算出タイミングにおける減速ギヤ誤差特性Sgとの差分値を各算出タイミングにおける進角補正限界値SgLとして算出する。進角許可判定部66が、進角補正更新量Crを積算することで進角補正量Ctを算出し、補正タイミングフラグCTF(1)に基づき補正タイミング毎に進角補正更新量Crの積算値を0にリセットする。即ち、信号遅延部66iで保持している進角補正量過去値Ct(n−1)を0にリセットする。
この構成であれば、減速ギヤ誤差特性Sgに基づき進角補正限界値SgLを算出し、進角補正量Ctがこの進角補正限界値SgLを超えないように進角後舵角速度ωoscの積算処理を制御することが可能となる。これにより、ラックエンドへの押し当て時や、タイヤの縁石ヒット時などのモータ低回転で操舵トルクThが大きくなるシチュエーションにおいて、減速ギヤ21による角度誤差分を超えるような過剰な進角が発生するのを防止することが可能となる。その結果、過剰進角によるアシスト効率の低下や脱調の発生を防止することが可能となる。
また、上記境界角度による補正タイミング毎に基準誤差特性Sg0を更新するようにしたので、境界角度による補正が行われて第2のモータ電気角θm2が急変した場合でも、新たな基準から進角補正限界値SgLを算出することが可能となるので、より確実に過剰進角の発生を防止することが可能となる。
また、第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置1は、モータ制御装置25を備える。
この構成であれば、上記モータ制御装置25と同等の作用及び効果が得られる。また、レゾルバ23及びモータ電気角検出回路24に異常が発生した場合でも電動モータ22を第2のモータ電気角θm2により駆動制御することができ電動パワーステアリング装置1の操舵補助機能の継続が可能となる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
(構成)
この第2実施形態は、上記第1実施形態において減速ギヤ21の減速ギヤ誤差特性のみを考慮して進角補正限界値SgLを算出する構成としていたが、減速ギヤ誤差特性に加えて出力軸回転角センサ13cの検出誤差特性についても考慮する点で上記第1実施形態と相違する。それ以外は上記第1実施形態と同様の構成となる。
以下、上記第1実施形態と同じ構成部については同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
(センサ間誤差補正部54)
第2実施形態に係るセンサ間誤差補正部54は、図23に示すように、上記第1実施形態の構成に対して、センサ誤差特性算出部67と、加算部68とが追加された構成となっている。
センサ誤差特性算出部67は、出力軸角速度ωosに基づきセンサ誤差特性Ssを算出する。そして、算出したセンサ誤差特性Ssを加算部68に出力する。
ここで、出力軸回転角センサ13cの検出誤差としては、図24に示すように、主にリニアリティ誤差とヒステリシス誤差とがある。なお、図24において、横軸は時間で縦軸は舵角(出力軸回転角θos)である。リニアリティ誤差は、真値に対しうねるような特性の誤差を示し、ヒステリシス誤差は、真値の変化方向に対し不感帯のような誤差特性を示す。特にヒステリシス誤差については、出力軸12bの取り付け剛性等により頻繁に発生する誤差特性であるため、補正をかけておきたい特性である。
また、リニアリティ誤差とヒステリシス誤差とは、横軸を操舵速度(出力軸角速度ωos)とし、縦軸を電気角度誤差とすると図25に示すように表現できる。
図25に示すように、両者を併せた誤差は、操舵速度の符号がマイナスのときにプラスの誤差となり、操舵速度の符号がプラスのときにマイナスの誤差となる。
このことに基づき、第2実施形態のセンサ誤差特性算出部67は、操舵速度の符号(即ち、操舵方向)に応じて、マイナス符号のときにプラス側の誤差の最大値(波線の頂点の値)をセンサ誤差特性Ssとして算出する。一方、プラス符号のときにマイナス側の誤差の最大値(波線の頂点の値)をセンサ誤差特性Ssとして算出する。即ち、第2実施形態において、センサ誤差特性Ssは操舵方向に対して符号が異なる固定値となる。
加算部68は、減速ギヤ誤差特性算出部64から入力された減速ギヤ誤差特性Sgにセンサ誤差特性算出部67から入力されたセンサ誤差特性Ssを加算して、この加算結果を合成誤差特性Sgsとして進角補正限界値算出部65に出力する。
減速ギヤ誤差特性Sgにセンサ誤差特性Ssを加算した場合、操舵速度の符号が「+」の場合に、図16に示す減速ギヤ誤差特性マップの全体が下に下がった状態となる。一方、操舵速度の符号が「−」の場合に、図16に示す減速ギヤ誤差特性マップの全体が上に上がった状態となる。即ち、センサ誤差分が加味されたマップとなる。
第2実施形態の進角補正限界値算出部65は、加算部68から入力された合成誤差特性Sgsを用いて、上記第1実施形態の進角補正限界値SgLに代えて進角補正限界値SgsLを算出する。そして、算出した進角補正限界値SgsLを、進角許可判定部66に出力する。
具体的に、入力された補正タイミングフラグCTFに基づき補正タイミング毎に、そのときに入力された合成誤差特性Sgsを基準誤差特性Sgs0に設定する(メモリに記憶保持する)。そして、以降の進角補正限界値SgsLの各算出タイミングにおいて、そのときに入力された合成誤差特性Sgsから基準誤差特性Sgs0を減算することで、進角補正限界値SgsLを算出する。
(合成誤差特性算出処理)
次に、図26に基づき、上記加算部68で実行される合成誤差特性算出処理の具体的な処理内容について説明する。合成誤差特性算出処理は、上記メインプログラムにおいて呼び出されて実行されるサブプログラムの処理となる。
モータ電気角検出回路24のCPUにて合成誤差特性算出処理が実行されると、図26に示すように、まず、ステップS701に移行する。
ステップS701では、加算部68において、減速ギヤ誤差特性算出部64からの減速ギヤ誤差特性Sg及びセンサ誤差特性算出部67からのセンサ誤差特性Ssを読み込んで、ステップS703に移行する。
ステップS703では、加算部68において、読み込んだ減速ギヤ誤差特性Sgに読み込んだセンサ誤差特性Ssを加算して合成誤差特性Sgsを算出する。その後、ステップS705に移行する。
ステップS705では、加算部68において、ステップS703で算出した合成誤差特性Sgsを、進角補正限界値算出部65に出力して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。
(進角補正限界値算出処理)
次に、図27に基づき、第2実施形態の進角補正限界値算出部65で実行される進角補正限界値算出処理の具体的な処理内容について説明する。進角補正限界値算出処理は、上記メインプログラムにおいて呼び出されて実行されるサブプログラムの処理となる。
モータ電気角検出回路24のCPUにて進角補正限界値算出処理が実行されると、図27に示すように、まず、ステップS801に移行する。
ステップS801では、進角補正限界値算出部65において、合成誤差特性Sgs及び補正タイミングフラグCTFを読み込んで、ステップS803に移行する。
ステップS803では、進角補正限界値算出部65において、補正タイミングフラグCTFが「0」から「1」に変化したか否かを判定し、「0」から「1」に変化したと判定した場合(Yes)は、ステップS805に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS807に移行する。
ステップS805に移行した場合は、進角補正限界値算出部65において、補正タイミングフラグCTFが「0」から「1」に変化したタイミングを基準タイミングとして、そのときのモータトルク相当値Tm’及び出力軸角速度ωosに対応する減速ギヤ誤差特性Sg及びセンサ誤差特性Ssの加算値である合成誤差特性Sgsを基準誤差特性Sgs0として設定する。その後、ステップS807に移行する。
具体的に、進角補正限界値算出部65は、ステップS801で読み込んだ合成誤差特性Sgsを基準誤差特性Sgs0に設定し、この基準誤差特性Sgs0をメモリに記憶保持する。
ステップS807では、進角補正限界値算出部65において、ステップS801で読み込んだ減速ギヤ誤差特性Sgからメモリに記憶された基準誤差特性Sg0を減算して、進角補正限界値SgsLを算出する。その後、ステップS809に移行する。
ステップS809では、進角補正限界値算出部65において、ステップS807で算出した進角補正限界値SgsLを進角許可判定部66に出力して、一連の処理を終了し元の処理に復帰する。
(動作)
以下、第2実施形態の動作を説明する。なお、上記第1実施形態と同様の動作は適宜省略し異なる動作を詳細に説明する。
減速ギヤ誤差特性算出部64は、図16に示すマップ情報を用いて、入力されたモータトルク相当値Tm’に対応する角度誤差(ねじれ角度)を減速ギヤ誤差特性Sgとして算出し、算出した減速ギヤ誤差特性Sgを加算部68に出力する。
一方、センサ誤差特性算出部67は、図25に示す誤差特性を用いて、入力された出力軸角速度ωosに対応する角度誤差(固定値)をセンサ誤差特性Ssとして算出し、算出したセンサ誤差特性Ssを加算部68に出力する。
加算部68は、入力された減速ギヤ誤差特性Sgに入力されたセンサ誤差特性Ssを加算して、合成誤差特性Sgsを算出する(ステップS701〜S703)。そして、算出した合成誤差特性Sgsを進角補正限界値算出部65に出力する(ステップS705)。
進角補正限界値算出部65は、入力された合成誤差特性Sgsと入力された補正タイミングフラグCTFとに基づき、進角補正限界値SgLを算出する。
具体的に、補正タイミングフラグCTFが「0」から「1」に変化する毎に、このタイミングで入力された合成誤差特性Sgsを基準誤差特性Sgs0に設定する(ステップS801、S803のYes,S805)。即ち、補正タイミングフラグCTFが「0」から「1」に変化する毎に設定された基準誤差特性Sgs0を入力された合成誤差特性Sgsに更新する。
そして、以降の進角補正限界値SgLの各算出タイミングにおいては、各算出タイミングで入力された合成誤差特性Sgsから設定された基準誤差特性Sgs0を減算した減算結果を進角補正限界値SgsLとして算出する(ステップS807)。そして、算出した進角補正限界値SgsLを進角許可判定部66に出力する(ステップS809)。
以降の進角許可判定部66及び推定角度演算部55の動作は、進角補正限界値SgLに代えて進角補正限界値SgsLを用いる点が異なるのみで上記第1実施形態と同様となるので説明を省略する。
(第2実施形態の作用及び効果)
第2実施形態は、上記第1実施形態の効果に加えて以下の効果を奏する。
第2実施形態に係るモータ制御装置25は、逆起電圧角度補正値算出部53が、実際のモータ電気角θmが存在する絶対角度領域Zが隣り合う領域に切り替わるタイミングを検出する。そして、このタイミングを検出する毎に第2のモータ電気角θm2の補正タイミングを示す補正タイミングフラグCTF(1)を進角補正限界値算出部65及び進角許可判定部66に出力する。進角補正限界値算出部65が、入力された補正タイミングフラグCTF(1)に基づき補正タイミング毎に、そのときのモータトルク相当値Tm’(q軸電流Iq)に対応する減速ギヤ誤差特性Sgに、そのときの出力軸角速度ωosに対応するセンサ誤差特性Ssを加算してなる合成誤差特性Sgsを基準誤差特性Sgs0として算出する。そして、算出した基準誤差特性Sgs0と以降の各算出タイミングにおける合成誤差特性Sgsとの差分値を各算出タイミングにおける進角補正限界値SgLとして算出する。
進角許可判定部66が、進角補正更新量Crを積算することで進角補正量Ctを算出し、補正タイミングフラグCTF(1)に基づき補正タイミング毎に進角補正更新量Crの積算値を0にリセットする。即ち、信号遅延部66iで保持している進角補正量過去値Ct(n−1)を0にリセットする。
この構成であれば、減速ギヤ誤差特性Sgにセンサ誤差特性Ssを加算した合成誤差特性Sgsに基づき進角補正限界値SgLを算出し、進角補正量Ctがこの進角補正限界値SgLを超えないように進角後舵角速度ωoscの積算処理を制御することが可能となる。これにより、ラックエンドへの押し当て時や、タイヤの縁石ヒット時などのモータ低回転で操舵トルクThが大きくなるシチュエーションにおいて左右に操舵した場合にも、減速ギヤ21及び出力軸回転角センサ13cによる角度誤差分の合計を超えるような過剰な進角が発生するのを防止することが可能となる。その結果、過剰進角によるアシスト効率の低下や脱調の発生をより確実に防止することが可能となる。
また、上記境界角度による補正タイミング毎に基準誤差特性Sg0を更新するようにしたので、境界角度による補正が行われて第2のモータ電気角θm2が急変した場合でも、新たな基準から進角補正限界値SgLを算出することが可能となるので、より確実に過剰進角の発生を防止することが可能となる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
(構成)
この第3実施形態は、上記第1実施形態において進角ゲインを「1」以上の値として、これを出力軸角速度ωosに乗算して進角後舵角速度ωoscを算出する構成としていたが、進角ゲインを「0」以上の値として、これを出力軸角速度ωosに乗算して進角補正更新量Crを算出する点で上記第1実施形態と相違する。また、出力軸角速度ωosに進角補正更新量Crを加算することで進角後舵角速度ωoscを算出する点でも相違する。これら以外の構成は上記第1実施形態と同様の構成となる。
以下、上記第1実施形態と同じ構成部については同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
(進角ゲイン算出部61)
第3実施形態に係る進角ゲイン算出部61は、上記第1実施形態の図15に示す進角ゲインマップに代えて、図29に示す進角ゲインマップを用いて上記第1実施形態の進角ゲインGadに代えて進角ゲインGad’を算出する構成となっている。
具体的に、第3実施形態の進角ゲインマップは、図29に示すように、操舵トルクThの絶対値|Th|が、所定トルク値Tht未満となる不感帯の範囲で進角ゲインGad’が「0」となり、所定トルク値Tht以上となる範囲で進角ゲインGad’が「0」よりも大きい値となる特性を有している。特に、絶対値|Th|が所定トルク値Tht以上となる範囲では、進角ゲインGad’が絶対値|Th|が大きくなるほど一定の傾きで線形に大きくなる特性を有している。なお、進角ゲインマップは、一定の傾きで線形に変化する構成に限らず、複数の傾きで多段階に線形変化する構成や、非線形に変化する構成とするなど他の構成としてもよい。
(乗算部62)
第3実施形態に係る乗算部62は、出力軸角速度演算部53aから入力された出力軸角速度ωosに、進角ゲイン算出部61から入力された進角ゲインGad’を乗算して、進角補正更新量Crを算出する。そして、算出した進角補正更新量Crを進角許可判定部66に出力する。なお、操舵トルクThの絶対値|Th|が所定トルク値Tht未満となる範囲では、進角ゲインGad’が「0」となるため進角補正更新量Crも「0」となる。
(進角許可判定部66)
第3実施形態に係る進角許可判定部66は、図28に示すように、上記第1実施形態の進角許可判定部66において、減算部66aに代えて加算部66jを備えた構成となっている。
第3実施形態の加算部66bは、乗算部62から入力された進角補正更新量Crに、信号遅延部66iから入力された進角補正量過去値Ct(n−1)を加算して進角補正量Ctを算出する。そして、算出した進角補正量Ctを減算部66cと進角補正量過去値切替部66hとにそれぞれ出力する。
加算部66jは、出力軸角速度演算部53aから入力された出力軸角速度ωosに乗算部62から入力された進角補正更新量Crを加算して、進角後舵角速度ωoscを算出する。そして、算出した進角後舵角速度ωoscを、角速度切替部66gに出力する。
ここで、操舵トルクThの絶対値|Th|が所定トルク値Tht未満となるときは、進角補正更新量Crが「0」となり、この場合は、進角後舵角速度ωoscとして出力軸角速度ωosが出力されることになる。
第3実施形態の角速度切替部66gは、一致判定部66fから入力された判定結果Paに基づき、最終舵角速度ωscとして推定角度演算部55に出力する最終舵角速度ωscを、出力軸角速度演算部53aから入力された出力軸角速度ωosと、加算部66jから入力された進角後舵角速度ωoscとのいずれか一方に切り替える。切替方法については、上記第1実施形態の角速度切替部66gと同様となる。
以上説明した構成部以外の各構成部の処理内容は、上記第1実施形態と同様となるので説明を省略する。また、動作についても、図29に示す進角ゲインマップから求めた進角ゲインGad’を用いて出力軸角速度ωosから進角補正更新量Crを求め、この進角補正更新量Crを出力軸角速度ωosに加算して進角後舵角速度ωoscを求める点が異なるのみで、他の動作については上記第1実施形態と同様となる。そのため、動作の説明も省略する。
ここで、乗算部62及び加算部66jが進角後舵角速度算出部に対応する。
(第3実施形態の作用及び効果)
第3実施形態に係るモータ制御装置25は、出力軸角速度演算部53aが、出力軸回転角センサ13cで検出した出力軸回転角θosに基づき出力軸角速度ωosを算出する。推定角度演算部55が、出力軸角速度ωosに基づき電動モータ22のモータ電気角θmの推定値である第2のモータ電気角θm2を演算する。制御演算装置31が、レゾルバ23の正常時はメイン電気角検出回路24Aで算出した第1のモータ電気角θm1に基づき電動モータ22を駆動制御する。一方、レゾルバ23の異常時は推定角度演算部55で算出した第2のモータ電気角θm2に基づき電動モータ22を駆動制御する。
更に、進角ゲイン算出部61が、操舵トルクThに基づき第2のモータ電気角θm2の進角量を補正するための進角ゲインGad’を算出する。ここで、進角ゲインGad’は、操舵方向に対して遅れる方向の角度誤差を打ち消す方向に第2のモータ電気角θm2を進角させるためのゲインであり、操舵トルクThの絶対値|Th|が所定トルク値Tht未満のときに「0」となり、所定トルク値Tht以上のときに「0」よりも大きい値となる。また、所定トルク値Thtとしては、上記第1実施形態と同様に角度誤差による影響がドライバーの手感として現れるか否かの境界値が設定されている。乗算部62が、出力軸角速度演算部53aで算出した出力軸角速度ωosに進角ゲイン算出部61で算出した進角ゲインGad’を乗算して、進角補正更新量Crを算出する。加算部66jが、出力軸角速度演算部53aで算出した出力軸角速度ωosに乗算部62で算出した進角補正更新量Crを加算することで進角後舵角速度ωoscを算出する。そして、推定角度演算部55は、乗算部62で算出した進角後舵角速度ωoscを積算して、その積算値に基づき第2のモータ電気角θm2を演算する。
この構成であれば、上記第1実施形態に係るモータ制御装置25と同等の作用及び効果が得られる。
(変形例)
上記第2実施形態においては、減速ギヤ誤差特性Sg及びセンサ誤差特性Ssを合成した合成誤差特性Sgsに基づき進角補正限界値SgsLを算出する構成としたが、この構成に限らない。例えば、センサ誤差特性Ssのみを用いて上記第2実施形態の進角補正限界値SgsLに代えて進角補正限界値SsLを算出する構成としてもよい。この構成とした場合は、出力軸角速度ωosの符号に対応する固定のセンサ誤差特性Ss(図25参照)が進角補正限界値SsLとなる。そして、補正タイミングフラグCTFに関係なく、出力軸角速度ωosの符号が反転する毎に、各符号に対応するセンサ誤差特性Ssが進角補正限界値SsLとして設定される。
また、上記各実施形態においては、操舵トルクセンサ13を構成する出力軸回転角センサ13cで検出した出力軸回転角θosに基づきモータ電気角を推定する構成としたが、この構成に限らない。例えば、入力軸回転角センサ13bで検出した入力軸回転角θisに基づきモータ電気角を推定するなど、ステアリングホイール11の操作に伴って回転する軸の回転角を検出するセンサであれば他のセンサで検出した回転角に基づきモータ電気角を推定してもよい。
また、上記各実施形態においては、モータ電気角の1周期を60[deg]毎の絶対角度領域に区分して、出力軸角速度ωosの符号(モータ回転方向に相当)と各線間逆起電圧値EMFの符号関係とに基づき、実際のモータ電気角θmがどの絶対角度領域に存在するのかを判定する。加えて、実際のモータ電気角θmの存在する絶対角度領域が隣り合う領域に移行したか否かを判定し、移行したと判定した場合に前後の領域の境界角度によって第2のモータ電気角θm2を補正する構成とした。この構成に限らず、例えば、モータ電気角の1周期を30[deg]毎の絶対角度領域に区分して、出力軸角速度ωosの符号と各線間逆起電圧値EMFの符号関係とに加えて、各線間逆起電圧値EMFの大小関係にも基づき実際のモータ電気角θmがどの絶対角度領域に存在するのかを判定する構成としてもよい(詳しくは上記特許文献2を参照)。この場合も、領域移行時の境界角度にて第2のモータ電気角θm2を補正する。また、モータ電気角の1周期において、各線間逆起電圧値EMFがゼロとなるときのモータ電気角も既知であることから、各線間逆起電圧値EMFのゼロクロスタイミングを判定し、判定時のゼロとなる線間逆起電圧の相に対応するモータ電気角にて第2のモータ電気角θm2を補正する構成としてもよい(詳しくは上記特許文献2を参照)。
また、上記各実施形態においては、レゾルバ23の異常のみを診断しレゾルバ23の異常時に第2のモータ回転角θm2をモータ回転角θmとして出力する構成としたが、この構成に限らない。例えば、角度演算部51の異常も診断し、レゾルバ23が正常であっても角度演算部51が異常の場合も第2のモータ回転角θm2をモータ回転角θmとして出力する構成としてもよい。
また、上記各実施形態においては、絶対角度領域が隣り合う領域に移行したタイミングでのみそのときの境界角度で第2のモータ電気角θmを補正する構成としたが、この構成に限らない。例えば、各線間逆起電圧値EMFに基づき第3のモータ電気角θm3を算出する構成とし、モータ回転速度又は所定の閾値Thvに基づき、各線間逆起電圧値EMFが符号取得の信頼性を有する値であると判定されたときは第3のモータ電気角θm3を電気角選択部24Cに出力する。一方、信頼性を有さない値である判定されたときは出力軸角速度ωosから演算した第2のモータ電気角θm2を電気角選択部24Cに出力する構成としてもよい。
以上、本願が優先権を主張する日本国特許出願P2018−092473(2018年5月11日出願)の全内容は、ここに引用例として包含される。
ここでは、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく各実施形態の改変は当業者にとって自明のことである。
1…電動パワーステアリング装置、2…車両、11…ステアリングホイール、12…ステアリングシャフト、12b…出力軸、13…操舵トルクセンサ、13c…出力軸回転角センサ、20…操舵補助機構、21…減速ギヤ、22…電動モータ、23…レゾルバ、24…モータ電気角検出回路、24A…メイン電気角検出回路、24B…バックアップ電気角検出回路、24C…電気角選択部、25…モータ制御装置、26…車速センサ、31…制御演算装置、32…モータ駆動回路、45A〜45C…電流検出回路、40…電圧検出回路、41…ゲート駆動回路、42…インバータ回路、51…角度演算部、52…レゾルバ異常診断部、53…逆起電圧角度補正値算出部、53a…出力軸角速度演算部、53b…逆起電圧演算部、53c…絶対角度領域判定部、53d…補正角度算出部、54…センサ間誤差補正部、55…推定角度演算部、55a…整合部、55b…積分部、61…進角ゲイン算出部、62…乗算部、63…モータトルク相当値算出部、64…減速ギヤ誤差特性算出部、65…進角補正限界値算出部、66…進角許可判定部、66a,66c…減算部、66b,66j…加算部、66d,66e…符号取得部、66f…一致判定部、66g…角速度切替部、66h…進角補正量過去値切替部、66i…信号遅延部

Claims (12)

  1. ステアリングの舵角を検出する舵角検出部で検出した前記舵角に基づき舵角速度を算出する舵角速度算出部と、
    前記舵角速度算出部で算出した前記舵角速度に基づきステアリングシャフトに操舵補助力を付与する電動モータのモータ電気角を推定するモータ電気角推定部と、
    前記電動モータのモータ電気角を検出するモータ電気角検出部の正常時は該モータ電気角検出部で検出した前記モータ電気角に基づき前記電動モータを駆動制御し、前記モータ電気角検出部の異常時は前記モータ電気角推定部で推定した推定モータ電気角に基づき前記電動モータを駆動制御するモータ駆動制御部と、
    前記ステアリングシャフトに伝達される操舵トルクを検出する操舵トルク検出部で検出した前記操舵トルクに基づき、前記推定モータ電気角の進角量を補正するための進角ゲインを設定する進角ゲイン設定部と、
    前記進角ゲイン設定部で設定した前記進角ゲインを前記舵角速度に乗算した乗算結果に基づき進角後舵角速度を算出する進角後舵角速度算出部と、を備え、
    前記モータ電気角推定部は、前記進角後舵角速度算出部で算出した前記進角後舵角速度を積算して、その積算値に基づき前記モータ電気角を推定し、
    前記進角ゲイン設定部は、予め設定した所定トルク値以上の操舵トルクの入力時のみに、操舵方向に対して遅れる方向の角度誤差を打ち消す方向に前記推定モータ電気角を進角するための前記進角ゲインを設定することを特徴とするモータ制御装置。
  2. 前記所定トルク値は、前記角度誤差による影響がドライバーの手感として現れるか否かの境界値に設定されている請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記電動モータは多相電動モータであり、
    前記電動モータの各線間逆起電圧に基づき前記推定モータ電気角を補正する逆起電圧角度補正部を更に備える請求項1又は2に記載のモータ制御装置。
  4. 前記角度誤差を発生する誤差要因の特性である誤差特性に基づき、前記進角後舵角速度の前記進角ゲインによる増加部分の積算量である進角補正量の限界値である進角補正限界値を算出する進角補正限界値算出部と、
    前記進角補正量が前記進角補正限界値算出部で算出した前記進角補正限界値を超えないように前記モータ電気角推定部の前記進角後舵角速度の積算処理を制御する進角補正量制御部と、を更に備える請求項3に記載のモータ制御装置。
  5. 前記進角補正量制御部は、前記進角補正量が前記進角補正限界値を超えない範囲で且つ前記進角補正限界値に近づく方向の前記進角後舵角速度の積算のみを許可し、不許可時は前記舵角速度算出部で算出した前記舵角速度をそのまま積算するように前記モータ電気角推定部の積算処理を制御する請求項4に記載のモータ制御装置。
  6. 前記電動モータは、減速ギヤを介して前記ステアリングシャフトに接続されており、
    前記進角補正限界値算出部は、前記誤差要因の1つである前記減速ギヤの誤差特性であるモータ出力トルク情報とねじれ角との関係を示す機械コンプライアンス特性と、前記誤差要因の他の1つである前記舵角検出部の誤差特性である舵角情報と検出誤差との関係を示す検出誤差特性とのうち少なくとも1つに基づき、前記進角補正限界値を算出する請求項4又は5に記載のモータ制御装置。
  7. 前記逆起電圧角度補正部は、前記電動モータの前記各線間逆起電圧の符号関係が他の符号関係に切り替わるタイミングを検出し、検出したタイミングに基づき予め設定した切り替わり前後の前記符号関係の組に対応する境界角度情報に基づき前記推定モータ電気角を補正する請求項6に記載のモータ制御装置。
  8. 前記逆起電圧角度補正部は、前記モータ電気角の1周期の角度範囲を60°毎に区分した絶対角度領域を算出すると共に、モータ回転方向情報と前記各線間逆起電圧とに基づき実際の前記モータ電気角の存在する前記絶対角度領域が隣り合う領域へと切り替わるタイミングを検出し、該タイミングを検出時に切り替わり前後の前記絶対角度領域の境界角度に基づき前記推定モータ電気角を補正する請求項7に記載のモータ制御装置。
  9. 前記逆起電圧角度補正部は、前記切り替わるタイミングを検出する毎に前記推定モータ電気角の補正タイミングを示す補正タイミング情報を前記進角補正限界値算出部及び前記進角補正量制御部に出力するようになっており、
    前記進角補正限界値算出部は、前記補正タイミング情報に基づき前記補正タイミング毎に、そのときの前記モータ出力トルク情報に対応する前記機械コンプライアンス特性による角度誤差を基準角度誤差として算出し、算出した基準角度誤差と以降の各算出タイミングにおける前記機械コンプライアンス特性による角度誤差との差分値を各算出タイミングにおける前記進角補正限界値として算出し、
    前記進角補正量制御部は、前記進角後舵角速度の前記増加部分を積算して前記進角補正量を算出し、前記補正タイミング情報に基づき、前記補正タイミング毎に前記増加部分の積算値を0にリセットする請求項7又は8に記載のモータ制御装置。
  10. 前記逆起電圧角度補正部は、前記切り替わるタイミングを検出する毎に前記推定モータ電気角の補正タイミングを示す補正タイミング情報を前記進角補正限界値算出部及び前記進角補正量制御部に出力するようになっており、
    前記進角補正限界値算出部は、前記補正タイミング情報に基づき前記補正タイミング毎に、そのときの前記モータ出力トルク情報に対応する前記機械コンプライアンス特性による第1の角度誤差を算出すると共に、前記舵角情報に基づき前記舵角検出部の前記検出誤差特性による第2の角度誤差を算出し、前記第1の角度誤差に前記第2の角度誤差を加算してこの加算結果を基準角度誤差に設定し、前記基準角度誤差と、以降の各算出タイミングにおける前記機械コンプライアンス特性による前記第1の角度誤差及び前記検出誤差特性による前記第2の角度誤差の加算値との差分値を各算出タイミングにおける前記進角補正限界値として算出し、
    前記進角補正量制御部は、前記進角後舵角速度の前記増加部分を積算して前記進角補正量を算出し、前記補正タイミング情報に基づき、前記補正タイミング毎に前記増加部分の積算値を0にリセットする請求項7又は8に記載のモータ制御装置。
  11. 前記逆起電圧角度補正部は、前記切り替わるタイミングを検出する毎に、前記推定モータ電気角の補正タイミングを示す補正タイミング情報を前記進角補正量制御部に出力するようになっており、
    前記進角補正限界値算出部は、前記舵角情報に基づき前記舵角検出部の前記検出誤差特性による角度誤差を前記進角補正限界値として算出し、
    前記進角補正量制御部は、前記進角後舵角速度の前記増加部分を積算して前記進角補正量を算出し、前記補正タイミング情報に基づき、前記補正タイミング毎に前記増加部分の積算値を0にリセットする請求項7又は8に記載のモータ制御装置。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のモータ制御装置を備えた電動パワーステアリング装置。
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