JP2017229216A - モータ制御装置 - Google Patents
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Abstract
Description
三相インバータ回路では、U相に対応した一対のスイッチング素子の直列回路と、V相に対応した一対のスイッチング素子の直列回路と、W相に対応した一対のスイッチング素子の直列回路とが、直流電源と接地との間に並列に接続されている。各直列回路において、電源側のスイッチング素子を上側スイッチング素子といい、接地側のスイッチング素子を下側スイッチング素子ということにする。
しかし、PWM周波数を高くすると、PWM信号の周期(PWM周期)が電流制御周期よりも小さくなる場合がある。PWM周期が電流制御周期よりも小さくなると、電流制御周期内に複数のPWM周期が含まれることになる。このような場合において、電流制御周期内の各PWM周期のPWMカウントに対して同じ符号のデットタイム補償値を用いてデットタイム補償を行った場合には、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、電流制御周期の途中で相電流の方向が変化した場合には、適正なデットタイム補償が行われなくなるため、モータ印加電圧が歪む。その結果、モータ電流が歪み、トルクリップルが発生し、スムーズに電動モータを回転させることができなくなるおそれがある。
請求項4に記載の発明は、ある電流制御周期に対する前記第1の二相電流推定値および前記第2の二相電流推定値は、前記二相電流指令値設定手段によって設定された当該電流制御周期に対する二相電流指令値である、請求項3に記載のモータ制御装置である。
図1は、本発明の一実施形態に係るモータ制御装置が適用された電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
電動パワーステアリング装置(EPS:electric power steering)1は、車両を操向するための操舵部材としてのステアリングホイール2と、このステアリングホイール2の回転に連動して転舵輪3を転舵する転舵機構4と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構5とを備えている。ステアリングホイール2と転舵機構4とは、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して機械的に連結されている。
トーションバー10の近傍には、トルクセンサ11が配置されている。トルクセンサ11は、入力軸8および出力軸9の相対回転変位量に基づいて、ステアリングホイール2に与えられた操舵トルクTを検出する。この実施形態では、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクTは、たとえば、右方向への操舵のためのトルクが正の値として検出され、左方向への操舵のためのトルクが負の値として検出され、その絶対値が大きいほど操舵トルクの大きさが大きくなるものとする。
操舵補助機構5は、操舵補助用の電動モータ18と、電動モータ18の出力トルクを転舵機構4に伝達するための減速機構19とを含む。電動モータ18には、電動モータ18のロータの回転角を検出するための、例えばレゾルバからなる回転角センサ23が配置されている。減速機構19は、ウォーム軸20と、このウォーム軸20と噛み合うウォームホイール21とを含むウォームギヤ機構からなる。
電動モータ18によってウォーム軸20が回転駆動されると、ウォームホイール21が回転駆動され、ステアリングシャフト6が回転する。そして、ステアリングシャフト6の回転は、中間軸7を介してピニオン軸13に伝達される。ピニオン軸13の回転は、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。すなわち、電動モータ18によってウォーム軸20を回転駆動することによって、転舵輪3が転舵されるようになっている。
ECU12は、マイクロコンピュータ31と、マイクロコンピュータ31によって制御され、電動モータ18に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)32を含んでいる。駆動回路32と電動モータ18とを接続するための電力供給線には、2つの電流センサ33,34が設けられている。これらの電流センサ33,34は、駆動回路32と電動モータ18とを接続するための3本の電力供給線のうち、2本の電力供給線に流れる相電流を検出できるように設けられている。
各相のステータ巻線101,102,103の方向にU軸、V軸およびW軸をとった三相固定座標(UVW座標系)が定義される。また、ロータ100の磁極方向にd軸(磁極軸)をとり、ロータ100の回転平面内においてd軸と直角な方向にq軸(トルク軸)をとった二相回転座標系(dq座標系。実回転座標系)が定義される。dq座標系では、q軸電流のみがロータ100のトルク発生に寄与するので、d軸電流を零とし、q軸電流を所望のトルクに応じて制御すればよい。ロータ100の回転角(電気角)θは、U軸に対するd軸の回転角である。dq座標系は、ロータ回転角θに従う実回転座標系である。このロータ回転角θを用いることによって、UVW座標系とdq座標系との間での座標変換を行うことができる。
二相・三相変換用回転角推定部52は、前回の電流制御周期Taで取得されたロータ回転角θを用いて、次式(1)に基づいて、今回の電流制御周期Taに含まれる各PWM周期Tcの開始時点でのロータ回転角θi(θ0〜θ7)を推定する。
θ1=θ0+ω・Tc
θ2=θ1+ω・Tc
…
θ6=θ5+ω・Tc
θ7=θ6+ω・Tc …(1)
アシスト電流値設定部41は、トルクセンサ11によって検出される検出操舵トルクTと、車速センサ24によって検出される車速Vとに基づいて、アシスト電流値Ia*を電流制御周期Ta毎に設定する。検出操舵トルクTに対するアシスト電流値Ia*の設定例は、図5に示されている。検出操舵トルクTは、例えば右方向への操舵のためのトルクが正の値にとられ、左方向への操舵のためのトルクが負の値にとられている。また、アシスト電流値Ia*は、電動モータ18から右方向操舵のための操舵補助力を発生させるべきときには正の値とされ、電動モータ18から左方向操舵のための操舵補助力を発生させるべきときには負の値とされる。アシスト電流値Ia*は、検出操舵トルクTの正の値に対しては正をとり、検出操舵トルクTの負の値に対しては負をとる。
PI制御部44は、電流偏差演算部43によって演算された電流偏差に対するPI演算を行なうことにより、電動モータ18に印加すべき二相電圧指令値Vdq *(d軸電圧指令値Vd *およびq軸電圧指令値Vq *)を生成する。この二相電圧指令値Vdq *は、二相・
三相変換部45に与えられる。
PWMデューティ演算部46は、電流制御周期Ta内に含まれる各PWM周期Tcに対する三相電圧指令値VUVW *に基づいて、各PWM周期Tcに対するU相のPWMカウント(PWMデューティ)、V相のPWMカウントおよびW相のPWMカウントを生成して、デットタイム補償部47に与える。
駆動回路32は、U相、V相およびW相に対応した三相インバータ回路からなる。このインバータ回路を構成するパワー素子がPWM出力部48から与えられるPWM信号によって制御されることにより、PWM周期Tc毎の三相電圧指令値VUVW *に相当する電圧が電動モータ18の各相のステータ巻線101,102,103に印加されることになる。
以下、デットタイム補償用符号設定部60の動作について、詳しく説明する。
デットタイム補償用符号設定部60は、電流推定部61と、デットタイム補償用回転角推定部(DT補償用回転角推定部)62と、デットタイム補償用二相・三相変換部(DT補償用二相・三相変換部)63と、符号決定部64とを含む。
電流推定部61は、次の電流制御周期の開始時点に対する二相電流の推定値である第1の二相電流推定値Idqsと、その電流制御周期の終了時点に対する二相電流の推定値である第2の二相電流推定値Idqeとを求める。この実施形態では、現在の電流制御周期において電流指令値設定部42によって設定された二相電流指令値Idq *が、第1の二相電流推定値Idqsおよび第2の二相電流推定値Idqeとして設定される。
具体的には、デットタイム補償用回転角推定部62は、今回の電流制御周期Taにて回転角演算部50によって演算された回転角θと回転速度演算部51によって演算された回転速度ωとを用い、次式(2)に基づいて、次の電流制御周期Taにおける第1の回転角推定値θsおよび第2の回転角推定値θeを推定する。
θe=θs+ω・Ta …(2)
デットタイム補償用二相・三相変換部63は、次の電流制御周期の開始時点での各相の相電流推定値である第1の三相電流推定値IUs,IVs,IWsを演算するとともに、その電流制御周期の終了時点での各相の相電流推定値である第2の三相電流推定値IUe,IVe,IWeを演算する。具体的には、デットタイム補償用二相・三相変換部63は、第1の二相電流推定値Idqsを、第1の回転角推定値θsを用いて二相・三相変換することにより、第1の相電流推定値IUs,IVs,IWsを演算する。また、デットタイム補償用二相・三相変換部63は、第2の二相電流推定値Idqeを、第2の回転角推定値θeを用いて二相・三相変換することにより、第2の三相電流推定値IUe,IVe,IWeを演算する。
デットタイム補償値の符号の決定方法は、UVWの各相において同様なので、U相に対するデットタイム補償値の符号の決定方法について説明する。
P1:電流制御周期内の全てのPWM周期に対するデットタイム補償値の符号が正である第1パターン。このパターンP1は、電流制御周期内においてU相電流推定値の符号が切り替わらず、かつU相電流推定値の符号が正の場合に適用されるパターンである。
P3:電流制御周期の開始時点からU相電流の方向(符号)が切替わる符号切替りタイミング(相電流が零を横切るタイミング)までの間にあるPWM周期に対するデットタイム補償値の符号が正であり、前記符号切替りタイミングから電流制御周期の終点開始までの間にあるPWM周期に対するデットタイム補償値の符号が負である第3パターン。このパターンP3は、電流制御周期内においてU相電流推定値の符号が正から負に切り替わる場合に適用されるパターンである。
この場合、Txより時間的に前側のPWM周期に対するデットタイム補償の符号は正となるため、それらのPWM周期に対するPWMカウント(PWMデューティ)は増加補正されることになる。一方、Txより時間的に後側のPWM周期に対するデットタイム補償の符号は負となるため、それらのPWM周期に対するPWMカウント(PWMデューティ)は低減補正されることになる。Txと時間的に同時のPWM周期、つまりそのPWM周期中にU相電流推定値の符号が変化しているようなPWM周期に対しては、増加補正、低減補正および補正なしのうちの何れかを行うことができる。この実施形態では、Txと時間的に同時のPWM周期に対しては、低減補正が行われる。
前記ステップS1において第1のU相電流推定値IUsと第2の三相電流推定値IUeの符号が異なると判別された場合には(ステップS1:NO)、符号決定部64は、前記式(3)に基づいて、符号切替りタイミングTxを演算する(ステップS5)。次に、符号決定部64は、第1のU相電流推定値IUsの符号が正であるか否かを判別する(ステップS6)。第1のU相電流推定値IUsの符号が正であれば(ステップS6:YES)、符号決定部64は、符号パターンを第3パターンP3に決定して、この符号パターンと符号切替りタイミングTxとをデットタイム補償部47に与える(ステップS7)。そして、符号決定部64は、今回の電流制御周期での処理を終了する。
前述の実施形態では、電流推定部61は、現在の電流制御周期において電流指令値設定部42によって設定された二相電流指令値Idq *を、第1の二相電流推定値Idqsおよび第2の二相電流推定値Idqeとして設定している。しかし、モータ電流が一次遅れ特性で電流制御される場合には、電流推定部61は、電流指令値設定部42によって設定される二相電流指令値Idq *、三相・二相変換部49によって演算される二相検出電流Idqおよび一時遅れ特性の時定数Tを用いて、第1の二相電流推定値Idqsおよび第2の二相電流推定値Idqeを演算するようにしてもよい。具体的には、電流推定部61は次式(4),(5)に基づいて、第1の二相電流推定値Idqsおよび第2の二相電流推定値Idqeを演算するようにしてもよい。
Idqe=Idq+(1−e―t2/T)(Idq *−Idq) …(5)
前記式(4),(5)において、t1は、二相検出電流Idqを検出したタイミングから次の電流制御周期の開始時点までの時間である。t2は、二相検出電流Idqを検出したタイミングから次の電流制御周期の終了時点までの時間である。この場合には、電流推定部61には、電流指令値設定部42によって設定された二相電流指令値Idq *の他、図6に破線で示すように、三相・二相変換部49によって演算される二相検出電流Idqが与えられる。
前記実施形態では、この発明を電動パワーステアリング装置のモータ制御装置に適用した場合について説明したが、この発明は、電動パワーステアリング装置以外に用いられるモータ制御装置にも適用することができる。
Claims (5)
- 電流制御周期内に複数のPWM周期が含まれており、電流制御周期内のPWM周期毎に演算される各相のPWMカウントに対してデットタイム補償が行われ、デットタイム補償後の各相のPWM周期毎のPWMカウントに基づいて電動モータが制御されるモータ制御装置であって、
各電流制御周期の開始時点での前記電動モータの回転角推定値である第1の回転角推定値およびその電流制御周期の終了時点での前記電動モータの回転角推定値である第2の回転角推定値を演算する回転角推定値演算手段と、
ある電流制御周期の開始時点に対する第1の回転角推定値と、当該開始時点での二相回転座標系の二相電流推定値である第1の二相電流推定値とに基づいて、当該電流制御周期の開始時点での三相固定座標系の各相の相電流推定値である第1の三相電流推定値を演算するとともに、当該電流制御周期の終了時点に対する第2の回転角推定値と、当該終了時点での二相回転座標系の二相電流推定値である第2の二相電流推定値とに基づいて、当該電流制御周期の終了時点での三相固定座標系の各相の相電流推定値である第2の三相電流推定値を演算する相電流推定値演算手段と、
前記第1の三相電流推定値と前記第2の三相電流推定値とに基づいて、当該電流制御周期内の各PWM周期に対する各相のデットタイム補償値の符号を決定する符号決定手段とを含む、モータ制御装置。 - 前記符号決定手段は、
三相固定座標系の相毎に前記第1の三相電流推定値と前記第2の三相電流推定値との符号が同じであるか異なっているかを判定する手段と、
前記第1の三相電流推定値と前記第2の三相電流推定値との符号が同じである相に対しては、前記第1の三相電流推定値または前記第2の三相電流推定値の符号に応じて、前記電流制御周期内の全てのPWM周期に対するデットタイム補償値の符号を決定する手段と、
前記第1の三相電流推定値と前記第2の三相電流推定値との符号が異なっている相に対しては、前記第1の三相電流推定値と前記第2の三相電流推定値とに基づいて、前記電流制御周期において相電流の方向が切替わるタイミングを推定し、このタイミングよりも時間的に前側のPWM周期については前記第1の三相電流推定値の符号に応じてデットタイム補償値の符号を決定し、前記タイミングよりも時間的に後側のPWM周期については前記第2の三相電流推定値の符号に応じてデットタイム補償値の符号を決定する手段とを含む、請求項1に記載のモータ制御装置。 - 電流制御周期毎に、二相電流指令値を設定する二相電流指令値設定手段と、
電流制御周期毎に、前記電動モータに流れる三相電流に対応した二相電流を二相電流検出値として演算する二相電流検出値演算手段と、
前記二相電流指令値設定手段によって設定される二相電流指令値と前記二相電流検出値演算手段によって演算される二相電流検出値とを用いて、二相電圧指令値を生成する二相電圧指令値生成手段と、
電流制御周期内の各PWM周期に対する前記電動モータの回転角を個別に推定する二相・三相変換用モータ回転角推定手段と、
ある電流制御周期に対して前記二相電圧指令値生成手段によって生成された二相電圧指令値を、前記二相・三相変換用モータ回転推定手段によって推定された当該電流制御周期内の各PWM周期に対する電動モータの回転角を用いて、二相・三相変換することにより、当該電流制御周期内の各PWM周期に対する三相電圧指令値を演算する三相電圧指令値演算手段と、
前記三相電圧指令値演算手段によって演算された各PWM周期に対する三相電圧指令値に基づいて、各PWM周期に対する各相のPWMカウントを演算するPWMカウント演算手段と、
前記PWMカウント演算手段によって演算された各PWM周期に対する各相のPWMカウントに対して、前記符号決定手段によって決定された符号に応じたデットタイム補償値を加算することにより、前記PWMカウントを補正するデットタイム補償手段とを含む、請求項1または2に記載のモータ制御装置。 - ある電流制御周期に対する前記第1の二相電流推定値および前記第2の二相電流推定値は、前記二相電流指令値設定手段によって設定された当該電流制御周期に対する二相電流指令値である、請求項3に記載のモータ制御装置。
- ある電流制御周期に対する前記第1の二相電流推定値および前記第2の二相電流推定値は、前記二相電流指令値設定手段によって設定された当該電流制御周期に対する二相電流指令値と、前記二相電流検出値演算手段によって演算された二相電流検出値とを用いて演算される、請求項3に記載のモータ制御装置。
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