JP6583459B2 - リチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Description
この容量低下の解決策の1つとしては、例えば、水分を低減させたオリビン系正極活物質の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、オリビン系正極活物質は、比表面積が大きいため、保管時や正極製造時に大気中の水分を吸着し易い。したがって、特許文献1に記載されている製造方法では、水分による充放電サイクルに伴う容量の低下という課題を解決することができなかった。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料は、正極活物質の表面が炭素質被膜で被覆されてなるリチウムイオン二次電池用正極材料であって、正極活物質の比表面積が4m2/g以上かつ30m2/g以下であり、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種を200ppm以上かつ4000ppm以下含有する。
ここで、正極活物質の平均一次粒子径を上記の範囲とした理由は、次の通りである。正極活物質の平均一次粒子径が20nm未満では、微細になり過ぎて結晶性を良好に保つことが難しくなる。一方、正極活物質の平均一次粒子径が450nmを超えると、正極活物質の微細化が不充分となり、その結果、非常に微細かつ結晶性の良好な正極活物質粒子が得られない。
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料の比表面積を上記の範囲に限定した理由は、次の通りである。比表面積が4m2/g未満では、炭素質電極活物質複合粒子内におけるリチウムイオンの移動または電子の移動に時間がかかり、結果として、リチウムイオン二次電池用正極材料を用いたリチウムイオン二次電池の内部抵抗が増加し、出力特性が悪化するため好ましくない。一方、比表面積が30m2/gを超えると、炭素質電極活物質複合粒子の比表面積が増加し、結果として、必要な炭素の質量が増加し、リチウムイオン二次電池用正極材料を用いたリチウムイオン二次電池の充放電容量が低減するため好ましくない。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料は、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種を上記の範囲で含むことにより、電池内部でフッ酸が生じた場合でも、フッ酸とCaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種との反応によりフッ酸を消費することができ、金属溶出量の低減が可能となるため、リチウムイオン二次電池用正極材料を用いたリチウムイオン二次電池のサイクル特性が改善する。
CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の含有量が200ppm未満では、フッ酸の消費量が十分ではないため、金属溶出量の低減が十分ではなく、リチウムイオン二次電池用正極材料を用いたリチウムイオン二次電池のサイクル特性を改善することができない。一方、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の含有量が4000ppmを超えると、過剰なCaやBaが抵抗成分となるため、リチウムイオン二次電池用正極材料を用いたリチウムイオン二次電池の容量の低下やサイクル特性の悪化を引き起こす。
炭素質被膜の厚みを上記の範囲とした理由は、次の通りである。炭素質被膜の厚みが1nm未満であると、炭素質被膜の厚みが薄すぎるために所望の抵抗値を有する膜を形成することができなくなる。その結果、導電性が低下し、正極材料としての導電性を確保することができなくなる。一方、炭素質被膜の厚みが5nmを超えると、電池活性、例えば、正極材料の単位質量あたりの電池容量が低下する。
炭素質被膜の被覆率が60%以上であれば、炭素質被膜の被覆効果が充分に得られる。
ここで、炭素質電極活物質複合粒子の一次粒子の平均一次粒子径を上記の範囲とした理由は、次の通りである。平均一次粒子径が30nm未満では、炭素質電極活物質複合粒子の比表面積が増えることで必要になる炭素の質量が増加し、充放電容量が低減する。さらに、炭素被覆が困難となり、充分な被覆率の一次粒子を得ることができず、特に低温や高速充放電において良好な質量エネルギー密度が得られない。一方、炭素質電極活物質複合粒子の一次粒子の平均一次粒子径が500nmを超えると、炭素質電極活物質複合粒子内でのリチウムイオンの移動または電子の移動に時間がかかり、よって内部抵抗が増加し、出力特性が悪化するので好ましくない。
ここで、球状が好ましい理由は、次の通りである。炭素質被膜で被覆されている、正極活物質の一次粒子と、結着剤と、溶媒とを混合して、リチウムイオン二次電池用正極材料ペーストを調製する際の溶媒量を低減させることができる。さらに、このリチウムイオン二次電池用正極材料ペーストの電極集電体への塗工も容易となる。また、形状が球状であれば、正極活物質の一次粒子の表面積が最小となり、ひいては、添加する結着剤の混合量を最小限にすることができ、得られる正極の内部抵抗を小さくすることができる。
さらに、正極活物質の一次粒子の形状を球状、特に真球状とすることで最密充填し易くなる。これにより、単位体積あたりのリチウムイオン二次電池用正極材料の充填量が多くなり、その結果、電極密度を高くすることができ、リチウムイオン二次電池の高容量化を図ることができるので、好ましい。
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料に含まれる炭素量を上記の範囲に限定した理由は、次の通りである。炭素量が0.5質量%未満では、電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が低くなり、充分な充放電レート性能を実現することが困難となる。一方、炭素量が5質量%を超えると、炭素量が多すぎて、正極活物質の一次粒子の単位質量あたりのリチウムイオン二次電池の電池容量が必要以上に低下する。
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料における炭素担持量を上記の範囲に限定した理由は、次の通りである。炭素担持量が0.4未満では、リチウムイオン二次電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が低くなり、充分な充放電レート性能を実現することが困難となる。一方、炭素担持量が2.0を超えると、炭素量が多すぎて、正極活物質の一次粒子の単位質量あたりのリチウムイオン二次電池の電池容量が必要以上に低下する。
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料の熱重量測定(TG)において評価される室温から350℃までの重量減少率を上記の範囲に限定した理由は、次の通りである。重量減少率が0.8%を超えると、リチウムイオン二次電池用正極材料の含水率が大きいため、リチウムイオン二次電池用正極材料を用いてリチウムイオン二次電池を作製した際のフッ酸の発生量が増加し、CaやBaによりフッ酸を消費することができず、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が悪化する。
測定装置としては、示唆熱天秤装置を用いる。基準物質としては、Al2O3を用いる。測定容器としては、白金パンを用いる。リチウムイオン二次電池用正極材料50mgを測定容器に収容する。示唆熱天秤装置により、測定容器内のリチウムイオン二次電池用正極材料を室温から350℃まで、昇温速度5℃/minで昇温させて、その際の重量減少率を評価する。
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料1gを電解液20mLに添加して55℃に加熱しながら1週間静置した場合に、電解液に溶出するFe、Mnの溶出量を上記の範囲に限定した理由は、次の通りである。Fe、Mnの溶出量が電解液に対して80ppmを超えると、リチウムイオン二次電池用正極材料をリチウムイオン二次電池に用いてサイクルした際に、負極上に析出する金属イオンの量が多くなり、その析出物の表面に生成するSEIの量が増加するため、リチウムイオン二次電池の容量の消費が多くなる。
正極活物質は、リチウムイオン二次電池に用いることができる正極活物質であればよく、オリビン系正極活物質であることが好ましく、Li拡散に好適な結晶構造を有するLiFexMn1−w−x−yMgyAwPO4(但し、AはCo、Ni、Zn、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種、0.00≦w≦0.02、0.05≦x≦0.35、0.00≦y≦0.10)からなることがより好ましい。
LiFexMn1−w−x−yMgyAwPO4において、wが、0.00≦w≦0.02を満たすこととした理由は、次の通りである。CoやZnは電圧1.0V〜4.3Vの範囲で電気化学的不活性な元素であり、電子伝導性およびLi拡散性、リチウムイオン(Li+)の挿入脱離反応の活性化エネルギーの改善効果が高い。しかしながら、多量の固溶により充放電容量およびエネルギー密度の低減が顕著となるため、エネルギー密度を低減し過ぎない範囲で高レート特性や低温特性等の電池特性を充分に改善可能となる比較的少ない量が固溶可能となる。
本実施形態におけるLiFexMn1−w−x−yMgyAwPO4において、Aが、Coであることが好ましく、CoとZnの混合物であることがより好ましい。AがCoの混合物である場合、上記のwは、0.00≦w≦0.02を満たすことが好ましく、0.003≦w≦0.015を満たすことがより好ましい。
ここで、放電容量を上記の範囲とした理由は、次の通りである。放電容量が130mAh/g未満では、電池の出力が不十分となり高出力用途電池に適さなくなるためである。
炭素質被膜は、原料となる有機化合物が炭化することにより得られる熱分解炭素質被膜である。炭素質被膜の原料となる炭素源は、炭素の純度が42.00%以上かつ60.00%以下の有機化合物由来であることが好ましい。
炭素の純度(%)=総炭素量(質量%)/総配合量(質量%)×100・・・(1)
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料の製造方法は、特に限定されない。例えば、LiFexMn1−w−x−yMgyAwPO4活物質の製造方法としては、Li源、Fe源、Mn源、Mg源、P源およびA源を、水を主成分とする溶媒と混合して得られた原料スラリーαを、125℃以上かつ300℃以下の範囲の温度に加熱することで、加圧下にて、LiFexMn1−w−x−yMgyAwPO4粒子を合成する工程と、炭素源を含む水溶媒中にLiFexMn1−w−x−yMgyAwPO4粒子を分散させてなる原料スラリーβを乾燥して、造粒した後、450℃以上かつ850℃以下の範囲の温度に加熱することで、LiFexMn1−w−x−yMgyAwPO4粒子(一次粒子)の表面を炭素質被膜によって被覆する工程と、炭素質被膜によって被覆されたLiFexMn1−w−x−yMgyAwPO4粒子に、Ca源およびBa源からなる群から選択される少なくとも1種を添加する工程と、を有する方法が挙げられる。
これらLi源、Fe源、Mn源、Mg源、P源およびA源は、均一に混合する点を考慮すると、Li源、Fe源、Mn源、Mg源、P源およびA源をそれぞれ、一旦、水溶液の状態とした後、混合することが好ましい。
この原料スラリーαにおけるLi源、Fe源、Mn源、Mg源、P源およびA源のモル濃度は、高純度であり、結晶性が高くかつ非常に微細なLiFexMn1−w−x−y−zMgyAwPO4粒子を得る必要があることから、0.8mol/L以上かつ3.0mol/L以下であることが好ましい。
なお、リン酸リチウム(Li3PO4)は、Li源およびP源としても用いることができる。
水性溶媒としては、Li源、Fe源、Mn源、Mg源、P源およびA源を溶解させることのできる溶媒であれば、特に制限されない。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングルコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングルコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングルコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類等が挙げられる。これらの水性溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
この125℃以上かつ300℃以下の範囲の温度に到達したときの耐圧容器内の圧力は、例えば、0.1MPa以上かつ2MPa以下となる。
この場合、水熱処理時の温度および時間を調整することにより、LiFexMn1−w−x−yMgyAwPO4粒子の粒子径を所望の大きさに制御することが可能である。
次いで、この原料スラリーβを、乾燥して、造粒した後、450℃以上かつ850℃以下の範囲の温度にて、1時間以上かつ36時間以下加熱し、LiFexMn1−w−x−yMgyAwPO4粒子(一次粒子)の表面を炭素質被膜によって被覆し、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を得る。
炭素源としては、正極活物質の表面に炭素質被膜を形成することができる有機化合物であれば特に限定されない。
有機化合物としては、水への溶解性もしくは水への分散性を有する化合物が好ましい。
例えば、サリチル酸、カテコール、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール、ヘキサヒドロキシベンゼン、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、フェニルアラニン、水分散型フェノール樹脂等、スクロース、グルコース、ラクトース等の糖類、リンゴ酸、クエン酸などのカルボン酸、アリルアルコール、プロパルギルアルコール等の不飽和一価アルコール、アスコルビン酸、ポリビニルアルコール等が挙げられ、1種類または2種類以上を混合して炭素の純度を42.00%以上として使用することができる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極は、電極集電体と、その電極集電体上に形成された正極合剤層(正極)と、を備え、正極合剤層が、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を含有するものである。
すなわち、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を用いて、電極集電体の一主面に正極合剤層が形成されてなるものである。
まず、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料と、結着剤と、導電助剤と、溶媒とを混合してなる、リチウムイオン二次電池用正極材料ペーストを調製する。
結着剤としては、水系で使用できれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、酢酸ビニル共重合体や、スチレン・ブタジエン系ラテックス、アクリル系ラテックス、アクリロニトリル・ブタジエン系ラテックス、フッ素系ラテックス、シリコン系ラテックス等の群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
導電助剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ等の繊維状炭素の群から選択される少なくとも1種が用いられる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を含むリチウムイオン二次電池用正極材料ペーストでは、集電体等の被塗布物に対して塗布し易くするために、溶媒を適宜添加してもよい。
主な溶媒は水であるが、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料の特性を失わない範囲内で、アルコール類やグリコール類、エーテル類等の水系溶媒が含有されていてもよい。
上記の範囲で溶媒が含有されることにより、電極形成性に優れ、かつ電池特性に優れた、リチウムイオン二次電池用正極材料ペーストを得ることができる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、セパレータと、電解液とを備えてなる。
負極としては、例えば、金属Li、炭素材料、Li合金、Li4Ti5O12等の負極材料を用いることができる。
また、電解液とセパレータの代わりに、固体電解質を用いてもよい。
セパレータとしては、例えば、多孔質プロピレンを用いることができる。
Li源、P源としてLi3PO4を、Fe源としてFeSO4水溶液を、Mn源としてMnSO4水溶液を、Mg源としてMgSO4水溶液を、Co源としてCoSO4水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Co:P=3:0.245:0.70:0.05:0.005:1となるように混合して、1000Lの原料スラリーを調製した。
次いで、この原料スラリーを耐圧容器に入れた。
その後、この原料スラリーを、195℃にて2.5時間、加熱反応を行った。
反応後、耐熱容器内の雰囲気が室温になるまで冷却して、ケーキ状態の反応生成物の沈殿物を得た。
この沈殿物を蒸留水で複数回、充分に水洗し、ケーキ状の正極活物質を得た。
次いで、この正極活物質5kg(固形分換算)に、炭素質被膜の原料となる有機化合物として、予め固形分20質量%に調整したポリビニルアルコール水溶液123.9g、スクロース粉末19.8gおよびフェノール樹脂溶液45.2gと、媒体粒子としての直径1mmのジルコニアボールとを用いて、ビーズミルにて2時間、分散処理を行い、均一なスラリーを調製した。
次いで、このスラリーを160℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、平均粒子径が7μmの有機物で被覆された、正極活物質の造粒体を得た。
得られた造粒体100体積%に対して5体積%となるように、長手方向の長さの平均が10mmである黒鉛焼結体を熱伝導補助物質として造粒体に添加し混合して焼成用原料を得た。
この焼成用原料2.5kgを容積が10Lの黒鉛鞘に敷き詰め、720℃の非酸化性ガス雰囲気下にて1.5時間焼成した後、40℃にて30分間保持し、焼成物を得た。
この焼成物を網目の直径が75μmの篩に通し、黒鉛焼結体を取り除いた。
その後、焼成物に、炭酸カルシウム粉末をカルシウム量が300ppmとなるように添加して、実施例1の正極材料を得た。
溶媒であるN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)に、上記のリチウムイオン二次電池用正極材料と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)とを、ペースト中の質量比で、正極材料:AB:PVdF=90:5:5となるように加えて、これらを混合し、リチウムイオン二次電池用正極材料ペーストを調製した。
次いで、このリチウムイオン二次電池用正極材料ペーストを、厚さ30μmのアルミニウム箔(電極集電体)の表面に塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥し、アルミニウム箔の表面に正極合剤層を形成した。その後、正極合剤層を、所定の密度となるように、所定の圧力にて加圧し、実施例1のリチウムイオン二次電池用正極を作製した。
次いで、このリチウムイオン二次電池用正極を、成形機を用いて直径16mmの円板状に打ち抜き、真空乾燥後、乾燥アルゴン雰囲気下、ステンレススチール(SUS)製の2016コイン型セルを用いて、実施例1のリチウムイオン二次電池を作製した。
負極としては金属リチウムを、セパレータとしては多孔質ポリプロピレン膜を、電解液としては1MのLiPF6溶液を用いた。LiPF6溶液としては、炭酸エチレンと、炭酸エチルメチルとを、体積比で1:1となるように混合したものを用いた。
水熱合成の温度を175℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の正極材料を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例2のリチウムイオン二次電池を作製した。
水熱合成の温度を155℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の正極材料を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例3のリチウムイオン二次電池を作製した。
水熱合成の温度を135℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の正極材料を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例4のリチウムイオン二次電池を作製した。
焼成物を網目の直径が75μmの篩に通し、黒鉛焼結体を取り除いた後、炭酸カルシウム粉末をカルシウム量が1000ppmとなるように添加したこと以外は、実施例2と同様にして、実施例5の正極材料を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例5のリチウムイオン二次電池を作製した。
焼成物を網目の直径が75μmの篩に通し、黒鉛焼結体を取り除いた後、炭酸カルシウム粉末をカルシウム量が2000ppmとなるように添加したこと以外は、実施例2と同様にして、実施例6の正極材料を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例6のリチウムイオン二次電池を作製した。
焼成物を網目の直径が75μmの篩に通し、黒鉛焼結体を取り除いた後、炭酸カルシウム粉末をカルシウム量が3500ppmとなるように添加したこと以外は、実施例2と同様にして、実施例7の正極材料を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例7のリチウムイオン二次電池を作製した。
活物質5kg(固形分換算)に、炭素質被膜の原料となる有機化合物として、予め固形分20質量%に調整したポリビニルアルコール水溶液247.8g、スクロース粉末38.6gおよびフェノール樹脂溶液90.4gを加えたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例8の正極材料を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例8のリチウムイオン二次電池を作製した。
活物質5kg(固形分換算)に、炭素質被膜の原料となる有機化合物として、予め固形分20質量%に調整したポリビニルアルコール水溶液371.7g、スクロース粉末59.4gおよびフェノール樹脂溶液135.6gを加えたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例9の正極材料を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例8のリチウムイオン二次電池を作製した。
焼成物を網目の直径が75μmの篩に通し、黒鉛焼結体を取り除いた後、炭酸カルシウム粉末の代わりに炭酸バリウムをバリウム量が300ppmとなるように添加したこと以外は、実施例2と同様にして、実施例10の正極材料を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例10のリチウムイオン二次電池を作製した。
Li源、P源としてLi3PO4を、Fe源としてFeSO4水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:P=3:1:1となるように混合して、1000Lの原料スラリーを調製した。
次いで、この原料スラリーを耐圧容器に入れた。
その後、この原料スラリーを、205℃にて2.5時間、加熱反応を行った。
反応後、耐熱容器内の雰囲気が室温になるまで冷却して、ケーキ状態の反応生成物の沈殿物を得た。
この沈殿物を蒸留水で複数回、充分に水洗し、ケーキ状の正極活物質を得た。
次いで、この正極活物質5kg(固形分換算)に、炭素質被膜の原料となる有機化合物として、予め固形分20質量%に調整したポリビニルアルコール水溶液92.9g、スクロース粉末19.8gおよびフェノール樹脂溶液33.9gと、媒体粒子としての直径1mmのジルコニアボールとを用いて、ビーズミルにて2時間、分散処理を行い、均一なスラリーを調製した。
次いで、このスラリーを160℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、平均粒子径が7μmの有機物で被覆された、正極活物質の造粒体を得た。
得られた造粒体100体積%に対して5体積%となるように、長手方向の長さの平均が10mmである黒鉛焼結体を熱伝導補助物質として造粒体に添加し混合して焼成用原料を得た。
この焼成用原料2.5kgを容積が10Lの黒鉛鞘に敷き詰め、820℃の非酸化性ガス雰囲気下にて1.5時間焼成した後、40℃にて30分間保持し、焼成物を得た。
この焼成物を網目の直径が75μmの篩に通し、黒鉛焼結体を取り除いた。
その後、焼成物に、炭酸カルシウム粉末をカルシウム量が300ppmとなるように添加して、実施例11の正極材料を得た。
また、実施例1と同様にして、実施例11のリチウムイオン二次電池を作製した。
焼成物を網目の直径が75μmの篩に通し、黒鉛焼結体を取り除いた後、炭酸カルシウム粉末をカルシウム量が1000ppmとなるように添加したこと以外は、実施例11と同様にして、実施例12の正極材料を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例12のリチウムイオン二次電池を作製した。
焼成物を網目の直径が75μmの篩に通し、黒鉛焼結体を取り除いた後、炭酸カルシウム粉末をカルシウム量が20ppmとなるように添加したこと以外は、実施例2と同様にして、比較例1の正極材料を作製した。
また、実施例1と同様にして、比較例1のリチウムイオン二次電池を作製した。
焼成物を網目の直径が75μmの篩に通し、黒鉛焼結体を取り除いた後、炭酸カルシウム粉末の代わりに炭酸バリウムをバリウム量が100ppmとなるように添加したこと以外は、実施例2と同様にして、比較例2の正極材料を作製した。
また、実施例1と同様にして、比較例2のリチウムイオン二次電池を作製した。
焼成物を網目の直径が75μmの篩に通し、黒鉛焼結体を取り除いた後、炭酸カルシウム粉末の代わりに炭酸バリウムをバリウム量が5000ppmとなるように添加したこと以外は、実施例2と同様にして、比較例3の正極材料を作製した。
また、実施例1と同様にして、比較例3のリチウムイオン二次電池を作製した。
水熱合成の温度を120℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例5の正極材料を作製した。
また、実施例1と同様にして、比較例5のリチウムイオン二次電池を作製した。
焼成物を網目の直径が75μmの篩に通し、黒鉛焼結体を取り除いた後、炭酸カルシウム粉末をカルシウム量が100ppmとなるように添加したこと以外は、実施例10と同様にして、比較例5の正極材料を作製した。
また、実施例1と同様にして、比較例5のリチウムイオン二次電池を作製した。
焼成物を網目の直径が75μmの篩に通し、黒鉛焼結体を取り除いた後、炭酸カルシウム粉末をカルシウム量が5000ppmとなるように添加したこと以外は、実施例10と同様にして、比較例6の正極材料を作製した。
また、実施例1と同様にして、比較例6のリチウムイオン二次電池を作製した。
(1)正極材料の添加元素含有量
正極材料の添加元素含有量(カルシウム含有量、バリウム含有量)を、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(商品名:SPS3500DD、日立ハイテク社製)で測定した。結果を表1および表2に示す。
比表面積計(商品名:BELSORP−mini、日本ベル社製)を用いて、正極材料の比表面積を、窒素(N2)吸着によるBET法により測定した。また、この測定結果に基づいて、正極材料の比表面積当たりの炭素含有量を算出した。結果を表1および表2に示す。
正極材料の熱重量測定において、室温から350℃までの重量減少率を評価した。この評価には、示唆熱天秤装置(商品名:Thermo plus EVO2、リガク社製)を用いた。結果を表1および表2に示す。
正極材料について、電解質中でのFe、Mn溶出量を次のように評価した。アルゴン雰囲気中、露点−80℃以下のグローブボックス内で正極材料を3日間以上保管した後、正極材料1gを電解液20mLに添加して55℃に加熱しながら1週間静置した。その後、正極材料と電解液を分離し、分離した電解液を50倍に希釈してFe元素、Mn元素についてICP測定を行った。この評価には、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(商品名:SPS3500DD、日立ハイテク社製)を用いた。結果を表1および表2に示す。
リチウムイオン二次電池の容量維持率を評価した。
実施例1〜実施例10および比較例1〜比較例4において、環境温度25℃にて、正極の電圧がLiの平衡電圧に対して4.3Vになるまで電流値1CAにて定電流充電を行い、4.3Vに到達した後、電流値が0.1CAになるまで定電圧充電を行った。その後、1分間休止した後、環境温度25℃、正極の電圧がLiの平衡電圧に対して2.5Vになるまで1CAの定電流放電を行った。この試験を500サイクル繰り返し、1サイクル目の放電容量に対する500サイクル目の放電容量を容量維持率とした。結果を表1および表2に示す。
実施例11〜実施例12および比較例5〜比較例6において、環境温度25℃にて、正極の電圧がLiの平衡電圧に対して4.2Vになるまで電流値1CAにて定電流充電を行い、2Vに到達した後、電流値が0.1CAになるまで定電圧充電を行った。その後、1分間休止した後、環境温度25℃、正極の電圧がLiの平衡電圧に対して2.5Vになるまで1CAの定電流放電を行った。この試験を500サイクル繰り返し、1サイクル目の放電容量に対する500サイクル目の放電容量を容量維持率とした。結果を表1および表2に示す。
一方、表2の結果から、比較例1〜比較例6のリチウムイオン二次電池は、容量維持率が69.7%〜79.6%と低いことが確認できた。
Claims (5)
- 正極活物質の表面が炭素質被膜で被覆されてなるリチウムイオン二次電池用正極材料であって、
前記正極活物質の比表面積が4m2/g以上かつ30m2/g以下であり、
前記正極活物質は、一般式LiFexMn1−w−x−yMgyAwPO4(但し、AはCo、Ni、Zn、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種、0.00≦w≦0.02、0.05≦x≦0.35、0.00≦y≦0.10)で表される物質であり、
熱重量測定において評価される室温から350℃までの重量減少率が0.8%以下であり、前記リチウムイオン二次電池用正極材料1gを、炭酸エチレンと、炭酸エチルメチルとを、体積比で1:1となるように混合した混合溶媒にLiPF6を濃度1モル/dm3となるように溶解したLiPF6溶液からなる電解液20mLに添加して55℃に加熱しながら1週間静置した場合に、前記電解液に溶出するFe、Mnの溶出量が前記電解液に対して80ppm以下であり、
CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種を200ppm以上かつ4000ppm以下含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極材料。 - 前記正極活物質は、オリビン系正極活物質であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
- 比表面積当たりの炭素含有量が0.4mg/m2以上かつ2.0mg/m2以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
- 電極集電体と、該電極集電体上に形成された正極合剤層と、を備えたリチウムイオン二次電池用正極であって、
前記正極合剤層は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料を含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極。 - 請求項4に記載のリチウムイオン二次電池用正極を備えたことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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