JP6583433B2 - クロマトグラムデータ処理方法及び装置 - Google Patents

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Description

本発明は、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器等のマルチチャンネル型検出器や質量分析計を検出器として用いた液体クロマトグラフ(LC)やガスクロマトグラフ(GC)により収集された、時間、信号強度のほかに、波長や質量電荷比などの別のパラメータを有する3次元クロマトグラムデータを処理するクロマトグラムデータ処理方法及び装置に関し、さらに詳しくは、クロマトグラムのベースラインを推定したりクロマトグラムからベースラインを除去したピーククロマトグラムを取得したりするためのクロマトグラムデータ処理方法及び装置に関する。
PDA検出器等のマルチチャンネル型検出器を用いたLCでは、移動相への試料の注入時点を基点とし、カラム出口から溶出する試料液に対して所定波長範囲に亘る吸光スペクトルを繰り返し取得することで、時間、波長、及び吸光度(信号強度)という三つのディメンジョンを持つ3次元クロマトグラムデータを得ることができる。また、液体クロマトグラフ質量分析計(LC−MS)やガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)では、質量分析計において所定の質量電荷比範囲に亘るスキャン測定を繰り返すことで、時間、質量電荷比、及び信号強度(イオン強度)という三つのディメンジョンを持つ3次元クロマトグラムデータを得ることができる。
図2(a)は上記LCにより得られる3次元クロマトグラムデータの概念図である。こうした3次元クロマトグラムデータから特定の波長(例えば波長λ0)における時間方向の吸光度データを抽出することで、図2(b)に示すような、その波長λ0におけるクロマトグラム(以下「波長クロマトグラム」という)を作成することができる。また、3次元クロマトグラムデータから特定の測定時刻(例えば時刻tp)における波長方向の吸光度データを抽出することで、該時刻tpにおける吸光スペクトルを作成することができる。
こうしたクロマトグラムデータに基づいて試料に含まれる既知の化合物の定量を行う場合、通常、その目的化合物による光の吸収が最も大きく現れる吸収波長における波長クロマトグラムを作成する。そして、その波長クロマトグラム上で目的化合物由来のピークを見つけて該ピークの面積値を計算し、その面積値を予め求めておいた検量線に照らして定量値を算出する。そのため、正確な定量を行うには、クロマトグラム上で目的化合物に対応するピークの面積値を精度良く求めることが重要である。
しかしながら、一般に、波長クロマトグラムには移動相などに由来するベースラインが存在している。また、目的化合物由来のピークに別の化合物由来のピークが重なっている場合もある。そのため、目的化合物に対応するピーク面積値を正確に求めるには、移動相などに由来するベースラインを正確に推定して該ベースラインの影響を除いた真のピーク領域を見つけることが必要である。
LCシステムに用いられる一般的なデータ処理装置には、測定によって得られたクロマトグラム波形に基づいてベースラインを自動的に推定するピーク波形処理機能が備えられている。しかしながら、クロマトグラム波形の形状によっては、自動的な波形処理では適切なベースラインを推定できないことも多い。そのため、非特許文献1に開示されているように、従来のデータ処理装置では、波形処理のパラメータや適用する波形処理のアルゴリズムをユーザが手動で適宜変更したり設定したりすることによって、より適切なベースラインを推定することができるようになっている。
図8は、非特許文献1に記載の波形処理に基づいて、クロマトグラム波形から推定されたベースライン及びピークPの面積値計算対象領域(図中に斜線で示した領域)の一例を示す図である。図8において、(a)は負ピークを除去した後に信号ゼロレベルをベースラインとしてピークを垂直分割した例、(b)は各ピークのボトム間を直線で繋いでベースラインとした例、(c)は各ピークのボトム間を曲線で繋いでベースラインとした例である。これら例から、ベースラインの引き方によってピーク面積値が大きく相違することが分かる。
このように、例えば或るアルゴリズムの波形処理を実行することで引かれたベースラインが適切でないとユーザが判断した場合に、別のアルゴリズムの波形処理を選択することによって、より適切なベースラインを求め、ピーク面積値の精度を向上させることが可能である。しかしながら、その場合、隣接するピークのボトムを直線で繋ぐのか曲線で繋ぐのか、或いは、ピークの裾が長く延びているように見える場合にどの部分までを目的化合物由来のピークの裾であるとみなすかといった判断を、ユーザ(例えば分析を担うオペレータ)自身が行わなければならない。そうした判断を的確に行うには、ピーク波形処理についての或る程度の経験や熟練がオペレータに必要である。また、担当するオペレータによって判断が異なる可能性があり、その結果、元のクロマトグラムは同じでもベースラインを除去したピーククロマトグラム波形の形状やピーク面積値にばらつきが生じるおそれがある。
また、各波長における波長クロマトグラムに存在するベースラインは、吸光スペクトルの波形形状に影響を及ぼす。そのため、吸光スペクトルに現れるピークの位置(つまり吸収波長)に基づいて化合物を同定する場合、互いに異なる波長における波長クロマトグラム毎に適切にベースラインを推定する必要がある。しかしながら、1回の測定によって得られる波長クロマトグラムの数は膨大であるため、それら一つ一つについて手動でパラメータ等を設定しながらベースライン推定処理を実行するのは実際上不可能である。
「ピーク波形処理を確認しましょう」、[online]、株式会社島津製作所、[2015年11月13日検索]、インターネット<URL:http://www.an.shimadzu.co.jp/hplc/support/lib/lctalk/23/23lab.htm>
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、上述したような3次元クロマトグラムデータに基づいて、ユーザによる面倒な判断を伴うパラメータの入力や設定を要することなく、クロマトグラム波形に対する適切なベースラインを推定することができるクロマトグラムデータ処理方法及び装置を提供することである。
また本発明の他の目的は、波長毎に得られる波長クロマトグラムや質量電荷比毎に得られるマスクロマトグラム(抽出イオンクロマトグラム)それぞれにおいて適切なベースラインを自動的に推定することができるクロマトグラムデータ処理方法及び装置を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係るクロマトグラムデータ処理方法は、測定対象である試料に対して収集された、時間軸、信号強度軸、及び第3のパラメータ軸を有する3次元クロマトグラムデータを処理するクロマトグラムデータ処理方法において、
a)処理対象である3次元クロマトグラムデータに基づいて作成されるクロマトグラム上で検出されるピークに対応する、第3のパラメータ値と信号強度値との関係を示すスペクトルを取得するピークスペクトル取得ステップと、
b)前記3次元クロマトグラムデータに基づく各測定時点におけるスペクトルをそれぞれベクトルで表現した多次元ベクトルを、前記ピークスペクトル取得ステップにおいて得られたスペクトルをベクトルで表現したベクトルに直交する方向に射影し、それにより得られた射影ベクトルの大きさを時系列信号として求め、該時系列信号に基づいてクロマトグラムにおけるベースラインを示すベースラインクロマトグラムの波形形状を推定するベースラインクロマトグラム波形推定ステップと、
を有することを特徴としている。
また本発明に係るクロマトグラムデータ処理装置は、上記本発明に係るクロマトグラムデータ処理方法を実施する装置であって、測定対象である試料に対して収集された、時間軸、信号強度軸、及び第3のパラメータ軸を有する3次元クロマトグラムデータを処理するクロマトグラムデータ処理装置において、
a)処理対象である3次元クロマトグラムデータに基づいて作成されるクロマトグラム上で検出される各ピークに対応する、第3のパラメータ値と信号強度値との関係を示すスペクトルをそれぞれ取得するピークスペクトル取得部と、
b)前記3次元クロマトグラムデータに基づく各測定時点におけるスペクトルをそれぞれベクトルで表現した多次元ベクトルを、前記ピークスペクトル取得部により得られたスペクトルをベクトルで表現したベクトルに直交する方向に射影し、それにより得られた射影ベクトルの大きさを時系列信号として求め、該時系列信号に基づいてクロマトグラムにおけるベースラインを示すベースラインクロマトグラムの波形形状を推定するベースラインクロマトグラム波形推定部と、
を備えることを特徴としている。
クロマトグラフのカラムにより時間方向に分離された各種化合物を含む試料に対し、PDA検出器などのマルチチャンネル型検出器により吸光スペクトルや蛍光スペクトルなどを繰り返し取得することで3次元クロマトグラムデータを収集する場合には、上記「第3のパラメータ軸」とは波長軸である。
またクロマトグラフのカラムにより時間方向に分離された各種化合物を含む試料に対し、質量分析計によりマススペクトルを繰り返し取得することで3次元クロマトグラムデータを収集する場合には、上記「第3のパラメータ軸」とは質量電荷比m/z軸である。
さらにまた、包括的2次元GC、包括的2次元LC等の包括的2次元クロマトグラフによって3次元クロマトグラムデータを収集する場合には、上記「第3のパラメータ軸」とは時間(保持時間)である。この場合、三つの軸のうち二つが時間軸であり、その一方の時間軸は時間刻みが大きく、他方の時間軸は細かい時間刻みを表す。
また、ここでいう「3次元クロマトグラムデータ」は、クロマトグラフのカラムを経ることで成分分離された試料の代わりに、フローインジェクション分析(FIA=Flow Injection Analysis)法によって、成分分離されることなくPDA検出器などのマルチチャンネル型検出器や質量分析計に導入された試料に対して得られたデータであってもよい。
本発明に係るクロマトグラムデータ処理方法及び装置においては、第3のパラメータ値と信号強度値との関係を示すスペクトル、例えば吸光スペクトルやマススペクトルを、ベクトルで表現した多次元ベクトルとして扱う。例えば吸光スペクトルであれば、離散的な各波長の吸光度の集合が吸光スペクトルであるから、吸光スペクトルを(a(λ1),a(λ2),a(λ3),……,a(λn))として表し、a(λm)を成分とする多次元ベクトルを定義することができる。ここで、a(λm)は波長m(λ=1〜n)での吸光度である。また、クロマトグラムも同様に多次元ベクトルとして扱うことができる。
処理対象である上記3次元クロマトグラムデータは、時間軸と信号強度軸の二軸を含む平面上にプロットされる、化合物毎のクロマトグラムをベクトルで表現したものと、第3のパラメータ軸(例えば波長軸や質量電荷比軸)と信号強度軸の二軸を含む平面上にプロットされる、測定時点毎のスペクトルをベクトルで表現したものと、の直積を加算したものとしてモデル化することができる。いま、試料に含まれる化合物が二つであるとすると、該試料に対して得られる3次元クロマトグラムデータDは次式でモデル化できる。
D=C1・S1 T+C2・S2 T
ここで、C1及びC2はそれぞれ1番目及び2番目の化合物に対するクロマトグラム信号のベクトル表現、S1、S2はそれぞれ第1及び第2の測定時点における波長スペクトル信号のベクトル表現である。
1番目の化合物の波長スペクトルS1が既知であれば、この波長スペクトルS1に直交するベクトルR1を求めることができ、該ベクトルR1を上記式で表される3次元クロマトグラムデータDに乗じると、上記式中の右辺の1番目の化合物に関する項は消え、2番目の化合物のクロマトグラム信号C2に定数(波長スペクトルS2のベクトルとベクトルR1との内積)を乗じたα・C2が得られる。このα・C2は2番目の化合物のクロマトグラム信号C2の波形形状を示すベクトルである。これは試料に含まれる化合物の数が3以上であっても同様である。即ち、試料に含まれる化合物が2以上である場合に、そのうちの一つの化合物の波長スペクトルが未知であって他の全ての化合物の波長スペクトルが既知でありさえすれば、一つの未知の化合物のクロマトグラム信号の波形形状を求めることが可能であるということができる。
そして、このことは、ベースラインが一つの未知化合物のクロマトグラムであるとみなせば、クロマトグラム上に現れる全てのピーク(全ての化合物に対応するピーク)に対する波長スペクトルが既知であるときに、未知であるベースラインの波形形状が求まることを意味している。本発明に係るクロマトグラムデータ処理方法及び装置では、こうした原理の下にベースラインの波形形状を推定する。
即ち、本発明に係るクロマトグラムデータ処理方法では、ピークスペクトル取得ステップにおいて、処理対象である3次元クロマトグラムデータに基づいて作成されるクロマトグラム上でピークを検出し、検出されたピークそれぞれに対応するスペクトルを取得する。一つのピーク当たりつまりは一つの化合物当たり、一つのスペクトルが得られればよい。これにより、未知であるベースライン以外の全ての化合物のスペクトルが既知となる。そして、引き続き実施されるベースラインクロマトグラム波形推定ステップでは、3次元クロマトグラムデータに基づく各測定時点におけるスペクトルのベクトルそれぞれについて、上述したようにピークに対応して得られたスペクトルのベクトルに直交する方向に射影し、射影ベクトルの大きさを測定時点毎の信号値、つまり時系列信号として求める。これにより、上記α・C2に相当する信号、つまりはベースラインの波形形状を表す信号が求まる。
なお、クロマトグラム上で検出されたピークが複数であって、該ピークに対応するスペクトルも複数である場合には、例えば、そのスペクトルに対応するベクトル毎にそれに直交する方向の射影ベクトルの大きさに基づく時系列信号を求め、その複数の時系列信号を測定時点毎に加算して一つの時系列信号を求めればよい。ただし、こうした加算を行う際には各信号の大きさの基準が揃っている必要があるので、例えば各ピークに対応するスペクトルの信号強度を規格化したうえでベースラインクロマトグラム波形推定ステップの処理を実施することが望ましい。
ベースラインの強度値そのものは不明であっても上述したようにベースラインの波形形状を推定できれば、その推定結果に基づいて、例えば従来の様々なベースライン推定方法で以て推定された複数のベースライン候補のうちのいずれがより適切であるのかを判断することが可能となる。
また本発明に係るクロマトグラムデータ処理方法の好ましい第1の態様は、
前記3次元クロマトグラムデータに基づいて作成される第3のパラメータ値毎のクロマトグラムの一部分に対し又はその一部分毎に、前記ベースラインクロマトグラム波形推定ステップにおいて得られたベースラインクロマトグラム波形のフィッティングを行うことにより、第3のパラメータ値毎のベースラインの信号強度値を求め、それに基づきベースラインにおける第3のパラメータ値と信号強度値との関係を示すベースラインスペクトルを推定するベースラインスペクトル推定ステップをさらに有することを特徴としている。
上記第1の態様によってベースラインスペクトルが求まれば第3のパラメータ値毎の定数αが得られるから、第3のパラメータ値毎のクロマトグラムにおけるベースラインを求めることができる。それによって、第3のパラメータ値、例えば波長毎や質量電荷比毎にベースラインを除去したピークのみのピーククロマトグラムの作成も可能となる。
また本発明に係るクロマトグラムデータ処理方法において、好ましくは、
前記ピークスペクトル取得ステップでは、時間的な変化が緩慢である信号波形の入力に対してゼロを出力する一方、時間的な変化が急である信号波形の入力に対しては非ゼロを出力するフィルタを用いることにより、クロマトグラム上でピークが存在する時間範囲を推定し、該時間範囲内でピークに対応するスペクトルを取得するものとするとよい。
ここで、上記フィルタは例えばサビツキー-ゴーレイフィルタなどを用いることができる。
一般に、ベースラインにおける信号の時間的変動はピーク信号の時間的変動に比べてかなり緩慢である。そのため、上述した特性のフィルタを用いることによって、かなり的確に且つ迅速に化合物由来のピークを検出することができる。もちろん、こうしたフィルタを用いた方法と他のピーク検出方法とを併用しても構わない。
なお、上記フィルタは、与えられたクロマトグラムにおいてベースラインのみが存在する又はベースラインのみが存在すると推定される時間範囲の信号に対する出力と、ピークが存在する又はピークが存在すると推定される時間範囲の信号に対する出力との比が最大になるように決められたフィルタパラメータを有するものとすればよい。
本発明に係るクロマトグラムデータ処理方法及び装置によれば、例えば、検出器としてPDA検出器等のマルチチャンネル型検出器や質量分析計を用いたクロマトグラフにより収集された3次元クロマトグラムデータに基づいて作成されるクロマトグラムに重畳しているベースラインの波形形状を、ユーザによる面倒な判断を伴うパラメータの入力や設定を要することなく、高い精度で推定することができる。それにより、ベースラインの波形形状の推定結果に基づいて、例えば従来の様々なベースライン推定方法で以て推定された複数のベースライン候補のうちのいずれがより適切であるのかを的確に判断し、精度の高いベースライン補正を行うことができる。
また本発明に係るクロマトグラムデータ処理方法の第1の態様によれば、波長毎、質量電荷比毎などのクロマトグラムにおけるベースラインを推定することができる。それによって、波長毎や質量電荷比毎にベースラインを精度良く除去したピークのみのピーククロマトグラムを作成することができ、例えば各化合物に対応するピークの正確な面積値に基づいて高精度の定量を行うことができる。
本発明に係るクロマトグラムデータ処理方法を実施するデータ処理装置を備えたLC装置の一実施例の概略構成図。 LC分析によって得られる3次元クロマトグラムデータの概念図(a)及び波長クロマトグラムの一例を示す図(b)。 本実施例のLC装置におけるピーク波形処理全体の概略フローチャート。 本実施例のLC装置におけるスペクトル集合{Sn}を取得するための具体的な手順を示すフローチャート。 本実施例のLC装置におけるピークスペクトルに基づくベースラインクロマトグラム波形推定処理のフローチャート。 ベースライン波形とピーク波形との分離結果の一例を示すクロマトグラム。 ベースライン波形とピーク波形との分離結果の一例を示す波長スペクトル。 従来のピーク波形処理方法による、クロマトグラム波形に対して推定したベースライン及びピークPの面積値計算対象領域の一例を示す図。
以下、本発明に係るクロマトグラムデータ処理方法及び装置の一実施例について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係るクロマトグラムデータ処理方法を実施するデータ処理装置を備えたLC装置の一実施例の概略構成図である。
本実施例のLC装置は、LC部1、データ処理部2、入力部3、及び表示部4を備える。LC部1において、送液ポンプ12は移動相容器11から移動相を吸引して一定流量でインジェクタ13へと送給する。インジェクタ13は所定のタイミングで試料液を移動相中に注入する。注入された試料液は移動相に押されてカラム14に導入され、カラム14を通過する間に該試料液中の各化合物が時間方向に分離されて溶出する。カラム14出口に接続されたPDA検出器15は、時間が経過するに伴い順次導入される溶出液に対し所定の波長範囲に亘る吸光度分布(吸光スペクトル)を繰り返し測定する。この測定によって得られた信号はアナログデジタル変換器(ADC)16においてデジタルデータに変換され、3次元クロマトグラムデータとしてデータ処理部2へと入力される。
上記データを受けるデータ処理部2は、3次元クロマトグラムデータを格納するクロマトグラムデータ記憶部21、3次元クロマトグラムデータに基づいてクロマトグラムのベースラインを推定するベースライン推定部22、推定されたベースラインを用いてベースラインが除去されたピーククロマトグラムを求めるピーククロマトグラム算出部23、求まったピーククロマトグラムに基づいて定性処理を行い化合物を同定する定性処理部24、ピーククロマトグラムに基づいて定量計算を行う定量処理部25、などの機能ブロックを備える。データ処理部2に接続された入力部3は、例えばデータ処理に必要な各種のパラメータなどをユーザが入力するためものであり、表示部4はクロマトグラムなどのグラフや定性・定量結果などをユーザに提示するためのものである。
なお、通常、データ処理部2の実体はパーソナルコンピュータやより高機能なワークステーションであり、それらコンピュータに予めインストールされた専用のデータ処理ソフトウエアを該コンピュータ上で動作させることによって、上記各機能ブロックは具現化される構成とすることができる。
本実施例のLC分析装置では、一つの試料に対しLC部1においてLC分析が実行されることで、試料注入時点つまり測定開始時点から測定終了時点までの時間範囲における図2(a)に示したような3次元クロマトグラムデータが収集され、これが一つのデータファイルとしてクロマトグラムデータ記憶部21に格納される。ユーザ(以下、オペレータという)が入力部3において処理対象のデータファイルを指定したうえでピーク波形処理の実行開始を指示すると、ベースライン推定部22及びピーククロマトグラム算出部23は次に説明するような特徴的なデータ処理を実行する。
図3はピーク波形処理全体の概略フローチャートである。
ここでは、吸光スペクトルやクロマトグラムをベクトルで表現した多次元ベクトルとして扱う。例えば吸光スペクトルであれば、離散的な各波長の吸光度の集合が吸光スペクトルであるから、吸光スペクトルを(a(λ1),a(λ2),a(λ3),……,a(λn))として表し、a(λm)を成分とする多次元ベクトルを定義することができる。ここで、a(λm)は波長m(λ=1〜n)での吸光度である。
処理対象である、波長、時間、信号強度という三つのディメンジョンを有する3次元クロマトグラムデータDは、試料中の化合物毎の時間と信号強度値との関係を示すクロマトグラム信号をベクトルで表現したものと、測定時刻毎の波長と信号強度値との関係を示す波長スペクトル(吸光スペクトル)信号をベクトルで表現したものと、の直積を加算したものとしてモデル化することができる。即ち、3次元クロマトグラムデータDは次の(1)式でモデル化することができる。
D=C1・S1 T+C2・S2 T+ … +Cm・Sn T …(1)
1〜Cmは1番目からm番目までの化合物に対するクロマトグラム信号のベクトル表現、S1〜Snは1番目からn番目までの各測定時刻(測定時点)における波長スペクトル信号のベクトル表現を表す。
ここで、ベースラインを推定する前提条件として次の三つを定める。なお、これら条件はLC分析等において妥当なものである。
[条件A]処理対象であるクロマトグラムデータの少なくとも一方の端部(つまりは全測定時間範囲の始点又は終点)では、ベースラインが主たる信号成分であってそれ以外に有意な信号成分はない、つまり化合物由来の信号成分はない。
[条件B]ベースラインの変動は化合物由来のピークの信号変動に比べて十分に緩慢である、つまり時間的な変化が小さい。
[条件C]ベースラインの波長スペクトルはいずれの化合物の波長スペクトルとも相違する。
上記三つの条件の下で、ベースライン推定部22及びピーククロマトグラム算出部23は、次のような手順でベースラインを推定し該ベースラインを除去したピーククロマトグラムを算出する。
まず、ベースライン推定部22は、LC分析によって得られた3次元クロマトグラムデータ(以下「観測データ」という)をクロマトグラムデータ記憶部21から読み出し(ステップS1)、該観測データから求まる波長スペクトルに基づいて、クロマトグラムにおけるベースラインの時間的変化を示すベースラインクロマトグラムの波形形状を推定する(ステップS2)。なお、ここで判明するのはあくまでも波形の形状であり、波長毎の強度値自体は不明である。
次に、ピーククロマトグラム算出部23は、ステップS2において推定されたベースラインクロマトグラム波形に基づいて、波長毎のベースラインクロマトグラムの強度値、つまりはベースラインの波長スペクトル(以下「ベースラインスペクトル」という)を推定する(ステップS3)。そして、ベースラインクロマトグラムのベクトルとベースラインスペクトルのベクトルとの直積によって波長毎のクロマトグラムにおけるベースライン信号を求め(ステップS4)、波長毎に観測データからベースライン信号を差し引くことによってベースラインが除去されたピーク波形のみのピーククロマトグラムを算出する(ステップS5)。
上記ステップS2〜S5の各処理を詳しく説明する。ここでは、説明を簡略化するために、試料中に第1、第2なる二つの化合物のみが含まれるケースについて考える。この場合、観測データDは(2)式で表される。
D=C1・S1 T+C2・S2 T …(2)
いま仮に第1化合物の波長スペクトルS1が既知であるとすると、この波長スペクトルS1のベクトルに直交するベクトルR1を求めることができる。このベクトルR1を観測データDに乗じると、次の(3)式のように第2化合物のクロマトグラム信号C2のベクトルに定数(波長スペクトルS2のベクトルとベクトルR1との内積)を乗じたα・C2が得られる。
D・R1=C1・S1 T・R1+C2・S2 T・R1=0+C2・(S2 T・R1)=α・C2 …(3)
このα・C2は第2化合物のクロマトグラム信号C2の波形形状を示している。
試料に含まれる化合物の数が3以上であっても、そのうちの一つの化合物の波長スペクトルが未知であって他の全ての化合物の波長スペクトルが既知でありさえすれば同じことがいえる。そして、このことは、ベースラインが一つの未知化合物のクロマトグラムであるとみなせば、クロマトグラム上に現れる全てのピーク(全ての化合物に対応するピーク)に対する波長スペクトルが既知であれば、未知であるベースラインの形状が求まることを意味している。ここでは、こうした原理の下にベースラインを推定している。
図5は、上記ステップS2におけるベースラインクロマトグラム波形推定処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
ベースライン推定部22は、観測データに基づいて作成されるクロマトグラムに対しピーク検出を行い、全てのピークを抽出する。そして、クロマトグラム上の各ピークのピークトップの測定時点における波長スペクトルを観測データから抽出し、それを集めたスペクトル集合{Sn}を取得する(ステップS10)。
このとき、ベースラインの波長スペクトルの影響を除去した各化合物に対応するピークを検出するために、上記条件Bを利用する。即ち、ベースラインの時間的な変動は緩慢であるのでベースラインは局所的には多項式で以て十分に近似することができる。一方、クロマトグラムに現れる化合物由来のピークの信号変動はベースラインの変動に比べて十分に急であるため、該ピークが存在する場合には多項式近似しようとしたときに系統的な近似誤差が生じる。この系統的な近似誤差はピークが存在する複数の波長において同じように発生するから、系統誤差を抽出したデータはベースラインの影響のない純粋なクロマトグラムピークに対応する波長スペクトルとなる。
そこで、ここではピークを検出するために、ベースラインクロマトグラムに存在するような緩慢な変化や直線的又は指数関数的などの単純な変化しか有さない信号に対してはゼロを出力し、ピーク信号に対しては非ゼロである系統誤差を出力するフィルタを利用する。ただし、ピークが存在する波長では、いずれの波長でも同じように系統誤差が生じる必要がある。即ち、クロマトグラムにおけるベースラインとピーク高さとの比率に依存することなく、そのピークの高さにピーククロマトグラムの形状に応じた一定数が乗じられた値が得られる必要がある。その意味でこのフィルタは線形のフィルタであるといえる。こうしたフィルタとしては、例えばサビツキー-ゴーレイ(Savitzky-Golay)フィルタなどを用いることができる。
図4は、上記ステップS10におけるスペクトル集合{Sn}を取得するための具体的な手順の一例を示すフローチャートである。
まず、上記条件Aに基づき、測定時間範囲の端部における波長スペクトルを仮のベースラインスペクトルとして定める(ステップS20)。「端部」には測定時間範囲の始点(測定開始時点)と終点(測定終了時点)の二つがあり、いずれか一方の端部における波長スペクトルを用いてもよいが、ベースライン推定の精度を上げるには、始点の波長スペクトルを選択したときと終点の波長スペクトルを選択したときとでそれぞれ以降の処理を実施し、それぞれ推定されたベースラインの平均を採るなどすることが好ましい。
次に、波長毎にクロマトグラム信号に対してサビツキー-ゴーレイフィルタを用いて2次関数近似を行い、その残渣(系統誤差)信号を求める(ステップS21)。そして、波長毎に残渣信号が存在するつまりはフィルタ出力が非ゼロである時間範囲を切り出し、その時間範囲における波長スペクトルを求める(ステップS22)。これにより、クロマトグラム上の全てのピークに対応する波長スペクトルが得られる。ただし、得られた波長スペクトルのうち、仮のベースラインスペクトルとほぼ同一であるものがある場合にはそれを廃棄する(ステップS23)。何故なら、そうしたスペクトルは演算エラーとなる可能性があるためである。
以上のようにして最終的に得られた波長スペクトルを集めることでスペクトル集合{Sn}を作成する(ステップS24)。
図5に戻り説明を続ける。ステップS10においてスペクトル集合{Sn}が得られたならば、該集合{Sn}に含まれる各波長スペクトルについてL2ノルムを1にするように正規化する(ステップS11)。そして正規化後のスペクトル集合{Sn’}の中から、ベースラインスペクトルのベクトルに対して直交な成分(直交方向のベクトルの大きさ)が最も大きい波長スペクトルSmaxを選択し(ステップS12)、その直交成分が予め決めた所定値よりも小さいか否かを判定する(ステップS13)。最大の直交成分の値が所定値よりも小さい場合には、分離すべきピークがないと判断してステップS13からS17へと進む。
一方、最大の直交成分の値が所定値以上であればステップS13からS14へと進み、選択された波長スペクトルSmaxのベクトルに直交するように、観測データに基づく各測定時点の波長スペクトルのベクトルをそれぞれ射影する(ステップS14)。具体的には、或る測定時点における波長スペクトルのベクトルをAとしたとき、これをA−(A・Smax)・Smaxに更新する。さらに、スペクトル集合{Sn’}に含まれる全ての波長スペクトルのベクトルについても上記波長スペクトルSmaxのベクトルに直交するように射影する(ステップS15)。これにより、選択された波長スペクトルSmaxのベクトルの大きさはゼロになるからスペクトル集合{Sn’}から除去される。そのあと、スペクトル集合{Sn’}に波長スペクトルが残っているか否かを判定し(ステップS16)、残っていればステップS16からS12に戻り、ステップS12〜S16の処理を繰り返す。
ステップS16でNoと判定された場合又はステップS12でNoと判定された場合には、直交成分のみが残った観測データに様々な係数が乗じられたクロマトグラム信号C2が存在する。即ち、αの値が様々であるα・C2が存在する。このとき、この定数αが負極性である場合もある。そこで、求まったクロマトグラム信号α・C2の定数αを正極性に揃えたうえで該クロマトグラム信号の信号値を測定時点毎に全て加算することにより、ベースラインクロマトグラム波形を表す信号を算出する(ステップS17)。こうしてベースラインクロマトグラム波形が推定される。
次に、上記ステップS3におけるベースラインスペクトル推定の手順を説明する。
上記条件Aによれば、測定時間範囲の端部における信号はベースライン信号のみであるので、その高さつまりは信号レベルに合うように上記推定したベースラインクロマトグラム波形をフィッティングすればよい。ただし、例えばノイズ等の影響によって、必ずしも測定時間範囲の端部における信号をフィッティングの基準として用いるのが適切でない場合がある。そこで、測定時間範囲全体を経験的に定めた適宜の区分数で以て分割して複数の部分時間範囲を求め、部分時間範囲毎に上述したようなフィッティングを試みる、そして、フィッティング状況が最も良好である部分時間範囲が、ベースライン成分のみが存在する時間範囲であるとみなすとよい。
ここで、フィッティング状況の良否の判断は次のような手順で行えばよい。
まず、波長毎且つ部分時間範囲毎に、観測データに基づくクロマトグラムに対しベースラインのフィッティングを行い残渣信号を算出する。その残渣信号のL1ノルムを、フィッティングにおける誤差の度合いを示すスコア値とする。即ち、フィッティングが良好であるほど、スコア値は小さくなる。
ただし、ベースラインが徐々に大きくなるとき、それに伴ってクロマトグラムの推定誤差も大きくなる傾向にある。そこで、この影響を補正するために、好ましくは、部分時間範囲内における入力信号のピークピーク(Peak-to-peak)値を求め、この値の平方根で以てスコア値を除するとよい。また、スコア値が近いつまりはスコア値差が所定範囲以内である部分時間範囲が複数ある場合には、ベースラインのみであると推定した測定時間範囲の端部により近い部分時間範囲を優先的に扱うように、該端部に近い部分時間範囲では1倍、端部から離れた部分時間範囲では最大6倍の重みをスコア値に乗じるようにするとよい。そして、部分時間範囲毎に各波長について得られたスコア値を合算し、その部分時間範囲に対する最終的なスコア値を算出する。この合算に際して、例えば経験的な知識や装置のSN比の測定結果などに基づく重み付けを行うようにしてもよい。
こうして部分時間範囲毎のスコア値がそれぞれ求まったならば、その中で最小のスコア値を与える部分時間範囲をベースライン区間として選択する。そして、そのベースライン区間におけるベースラインに合わせて、ベースラインの波長毎の強度つまりベースラインスペクトルを決定する。
なお、残渣信号の評価基準はL1ノルムに限るものでなく、L2ノルムや最大-最小値などを用いてもよい。また、部分時間範囲毎に区切ってフィッティングを試みる以外に、移動窓や重み付き移動窓を用い、窓毎にフィッティングを試みるようにしてもよい。
上述のようにしてベースラインクロマトグラム波形及びベースラインスペクトルが求まる。すでに説明したように、これらの直積が、推定される波長毎のベースライン信号となる。そして、観測データに基づいて得られる波長毎のクロマトグラムから、その波長におけるベースラインを差し引くことで、ベースラインを補正した、つまりはベースラインの影響を除去したピーククロマトグラムを求めることができる。
図6は本実施例のクロマトグラムデータ処理方法を用いたときの、ベースライン信号とピーク信号との分離結果の一例を示すクロマトグラム、図7は同じ分離結果の一例を示すスペクトルである。これらは、実測で得られたクロマトグラム及び波長スペクトルにそれぞれ意図的に指数関数的なベースラインを加えたデータに対し、上述したピーク波形処理を適用することでベースライン信号とピーク信号との分離を試みた結果である。図6(b)は図6(a)中でピークが存在する時間範囲及び該ピークの立ち上がり部分の拡大図である。この図6(b)から、ピークが存在する時間範囲において曲線状のベースラインが良好に推定されており、それによってピーク信号がベースラインから良好に分離されていることが分かる。また、図7から、波長スペクトルにおいてもピーク信号とベースライン信号とが良好に分離されていることが分かる。
なお、上記説明した処理では、クロマトグラムのベースライン推定結果を利用してピーククロマトグラムを求めるようにしていたが、ベースライン推定結果をそのまま利用してベースラインを除去する処理を行うのではなく、その推定結果を様々な手法やアルゴリズムで求まるベースラインの選択に利用するようにしてもよい。
例えば、図8の例で述べたように、従来のデータ処理装置には、直線ベースラインやガウス関数等を利用した曲線ベースラインなどを自動的に求める波形処理の機能が搭載されている。そこで、上述したようなデータ処理によってベースライン推定結果が得られたならば、それを参照して既存の複数の波形処理によって求まったベースラインの中で最も適切なベースラインを選択するようにしてもよい。
また、本実施例のデータ処理方法によれば、まず各クロマトグラム上のピークの純粋な波長スペクトルが求まり、次いでベースラインクロマトグラム波形、ベースラインスペクトルが順に求まる。そこで、各クロマトグラム上のピークの純粋な波長スペクトルが求まった段階で、該波長スペクトルに現れる吸収ピークの波長等から化合物を同定するようにしてもよい。
また、上記実施例におけるクロマトグラムデータ処理方法やLC分析装置は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、追加、修正を加えても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
例えば、本発明において処理対象である3次元クロマトグラムデータを取得するクロマトグラフの検出器は、上述したようなPDA検出器等のマルチチャンネル型検出器でなくてもよく、高速の波長走査が可能である紫外可視分光光度計、赤外分光光度計、近赤外分光光度計、蛍光分光光度計、などであってもよい。また、上述したように質量分析計を検出器とした液体クロマトグラフ質量分析装置やガスクロマトグラフ質量分析装置でもよい。
また、クロマトグラフのカラムを通した分析ではなく、フローインジェクション分析(FIA)法により導入された試料をPDA検出器等で検出する場合に得られるデータも、時間、波長、及び吸光度という三つのディメンジョンを持つ3次元データとなり、液体クロマトグラフにより収集される3次元クロマトグラムデータと実質的に同じである。したがって、こうしたデータを処理する装置にも本発明を適用できることは明らかである。
1…LC部
11…移動相容器
12…送液ポンプ
13…インジェクタ
14…カラム
15…PDA検出器
2…データ処理部
21…クロマトグラムデータ記憶部
22…ベースライン推定部
23…ピーククロマトグラム算出部
24…定性処理部
25…定量処理部
3…入力部
4…表示部

Claims (6)

  1. 測定対象である試料に対して収集された、時間軸、信号強度軸、及び第3のパラメータ軸を有する3次元クロマトグラムデータを処理するクロマトグラムデータ処理方法において、
    a)処理対象である3次元クロマトグラムデータに基づいて作成されるクロマトグラム上で検出される各ピークに対応する、第3のパラメータ値と信号強度値との関係を示すスペクトルをそれぞれ取得するピークスペクトル取得ステップと、
    b)前記3次元クロマトグラムデータに基づく各測定時点におけるスペクトルをそれぞれベクトルで表現した多次元ベクトルを、前記ピークスペクトル取得ステップにおいて得られたスペクトルをベクトルで表現したベクトルに直交する方向に射影し、それにより得られた射影ベクトルの大きさを時系列信号として求め、該時系列信号に基づいてクロマトグラムにおけるベースラインを示すベースラインクロマトグラムの波形形状を推定するベースラインクロマトグラム波形推定ステップと、
    を有することを特徴とするクロマトグラムデータ処理方法。
  2. 請求項1に記載のクロマトグラムデータ処理方法であって、
    前記3次元クロマトグラムデータに基づいて作成される第3のパラメータ値毎のクロマトグラムの一部分に対し又はその一部分毎に、前記ベースラインクロマトグラム波形推定ステップにおいて得られたベースラインクロマトグラム波形のフィッティングを行うことにより、第3のパラメータ値毎のベースラインの信号強度値を求め、それに基づきベースラインにおける第3のパラメータ値と信号強度値との関係を示すベースラインスペクトルを推定するベースラインスペクトル推定ステップ、
    をさらに有することを特徴とするクロマトグラムデータ処理方法。
  3. 請求項1に記載のクロマトグラムデータ処理方法であって、
    前記ピークスペクトル取得ステップでは、時間的な変化が緩慢である信号波形の入力に対してゼロを出力する一方、時間的な変化が急である信号波形の入力に対しては非ゼロを出力するフィルタを用いることにより、クロマトグラム上でピークが存在する時間範囲を推定し、該時間範囲内でピークに対応するスペクトルを取得することを特徴とするクロマトグラムデータ処理方法。
  4. 請求項3に記載のクロマトグラムデータ処理方法であって、
    前記フィルタはサビツキー-ゴーレイフィルタであることを特徴とするクロマトグラムデータ処理方法。
  5. 請求項3に記載のクロマトグラムデータ処理方法であって、
    前記フィルタは、与えられたクロマトグラムにおいてベースラインのみが存在する又はベースラインのみが存在すると推定される時間範囲の信号に対する出力と、ピークが存在する又はピークが存在すると推定される時間範囲の信号に対する出力との比が最大になるように決められたフィルタパラメータを有するものであることを特徴とするクロマトグラムデータ処理方法。
  6. 測定対象である試料に対して収集された、時間軸、信号強度軸、及び第3のパラメータ軸を有する3次元クロマトグラムデータを処理するクロマトグラムデータ処理装置において、
    a)処理対象である3次元クロマトグラムデータに基づいて作成されるクロマトグラム上で検出される各ピークに対応する、第3のパラメータ値と信号強度値との関係を示すスペクトルをそれぞれ取得するピークスペクトル取得部と、
    b)前記3次元クロマトグラムデータに基づく各測定時点におけるスペクトルをそれぞれベクトルで表現した多次元ベクトルを、前記ピークスペクトル取得部により得られたスペクトルをベクトルで表現したベクトルに直交する方向に射影し、それにより得られた射影ベクトルの大きさを時系列信号として求め、該時系列信号に基づいてクロマトグラムにおけるベースラインを示すベースラインクロマトグラムの波形形状を推定するベースラインクロマトグラム波形推定部と、
    を備えることを特徴とするクロマトグラムデータ処理装置。
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