JP6256162B2 - 信号波形データ処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、分析装置により得られた信号波形データを処理するデータ処理装置に関し、さらに詳しくは、マススペクトル、クロマトグラムなどの信号波形のベースラインを求めるデータ処理装置に関する。
質量分析装置により得られる生のスペクトル(プロファイルスペクトル)データやクロマトグラフ装置により得られる生のクロマトグラムデータには、電気的ノイズや試料前処理、試料調製などの際に用いられる各種試薬由来のノイズなどを含むバックグラウンドノイズが重畳しており、それがベースラインとしてスペクトルやクロマトグラムなどの信号波形に現れる。そのため、ピーク高さや面積を正確に計算するには、ベースラインを正確に求めスペクトルやクロマトグラム等から差し引くベースライン除去処理を行う必要がある。こうしたベースライン除去方法として従来から様々な方法が提案されている。
非特許文献1は質量分析装置のデータ処理アルゴリズムについての概説論文であるが、その中で「Baseline Correction」の段落に、既存の複数のベースライン除去方法が説明されている。ここで述べられている主たる方法では、処理対象である生のマススペクトルに対し横軸方向(つまりは質量電荷比方向)に所定の幅のウインドウ領域を設定し、このウインドウ領域を横軸方向に一定のステップで移動させつつ、各ウインドウ領域に対してベースライン値演算処理を実行してウインドウ領域毎のベースライン値(強度値)を求める。そして、各ウインドウ領域において求めたベースライン値がそのウインドウ領域の中央の質量電荷比値における強度値であるとみなし、隣接するウインドウ領域における強度値の間を補間することでベースラインを求めている。各ウインドウ領域におけるベースライン値演算の方法には、平均値を用いる方法、最小値を用いる方法、中央値を用いる方法など様々な方法が考えられる。
非特許文献2はよく知られている市販の数値解析ソフトウエア(MatLab)の中のマススペクトル用ベースライン除去関数「msbackadj」の仕様説明であり、このアルゴリズムは上記非特許文献1に記載のベースライン算定方法の代表的な一例である。図4はこのソフトウエア「msbackadj」を用いたベースラインの算定例とベースライン除去結果を示すスペクトルである。(a)は生のスペクトル波形と該波形から得られたベースラインであり、(b)はベースライン除去を実施したスペクトル波形である。この例のようにスペクトル波形上での信号特性の変化が比較的少ない場合には良好なベースラインを得ることができる。なお、このようなスペクトル波形データに対しては、非特許文献2に記載の方法だけでなく、非特許文献1に記載のいずれの方法を用いてもベースライン算定結果に大きな相違はない。
しかしながら、上述した既存のベースライン算定方法では、信号波形上の信号特性の変化が大きく急であるようなスペクトルに対しては必ずしも適切なベースラインが得られるとは限らない。図5は、マトリクス支援レーザ脱離イオン化(MALDI=Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization)法とインソース分解(ISD=In-source decay)とを組み合わせた質量分析装置により得られた生のスペクトルデータに対し、上記「msbackadj」を用いてベースラインの算定とベースライン除去を行った結果を示す図である。図5(a)から分かるように、信号波形上の信号特性が急変する領域ではベースラインの波形追従性が悪くなっている。そして、図5(b)に示すように、このようにベースラインの波形追従性の悪い領域ではベースライン除去後のスペクトルにおいてピーク高さが不正確になってしまう。
上述した「msbackadj」では、ベースライン算定の際に、ウインドウ領域のサイズを初めとするいくつかのパラメータの調整が可能である。そこで、図5(a)に示したのと同じスペクトルデータに対してパラメータ調整を行ってベースラインを算定するとともにベースライン除去を行った結果が図6である。この例では、信号波形上の信号特性の変化が急である領域(図6(a)中のA部)でのベースラインの波形追従性は改善している。しかしながら、それ以外の領域(図6(a)中のB部)でスペクトル波形に対しベースラインの形状が適切でなくなってしまい、ベースラインを除去した結果ではピーク高さが不正確になってしまっている(図6(b)中のB’で示す部分)。
このようにベースライン除去の結果、ピーク高さが不正確になると、ピークの高さや面積を利用した定量解析精度が低下してしまうことになる。このため、上述したような信号波形上の信号特性の急激な変化がスペクトル中に存在する場合であっても、高い波形追従性を以て正確にベースラインを求めることができるベースライン算定アルゴリズムが必要である。
また、上述した「msbackadj」は既存のアルゴリズムの中では様々な工夫がなされておりベースライン算定精度は相対的に高いものの、調整可能なパラメータの数が多い(具体的には6個)ため、パラメータの調整作業は面倒であって容易でない。即ち、或るパラメータの下で得られた結果に対して不満がある場合でも、いずれのパラメータをどの程度増減させればよいのかをユーザが判断するのはかなり難しく、結局のところ、試行錯誤的に各パラメータの増減を試みてベースライン算定結果を評価するしかない。
ヤン(C. Yang)ほか1名、「コンパリソン・オブ・パブリック・ピーク・デテクション・アルゴリズムズ・フォー・マルディ・マス・スペクトロメトリー・データ・アナリシス(Comparison of public peak detection algorithms for MALDI mass spectrometry data analysis)」、BMC Bioinformatics、2009年、10:4、[平成26年3月20日検索]、インターネット<URL: http://www.biomedcentral.com/1471-2105/10/4> 「Mathworks Documentation Center msbackadj」、米国マスワークス社(Mathworks)、[平成26年3月20日検索]、インターネット<URL: http://www.mathworks.com/help/bioinfo/ref/msbackadj.html> 南茂夫、「科学計測のための波形データ処理 計測システムにおけるマイコン/パソコン活用技術」、CQ出版社、1986年4月発行
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、信号波形上で信号特性が急に変化するような場合であっても、面倒なパラメータ調整を行うことなく精度の高いベースラインを算定することができ、それによって正確な高さや面積のピーク波形を得ることができる信号波形データ処理装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明は、分析装置で得られた信号波形データを処理する信号波形データ処理装置であって、
a)処理対象である信号波形データを加工データの初期値として入力する処理対象データ入力部と、
b)前記加工データによる波形に対しピーク間の谷部の底点を検出する底点検出部と、
c)処理対象である信号波形データの全範囲に亘り、隣接する二つの底点の間を一つの区間とし、その区間長が所定の区間長上限値未満である区間内の信号波形を、該区間の両端点である底点の値を用いて補間した直線又は曲線に置き換える底点間区間補間部と、
d)前記底点間区間補間部により補正がなされたあとの加工データの波形形状のなだらかさが所定の許容状態に到達したか否かを判定し、所定の許容状態に到達していれば処理を終了する一方、所定の許容状態に到達していなければ、前記補正がなされたあとの加工データを前記底点検出部の処理対象の新たな加工データとして処理を続行する処理終了判定部と、
を備えることを特徴としている。
ここで、処理対象である信号波形データとは例えば、質量分析装置で得られたスペクトルデータ、クロマトグラフ装置で得られたクロマトグラムデータなどである。
本発明に係る信号波形データ処理装置において、底点検出部による谷部の底点(ボトム)検出は、従来から知られている各種方法を利用することができる。また、底点検出とピーク検出とは波形処理のうえでは実質的に同じであるから、従来から知られている各種のピーク検出方法を利用して底点を検出することもできる。具体的には例えば、信号波形の傾きを順次調べてゆき、下向きである傾きがゼロになって上向きに転換する点を探索してそこを底点であるとすればよい。これは信号波形の1次微分値が負値から正値に変化するときのゼロ値を探索することに相当する。また、或る一つのピークのスロープに別のピークが重畳しているために明確な凹部形状を示さない谷部の底点を見つけるために、信号波形の2次微分値や3次微分値を利用するようにしてもよい。
いま、処理対象である信号波形データが質量分析装置で得られたスペクトルデータであるとすると、本発明に係る信号波形データ処理装置において、底点検出部はまず処理対象データ入力部により入力された所定質量電荷比範囲に亘るスペクトルデータについて、全ての谷部の底点を検出する。次いで底点間区間補間部は、検出された全ての底点について、質量電荷比軸上で隣接する二つの底点の間を一つの区間として、区間長が所定の区間長上限値未満である区間を抽出し、その抽出された区間内の信号波形を該区間の両端点である底点の値を用いた補間処理により求めた直線又は曲線で置き換える。最も簡便な補間処理は直線補間であるが、より高次の曲線を用いた補間処理を用いてもよい。また、上記所定の区間長上限値は本装置の製造メーカ等が予め決めておくようにしてもよいし、或いは、ユーザが適宜に設定できるようにしておいてもよい。いずれにしても、隣接する底点間の距離がその区間長上限値未満であるような相対的に狭いピーク波形は直線又は少なくとも該ピーク波形よりもなだらかな曲線に置換されるから、底点間区間補間部による補間によって加工データの信号波形の少なくとも一部はその処理前に比べて凸部形状波形が均されたものとなる。
処理終了判定部は、凸部形状波形が均されたその加工データの波形形状のなだらかさが所定の許容状態に到達したか否かを判定し、所定の許容状態に到達していればその時点で処理を終了して最終的な加工データをベースラインとして決定する。これに対し、未だ所定の許容状態に到達していなければ、補正がなされたあとの加工データを再び底点検出部の処理対象の新たな加工データとして処理を続行する。ここで所定の許容状態とは例えば、底点間区間補間部によって補間すべき区間が消滅した状態のことである。また、補間処理の繰り返し回数や時間に制限を設け、その制限に達したならば所定の許容状態に到達したものとみなすようにしてもよい。一般的には、加工データの波形形状が所定の許容状態に到達するまで、底点検出部及び底点間区間補間部の処理を複数回繰り返すことで、元のスペクトル波形に対応する良好なベースラインを求めることができる。
上述した既存のベースライン算定方法では、初めから信号波形データを複数の狭いウインドウ領域に分割し、各ウインドウ領域内での演算によって代表点を求めていた。そのため、ウインドウ領域の幅が大きすぎると信号波形上の信号特性の急な変化に追従できずに遅れのような領域が生じてしまうし、逆にウインドウ領域の幅が小さすぎると適切な代表点を求めるための情報が不足し、信号波形上の信号特性の急な変化に対して過敏になり過ぎる傾向にある。これに対し、本発明に係る信号波形データ処理装置では、ウインドウ領域を設定せず、信号波形全体の中で幅が相対的に小さなピークから順に補間処理によって均されてゆき、最終的に上記所定の区間長上限値未満の幅のピークが全て均された結果に到達する。それにより、スペクトル等の信号波形中のピークの裾部を確実になぞった形状のベースラインを求めることができる。
上述したように所定の区間長上限値は本装置の製造メーカ等が予め決めた固定値であってもよいが、この区間長上限値は算定されるベースラインの形状を左右する重要なパラメータであり、分析の目的や分析対象である試料の種類などによって変更することが望ましい。そこで、本発明に係る信号波形データ処理装置の好ましい構成として、その区間長上限値を分析者が入力する上限値指定部をさらに備えるようにするとよい。
この構成によれば、得られたベースラインに対して分析者が不満を感じた場合、分析者は区間長上限値を手作業で適宜調整すればよい。即ち、得られたベースラインでは元の信号波形上のピークが十分に均されていないと思われる場合には、区間長上限値をベースライン波形上に残っているピークの幅以上に設定し直せば、そのピークを均した結果が得られる。逆に、均されるべきでないピークが均されていることが判明した場合には、区間長上限値をその消えてしまったピークの幅未満に設定し直せば、そのピークが均されない(補間されない)結果が得られる。このように本発明に係る信号波形データ処理装置では、調整するパラメータ値である区間長上限値とベースライン算定結果とが直結しているため、分析者はパラメータ調整を直感的に行うことができパラメータ調整作業が簡便である。
なお、マススペクトル波形を表示する際の横軸は質量電荷比であることが多い。そこで、質量分析装置用の装置において、上記上限値指定部は、波形表示の横軸と同じ質量電荷比単位で以てパラメータ値の指定入力ができるようにした上で、入力されたパラメータ値をデータ点のサンプリング間隔に応じてデータ点の個数値に変換する構成としておくとよい。これによって、分析者は表示波形を確認しながら入力パラメータ値を容易に調整することができる。
また本発明では、与えられた信号波形の谷部の底点を適切に検出できないと、具体的にいえば底点の検出漏れがあると、算定されるベースラインの形状の精度が低下する。特に複数のピークが重なっているような場合には谷部の底点の検出が難しいことがあり、そうした場合でもできるだけ底点を漏れなく検出するには、一つのアルゴリズムだけでなく複数の異なるアルゴリズムに基づいて底点を検出するほうがよい。そこで、本発明に係る信号波形データ処理装置において、上記底点検出部は、それぞれ異なる複数種の演算法を併用して底点を検出する構成とすることがさらに好ましい。
本発明に係る信号波形データ処理装置によれば、信号特性が急に変化するような形状を示す信号波形に対しても煩雑で面倒なパラメータ調整なしに、精度の良いベースラインを求めることができる。それによって、ベースラインを差し引いたスペクトルやクロマトグラム上のピークの高さや面積などを正確に求めることができ、例えばピーク高さや面積を利用した定量解析の精度を向上させることができる。また、本発明に係る信号波形データ処理装置では、ベースラインの形状を左右するパラメータの数が少なく、しかもそのパラメータの値とベースライン算定結果との対応関係が明確であるので、分析者がパラメータ調整を行う場合でも簡便に行うことができる。これにより、分析者が所望する形状のベースラインを効率良く算定することができる。
本発明の一実施例である質量分析用スペクトルデータ処理装置の概略構成図。 本実施例の質量分析用スペクトルデータ処理装置におけるベースライン算定方法の一例を示すフローチャート。 本実施例の質量分析用スペクトルデータ処理装置におけるベースライン算定方法の説明図。 従来のソフトウエア「msbackadj」を用いたベースラインの算定例とベースライン除去結果を示すスペクトル(信号波形の特性変化が急でない場合)。 従来のソフトウエア「msbackadj」を用いたベースラインの算定例とベースライン除去結果を示すスペクトル(信号波形の特性変化が急である場合)。 従来のソフトウエア「msbackadj」を用いたベースラインの算定例とベースライン除去結果を示すスペクトル(パラメータを適宜調整した場合)。 本実施例の質量分析用スペクトルデータ処理装置によるベースラインの算定例とベースライン除去結果を示すスペクトル。 本発明の他の実施例である質量分析用スペクトルデータ処理装置の概略構成図。 他の実施例の質量分析用スペクトルデータ処理装置におけるベースラインの算定方法において区間長上限値を変えたときのベースラインの相違を示すスペクトル。
以下、本発明に係る信号波形データ処理装置の一実施例である質量分析用スペクトルデータ処理装置について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は本実施例の質量分析用スペクトルデータ処理装置の概略構成図である。
本実施例の質量分析用スペクトルデータ処理装置は、図示しない質量分析装置において質量分析を行う際に得られた所定の質量電荷比範囲に亘る生のスペクトルデータ(プロファイルデータ)を格納しておくスペクトルデータ格納部1と、その生のスペクトルデータに基づいてベースラインを求めるベースライン算定部2と、元のスペクトルデータからベースラインを示すデータを差し引いてベースラインを除去したスペクトルデータを求めるベースライン減算部3と、を備える。
ベースライン算定部2は、スペクトルデータ格納部1から処理対象であるスペクトルデータを読み込む処理対象データ入力部20と、与えられた加工データに対してピーク間の谷部の底点を検出する底点検出部21と、質量電荷比軸上で隣接する二つの底点間の区間のうち区間長が区間長上限値未満である区間を抽出する特定区間抽出部22と、抽出された区間内の信号波形(ピーク波形)をその区間の両端に位置する底点の強度値を用いて補間した直線(又は曲線)で置き換える区間内補間部23と、補間された加工データ等に基づいてベースライン算定処理を終了するタイミングであるか否かを判定する終了判定部24と、を機能ブロックとして備える。
なお、図1に示したデータ処理装置の全ての機能ブロックは、パーソナルコンピュータをハードウエア資源とし、該パーソナルコンピュータにインストールされた専用のデータ処理ソフトウエアを実行することで具現化することができる。
図2は本実施例の質量分析用スペクトルデータ処理装置におけるベースライン算定方法の一例を示すフローチャート、図3はこのベースライン算定方法の説明図である。図2、図3により、本実施例の質量分析用スペクトルデータ処理装置におけるベースライン算定処理を説明する。
処理が開始されると、まず処理対象データ入力部20が所定質量電荷比範囲に亘るスペクトルデータをスペクトルデータ格納部1から読み込み、これを加工データの初期値として底点検出部21に入力する(ステップS1)。底点検出部21は、与えられた加工データについて質量電荷比方向のピーク間の谷部の底点を全て検出する(ステップS2)。ここで底点とは典型的には図3にP1、P2、P3、P4で示すように、隣接する二つのピークで挟まされた谷部の極小値である。底点検出部21における底点の検出方法としては、既知の様々な方法を利用することができる。また、図3からも明らかなように、底点検出はピーク検出と実質的に同じであるから、既知の様々なピーク検出方法を底点検出に利用することができる。
よく知られている底点検出方法は、信号波形の勾配、つまりは質量電荷比方向の1次微分値を計算し、その1次微分値の符号が負値である(つまりは信号波形の勾配が下り傾斜である)状態から一旦ゼロになり、そのあとに正値に転換する(つまりは信号波形の勾配が上り傾斜になる)そのゼロ値の位置を底点とする方法である。実際には、ノイズ等に起因するごく微小な凹凸形状波形の影響を除去しつつ本来の谷部を見つけるために、平滑化処理を併用した平滑化微分がよく利用される(例えば非特許文献3など参照)。
信号波形上でピークが孤立して存在している場合には、上述した1次微分値を利用した方法によって底点を精度良く検出することができる。一方、隣接するピークの裾が大きく重なり合っている場合には1次微分値のみからでは底点を検出できないことがある。こうした場合のために、信号波形の2次微分値と3次微分値とを用いる底点検出方法もある。具体的には、信号波形の3次微分値がゼロ(正負の転換点)となり、且つ2次微分値が正の極大値をとるような質量電荷比上の位置を底点とすればよい。この底点検出方法によれば、重なり合っていて十分に分離できない複数のピーク間の底点も検出することができる。
もちろん、上記ステップS2では、従来から知られている様々な底点検出方法のうちの一つを利用してもよいが、異なるアルゴリズムによる底点検出方法を複数併用し、その複数の底点検出方法のいずれかで検出された底点を全て底点として抽出するようにしてもよい。それにより、底点の検出見逃しを少なくすることができる。
ステップS2において全ての底点が検出されたならば、続いて、特定区間抽出部22は質量電荷比軸上で隣接する二つの底点の間をそれぞれ一つの区間とみなし、その二つの底点の間の長さ(質量電荷比幅)つまり区間長を所定の区間長上限値と比較する。そして、区間長が区間長上限値未満であるような区間を全て抽出する(ステップS3)。図3の例では、底点P1と底点P2の間の区間[1]、底点P2と底点P3の間の区間[2]、底点P3と底点P4の間の区間[3]という三つの区間が存在するが、区間[1]、区間[3]の二つの区間長が区間長上限値未満であって、区間[2]の区間長が区間長上限値以上であったとすると、ステップS3では区間[1]、区間[3]が抽出され、区間[2]は抽出されない。
区間内補間部23は、ステップS3で抽出された区間の全てについて、各区間の両端の強度値、即ち、二つの底点の強度値を例えば補間することで求めた直線(又は曲線)で、その区間内の信号波形を置き換える(ステップS4)。補間方法は特には限定されないが、通常、単なる直線補間で十分な結果が得られる。もちろん、より高次の補間法を用いてもよい。図3の例では(b)に示すように、区間[1]について、点線で示すピーク波形が底点P1と底点P2とを繋いだ直線で置き換えられ、区間[3]について、点線で示すピーク波形が底点P3と底点P4とを繋いだ直線で置き換えられる。一方、区間[2]についてはそうした補間が行われないので、元の信号波形がそのまま残る。
このようにしてステップS4では、ステップS3で抽出された全ての区間について、その区間内のピークが均され、なだらかな形状の信号波形に変換される。そのあと、終了判定部24は、ステップS4の処理後の加工データの波形形状のなだらかさが所定の許容状態に到達したか否かを判定する(ステップS5)。波形形状のなだらかさが所定の許容状態に到達したか否かの判断は、例えば補間処理を施すべき区間が未だ残っているか否かを確認することで行うことができる。即ち、特定区間抽出部22は特定区間として抽出した区間数を求め、この区間数がゼロであるときにはその旨の終了判定部24に通知する。この区間数がゼロであるということは、区間長上限値未満の幅である全てのピークが均されたことを意味するから、加工データによる波形は十分になだらかになったとみることができる。そこで、特定区間抽出部22から上記通知があった場合には、終了判定部24は加工データによる信号波形が十分に均され、所定の許容状態に達したものと判断するとよい。
ステップS5においてその時点での加工データによる波形のなだらかさが所定の許容状態に到達していると判定されれば、処理を終了し、その時点で得られている加工データが処理対象スペクトルに対するベースライン算定結果であるとして出力する(ステップS6)。一方、ステップS5においてその時点での加工データによる波形のなだらかさが所定の許容状態に到達していないと判定された場合には、その時点で得られている加工データを次の処理対象の加工データに設定してステップS2へと戻る。これにより、上述したステップS2、S3、S4の処理が再び実行される。こうして加工データによる波形のなだらかさが所定の許容状態に到達したと判定されるまで、ステップS2〜S5の処理を繰り返すと、狭い幅のピークが順次均されてピークの少ない波形に変化していき、最終的には、区間長上限値で決まる幅よりも大きな幅を持つピークのみが観測されるベースラインが導出される。
もちろん、例えば処理時間に制約がある場合や処理上で何らかの不具合がある場合のために、処理時間に制限を設けたり繰り返し回数に制限を設けたりして、ステップS5でYesとならない場合であっても途中で処理を打ち切るようにしてもよい。
図7は、図5(a)に示したのと同じスペクトルデータに対して、上述した本実施例によるベースライン算定方法を実行することで得られたベースラインとベースライン除去を行った結果を示す図である。図7(a)から、生のスペクトル波形上で急勾配の立上り部分及びその右方に続くピークの裾部分を確実に追跡したベースラインが得られていることが分かる。また図7(b)に示したベースライン除去結果においては、質量電荷比範囲のいずれの領域でも正確なピーク高さが得られている。
上記説明から分かるように、本実施例におけるベースライン算定方法では、底点間の区間長を判定するための区間長上限値は信号波形へのベースラインの追従性を左右する唯一の重要なパラメータである。即ち、区間長上限値を大きくすれば、幅が相対的に大きなピークも均されることになるから、ベースラインはより平坦になり、区間長上限値を大小さくすれば、幅が相対的に小さなピークのみが均されることになるから、ベースラインには凹凸が現れ易くなる。或る信号波形に対してどのような形状のベースラインが適当であるのかは、必ずしも一義的に決められるものではなく、分析目的や分析対象の試料の種類などによっても異なる。そこで、区間長上限値は装置に固定的に定めておくのではなく、ユーザ(分析者)が適宜に変更できるようにしておくとよい。
図8は本発明の他の実施例による質量分析用スペクトルデータ処理装置の概略構成図である。上記実施例の構成に対し区間長上限値入力部4が追加されており、分析者は必要に応じて区間長上限値入力部4により区間長上限値を変更する。この変更された区間長上限値が上記ステップ3の処理で使用されるから、分析者がこの値を変更すると、抽出される区間、つまりは補間の対象となる区間が変わる。そこで、通常、分析者は、或る区間長上限値の下で算定されたベースラインを例えばモニタ画面上で確認し、このベースラインが適切でないと判断したならば、区間長上限値入力部4により区間長上限値を適宜変更したうえで再度ベースライン算定処理を指示する。この指示に基づいて算定されるベースラインは先のものと変わるから、分析者はこれを再び評価する。
図9は、区間長上限値を変更したときのベースライン算定結果の一例を示す図である。図9(a)は区間長上限値を250[Da]とした場合、図9(b)は区間長上限値をより小さい40[Da]とした場合の例である。
図9(a)では、目的外の大きなピークとその裾部に重畳している定量用目的ピークを含む全体を一つの大きなピークが存在する区間であるとしてベースラインを算定している。これに対して、定量用目的ピークの正味の高さや面積を、大きな目的外ピークの裾部の影響を取り除いて算定したい場合には、より小さい値を区間長上限値として指定すればよく、目安としてはこれら小さなピークの幅(15[Da]前後)より若干大きい程度、とすればよい。そのために、図9(b)では区間長上限値を40[Da]にしており、これによって、定量用目的ピークについて大きなピークの裾部の影響が除去されるようにベースラインが算定できていることが分かる。
このように本実施例の質量分析用スペクトルデータ処理装置では、分析者がモニタ画面上に表示されたスペクトル波形を見ながら高さや面積を正確に求めたいピークの幅に応じて区画長上限値を設定することができ、そうしたパラメータの調整も簡便であってミスも起こりにくい。
なお、上記実施例は質量分析装置で得られたスペクトルデータに対して本発明を適用していたが、クロマトグラフ装置で得られるクロマトグラムなど、ピークが現れ且つベースラインを求める必要がある各種の信号波形に対して、本発明によるベースライン算定方法を適用することができる。
また、上記実施例は本発明の一実施例にすぎないから、上記記載した以外の点について、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
1…スペクトルデータ格納部
2…ベースライン算定部
20…処理対象データ入力部
21…底点検出部
22…特定区間抽出部
23…区間内補間部
24…終了判定部
3…ベースライン減算部
4…区間長上限値入力部

Claims (3)

  1. 分析装置で得られた信号波形データを処理する信号波形データ処理装置であって、
    a)処理対象である信号波形データを加工データの初期値として入力する処理対象データ入力部と、
    b)前記加工データによる波形に対しピーク間の谷部の底点を検出する底点検出部と、
    c)処理対象である信号波形データの全範囲に亘り、隣接する二つの底点の間を一つの区間とし、その区間長が所定の区間長上限値未満である区間内の信号波形を、該区間の両端点である底点の値を用いて補間した直線又は曲線に置き換える底点間区間補間部と、
    d)前記底点間区間補間部により補正がなされたあとの加工データの波形形状のなだらかさが所定の許容状態に到達したか否かを判定し、所定の許容状態に到達していれば処理を終了する一方、所定の許容状態に到達していなければ、前記補正がなされたあとの加工データを前記底点検出部の処理対象の新たな加工データとして処理を続行する処理終了判定部と、
    を備えることを特徴とする信号波形データ処理装置。
  2. 請求項1に記載の信号波形データ処理装置であって、
    前記区間長上限値を分析者が入力する区間長上限値指定部をさらに備えることを特徴とする信号波形データ処理装置。
  3. 請求項1又は2に記載の信号波形データ処理装置であって、
    前記底点検出部は、それぞれ異なる複数種の演算法を併用して底点を検出することを特徴とする信号波形データ処理装置。
JP2014078343A 2014-04-07 2014-04-07 信号波形データ処理装置 Active JP6256162B2 (ja)

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