JP6582858B2 - 二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
項1.
以下の工程A〜Dを含む二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルムの製造方法。
工程A:ポリエチレンテレフタレート系樹脂を溶融押出し、樹脂シートを製膜する工程、
工程B:工程Aで得られた樹脂シートを長手方向に延伸する縦延伸工程、
工程C:工程Bで得られたフィルムを140℃以上190℃以下の温度で予熱する工程と、予熱後のフィルムを160℃以上190℃以下の温度で、幅方向に5.5倍以上7.0倍以下延伸する工程とを含む、横延伸工程、及び
工程D:工程Cで得られたフィルムを200℃以上240℃以下の温度で熱固定し、フィルム幅方向に緩和する、熱固定工程
項2.
工程Bにおいて、長手方向に延伸されたフィルムは、長手方向、幅方向、厚み方向の屈折率をそれぞれNx、Ny、Nzとしたときに、Nx−(Ny+Nz)/2の値が0.075〜0.110であり、かつ、
工程Bで得られたフィルムを50℃以上120℃以下の温度で加熱する工程を経た後、工程Cの工程を行う、項1に記載の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルムの製造方法。
項3.
ポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる二軸延伸フィルムであって、下記構成要件(1)〜(4)を満たす二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルム。
(1)フィルム長手方向の150℃、30分における熱収縮率が0%〜1%、かつ200℃、30分における熱収縮率が2%〜4%
(2)熱収縮応力曲線において、フィルム長手方向の熱収縮応力の立ち上がり温度が150℃以上
(3)フィルム長手方向の屈折率Nxが1.63以上1.64以下、かつ幅方向の屈折率Nyが1.67以上1.70以下、かつ厚み方向の屈折率Nzが1.48以上1.49以下
(4)広角X線回折測定で得られるフィルム(−105)面の結晶子長が71Å以上80Å以下、かつフィルム(010)面の結晶子長が65Å以上75Å以下
工程A:ポリエチレンテレフタレート系樹脂を溶融押出し、樹脂シートを製膜する工程、
工程B:工程Aで得られた樹脂シートを長手方向に延伸する縦延伸工程、
工程C:工程Bで得られたフィルムを140℃以上190℃以下の温度で予熱する工程と、予熱後のフィルムを160℃以上190℃以下の温度で、幅方向に5.5倍以上7.0倍以下延伸する工程とを含む、横延伸工程、及び
工程D:工程Cで得られたフィルムを200℃以上240℃以下の温度で熱固定し、フィルム幅方向に緩和する、熱固定工程
まず、フィルム原料の乾燥(熱風乾燥)によって、水分率が100ppm未満となるように乾燥することが好ましい。次いで、原料を押し出し機に供給し、シート状に溶融押出を行う。さらに、溶融状態のシートを、静電印加法を用いて回転金属ロール(キャスティングロール)に密着させて冷却固化し、未延伸PETシートを得る。
本発明では、以下のような延伸方法を行い、延伸工程でフィルムに加えられる温度と、フィルムの配向状態を制御することにより、かかる課題を克服させるに至った。
まず、未延伸シートを長手方向に延伸する。長手方向の延伸は、下記範囲において行うことが好ましく、下記範囲を外れると、続く幅方向の延伸において良好な製膜性を得ることが困難となる恐れがある。
延伸温度をガラス転移温度〜ガラス転移温度+30℃、延伸倍率を2〜4倍とすることが好ましい。より好ましくは、ガラス転移温度〜ガラス転移温度+10℃、延伸倍率2.5〜3.0倍であるが、長手方向に延伸後のフィルムの複屈折Nx−(Ny+Nz)/2が0.075〜0.110となる条件で延伸されることが好ましい。なお、Nx,Ny,Nzは、それぞれフィルム長手方向、幅方向、厚み方向の屈折率である。
つづいて、横延伸工程を行う。横延伸工程は、フィルムを140℃以上190℃以下の温度で予熱する工程と、予熱後のフィルムを160℃以上190℃以下の温度で、幅方向に5.5倍以上7.0倍以下延伸する工程とを含む。
まず予熱温度は、140℃以上190℃以下の温度とする。好ましくは、150℃以上180℃以下、より好ましくは170℃以上180℃以下である。また、延伸温度との温度差は、幅方向延伸時の延伸温度−20℃〜幅方向延伸時の延伸温度−0℃の範囲であることが好ましい。更に好ましくは、幅方向延伸時の延伸温度−10℃〜幅方向延伸時の延伸温度−0℃である。140℃未満では、予熱不足のためにフィルム全面の白化、破断などが起こりやすい。190℃を越えると、予熱過剰のために延伸むらの発生や、脆性破壊が起こりやすい。
予熱温度を140℃以上190℃以下の温度とすることにより、高温(150℃及び200℃)での長手方向の熱収縮率を小さくすることができる。そのメカニズムについては、以下のように考えている。予熱温度が上記範囲であると、フィルムが結晶化温度より高い温度にまで十分に加熱されるため、非晶鎖の運動性が上昇する。予熱工程での加熱が十分であるほど、より非晶鎖が緩和した状態で、幅方向の延伸が行われる。そのため、幅方向の延伸過程における非晶鎖の緩和および結晶子の成長が促進され、高温(150℃及び200℃)での長手方向の熱収縮率が小さくなると考えられる。
つづいて、延伸温度は、160℃以上190℃以下とすることが好ましい。より好ましくは170℃以上190℃以下、更に好ましくは180℃以上185℃以下である。延伸温度が160℃未満では、温度不足のためにフィルム全面が白化する。また非晶鎖の緩和および結晶子の成長が充分に起こらない。一方で延伸温度が190℃を超えると、温度過剰のため、延伸応力が低下して延伸むらが発生しやすい。また熱により結晶構造が融解しやすいため、結晶子の充分な成長が見られない。いずれにおいても、高温(150℃及び200℃)での熱寸法安定性を維持するのが困難となる。
延伸倍率を5.5倍以上7.0倍以下とすることにより、高温(150℃及び200℃)での長手方向の熱収縮率を小さくすることができる。そのメカニズムについては、以下のように考えている。延伸倍率が上記範囲であると、幅方向の延伸過程において、非晶鎖の幅方向への配向が強くなりやすく、長手方向の配向が緩和しやすいと考えられる。結晶子は、構造を維持したまま回転して幅方向に配向するが、延伸過程で配向結晶子のサイズが成長しやすいと考えられる。そのため、幅方向の延伸過程における非晶鎖の緩和および結晶子の成長が促進され、高温(150℃及び200℃)での長手方向の熱収縮率が小さくなると考えられる。
幅方向に延伸後、つづいてフィルムに熱固定を行う。熱固定工程では、フィルムを200℃以上240℃以下の温度で熱固定し、幅方向に2%〜8%で緩和する。
熱固定の温度は、より好ましくは210℃以上240℃以下、更に好ましくは230℃以上240℃以下である。200℃未満ではフィルムの熱結晶化が充分に進行せず、構造が固定されないため、高温延伸処理の効果が充分に得られない。240℃を越えると、融点に近いために構造が融解し、脆性破壊が起こりやすい。また、フィルムの幅方向の緩和率は特に限定されず、任意の率が設定され得るが、2%〜8%が好ましい。本願の場合、熱固定工程におけるフィルム長手方向の緩和処理を行ってもよいが、必ずしも必要ではない。
フィルムの配向を上記範囲とすることにより、幅方向の非晶鎖の配向度が上昇する一方で、長手方向の非晶鎖の配向度が低下した構造とすることができる。すなわち、長手方向の非晶鎖の配向が緩和し、熱収縮しにくい構造となる。
上記範囲を外れると、熱寸法安定性が不良となり、包装用途や光学用途で求められる高温下での熱寸法安定性が維持されない。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂を粉砕して乾燥した後、パラクロロフェノール/テトラクロロエタン= 75 /25(重量比)の混合溶媒に溶解した。ウベローデ粘度計を用いて、30℃で0.4(g/dl)の濃度の溶液の流下時間及び溶媒のみの流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用い、Hugginsの定数が0.38であると仮定して極限粘度を算出した。
JIS K 7142に準拠して測定した。アッベ屈折率計により、NaD線光で屈折率を測定した。マウント液はヨウ化メチレンを用い、長手方向の屈折率(Nx)、幅方向の屈折率(Ny)及び厚み方向の屈折率(Nz)を測定した。測定は、フィルム幅方向の中央部において行った。
JIS C 2318−1997 5.3.4(寸法変化)に準拠して測定した。測定すべき方向(フィルム長手方向)に対し、フィルムを幅10mm、長さ190mmに切り取り、10mm間隔で印をつけ、印の間隔(A)を測定した。次いで、フィルムを150℃の雰囲気中のオーブンに入れ、無荷重下で150℃±3℃で30分間加熱処理した後、印の間隔(B)を測定した。以下の式より150℃の熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)=(A−B)/A×100
また、同様の方法でフィルムを200℃の雰囲気中のオーブンに入れ、無荷重下で200℃±3℃で30分間加熱処理し、200℃の熱収縮率を求めた。測定は、フィルム幅方向の中央部にて行った。
セイコーインスツルメンツ社製TMA/SS6100型熱機械的分析装置を用い測定した。測定すべき方向(フィルム長手方向)に対し、フィルムを幅2mm、長さ30mmに切り取った。次いで、フィルムを装置に設置し、測定時の下側荷重を1.0763mNに設定した。組立L制御モードを選択し、室温から250℃まで速度20℃/分で昇温した。得られる熱収縮応力曲線において、熱収縮応力曲線が立ち上がる前のベースラインと、熱収縮応力が立ち上がったあと、傾きが最大となる点における接線との交点の温度を熱収縮曲線の立ち上がり温度とした。測定は、フィルム幅方向の中央部にて行った。
理学電機製X線回折装置RINT2500を用い、透過法にて測定した。測定条件は下記の通りである。ターゲット:Cu、出力:40kv200mA、光学系:1mmφピンホールコリオメータ・横1/2°縦2°。
フィルムを5枚程度切り取り、長手方向・幅方向の向きを揃えて重ね合わせ、総厚みを90μm〜120μmの範囲とした。重ね合わせたフィルムを、長手方向が地面に対し垂直となる向きで装置に設置し、フィルム面に対して垂直にX線を照射した。次いで、結晶格子面間隔に対する(−105)面の結晶ピーク強度および(010)面の結晶ピーク強度を2θ/θスキャンにより測定した。それぞれの測定面について、得られる結晶ピーク曲線において、ピークの半値幅を算出し、また、ピークが最も高くなる時のX線回折角を算出した。半値幅およびX線回折角をSchrrerの式「ACS=kλ/βcosθ」に代入し、見かけの結晶子長ACSを計算した。ここで、kは補正定数、λはX線波長、βは半値幅の二乗から装置のブロードニング定数の二乗を除いた値の平方根、θはX線回折角である。
得られたフィルムの片面に下記シリコーン塗布液を加工張力10kg/mを印可した状態でダイコート方式でシリコーンを塗布し、150℃のオーブンで乾燥させた。
(シリコーン塗布液)
硬化性シリコーン(KS847H、信越化学) 100質量部
硬化剤(CAT PL−50T、信越化学) 2質量部
希釈剤 メチルエチルケトン/キシレン/メチルイソブチルケトン 898質量部
得られたシリコ−ン塗布後のサンプルをロ−ルからカットして、平坦なテ−ブルの上に5mの長さを広げて、塗布面に蛍光灯の光を反射させて下記評価方法により熱しわの有無を確認した。
○:熱しわは全く見られず良好。
△:全面に熱しわは見られないが部分的に熱しわがみられた。
×:全面に熱しわが確認できた。
フィルム製膜を20分間連続で行い、途中破断する回数を計測した。
○:破断が起こらない
△:破断が発生するが、フィルム採取は可能
×:破断が頻発し、フィルム採取困難
白色光源の上に2枚の偏光板をクロスニコルに配置し、その間に各実施例で得られたフィルムを配置した。光源として180Wのメタハラ伝送ライトを用いた。クロスニコルを通して見られるフィルム外観より、延伸むらを目視観察した。また、得られたフィルムを蛍光灯下にかざした外観より、白化の有無を目視観察した。
○:クロスニコルを通した際のコントラストが良好で、延伸むらや未延伸部が見えない。また蛍光灯下での白化が見えない。
△:延伸むら、未延伸部、白化のいずれかが、観察するフィルムの全面積中の50%を超えない範囲で見られた。
×:延伸むら、未延伸部、白化のいずれかが、観察するフィルムの全面積中の50%を超える範囲で見られた。
ポリエチレンテレフタレート樹脂を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機に供給した。押出機に供給された原料を、押出機の溶融部、混練り部、ポリマー管、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂温度は280℃、その後のポリマー管では275℃とし、Tダイよりシート状に溶融押し出した。また、前記のフィルターには、いずれもステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度:10μm粒子を95%カット)を用いた。Tダイの温度は、押出された樹脂温度が275℃になるように制御した。
テンター内での予熱温度を150℃、幅方向の延伸温度を160℃とした以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmとなる二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。得られたフィルムは、一部でわずかに白化が観察された。
長手方向延伸後の加熱を行わなかった以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmとなる二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。延伸過程で数回の破断が発生したが、フィルムを採取した。
ポリエチレンテレフタレート樹脂を実施例1と同様にして押し出し、樹脂シートとした。該シートを長手方向に105℃で3.0倍延伸した。次いで長手方向に延伸後のフィルムをテンターに導き、90℃で予熱し、100℃で幅方向に4.0倍延伸した後、7%の弛緩処理を行いつつ230℃にて熱処理を行い、厚さ20μmとなる二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
ポリエチレンテレフタレート樹脂を実施例1と同様にして押し出し、樹脂シートとした。該シートを長手方向に105℃で3.0倍延伸した。次いで長手方向に延伸後のフィルムをテンターに導き、90℃で予熱し、100℃で幅方向に4.0倍延伸した後、7%の弛緩処理を行いつつ230℃にて熱処理を行い、厚さ20μmとなる二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。得られたポリエチレンテレフタレートを190℃の乾燥炉内にて長手方向に3%の弛緩処理を行った。得られたフィルムは、微細なむらや白化部が全面にみられた。更には全面に微小なしわが見られたため、熱しわ判定法による評価を行うまでもなかった。
ポリエチレンテレフタレート樹脂を実施例1と同様にして押し出し、樹脂シートとした。該シートを長手方向に105℃で3.0倍延伸した。次いで長手方向に延伸後のフィルムを1秒間100℃で加熱した。加熱後のフィルムをテンターに導き、170℃で予熱し、180℃で幅方向に4.0倍延伸した後、7%の弛緩処理を行いつつ230℃にて熱処理を行った。延伸過程で数回の破断が発生し、フィルム採取が困難であった。また、一部採取できたとしても得られたフィルムは、クロスニコルを通して観察を行った際、細かな延伸残が全面に渡って発生していた。そのため続く物性評価が不可能であった。
ポリエチレンテレフタレート樹脂を実施例1と同様にして押し出し、樹脂シートとした。該シートを長手方向に105℃で3.0倍延伸した。長手方向に延伸後のフィルムをテンターに導き、90℃で予熱し、100℃で幅方向に6.0倍延伸した後、7%の弛緩処理を行いつつ230℃にて熱処理を行った。破断が多発し、フィルムが得られなかった。
Claims (3)
- 以下の工程A〜Dを含む二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルムの製造方法。
工程A:ポリエチレンテレフタレート系樹脂を溶融押出し、樹脂シートを製膜する工程、
工程B:工程Aで得られた樹脂シートを長手方向に延伸する縦延伸工程、
工程C:工程Bで得られたフィルムを140℃以上190℃以下の温度で予熱する工程と、予熱後のフィルムを160℃以上190℃以下の温度で、幅方向に5.5倍以上7.0倍以下延伸する工程とを含む、横延伸工程、及び
工程D:工程Cで得られたフィルムを200℃以上240℃以下の温度で熱固定し、フィルム幅方向に緩和する、熱固定工程 - 工程Bにおいて、長手方向に延伸されたフィルムは、長手方向、幅方向、厚み方向の屈折率をそれぞれNx、Ny、Nzとしたときに、Nx−(Ny+Nz)/2の値が0.075〜0.110であり、かつ、
工程Bで得られたフィルムを50℃以上120℃以下の温度で加熱する工程を経た後、工程Cの工程を行う、請求項1に記載の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルムの製造方法。 - ポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる二軸延伸フィルムであって、下記構成要件(1)〜(4)を満たす二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルム。
(1)フィルム長手方向の150℃、30分における熱収縮率が0%〜1%、かつ200℃、30分における熱収縮率が2%〜4%
(2)熱収縮応力曲線において、フィルム長手方向の熱収縮応力の立ち上がり温度が150℃以上
(3)フィルム長手方向の屈折率Nxが1.63以上1.64以下、かつ幅方向の屈折率Nyが1.67以上1.70以下、かつ厚み方向の屈折率Nzが1.48以上1.49以下
(4)広角X線回折測定で得られるフィルム(−105)面の結晶子長が71Å以上80Å以下、かつフィルム(010)面の結晶子長が65Å以上75Å以下
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