JP2019150956A - 積層ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】3層以上の積層構造からなる積層ポリエステルフィルムに関し、フィルム全体のリターデーションを低くすることができ、且つ、スリット工程での生産性を確保できるようにする。【解決手段】ポリエステル共重合体を主成分樹脂とする中間層と、ポリエステル重合体を主成分樹脂とする2層の表層との少なくとも3層を備えた積層ポリエステルフィルムであり、少なくとも一方の表層の固有粘度は0.70〜1.20dl/gであることを特徴とする、積層ポリエステルフィルムを提案する。【選択図】なし

Description

本発明は、偏光板を構成する保護フィルムなどのように、光学フィルムとして利用することができる積層ポリエステルフィルムに関する。
テレビ、パーソナルコンピューター、デジタルカメラ、携帯電話等の液晶表示装置においては、光源から視認側に向かって、光源、裏面側偏光板、液晶層、表面側偏光板の順に積層されることが多い。このうちの偏光板は、傷付き防止などのために、その表面に2軸延伸ポリエステルフィルムなどの保護フィルムを積層することが一般的である。例えば、保護フィルム/偏光膜/保護フィルム、又は、保護フィルム/偏光膜/位相差フィルムなどの構成の偏光板が知られていた。
従来、偏光板を構成する保護フィルムには、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムが用いられてきた。しかし、TACフィルムは、厚みを薄くすると、充分な機械強度を得ることが出来ず、また透湿性が悪化するという問題を抱えていた。そこで近年、偏光板の薄層化のため、TACフィルムの代わりにポリエステルフィルムを用いることが提案されている(例えば特許文献1など参照)。
ポリエステル系フィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムに代表される2軸延伸ポリエステルフィルムは、電気特性、機械的特性、熱的特性、加工性および耐薬品性が優れていることから、上記のように、各種光学部材の保護フィルムとして使用されている。
偏光板を構成する保護フィルムなどの光学用途に用いるフィルムとしては、一般的には光学的な偏りが少ない方が好ましいため、光学異方性(リターデーション)を低くすることが求められる。
しかしながら、2軸延伸ポリエステルフィルムは、複屈折性を有するため、光学異方性(リターデーション)を下げることが難しいという課題を抱えていた。
そのための対策として、例えば、ポリエステルとして共重合ポリエステルを用いることで、リターデーションを小さくする方法が提案されている(特許文献2など参照)。
さらに、光学用途に用いる2軸延伸ポリエステルフィルムに関しては、例えば、良好な透明性および易滑性を有し、また製膜時のスクラッチ傷の発生が起こり難く、かつ透明性に優れ、かつ光干渉色の発生を抑制でき、かつ紫外線に対しても高い耐久性を有するポリエステルフィルムとして、共重合ポリエステルを中間層とし、両最外層の厚さが2.5μm以上である、3層以上の積層構造からなる2軸配向ポリエステルフィルムであって、面内リターデーションが600nm以下であり、内部ヘーズが0.5%以下であり、表面粗さRaが9.0nm以上であり、両最外層以外の層に紫外線吸収剤を含有し、380nmの光線透過率が5.0%以下であることを特徴とする積層ポリエステルフィルムが提案されている(特許文献3)。
特開2004−219620号公報 WO2011−162198号公報 特開2014−205275号公報
特許文献3のような構成の3層以上の積層構造からなる積層ポリエステルフィルムのリターデーションをより下げるためには、中間層ばかりか表層のリターデーションを下げる必要がある。
このような構成の場合、中間層より表層のリターデーションが高いことから、リターデーションを下げるための手段の一つとして、表層の厚みをより薄くすることが挙げられる。しかしながら、表層の厚みが薄くなると、スリット工程において破断しやすくなるなどの新たな問題が生じることが判明した。
そこで本発明は、3層以上の積層構造からなる積層ポリエステルフィルムに関し、フィルムの厚み方向のリターデーションを低くすることができ、且つ、スリット工程での生産性を確保することができる、新たな積層ポリエステルフィルムを提供せんとするものである。
本発明は、ポリエステル共重合体を主成分樹脂とする中間層と、ポリエステル重合体を主成分樹脂とする2層の表層との少なくとも3層を備えた積層ポリエステルフィルムであり、少なくとも一方の表層の固有粘度は0.70〜1.20dl/gであることを特徴とする、積層ポリエステルフィルムを提案する。
本発明が提案する積層ポリエステルフィルムは、中間層にポリエステル共重合体を用いることで、リターデーションを小さくすることができる。さらに、表層のポリエステルの固有粘度を大きくすることで、スリット工程での生産性を確保しつつ、フィルムの厚み方向リターデーションをさらに小さくすることができる。
次に、本発明を実施するための形態の例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
<本積層ポリエステルフィルム>
本発明の実施形態の一例としての積層ポリエステルフィルム(「本積層ポリエステルフィルム」と称する)は、中間層と、2層の表層とを少なくとも有する3層以上の積層構造からなる積層ポリエステルフィルムである。
<中間層>
中間層は、ポリエステル共重合体を主成分樹脂とする層であるのが好ましい。
ここで、「主成分樹脂」とは、中間層を構成する樹脂のうち最も含有量の高い樹脂を示す。
また、本発明において「ポリエステル共重合体」とは、エステル結合に基づく繰り返し単位として、2種以上の単位を有するポリエステルを意味する。
また、本発明において「ポリエステル共重合体」とは、共重合成分が5モル%以上のポリエステル系樹脂をさす。
(ポリエステル共重合体)
中間層の主成分樹脂であるポリエステル共重合体は、結晶性が低く、プレス融着などの実用上頻繁に行われる熱加工を行っても、結晶化による白濁や融着不良を起こさないポリエステル共重合体、言い換えれば非晶性のものであるのが好ましい。具体的には、熱特性を分析する示差走査熱量測定(JIS K7121およびJIS K7122に記載されている方法に基づき)により、求められる融解熱量が0もしくは15J/g以下であるポリエステル共重合体が好ましい。
ポリエステル共重合体としては、ジカルボン酸成分とジオール成分の縮合によって形成されたポリエステル、乳酸のようなヒドロキシカルボン酸成分の縮合によって形成されたポリエステル、ε−カプロラクトンのようなラクトン成分の開環縮合によって形成されたポリエステル等を挙げることができる。更には、これらの異なる縮合様式が併用されたポリエステルであってもよい。これらの中でも、ジカルボン酸成分とジオール成分の縮合によって形成されたポリエステルが好ましい。
なお、ヒドロキシカルボン酸やラクトンの縮合によって形成されるポリエステルの場合は、2種以上の原料を併用することによってポリエステル共重合体とすることができる。また、異なる縮合様式を併用して形成されたポリエステルであれば、自ずとポリエステル共重合体となる。
ポリエステル共重合体における共重合成分の含有割合は、5モル%以上であるのが好ましい。中でも、共重合成分の含有割合は12モル%以上或いは90モル%以下、その中でも20モル%以上或いは80モル%以下であるのがさらに好ましい。
ここで、共重合成分の含有割合とは、主成分以外の成分の含有割合の合計を意味し、「主成分」とは最も多い成分をいう。例えば、成分A:40モル%、成分B:30モル%、成分C:30モル%から構成されるポリエステル共重合体であれば、共重合成分の含有割合は60モル%である。
また、ジカルボン酸成分とジオール成分から形成されるポリエステル共重合体である場合は、ジカルボン酸成分における主成分以外の成分割合と、ジオール成分における主成分以外の成分割合との合計を意味する。例えば、ジカルボン酸成分A:60モル%、ジカルボン酸成分B:40モル%と、ジオール成分A:60モル%、ジオール成分B:40モル%から構成されるポリエステル共重合体であれば、共重合成分の含有割合は80モル%である。
上記ポリエステル共重合体は、光学異方性(リターデーション)をより下げる観点から、ジカルボン酸成分又はジオール成分または両方の成分に、5モル%以上の共重合成分を含むポリエステル共重合体であるのが好ましい。
中でも、上記ポリエステル共重合体は、ジカルボン酸成分又はジオール成分または両方の成分に、12モル%以上或いは50モル%以下、その中でも20モル%以上或いは30モル%以下の共重合成分を含むポリエステル共重合体であるのがさらに好ましい。
上記ポリエステル共重合体のジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ネオペンチル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等を挙げることができる。これらは、一種でも二種以上であってもよい。ジカルボン酸成分として上記のうち2種以上を用いれば、ポリエステル共重合体とすることができる。また、ジカルボン酸成分として上記のうち1種のみを用いる場合は、後述するジオール成分を2種以上用いることにより、ポリエステル共重合体とすることができる。
ジカルボン酸成分における主成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が好ましく、中でもテレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸が好ましい。
上記ポリエステル共重合体のジオール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングルコール、シクロヘキサンジメタノール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール、メトキシポリアルキレングリコール、スピログリコール、イソソルビド、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール等を挙げることができる。これらは、一種でも二種以上であってもよい。ジオール成分として上記のうち2種以上を用いれば、ポリエステル共重合体とすることができる。また、ジオール成分として上記のうち1種のみを用いる場合は、前述のジカルボン酸成分を2種以上用いることにより、ポリエステル共重合体とすることができる。
ジオール成分における主成分としては、エチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール等が好ましく、中でもエチレングリコール又はシクロヘキサンジメタノールが好ましい。
上記ポリエステル共重合体の上記以外の共重合成分としては、酸成分では、例えばフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げることができる。
また、上記以外の共重合成分としてのアルコール成分としては、例えばグリセンリン、ペンタエリスリトール、トリメチロール等の3官能以上の成分を用いてもよい。
上記ポリエステル共重合体の一例として、テレフタル酸又はイソフタル酸又はこれら両方を含むジカルボン酸成分と、エチレングリコール又は1,4−シクロヘキサンジメタノール又はこれら両方を含むジオール成分とを含むポリエステル共重合体を挙げることができる。
例えばポリエチレンテレフタレート・イソフタレート共重合体やポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート・イソフタレート共重合体(PCTA)などに代表される酸成分としてイソフタル酸を有するポリエステル共重合体や、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート共重合体(PCTG)などに代表されるグリコール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールを有するポリエステル共重合体、さらには、グリコール成分に脂環構造を有するポリエステル共重合体などを挙げることができる。
より具体的な一例として、テレフタル酸を主成分として含むジカルボン酸成分と、主成分としてエチレングリコール80〜60(モル比率)に対して1,4−シクロヘキサンジメタノール(「CHDM」)を20〜40(モル比率、合計100)含むグリコール成分とが重縮合してなるポリエステル共重合体、所謂「PETG」を挙げることができる。
なお、ホモポリエチレンテレフタレートであっても、その反応様式上、通常、数モル%以上のジエチレングリコール成分が必ず含まれている。本発明においては、ホモポリエチレンテレフタレートとして製造された場合であっても、ジエチレングリコール成分の含有割合が上記範囲である場合は、ポリエステル共重合体として扱うものとする。
上記ポリエステル共重合体のガラス転移温度(Tg)は、耐熱性や生産性の観点から、20〜150℃であるのが好ましく、中でも40℃以上或いは120℃以下、その中でも60℃以上或いは90℃以下であるのが特に好ましい。
上記ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(JIS K7121およびJIS K7122に準拠)により、30℃から300℃まで10℃/分で昇温後、1分間保持し、次に300℃から30℃まで10℃/分で降温後、1分間保持し、更に30℃から300℃まで10℃/分で再昇温させた際の、ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度とする。
上記ポリエステル共重合体の固有粘度(IV値)は、生産性向上の観点から、0.50〜0.77dl/gであるのが好ましく、中でも0.54dl/g以上或いは0.72dl/g以下、その中でも0.58dl/g以上或いは0.68dl/g以下であるのがさらに好ましい。
上記固有粘度(IV)は、後述の実施例に記載の測定条件で測定することができる。
中間層には、主成分樹脂以外の樹脂を必要に応じて加えてもよい。前記樹脂の種類は特に限定されず、具体的にはポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、主成分樹脂以外のポリエステル樹脂等を挙げることができる。なかでも、主成分樹脂と相溶性を有する樹脂が好ましい。
(その他の成分)
中間層は実質的に粒子を含有しないことが好ましい。ここで言う実質的に含有しないとは、具体的には、粒子の含有量が150ppm以下を指す。フィルムをロール状に安定して巻き取るためには、表面層に粒子を添加すれば十分であるし、また、延伸の条件によっては粒子周囲にボイドが形成され、光透過性が低下するおそれがあるからである。
中間層は、紫外線吸収剤を含有することもできる。その含有量は、0.10〜10.0質量%の範囲であるのが好ましい。
中間層における紫外線吸収剤の含有量が0.10質量%以上であれば、紫外線によりポリエステルフィルムが劣化することを抑制することができ、他方、当該含有量が10.0質量%以下であれば、表面に紫外線吸収剤がブリードアウトするのを抑制することができ、接着性が低下したり表面機能性が悪化したりするのを防ぐことができる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、1,3,5−トリアジン系化合物、ベンゾオキサジノン系化合物等を挙げることができ、これら1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。色調を考慮した場合、黄色味が付きにくいベンゾオキサジノン系化合物が好適である。
(配向性)
中間層は、2軸延伸された層であって、それでいて、配向性を有しないことが好ましい。
ポリエステル共重合体を主成分樹脂とする中間層を2軸延伸することにより、強度及び寸法安定性を高めることができる。そして、2軸延伸によって配向性を有する中間層を、熱処理によって再び無配向とすることにより、積層ポリエステルフィルムのリターデーションを小さくすることができる。
(中間層の厚さ)
中間層の厚さは、7〜120μmであるのが好ましい。
中間層の厚さが7μm以上であれば、取扱い性の点から好ましく、120μm以下であれば、偏光板に組み込むことが容易であるから好ましい。
かかる観点から、前記中間層の厚さは7〜120μmであるのが好ましく、中でも20μm以上或いは95μm以下、その中でも33μm以上或いは70μm以下であるのがさらに好ましい。
<表層>
表層は、ポリエステル重合体を主成分樹脂とする層であるのが好ましい。
なお、2層の表層の主成分樹脂は、互いに同じ樹脂であっても、異なる樹脂であってもよい。
ここで、「主成分樹脂」とは、表層を構成する樹脂のうち最も含有量の高い樹脂を示す。
(ポリエステル重合体)
表層の主成分樹脂をなすポリエステル重合体は、熱特性を分析する示差走査熱量測定(JIS K7121およびJIS K7122に記載されている方法に基づき)により、求められる融解熱量が15J/gより大きいポリエステル重合体、言い換えれば結晶性を有するものが好ましい。
融解熱量は、示差走査熱量測定により、30℃から300℃まで10℃/分で昇温後、1分間保持し、次に300℃から30℃まで10℃/分で降温後、1分間保持し、更に30℃から300℃まで10℃/分で再昇温させた際の再昇温過程における融解ピーク面積から算出することができる。
表層の主成分樹脂をなすポリエステル重合体は、ジカルボン酸成分とジオール成分の縮合によって形成されたポリエステル、乳酸のようなヒドロキシカルボン酸成分の縮合によって形成されたポリエステル、ε−カプロラクトンのようなラクトン成分の開環縮合によって形成されたポリエステル等を挙げることができる。これらの中でも、ジカルボン酸成分とジオール成分の縮合によって形成されたポリエステルが好ましい。特に、ジカルボン酸成分又はジオール成分または両方の成分に、共重合成分が5モル%未満のポリエステル系樹脂であることが好ましい。中でも、融点が比較的高いという観点から、ホモポリエステルであるのが好ましい。
上記ポリエステル重合体としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロへキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリ−ε−カプロラクトン等のポリエステル系樹脂などを挙げることができる。
表層には、主成分樹脂以外の樹脂を必要に応じて加えてもよい。前記樹脂の種類は特に限定されず、具体的にはポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、主成分樹脂以外のポリエステル樹脂等を挙げることができる。なかでも、主成分樹脂と相溶性を有する樹脂が好ましい。
(固有粘度)
少なくとも一方の表層の固有粘度は0.70〜1.20dl/gであるのが好ましい。
表層の固有粘度が0.70dl/g以上であれば、スリット工程での生産性を確保しつつ、表層の厚みを薄くすることができ、積層ポリエステルフィルムのリターデーションをより小さくすることができる。他方、表層の固有粘度が1.20dl/g以下であれば、せん断発熱による樹脂の劣化を抑制できることから好ましい。
かかる観点から、表層の固有粘度は0.70〜1.20dl/gであるのが好ましく、中でも0.73dl/g以上或いは1.08dl/g以下、その中でも0.77dl/g以上或いは1.00dl/g以下であるのがさらに好ましい。
上記の固有粘度は、表層のうち少なくとも一方が該当することが好ましく、両表層とも該当することがより好ましい。また、一方の表層と他方の表層の固有粘度は同一であっても異なっていてもよく、好適な範囲の組み合わせについても同様である。中でも、両表層の固有粘度が同一であると、スリット工程での生産性が良好であり、かつ2種3層での共押出成形が可能となるため好ましい。
ここで、「両表層の固有粘度が同一である」とは、固有粘度の差が0.10dl/g以下、好ましくは0.05dl/g以下であることを意味する。
表層の固有粘度を上記範囲に調整する観点から、表層の主成分樹脂であるポリエステル重合体の固有粘度(IV値)は0.70〜1.35dl/gであるのが好ましく、中でも0.80dl/g以上或いは1.20dl/g以下、その中でも0.85dl/g以上或いは1.10dl/g以下であるのがさらに好ましい。
なお、表層の固有粘度は、原料の配合比などが分かっている場合には、後述する実施例で示したような方法で測定することができる。これに対し、原料の配合比などが分からない場合には、次の方法で算出することができる。
先ず、光学顕微鏡や電子顕微鏡などで、積層ポリエステルフィルムの断面を観察して、表層及び中間層の厚みを測定する。次に、積層ポリエステルフィルム全体と積層ポリエステルフィルムの中間層の固有粘度を後述する実施例に記載した測定方法によって測定する。
この際、積層ポリエステルフィルム全体の固有粘度は、後述する実施例で示した方法により測定すればよい。他方、積層ポリエステルフィルムの中間層の固有粘度は、積層ポリエステルフィルムの表層をミクロトーム等で完全に除去したサンプルを測定サンプルとして測定すればよい。
そして、積層ポリエステルフィルムの各層の厚み、および各サンプルの固有粘度から、次の式より、積層ポリエステルフィルムの表層の固有粘度ηを算出することができる。
η={(a+b)/a}×[η−{b/(a+b)}×η
η:積層ポリエステルフィルム全体の固有粘度
η:表層の固有粘度
η:中間層の固有粘度
a:表層の合計厚み
b:中間層の厚み
(表層におけるポリエステル重合体と中間層におけるポリエステル共重合体との関係)
表層における前記ポリエステル重合体の融点は、前記中間層における前記ポリエステル共重合体のガラス転移温度よりも150〜250℃高いことが好ましい。
上記ポリエステル重合体の融点(Tm)が、上記ポリエステル共重合体のガラス転移温度(Tg)よりも十分に高ければ、後述するように、中間層を無配向にするために高温での熱処理を行った場合にも、表層は溶融乃至流動状態にはならず、シート状を保持することができる。
かかる観点から、前記ポリエステル重合体の融点は、前記ポリエステル共重合体のガラス転移温度よりも150〜250℃高いことが好ましく、中でも160〜230℃高いことがさらに好ましく、その中でも170〜210℃高いことがさらに好ましい。
かかる観点から、上記ポリエステル重合体の融点(Tm)は、200℃〜300℃の範囲であるのが好ましく、中でも230℃以上或いは290℃以下、中でも250℃以上或いは270℃以下であるのがさらに好ましい。
(その他の成分)
表層には、取り扱いを容易にするために透明性を損なわない条件で粒子を含有させてもよい。
この際の粒子の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子や、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。
粒子の粒径は、大き過ぎると、フィルムのヘーズが大きくなり透明性が低下する可能性があり、小さ過ぎると、表面粗度が小さくなりすぎてフィルムの取り扱いが困難になる可能性があるため、0.05μm〜5.0μmであるのが好ましく、中でも0.1μm以上或いは4.0μm以下、その中でも0.3μm以上或いは3.5μm以下であるのがさらに好ましい。
表層の粒子含有量は、多過ぎるとヘーズが大きくなる可能性があり、少な過ぎるとフィルムの取り扱いが困難になる可能性があるため、0.001〜30.0質量%であるのが好ましく、中でも0.01質量%以上或いは10.0質量%以下、その中でも0.1質量%以上或いは5.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
(配向性)
表層は、2軸延伸された層であって、配向性を有することが好ましい。
ポリエステル重合体を主成分樹脂とする表層を2軸延伸することにより、強度及び寸法安定性を高めることができる。そして、2軸延伸によって配向性を有する表層を熱処理したとしても、無配向とはならない。
(表層の厚さ)
各表層の厚さはいずれも、積層ポリエステルフィルム全体の0.5〜10%であるのが好ましい。
各表層の厚さが十分に小さければ、積層ポリエステルフィルムのリターデーションをより小さくすることができる一方、小さ過ぎると生産性が悪化するなどの問題が生じる可能性がある。
かかる観点から、各表層の厚さは、積層ポリエステルフィルム全体の0.5〜10%であるのが好ましく、中でも0.8%以上或いは8.0%以下、その中でも1.0%以上或いは5.0%以下であるのがさらに好ましい。
また、同様の観点から、いずれの各表層も、厚さは2.5μm未満であるのが好ましく、中でも0.3μm以上或いは2.0μm以下、その中でも0.5μm以上或いは1.5μm以下であるのがさらに好ましい。
<本積層ポリエステルフィルムの物性>
本積層ポリエステルフィルムは、強度及び寸法安定性が高いという観点から、2軸延伸フィルムであるのが好ましい。
本積層ポリエステルフィルムの厚みは12〜125μmであるのが好ましい。
本積層ポリエステルフィルムの厚みが12μm以上であれば、取扱い性の点から好ましく、125μm以下であれば、偏光板に組み込むことが容易であるから好ましい。
かかる観点から、本積層ポリエステルフィルムの厚みは12〜125μmであるのが好ましく、中でも25μm以上或いは100μm以下、その中でも38μm以上或いは75μm以下であるのがさらに好ましい。
本積層ポリエステルフィルム全体の固有粘度は、製膜の安定性の点から、0.55〜0.75dl/gであるのが好ましく、中でも0.57dl/g以上或いは0.70dl/g以下、その中でも0.59dl/g以上或いは0.63dl/g以下であるのがさらに好ましい。
本積層ポリエステルフィルムの厚み方向リターデーション(Rth)は900nm以下であるのが好ましい。
本積層ポリエステルフィルムの厚み方向リターデーション(Rth)が900nm以下であれば、偏光板を構成する保護フィルムなどの光学用途に用いることができる。
かかる観点から、本積層ポリエステルフィルムの厚み方向リターデーション(Rth)は900nm以下であるのが好ましく、中でも1nm以上或いは500nm以下、その中でも10nm以上或いは300nm以下であるのがさらに好ましい。
本積層ポリエステルフィルムの厚み方向リターデーション(Rth)が900nm以下であれば、偏光板を構成する保護フィルムなどの光学用途に用いることができる。
かかる観点から、本積層ポリエステルフィルムの厚み方向リターデーション(Rth)は900nm以下であるのが好ましく、中でも1nm以上或いは500nm以下、その中でも10nm以上或いは300nm以下であるのがさらに好ましい。
厚み方向リターデーション(Rth)は、後述の実施例に記載の測定条件で測定することができる。
また、本積層ポリエステルフィルムの面内リターデーション(R)は100nm以下であるのが好ましく、中でも1nm以上或いは80nm以下、その中でも5nm以上或いは60nm以下であるのがさらに好ましい。
本積層ポリエステルフィルムの面内リターデーション(R)が100nm以下であれば、偏光板を構成する保護フィルムなどの光学用途に用いることができる。
面内リターデーション(R)は、後述の実施例に記載の測定条件で測定することができる。
本積層ポリエステルフィルムの端裂抵抗の値は60N以上であるのが好ましい。
本積層ポリエステルフィルムの端裂抵抗の値が60N以上であれば、スリット工程での生産性が良好となることから好ましい。
かかる観点から、本積層ポリエステルフィルムの端裂抵抗の値は60N以上であるのが好ましく、中でも70N以上或いは500N以下、その中でも75N以上或いは300N以下であるのがさらに好ましい。
端裂抵抗は、後述の実施例に記載の測定条件で測定することができる。
<本積層ポリエステルフィルムの製造方法>
次に、本積層ポリエステルフィルムの製造方法の一例について説明する。但し、本積層ポリエステルフィルムの製造方法が次に説明する製造方法に限定されるものではない。
上記ポリエステル共重合体を主成分樹脂とする中間層形成用原料と、上記ポリエステル重合体を主成分樹脂とする表面側表層形成用原料と、上記ポリエステル重合体を主成分樹脂とする裏面側表層形成用原料とを、共押出し法によって3層に共押出し、次に延伸し、熱処理して、本積層ポリエステルフィルムを作製することができる。
上記ポリエステル共重合体を中間層形成用原料に用いることで、延伸による配向を熱処理によって再び無配向とすることができ、リターデーションを小さくすることができる。
この際、中間層を無配向にするためには、中間層を溶融乃至流動状態に近い状態とすることができるような高温での熱処理を行う必要がある。しかし、中間層単層では製造困難であるため、そのように熱処理した場合にも溶融乃至流動状態とはならない表層を表裏両側に設ける必要がある。そのためには、上記ポリエステル重合体を当該表層に用いるのが好ましい。
表層形成用原料に、ポリエステル重合体を用いているため、上記熱処理を施しても表層は無配向とならない。そのため、リターデーションをより小さくするためには、表層の厚みを薄くする必要がある。しかし、従来の技術において表層を薄くすると、スリット工程において破断しやすくなるなどの問題が生じる。
そこで、表層の主成分樹脂として、固有粘度の大きなポリエステルを用いて、表層の固有粘度を大きくすることで、スリット工程での生産性を確保しつつ、表層の厚みを薄くすることができ、リターデーションをより小さくすることができる。
上記ポリエステル共重合体を主成分樹脂とする中間層形成用原料と、上記ポリエステル重合体を主成分樹脂とする表面側表層形成用原料と、上記ポリエステル重合体を主成分樹脂とする裏面側表層形成用原料とを、共押出し法によって3層に共押出することにより、積層界面で界面剥離が生じるのを抑えることができる。
具体的には、例えば、上記原料をそれぞれ溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱溶融し、次に、溶融したポリマーをダイから3層に押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移点以下の温度になるように急冷固化し、未配向積層シートを得るようにすればよい。
次に、このようにして得られた未延伸シートを2軸方向に延伸すればよい。
この際、前記未延伸シートを好ましくは機械方向(縦方向)に80〜130℃で1.3〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、幅方向(横方向)に90〜160℃で1.3〜6倍延伸を行うのが好ましい。
そして次に、中間層が溶融乃至流動状態に近い状態となるように、高温で熱処理を行うのが好ましい。
この際、熱処理温度は、前記中間層における前記ポリエステル共重合体のガラス転移温度より100℃以上高い温度で、前記表層における前記ポリエステル重合体の融点以下の温度範囲とするのが好ましい。
さらに、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩するのが好ましい。
<本積層ポリエステルフィルムの用途>
本積層ポリエステルフィルムは、偏光板を構成する保護フィルムなどの光学用途に用いる光学フィルムとして有効に利用することができる。
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
(1) ヘーズ、全光線透過率の測定
JIS−K7136に準じ、日本電色工業製濁度計NDH−300Aによりフィルムのヘーズ及び全光線透過率を測定した。
(2)リターデーションの測定
王子計測機器(株)製 位相差測定装置(KOBRA−21ADH)を用いた。フィルム幅方向における中央部から3.5cm×3.5cmでサンプルを切り出し、フィルム幅方向が本測定装置にて定義されている角度が0°となるように装置に設置し、入射角0°設定における波長590nmの面内リターデーション(R)を測定した。
厚み方向リターデーション(Rth)については屈折率モードにて入射角50°における波長590nmのリターデーションを測定した。
(3)積層フィルムの表層の固有粘度(dl/g)の測定
各ポリエステル原料レジンを、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒中に溶解し、毛細管粘度計を用いて、30℃での1.0g/dlの濃度の溶液の流下時間、および、溶媒のみの流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用いて、固有粘度を算出した。その際、Huggins定数を0.33と仮定した。
次に、各積層ポリエステルフィルムの表層に用いる原料の配合比から、表層部分全体の押出成型前の固有粘度を算出した。
表層及び中間層の双方に、後述の実施例1の表層部分のポリエステル(固有粘度0.96dl/g)を原料として使用し、後述する実施例1と同じ成形機、成形条件にて、二軸延伸フィルムを作成した。得られた二軸延伸フィルムとの固有粘度を上記と同様に測定した結果、原料に対して約10%低下していた。
よって、実施例中のポリエステルフィルムの表層の固有粘度は、押出成型前の表層部分全体の固有粘度の値に対して0.9倍となるように計算した値を、実際の積層ポリエステルフィルムの表層の固有粘度とみなし、その値を表に記載した。
(4)積層ポリエステルフィルム全体の固有粘度(dl/g)の測定
積層ポリエステルフィルムを、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒中に溶解し、毛細管粘度計を用いて、30℃での1.0(g/dl)の濃度の溶液の流下時間、および、溶媒のみの流下時間を測定した。それらの時間比率から、Hugginsの式を用いて、固有粘度を算出した。その際、Huggins定数を0.33と仮定した。
(5)端裂抵抗の測定
JIS C2318−1975に準拠し、MD(機械方向)・TD(幅方向)それぞれロールサンプルの右端、中央、左端の3点の測定箇所で測定し、各位置から切り出した3点の平均値を端裂抵抗値とした。
(6)スリット工程での生産性の評価
MD(機械方向)・TD(幅方向)の端裂抵抗の測定結果に基づいて、スリット工程における生産性を、以下の基準で評価した。
◎(very good):MD,TDの端裂抵抗がいずれも75N以上
〇(good) :MD,TDの端裂抵抗のうちいずれかが60N以上75N未満
×(poor) :MD,TDの端裂抵抗のうちいずれかが60N未満
(7)虹ムラの評価
リターデーション(Rth)の測定結果に基づいて、偏光下におけるフィルムの虹ムラを、以下の基準で評価した。
◎(very good):リターデーション(Rth)が500nm以下
〇(good) :リターデーション(Rth)が500nmより大きく900nm以下
×(poor) :リターデーション(Rth)が900nmより大きい
[原料]
<ポリエステル重合体>
・PET−A:ホモポリエチレンテレフタレート、融解熱量(JIS K7121)29.6J/g、固有粘度1.1dl/g、融点245℃、ガラス転移温度79℃
・PET−B:ホモポリエチレンテレフタレート、融解熱量(JIS K7121)31.6J/g、固有粘度0.82dl/g、融点248℃、ガラス転移温度78℃
・PET−C:ホモポリエチレンテレフタレート、融解熱量(JIS K7121)35.7J/g、固有粘度0.64dl/g、融点250℃、ガラス転移温度78℃
・PET−D:ホモポリエチレンテレフタレートに、平均粒径3μmのシリカ粒子を0.6質量%配合したマスターバッチ(固有粘度0.62dl/g)
<ポリエステル共重合体>
・共重合ポリエステルX:テレフタル酸78モル%、イソフタル酸22モル%からなるジカルボン酸成分と、エチレングリコールからなるジオール成分とを含むポリエステル共重合体、融解熱量(JIS K7121)0J/g、固有粘度0.70dl/g、ガラス転移温度64℃
・共重合ポリエステルY:テレフタル酸からなるジカルボン酸成分と、エチレングリコール68モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール32モル%からなるグリコール成分とを含むポリエステル共重合体、融解熱量(JIS K7121)0J/g、固有粘度0.80dl/g、ガラス転移温度70℃
[実施例1]
表層として、PET−Aを70質量%、PET−Dを30質量%の割合で混合した原料を用いた。
中間層として、共重合ポリエステルXを60質量%、PET−Cを40質量%の割合で混合した原料を用いた。
表層および中間層の原料をそれぞれ別個の溶融押出機により、それぞれの押出温度は280℃で共押出をして、25℃に冷却したキャスティングドラム上で冷却固化させることで、2種3層(表層/中間層/表層)の無配向シートを得た。
次いで、ロール延伸機で機械方向に85℃で3.2倍に延伸した後、更にテンター内にて90℃で予熱した後に、幅方向に110℃で4.0倍に延伸した。最後に240℃で熱処理を行い、厚みが50μm(各表層:0.75μm、中間層:48.5μm)の積層ポリエステルフィルム(サンプル)を得た。評価結果を表1に示す。
[実施例2〜3及び比較例1〜3]
下記表1に記載の組成および製造条件で行った以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
Figure 2019150956
(考察)
株式会社アタゴ製のアッベ式屈折計による、フィルム面内方向および厚み方向の屈折率の測定により、実施例1〜3の中間層は配向性を有さないものであった。
比較例3では、表層および中間層にポリエステル重合体を用いた結果、スリット工程での生産性は良好であるものの、リターデーション(Rth)の低いフィルムは得られなかった。
比較例1では、比較例3に対して中間層にポリエステル共重合体を用いたが、リターデーション(Rth)の低いフィルムは得られなかった。これは、表層の固有粘度が低いため、スリット工程での生産性を確保するためには表層を薄くすることが出来ず、表層の配向性が影響したものである。
比較例2では、比較例1に対して表層を薄くし、熱固定温度を若干上昇させたが、リターデーション(Rth)の低下効果は僅かであり、一方、スリット工程での生産性が大幅に悪化した。
実施例1〜3では、中間層にポリエステル共重合体を使用し、表層の固有粘度を所定以上とした結果、リターデーション(Rth)を大幅に低減することが出来た。これは、配向性を有する表層の厚みを薄くしたり、熱固定温度を高めたりすることが可能であるためと考えられる。更に驚くべきことに、比較例2とは異なり、表層を薄くしてもスリット工程での生産性を極めて良好に維持することが出来ることが見出された。

Claims (10)

  1. ポリエステル共重合体を主成分樹脂とする中間層と、ポリエステル重合体を主成分樹脂とする2層の表層との少なくとも3層を備えた積層ポリエステルフィルムであり、
    少なくとも一方の表層の固有粘度は0.70〜1.20dl/gであることを特徴とする、積層ポリエステルフィルム。
  2. 前記各表層の厚さが、積層ポリエステルフィルム全体の0.5〜10%である請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
  3. 前記各表層の厚さが2.5μm未満である請求項1又は2に記載の積層ポリエステルフィルム。
  4. 前記表層における前記ポリエステル重合体の融点は、前記中間層における前記ポリエステル共重合体のガラス転移温度よりも150〜250℃高いことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  5. 前記中間層における前記ポリエステル共重合体は、テレフタル酸又はイソフタル酸又はこれら両方を含むジカルボン酸成分と、エチレングリコール又は1,4−シクロヘキサンジメタノール又はこれら両方を含むジオール成分とを含むポリエステル共重合体であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  6. 前記中間層における前記ポリエステル共重合体は、共重合成分が5モル%以上含まれていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  7. 積層ポリエステルフィルムは2軸延伸フィルムであり、且つ、前記中間層は配向性を有しないことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  8. 積層フィルム全体の固有粘度は0.55〜0.75dl/gであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  9. 積層フィルムの厚み方向リターデーション(Rth)が900nm以下である請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルムを用いた光学フィルム。
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