以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
図1は、実施形態に係る樹脂成型品が適用された車両用表示装置の概略構成を示す斜視図である。図2は、実施形態に係る樹脂成型品が適用された指針の概略構成を示す斜視図である。図3は、実施形態に係る樹脂成型品における微細凹凸の表面粗さ、及び、配列ピッチを説明する模式的な斜視図である。図4は、実施形態に係る樹脂成型品における配列ピッチの測定を説明する模式図である。図5は、実施形態に係る樹脂成型品における85°グロス値を説明する模式図である。図6は、複数の微細凹凸の表面粗さと配列ピッチとが85°グロス値に与える影響の実測結果を表す線図である。図7は、複数の微細凹凸の表面粗さと配列ピッチとが85°グロス値に与える影響の第1のシミュレーション結果を表す線図である。図8は、第1のシミュレーション条件を説明する模式図である。図9は、複数の微細凹凸の表面粗さと配列ピッチとが85°グロス値に与える影響の第2のシミュレーション結果を表す線図である。図10は、第2のシミュレーション条件を説明する模式図である。図11は、塗装レスの樹脂成型品において複数の微細凹凸の表面粗さと配列ピッチとが85°グロス値に与える影響の実測結果を表す線図である。
本実施形態に係る樹脂成型品1は、図1に示すように、車両に搭載される車両用表示装置100に適用される。本実施形態の車両用表示装置100は、いわゆる車載メータを構成するものであり、例えば、車両のダッシュボードに設けられたインストルメントパネルに搭載され、車両の運転に供される情報として当該車両に関する種々の情報を表示する。車両用表示装置100は、車両に搭載され当該車両に関する情報を表示する表示部101と、表示部101の周り、又は、表示部101の一部に設けられた樹脂成型品1とを備える。そして、車両用表示装置100は、樹脂成型品1の表面に複数の微細凹凸2(図3等参照)が成型されることで、表面の光沢を抑制している。
なお、図1に示す車両用表示装置100の幅方向とは、典型的には、この車両用表示装置100が適用される車両の車幅方向に相当する。以下の説明では、車両用表示装置100の幅方向において、当該車両用表示装置100の前面に向かって左側(図1中左側)を幅方向左側、向かって右側(図1中右側)を幅方向右側という場合がある。また、図1に示す車両用表示装置100の奥行き方向とは、典型的には、この車両用表示装置100が適用される車両の前後方向に相当する。また、車両用表示装置100の前面側とは、車両の運転席と対面する側であり、典型的には、当該運転席に座った運転者によって視認される側である。後述する目視位置108は、車両用表示装置100の奥行き方向前面側に位置する。一方、車両用表示装置100の背面側とは、奥行き方向において前面側とは反対側であり、典型的には、インストルメントパネルの内部に収容される側である。
表示部101は、光源部102を有しており、当該光源部102が出射する光を用いて車両に関する種々の情報を表示するものである。表示部101は、車両に関する情報として、例えば、車速、走行用動力源の出力回転数、積算走行距離、ウォーニング表示(いわゆるテルテール)、シフトポジションインジケータ等、車両の運転に供される種々の情報を表示する。ここでは、表示部101は、一例として、幅方向に沿って間隔をあけて2つ設けられており、それぞれ、光源部102、文字板103、指針104等を含んで構成され、車両に関する種々の計測値を当該指針104によってアナログ式で表示するアナログ計器である。光源部102は、文字板103の奥行き方向背面側に配置される。文字板103は、車両に関する情報として、例えば、速度、出力回転数等の計測値を表し指針104によって指し示される指標部やウォーニング表示用の図柄等が描かれている。文字板103は、例えば、透明生地のポリカーボネイト製シートであり、暗色系のインクによって、上記指標部やウォーニング表示用の図柄等に対応した形状が中抜きされた印刷が施される。光源部102は、LED素子等の光源本体、当該光源本体から照射された光を文字板103側に拡散させる拡散板等を含んで構成される。各表示部101は、光源部102から照射される光が、文字板103において指標部やウォーニング表示用の図柄等が切り抜きされた部分を透過することで当該指標部やウォーニング表示用の図柄等が表示状態となる。指針104によって指し示される指標部は、この指針104の先端の回動軌跡に沿った円弧、当該円弧に沿って等間隔で付された複数の目盛、数字等を含んで構成される。指針104は、表示部101の一部を構成し、車両に関する情報を指し示す。指針104は、文字板103の奥行き方向前面側に位置し、車両用表示装置100構成する筐体101a内に設けられるモータが駆動することで回動し、車両に関する種々の計測値(速度、出力回転数等)に応じて指標部の所定の位置を指し示す。各表示部101は、指針104によって現在の速度、出力回転数が指し示される。なお、表示部101は、光源部102を有し、当該光源部102によって車両に関する種々の情報を表示するものであればよく、例えば、液晶表示装置等によって構成されるものであってもよい。
ここでは、指針104は、図2に例示するように、光源部102の一部を構成するLED素子102Aからの光によって発光する指針発光体141と、指針発光体141に装着され当該指針発光体141を覆う指針カバー142とを有する。指針発光体141は、モータからの動力が伝達され回動する指針本体部である。指針発光体141は、光を透過する透過性の樹脂材料等によって棒状に形成される。指針発光体141は、基端部となる一方の端部側に上記モータからの動力が伝達される回動軸部(不図示)が形成され当該回動軸部にLED素子102Aからの光が入射し全体が発光する。指針カバー142は、指針先端部カバー143と、指針基端部カバー144と、遮蔽部145とを含んで構成され、これらが光を透過しない遮光性の樹脂材料等によって一体で形成される。指針先端部カバー143は、指針発光体141の先端部を覆うものである。指針先端部カバー143は、指針発光体141の延在方向に沿ってスリット143aを有しており、当該スリット143aから指針発光体141の一部が露出している。LED素子102Aからの光は、回動軸部を介して指針発光体141に入射し基端部側から先端部側に伝播し、スリット143aを介して外部に出射され、指針発光体141を発光させる。指針基端部カバー144は、指針発光体141の基端部、すなわち、上述の回動軸部が形成された側の端部を覆うものであり、指針先端部カバー143と連続するようにして形成される。指針基端部カバー144は、指針先端部カバー143のようなスリット143aを有していない。遮蔽部145は、光源部102の一部を構成するLED素子102Aと乗員等の目視位置108との間に介在しLED素子102Aから目視位置108側に向けて照射された光を遮蔽する。遮蔽部145は、円筒のキャップ状に形成される。遮蔽部145は、目視位置108側に位置する一端側が閉塞し、LED素子102A側に位置する他端側が開口している。
樹脂成型品1は、表示部101の周り、又は、表示部101の一部に設けられる。ここでは、樹脂成型品1は、表示部101の周り、及び、表示部101の一部の両方に設けられる。本実施形態の樹脂成型品1は、車両用表示装置100の見返し板105、及び、指針104に適用される。見返し板105は、筐体101aの奥行き方向前面側に組み付けられ、文字板103等の周囲を囲って当該文字板103等を押える枠状の部材である。見返し板105は、車両用表示装置100において、奥行き方向前面側に露出し運転者を含む乗員の視界にはいりうる部分の化粧材となるものである。見返し板105は、各表示部101を囲う目視位置対向面としての囲い面106と、当該囲い面106の縁部から奥行き方向に沿って立設される立ち面107とを含んで構成される。囲い面106は、各表示部101に対応する部分に切り欠きを有し当該切り欠きから各表示部101が露出する面である。立ち面107は、囲い面106の縁部から奥行き方向に沿って突出する面である。つまり、囲い面106は、奥行き方向に対して表示部101が有する光源部102と乗員等の目視位置108との間に位置すると共に、光源部102と目視位置108との並び方向、すなわち、奥行き方向と交差する面、さらに言えば、奥行き方向に沿って目視位置108と対向する面として形成される。一方、立ち面107は、奥行き方向に対して表示部101が有する光源部102と乗員等の目視位置108との間に位置すると共に、光源部102と目視位置108との並び方向、すなわち、奥行き方向に沿って運転者側に突出する。ここでは、立ち面107は、囲い面106の鉛直方向上下両側に幅方向に沿ってそれぞれ1つずつ、囲い面106の幅方向左右両側に鉛直方向に沿って1つずつ、合計4つ設けられるがこれに限らない。
そして、本実施形態の樹脂成型品1は、少なくとも囲い面106に適用されることで、複数の微細凹凸2が成型された表面によって囲い面106を構成し、これにより、外光等の反射光として囲い面106に入射した光の反射を抑制し、当該囲い面106の光沢を抑制するようにしている。つまりこの場合、囲い面106に適用される樹脂成型品1は、複数の微細凹凸2が成型された表面に対して、目視位置108側から光が入射する位置に配置されることとなる。さらにここでは、樹脂成型品1は、表示部101の一部を構成し、車両に関する情報を指し示す指針104にも適用されることで、複数の微細凹凸2が成型された表面によって指針104を構成し、これにより、指針104の光沢を抑制し艶消しするようにしている。より詳細には、樹脂成型品1は、複数の微細凹凸2が成型された表面によって指針104を構成する指針基端部カバー144の目視位置108側の表面、及び、遮蔽部145の目視位置108側の表面を構成する。つまりこの場合、指針104に適用される樹脂成型品1は、車両用表示装置100において、奥行き方向前面側に露出し運転者を含む乗員の視界にはいりやすい位置でかつ光沢を必要としない位置に配置されることとなる。
以下、樹脂成型品1について、具体的に説明する。
図3等に示す樹脂成型品1の表面に成型される複数の微細凹凸2は、当該複数の微細凹凸2による表面粗さSaと当該複数の微細凹凸2の配列ピッチPiとが、少なくとも下記の条件1を満たすように成型される。
(条件1)表面粗さSaが1.0μm以上10.0μm以下でかつ配列ピッチPiが3.0μm以上18.0μm以下である(1.0μm≦Sa≦10.0μm、かつ、3.0μm≦Pi≦18.0μm)。
ここで、複数の微細凹凸2の表面粗さSaとは、微細凹凸2の深さ(高さ)を表す指標(パラメータ)であり、微細凹凸2が成型された表面の平滑度等に応じた指標で表すことができる。ここでは、表面粗さSaは、算術平均粗さSaである。ここでの算術平均粗さSaは、二次元における算術平均粗さRaを三次元に拡張した指標であり、測定対象領域Aにおいて、Z(x,y)の絶対値の平均を表す(図3参照)。当該算術平均粗さSaは、三次元表示の図の上では、谷部が絶対値化により山部に変化した状態で測定対象領域Aの算術平均を表したものに相当する。当該算術平均粗さSa、すなわち、表面粗さSaは、例えば、下記の数式(1)で表すことができる。
当該複数の微細凹凸2の表面粗さ(算術平均粗さ)Saは、予め設定された所定の表面粗さ測定方法によって測定することができる。樹脂成型品1の表面に成型される複数の微細凹凸2は、予め設定された所定の表面粗さ測定方法によって測定された表面粗さSaが上記の条件1を満たすように成型される。
なお、複数の微細凹凸2の表面粗さSaを測定するために予め設定される所定の表面粗さ測定方法としては、一例として、微細凹凸2の表面粗さSaの測定に用いる測定機器として『オリンパス株式会社製 3D測定レーザー顕微鏡 LEXT OLS4000』を用いた方法を用いる。この場合、『オリンパス株式会社製 3D測定レーザー顕微鏡 LEXT OLS4000』において、測定機能として「面粗さ解析」機能を選択すると共に解析パラメータとして「粗さパラメータ」を選択し、さらにノイズ除去機能としてうねり成分を除去するためのカットオフ周波数を80μmとした「ガルシアンフィルタ(ノイズフィルタ)」機能を選択する。その上で、『オリンパス株式会社製 3D測定レーザー顕微鏡 LEXT OLS4000』によって、樹脂成型品1の表面の画像を測定倍率20倍で撮影し、複数の微細凹凸2の表面粗さ(算術平均粗さ)Saを測定する。
一方、複数の微細凹凸2の配列ピッチPiとは、隣接する微細凹凸2の頂点間距離の、予め設定される測定対象領域Aにおける平均値を用いる(図3参照)。当該複数の微細凹凸2の配列ピッチPiは、予め設定された所定のピッチ測定方法によって測定することができる。樹脂成型品1の表面に成型される複数の微細凹凸2は、予め設定された所定のピッチ測定方法によって測定された配列ピッチPiが上記の条件1を満たすように成型される。
なお、複数の微細凹凸2の配列ピッチPiを測定するために予め設定される所定のピッチ測定方法としては、一例として、表面粗さSaと同様に、微細凹凸2の配列ピッチPiの測定に用いる測定機器として『オリンパス株式会社製 3D測定レーザー顕微鏡 LEXT OLS4000』を用いた方法を用いる。この場合、『オリンパス株式会社製 3D測定レーザー顕微鏡 LEXT OLS4000』において、測定機能として「プロファイル測定」機能を選択すると共に、さらにノイズ除去機能として「ワンショットフィルタ」の「鋸状表面」機能を選択する。その上で、『オリンパス株式会社製 3D測定レーザー顕微鏡 LEXT OLS4000』によって、樹脂成型品1の表面の画像を測定倍率100倍で撮影する。そして、このようにして撮影された樹脂成型品1の表面のプロファイルデータ(輪郭データ)から複数の微細凹凸2の配列ピッチPiを測定する。図4は、上記のようにして撮影された樹脂成型品1の表面のプロファイルデータの一例を表している。図4中、横軸は、撮像された樹脂成型品1の表面の任意の方向における位置を表し、縦軸は当該表面位置における表面の高さを表す。ここでは、上記のようにして撮影された樹脂成型品1の表面のプロファイルデータからピークを抽出し、隣接するピーク間の距離を測定し、これを複数の微細凹凸2の配列ピッチPiの測定値とする。
ここで、プロファイルデータにおけるピークは、例えば、下記のようにして抽出する。まず、プロファイルデータが表す樹脂成型品1の表面の輪郭線L上の任意の点を基準点P1とする。次に、輪郭線L上の基準点P1から横軸方向一方側、ここでは、向かって右側に存在するピーク候補点、又は、ボトム候補点を順に抽出する。ここで、ピーク候補点とは、高さが増加から減少に転換し傾きが0となる点に相当しいわゆる極大値となる点に相当する。一方、ボトム候補点とは、高さが減少から増加に転換し傾きが0となる点に相当しいわゆる極小値となる点に相当する。図4の例では、基準点P1の右側で高さが減少から増加に転換し傾きが0となる点P2がボトム候補点P2として抽出される。
次に、輪郭線L上のボトム候補点P2から向かって右側に存在するピーク候補点を抽出する。図4の例では、ボトム候補点P2の右側で高さが増加から減少に転換し傾きが0となる点P3がピーク候補点P3として抽出される。そして、ボトム候補点P2とピーク候補点P3(ボトム候補点P2と隣接するピーク候補点P3)とを結ぶ直線と横軸(言い換えれば、ピーク検出のための仮想平面)とがなす角度θ1に基づいてボトム候補点P2がボトム有力候補点と認定できるか否かを判定する。ここでは、角度θ1が予め設定される基準角度以上、例えば、10°以上である場合にボトム候補点P2がボトム有力候補点であるものと認定する。図4の例は、ボトム候補点P2とピーク候補点P3とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ1が10°に満たない場合を例示しており、このため、ボトム候補点P2は、ボトム有力候補点ではないものと判定される。
次に、輪郭線L上のピーク候補点P3から向かって右側に存在するボトム候補点を抽出する。図4の例では、ピーク候補点P3の右側で高さが減少から増加に転換し傾きが0となる点P4がボトム候補点P4として抽出される。そして、ピーク候補点P3とボトム候補点P4(ピーク候補点P3と隣接するボトム候補点P4)とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ2に基づいてピーク候補点P3がピーク有力候補点と認定できるか否かを判定する。ここでは、角度θ2が予め設定される基準角度以上、例えば、10°以上である場合にピーク候補点P3がピーク有力候補点であるものと認定する。図4の例は、ピーク候補点P3とボトム候補点P4とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ2が10°以上である場合を例示しており、このため、ピーク候補点P3は、ピーク有力候補点P3であるものと認定される。
次に、輪郭線L上のボトム候補点P4から向かって右側に存在するピーク候補点を抽出する。図4の例では、ボトム候補点P4の右側で高さが増加から減少に転換し傾きが0となる点P5がピーク候補点P5として抽出される。そして、ボトム候補点P4とピーク候補点P5とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ3に基づいて上記と同様にボトム候補点P4がボトム有力候補点と認定できるか否かを判定する。図4の例は、ボトム候補点P4とピーク候補点P5とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ3が10°以上である場合を例示しており、このため、ボトム候補点P4は、ボトム有力候補点P4であるものと認定される。
次に、輪郭線L上のピーク候補点P5から向かって右側に存在するボトム候補点を抽出する。図4の例では、ピーク候補点P5の右側で高さが減少から増加に転換し傾きが0となる点P6がボトム候補点P6として抽出される。そして、ピーク候補点P5とボトム候補点P6とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ4に基づいて上記と同様にピーク候補点P5がピーク有力候補点と認定できるか否かを判定する。図4の例は、ピーク候補点P5とボトム候補点P6とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ4が10°に満たない場合を例示しており、このため、ピーク候補点P5は、ピーク有力候補点ではないものと判定される。
次に、輪郭線L上のボトム候補点P6から向かって右側に存在するピーク候補点を抽出する。図4の例では、ボトム候補点P6の右側で高さが増加から減少に転換し傾きが0となる点P7がピーク候補点P7として抽出される。そして、ボトム候補点P6とピーク候補点P7とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ5に基づいて上記と同様にボトム候補点P6がボトム有力候補点と認定できるか否かを判定する。図4の例は、ボトム候補点P6とピーク候補点P7とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ5が10°以上である場合を例示しており、このため、ボトム候補点P6は、ボトム有力候補点P6であるものと認定される。
次に、輪郭線L上のピーク候補点P7から向かって右側に存在するボトム候補点を抽出する。図4の例では、ピーク候補点P7の右側で高さが減少から増加に転換し傾きが0となる点P8がボトム候補点P8として抽出される。そして、ピーク候補点P7とボトム候補点P8とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ6に基づいて上記と同様にピーク候補点P7がピーク有力候補点と認定できるか否かを判定する。図4の例は、ピーク候補点P7とボトム候補点P8とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ6が10°以上である場合を例示しており、このため、ピーク候補点P7は、ピーク有力候補点P7であるものと認定される。
次に、輪郭線L上のボトム候補点P8から向かって右側に存在するピーク候補点を抽出する。図4の例では、ボトム候補点P8の右側で高さが増加から減少に転換し傾きが0となる点P9がピーク候補点P9として抽出される。そして、ボトム候補点P8とピーク候補点P9とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ7に基づいて上記と同様にボトム候補点P8がボトム有力候補点と認定できるか否かを判定する。図4の例は、ボトム候補点P8とピーク候補点P9とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ7が10°以上である場合を例示しており、このため、ボトム候補点P8は、ボトム有力候補点P8であるものと認定される。
次に、輪郭線L上のピーク候補点P9から向かって右側に存在するボトム候補点を抽出する。図4の例では、ピーク候補点P9の右側で高さが減少から増加に転換し傾きが0となる点P10がボトム候補点P10として抽出される。そして、ピーク候補点P9とボトム候補点P10とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ8に基づいて上記と同様にピーク候補点P9がピーク有力候補点と認定できるか否かを判定する。図4の例は、ピーク候補点P9とボトム候補点P10とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ8が10°以上である場合を例示しており、このため、ピーク候補点P9は、ピーク有力候補点P9であるものと認定される。
次に、輪郭線L上のボトム候補点P10から向かって右側に存在するピーク候補点を抽出する。図4の例では、ボトム候補点P10の右側で高さが増加から減少に転換し傾きが0となる点P11がピーク候補点P11として抽出される。そして、ボトム候補点P10とピーク候補点P11とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ9に基づいて上記と同様にボトム候補点P10がボトム有力候補点と認定できるか否かを判定する。図4の例は、ボトム候補点P10とピーク候補点P11とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ9が10°に満たない場合を例示しており、このため、ボトム候補点P10は、ボトム有力候補点ではないものと判定される。
次に、輪郭線L上のピーク候補点P11から向かって右側に存在するボトム候補点を抽出する。図4の例では、ピーク候補点P11の右側で高さが減少から増加に転換し傾きが0となる点P12がボトム候補点P12として抽出される。そして、ピーク候補点P11とボトム候補点P12とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ10に基づいて上記と同様にピーク候補点P11がピーク有力候補点と認定できるか否かを判定する。図4の例は、ピーク候補点P11とボトム候補点P12とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ10が10°以上である場合を例示しており、このため、ピーク候補点P11は、ピーク有力候補点P11であるものと認定される。
次に、輪郭線L上のボトム候補点P12から向かって右側に存在するピーク候補点を抽出する。図4の例では、ボトム候補点P12の右側で高さが増加から減少に転換し傾きが0となる点P13がピーク候補点P13として抽出される。そして、ボトム候補点P12とピーク候補点P13とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ11に基づいて上記と同様にボトム候補点P12がボトム有力候補点と認定できるか否かを判定する。図4の例は、ボトム候補点P12とピーク候補点P13とを結ぶ直線と横軸とがなす角度θ11が10°以上である場合を例示しており、このため、ボトム候補点P12は、ボトム有力候補点P12であるものと認定される。
上記のようにして、ボトム有力候補点、及び、ピーク有力候補点を抽出していき、一対のボトム有力候補点の間に位置するピーク有力候補点のうち最も高いピーク有力候補点を真のピークとして抽出する。図4の例では、ピーク有力候補点P3は、一対のボトム有力候補点に挟まれていないので真のピークとしては抽出されない。ピーク候補点P5は、一対のボトム有力候補点P4、P6の間に位置するがそもそもピーク有力候補点ではないので真のピークとしては抽出されない。ピーク有力候補点P7は、一対のボトム有力候補点P6、P8の間に位置し、かつ、この区間には他のピーク有力候補点が存在しないので、真のピークとして抽出される。ピーク有力候補点P9、P11は、一対のボトム有力候補点P8、P12の間に位置し、ピーク有力候補点P9がこの区間で最も高いピーク有力候補点であるので、ピーク有力候補点P9が真のピークとして抽出され、ピーク有力候補点P11は真のピークとしては抽出されない。
そして、上記のようにして抽出された真のピーク間であって隣接する真のピーク間の距離、ここでは、点P7と点P9との距離を測定し、これを複数の微細凹凸2の配列ピッチPiの測定値とする。ここでは、予め設定される測定対象領域Aにおいて任意の10カ所で真のピーク間の配列ピッチPiを測定し、当該10カ所の配列ピッチPiの平均値(10点平均)を複数の微細凹凸2の配列ピッチPiの測定値とする。
上記の条件1を満たす微細凹凸2は、樹脂成型用金型に形成された凹凸を、成型時に樹脂成型品1の表面に転写することによって塗装レスで一体成型される。樹脂成型品1として使用される材料としては、例えば、種々の合成樹脂を用いることができる。
本実施形態の樹脂成型品1は、上記の条件1を満たす複数の微細凹凸2が表面に成型されることで、当該複数の微細凹凸2が成型された表面を、入射角85°におけるグロス値(以下、「85°グロス値」という場合がある。)が2以下となる表面とすることができる。典型的には、複数の微細凹凸2が成型された表面は、上記の条件1を満たすことで、85°グロス値が0より大きく2以下の表面となる。つまり見方を変えれば、本実施形態の樹脂成型品1は、入射角85°におけるグロス値が0より大きく2以下となる表面粗さSa、及び、配列ピッチPiを有する複数の微細凹凸2が表面に成型されたものである。
ここで、グロス値とは、表面の光沢(グロス)の度合いを表す指標(さらに言えば、入射した光のうちのどの程度が反射したのかを表す指標)である。グロス(光沢)は、典型的には、JIS規格によるグロスの定義を参照することができる。この場合、可視波長全域にわたって屈折率が1.567(入射角60°において鏡面反射率10%)のガラス表面における反射率を、光沢度100%と規定している。そして、グロス値は、例えば、測定表面で反射した光の輝度(カンデラ)の測定結果から下記の数式(2)を用いて算出することができる。
グロス値=(測定表面の実際の輝度の測定結果/測定表面を屈折率1.567のガラス表面とした場合の輝度の測定結果)×100 ・・・ (2)
グロス値は、相対的に高いほど当該表面における反射率が相対的に高くなり相対的に光沢があるように見えることを表す一方、相対的に低いほど当該表面における反射率が相対的に低くなり相対的に光沢がなくマットに見えることを表す。
そして、入射角85°におけるグロス値(85°グロス値)とは、図5に例示するように、測定表面(樹脂成型品1において複数の微細凹凸2が成型された表面)の法線方向から85°傾けた位置の光源から照射された光が、測定表面で反射した後、光源の反対側である測定表面の法線方向から85°傾けた位置の評価面で受光する光量の程度をいう。85°グロス値は、例えば、『BYK Gardner社(ビックガードナー社)製 micro−TRI−gloss』によって測定することができる。
なお、グロス値は、一般に、85°グロス値以外にも入射角20°におけるグロス値、入射角60°におけるグロス値等が用いられるが、ここでは、入射角85°におけるグロス値を基準とすることで以下の利点がある。すなわち、入射角85°におけるグロス値は、入射角20°におけるグロス値、入射角60°におけるグロス値等と比較すると微細凹凸2の表面粗さSa、配列ピッチPi等に応じて変化が生じやすい傾向にある。このため、当該入射角85°におけるグロス値を基準として表面の光沢を評価しておくことで、入射角20°におけるグロス値、入射角60°におけるグロス値も概ね要求の値を満たすことが可能となる。
複数の微細凹凸2の表面粗さSaは、相対的に大きくなるほど85°グロス値が相対的に低くなり光沢が抑えられ低グロスとなる傾向にある。また、複数の微細凹凸2の配列ピッチPiは、相対的に狭くなるほど85°グロス値が相対的に低くなり光沢が抑えられ低グロスとなる傾向にある。上述の条件1は、複数の微細凹凸2の表面粗さSaと配列ピッチPiとの関係をバランスよく調整した上で、[0<85°グロス値≦2]を達成できる範囲に相当する。
なお、上述した条件1における[表面粗さSaの上限値=10.0μm]は、微細凹凸2を、要求される形状、寸法で成型した上で適正に金型を引き抜くことができる金型成型上の限界値に応じて定まる値である。また、上述した条件1における[配列ピッチPiの下限値=3.0μm]は、微細凹凸2を、要求される形状、寸法で成型するための金型自体の製造上の限界値に応じて定まる値である。
ここで、樹脂成型品1は、上記の条件1をさらに限定した下記の条件1’を満たすことがより好ましい。
(条件1’)表面粗さSaが1.0μm以上10.0μm以下でかつ配列ピッチPiが3.0μm以上17.5μm以下である(1.0μm≦Sa≦10.0μm、かつ、3.0μm≦Pi≦17.5μm)。
上述の条件1’は、複数の微細凹凸2の表面粗さSaと配列ピッチPiとの関係をよりバランスよく調整した上で、[0<85°グロス値≦2]を達成できる範囲に相当する。
そしてさらに言えば、樹脂成型品1は、上記の条件1をさらに限定した下記の条件1’’を満たすことが最も好ましい。
(条件1’’)表面粗さSaが1.3μm以上10.0μm以下でかつ配列ピッチPiが3.0μm以上13.5μm以下である(1.3μm≦Sa≦10.0μm、かつ、3.0μm≦Pi≦13.5μm)。
これにより、樹脂成型品1は、複数の微細凹凸2が成型された表面を、最も好適に85°グロス値が0より大きく2以下となる表面とすることができる。
ここで、図6は、複数の微細凹凸の表面粗さSaと配列ピッチPiとが85°グロス値に与える影響の実測結果である。図6は、横軸を表面粗さSa(μm)、及び、配列ピッチPi(μm)とし、縦軸を85°グロス値Gs[85]としている。当該実測結果は、実際に所定の表面粗さSa、及び、所定の配列ピッチPiで複数の微細凹凸が成型された表面の85°グロス値の実測値を示している。当該85°グロス値の実測では、上述の図5に図示したように、光源をLED(Light Emitting Diode)とし、微細凹凸が設けられる測定表面を1mm×1mmの矩形状の黒色ポリプロピレン(polypropylene)で形成された面相当とし、評価面を3mm×6mmの矩形状の面とすると共に、光源と測定表面との間隔、及び、測定表面と評価面との間隔をそれぞれ5mmとした。そして、表面粗さSa、配列ピッチPi、85°グロス値Gsを、それぞれ『オリンパス株式会社製 3D測定レーザー顕微鏡 LEXT OLS4000』、『BYK Gardner社(ビックガードナー社)製 micro−TRI−gloss』を用いて上述の要領で実測した。表面粗さSa、配列ピッチPiは、上述したピッチ測定方法、表面粗さ測定方法を用いて実測した。図6中、棒線A1〜A7は、上述の条件1の範囲外の複数の微細凹凸が表面に一体成型された比較例に係る塗装レスの樹脂成型品の85°グロス値を表している。図6中、棒線B1〜B5は、塗装を施すことによって複数の微細凹凸が表面に形成された比較例に係る樹脂成型品の85°グロス値を表している。
図6の棒線A1〜A7に示す実測結果からも明らかなように、表面粗さSaと配列ピッチPiとが上述の条件1の範囲外である複数の微細凹凸が一体成型された塗装レスの樹脂成型品では、当該複数の微細凹凸が成型された表面の85°グロス値が2より大きくなることが明らかである。一方、図6の棒線B1〜B5に示す実測結果からも明らかなように、表面に塗装が施された樹脂成型品では、当該塗装が施された表面の85°グロス値が0より大きく2以下となることが明らかである。
そして、本実施形態の樹脂成型品1では、上記のような実測結果を踏まえて、図6中に棒線B1〜B5で示した表面に塗装が施された樹脂成型品と同等の85°グロス値、すなわち、85°グロス値が0より大きく2以下となる微細凹凸2を得るために、以下で説明する図7、図9に示すシミュレーション結果から、当該微細凹凸2に関する上記条件1の範囲を設定している。
図7は、複数の微細凹凸2の表面粗さSaと配列ピッチPiとが85°グロス値に与える影響の第1のシミュレーション結果である。図7は、横軸を表面粗さSa(μm)、及び、配列ピッチPi(μm)とし、縦軸を85°グロス値Gs[85]としている。当該第1のシミュレーションでは、図8に示すように微細凹凸2を半球体として仮想し、当該半球体の高さを表面粗さSa、隣接する半球体の頂点(ピーク)間距離を配列ピッチPiと仮想した。また、当該シミュレーションでは、上述の実測結果と同様に、光源をLEDとし、微細凹凸2が成型される測定表面を1mm×1mmの矩形状の黒色ポリプロピレンで形成された面相当とし、評価面を3mm×6mmの矩形状の面とすると共に、光源と測定表面との間隔、及び、測定表面と評価面との間隔をそれぞれ5mmとした。そして、当該シミュレーションでは、表面粗さSa、及び、配列ピッチPiをそれぞれ所定幅で変化させ、表面粗さSaと配列ピッチPiとの各組み合わせごとに85°グロス値Gs[85]を算出した。85°グロス値Gs[85]は、上述の図5で説明したように、測定表面の法線方向から85°傾けた位置の光源から照射された光が、測定表面で反射した後、光源の反対側である測定表面の法線方向から85°傾けた位置の評価面で受光する光の輝度(カンデラ)を種々の公知の関係式を用いて算出し、これに基づいて数式(2)を用いて算出する。
図7に示すシミュレーション結果からも明らかなように、複数の微細凹凸2の表面粗さSaと配列ピッチPiとが下記の条件1−1を満たす範囲では、当該複数の微細凹凸2が成型された表面を、85°グロス値が0より大きく2以下となる表面とすることができることが明らかである。より詳細には、複数の微細凹凸2の表面粗さSaが相対的に大きくなるほど85°グロス値が相対的に低くなり、複数の微細凹凸2の配列ピッチPiが相対的に狭くなるほど85°グロス値が相対的に低くなる傾向にあることが明らかである。
(条件1−1)表面粗さSaが1.0μm以上10.0μm以下でかつ配列ピッチPiが3.0μm以上18.0μm以下である(1.0μm≦Sa≦10.0μm、かつ、3.0μm≦Pi≦18.0μm)。
上述の条件1−1は、微細凹凸2が半球体である場合において、複数の微細凹凸2の表面粗さSaと配列ピッチPiとの関係をバランスよく調整した上で、[0<85°グロス値≦2]を達成できる範囲に相当する。なお、微細凹凸2が半球体である場合において、複数の微細凹凸2の表面粗さSaと配列ピッチPiとの関係をバランスよく調整した上で、[0<85°グロス値≦2]を達成できる範囲は、より好ましくは、下記の条件1−1’’の範囲である。
(条件1−1’’)表面粗さSaが1.3μm以上10.0μm以下でかつ配列ピッチPiが3.0μm以上13.5μm以下である(1.3μm≦Sa≦10.0μm、かつ、3.0μm≦Pi≦13.5μm)。
図9は、複数の微細凹凸2の表面粗さSaと配列ピッチPiとが85°グロス値に与える影響の第2のシミュレーション結果である。図9は、横軸を表面粗さSa(μm)、及び、配列ピッチPi(μm)とし、縦軸を85°グロス値Gs[85]としている。当該第2のシミュレーションでは、図10に示すように微細凹凸2を円錐体として仮想し、当該円錐体の高さを表面粗さSa、隣接する円錐体の頂点(ピーク)間距離を配列ピッチPiと仮想した。それ以外のシミュレーション条件は、上述の第1のシミュレーションと同様である。
図9に示すシミュレーション結果からも明らかなように、複数の微細凹凸2の表面粗さSaと配列ピッチPiとが下記の条件1−2を満たす範囲では、当該複数の微細凹凸2が成型された表面を、85°グロス値が0より大きく2以下となる表面とすることができることが明らかである。より詳細には、複数の微細凹凸2の表面粗さSaが相対的に大きくなるほど85°グロス値が相対的に低くなり、複数の微細凹凸2の配列ピッチPiが相対的に狭くなるほど85°グロス値が相対的に低くなる傾向にあることが明らかである。
(条件1−2)表面粗さSaが1.0μm以上10.0μm以下でかつ配列ピッチPiが3.0μm以上17.5μm以下である(1.0μm≦Sa≦10.0μm、かつ、3.0μm≦Pi≦17.5μm)。
上述の条件1−2は、微細凹凸2が円錐体である場合において、複数の微細凹凸2の表面粗さSaと配列ピッチPiとの関係をバランスよく調整した上で、[0<85°グロス値≦2]を達成できる範囲に相当する。なお、微細凹凸2が円錐体である場合において、複数の微細凹凸2の表面粗さSaと配列ピッチPiとの関係をバランスよく調整した上で、[0<85°グロス値≦2]を達成できる範囲は、より好ましくは、下記の条件1−2’’の範囲である。
(条件1−2’’)表面粗さSaが1.15μm以上10.00μm以下でかつ配列ピッチPiが3.0μm以上14.0μm以下である(1.15μm≦Sa≦10.00μm、かつ、3.0μm≦Pi≦14.0μm)。
そして、上述した条件1は、微細凹凸2が半球体である場合の条件1−1と微細凹凸2が円錐体である場合の条件1−2とのいずれか一方を満たす範囲に設定される。さらに、上述した条件1’は、微細凹凸2が半球体である場合の条件1−1と微細凹凸2が円錐体である場合の条件1−2とを共に満たす範囲に設定される。また、上述した条件1’’は、微細凹凸2が半球体である場合の条件1−1’’と微細凹凸2が円錐体である場合の条件1−2’’とを共に満たす範囲に設定される。
図11は、複数の微細凹凸2の表面粗さSaと配列ピッチPiとが85°グロス値に与える影響の実測結果である。図11は、横軸を配列ピッチPi(μm)、縦軸を表面粗さSa(μm)としている。当該実測結果は、塗装レスで実際に所定の表面粗さSa、及び、所定の配列ピッチPiで複数の微細凹凸2が成型された表面の85°グロス値の実測値を示している。ここでは、上述のシミュレーションと同様に、光源をLEDとし、微細凹凸2が成型される測定表面を1mm×1mmの矩形状のABS樹脂で実際に成型された面とし、評価面を3mm×6mmの矩形状の面とすると共に、光源と測定表面との間隔、及び、測定表面と評価面との間隔をそれぞれ5mmとした。そして、表面粗さSa、配列ピッチPi、85°グロス値Gsを、それぞれ『オリンパス株式会社製 3D測定レーザー顕微鏡 LEXT OLS4000』、『BYK Gardner社(ビックガードナー社)製 micro−TRI−gloss』を用いて上述の要領で実測した。表面粗さSa、配列ピッチPiは、上述したピッチ測定方法、表面粗さ測定方法を用いて実測した。
図11に示す実測結果からも明らかなように、複数の微細凹凸2の表面粗さSaと配列ピッチPiとが上述の条件1を満たす範囲では、当該複数の微細凹凸2が成型された表面を、85°グロス値が2以下となる表面とすることができることが明らかである。すなわち、当該実測結果から、複数の微細凹凸2の表面粗さSaと配列ピッチPiとに応じた85°グロス値の実測値がシミュレーション結果とほぼ同様の傾向であることが明らかであり、これにより、シミュレーション結果の妥当性を確認することができた。ここでは、図11に示す範囲T1内の実施品の85°グロス値が0.5程度、範囲T2内の実施品の85°グロス値が0.7〜0.8程度、範囲T3内の実施品の85°グロス値が1.0程度、範囲T4内の実施品の85°グロス値が1.1程度となっている。すなわち、少なくとも表面粗さSaが1.4μm以上3.0μm以下でかつ配列ピッチPiが4.0μm以上13.0μm以下である複数の微細凹凸2が表面に成型された樹脂成型品1の実施品が入射角85°におけるグロス値が2以下となることが明らかである。
以上で説明した車両用表示装置100によれば、車両に搭載され、当該車両に関する情報を表示する表示部101と、表面粗さが1.0μm以上10.0μm以下でかつ配列ピッチが3.0μm以上18.0μm以下である複数の微細凹凸2が表面に成型される樹脂成型品1とを備え、複数の微細凹凸2が成型された表面は、表示部101が有する光源部102と目視位置108との間に位置すると共に、光源部101と目視位置108との並び方向に沿って当該目視位置108と対向する目視位置対向面である囲い面106を構成する。
以上で説明した車両用表示装置100によれば、車両に搭載され、当該車両に関する情報を指し示す指針104と、表面粗さが1.0μm以上10.0μm以下でかつ配列ピッチが3.0μm以上18.0μm以下である複数の微細凹凸2が表面に成型される樹脂成型品1とを備え、指針104は、光源部102からの光によって発光する指針発光体141、指針発光体141の基端部を覆う指針基端部カバー144、及び、光源部102と目視位置108との間に介在し光源部102から目視位置108側に向けて照射された光を遮蔽する遮蔽部145を有し、複数の微細凹凸2が成型された表面は、指針基端部カバー144の目視位置108側の表面、又は、遮蔽部145の目視位置108側の表面、ここでは両方を構成する。
言い換えれば、以上で説明した車両用表示装置100によれば、車両に搭載され、当該車両に関する情報を表示する表示部101と、表示部101の周り、又は、表示部101の一部、ここでは両方に設けられ、入射角85°におけるグロス値が2以下となる複数の微細凹凸2が表面に成型される樹脂成型品1とを備える。
ここでは、以上で説明した樹脂成型品1によれば、車両に関する情報を表示する車両用表示装置100に適用され、入射角85°におけるグロス値が2以下となる複数の微細凹凸2が表面に成型され、複数の微細凹凸2が成型された表面に対して、目視位置108側から光が入射する位置に配置される。
したがって、樹脂成型品1、車両用表示装置100は、表面に成型された複数の微細凹凸2によって当該表面への入射光を散乱させることができるので、表面の光沢を抑制できる。この結果、樹脂成型品1、車両用表示装置100は、例えば、車両において運転者を含む乗員の視界領域内の表面の光沢を抑えることができ、安っぽいイメージを与えやすい傾向にあるプラスチック感を低減し、外観上の高級感を創出することができる。また、樹脂成型品1、車両用表示装置100は、表面に成型された複数の微細凹凸2によって、塗装等を用いずに塗装レスで塗装されたものと同等に表面の光沢を抑制でき艶消し効果を実現することができる。この結果、樹脂成型品1、車両用表示装置100は、例えば、塗装等を行う場合と比較して製造時の作業工数を抑制することができ、製造コストを抑制できる。
そして、樹脂成型品1、車両用表示装置100は、見返し板105を構成する囲い面106に当該樹脂成型品1が適用されることで、当該囲い面106を塗装レス低反射見返しとして構成することができる。これにより、樹脂成型品1、車両用表示装置100は、例えば、目視位置108側から囲い面106に入射し運転者等の乗員の目視位置108側に反射する光を抑制することができ、当該囲い面106の光沢を抑制することができる。同様に、樹脂成型品1、車両用表示装置100は、例えば、車両に関する情報を指し示す指針104を構成する指針基端部カバー144の目視位置108側の表面、及び、遮蔽部145の目視位置108側の表面に当該樹脂成型品1が適用されることで、当該指針基端部カバー144の目視位置108側の表面、及び、遮蔽部145の目視位置108側の表面を塗装レス低反射指針として構成することができる。これにより、樹脂成型品1、車両用表示装置100は、例えば、目視位置108側から指針104に入射し運転者等の乗員の目視位置108側に反射する光を抑制することができ、当該指針基端部カバー144の目視位置108側の表面、及び、遮蔽部145の目視位置108側の表面の光沢を抑制することができる。
さらに、以上で説明した樹脂成型品1、車両用表示装置100によれば、樹脂成型品1は、複数の微細凹凸2が成型された表面に対して、目視位置108側から光が入射する位置に配置される。したがって、樹脂成型品1、車両用表示装置100は、複数の微細凹凸2が成型された表面に対して、目視位置108側から入射する光、例えば、車両用表示装置100の外側から入射する外光の反射を抑制し、光沢を抑制することができる。
さらに、以上で説明した樹脂成型品1、車両用表示装置100によれば、複数の微細凹凸2は、表面粗さが1.3μm以上10.0μm以下でかつ配列ピッチが3.0μm以上13.5μm以下であることが好ましい。この場合、樹脂成型品1、車両用表示装置100は、複数の微細凹凸2が成型された表面を、より確実に85°グロス値が2以下となる表面とすることができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係る車両用表示装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
以上の説明では、表示部101は、車両に関する種々の計測値を立体物である指針104によってアナログ式で表示するアナログ計器であるものとして説明したがこれに限らない。車両用表示装置100は、表示部101(図1参照)にかえて、車両に関する情報として、画像表示面に種々の画像を表示する薄型のディスプレイ等によって構成される表示部を備えていてもよい。この場合、表示部は、いわゆるバックライト等が光源部を構成し、当該バックライトが出射する光を用いて車両に関する種々の画像情報を表示する。
以上の説明では、複数の微細凹凸2の表面粗さSa、配列ピッチPiを測定するための測定機器として、『オリンパス株式会社製 3D測定レーザー顕微鏡 LEXT OLS4000』を用いるものとして説明したがこれに限らず、他の測定機器を用いてもよく、この場合には、複数の微細凹凸2の表面粗さSa、配列ピッチPiを測定するために予め設定される所定の表面粗さ測定方法、ピッチ測定方法が上記と同等であればよい。