以下、図面を参照して本発明の細胞容器の実施の形態を説明する。なお、以下の図面では、本発明の構成を分かりやすく説明するために、各部の縮尺を適宜変更して図示する場合がある。
[実施形態1]
図1Aは、本発明の実施形態1に係る細胞容器100が備える容器10の平面図である。図1Bは、本発明の実施形態1に係る細胞容器100が備える蓋20の平面図である。図2は、図1Aに示す容器10の開口部10aを図1Bに示す蓋20によって閉塞した細胞容器100の側面図である。図3は、図2に示す細胞容器100の断面図である。
本実施形態の細胞容器100は、例えば、受精卵等の細胞を収容して培養する細胞培養容器である。本実施形態の細胞容器100は、細胞を保持する細胞保持部30と、該細胞保持部30の細胞を観察するための光を透過させる透光面11a,11b,21a,21bと、を有し、該透光面11a,11b,21a,21bの少なくとも一部に保護シート40が接着されていることを最大の特徴としている。以下、本実施形態の細胞容器100の各構成について詳細に説明する。
本実施形態の細胞容器100は、細胞を収容する容器10を備えている。本実施形態において、容器10は、平面視で円形の皿状に形成されている。すなわち、本実施形態の容器10は、例えば、細胞の培養に一般的に用いられるディッシュ型の容器10である。容器10は、円板状の底壁11と、底壁11の周縁部に立設された円筒状の周側壁12とを有している。容器10は、周側壁12の上端部の内側に円形の開口部10aを有し、開口部10aによって上部が開放されている。
容器10は、底壁11及び周側壁12によって画定された内部空間である収容部13を有している。収容部13は、開口部10aによって容器10の外部空間に開放されている。収容部13には、例えば、ピペット等の器具によって、開口部10aを介して培地やミネラルオイル等の液体や細胞が収容される。また、収容部13に収容された液体や細胞は、例えばピペット等の器具により、開口部10aを介して回収される。
細胞容器100は、細胞を保持する細胞保持部30を有している。より詳細には、本実施形態において、細胞保持部30は、容器10の底壁11の内表面、すなわち、容器10の内底面11Aに設けられている。細胞保持部30は、受精卵の発育を促進するような表面処理又は表面コートがなされていてもよい。特に、受精卵の発育を促進するために、例えば、子宮内膜細胞や卵管上皮細胞等の他の器官の細胞と受精卵とを共培養する場合、これらの細胞をあらかじめ細胞保持部30に接着させる必要がある。このような場合に、細胞保持部30を含む容器10の内底面11Aに細胞接着性の材料をコートすると有利である。
また、容器10は、内底面11Aに細胞保持部30を画定する隔壁14を備えている。隔壁14は、容器10の内底面11Aの中央部に細胞保持部30を囲むように円環状に設けられ、上部に開口部14aを有する円筒状に形成されている。容器10の内底面11Aから隔壁14の上端部までの高さhは、容器10の内底面11Aから周側壁12の上端部までの高さHよりも十分に低く、隔壁14の外径dは周側壁12の内径R1よりも十分に小さい。通常、受精卵等の培養においては、隔壁14の内側に受精卵を含む培地を配置し、隔壁14の外側の収容部13にオイルを収容する。
本実施形態において、細胞保持部30は、細胞を保持するマイクロウェル15を備えている。マイクロウェル15は、単数でも複数でもよい。マイクロウェル15の開口部の形状は、例えば円形である。マイクロウェル15の開口部の直径は、培養する細胞の最大寸法より大きい。本実施形態の細胞容器100により受精卵を培養する場合、胚盤胞の段階まで培養することが望ましいため、マイクロウェル15の開口部の直径は、胚盤胞の段階の細胞の最大寸法より大きいことが望ましい。胚盤胞の段階の細胞の最大寸法は通常100μm〜280μmであることから、マイクロウェル15の開口部の直径は、細胞の種類に依存して異なるが、例えば100μm〜600μm、より好ましくは100μm〜400μmである。
また、細胞保持部30のマイクロウェル15の深さは、細胞をマイクロウェル15内に保持できるように、細胞の最大径の1/3以上であることが好ましく、1/2以上であることがさらに好ましい。一方、マイクロウェル15が深過ぎると、マイクロウェル15内に培地や細胞を導入することが難しくなるため、深さの上限をマイクロウェル15の開口部の直径に対して3倍以下とすることができる。さらに、培地の導入を容易にするためには、マイクロウェル15の深さは直径の1倍以下であることが好ましく、1/2以下であることが特に好ましい。細胞の種類によっても異なるが、マイクロウェル15の深さは、50μm〜200μm程度とすることが好ましい。例えば、ウシ受精卵の場合、最大径が250μm程度であるため、マイクロウェル15の深さは80μm以上、さらに好ましくは125μm以上とすることができる。
近接するマイクロウェル15間のピッチは1mm以下である。ただし、上記ピッチは収容する細胞の種類に依存して異なる。例えば、ウシ受精卵を収容する場合、近接するマイクロウェル15間のピッチは通常1mm以下、好ましくは0.7mm以下、さらに好ましくは0.45mm以下である。なお、マイクロウェル15間のピッチは近接するマイクロウェル15の開口部の中心間の距離である。近接するマイクロウェル15は、1mm2あたり1個以上、好ましくは4個以上の密度で配置されている。このようなピッチでマイクロウェル15を密に配置することにより、細胞を個別に管理しつつ多くの細胞を同時に培養でき、さらに顕微鏡の一視野に多くの細胞が入るため、一度に多くの細胞の画像を取得することができる。
近接する4個以上のマイクロウェル15は、正方格子状又は最密充填状に配置されていることが好ましい。例えば、25個のマイクロウェル15を5×5の正方格子状に配置することができる。正方格子状又は最密充填状に配置することにより、細胞容器100の底壁11における各マイクロウェル15の位置の特定が容易になり、自動化処理に適用しやすい。また、マイクロウェル15は、合計で好ましくは24個以上、より好ましくは50個以上配置されている。細胞容器100の1個あたりに多くのマイクロウェル15を設けることにより、一定数の細胞を培養するのに必要な細胞容器100の数を低減することができ、経済的に有利である。
容器10の底壁11の外表面、すなわち容器10の外底面11Bの周縁部には、円環状の凸部11Cが形成されている。これにより、平坦な支持面に容器10を載置したときに、凸部11Cの先端が支持面に当接し、凸部11Cの内側の外底面11Bと支持面との間に隙間を形成することができる。また、容器10の円環状の凸部11Cは、その外径Dが後述する蓋20の外上面21Bの周縁部に設けられた円環状の凸部21Cの内径よりも小さく、蓋20の円環状の凸部21Cの内側に係合するようになっている。
本実施形態において、細胞容器100は、容器10の底壁11に、細胞保持部30の細胞を観察するための光を透過させる透光面11a,11bを有している。本実施形態では、細胞容器100は、容器10の内底面11Aの隔壁14の内側に細胞保持部30を有している。そのため、透光面11a,11bは、容器10の内底面11Aと外底面11Bのうち、細胞保持部30を観察又は撮影するための光を透過する領域、例えば、容器10の内底面11Aの法線N方向において細胞保持部30と重なる領域である。すなわち、本実施形態では、容器10の隔壁14の内側で細胞保持部30と重複する内底面11Aの中央部の円形の部分と、容器10の内底面11Aの法線N方向において細胞保持部30と重なる容器10の外底面11Bの中央部の円形の部分が、それぞれ細胞容器100の透光面11a,11bである。
なお、本実施形態の細胞容器100では、例えば、隔壁14の内側の培地を交換する際や、培養中に成長が停止した細胞を仮置きする際などに、容器10の内底面11Aの隔壁14の外側に細胞を配置する場合がある。すなわち、容器10の内底面11Aの全体が細胞保持部30として用いられる場合がある。この場合、容器10の内底面11Aの隔壁14の外側に配置した細胞を顕微鏡によって観察したり撮影したりすることがある。このような場合を想定すれば、容器10の内底面11Aの全体と、容器10の外底面11Bの全体を、細胞容器100の透光面としてもよい。
容器10の周側壁12の内表面、すなわち容器10の内周面12Aは、段差のない平滑な円筒状の曲面とされている。一方、容器10の周側壁12の外表面、すなわち容器10の外周面12Bは、周側壁12の高さ方向の中間部に段差部12Cが形成されている。これにより、容器10は、段差部12Cよりも上方の上部において周側壁12の肉厚が薄く、段差部12Cよりも下方の下部において周側壁12の肉厚が厚くなっている。容器10の段差部12Cは、後述する蓋20の周壁部22の下端部と係合又は当接するようになっている。
容器10の外周面12Bの上部は、上端に近いほど周側壁12の肉厚が薄くなるように、容器10の内底面11Aの法線Nに対して傾斜している。すなわち、容器10の上部は、上端に近いほど外径が縮小するテーパ状に形成されている。一方、周側壁12の外周面12Bの下部は、下端に近いほど周側壁12の肉厚が薄くなるように、容器10の内底面11Aの法線Nに対して傾斜している。すなわち、容器10の下部は、下端に近いほど外径が縮小するテーパ状に形成されている。
本実施形態の細胞容器100は、容器10の開口部10aを閉塞する蓋20を備えている。蓋20は、円板状の天板部21と、天板部21の周縁部に設けられて容器10の開口部10aから底壁11に向かう方向に垂下する円筒状の周壁部22とを有している。蓋20は、天板部21の下面であり、容器10の内部空間に面する内下面21Aと、天板部21の上面であり、容器10の外部空間に面する外上面21Bとを有している。また、蓋20は、容器10の周側壁12の外周面12Bに対向する内周面22Aと、容器10の外部空間に面する外周面22Bとを有している。
蓋20の外上面21Bの周縁部には、容器10の外底面11Bの周縁部の円環状の凸部11Cの外側に係合する円環状の凸部21Cが形成されている。これにより、蓋20の外上面21Bを下方に向けた状態で、蓋20を平坦な支持面に載置したときに、蓋20の凸部21Cが支持面に当接し、蓋20の外上面21Bと支持面との間に隙間を形成することができる。また、蓋20の円環状の凸部21Cは、その内径R2が前述の容器10の円環状の凸部11Cの外径Dよりも大きい。
蓋20は、互いに略垂直な内下面21A及び内周面22Aに沿うL字状の突起部23を有している。突起部23は、例えば、蓋20の周方向に均等な角度で、間隔をあけて3つ設けられている。蓋20の内下面21Aに沿って形成された突起部23の一部分は、容器10の周側壁12の上端面に当接して蓋20の内下面21Aと容器10の周側壁12の上端面との間に隙間を形成する。蓋20の内周面22Aに沿って形成された突起部23の一部分は、容器10の外周面12Bの上部に当接して蓋20の内周面22Aと容器10の外周面12Bの上部との間に隙間を形成する。
蓋20の周壁部22は、下端側よりも上端側の径が縮小するようにテーパ状に設けられ、外周面22Bと内周面22Aが容器10の内底面11Aの法線N方向に対して傾斜している。これにより、互いに対向する蓋20の内周面22Aと容器10の外周面12Bの上部とが平行に近くなり、これらの間に概ね均等な間隔の隙間が形成されている。
本実施形態の細胞容器100は、蓋20の天板部21に細胞保持部30の細胞を観察するための光を透過させる透光面21a,21bを有している。本実施形態では、細胞容器100は、容器10の内底面11Aの隔壁14の内側に細胞保持部30を有している。そのため、透光面21a,21bは、蓋20の内下面21Aと外上面21Bのうち、細胞保持部30を観察又は撮影するための光を透過する領域、例えば、容器10の内底面11Aの法線N方向において細胞保持部30と重なる領域である。すなわち、本実施形態では、容器10の内底面11Aの法線N方向において細胞保持部30と重なる蓋20の内下面21Aと外上面21Bの中央部の円形の部分が、それぞれ細胞容器100の透光面21a,21bである。なお、前記したように容器10の内底面11Aの全体が細胞保持部30として用いられる場合、蓋20の内下面21Aの全体と、蓋20の外上面21Bの全体を、細胞容器100の透光面としてもよい。
本実施形態の細胞容器100が備える容器10及び蓋20は、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロプレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)等の透明な樹脂材料によって製作することができる。また、容器10及び蓋20は、可視光を透過する透明な材料であれば、樹脂材料に限定されず、例えば、ガラスや石英等によって製作してもよい。なお、本実施形態の容器10は、細胞培養に適した表面処理を容易にする観点からPS製であることが好ましい。
前記したように、本実施形態の細胞容器100は、細胞を保持する細胞保持部30と、該細胞保持部30の細胞を観察するための光を透過させる透光面11a,11b,21a,21bと、を有し、透光面11a,11b,21a,21bの少なくとも一部に保護シート40が接着されていることを最大の特徴としている。なお、本実施形態の細胞容器100において、透光面11a,11b,21a,21bの少なくとも一部とは、これら複数の透光面のうち、任意の1つ以上の透光面の全体又は一部を意味する。
図2及び図3に示すように、容器10の開口部10aを蓋20によって閉塞した状態の細胞容器100において、細胞容器100の外表面は、主に、容器10の外底面11B及び外周面12Bの下部、並びに、蓋20の外上面21B及び外周面22Bによって構成されている。すなわち、本実施形態の細胞容器100では、保護シート40は、透光面11b,21bを含む細胞容器100の外表面の少なくとも一部に接着されている。より詳細には、本実施形態において、保護シート40は、容器10の内底面11A及び外底面11B、並びに、蓋20の内下面21A及び外上面21Bの少なくとも一つの面、具体的には容器10の外底面11B及び蓋20の外上面21Bの二つの面の一部に接着されている。
保護シート40は、細胞容器100の透光面11a,11b,21a,21bを含む内表面及び外表面に剥離可能に接着する接着面40aを有している。ここで、剥離可能とは、保護シート40を細胞容器100に接着させた後に、保護シート40を細胞容器100から容易に剥がすことができることをいう。例えば、保護シート40が基材層と接着層とを有する場合には、接着層の表面を接着面40aとすることができる。この場合、接着層を支持する基材層の材料としては、例えば、ポリエステル系フィルム、PP系フィルム、PET系フィルム、PE系フィルム、ポリ塩化ビニル系フィルム等を用いることができる。また、接着層の材料としては、例えば、合成ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤や、自己吸着性を有するシリコーンを用いることができる。また、保護シート40が接着層を有しない場合には、例えば、自己吸着性を有するシリコーンを保護シート40として用い、シリコーンの表面を接着面40aとすることができる。
保護シート40は、可視光を透過する透光性を有することが好ましい。保護シート40の可視光の透過率は、例えば、90%以上であること好ましい。可視光の透過率は、例えば、光学透過率測定器DST2500(東亜システムクリエイト社製)を使用して測定波長域380nm〜760nmを測定して求めることができる。また、保護シート40の厚さは、材質にもよるが、細胞容器100の表面に対する傷を防止することができ、細胞容器100から剥離させることができる強度を有する最小限の厚さに設定することが好ましい。例えば、ポリエステル系フィルムを用いた場合、保護シート40の厚さは、例えば、400μm以下、より具体的には、25μm〜120μm程度にすることができる。
以下、本実施形態の細胞容器100の作用について説明する。
本実施形態の細胞容器100は、例えば、出荷時に、容器10の開口部10aを蓋20で閉塞した状態の複数の細胞容器100を上下に積み重ねた状態で輸送される場合がある。この場合、例えば、輸送時の振動によって、各細胞容器100が備える蓋20の外上面21Bが、他の細胞容器100が備える容器10の外底面11Bと接触したり、各細胞容器100が備える容器10の外底面11Bが、他の細胞容器100が備える蓋20の外上面21Bと接触したりする虞がある。また、蓋20の外上面21B又は容器10の外底面11Bが露出した状態の上下の細胞容器100は、例えば輸送時の振動により,細胞容器100以外の物体に接触する虞がある。また、例えば輸送時の環境によっては、細胞容器100に塵埃等の異物が付着する虞がある。
そこで、本実施形態の細胞容器100では、細胞保持部30に保持された細胞を観察するための光を透過させる透光面11a,11b,21a,21bの少なくとも一部、具体的には、容器10の外底面11Bの透光面11bと蓋20の外上面21Bの透光面21bに、保護シート40が接着されている。そのため、細胞容器100は、例えば、前記のような輸送時において、保護シート40が接着された透光面11b,21bに他の細胞容器100やその他の物体が接触しても、透光面11b,21bが保護シート40によって保護され、透光面11b,21bに傷が付くことが防止される。
さらに、細胞容器100は、例えば、前記のような輸送時において塵埃等の異物が多い環境に晒されたとしても、透光面11b,21bに接着された保護シート40によって透光面11b,21bに異物が付着するのを防止することができる。したがって、本実施形態の細胞容器100によれば、傷や異物の付着がない平滑かつ清浄な透光面11b,21bを保護シート40によって保護し、細胞容器100の使用時に細胞の観察や撮影を妨げる容器表面の傷や異物の付着を防止することができる。
さらに、保護シート40は、細胞容器100の透光面11b,21bに剥離可能に接着する接着面40aを有している。そのため、透光面11b,21bを覆う保護シート40に傷が付いたり異物が付着したりした場合でも、例えば、細胞容器100の使用前に保護シート40を剥離させることで、傷や異物の付着がない平滑かつ清浄な透光面11b,21bを露出させることができる。
なお、保護シート40の可視光に対する透過率が、例えば、90%以上の高い透過率であり、かつ、保護シート40に傷や異物が付着していない状態であれば、保護シート40を剥離させることなく、保護シート40を介して細胞保持部30に保持された細胞の観察や撮影を行うこともできる。この場合、細胞容器100の使用の過程で透光面11b,21bを覆う保護シート40に傷が付いたり異物が付着したりしたときに、保護シート40を剥離させればよい。これにより、傷や異物の付着がない平滑かつ清浄な透光面11b,21bを露出させることができ、より長期間にわたって細胞の観察や撮影を支障なく行うことができる。
また、本実施形態の細胞容器100において、保護シート40は、細胞容器100の透光面11b,21bを含む外表面の少なくとも一部、具体的には、容器10の外底面11Bの一部と蓋20の外上面21Bの一部に接着されている。細胞容器100の外表面は、内表面と比較して、輸送時や使用前の準備又は使用中に傷が付いたり異物が付着したりしやすい。したがって、細胞容器100の外表面の少なくとも一部に保護シート40を接着することで、細胞の観察や撮影を妨げる容器表面の傷や異物の付着を効果的に防止することができる。
また、本実施形態の細胞容器100は、細胞を収容する容器10を備え、細胞保持部30は、容器10の内底面11Aに設けられている。これにより、容器10の内底面11Aを水平にして細胞保持部30に細胞を安定的に保持し、例えば、細胞容器100の下方又は上方から照明光を照射し、容器10の内底面11Aの法線N方向から細胞容器100の透光面11a,11b,21a,21bを介して細胞保持部30の細胞を観察又は撮影するのを容易にすることができる。
また、本実施形態の細胞容器100は、容器10の上部に設けられた開口部10aを閉塞する蓋20を備えている。これにより、例えば、細胞容器100の使用前や使用中に容器10の開口部10aから内部に異物等が混入するのを防止することができる。また、保護シート40を、容器10の内底面11A及び外底面11B、並びに、蓋20の内下面21A及び外上面21Bの少なくとも一つの面に接着することで、透光面11a,11b,21a,21bを有するこれらの面を、保護シート40によって確実に保護することができる。
また、本実施形態の細胞容器100は、容器10の内底面11Aに細胞保持部30を画定する隔壁14を備えている。そのため、例えば、受精卵等の培養においては、隔壁14の内側に受精卵を含む培地を配置し、隔壁14の外側の収容部13にオイルを収容することができる。このように、隔壁14の内側に配置された培地をオイルで覆うことにより、培地の乾燥が防止される。
また、本実施形態の細胞容器100は、細胞保持部30に、細胞を保持するマイクロウェル15を備えている。これにより、細胞容器100の内底面11Aの所定の位置に形成された個々のマイクロウェル15に、例えば受精卵等の細胞を保持して培養し、個々のマイクロウェル15に保持された細胞を観察及び撮影することができる。したがって、細胞の培養、観察及び撮影を容易にすることができる。
以上説明したように、本実施形態の細胞容器100は、細胞を保持する細胞保持部30と、該細胞保持部30の細胞を観察するための光を透過させる透光面11a,11b,21a,21bとを有し、透光面11a,11b,21a,21bの少なくとも一部に保護シート40が接着されている。したがって、本実施形態の細胞容器100によれば、細胞の観察や撮影を妨げる容器表面の傷や異物の付着を防止することができる。
[実施形態2]
次に、本発明の細胞容器の実施形態2について、図1及び2を援用し、図4を用いて説明する。図4は、実施形態1の細胞容器100の図3に相当する本実施形態の細胞容器100Aの断面図である。
本実施形態の細胞容器100Aは、透光面21aを含む内表面及び隔壁14の上端部に保護シート40が接着されている点で、前述の実施形態1で説明した細胞容器100と異なっている。本実施形態の細胞容器100Aのその他の構成は、前述の実施形態1の細胞容器100の構成と同一であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の細胞容器100Aは、実施形態1の細胞容器100と同様に、容器10の外底面11Bの一部である透光面11bと、蓋20の外上面21Bの一部である透光面21bに保護シート40が接着されている。したがって、本実施形態の細胞容器100Aによれば、前述の実施形態1の細胞容器100と同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態の細胞容器100Aは、内表面が、主に、容器10の内底面11A及び内周面12A、並びに蓋20の内下面21Aによって構成されており、この内表面の少なくとも一部に保護シート40が接着されている。より具体的には、保護シート40は、細胞保持部30を除く容器10の内底面11Aの全体と、容器10の内周面12Aの全体と、蓋20の内下面21Aの全体に接着されている。
これにより、例えば、細胞容器100Aの輸送時や使用開始前の準備において、細胞容器100A内に異物が混入したり、細胞容器100Aの内表面に何らか物体が接触したりした場合でも、細胞容器100Aの内表面を保護シート40によって保護し、内表面への傷や異物の付着を防止することができる。また、細胞容器100Aの使用前に、保護シート40を剥離させることで、傷や異物の付着が防止された細胞容器100Aの清浄な内表面を露出させることができる。したがって、細胞の観察や撮影を妨げる傷や異物の付着を防止するとともに、細胞容器100Aの使用時における収容部13の汚染をすることができる。
なお、保護シート40は、細胞保持部30を含む容器10の内底面11Aの全体又は一部に接着してもよく、容器10の内周面12Aの一部のみに接着してもよく、蓋20の内下面21Aの一部のみに接着してもよい。この場合、保護シート40は、細胞容器100Aの内表面の透光面11a,21aの少なくとも一部に接着することが好ましく、透光面11a,21aの全体に接着することがより好ましい。これにより、細胞の観察や撮影を妨げる細胞容器100Aの内表面の傷や異物の付着をより確実に防止することができる。
また、本実施形態の細胞容器100Aにおいて、保護シート40は、容器10の内底面11A及び外底面11B、並びに、蓋20の内下面21A及び外上面21Bの少なくとも一つの面、具体的には、これらの面のすべてに接着されている。これにより、透光面11a,11b,21a,21bを有するこれらのすべての面を、保護シート40によって確実に保護することができる。したがって、細胞容器100Aの内表面の傷や異物の付着をより確実に防止することができる。
さらに、本実施形態の細胞容器100Aにおいて、保護シート40は、隔壁14の上端部に接着され、細胞保持部30を封止している。なお、隔壁14の上端部に接着された保護シート40は、細胞容器100Aの使用前に剥離させ、細胞保持部30を開放する。これにより、細胞保持部30に異物が侵入するのをより確実に防止することができるだけでなく、細胞容器100Aの使用前に細胞保持部30に何らか物体が接触するのを防止することができる。したがって、細胞の観察や撮影を妨げる細胞保持部30の傷や異物の付着をより確実に防止することができる。
なお、本実施形態の細胞容器100Aにおいて、隔壁14の上端部に接着された保護シート40以外の保護シート40は、必ずしも細胞容器100Aの使用前に剥離させなくてもよい。この場合、細胞容器100Aの外表面の透光面11b、21bと、透光面21aを含む内表面に接着された保護シート40は、細胞容器100Aの使用の過程で傷が付いたり異物が付着したりしたときに剥離させることができる。
[実施形態3]
次に、本発明の細胞容器の実施形態3について、図1及び2を援用し、図5を用いて説明する。図5は、実施形態1の細胞容器100の図3に相当する本実施形態の細胞容器100Bの断面図である。
本実施形態の細胞容器100Bは、容器10の外周面12B、蓋20の外周面22B、及び細胞保持部30に重複する容器10の内底面11Aに保護シート40が接着されている点で、前述の実施形態1で説明した細胞容器100と異なっている。本実施形態の細胞容器100Bのその他の構成は、前述の実施形態1の細胞容器100の構成と同一であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の細胞容器100Bにおいて、容器10の内周面12A及び外周面12B、並びに蓋20の内周面22A及び外周面22Bは、細胞保持部30の細胞を観察するための光を透過させる透光面を有していない。したがって、これらの面に付いた傷は、透光面11a,11b,21a,21bを有する容器10の内底面11A及び外底面11B、並びに、蓋20の内下面21A及び外上面21Bに付いた傷と比較して、細胞の観察や撮影に与える影響は小さい。しかし、容器10の内周面12A及び外周面12B、並びに、蓋20の内周面22A及び外周面22Bに異物が付着した状態で細胞容器100Bを使用すると、その異物が収容部13に侵入して収容部13を汚染する虞がある
そのため、本実施形態の細胞容器100Bにおいて、保護シート40は、容器10の外周面12B及び蓋20の外周面22Bに接着されている。これにより、保護シート40によって、容器10の外周面12B及び蓋20の外周面22Bに異物が付着するのを防止することができる。したがって、例えば細胞容器100Bの使用前に、容器10の外周面12B及び蓋20の外周面22Bに接着された保護シート40を剥離させて清浄な容器10の外周面12B及び蓋20の外周面22Bを露出させ、収容部13の汚染を防止することができる。
また、本実施形態の細胞容器100Bにおいて、保護シート40は、細胞保持部30、容器10の外底面10Bの全体及び蓋20の外上面21Bの全体に接着されている。そのため、保護シート40によって、細胞保持部30、容器10の外底面10Bの全体及び蓋20の外上面21Bの全体に異物が付着するのを防止することができる。したがって、例えば細胞容器100Bの使用前に、保護シート40を剥離させて清浄な細胞保持部30、容器10の外底面10B及び蓋20の外上面21Bを露出させ、細胞保持部30及び収容部13の汚染を防止することができる。また、容器10の内底面11A及び外底面11Bの全体と蓋20の内下面21A及び外上面21Bの全体を透光面とする場合にも、細胞の観察や撮影を妨げる透光面の傷や異物の付着を確実に防止することができる。
なお、保護シート40を、容器10の外底面10Bの全体及び蓋20の外上面21Bの全体に接着する場合には、保護シート40の厚さは、凸部11C,21Cの高さよりも十分に小さいか、又は、凸部11C,21Cの形状に追従することができる程度に十分に薄いことが好ましい。これにより、保護シート40よって細胞容器100Bの積み重ねに支障を来すことを防止できる。
また、本実施形態では、容器10の外周面12B及び蓋20の外周面22Bに保護シート40を接着する例について説明したが、容器10の内周面12A及び外周面12B、並びに、蓋20の内周面22A及び外周面22Bの少なくとも一つの面に保護シート40を接着することで、これらの表面に異物が付着することを防止し、収容部13の汚染を防止する効果を得ることができる。
[変形例]
以下、前述の実施形態1から3において説明した保護シート40の変形例について説明する。図6Aから図6Cは、保護シート40の変形例を示す平面図である。なお、図6Aから図6Cでは、平面形状が円形の保護シート40を示しているが、本実施形態の保護シート40の平面形状は、円形に限定されず、細胞容器100の接着する部位の形状や細胞保持部30の形状に合わせて適宜変更することができる。
図6Aに示す保護シート40は、保護シート40を剥離させる際に把持する剥離用の把持部41として、外縁部から突出するタブ状の把持部41を有している。図6Bに示す保護シート40は、保護シート40を剥離させる際に把持する剥離用の把持部41として、両端部が保護シート40に連結された把手状の剥離用の把持部41を有している。このように、保護シート40に把持部41を設けることで、保護シート40の剥離を容易にすることができる。
図6Cに示す保護シート40は、第1シート40Aと第2シート40Bとを有し、第1シート40Aの端部が第2シート40Bの端部に積層されている。これにより、第2シート40Bの端部に積層された第1シート40Aの端部の剥離を容易にし、保護シート40の剥離を容易にすることができる。
以上、図面を用いて本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。例えば、前述の実施形態では、細胞容器が細胞培養容器である例について説明したが、本発明の細胞容器は、細胞培養容器に限定されない。
本発明の細胞容器は、例えば、細胞を一時的に保持する容器や、生化学反応に用いられる容器や、細胞を観察するための容器等、細胞培養容器以外の細胞取扱容器であってもよい。また、本実施形態では、細胞容器が蓋を備える場合について説明したが、本発明の細胞容器は、蓋を有さないディッシュや基板であってもよい。
また、前述の実施形態では、細胞容器が一つの細胞保持部を有する場合について説明したが、細胞容器は、複数の細胞保持部を有してもよい。例えば、細胞容器が備える容器の内底面に、間隔をあけて複数の細胞保持部を設けることができる。この場合、個々の細胞保持部を囲む隔壁を設け、個々の細胞保持部に対応する透光面に保護シートを接着してもよい。
また、細胞容器が容器の内底面に複数の細胞保持部を有する場合、細胞容器は、例えば容器の外底面、蓋の内底面、又は蓋の外上面等の一つの面に、各細胞保持部に対応する複数の透光面を有することになる。この場合、細胞容器の一つの面において、一枚の保護シートを複数の細胞保持部に対応する複数の透光面に一括して接着してもよいし、複数の保護シートを複数の細胞保持部に対応する各透光面に一枚ずつ接着してもよい。
また、細胞容器は、容器の内底面に隔壁やマイクロウェルを備える構成に限定されず、隔壁やマイクロウェルを有しない平坦な内底面や、曲面状の内底面を有する容器を備えてもよい。