JP6577763B2 - エンジンバルブ及びその製造方法 - Google Patents
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以下において、単に本発明のエンジンバルブという場合は、本発明の軸部篏合型エンジンバルブ及び傘部篏合型エンジンバルブの両方を指すものとする。どちらかの発明かを特定して説明する必要がある場合には、軸部篏合型エンジンバルブ、傘部篏合型エンジンバルブと特定して説明することとする。
本発明のエンジンバルブをエンジンに用いた場合、上記傘裏面の傘裾部は、シリンダーと接触する部分となる。本発明のエンジンバルブの傘部の傘裏面は、傘裾部を除いてセラミック部材により構成されており、傘裾部は、金属基材の土台部の一部により構成されている。
従って本発明のエンジンバルブの傘部の傘裏面は、上記セラミック部材により構成される傘裾部以外の部分と、金属基材の土台部の一部により構成される傘裾部とからなる。エンジンバルブの軸部は、金属基材の軸部により構成されている。
本発明のエンジンバルブをエンジンに用いる際、本発明のエンジンバルブは、吸気側のエンジンバルブとしても、排気側のエンジンバルブとしても用いることができる。
本発明のエンジンバルブを吸気側のエンジンバルブとして用いる場合、本発明のエンジンバルブは断熱性が高いので、エンジンバルブの熱が吸気に伝わりにくい。そのため、吸気効率を低下させることなくエンジンを作動させることができる。
また、本発明のエンジンバルブを排気側のエンジンバルブとして用いる場合、本発明のエンジンバルブは断熱性が高いので、排気の熱がエンジンバルブに伝達されにくい。そのため、排ガスの温度が低下しにくい。エンジンからの排ガスは、エンジンの下流に設置された排ガス浄化装置に設置された担体により浄化されることになるが、排ガスの温度が低下していない場合、排ガスは速やかに担体の温度を上昇させ、担体の排ガス浄化機能を好適に発揮させることができる。つまり、本発明のエンジンバルブを排気側のエンジンバルブとして用いると、排ガス浄化効率が向上する。
上記傘部篏合型エンジンバルブにおいて、上記合計体積に対する上記セラミック部材の体積の割合が50〜90%であると、上記傘裾部の軸部側の端部から、エンジンバルブの軸部まで、エンジンバルブの傘裏面がより高い断熱性能を発揮することができる。このため本発明のエンジンバルブが上記構成であると、上述した本発明の効果をより充分に発揮することができる。
上記軸部篏合型エンジンバルブにおいて、上記合計体積に対する上記セラミック部材の体積の割合が50〜90%であると、エンジンバルブの傘部の傘裾部の軸部側の端部からエンジンバルブの軸部までの部分が主にセラミック部材により構成されており、該セラミック部材が、ガラスコート層を介して金属基材の傘裾部と接着して一体化している。このため、エンジンバルブの傘部の傘裾部の軸部側の端部からエンジンバルブの軸部までの部分が、より高い断熱性能を発揮することができる。従って本発明のエンジンバルブが上記構成であると、上述した本発明の効果をより充分に発揮することができる。
セラミック部材が気孔を有すると、エンジンバルブの断熱性能がより向上する。また、ガラスコート層を形成する際の焼結工程において、ガラスコート層とセラミック部材との間に熱膨張差による応力が発生しても、気孔によりその応力が緩和される。このため、ガラスコート層の靱性が低い場合であっても、焼結の際にセラミック部材が応力を吸収して破損することがより防止される。
また、セラミック部材の気孔中にガラスコート層の成分が浸透していることが好ましい。焼結工程においてガラスコート層の原料が気孔に拡散してアンカー効果を発揮することで、ガラスコート層とセラミック部材のより強い密着が可能となる。
ガラスコート層が気孔を有すると、エンジンバルブの断熱性能がより向上する。また、ガラスコート層を形成する際の焼結工程において、ガラスコート層とセラミック部材との間に熱膨張差による応力が発生しても、気孔によりその応力が緩和される。このため、ガラスコート層の靱性が低い場合であっても、焼結工程においてガラスコート層が割れる等して破損することがより防止される。
ガラスコート層の厚さが10μm未満であると、エンジンバルブの断熱性が充分に向上しにくい場合がある。ガラスコート層の厚さが500μmを超えると、ガラスコート層に熱衝撃等が加わった際に、クラックが発生しやすくなることがある。
傘裾部の幅が上記範囲であると、本発明のエンジンバルブがエンジンに用いられた際に、バルブシートと接触するエンジンバルブの部分を充分に大きくすることができ、エンジンバルブと、バルブシートとが繰り返し衝突することにより生じる衝撃によりエンジンバルブが破壊されることを防ぐことができる。また、ガラスコート層で被覆される傘部の割合を充分に大きくすることができるので、充分な断熱効果を得ることができる。
なお、本明細書において、「エンジンバルブの傘裏面の傘裾から軸部に向かう方向」とは、エンジンバルブの傘裾のある一点からエンジンバルブの軸部までを最短距離となるように結ぶ直線の方向のことを意味する。
エンジンバルブにおいて、傘裾部の面積が、エンジンバルブの傘裏面の面積の5%未満であると、本発明のエンジンバルブがエンジンに用いられた際に、シリンダーと接触するエンジンバルブの部分が小さくなる。エンジンバルブと、シリンダーとは繰り返し衝突することになるので、傘裾部が小さくなると、傘裾部における単位面積当たりにかかる衝撃が強くなる。従って、傘裾部の面積が、エンジンバルブの傘裏面の面積の5%未満であると、エンジンバルブが破壊されやすくなる。
エンジンバルブにおいて、傘裾部の面積が、エンジンバルブの傘裏面の面積の50%を超えると、セラミック部材で構成される傘裏面の割合が小さくなる。従って、充分な断熱効果を得られにくくなる。
非晶質無機材はエンジンバルブの金属基材を被覆するガラス層として機能する。また、結晶性無機材が耐熱性を向上させる部材としての役割を担う。さらにガラスコート層に非晶質無機材と結晶性無機材が存在することでガラスコート層の強度が高くなる。
非晶質無機材が上記低軟化点ガラスであると、軟化点を超える温度で加熱することにより非晶質無機材が軟化溶融し金属基材の表面に広がってガラスコート層となる。
これらの耐熱性能に優れた結晶性無機材を含むガラスコート層は、耐熱性が向上する。また、断熱性能も向上する。
ジルコニアからなるセラミック部材は、耐熱性に優れるため好ましい。また、ジルコニアは、ガラスコート層との密着性が良好であるため好ましい。
このため、上記セラミック部材が用いられたエンジンバルブは、高い断熱性能を発揮することができる。
以下、本発明のエンジンバルブについて詳述する。
すなわち、本発明の軸部篏合型エンジンバルブは、軸部及び土台部からなる金属基材と、セラミック部材とからなるエンジンバルブであって、上記土台部は、柱状部と傘裾部とからなり、上記エンジンバルブの傘裏面の傘裾部以外の部分は上記セラミック部材により構成されており、上記セラミック部材の内側に形成された空間に上記柱状部が篏合されてエンジンバルブの傘部を構成しており、上記セラミック部材は、ガラスコート層を介して上記金属基材の傘裾部に接着され、一体化されてなることを特徴とする。
上記のように構成されたエンジンバルブでは、傘部の側面である傘裏面の傘裾部(金属基材の傘裾部の表面)以外の部分はセラミック部材により構成されている。
図1(a)は、本発明の軸部篏合型エンジンバルブの一例を示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示す軸部篏合型エンジンバルブのA−A線断面図である。
上記のように構成されたエンジンバルブ10では、傘部12の側面である傘裏面の傘裾部(傘裾部13の表面)以外の部分はセラミック部材15により構成されている。
本発明の傘部篏合型エンジンバルブは、棒状の軸部と、円錐形状の傘部と、傘部のうち傘裾の部分である傘裾部からなり、一方、エンジンバルブを構成する金属基材は、軸部と土台部とからなり、さらに、土台部は、円錐台形状の円錐台部と傘裾部とからなる。なお、円錐台部と傘裾部とは、一体的に形成されている。また、エンジンバルブの軸部と傘裾部に関し、金属基材の軸部と傘裾部とが、そのまま軸部及び傘裾部として使用されている。
このように構成されたエンジンバルブでは、傘部の側面である傘裏面の傘裾部(傘裾部の表面)以外の部分はセラミック部材により構成されている。
図2(a)は、本発明の傘部篏合型エンジンバルブの一例を示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示す傘部篏合型エンジンバルブのB−B線断面図である。
このように構成されたエンジンバルブ30では、傘部32の側面である傘裏面の傘裾部(傘裾部33の表面)以外の部分はセラミック部材35により構成されている。
例えば、ステンレス鋼、耐熱鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、インコネル、ハステロイ、インバー等が挙げられる。また、各種鋳造品(例えば、鋳鉄、鋳鋼、炭素鋼等)等が挙げられる。
エンジンバルブ(エンジンバルブの傘裏面)の材質としては、耐熱鋼(SUH)が挙げられる。具体的には、マルテンサイト系耐熱鋼(SUH3、SUH11等)、オーステナイト系耐熱鋼(SUH35等)、フェライト系耐熱鋼(SUH446等)等が挙げられる。また、インコネル(NCF751等)のNi基耐熱合金も挙げられる。
金属基材の傘裾部又は円錐台部の表面粗さRzJISが0.3μm未満であると、金属基材の傘裏面の表面積が小さくなるため、金属基材の傘裏面とガラスコート層との密着性が充分に得られにくくなる。一方、金属基材の傘裾部又は円錐台部の表面粗さRzJISが20μmを超えると、金属基材の傘裾部又は円錐台部にガラスコート層が形成されにくくなる。これは、金属基材の傘裾部又は円錐台部の表面粗さRzJISが大きすぎると、金属基材の傘裾部又は円錐台部に形成された凹凸の谷の部分にスラリー(ガラスコート層を形成するための組成物)が入り込まず、この部分に空隙が形成されるためであると考えられる。
なお、金属基材の傘裾部又は円錐台部の表面粗さRzJISは、東京精密製、ハンディサーフE−35Bを用いてJIS B 0601(2001)に準拠して測定することができる。測定は、25℃、大気圧で行うこととする。
上記結晶性無機材は、アルミナ、ジルコニア、イットリア、カルシア、マグネシア、セリア、及び、ハフニアからなる群から選択される少なくとも一種からなることが好ましい。これらのなかでは、ジルコニアがより好ましい。
セラミック部材の気孔率が10%未満であると、金属基材との熱膨張率の違いによる大きさの変化に追従しにくくなり、温度変化により発生する応力により破壊されやすくなり、一方、セラミック部材の気孔率が60%を超えると、機械的強度が低下し、温度変化により発生する応力により破壊されやすくなる。
セラミック部材が気孔を有すると、エンジンバルブの断熱性能がより向上する。また、ガラスコート層を形成する際の焼結工程において、ガラスコート層とセラミック部材との間に熱膨張差による応力が発生しても、気孔によりその応力が緩和される。このため、ガラスコート層の靱性が低い場合であっても、焼結の際にセラミック部材が応力を吸収して破損することがより防止される。また、焼結工程においてガラスコート層の原料が気孔に拡散してアンカー効果を発揮することで、ガラスコート層とセラミック部材のより強い密着が可能となる。
まず、前処理として、気孔率測定の対象となる試料を、イオン交換水及びアセトンを用いて超音波で洗浄を行った後、100℃で乾燥する。
次に、前処理を終了した試料をイオン交換水とともに3時間煮沸して飽水試料を作製する。続いて、飽水試料を水中にて糸で吊るして飽水試料の浮力(W1)を電子天秤で測定する。また、飽水試料の質量(W2)を電子天秤で測定し、120℃、60分間乾燥した後、乾燥試料の質量(W3)を測定する。
上記方法により得られた結果を用い、以下の計算式により、気孔率を算出する。
{[飽水試料の質量(W2)−乾燥試料の質量(W3)]/飽水試料の浮力(W1)}×100(%)
本発明の上記軸部篏合型エンジンバルブにおいては、上記合計体積に対する上記セラミック部材の体積の割合が50〜90%であると、エンジンバルブの傘部の傘裾部の軸部側の端部からエンジンバルブの軸部までの部分が主にセラミック部材により構成されており、該セラミック部材が、ガラスコート層を介して金属基材の傘裾部と接着して一体化している。このため、エンジンバルブの傘部の傘裾部の軸部側の端部からエンジンバルブの軸部までの部分が、より高い断熱性能を発揮することができる。従って本発明のエンジンバルブが上記構成であると、上述した本発明の効果をより充分に発揮することができる。
上記傘部篏合型エンジンバルブにおいて、上記合計体積に対する上記セラミック部材の体積の割合が50〜90%であると、上記傘裾部の軸部側の端部から、エンジンバルブの軸部まで、エンジンバルブの傘裏面がより高い断熱性能を発揮することができる。このため本発明のエンジンバルブが上記構成であると、上述した本発明の効果をより充分に発揮することができる。
本発明のエンジンバルブにおいて、上記非晶質無機材は、ガラスからなることが好ましく、軟化点が300〜1000℃である低軟化点ガラスであることがより好ましい。
軟化点が300〜1000℃の低軟化点ガラスとしては、例えば、SiO2−B2O3−ZnO系ガラス、SiO2−B2O3−Bi2O3系ガラス、SiO2−PbO系ガラス、SiO2−PbO−B2O3系ガラス、SiO2−B2O3−PbO系ガラス、B2O3−ZnO−PbO系ガラス、B2O3−ZnO−Bi2O3系ガラス、B2O3−Bi2O3系ガラス、B2O3−ZnO系ガラス、BaO−SiO2系ガラス、SiO2−B2O3−RO系ガラス、SiO2−B2O3−R2O系ガラス(Rは遷移金属)等が挙げられる。
なお、軟化点は、JIS R 3103−1:2001に規定される方法に基づいて、例えば、有限会社オプト企業製の硝子自動軟化点・歪点測定装置(SSPM−31)を用いて測定することができる。測定は、大気圧で行うこととする。
また、結晶性無機材は、マンガン、鉄、コバルト、銅、クロム、及び、ニッケルのうち少なくとも一種の金属の酸化物であることも好ましい。
ガラスコート層の厚さの測定には、株式会社フィッシャーインストルメンツ社製、デュアルスコープMP40を用いることができる。セラミックコート層の任意の30点において、デュアルスコープMP40の膜厚測定における膜厚補正を実施したのち、膜厚測定をガラスコート層の任意の10点に対して行い、その測定値の平均をとることによりガラスコート層の厚さを測定することができる。膜厚測定を10点に対して行う場合、測定領域内で測定部位の偏りがないようにすることが望ましく、例えば、測定を1mmの等間隔おきに行う等の方法が挙げられる。
ガラスコート層の厚さが上記範囲であると、インバルブの熱が吸気に伝わることなく吸気効率の低下を防止することができる。また、排気の熱がエキバルブに伝達されにくく、その分排ガスの温度が低下しにくいので、排ガスが担体に到達した際に充分に担体を暖めて排ガスを浄化することが可能となる。ガラスコート層の厚さが10μm未満であると、金属基材とセラミック部材の密着強度が低くなるという問題がある。一方、ガラスコート層の厚さが500μmを超えると、ガラスコート層に熱衝撃等が加わった際に、ガラスコート層にクラックが発生しやすくなることがある。また吸気又は排気経路が狭くなるという問題もある。
気孔の平均気孔径が0.5〜15μmであれば、気孔がガラスコート層の中に独立気孔として存在し、断熱性を高める構造として有効に機能する。
気孔率は、より好ましくは15〜50%であり、さらに好ましくは20〜40%である。気孔率が10〜60%であると、気孔による充分な断熱性が保持される。
具体的には、SEM画像をガラスコート層の厚さ方向の全域が入るように撮影して、全ての気孔についての気孔径を測定し、平均値を求めることにより平均気孔径が得られる。気孔の形状が略球状でない場合、その気孔の直径は、投影面積円に相当する直径(ヘイウッド径)とする。
SEMの測定倍率は、ガラスコート層の厚さが220〜300μm未満の場合は500倍、300〜500μm未満の場合は200倍、500〜1000μmの場合は150倍とする。
また、ガラスコート層の気孔率は、ガラスコート層の重量と膜厚計(デュアルスコープ)で測定したガラスコート層の厚さから嵩密度を算出し、ピクノメータで算出した真密度との比を算出し、その値を1から引いて、百分率とした値を気孔率として算出することができる。
ここで、本発明のエンジンバルブが用いられるエンジンの構造の一例について説明する。
本発明のエンジンバルブは、このような構成のエンジン燃焼室に最適である。
なお、エンジンバルブの傘裏面とは、エンジンバルブの傘部の側面のことであり、エンジンバルブの傘部において、エンジン燃焼室に臨まない方の面を意味する。また、ガラスコート層が形成されていない傘裏面の傘裾部は、シリンダーと接触する部分である。
インバルブは断熱性が高いので、インバルブの熱は、吸気される空気に伝わりにくい。そのため、吸気効率を低下させることなくエンジンを駆動させることができる。
また、エキバルブは断熱性が高いので、排ガスの熱は、エキバルブに伝達されにくい。そのため、排ガスの温度が低下しにくい。排ガスは、エンジンの下流に設置された排ガス浄化装置に設置された担体により浄化されることになるが、排ガスの温度が低下していない場合、排ガスは速やかに担体の温度を上昇させ、担体の排ガス浄化機能を好適に発揮させることができる。つまり、排ガス浄化効率が向上する。
本発明のエンジンバルブにおいては、ガラスコート層を焼結により形成する際に、金属基材とガラスコート層との間及びガラスコート層とセラミック部材との間に強い密着力が発現する。このためエンジンバルブが使用される過酷な環境下においても、エンジンバルブの傘裏面に形成されたセラミック部材が金属基材から剥離しにくく、高い断熱性能を発揮できることになる。
図3は、本発明のエンジンバルブが用いられたエンジン燃焼室の構造の一例を模式的に示す断面図である。
本発明のエンジンバルブは、このような構成のエンジン燃焼室に最適である。
なお、エンジンバルブ160の傘裏面166a、166bとは、エンジンバルブ160の傘部166の側面のことであり、エンジンバルブ160の傘部166において、エンジン燃焼室150に臨まない方の面を意味する。また、ガラスコート層が形成されていない傘裏面の傘裾部1660は、シリンダー170と接触する部分である。なお、セラミック部材やガラスコート層の位置等については、図1〜図2に示すエンジンバルブで示しているので、ここでは、図示していない。
インバルブ160aは断熱性が高いので、インバルブ160aの熱は、吸気される空気に伝わりにくい。そのため、吸気効率を低下させることなくエンジンを駆動させることができる。
また、エキバルブ160bは断熱性が高いので、排ガスの熱は、エキバルブ160bに伝達されにくい。そのため、排ガスの温度が低下しにくい。排ガスは、エンジンの下流に設置された排ガス浄化装置に設置された担体により浄化されることになるが、排ガスの温度が低下していない場合、排ガスは速やかに担体の温度を上昇させ、担体の排ガス浄化機能を好適に発揮させることができる。つまり、排ガス浄化効率が向上する。
本発明のエンジンバルブにおいては、ガラスコート層を焼結により形成する際に、金属基材とガラスコート層との間及びガラスコート層とセラミック部材との間に強い密着力が発現する。このためエンジンバルブが使用される過酷な環境下においても、エンジンバルブの傘裏面に形成されたセラミック部材が金属基材から剥離しにくく、高い断熱性能を発揮できることになる。
第一の本発明のエンジンバルブの製造方法は、上記金属基材の土台部を構成する傘裾部にガラスペーストを塗布してガラスペースト層を形成するガラスペースト層形成工程、セラミック部材の内側に形成された空間に、上記金属基材を構成する柱状部を嵌め込むとともに、上記ガラスペースト層の表面に、上記セラミック部材を配置するセラミック部材配置工程、及び、上記ガラスペースト層を焼結することにより、ガラスコート層を形成するとともに、上記セラミック部材と上記金属基材の傘裾部とを上記ガラスコート層を介して接着する工程を含むことを特徴とする。
本発明のエンジンバルブの製造方法においては、まず、エンジンバルブを構成する金属基材を準備する。
上記洗浄処理としては特に限定されず、従来公知の洗浄処理法を用いることができ、具体的には、例えば、アルコール溶媒中で超音波洗浄を行う方法等を用いることができる。
なお、粗化処理は、後述するガラスペースト層を形成するガラスペースト層形成工程よりも先に行うことが好ましい。
(b−1)ガラスペースト調製工程
本発明のエンジンバルブの製造方法においては、続いて、ガラスペースト層を形成するためのガラスペーストを調製する。
ガラスペーストは、ガラス原料を混合することにより得られる。ガラスペーストに気孔を形成するためのカーボン粒子を添加する場合には、ガラス原料及びカーボン粒子を混合する。
また、焼成工程後にガラスコート層内にカーボン粒子の一部が残存することが好ましい。
上記有機結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、分散媒と有機結合剤とを併用してもよい。
カーボン粒子の含有量は0.005〜8重量部であることがより好ましく、0.008〜5重量部であることがさらに好ましい。
カーボン粒子の含有量をこのような範囲とすることにより、気孔が数多く形成されるので気孔をそれほど成長させなくとも所望の気孔率となり望ましい断熱性能を有するガラスコート層を形成させることができる。
気孔をそれほど成長させないので、ひとつひとつの気孔は小さくなり、また、気孔を成長させるための加熱時間を長くとる必要が無いので気孔が形成される程度が均一となり、シャープな気孔径分布を有するガラスコート層を形成することができる。
また、多量のカーボン粒子を配合した場合は、ガス化しなかったカーボン粒子がガラスコート層内に残留しやすくなる。
ガラスペーストに結晶性無機材を加える場合、結晶性無機材を添加するタイミングは特に限定されないが、例えば、上述したガラス原料と水と所望により添加されるカーボン粒子とを混合する前に、ガラス原料と結晶性無機材を混合する工程を有していてもよい。
結晶性無機材は、本発明のエンジンバルブの説明において説明したものと同様であるので、ここでは、その説明を省略する。
なお、ガラスペーストとしてさらに結晶性無機材を加える場合、上述したガラス原料と水と所望により添加されるカーボン粒子とを混合する前に、ガラス原料と結晶性無機材を混合する工程を有していてもよい。
本発明のエンジンバルブの製造方法においては、次に、塗布工程として、金属基材の傘裾部又は円錐台部に、ガラスペースト層を形成するためのガラスペーストを塗布することによりガラスペースト層を形成する。
ガラスペースト層の厚さが10μm未満であると、金属基材とセラミック部材の密着強度が低くなるという問題がある。一方、形成されるガラスコート層の厚さが500μmを超えると、ガラスコート層に熱衝撃等が加わった際に、クラックが発生しやすくなることがある。また吸気又は排気経路が狭くなるという問題もある。
本発明のエンジンバルブの軸部篏合型エンジンバルブの製造方法においては、金属基材の柱状部と嵌合し、金属基材の傘裾部に形成されたガラスペースト層と接触するようにセラミック部材を配置する。
また、本発明のエンジンバルブの傘部篏合型エンジンバルブの製造方法においては、金属基材の円錐台部の表面に形成されたガラスペースト層と接触するようにセラミック部材を配置する。
本発明のエンジンバルブの製造方法においては、次に、ガラスペースト層を焼結することにより、ガラスコート層を形成するとともに、セラミック部材と上記金属基材(傘裾部又は円錐台部)とをガラスコート層を介して接着する。
例えばガラスペーストにカーボン粒子が含まれる場合には、焼結工程により、ガラスペースト層内でカーボン粒子を気化させて、ガラスコート層内に気孔を形成することができる。
焼結のための加熱処理の条件は、エンジンバルブの材質等を考慮して任意に設定することができるが、エンジンバルブの材質がステンレス鋼である場合は400〜1100℃、耐熱鋼である場合は400〜1100℃で加熱処理することが好ましい。加熱時間は3〜120分間とすることが好ましい。
また、焼結のための加熱処理温度は、ガラス原料の軟化点以上とすることが好ましい。加熱温度をガラス原料の軟化点以上の温度とすることにより、塗布されたガラス原料が軟化、溶融し、形成されたガラスコート層と金属基材のエンジンバルブの傘裏面とが強固に密着する。
また、焼結工程中に、気孔がガラスコート層の表面に露出した場合、ガラスコート層を形成するガラス原料は軟化しているため、気孔が露出した箇所を速やかに塞ぐことができる。そのため、焼成後のガラスコート層は、表面に気孔が露出しておらず、平坦度の高い(表面粗さの低い)ガラスコート層が得られる。
(1)本発明のエンジンバルブでは、上記傘裾部以外の上記傘裏面は、上記セラミック部材により構成されており、該セラミック部材と、エンジンバルブの傘部を構成する金属基材との間には、ガラスコート層が形成されているので、エンジンバルブの傘裏面の傘裾部の軸部側の端部からエンジンバルブの軸部までの部分の断熱性を高めることができる。
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1)
(a)エンジンバルブ用基材準備工程
まず、土台部及び軸部からなり、土台部は、図1(a)及び(b)に示す柱状部と傘裾部とからなるエンジンバルブ用金属基材を準備した。金属基材の構成材料は、ステンレス鋼(SUS430)であった。
金属基材の軸部の形状は、直径5.5mm、全長105.5mmの棒状であった。
金属基材の土台部の形状は、柱状部の形状が直径5.5mm、長さ10.5mmの棒状であり、傘裾部の形状は、底面が直径28mmの円であり、その厚さが3mmの円盤形状であった。
セラミック部材は、図4(a)に示すように円錐台形状であり、中心軸部分に直径d1が6.05mmの円柱形状の空洞が形成され、底面の直径d2が25mm、上面の直径d1が6.05mm、高さh1が6.5mmのジルコニア焼結体であった。また、ジルコニア焼結体からなるセラミック部材の気孔率を上記したアルキメデス法により測定したところ、16%であった。
(b−1)原料混合物調製工程
次に、セラミック原料としてバリウムシリケートガラス(軟化点770℃)100重量部と、水100重量部と、有機結合材としてメチルセルロース1重量部と、造孔材として黒鉛化したカーボン粒子を0.23重量部とをボールミル等によって湿式混合することにより、原料混合物を調製した。
次に、エンジンバルブ用金属基材の傘裾部の傘表面に対抗する面の全体に、原料混合物を塗布することにより、ガラスコート層形成用の塗布層を形成した。塗布層の厚さは、50μmであった。
続いて、金属基材の柱状部に嵌合されるように、ジルコニア焼結体からなるセラミック部材を嵌め込んだ。
次に、乾燥機内において70℃で20分乾燥した。
さらに、空気中、焼成炉内で800℃、90分間加熱処理することにより、その厚さが40μmのガラスコート層を形成し、セラミック部材と傘裾部とをガラスコート層で接着し、エンジンバルブの製造を終了した。
製造されたガラスコート層には気孔が形成されており、気孔率は25%、平均気孔径は4μmであった。なお、ガラスコート層の厚さは膜厚計(デュアルスコープ)で決定し、平均気孔径は、エンジンバルブの傘部を切断した後、SEMによりガラスコート層を撮影して得た写真を用いて決定した。
また、ガラスコート層の気孔率は、ガラスコート層の重量と膜厚計(デュアルスコープ)で測定したガラスコート層の厚さから嵩密度を算出し、ピクノメータで算出した真密度との比を算出し、その値を1から引いて、百分率とした値を気孔率として算出した。
真密度をピクノメータで算出する具体的な方法としては、ガラスコート層を粉末状にし、連続自動粉粒体真密度測定器[(株)セイシン企業製 オートトゥルーデンサー MAT−7000]で測定する。測定溶媒は測定対象となる拡散部材と反応しないものであれば特に限定されないが、本実施例1では、n−ブタノールを使用した。
(a)エンジンバルブ用基材準備工程
まず。土台部及び軸部からなり、土台部は、円錐台部と傘裾部とからなるエンジンバルブ用金属基材を準備した。金属基材の構成材料は、ステンレス鋼(SUS430)であった。
金属基材の軸部の形状は、実施例1の場合と同様であり、金属基材の土台部の形状は、円錐台部と傘裾部とが一体化された円錐台形状であり、底面の直径が28mm、高さ13.5mmの略円錐台形状であった。
セラミック部材は、図4(b)に示すように、スカート形状であり、中心軸部分に直径d3=6.05mmの貫通孔が形成され、その厚さd5:2mm、底面の直径d4:25mm、高さh2:6.5mmのジルコニア焼結体であった。また、ジルコニア焼結体からなるセラミック部材の気孔率を上記したアルキメデス法により測定したところ、16%であった。
(b−1)原料混合物調製工程
実施例1と同様にして、原料混合物を調製した。
次に、エンジンバルブ用金属基材の円錐台部の表面の全体に、原料混合物を塗布することにより、ガラスコート層形成用の塗布層を形成した。塗布層の厚さは、50μmであった。
続いて、金属基材の円錐台部のガラスコート層形成用の塗布層に接触するように、ジルコニア焼結体からなるセラミック部材を嵌め込んだ。
次に、乾燥機内において70℃で20分乾燥した。
さらに、空気中、焼成炉内で800℃、90分間加熱処理することにより、その厚さが40μmのガラスコート層を形成し、円錐台部とセラミック部材とをガラスコート層で接着してエンジンバルブの製造を終了した。
製造されたガラスコート層には気孔が形成されており、気孔率は25%、平均気孔径は4μmであった。ガラスコート層の厚さは膜厚計(デュアルスコープ)で決定し、平均気孔径は、SEMによりガラスコート層を撮影して得た写真を用いて決定した。
また、ガラスコート層の気孔率は、実施例1と同様、ガラスコート層の重量と膜厚計(デュアルスコープ)で測定したガラスコート層の厚さから嵩密度を算出し、ピクノメータで算出した真密度との比を算出し、その値を1から引いて、百分率とした値を気孔率として算出した。
製造された実施例1に係るエンンジンバルブ及び実施例2に係るエンジンバルブに関し、軸部に近い部分で軸部に平行に切断し、断面におけるガラスコート層の厚さを顕微鏡により観察した。その結果、実施例1及び実施例2に係るエンジンバルブでは、ガラスコート層に引けはなく、ガラスコート層は、ほぼ均一な厚さであった。
11、31 軸部(エンジンバルブ)
12、32 傘部(エンジンバルブ)
13、33 傘裾部(エンジンバルブ)
15、35 セラミック部材
16、36 ガラスコート層
20、40 金属基材
21、41 軸部(金属基材)
22、42 土台部(金属基材)
22a 柱状部(金属基材)
22b 傘裾部(金属基材)
42a 円錐台部
42b 傘裾部
150 エンジン燃焼室
160(160a) エンジンバルブ(インバルブ)
160(160b) エンジンバルブ(エキバルブ)
170 シリンダー
180 点火プラグ
166(166a) エンジンバルブ(インバルブ)の傘裏面
166(166b) エンジンバルブ(エキバルブ)の傘裏面
190 ピストン
1660 傘裏面の傘裾部
Claims (17)
- 軸部及び土台部からなる金属基材と、セラミック部材とからなるエンジンバルブであって、
前記土台部は、柱状部と傘裾部とからなり、
前記エンジンバルブの傘裏面の傘裾部以外の部分は前記セラミック部材により構成されており、
前記セラミック部材の内側に形成された空間に前記柱状部が篏合されてエンジンバルブの傘部を構成しており、
前記セラミック部材は、ガラスコート層を介して前記金属基材の傘裾部に接着され、一体化されてなり、
前記ガラスコート層は、気孔を有することを特徴とするエンジンバルブ。 - 前記セラミック部材及びその内側に形成された空間の合計体積を100%とした場合において、前記合計体積に対する前記セラミック部材の体積の割合は、50〜90%である請求項1に記載のエンジンバルブ。
- 前記セラミック部材及びその内側に形成された空間の合計体積を100%とした場合において、前記合計体積に対する前記セラミック部材の体積の割合は、80〜90%である請求項2に記載のエンジンバルブ。
- 軸部と円錐台形状の土台部とからなる金属基材と、セラミック部材とからなるエンジンバルブであって、
前記エンジンバルブの傘裏面の傘裾部以外の部分は前記セラミック部材により構成されており、
前記セラミック部材の内側に形成された空間に前記土台部の一部が篏合されてエンジンバルブの傘部を構成しており、
前記セラミック部材は、ガラスコート層を介して前記金属基材の土台部に接着され、一体化されてなり、
前記ガラスコート層は、気孔を有することを特徴とするエンジンバルブ。 - 前記セラミック部材及びその内側に形成された空間の合計体積を100%とした場合において、前記合計体積に対する前記セラミック部材の体積の割合は、50〜90%である請求項4に記載のエンジンバルブ。
- 前記セラミック部材及びその内側に形成された空間の合計体積を100%とした場合において、前記合計体積に対する前記セラミック部材の体積の割合は、70〜80%である請求項5に記載のエンジンバルブ。
- 前記セラミック部材は、気孔を有する請求項1〜6のいずれかに記載のエンジンバルブ。
- 前記セラミック部材の気孔中にガラスコート層の成分が浸透している請求項7に記載のエンジンバルブ。
- 前記ガラスコート層の厚さは、10〜500μmである請求項1〜8のいずれかに記載のエンジンバルブ。
- 前記ガラスコート層は、非晶質無機材が含まれる請求項1〜9のいずれかに記載のエンジンバルブ。
- 前記ガラスコート層は、結晶性無機材が含まれる請求項10に記載のエンジンバルブ。
- 前記非晶質無機材は、軟化点が300〜1000℃である低軟化点ガラスである請求項10又は11に記載のエンジンバルブ。
- 前記結晶性無機材は、アルミナ、ジルコニア、イットリア、カルシア、マグネシア、セリア及びハフニアからなる群から選択される少なくとも一種からなる請求項11に記載のエンジンバルブ。
- 前記セラミック部材は、ジルコニアからなる請求項1〜13のいずれかに記載のエンジンバルブ。
- 請求項1〜3及び7〜14のいずれかに記載のエンジンバルブの製造方法であって、
前記金属基材の土台部を構成する傘裾部にガラスペーストを塗布してガラスペースト層を形成するガラスペースト層形成工程、
セラミック部材の内側に形成された空間に、前記金属基材を構成する柱状部を嵌め込むとともに、前記ガラスペースト層の表面に、前記セラミック部材を配置するセラミック部材配置工程、及び、
前記ガラスペースト層を焼結することにより、ガラスコート層を形成するとともに、前記セラミック部材と前記金属基材の傘裾部とを前記ガラスコート層を介して接着する接着工程を含むことを特徴とするエンジンバルブの製造方法。 - 請求項4〜14のいずれかに記載のエンジンバルブの製造方法であって、
前記金属基材の土台部の表面にガラスペーストを塗布してガラスペースト層を形成するガラスペースト層形成工程、
セラミック部材の内側に形成された空間に、前記金属基材の土台部を嵌め込むとともに、前記ガラスペースト層の表面に、前記セラミック部材を配置するセラミック部材配置工程、及び、
前記ガラスペースト層を焼結することにより、ガラスコート層を形成するとともに、前記セラミック部材と前記金属基材の土台部とを前記ガラスコート層を介して接着する接着工程を含むことを特徴とするエンジンバルブの製造方法。 - エンジンバルブに用いられるセラミック部材であって、
前記エンジンバルブは、請求項1〜14に記載のエンジンバルブであることを特徴とするセラミック部材。
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