JP6574165B2 - シート状細胞培養物を製造するための細胞培養器具およびそれを用いたシート状細胞培養物の製造方法 - Google Patents

シート状細胞培養物を製造するための細胞培養器具およびそれを用いたシート状細胞培養物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、簡便にシート状の細胞培養物を製造するための細胞培養器具および該器具を用いたシート状細胞培養物の製造方法に関する。
近年の心臓病に対する治療の革新的進歩にかかわらず、重症心不全に対する治療体系は未だ確立されていない。心不全の治療法としては、βブロッカーやACE阻害剤による内科治療が行われるが、これらの治療が奏功しないほど重症化した心不全には、補助人工心臓や心臓移植などの置換型治療、つまり外科治療が行われる。
このような外科治療の対象となる重症心不全には、進行した弁膜症や高度の心筋虚血に起因するもの、急性心筋梗塞やその合併症、急性心筋炎、虚血性心筋症(ICM)、拡張型心筋症(DCM)などによる慢性心不全やその急性憎悪など、多種多様の原因がある。
これらの原因と重症度に応じて弁形成術や置換術、冠動脈バイパス術、左室形成術、機械的補助循環などが適用される。
この中で、ICMやDCMによる高度の左室機能低下から心不全を来たしたものについては、心臓移植や人工心臓による置換型治療のみが有効な治療法とされてきた。しかしながら、これら重症心不全患者に対する置換型治療は、慢性的なドナー不足、継続的な免疫抑制の必要性、合併症の発症など解決すべき問題が多く、すべての重症心不全に対する普遍的な治療法とは言い難い。
その一方、最近、重症心不全治療の解決策として新しい再生医療の展開が不可欠と考えられている。
重症心筋梗塞等においては、心筋細胞が機能不全に陥り、さらに線維芽細胞の増殖、間質の線維化が進行し心不全を呈するようになる。心不全の進行に伴い、心筋細胞は傷害されてアポトーシスに陥るが、心筋細胞は殆ど細胞分裂をおこさないため、心筋細胞数は減少し心機能の低下もさらに進む。
このような重症心不全患者に対する心機能回復には細胞移植法が有用とされ、既に自己骨格筋芽細胞による臨床応用が開始されている。
近年、その一例として、組織工学を応用した温度応答性培養皿を用いることによって、成体の心筋以外の部分に由来する細胞を含む心臓に適用可能な三次元に構成された細胞培養物と、その製造方法が提供された(特許文献1)。
特許文献2には、細胞培養面に細胞が潜入できない寸法の凹部を有する凹凸構造を形成することにより、損傷が少なく、シートの剥離が容易であり、シート形成速度も遅くならない細胞培養支持体が記載されている。特許文献3には、細胞接着性領域と細胞接着阻害性領域を有する細胞培養基板が開示され、該培養基板を用いて培養すると、細胞接着性領域のみに細胞が接着することにより、細胞のパターニングを行うことができることが記載されている。
特表2007−528755号公報 特開2008−11766号公報 特開2007−312736号公報
良質で安全性の高いシート状細胞培養物を製造する方法においては、シートの物理的強度やシート形成の速度は重要な要素であるが、剥離の容易さなどもまた重要な要素である。特に脆弱なシート状細胞培養物の製造においては、剥離の工程においてシート状細胞培養物の損傷が生じる場合が少なからず存在する。したがって培養したシート状細胞培養物を容易に剥離できる培養基材または容易に剥離可能とする方法が求められている。本発明の目的は、良質で安全性の高いシート状細胞培養物を、迅速かつ容易に製造する方法およびそのために有用な細胞培養器具を提供することにある。
本発明者らは、非接着性の表面にある程度の間隔で血清をプロットして接着性領域を形成したディッシュにおいてシート化培養を行うと、細胞非接着性の領域が存在しても、細胞がパターニングされずに均一な一枚のシートが形成され、さらに該シートは容易に剥離可能であることを見出した。かかる知見に基づき、さらに鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下に関する。
[1]シート状細胞培養物の製造方法であって、細胞非接着性領域と細胞接着性領域とがパターン形状を形成する、略平面状の表面を有する培養基材上に、細胞を播種し、インキュベートすることを含む、前記方法。
[2]さらに、培養基材上で形成されたシート状細胞培養物を該基材から剥離することを含む、[1]の方法。
[3]1つの細胞接着領域と、該細胞接着領域に隣接する他の細胞接着領域との間の少なくとも一部における間隔が、播種される細胞の長径よりも大きい、[1]または[2]の方法。
[4]細胞が、実質的に増殖することなくシート状細胞培養物を形成し得る密度で播種される、[1]〜[3]の方法。
[5]細胞が、骨格筋芽細胞である、[1]〜[4]の方法。
[6]パターン形状が、細胞非接着領域または細胞接着領域のいずれか一方を島とし、他方を海とする海島構造である、[1]〜[5]の方法。
[7]細胞接着性領域が島であり、細胞非接着性領域が海である、[6]の方法。
[8]細胞接着性領域の割合が、表面全体の4%〜65%である、[1]〜[7]の方法。
[9]シート状細胞培養物を製造するための細胞培養器具であって、シート状細胞培養物を形成するための略平面状の細胞非接着性の培養基材表面を有し、該培養基材表面は細胞接着性処理された領域を複数有し、該領域が前記培養基材表面に均一に分散して存在している、前記細胞培養器具。
[10]細胞接着性処理が、紫外線照射、プラズマ放電またはコロナ放電により行われる、[9]の細胞培養器具。
[11]細胞接着性処理が、紫外線照射により行われる、[10]の細胞培養器具。
[12]細胞接着性処理された領域が、2〜4mm間隔で存在する直径1〜4mmの点状の領域である、[9]〜[11]の細胞培養器具。
[13]細胞接着性処理された領域が、培養基材表面全体の4%〜65%である、[9]〜[12]の細胞培養器具。
[14]シート状細胞培養物の製造方法であって、[9]〜[13]の細胞培養器具の培養基材表面に細胞を播種し、インキュベートすることを含む、前記方法。
[15]さらに、培養基材上で形成されたシート状細胞培養物を該基材から剥離することを含む、[14]の方法。
[16]細胞が、実質的に増殖することなくシート状細胞培養物を形成し得る密度で播種される、[14]または[15]の方法。
[17]細胞が、骨格筋芽細胞である、[14]〜[16]の方法。
本発明の細胞培養器具は、浸漬撹拌などの洗浄操作や、取出し、保持、移送などの移植操作に耐え得る十分な物理的強度を有するシート状細胞培養物を培養基材表面上に形成することができ、かつかかるシート状細胞培養物を容易に剥離することができるものである。また、本発明の製造方法によれば、高い細胞回収率でシート状細胞培養物を得ることができるため、使用する細胞の有効利用が可能となり、コストの削減などに寄与する。さらに、本発明の製造方法により得られたシート状細胞培養物は、血管新生等の有効性に関わる作用を有する因子の産生が多い一方で、炎症性サイトカインの産生が低いため、治療上の有効性も、レシピエントに対する安全性も極めて高く、臨床的に極めて有用である。このため、ヒト医療および獣医療において多大な貢献が期待できる。さらにまた、本発明の製造方法によれば、シート形成までに必要な時間が短く、剥離も容易に行えるため、製造工程におけるシートの破損のリスクを低減し、良質なシート状細胞培養物を大量に製造するのに好適である。
図1は、非接着性領域上に接着性領域を形成し、シート化培養を6時間行った場合に得られたシート状細胞培養物の写真である。しわ、よれ、破損のない均一なシート状細胞培養物が得られていることが分かる。 図2は、接着性領域上に非接着性領域を形成し、シート化培養を6時間行った場合に得られたシート状細胞培養物の写真である。しわ、よれ、破損のない均一なシート状細胞培養物が得られていることが分かる。 図3は、細胞非接着性培養基材表面上に、斑点状のマスキングの上から紫外線照射することによって細胞接着性処理された領域を形成し、シート化培養を6時間行った場合に得られたシート状細胞培養物の写真である。しわ、よれ、破損のない均一なシート状細胞培養物が得られていることが分かる。
本発明は一側面において、細胞非接着性領域と細胞接着性領域がパターン形状を形成する、略平面状の表面を有する培養基材上に細胞を播種し、インキュベートすることを含む、シート状細胞培養物の製造方法に関する。
本発明において、「シート状細胞培養物」は、細胞が互いに連結してシート状になったものをいい、典型的には1つの細胞層からなるものであるが、2以上の細胞層から構成されるものも含む。細胞同士は、直接および/または介在物質を介して、互いに連結していてもよい。介在物質としては、細胞同士を少なくとも機械的に連結し得る物質であれば特に限定されないが、例えば、細胞外マトリックスなどが挙げられる。介在物質は、好ましくは細胞由来のもの、特に、細胞培養物を構成する細胞に由来するものである。細胞は少なくとも機械的に連結されるが、さらに機能的、例えば、化学的、電気的に連結されてもよい。
本発明のシート状細胞培養物は、好ましくはスキャフォールド(支持体)を含まない。スキャフォールドは、その表面上および/またはその内部に細胞を付着させ、細胞培養物の物理的一体性を維持するために当該技術分野において用いられることがあり、例えば、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)製の膜等が知られているが、本発明の細胞培養物は、かかるスキャフォールドがなくともその物理的一体性を維持することができる。また、本発明の細胞培養物は、好ましくは、細胞培養物を構成する細胞由来の物質のみからなり、それら以外の物質を含まない。
本発明において、「細胞接着性」とは、接着細胞が接着可能であるかまたは接着しやすいことを意味する。したがって逆に「細胞非接着性」は、接着細胞が接着可能でないかまたは接着しにくいことを意味する。本発明において「細胞接着性領域」とは、培養基材の培養表面において、細胞接着性である部分を意味し、「細胞非接着性領域」とは、培養基材の培養表面において、非細胞接着性である部分を意味する。したがって、本発明において「細胞接着性表面」という語は「細胞接着性領域」と同義に用いられ、同様に「細胞非接着性表面」という語は「細胞非接着性領域」と同義に用いられる。
接着細胞は、接する表面の疎水性または親水性がある程度以上高いと接着しにくくなることが知られている。したがって、本発明の一態様において、細胞非接着性表面は、ある程度以上の疎水性または親水性を有している。表面の疎水性または親水性の程度は、例えば、水接触角で表すことができるが、本発明において、細胞非接着性表面の水接触角は、好ましくは80°以上または50°以下、特に70°以上または40°以下である。
本発明の方法において用いられる培養基材は、その表面に細胞非接着性領域と細胞接着性領域とを具備している。そして該細胞非接着性領域と該細胞接着性領域とは、パターン形状を形成している。本発明において「パターン形状」とは、ある程度のばらつきをもって両領域が培養表面全体に分散して存在している状態を意味し、繰り返しパターンなどがあげられるが、必ずしも繰り返しパターンを形成している必要はない。パターン形状の例としては、これに限定するものではないが、例えば海島状、格子状、ストライプ状、同心円状、放射状、市松状、または1もしくは2以上のこれらの組み合わせなどが挙げられる。
細胞非接着性領域と細胞接着性領域とのパターン形状は、当該技術分野において知られた任意の方法を用いて形成してよい。パターン形状を形成する方法の例としては、これに限定するものではないが、細胞非接着性の培養表面に細胞接着性成分を塗布する方法、細胞接着性の培養表面に細胞非接着性成分を塗布する方法、細胞非接着性の培養表面に細胞接着性処理を施す方法などが挙げられる。細胞接着性処理とは、これに限定するものではないが、例えば紫外線照射処理、プラズマ処理(電荷処理)、コロナ放電処理などがあげられる。
「細胞接着性成分」とは、細胞が接着可能なあらゆる成分を意味する。逆に「細胞非接着性成分」とは、細胞が接着できないか、またはしづらいあらゆる成分を意味する。細胞接着性成分としては、これに限定するものではないが、例えばフィブロネクチン、ビトロネクチン、ラメニン、コラーゲン、プロテオグリカンなどの血清・細胞外マトリクス成分、RGD、CS−1などの細胞接着ペプチド、ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンなどのポリマー化合物などが挙げられる。細胞非接着性成分としては、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル(ポリHEMA)、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリスコリン(MPC)などのハイドロゲルなどが挙げられる。
本発明の一態様において、培養基材の培養表面は凹凸形状を有していてもよいが、好ましくは培養表面が略平面状である。本発明において「略平面状」とは、細胞間接着および細胞の均等分布に支障をきたす程度の高低差がない状態をいい、これに限定するものではないが、例えば10μm以上の凹凸を有さないものである。
本発明の方法におけるインキュベートは、シート状細胞培養物を形成するためのインキュベートである。したがって細胞間接着を形成することができる条件であればいかなる条件であってもよいが、通常は一般的な細胞培養条件と同様の条件であればよい。当該技術分野において通常の知識を有するものであれば、播種する細胞の種類に応じて最適な条件を選択することが出来る。
本発明の方法では、細胞は非接着性領域上でもパターニングされずに細胞間接着を形成し、一枚のシート状細胞培養物を製造できる。この事実は、通常細胞非接着性領域には細胞が接着できないため、十分に細胞間接着を形成できないと考えられていたこと、実際その事実を利用して、細胞のパターニングのために細胞非接着性領域および細胞接着性領域を培養表面上に形成する技術が公知であったこと(特許文献3参照)に鑑みると、驚くべきものである。
本発明の方法においては、形成されたシート状細胞培養物と培養基材とは、培養表面上の細胞接着性領域のみで結合しているため、従来の方法で形成されるシート状細胞培養物と比較して、培養表面との接着力が弱くなっている。そのため長時間培養するとシート状細胞培養物の細胞間結合力がシート状細胞培養物と培養表面との結合力を上回り、自然と剥離が起こる。したがって、本発明の一態様において、自然に剥離が起こるまでインキュベートを行ってもよい。しかしながら、剥離されたシート状細胞培養物は非常にもろく、また、そのままインキュベートを続けると細胞間結合力によりシート状細胞培養物の収縮によりよれやしわが出来たり、めくれた状態で張り付いてしまうため、自然に剥離が起こる前に能動的に剥離を行うのが好ましい。
上述の通り、本発明のインキュベートはシートを形成するためのインキュベートであるため、細胞増殖が起こる必要はない。したがって細胞間接着が形成されるのに十分な時間インキュベートを行えばよい。インキュベートの時間としては、好ましくは1〜24時間、より好ましくは2〜12時間である。1時間より短いと十分に細胞間接着が形成されないため、シート化が不十分となり、24時間より多いと剥離したシート状細胞培養物によれやしわが出来たり、シートの形状が崩れてきたりしてしまう。
本発明の好ましい一態様において、1つの細胞接着領域と、該細胞接着領域に隣接する他の細胞接着領域との間隔が、少なくとも1箇所において播種される細胞の長径よりも大きい。すなわち、培養基材表面全体で破損無くシートを形成するためには、細胞非接着領域を隙間無く覆う必要があり、そのためには、少なくとも1箇所の細胞非接着領域について2つ以上の細胞が必要となる。より好ましくは、少なくとも1つの細胞非接着領域内に、少なくとも1つの細胞が存在する。細胞非接着領域内に細胞が少なくとも1つ存在するとは、細胞非接着領域に接触している細胞のうち、細胞接着領域に接触していない細胞が少なくとも1つあることを意味する。本発明の方法によれば、細胞接着領域に接触していない細胞が存在していても、培養基材全面で破損のない一枚のシートを形成可能となる。
本発明の好ましい一態様において、播種した細胞がインキュベートの間実質的に増殖しない。「実質的に増殖しない」とは、計測誤差の範囲を超えて増殖しないことを意味し、細胞が増殖したか否かは、例えば、播種時の細胞数と、細胞培養物形成後の細胞数とを比較することにより評価することができる。本発明において、シート状細胞培養物形成後の細胞数は、典型的には播種時の細胞数の300%以下、好ましくは200%以下、より好ましくは150%以下、さらに好ましくは125%以下、特に好ましくは100%以下である。
細胞が実質的に増殖するか否かは、様々な条件、例えば播種細胞数(播種細胞密度)、培地、インキュベート条件などにより決定される。本発明においては、播種した細胞がシート状細胞培養物を形成することが必要であり、細胞の生物学的な活性を低下させることなく増殖をコントロールする必要があるため、播種細胞密度により増殖をコントロールするのが好ましい。したがって本発明の好ましい一態様においては、細胞は実質的に増殖することなくシート状細胞培養物を形成し得る密度で播種される。
「実質的に増殖することなくシート状細胞培養物を形成し得る密度」とは、成長因子を含まない非増殖系の培養液で培養した場合に、シート状細胞培養物を形成することができる細胞密度を意味する。例えば、骨格筋芽細胞の場合、成長因子を含む培養液を用いる方法では、シート状細胞培養物を形成するために、約6,500個/cmの密度の細胞をプレートに播種していたが(例えば、特許文献1参照)、かかる密度の細胞を、成長因子を含まない培養液で培養してもシート状の細胞培養物を形成することはできない。したがって、本発明におけるシート形成細胞の播種密度は、成長因子を含む培養液を用いる方法、すなわち細胞の増殖を少なくとも目的の一部とする培養におけるものよりも高いものである。具体的には、例えば、骨格筋芽細胞については、かかる密度は典型的には300,000個/cm以上である。細胞密度の上限は、細胞培養物の形成が損なわれず、細胞が分化に移行しなければ特に制限されないが、骨格筋芽細胞については、例えば、3.4×10個/cm未満である。当業者であれば、本発明に適した細胞密度を、実験により適宜決定することができる。培養期間中、細胞は増殖してもしなくてもよいが、増殖するとしても、細胞の性状が変化する程には増殖しない。例えば、骨格筋芽細胞はコンフルエントになると分化を開始するが、本発明においては、骨格筋芽細胞は、シート状細胞培養物は形成するが、分化に移行しない密度で播種される。
本発明の製造方法における細胞の播種密度は、ある態様では3.0×10〜3.4×10個/cm、別の態様では3.5×10〜3.4×10個/cm、さらに別の態様では1.0×10〜3.4×10個/cm、さらに別の態様では3.0×10〜1.7×10個/cm、別の態様では3.5×10〜1.7×10個/cm、さらに別の態様では1.0×10〜1.7×10個/cmであってよい。上記範囲は、上限が3.4×10個/cm未満である限り、上限および下限の両方、または、そのいずれか一方を含んでもよい。したがって、本発明の製造方法における骨格筋芽細胞の播種密度は、例えば、3.0×10個/cm以上3.4×10個/cm未満(下限を含み、上限は含まない)、3.5×10個/cm以上3.4×10個/cm未満(下限を含み、上限は含まない)、1.0×10個/cm以上3.4×10個/cm未満(下限を含み、上限は含まない)、1.0×10個/cm超3.4×10個/cm未満(下限も上限も含まない)、1.0×10個/cm超1.7×10個/cm以下(下限は含まないが、上限は含む)であってもよい。当業者であれば、骨格筋芽細胞以外の細胞について、本発明に適した細胞密度を、本明細書の教示に従い、実験により適宜決定することができる。
上述の通り、本発明のインキュベートはシート状細胞培養物を形成するためのインキュベートであり、したがって細胞はシート状細胞培養物を形成することが出来る細胞である。また、シート状細胞培養物を形成するためのインキュベートを、単に「シート化培養」という場合もある。細胞は具体的には、これに限定するものではないが、例えば骨格筋芽細胞、皮膚細胞、角膜上皮細胞、歯根膜細胞、心筋細胞、肝細胞、膵細胞、口腔粘膜上皮細胞などが挙げられ、好ましくは骨格筋芽細胞が挙げられる。
本発明の好ましい一態様において、パターン形状が海島構造である。本明細書において「海島構造」とは、比較的連続的な一方の領域(「海」という)の中に、不連続的に他方の領域(「島」という)が混在している構造をいう。また本明細書においては、「海島構造」を有する形状を特に「海島状」と表現する場合がある。海側の領域は、比較的連続的であれば完全に連続的である必要は必ずしも無いが、形成されたシート状細胞培養物の剥離容易性の観点から、島側の領域が培養表面の一部の領域に偏在するのは好ましくない。
本発明の海島構造は、細胞非接着性領域が海であっても細胞接着性領域が海であってもよい。海島構造を形成する方法は、当該技術分野において知られたあらゆる方法を用いることが出来、これに限定するものではないが、例えば細胞非接着性の基材にスポット状に血清をプロットして部分的に被覆する方法、細胞接着性の基材にスポット状に細胞非接着性ポリマーをプロットして部分的に被覆する方法、などが挙げられる。しかしながら、形成の容易さ、シート状細胞培養物の形成後の剥離容易性などに鑑みると、好ましくは細胞接着性領域が島である。
本発明の培養表面に存在する細胞接着領域は、広すぎるとシート状細胞培養物との接着性が上がるため、シートの形成には都合がよいが、シート状細胞培養物の剥離性は低下する。逆に狭すぎると、シート状細胞培養物との接着性が低下するためシート状細胞培養物の形成が困難となるが、形成されれば剥離が容易となる。したがって本発明の細胞接着性領域は、好ましくは表面全体の4%〜65%であり、より好ましくは8%〜52%である。
本発明はまた、上記製造方法によって作製されたシート状の細胞培養物にも関する。本発明のシート状細胞培養物は、浸漬撹拌などの洗浄操作や、取出し、保持、移送などの移植操作に対して十分な物理的強度を有する。十分な物理的強度を有するとは、上記操作を施しても細胞培養物のシート状構造が損なわれないことを意味し、これは、例えば、得られたシート状細胞培養物に実際に上記操作を施し、シート状構造が保たれていることを肉眼的または顕微鏡的に調査することにより確認することができる。ここで、浸漬撹拌による洗浄操作とは、典型的には、シート状細胞培養物の入った培養容器に同培養物が十分浸漬する量の緩衝液を加え、培養容器ごと振とう撹拌することをいう。したがって、十分な物理的強度を有することは、かかる浸漬撹拌による洗浄操作と同様の物理的ストレスをシート状細胞培養物に加えることによっても確認することができる。また、上記製造方法によって作製されたシート状細胞培養物であれば、通常かかる十分な物理的強度を有する。
本発明は別の一側面において、シート状細胞培養物を製造するための細胞培養器具であって、シート状細胞培養物を形成するための略平面状の細胞非接着性の培養基材表面を有し、該培養基材表面は細胞接着性処理された領域を複数有し、該領域が前記培養基材表面に均一に分散して存在している、前記細胞培養器具に関する。
本側面における細胞培養器具は、細胞非接着性の細胞培養基材表面に、部分的に、細胞接着性処理された領域を複数有している。したがって細胞接着性処理された領域が細胞接着性領域であり、処理されていない領域が細胞接着性領域となる。この細胞接着性領域が複数存在し、細胞培養基材表面に均一に分散して存在しているものである。
本側面において、「均一に分散して存在」するとは、細胞接着性領域が、細胞培養基材表面全体に偏りなく存在している状態をいう。偏りなく存在しているか否かは当業者であれば容易に判断できるものであり、これに限定するものではないが例えば、細胞培養基材表面を所定の数に等分に分割した際に、全ての分割された表面において細胞接着性領域の占める割合がほぼ同一であれば、偏りなく存在しているといえる。
本発明の細胞培養器具に用いられる細胞接着性処理としては、細胞培養基材を不必要に劣化させない処理であれば特に限定されない。かかる細胞接着性処理の例としては、これに限定するものではないが、紫外線照射処理、プラズマ放電処理、コロナ放電処理などが挙げられ、簡便さ、細胞接着性の制御のしやすさなどの観点から、好ましくは紫外線照射処理である。
上述のとおり、本発明の好ましい一態様において、細胞接着性処理は紫外線照射によって行われる。かかる態様において、細胞接着性処理が十分に行われる紫外線照射条件には、照射する紫外線の波長、照度、光源との距離(照射高)、照射時間などが含まれ、培養基材の材質や求める細胞接着性の度合いに応じて変化し得るが、当業者であれば最適な条件を適宜選択して組み合わせることが可能である。例えばポリスチレン製の培養基材に対して細胞接着性処理を行う場合、照射する紫外線波長としては、100nm〜400nm、好ましくは150nm〜200nm、より好ましくは約185nmなどが挙げられる。また紫外線の照度としては、1〜10mW/cm、好ましくは3〜7mW/cm、より好ましくは約5mW/cmなどが挙げられる。また光源の照射高としては、1〜1000mm、好ましくは5〜200mm、より好ましくは10〜80mmが挙げられる。また紫外線の照射時間としては、1〜300秒、好ましくは5〜100秒、より好ましくは15〜60秒が挙げられる。
本発明の細胞培養器具の培養基材の材質としては、接着性処理が可能なものであれば特に限定されず、当該技術分野において一般的に培養基材に用いられている材質を使用することができる。かかる材質としては、これに限定するものではないが、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート(PET)などが挙げられる。
上述のとおり本発明においては、パターン形状が海島状であることが好ましく、とくに偏りなく存在しているためには、細胞接着性処理された領域が一定の形状であり、かつ一定の規則性で存在している島であることが好ましい。「一定の形状」は、統一された形状であれば特に限定されないが、対称性を有した形状が好ましく、細胞接着性処理された領域の形成の簡便さの観点から、点状または円状であることがより好ましい。
「一定の規則性で存在している」とは、特定の配置パターンを繰り返していることを意味し、典型的には等間隔での配置などが挙げられる。とくに、等間隔で配置されていない場合には、局所的に細胞接着性処理されていない領域の割合が大きくなる部分が生じ、その部分ではシート状細胞培養物の形成が阻害される可能性が高まるため、細胞接着性処理された領域は等間隔で配置されることが好ましい。等間隔で配置されるパターンとしては、これに限定するものではないが、例えば格子点状、同心円状などが挙げられ、配置の簡便さから格子点状に配置されるのが好ましい。なお、本発明において「格子点状」とは、縦横に整列するように配置された状態をいう。
したがって、より好ましい一態様において、細胞接着性処理された領域は、等間隔で配置された点状の領域である。かかる態様においては、細胞接着性処理された領域は、1〜10mm程度の間隔で存在することが好ましく、2〜4mm程度の間隔で存在することがより好ましく、例えば1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mmまたは10mmなどの間隔で存在する。
細胞接着性処理された領域の大きさは特に限定されないが、あまり大きいと培養基材表面全体に対して偏りが生じやすくなり、あまり小さいと領域の形成が困難で煩雑となる。したがって細胞接着性処理された領域は直径が1mm〜6mm程度の点状の領域であることが好ましく、直径1〜4mm程度の点状領域であることがより好ましく、例えば直径1mm、2mm、3mm、4mm、5mmまたは6mmなどである。
したがって、特に好ましい一態様において、細胞接着性処理された領域は、2〜4mm程度の間隔で存在する直径1〜4mm程度の点状の領域であり、さらに好ましくは格子点状に配置されている。
上述のとおり、細胞接着領域は、好ましくは表面全体の4%〜65%であり、より好ましくは8%〜52%である。したがって、細胞非接着領域は、好ましくは35〜96%であり、より好ましくは48%〜92%である。
本発明の細胞培養器具は、例えば以下のようにして製造することができる。
浮遊細胞培養用ディッシュなどの、接着細胞用の表面処理を施されていない培養基材表面に、細胞接着性処理を施したい領域のみを露出させるようにマスキングを行う。マスキング方法については、当該技術分野において知られた通常の方法を用いることができ、例えばマスキングシールなどを貼付する、フォトマスクを用いるなどの方法で行うことができる。次にマスキングした細胞培養表面に紫外線照射などを行い、露出領域に細胞接着性処理を施す。プラズマ処理やコロナ放電処理で細胞接着性処理を行う場合は、1、2秒で処理が完了するが、紫外線照射で細胞接着性処理を行う場合はある程度の時間露光する必要がある。したがって紫外線照射は、露光時間を変更することで細胞接着性の制御を行うことができる点で好ましい。紫外線照射処理を行う場合の処理時間は不必要に基材を劣化しない程度であればよく、用いる培養基材の材質および照射に用いる水銀ランプの波長、さらに照射高によっても異なるが、例えばポリスチレン製の基材に対して184.9nmの波長を照射高20mmで照射する場合は、少なくとも15秒以上、好ましくは30秒〜100秒程度露光すればよい。一般的には、処理表面に照射される紫外線量(積算光量)を目安とし、照度を上げれば時間が短くなり、照度を下げれば時間が長くなることとなる。さらに、波長によりエネルギー量が変化するため、最適な時間は異なることとなる。一般的に、波長が短いほうがエネルギー量を大きいため、照射時間は短くなる。
本側面の別の一態様において、培養基材として本側面の細胞培養容器を用いた、上記シート状細胞培養物の製造方法もまた、本発明に包含される。また、該製造方法により製造されたシート状細胞培養物もまた、本発明に包含される。これらの各態様におけるその他の各構成については、上記で詳述した内容を同様に利用可能である。
以下の実施例に基づいて、本発明を具体的な態様を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
実施例1
細胞非接着性表面を有する浮遊系細胞用のペトリディッシュ(BD製、code:35-1008)の非接着性表面に、4mmの間隔で20%FBS含有MCDB131培地を約1mmの径となるようにプロットし、40時間インキュベートして接着性表面を形成した。全培養表面に対する接着性表面の割合は約10%であった。20%(v/v)FBS含有のMCDB131培地で懸濁した細胞を9.3×10個/枚となるようにディッシュに播種した。細胞を37℃、5%COで6時間培養後、ピペッティングによりシート状になった細胞培養物をプレートから剥離させた。
図1に示す通り、6時間培養したものは、ピペッティングにより容易に剥離可能であり、そのためよれ、しわの少ない上質のシート状細胞培養物が得られた。また同様の条件で15時間培養した場合は、シート状細胞培養物を形成後ピペッティングすることなく自然に剥離したが、よれやしわができてしまっていた。
実施例2
細胞培養用マルチウェルプレート(BD製、code: 353046)の接着性表面に、4mmの間隔で非接着性ポリマー(ポリHEMA)を約3mmの径となるように格子点状にプロットし、室温で1時間ほど乾燥させた。全培養表面に対する接着性表面の割合は60%以下であった。20%(v/v)FBS含有のMCDB131培地で懸濁した細胞を、9.3×10個/枚となるようにディッシュに播種した。細胞を37℃、5%COで6時間培養後、ピペッティングによりシート状になった細胞培養物をプレートから剥離させた。
図2に示す通り、6時間培養したものは、ピペッティングにより容易に剥離可能であり、そのためよれ、しわの少ない上質のシート状細胞培養物が得られた。
実施例3
上記実施例1の方法を以下のとおり改変して行った。培養基材は、浮遊系細胞用のペトリディッシュ(BD製、code:35-1008)に代えてIWAKIペトリディッシュ(AGCテクノグラス製、3.5cm径)を用いた。培養基材表面の細胞接着性領域の形成は、以下の手順で行った。
(1)シリコンシートを35mm径に打ち抜いて円状のシリコンシートを作製し、この円状シリコンシートに4mm径の穴を4mm間隔で格子点状に開けた。
(2)(1)により得たシリコンシートを上記ペトリディッシュの培養表面上に置き、UV照射装置(センエンジニアリング製:PL16-110)内に設置した。
(3)照射高を15mm、照射紫外線波長を184.9nmに設定し、紫外線を15秒間照射して、島状に親水化処理をしたディッシュを得た。
図3に示す通り、6時間の培養によりシート状細胞培養物の形成が確認され、約1分間のピペッティングにより容易に剥離可能であり、よれ、しわの少ない上質のシート状細胞培養物が得られた。
本発明によれば、浸漬撹拌などの洗浄操作や、取出し、保持、移送などの移植操作に耐え得る十分な物理的強度を有する良質のシート状細胞培養物を簡便かつ迅速に製造することが可能となる。また、本発明の方法を用いると、通常製造工程において最もシート状細胞培養物に破損の生じやすい剥離工程が非常に容易に行えるか、または行う必要がないため、高い再現性で良質のシート状細胞培養物を製造可能となる。さらに本発明の細胞培養容器は、市販の細胞培養器具に対して生体由来物質を用いた処理かまたは他の物質を用いることのない処理を行うことで製造することが可能であるため、シート状細胞培養物の剥離を容易にするための従来の表面処理と比較して非常に安全性が高く、したがってヒト医療および獣医療において多大な貢献が期待できる。

Claims (7)

  1. パターニングされていないシート状細胞培養物を製造するための細胞培養器具であって、シート状細胞培養物を形成するための略平面状の細胞非接着性の培養基材表面を有し、該培養基材表面は細胞接着性処理された領域を複数有し、該領域が前記培養基材表面に均一に分散して存在し、かつ、該領域が2〜4mm間隔で存在する直径1〜4mmの点状の領域である、前記細胞培養器具。
  2. 細胞接着性処理が、紫外線照射、プラズマ放電またはコロナ放電により行われる、請求項1に記載の細胞培養器具。
  3. 細胞接着性処理が、紫外線照射により行われる、請求項2に記載の細胞培養器具。
  4. 細胞接着性処理された領域が、培養基材表面全体の4%〜65%である、請求項1〜のいずれか一項に記載の細胞培養器具。
  5. パターニングされていないシート状細胞培養物の製造方法であって、請求項1〜のいずれか一項に記載の細胞培養器具の培養基材表面に細胞を実質的に増殖することなくシート状細胞培養物を形成し得る密度で播種し、インキュベートすることを含む、前記方法。
  6. さらに、培養基材上で形成されたシート状細胞培養物を該基材から剥離することを含む、請求項に記載の方法。
  7. 細胞が、骨格筋芽細胞である、請求項5または6に記載の方法。
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