JP6570032B2 - 金−セリウム酸化物複合体触媒および該触媒を用いた選択的水素化方法 - Google Patents

金−セリウム酸化物複合体触媒および該触媒を用いた選択的水素化方法 Download PDF

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Description

本発明は、金−セリウム酸化物複合体触媒および該触媒を用いた選択的水素化方法に関するものである。
水素化は有機化学においては標準的な反応であり、生じる生成物は数々の製品として市販されて利用されている。水素化または水素化分解を受ける官能基を複数種類持つ化合物は多く存在し、それらの官能基のうちの一部のみを選択的に水素化または水素化分解する触媒が知られているが、貴金属の中でも白金やパラジウムを用いるものが多い。
金は貴金属の中でも特に安定な金属であり、触媒としての活性に乏しい金属と考えられてきたが、直径が5nm以下のナノ粒子として卑金属酸化物上に担持されると優れた触媒活性を示すことが春田らの研究(非特許文献1)で発見され、その後、様々な金触媒の研究が行われている。
しかし、金触媒は一般に酸化触媒として知られており、還元触媒としては報告が少ない。特許文献1では、有機配位子により安定化された金前駆体を酸素プラズマ処理し、適切なサイズの金クラスターとすることで選択的水素化活性を発現させている。
そして、上述した選択的水素化に用いる金触媒では、いまだに十分な選択性を持って制御することができておらず、高い選択性をもって反応を制御できる触媒の開発が望まれている。
また、金クラスター触媒は表面に金が露出しているので、耐久性に問題があることが知られている。反応で使用した後に回収し、繰り返し使用しているうちに金ナノ粒子が固体担体の表面上で凝集し、反応性が低下してしまうことがある。
そのため、金触媒を工業的に使用するためには、高い選択性を維持したまま、繰り返し使用できるような耐久性が高いことも求められる。
特開2013−255887号公報
M. Haruta, T. Kobayashi, H. Sano, N. Yamada Chem. Lett., 405-408 (1987).
よって、本発明の課題は、高い触媒活性、選択性および耐久性を持つ金−セリウム酸化物複合体触媒およびその使用方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、金粒子と該金粒子の表面に被覆されたセリウム酸化物を含んでなる金−セリウム酸化物複合体触媒が、選択的水素化や、その制御が容易であり、かつ、高い選択性を維持したまま、繰り返し使用できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、金粒子と該金粒子の表面に被覆されたセリウム酸化物を含んでなることを特徴とする金−セリウム酸化物複合体触媒である。
また、本発明は、金とセリウムを含む逆ミセル溶液を調製し、逆ミセル溶液中で金を還元する工程を含むことを特徴とする金−セリウム酸化物複合体触媒の製造方法である。
更に、本発明は、上記金−セリウム酸化物複合体触媒を用いて有機化合物を選択的に水素化することを特徴とする有機化合物の選択的水素化方法である。
本発明の金−セリウム酸化物複合体触媒は、例えば、炭素−炭素三重結合から炭素−炭素二重結合への選択的水素化や、極性官能基の選択的水素化を収率・選択率高く実施できるため、医薬中間体等の多段の合成プロセスを必要とする機能性材料の合成のショートカットが可能になる。
また、本発明の金−セリウム酸化物複合体触媒はリンドラー触媒に含まれる鉛等の有害物を使用しないため工業的にも使用しやすい。
更に、本発明の金−セリウム酸化物複合体触媒は繰り返し使用しても活性が低下することがなく、高い選択性を維持できるので、高価な金触媒を再使用することができる。
製造例1で得られた金−セリウム酸化物複合体触媒をTEM(Transmission Electron Microscope;透過型電子顕微鏡)で観察して得た画像を示す。なお、図中のスケールバーは10nmである。
本発明の金−セリウム酸化物複合体触媒(以下、「本発明の触媒」という)は、金粒子と該銀粒子の表面に被覆されたセリウム酸化物(以下、「金−セリウム酸化物複合体」という)を含んでなる触媒である。以下、金−セリウム酸化物複合体について説明する。
(金−セリウム酸化物複合体)
金−セリウム酸化物複合体は、金粒子の表面にセリウム酸化物の粒子が担持されている複合体である。そして、この金−セリウム酸化物複合体の望ましい形態としては、金粒子を核(コア)とし、この核である金粒子の表面にセリウム酸化物の粒子が担持されている構成である。ここで、上記金粒子とは、金属金または酸化金の少なくとも1種から選ばれる金成分の粒子であり、好ましくは金属金の粒子である。上記セリウム酸化物としては、二酸化セリウム(CeO)または三酸化二セリウム(Ce)の少なくとも1種類であり、二酸化セリウム(CeO)のみ、三酸化二セリウム(Ce)のみ、または二酸化セリウム(CeO)と三酸化二セリウム(Ce)との混合物であってもよい。
金−セリウム酸化物複合体において、金粒子の表面にセリウム酸化物が担持されている場合の「担持」の態様は、特に限定されるものではない。例えば、核(コア)となる金粒子の表面にセリウム酸化物が海島構造を形成するように分散して担持された状態であってもよいし、核(コア)の表面のかなりの部分がセリウム酸化物により被覆されているが、核(コア)が部分的に露出している状態であってもよいし、更に核(コア)の全表面がセリウム酸化物で完全に被覆されている状態まで様々な状態であってもよい。また、金−セリウム酸化物複合体は、金−セリウム酸化物粒子のクラスターを形成していてもよく、該クラスター粒子の表面に金粒子が露出している場合はその表面を更にセリウム酸化物で被覆していてもよい。
このような担持の態様に応じて、金−セリウム酸化物複合体の成分であるセリウム酸化物の状態は、粒子状態、隣接する粒子同士が連結した状態、その連結が高まって核表面を網目状に覆い、網目において金粒子表面が露出している状態、更に、セリウム酸化物が層状態で金粒子表面を完全に被覆した状態であり得る。
セリウム酸化物の状態は、次に述べるCeO/Auのモル比によっても影響を受ける。いずれにしても、核(コア)となる金が表面を被覆しているセリウム酸化物とできるだけ接するように、セリウム酸化物粒子が金粒子を被覆していることが望ましい。
金粒子からなる核(コア)をセリウム酸化物で被覆する態様は、特に限定されるものではないが、金粒子からなる核(コア)をセリウム酸化物で完全に被覆し、セリウム酸化物の細孔を通じて基質が金に触れることができる場合に、一般的に水素化される水素化反応部位と本発明で水素化する炭素−炭素三重結合、または極性官能基とを有する化合物中の該炭素−炭素三重結合、または極性官能基の反応性および選択性に優れることがある。これは、金粒子の表面上の活性点では炭素−炭素二重結合の水素化活性を持つ水素分子の均一開裂が起こるが、金−セリウム酸化物界面の活性点では炭素−炭素三重結合からcis−炭素−炭素二重結合への選択的水素化やエポキシ基やニトロ基等の極性官能基の選択的水素化に有利な水素分子の不均一開裂が優先するために選択性が発現すると考えられるからである。
金−セリウム酸化物複合体の成分である金粒子からなる核(コア)を被覆するセリウム酸化物粒子は特に制限されるものではなく、一次粒子でもよく、二次粒子でもよい。セリウム酸化物粒子の平均粒子径は2〜40nmが好ましく、4〜20nmがより好ましい。なお、本願において「平均粒径」とは、電子顕微鏡写真観察による、任意の粒子数の直径の平均値のことをいう。セリウム酸化物粒子の平均粒子径(シェル粒子径)が2nm以上であると選択性の向上に効果的であり、40nm以下であると活性向上に効果的である。
ここで、金粒子は、金(Au)を含有していれば特に制限されるものではなく、好ましくは金属金である。金粒子は一次粒子でもよく、二次粒子であってもよい。金粒子の平均粒子径は1〜30nmが好ましく、1〜10nmがより好ましい。なお、本明細書において「平均粒子径」とは、電子顕微鏡で任意の数の粒子の直径を観察し、それらの直径の平均値のことをいう。
(金−セリウム酸化物複合体[CeO/Au]のモル比)
金−セリウム酸化物複合体の金粒子中の金とセリウム酸化物の組成比は、セリウム酸化物(CeO)/金属としての金(Au)のモル数のモル数換算で、モル比[CeO/Au]=10〜50が好ましく、15〜40であることがより好ましく、20〜30であることが更に好ましい。[CeO/Au]モル比が10以上であると、水素化反応部位と炭素−炭素三重結合、または極性官能基とを有する化合物中の該炭素−炭素三重結合、または極性官能基の選択率の向上に効果的であり、[CeO/Au]モル比が50以下であると、水素化反応部位と炭素−炭素三重結合、または極性官能基とを有する化合物中の該炭素−炭素三重結合、または極性官能基の転化率の向上に効果的であるため好ましい。
(金−セリウム酸化物複合体の粒子径)
金−セリウム酸化物複合体は、その形状がほぼ真球状であったり、「コア−シェル型構造」である場合、その粒子径は特に限定されるものではないが、平均粒子径で5〜100nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましい。平均粒子径が5nm以上であると水素化反応部位と炭素−炭素三重結合、または極性官能基とを有する化合物中の該炭素−炭素三重結合、または極性官能基の選択率(以下「選択率」ということがある。)の向上に効果的であり、100nm以下である水素化反応部位と炭素−炭素三重結合、または極性官能基とを有する化合物中の該炭素−炭素三重結合、または極性官能基の転化率(以下「転化率」ということがある。)の向上に効果的である。
ここで、「コア−シェル型構造」とは、金粒子からなる核(コア)粒子の表面に、セリウム酸化物粒子からなるシェル層が形成された二層構造をいい、必ずしもシェル層が核(コア)を完全に覆っていることを意味する訳ではないが、できるだけ覆われた状態が良く、シェル層が厚いほうが良い。
また、コア−シェル型構造において、シェル層が核(コア)を一様に覆っていながらも、基質が核(コア)である金粒子とシェル層であるセリウム酸化物の界面の作用を受けながら反応することができる程度の細孔をシェル層が有することが好ましい。また、金−セリウム酸化物複合体は、金−セリウム酸化物複合体の粒子からなるクラスターを形成していても良く、また、該クラスターの表面に金粒子が露出している場合はその表面を更にセリウム酸化物で被覆していてもよい。このようなクラスターの形状は2個以上のコア−シェル型構造を有する金−セリウム酸化物複合体の粒子が集合したものの他、コアとなる金粒子2個以上の表面をシェルとなるセリウム酸化物成分が被覆している状態であってもよい。
このようなシェル層の細孔の大きさは、金−セリウム酸化物複合体に対して、窒素、ヘリウム、クリプトン等のガスを用いて行うガス吸着法等によって測定できる。この細孔の大きさは、特に限定されないが、基質分子が通過可能な程度の大きさの細孔径を有すればよく、その一例としては、後述する実施例に記載の基質が通過できる大きさである、平均細孔径として0.3〜5.0nm程度であることが好ましく、より好ましくは0.3〜1.0nmである。平均細孔径が0.3nmより小さいと、基質が芳香族化合物の場合、シェル層の細孔を通過できず転化率が低くなる恐れがある化合物があるため好ましくない。また、平均細孔径が5.0nmより大きいと、基質が核(コア)である金粒子とシェル層を構成するセリウム酸化物の両方の作用を充分に受けることができず、水素化反応部位と炭素−炭素三重結合、または極性官能基とを有する化合物中の炭素−炭素三重結合、または極性官能基の選択率が低くなる恐れがあるため好ましくない。
なお、金−セリウム酸化物複合体がコア−シェル型構造を有する場合は、特に、その核(コア)となる金粒子の大きさが、1〜30nmであることが好ましく、1〜10nmであることがより好ましい。金粒子の粒子径が1nm以上であると、水素化反応部位と炭素−炭素三重結合、または極性官能基とを有する化合物中の該極性官能基の選択率の向上に効果的であり、30nm以下であると水素化反応部位と極性官能基とを有する化合物中の該炭素−炭素三重結合、または極性官能基の転化率の向上に効果的である。そして、シェル層となるセリウム酸化物粒子は、核(コア)となる金粒子の周囲を2〜40nmの厚みを有するシェル層として被覆していることが好ましく、4〜20nmの厚みのシェル層として被覆していることがより好ましい。シェル層の厚みが2nm以上であると、水素化反応部位と炭素−炭素三重結合、または極性官能基とを有する化合物中の該極性官能基の選択率の向上に効果的な場合があり、40nm以下であると水素化反応部位と極性官能基とを有する化合物中の該炭素−炭素三重結合、または極性官能基の転化率の向上に効果的な場合がある。
また、コア−シェル型構造のシェル層を構成するセリウム酸化物が粒子である場合、セリウム酸化物の平均粒子径は2〜40nmであることが好ましく、4〜20nmであることがより好ましい。セリウム酸化物粒子の平均粒子径(シェル平均粒子径)が2nm以上であると水素化反応部位と炭素‐炭素三重結合、または極性官能基とを有する化合物中の該炭素‐炭素三重結合、または極性官能基の選択率の向上に効果的な場合があり、40nm以下であると水素化反応部位と炭素‐炭素三重結合、または極性官能基とを有する化合物中の該炭素‐炭素三重結合、または極性官能基の転化率の向上に効果的な場合がある。
なお、金−セリウム酸化物複合体がコア−シェル型構造である場合、その形状は特に限定されるものではないが、独立した粒子であることが好ましい。また、その形状はほぼ真球状であってもよい。このように、金−セリウム酸化物複合体粒子の形状がほぼ真球状である場合その作用・効果は以下のように考えられる。
すなわち、本発明の触媒に含まれる金−セリウム酸化物複合体による炭素−炭素三重結合、または極性官能基の酸素原子に対する高い選択性は、水素分子の不均一開裂による極性の高い水素種を効率よく生成させて、水素分子の均一開裂による極性の低い水素種をほとんど生成しないことによるものと考えられる。水素分子の不均一開裂は、金粒子とセリウム酸化物の境界面近傍で起こり、水素分子の均一開裂は金粒子の表面上で起こる。
また、金−セリウム酸化物複合体がセリウム酸化物によって当該複合体中の金粒子表面が適当に被覆されたコア−シェル型構造の金−セリウム酸化物複合体であると、反応分子である基質がアクセスできる活性点のほとんどを金粒子とセリウム酸化物の境界面近傍とすることができると共に、水素分子の均一開裂が起きるような金粒子単独の表面が少ないためではないかと考えられる。50nm以上の比較的大きい金粒子では触媒作用が発現し難いため、選択性が高くなっていると考えられる。
(金−セリウム酸化物複合体の形状)
本発明の触媒に含まれる金−セリウム酸化物複合体の形状がほぼ真球状である場合、セリウム酸化物による金粒子の被覆を均一にしやすく、前記のような作用が得やすい触媒を形成し易く、選択性の高い触媒が得られる場合がある。
また、本発明に使用される金−セリウム酸化物複合体の形状がほぼ真球状のコア−シェル型構造である場合にも、セリウム酸化物による金粒子の被覆は完全に被覆する状態の他、隣接するセリウム酸化物粒子の間に隙間がある不完全な被覆であってもよい。金粒子が一部露出している状態の場合、その露出状態は特に限定されるものではないが、若干の露出があると水素化反応部位と炭素−炭素三重結合、または極性官能基とを有する化合物の該炭素−炭素三重結合、または極性官能基に対して、優れた反応性並びに選択性が優れることがある。
(本発明の触媒)
本発明の触媒は、上記した金−セリウム酸化物複合体を含んでいればよく、更に金−セリウム酸化物複合体の効果を損なわない範囲で、別の触媒や担体等を常法に従って含ませてもよい。
(本発明の触媒の製造方法)
本発明の触媒の製造方法は、特に限定されないが、逆ミセル法や共沈法を用いることができ、好ましくは逆ミセル法である。なお、逆ミセルとは、有機溶剤中で界面活性剤の分子が親水基を内側に、疎水基を外側にして粒状に会合した状態をいう。
具体的に、本発明の触媒を逆ミセル法で製造するには、金とセリウムを含む逆ミセル溶液を調製し、逆ミセル溶液中で金を還元する工程を含めばよい。
上記工程の金とセリウムを含む逆ミセル溶液を調製し、逆ミセル溶液中で金を還元する方法は、例えば、金とセリウムを含む逆ミセルの中性〜酸性の溶液を調製し、これを金属を含まない逆ミセルのアルカリ性溶液と混合して逆ミセル溶液中の金を還元する方法(方法1)、金を含む逆ミセルのアルカリ性溶液およびセリウムを含む逆ミセルの中性〜酸性の溶液をそれぞれ調製し、これらの逆ミセル溶液を混合して逆ミセル溶液中の金を還元する方法(方法2)等が挙げられるが、逆ミセル溶液中の金を確実に還元するため方法1が好ましい。
上記方法1に用いられる金とセリウムを含む逆ミセルの中性〜酸性の溶液は、例えば、次の方法等で調製することができる。
(1)有機溶剤中に界面活性剤を加え、これを攪拌して溶液中に逆ミセルを形成させ、続いて、この逆ミセル溶液中に、水に溶解させた時に中性〜酸性を示す金塩および水に溶解させた時に中性〜酸性を示すセリウム化合物の水溶液を滴下等で加え、更に攪拌する方法
(2)上記と同様の逆ミセル溶液中に、金塩の水溶液を滴下等で加え、更に攪拌し、続いて、水に溶解させた時に中性〜酸性を示すセリウム化合物の水溶液を加え、更に攪拌する方法
(3)上記と同様の逆ミセル溶液中に、水に溶解させた時に中性〜酸性を示すセリウム化合物の水溶液を滴下等で加え、更に攪拌し、続いて、金塩の水溶液を滴下等で加え、更に攪拌する方法
(4)上記と同様の逆ミセル溶液中に、水に溶解させた時に中性〜酸性を示す金塩の水溶液を滴下等で加え、更に攪拌して金を含む逆ミセル溶液を調製し、これとは別に上記と同様の逆ミセル溶液中に、水に溶解させた時に中性〜酸性を示すセリウム化合物の水溶液を加え、更に攪拌してセリウムを含む逆ミセル溶液を調製し、最後にこれらを混合して更に攪拌する方法
上記方法1の(1)および(4)に用いられる水に溶解させた時に中性〜酸性を示す金塩は、セリウム化合物の水溶液と混ぜたときに難溶性沈殿を生じ難いものであれば特に限定されるものではないが、例えば、塩化金酸、塩化金、フッ化金、臭化金、ヨウ化金等の水溶性の塩が挙げられ、これらの中でも塩化金または塩化金酸が好ましい。
上記方法1の(2)および(3)に用いられる金塩は、その水溶液をセリウム化合物の水溶液と混ぜたときに難溶性沈殿を生じ難く、かつ、セリウム化合物の水溶液と混ぜたとき、最終的(逆ミセルのアルカリ性溶液と混合する前)に中性〜酸性を示すものとなるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、塩化金酸、塩化金、フッ化金、臭化金、ヨウ化金等の水に溶解させた時に中性〜酸性を示すものや、クテトラアンミン金塩、水酸化金、クロロトリヒドロキソ金(III)酸塩、テトラヒドロキソ金(III)酸塩、シアン錯塩等の水に溶解させた時にアルカリ性を示すもの等が挙げられる。これらの金塩の中でも水に溶解させた時に中性〜酸性を示すものが好ましく、特に塩化金または塩化金酸が好ましい。
上記方法1の(1)〜(4)に用いられる水に溶解させた時に中性〜酸性を示すセリウム化合物は、金塩の水溶液と混ぜたときに難溶性沈殿を生じ難い3価の塩であれば特に限定されるものではないが、例えば、セリウムの硝酸塩、酢酸塩、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、無機錯体塩等の水溶性の塩が挙げられ、これらの中でもセリウムの硝酸塩が好ましい。
上記方法1の(1)〜(4)に用いられる金属を含まない逆ミセルのアルカリ性溶液は、上記有機溶剤と界面活性剤を加え、これを撹拌した後、水酸化ナトリウム等のアルカリ性物質を添加して調製することができる。
上記方法1の(1)〜(4)に用いられる界面活性剤としては、特に限定されず、逆ミセルを形成できれば非イオン性活性剤でもイオン性界面活性剤でもよい。例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルやアルキルポリエチレングリコール、アルキルグリコシド、グリセリン脂肪酸エステルやソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の非イオン系界面活性剤、Aerosol OT(スルホコハク酸ビス(2−エチルヘキシル) ナトリウム塩)等のイオン性活性剤が挙げられ、これらの中でもポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテルが好ましい。ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテルとしては、例えば、Igepal(登録商標)CO−520、CO−720、CO−630、CO−890等の市販品を用いてもよい。
上記方法1の(1)〜(4)に用いられる有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、ヘキサン、ドデカン等の非極性有機溶媒等が挙げられる。
一方、上記方法2に用いられる金を含む逆ミセルのアルカリ性溶液を調製するためには、まず、有機溶剤中に界面活性剤を加え、これを攪拌して溶液中に逆ミセルを形成させる。続いて、この逆ミセル溶液中に、水に溶解させた時にアルカリ性を示す金塩の水溶液を加え、更に攪拌することにより金を含む逆ミセルのアルカリ性溶液を調製することができる。
上記方法2で用いられる水に溶解させた時にアルカリ性を示す金塩は、セリウム化合物の水溶液と混ぜたときに難溶性沈殿を生じ難いものであれば特に限定されるものではないが、例えば、クテトラアンミン金塩、水酸化金、クロロトリヒドロキソ金(III)酸塩、テトラヒドロキソ金(III)酸塩、シアン錯塩等が挙げられる。
上記方法2に用いられるセリウムを含む逆ミセルの中性〜酸性の溶液を調製するためには、まず、有機溶剤中に界面活性剤を加え、これを攪拌して溶液中に逆ミセルを形成させる。続いて、この逆ミセル溶液中に、水に溶解させた時に中性〜酸性を示すセリウム化合物の水溶液を加えて更に攪拌することによりセリウムを含む逆ミセルの酸性溶液を調製することができる。
上記方法2に用いられる水に溶解させた時に中性〜酸性を示すセリウム化合物は、方法1で用いるものと同じでよい。
なお、方法1および方法2において逆ミセルを形成させる条件は、特に限定されず、所望の本発明の触媒の大きさにあわせて用いる水溶液と界面活性剤の量の比を適宜選択すればよい。なお、逆ミセルの大きさは、例えば、ミセル中の水滴の直径として、概ね50〜500nm程度としておけばよい。
また、方法1および方法2において、セリウムと金の配合量は、特に限定されないが、例えば、セリウムをセリウム酸化物(CeO)換算および金を金属金(Au)換算し、金のモル比と前記セリウム酸化物のモル比が、10〜50となる量が好ましく、15〜40となる量がより好ましく、20〜30となる量が更に好ましい。
上記工程において逆ミセル溶液中で金を還元した後は、適宜、分離、洗浄、乾燥、焼成等をすることにより本発明の触媒が得られるが、逆ミセル溶液中で金を還元した後は、分離等の前に逆ミセルを破壊することが好ましい。
逆ミセルを破壊する方法は、特に限定されず、例えば、前記工程で金を還元した後の金とセリウムを含む逆ミセルの溶液に、エタノールやテトラヒドロフラン等の逆ミセルが溶解する溶媒を添加し、撹拌すればよい。逆ミセルを溶解させる溶媒の添加量は特に限定されず、例えば、逆ミセルの溶液量の1〜3倍であればよい。
上記本発明の触媒の分離は、ろ過や遠心分離等の物理的な分離手法により行うことができる。また、洗浄は、例えば、水等の適当な溶媒により数回(例えば2〜3回)洗浄する方法により行うことができる。更に、乾燥は、自然乾燥でも、ドラム式乾燥機、減圧乾燥機、スプレードライ等の乾燥装置を使用してもよいし、乾燥の際の雰囲気も、大気中、真空中、窒素等不活性ガス雰囲気中の何れでもよい。なお、乾燥の後は必要により粉砕等を行ってもよい。また更に、焼成は、大気中や不活性ガス雰囲気中で、150〜600℃で1〜48時間、好ましくは空気中で、200〜400℃で1〜3時間行えばよい。
また、具体的に、本発明の触媒を共沈法で製造するには、例えば、塩化金、塩化金酸等の水に溶解する金塩と、塩化セリウム、硝酸セリウム、酢酸セリウム等の水に溶解する3価のセリウム化合物とを含む水溶液と、アルカリ性水溶液を滴下等で混合し、過飽和の状態にすればよく、その後、適宜、分離、洗浄、乾燥、焼成等すればよい。
上記アルカリ性水溶液は、水に溶解または混和した際にアルカリ性を示し、水酸化金を沈殿させない化合物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基、tert-ブチルアミン等の有機塩基、水酸化テトラメチルアンモニウム等を用いて調製することが好ましい。
斯くして得られる本発明の触媒は、例えば、TEM(Transmission Electron Microscope;透過型電子顕微鏡)、FE−SEM(Field Emission−Scanning Electron Microscope;電界放射型走査電子顕微鏡)等で製造できていることを確認することができる。
(選択的水素化)
本発明の触媒は、従来の金−セリウム酸化物複合体触媒と同様に選択的水素化や、自動車等の排ガス処理触媒や水素センサー等の材料等に用いることもできるが、好ましくは有機化合物の選択的水素化である。
上記有機化合物としては、特に限定されないが、例えば、炭素−炭素三重結合と水素化反応部位を持つ有機化合物、ニトロ基、アルデヒド基、エポキシ基等の極性官能基の何れかと水素化反応部位を持つ有機化合物等が挙げられる。
上記した、炭素−炭素三重結合と水素化反応部位を持つ有機化合物としては、例えば、末端アルキンでも内部アルキンでもよく、具体的には、フェニルアセチレン、ブロモフェニルアセチレン、クロロフェニルアセチレン、アミノフェニルアセチレン、ベンジルアセチレン、フェニルプロパンギル酸エチル、2−ヘキシン−1−オール等が挙げられる。また、ニトロ基と水素化反応部位を持つ化合物としては、例えば、ニトロスチレン、ニトロスチリルベンゼン等が挙げられ、アルデヒド基と水素化反応部位を持つ化合物としては、例えば、シトラール等のテルペノイド類等が挙げられ、エポキシ基と水素化反応部位を持つ化合物としては、例えば、スチルベンオキシド、スチレンオキシド、メチルスチレンオキシド、フルオロスチレンオキシド、クロロスチレンオキシド、エポキシ桂皮酸エチル等のエポキシ化合物等が挙げられる。
本発明の触媒を用いて有機化合物を選択的に水素化する方法は、特に限定されず、有機化合物の種類と、水素化の関係により適宜設定方法を選択すればよい。この水素化は、例えば、有機溶剤を含む液相で行えばよく、具体的には、液相中で本発明の触媒と、有機化合物と、水素ガスを接触させることにより行えばよい。液相は有機溶剤のみあるいは有機溶剤と水の混液が好ましく、有機溶剤のみがより好ましい。
上記水素化の際に用いられる有機溶剤は、特に限定されないが、例えば、ドデカン、シクロヘキサン等の炭素原子数5〜20の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の炭素原子数7〜9の芳香族炭化水素、オキセタン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒロドピラン(THP)、フラン、ジベンゾフラン、フラン等の鎖状構造または環状構造を有するエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテル等から選択される1種以上が挙げられ、これらの中でも特にトルエンは水素化に対する安定性が高いため好ましい。
上記水素化は、液相中で行われるが、これに含まれる有機溶剤の使用量としては、例えば、上記有機化合物の濃度が0.5〜2.0重量%程度となる範囲内で使用することが好ましい。また、上記水素化の際の本発明の触媒の使用量は、例えば、触媒中の金の量を基準として有機化合物に対して0.0001〜50モル%程度であり、0.01〜20モル%程度が好ましく、0.1〜5モル%程度がより好ましい。この水素化は温和な条件でも、円滑に反応を進行させることができる。反応温度としては、基質の種類や目的生成物の種類等に応じて適宜調整することができ、例えば、10〜100℃、好ましくは10〜50℃程度、特に好ましくは10〜40℃程度である。反応時間は、反応温度および圧力に応じて適宜調整することができ、例えば10分〜48時間程度、好ましくは1時間〜48時間程度、特に好ましくは4時間〜30時間程度である。
上記した選択的水素化の中でも、炭素−炭素三重結合と水素化反応部位を持つ有機化合物の水素化が好ましく、この場合には、有機化合物中の炭素−炭素三重結合を選択的に水素化して、炭素−炭素二重結合へ部分水素化することができる。また、上記した選択的水素化の中でも、エポキシ基と水素化反応部位を持つ有機化合物の水素化が好ましく、この場合には、有機化合物中のエポキシ基を選択的に水素化して、炭素−炭素二重結合へ還元することができる。
なお、本発明の触媒は、分子内に炭素−炭素三重結合を持つアルキン等の有機化合物から二重結合を持つアルケン等の有機化合物への還元についての選択性が極めて高く、ほとんど定量的である。また、アルキンに対して水素はシン付加されるため、選択的にZ型アルケンとなる。これは、金粒子の表面上の活性点では炭素−炭素二重結合の水素化活性を持つ水素分子の均一開裂が起こるが、本発明の触媒の金−セリウム酸化物界面の活性点では炭素−炭素三重結合からcis−炭素−炭素二重結合への選択的水素化に有利な水素分子の不均一開裂が優先するためにZ型選択性があると考えられる。E型のアルケンはZ型アルケンの異性化により生成するが、メカニズムとしてZ型アルケンに水素原子が一つ付加し、炭素−炭素結合を軸に分子が回転してE型アルケンとなると考えられ、水素分子の不均一開裂により生成した極性水素は炭素−炭素二重結合には付加しないことからZ型を選択的に得られると考えられる。
そのため、本発明の触媒では、基質となる有機化合物が炭素−炭素二重結合、芳香環結合ハロゲン原子、O−ベンジル基、芳香族カルボニル基、N−ベンジルオキシカルボニル基、水酸基、トリアルキルシロキシ基、メトキシ基等のアルコキシ基を有していてもこれらの官能基は水素化されない。本発明の触媒を使用するとアルキルエーテルは切断されず、アルコキシ基についてはメトキシ基の他、エトキシ基等の炭素数の多いアルコキル基であっても水素化されない。
(アミン類の添加)
また、上記選択的水素化方法において、液相に更にアミン類を添加することにより、副生物の生成を抑制し、炭素−炭素二重結合等をはじめとする水素化反応部位と炭素−炭素三重結合等をはじめとする炭素−炭素三重結合、または極性官能基とを有する化合物中の該炭素−炭素三重結合、または極性官能基を選択的に水素化することができ、その転化率、選択率、反応速度共に向上することができる。特に炭素−炭素三重結合の隣に電子求引基を持つ内部アルキンの場合は、この効果が顕著に表れる傾向がある。これは三重結合の隣に電子求引基を有するアルキンは不均等開裂により生成する極性水素と反応しやすいためではないかと考えられる。
このようなアミン類の添加による性能の向上は、アミン類が有する非共有電子対による選択的水化触媒の活性サイトに作用するドナー効果によるためであると思われる。このようなアミン類としては、水素原子を置換するアルキル基の炭素数が2〜8であるアルキルアミンが好ましい。このようなアルキルアミンは比較的混み合った構造になっていることでドナー効果が作用し、反応性が向上するものと思われる。また、アミン類としては二級アミン、三級アミンが好ましく、三級アミンが特に好ましい。
上記アミン類としては、二級アミンではジベンジルアミン、ジオクチルアミン等が挙げられ、三級アミンではトリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン等が挙げられる。これらアミン類の中でも優れた効果を発揮するためトリエチルアミンが好ましい。
また、選択的水素化方法におけるアミン類の使用量は特に限定されないが、基質である有機化合物に対して400〜1000mol%であることが好ましい。1000mol%を超えると、転化率が低下する場合があり好ましくなく、400mol%未満であると、選択性の向上が見られない場合があり好ましくない。
(触媒の再利用)
選択的水素化に使用した本発明の触媒は金粒子がセリウム酸化物に覆われているため、反応中においても担持された金が大きな粒子になりにくい。また、本発明の触媒は、例えば、水素化後に反応液から濾過、遠心分離等の物理的な分離手法により容易に回収することができる。回収された本発明の触媒はそのまま、あるいは、必要により、洗浄、乾燥、焼成等を施した後、再利用することができる。洗浄、乾燥、焼成等は本発明の触媒の製造の際と同様に行えばよい。
回収された本発明の触媒は、未使用の本発明の触媒と比べ、ほぼ同等の触媒能を示すことができ、使用−再生を複数回繰り返しても、その触媒能の低下を著しく抑制することができる。そのため、本発明によれば、通常、水素化の費用の多くの割合を占める触媒を回収し、繰り返し利用することができるため、有機化合物の水素化のコストを大幅に削減することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[製造例1]
金−セリウム酸化物複合体触媒の調製:
非イオン系界面活性剤であるポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(Igepal CO−520:ローディア製)48mLとシクロヘキサン120mLを混合したものに、0.05mol/Lの塩化金酸(HAuCl)水溶液2mLおよび0.25mol/Lの硝酸セリウム(Ce(NO)水溶液10mLからなる金とセリウムの混合水溶液(金属金換算の金のモル比と前記セリウム酸化物のモル比が、[セリウム酸化物(CeO)/金属金(Au)]換算で25)を加え、撹拌することで、金とセリウムを含む逆ミセル溶液を調製した。同様にして32mLのポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(Igepal CO−520:ローディア製)と80mLのシクロヘキサンを混合し、0.50mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液8mLを加え、撹拌することで水酸化ナトリウムの逆ミセル溶液を調製した。これら2つの逆ミセル溶液を室温で混合し1時間撹拌した後、エタノール150mLを加えてミセルを破壊した。その後、遠心分離、洗浄、110℃での乾燥により紫色粉末を得た。得られた粉末をメノウ乳鉢ですりつぶしたのち、空気中、200℃で4時間焼成し、紺色粉末として目的とする金−セリウム酸化物複合体触媒(以下、「Au@CeO」ということがある)を得た。
このようにして得られた金−セリウム酸化物複合体触媒をTEMで観察したところ、粒子径が約9nmのコアが金ナノ粒子であり、このコアの周りをセリウム酸化物が覆っている、コア−シェル型構造であることを確認した。TEM画像を図1として示した。なお、図中のスケールバーは10nmである。
[比較製造例1]
セリウム酸化物担持金触媒の調製:
コアシェル構造を持たないセリウム酸化物担持金触媒は文献(Catal.Lettrs, 2008,125,169)の記載を参考にして製造した。具体的には、金コロイドを調整するため、イオン交換水45.5mLに0.2Mの水酸化ナトリウム水溶液1.4mLと0.8Wt%テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロリド水溶液1.0mLを加え、2分間撹拌し、0.25Mの塩化金酸水溶液2.1mLを添加した。得られた暗褐色の溶液を30分撹拌し、次いで担体のCeOを加えて、さらに30分撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、イオン交換水で洗浄し、50℃で15時間乾燥することでセリウム酸化物担持金触媒(以下、「Au/CeO」ということがある)を得た。
[実施例1]
アルキンの選択的アルケン化:
製造例1で得られた触媒(Au@CeO)または比較製造例1で得られた触媒(Au/CeO)を用いて下記式の反応を行った。具体的には、Au@CeOまたはAu/CeOをそれぞれ触媒量2.2mol%、そして基質であるフェニルアセチレン0.4mmol、溶媒であるトルエン5mL、水素圧30atm、反応温度30℃の条件で還元処理を行った。反応時間を6時間、12時間、18時間としそれぞれガスクロマトグラフを用いて転化率、選択率を測定した。結果を表1に記した。
触媒として製造例1で得られたAu@CeOを使用した場合、長時間反応させても、比較製造例1で得られたAu/CeOより優れた選択性を発揮していることがわかった。このことから、Au@CeOを使用することでこまめな反応のモニタリング等を行わなくても目的化合物を収率良く得ることができる。
[実施例2]
触媒の再利用:
実施例1で使用した触媒(Au@CeO)を遠心分離により分離し、溶媒であるトルエンで洗浄して反応系から回収した。この回収した触媒を、再度同じ反応に使用した結果を表2に記した。
この結果から、本発明の触媒は繰り返し使用しても高い選択性を保つことがわかった。
[実施例3]
アルキンの選択的アルケン化における基質多様性:
製造例1で得られた触媒(Au@CeO)がさまざまな基質に使用できることを確認するため、下記式の反応を行った。下記式において基質および反応条件を下記表3に記載の条件に変更する以外は実施例1と同様にして対応するアルケンを得た。
この結果から、製造例1で得られた触媒(Au@CeO)は、水素化される炭素−炭素三重結合以外に、水素化される可能性のあるベンゼン環や複素環、ニトリル、ハロゲン等が存在する様々な化合物であっても、選択的に炭素−炭素三重結合を水素化して二重結合にすることができることが分かった。
[実施例4]
エポキシ基の選択的アルケン化:
下記式のエポキシドの脱酸素反応において、製造例1で得られた触媒(Au@CeO)を用いて行った結果を下記表4に記した。
この結果から、製造例1で得られた触媒(Au@CeO)はエポキシ基のアルケン化において、高い選択率を発揮することがわかった。
[実施例5]
アルキンの選択的アルケン化におけるアミンの添加効果(1):
下記式の製造例1で得られた触媒(Au@CeO)を用いたアルキンの選択的アルケン化反応において、トリエチルアミンを0.1g添加して行った結果を表5に記した。
上記結果より、アルキンの選択的アルケン化反応において、アミンを添加すると反応速度が速くなり、反応時間が短くても十分な選択性と収率を持つようになることがわかった。
[実施例6]
アルキンの選択的アルケン化におけるアミンの添加効果(2):
下記式の製造例1で得られた触媒(Au@CeO)を用いたアルキンの選択的アルケン化反応において、トリエチルアミンを0.1g添加して行った結果を表6に記した。
上記結果より、アルキンの選択的アルケン化反応において、アミンを添加すると反応速度が速くなり、反応時間が短くても十分な選択性と収率を持つようになることがわかった。
本発明は種々の医薬、農薬、その他種々の工業分野において中間体として有用な有機化合物の製造に有用である。

以 上

Claims (7)

  1. 金粒子と該金粒子の表面に被覆されたセリウム酸化物を含んでなる金−セリウム酸化物複合体触媒を用いて、炭素−炭素三重結合と水素化反応部位を持つ有機化合物の炭素−炭素三重結合を選択的に水素化して炭素−炭素二重結合にすることを特徴とする炭素−炭素三重結合と水素化反応部位を持つ有機化合物の選択的水素化方法。
  2. 炭素−炭素三重結合と水素化反応部位を持つ有機化合物の選択的水素化を有機溶剤を含む液相で行い、
    前記有機溶剤が、炭素原子数5〜20の脂肪族炭化水素および炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶剤である請求項記載の炭素−炭素三重結合と水素化反応部位を持つ有機化合物の選択的水素化方法。
  3. 更に、液相にアミン類を添加する請求項に記載の炭素−炭素三重結合と水素化反応部位を持つ有機化合物の選択的水素化方法。
  4. アミン類が、トリアルキルアミンである請求項に記載の炭素−炭素三重結合と水素化反応部位を持つ有機化合物の選択的水素化方法。
  5. 炭素−炭素三重結合と水素化反応部位を持つ有機化合物がアルキンであり、水素がシン付加され、Z型アルケンとなる請求項1〜4の何れかに記載の炭素−炭素三重結合と水素化反応部位を持つ有機化合物の選択的水素化方法。
  6. 金粒子中の金属金換算の金のモル比と前記セリウム酸化物のモル比が、[セリウム酸化物(CeO)/金属金(Au)]換算で10〜50である請求項1記載の炭素−炭素三重結合と水素化反応部位を持つ有機化合物の選択的水素化方法
  7. 金−セリウム酸化物複合体が、コア−シェル型構造を有している請求項1または6記載の炭素−炭素三重結合と水素化反応部位を持つ有機化合物の選択的水素化方法
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