JP6569398B2 - リチウムイオン二次電池用負極活物質、およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用負極活物質、およびリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用負極活物質、およびリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池の負極活物質として、黒鉛系の炭素材料が広く用いられている。黒鉛にリチウムイオンを充填した際の化学量論的組成は、LiCであり、その理論容量は372mAh/gと算出できる。これに対してシリコンにリチウムイオンを充填した際の化学量論的組成は、Li15SiもしくはLi22Siであり、その理論容量は3577mAh/gもしくは4197mAh/gと算出できる。このようにシリコンは黒鉛に比べて、9.6倍もしくは11.3倍のリチウムを貯蔵できる魅力的な材料である。
しかしながら、シリコン粒子にリチウムイオンを充填すると、体積が2.7倍ないしは3.1倍程度に膨張するため、リチウムイオンの充填と放出を繰り返す間に、シリコン粒子が力学的に破壊する。シリコン粒子が破壊することにより、破壊した微細シリコン粒子が電気的に孤立し、また、破壊面に新しい電気化学的被覆層ができることにより、不可逆容量が増加し、充放電サイクル特性が著しく低下する。
リチウムイオン二次電池の負極活物質としてシリコン粒子をナノ化ことにより、リチウムイオンの充填と放出に伴う機械的破壊を防ぐことができる。しかしながら、リチウムイオンの充填と放出に伴う体積変化により、シリコン粒子の一部が電気的に孤立し、寿命特性が大きく低下するという問題があった。
特許文献1には、サイクル特性を向上させるために、黒鉛からなるひだの間にシリコン粒子が挟まった扁平形状の粒子である負極活物質が開示されている。
特開2014−187007号公報
特許文献1に開示されている負極活物質は、シリコン粒子表面に酸化膜が形成され、シリコン粒子と黒鉛との間の電気伝導性が低下する虞があり、寿命特性のさらなる向上が望まれる。
そこで、本発明では、長寿命なリチウムイオン二次電池用負極活物質を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための本発明に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質は、複数の鱗片状黒鉛と、表面が炭素被覆された鱗片状のシリコン粒子と、有し、複数の鱗片状黒鉛は凝集して粒子形状を成しており、シリコン粒子は、複数の鱗片状黒鉛の間に存在することを特徴とする。
本発明によれば、長寿命なリチウムイオン二次電池用負極活物質を提供できる。上記した以外の課題、構成および効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明の一実施形態に係る負極活物質の模式図である。 本発明の一実施形態に係る負極活物質の構成要素であるナノグラフェン被覆シリコン粒子の模式図である。 本発明の一実施形態に係る負極活物質の構成要素であるナノグラフェン被覆シリコン粒子の模式図である。 電気容量とシリコンの重量との関係を示した図である。 本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の模式図である。 本発明の一実施形態に係る負極活物質の構成要素であるディスク状のシリコン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の一実施形態に係る負極活物質の構成要素であるディスク状のシリコンナノ粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 シリコン粒子表面へのナノグラフェン被覆方法を説明するための装置構成図である。 本発明の一実施形態に係る負極活物質の構成要素であるディスク状のナノグラフェン被覆シリコン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の一実施形態に係る負極活物質の構成要素であるディスク状のナノグラフェン被覆シリコンナノ粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の一実施形態に係る負極活物質の構成要素であるディスク状のナノグラフェン被覆シリコン粒子の透過型電子顕微鏡写真である。 本発明の一実施形態に係る負極活物質の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。
図1は、本発明のリチウムイオン二次電池用負極活物質の一実施形態の模式図である。負極活物質は、鱗片状黒鉛101と、表面が炭素で被覆されたシリコン粒子102とを含む。複数の鱗片状黒鉛が凝集して粒子形状を成している。また、シリコン粒子は、鱗片状黒鉛同士の間に存在し、少なくとも一つの鱗片状黒鉛に接している。つまり、本発明に係る負極活物質は、鱗片状黒鉛101の間に、表面が炭素で被覆されたシリコン粒子102が挟まった構造である。炭素被覆シリコン粒子が、挟まれた鱗片状黒鉛101の少なくとも一つと接触していることにより鱗片状黒鉛101と電気的に繋がっている。また、鱗片状黒鉛101は、互いに複雑に絡み合っており、一つの粒子を構成するすべての鱗片状黒鉛101が電気的に繋がっている。上記構造により、一つの粒子を構成する鱗片状黒鉛101と炭素被覆シリコン粒子102は、すべてが電気的に繋がっている。
負極活物質は、例えば、球状、回転楕円体状である。粒子径は、1μm以上100μm以下であることが好ましい。より好ましくは、粒子径5μm以上30μm以下である。ここで、楕円形状の場合は、長径を粒子径とする。粒子径が1μm以下の場合、その作製が非常に困難である。また、粒子径が100μm以上の場合、粒子間の隙間が大きいため、それを用いて作製した電極の密度が小さくなり、単位体積あたりの充放電容量が低下する。粒子作製の観点から、粒子径は5μm以上であることが好ましい。また、単位体積あたりの充放電容量の観点から、粒子径が30μm以下であることが好ましい。
鱗片状黒鉛101は、グラフェンが数層から数十層、場合によっては100層以上重なった構造を有する。すなわち、厚さは1nm以上100nm以下である。1nm未満の場合、機械的強度が弱く、シリコン粒子のリチウム吸蔵に伴う体積膨張により破壊し、電気的に孤立する可能性が高くなる。また、100nmを超える場合は、機械的柔軟性に欠けるため、粒子形状を形成することが困難である。
鱗片状黒鉛101の上面から見た形状は、例えば、楕円系である。鱗片状黒鉛の最も長い径は、0.5μm以上100μm以下である。最も長い径が0.5μm未満の場合、一定の機械強度を有する粒子形状を形成することが困難である。また、100μmを超える場合、粒子形状を形成することが困難である。鱗片状黒鉛の長径は、好ましくは、1μm以上30μm以下である。1μm以上30μm以下とすることにより、十分な機械強度を確保しつつ、容易に粒子形状を作製することが可能である。
鱗片状黒鉛は熱膨張黒鉛であることが好ましい。熱膨張黒鉛とは、酸化処理を施した黒鉛を、熱処理により、急激に膨張させた黒鉛である。
鱗片状黒鉛101は、黒鉛粒子を粉砕することにより作製することが可能である。粉砕には、湿式遊星ボールミル法、湿式ビーズミル法等の強い剪断応力を印加できる方法が特に有効である。また、鱗片状黒鉛101は、酸化黒鉛を熱膨張させることにより、作製することが可能である。すなわち、Hammer法あるいはそれを改良した方法により、黒鉛を酸化し、酸化黒鉛を作製する。次に、この酸化黒鉛をアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、300℃から1000℃で数十秒から数分間の短時間熱処理(場合によっては、1時間程度の熱処理)し、一気に熱膨張させることにより、鱗片状黒鉛101を作製することができる。
炭素被覆シリコン粒子102の形態を図2および図3を用いて説明する。
被覆する炭素は、多層に積層されたナノグラフェンであることが好ましい。ここで、ナノグラフェンとは、0.5nm以上50nm以下のサイズのグラフェンのことを示す。ナノグラフェンで被覆されることにより、電気伝導性を付加することができる。ナノグラフェン層の電気伝導率は、1000S/m以上である。
図2は、回転楕円体状のナノグラフェン被覆シリコン粒子の模式図である。回転楕円体状シリコン粒子201の表面に、ナノグラフェン被覆層202が形成された構造である。
炭素被覆シリコン粒子の粒子径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。ここで、回転楕円体状の場合は、長径を粒子径とする。1nm未満の場合は、シリコン粒子同士の凝集が激しく、所望の負極材料構造を作製することが困難である。また、100nmを超える場合、リチウム吸蔵の際の機械的膨張により、破壊する可能性が高い。より好ましくは5nm以上30nm以下である。この範囲の粒径では、特に、高速の充放電特性に優れた負極を実現することが可能である。
炭素被覆層の厚さは、好ましくは1nm以上であり、より好ましくは3nm以上10nm以下である。この範囲の炭素被覆層厚であれば、機械的強度も充分で、また、充分な電気伝導性を付与することができる。1nm未満の場合、機械的強度が弱く、楕円体状シリコン粒子201の表面から剥離する可能性が高い。ナノグラフェン層の厚さは、いくら厚くても問題はないが、負極材料全体に占めるシリコン重量が小さくなると、電気容量もそれに伴って小さくなるので、最適なナノグラフェン層厚さは、設計事項である。
図3は、ディスク状のナノグラフェン被覆シリコン粒子の模式図である。ディスク状シリコン粒子301の表面に、ナノグラフェン被覆層302が形成された構造である。ディスク状シリコノ粒子301の厚さは、1nm以上100nm以下であることが望ましい。1nm未満の場合は、機械的強度が不十分であり、混練工程等の、機械的応力がかかる作製工程で、破壊する可能性が高い。また、100nmを超える場合は、リチウム吸蔵の際の機械的膨張により、破壊する可能性が高い。また、ディスク状シリコン粒子301の上面は概ね楕円状であり、長径は1nm以上3μm以下である。1nm未満の場合は、シリコン粒子同士の凝集が激しく、所望の負極材料構造を作製することが困難である。また、3μmを超える場合、リチウム吸蔵の際の機械的膨張により、破壊する可能性が高い。また、ナノグラフェン被覆層は回転楕円体状のシリコン粒子と同様である。1
シリコン粒子表面への炭素被覆量、混同するシリコン粒子量、混合する鱗片状黒鉛量を調整することにより、その電気容量を調整することが可能である。図4は、電気容量とシリコン粒子の重量の関係を示した図である。つまり、電気容量のシリコン重量比依存性を計算した結果である。炭素に対しては、リチウムイオンを充填した際の化学量論的組成を、LiCと仮定し、その電気容量を372mAh/gとした。また、シリコンに対しては、リチウムイオンを充填した際の化学量論的組成を、Li15Siと仮定し、その電気容量を3577mAh/gとした場合と、Li22Siと仮定し、その電気容量を4197mAh/gとした場合について計算した。横軸のSi/(Si+C)のSiは、シリコン粒子の重量を、Cは、各種炭素の重量である。シリコン重量比を変えることで、炭素固有の電気容量から、シリコン固有の電気容量まで、幅広く制御することが可能である。現実的には、負極活物質中のシリコンの含有量が5重量%以上95重量%以下の複合材料を作製することが可能である。負極活物質におけるシリコン粒子の含有量は好ましくは、5重量%以上、95重量%以下である。この範囲内であれば、粒子形状を形成することが可能である。
本発明に係る負極活物質は、他の負極活物質と混同して使用することもできる。例えば、鱗片状黒鉛粒子と混同して用いることにより、長寿命化できる。鱗片状黒鉛粒子の混合量は10質量%以上90質量%以下とすることが好ましい。
本発明に係る負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池について、図5を用いて説明する。図5で、501は正極、502はセパレータ、503は負極、504は電池缶、505は正極集電タブ、506は負極集電タブ、507は内蓋、508は内圧開放弁、509はガスケット、510は正温度係数(TPC; positive temperature coeffocent)抵抗素子、511は電池蓋である。電池蓋511は、内蓋507、内圧開放弁508、ガスケット509、正温度係数抵抗素子510からなる一体化部品である。
負極503は、負極活物質、バインダ及び集電体から概略構成される。負極活物質としては上述したものを用いる。
正極501は、正極活物質、導電剤、バインダ及び集電体から概略構成される。正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出可能である既知の正極活物質を使用することができる。たとえばLiMO(Mは少なくとも1種の遷移金属)で表せるものであり、MはNi、Co、Mn、Fe、Ti、Zr、Al、Mg、Cr、Vなどが挙げられる。その他にも、LiMOで表されるマンガン酸リチウムやコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウムなどのマンガンやコバルト、ニッケルの一部を1種または2種の遷移金属で置換したり、マグネシウム、アルミニウムなどの金属元素で置換するなどしたりしても使用することができる。その他、LiMで表わされるスピネル系、LiFePOなどのオリビン系、Li過剰の層状固溶体系、ケイ酸塩系、バナジウム酸化物系等の活物質が挙げられる。
セパレータ503には、イオン伝導性および絶縁性を有し、かつ、電解液に溶解しない材料を使用でき、PEやPP製の多孔体、不織布等が使用できる。電解質としては、LiPFやLiBF等のLi塩をEC、PCなどの環状カーボネートやDMC、EMC、DECなど鎖状カーボネートに溶解させたものを使用できる。
以下、実施例について説明するが、本発明は、ここに開示した実施例のみに限定されるものではない。
<鱗片状シリコン粒子の作製>
鱗片状シリコン粒子は、平均直径が1ミクロンの球状シリコン粒子を、イソプロピルアルコールを溶媒とするビーズミル粉砕法により粉砕することにより作製した。球状シリコン粒子50gと、イソプロピルアルコール450gを混合し、直径が500ミクロンにジルコニア性ビーズを用いて、2時間粉砕した。ビーズミルを用いることで、球状シリコン粒子を粉砕するだけでなく、鱗片状シリコン粒子同士を分散させ、ダマとなることを防ぐことができる。
図6(a)(b)は、作製したディスク状シリコン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。図6(a)は低倍率の写真、図6(b)は高倍率の写真である。図6(a)より、シリコン粒子の平坦部分の最も長い径、最長径の平均値が400nm程度であることがわかる。また、図6(b)の高倍率の写真より、鱗片状シリコン粒子の厚さは、20nm程度であることが分かる。
<シリコン粒子への炭素被覆>
シリコン粒子表面へナノグラフェン被覆層の作製法を、図7を用いて説明する。図7はシリコン粒子表面へ炭素被覆の形成するための装置構成図である。サンプルボート701にシリコン粒子を入れて、反応炉702の中央付近に設置する。反応炉は、石英製であり、直径が5cm、長さが40cmである。水素ライン、アルゴンライン、プロピレンラインの流量はコントローラ704により調整できる。図7の水素ラインを用いて、水素ガスを200mL/minの流速で流し、反応炉を室温から1000℃まで、10℃/minでの速度で昇温し、さらに1000℃で1時間保持した。この熱処理工程により、シリコン粒子の表面に形成された自然酸化膜を還元することが可能である。その後、水素ラインを閉じ、アルゴンガスを200mL/minの流速で流し、10℃/minの速度で降温し、800℃まで降温した。800℃に達したところで、プロピレンガスを10mL/minの流速で導入し、同時にアルゴンガスの流速を190mL/minにして、炭素被覆層を1時間成長した。その後、プロピレンガスラインを閉じ、アルゴンガスを200mL/minの流速で流し、15min保持した後、自然冷却した。これにより、表面に、ナノグラフェン被覆層を作製されたシリコン粒子を作製できた。なお、上記方法により作製したナノグラフェン被覆層はナノグラフェンが多層に積層した構造であり、1000S/m以上の電気伝導率を有する。また、自然酸化膜を還元した後に炭素被覆層を形成させているため、炭素被覆層が酸化膜を介さずシリコン粒子に被覆している。
図8(a)(b)は、ナノグラフェン層で被覆したディスク状シリコン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。図8(a)は低倍率、図8(b)は高倍率の写真である。特に図8(b)の高倍率の写真より、厚さが40nm程度に増加していることから、厚さが10nm程度のナノグラフェン層が、ディスク状シリコン粒子の表面を均一に被覆していると考えられる。
図9は、ナノグラフェン層で被覆したディスク状シリコン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。ディスクの端部を上面方向から観察した。ディスク状シリコン粒子902の部分は、シリコンの格子構造が見え、結晶構造を有することがわかる。また、ナノグラフェン層901は、ナノグラフェンが積層した構造であることがわかる。
<負極活物質の作製>
ナノグラフェン被覆シリコン粒子と鱗片状黒鉛との混合は、湿式ボールミル法により行った。ナノグラフェン被覆シリコン粒子80gと鱗片状黒鉛20gをイソプロピルアルコール400g中に加え、充分に撹拌した後、粒径1mmのジルコニア性ボールミルを用いて、混合することにより、鱗片状黒鉛の間にナノグラフェン被覆シリコン粒子が存在する負極活物質を得た。
図10に、ディスク状のナングラフェン被覆シリコン粒子と鱗片状黒鉛から作製した本負極材料の断面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
上記の、ナングラフェン被覆シリコン粒子と鱗片状黒鉛から作製した本負極材料は、単独で用いる以外に、図11に示すように、黒鉛粒子と混合して使用することも可能である。すなわち、ナングラフェン被覆シリコン粒子と鱗片状黒鉛から作製した本負極材料と、黒鉛粒子を混合して、集電体の表面に塗布して使用することも可能である。
回転楕円体状シリコン粒子を用いたこと以外実施例1と同様に負極活物質を作製した。用いた回転楕円体状シリコン粒子の平均長径は500nmであった。また、回転楕円体状シリコン粒子の表面の自然酸化膜を除去し、シリコン面に直接形成された炭素層の厚さは5nmであった。負極活物質中の最終的なシリコン重量比は90.1wt%であった。
実施例1で作製した負極活物質と鱗片状黒鉛粒子とを重量比で30:70となるように混合したものを負極材料とした。
(比較例1)
シリコン粒子に炭素被覆処理を行わなかったこと以外実施例1と同様に負極活物質を作製した。
<試作電池の作製>
正極は以下の手順により作製した。正極活物質には、LiMnを用いた。正極活物質の85.0wt%に、導電材として黒鉛粉末とアセチレンブラックをそれぞれ7.0wt%と2.0wt%を添加した。さらに、結着剤として6.0wt%のポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと略記)(1−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記)に溶解した溶液)を加えて、プラネタリ−ミキサーで混合し、さらに真空下でスラリー中の気泡を除去して、均質な正極合剤スラリーを調製した。このスラリーを、塗布機を用いて厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に均一かつ均等に塗布した。塗布後ロールプレス機により電極密度が2.55g/cmになるように圧縮成形した。これを切断機で裁断し、厚さ100μm、長さ900mm、幅54mmの正極801を作製した。
実施例1〜3、比較例1の負極活物質を用いて、負極は以下の手順により作製した。その負極活物質の95.0wt%に、結着剤として5.0wt%のPVDF(NMPに溶解した溶液)を加えた。それをプラネタリ−ミキサーで混合し、真空下でスラリー中の気泡を除去して、均質な負極合剤スラリーを調製した。このスラリーを塗布機で厚さ10μmの圧延銅箔の両面に均一かつ均等に塗布した。塗布後、その電極をロールプレス機によって圧縮成形して、電極密度が1.3g/cmとする。これを切断機で裁断し、厚さ110μm、長さ950mm、幅56mmの負極803を作製した。
作製した正極と、負極の未塗布部(集電板露出面)に、それぞれ正極集電タブ1105および負極集電タブ1106を超音波溶接した。正極集電タブ1105はアルミニウム製リード片とし、負極集電タブ1106にはニッケル製リード片を用いた。
その後、厚み30μmの多孔性ポリエチレンフィルムからなるセパレータ1102を正極1101と負極1103に挿入し、正極1101、セパレータ1102、負極1103を捲回した。この捲回体を電池缶1104に収納し、負極集電タブ1106を電池缶1104の缶底に抵抗溶接機により接続した。正極集電タブ1105は、内蓋1107の底面に超音波溶接により接続した。
上部の電池蓋1111を電池缶1104に取り付ける前に、非水電解液を注入した。電解液の溶媒は、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比が1:1:1である溶媒を用いた。電解質は濃度1mol/L(約0.8mol/kg)のLiPFである。このような電解液を捲回体の上から滴下し、電池蓋1111を電池缶1104に、かしめて密封し、リチウムイオン二次電池を得た。
<充放電容量の測定>
充放電容量は、市販の充放電測定装置を用いて測定を行った。作製した電池を装置にセットして10時間放置後、1Cの定電流条件で充放電を100回繰り返した。
測定した放電容量及び、放電容量維持率を表1に示す。
Figure 0006569398
比較例1は、炭素被覆のないディスク状シリコン粒子と鱗片状黒鉛との複合粒子、実施例1は、ディスク状ナノグラフェン被覆シリコン粒子と鱗片状黒鉛との複合粒子、実施例2は回転楕円体ク状ナノグラフェン被覆シリコン粒子と鱗片状黒鉛との複合粒子、実施例3は、ディスク状ナノグラフェン被覆シリコン粒子と鱗片状黒鉛との複合粒子と鱗片状黒鉛粒子の二種類の負極活物質を混合したものを負極活物質として用いた。
実施例1〜3の負極材料を用いた電池は、いずれも比較例1の負極材料を用いた電池よりも容量維持率が高い。したがって、炭素被覆シリコン粒子を、鱗片状黒鉛からなる粒子の内部に分散させた負極活物質を用いることにより、容量維持率を向上できることが分かった。その結果、リチウムイオン二次電池を長寿命化できる。
実施例1と実施例2の比較より、炭素被覆シリコン粒子の形状がディスク状であることにより、容量が高く、長寿命なリチウムイオン二次電池を得られることが分かった。
実施例1と実施例3の比較より、炭素被覆シリコン粒子と鱗片状黒鉛の複合粒子と、鱗片状黒鉛粒子の二種類の負極活物質を混合することにより、さらに容量維持率を向上できることが分かった。
101…鱗片状黒鉛、102…ナノグラフェン被覆シリコン粒子、201…楕円体状シリコン粒子、202…ナノグラフェン被覆層、301,902…ディスク状シリコン粒子、302,901,…ナノグラフェン被覆層、501…正極、502…セパレータ、503…負極、504…電池缶、505…正極集電タブ、506…負極集電タブ、507…内蓋、508…圧力開放弁、509…ガスケット、510…正温度係数抵抗素子、511…電池蓋、701…試料台、702…反応炉、703…コントローラ、704…コック、901…集電体、902…ナノグラフェン被覆シリコン粒子と鱗片状黒鉛の複合材料

Claims (9)

  1. 複数の鱗片状黒鉛と、表面が炭素被覆された鱗片状のシリコン粒子と、有し、
    前記複数の鱗片状黒鉛は凝集して粒子形状を成し、
    前記シリコン粒子は、前記複数の鱗片状黒鉛の間に存在し、
    前記炭素は、多層に積層したグラフェンであって、
    前記グラフェンの長径は1nm以上30nm以下であり、
    前記グラフェンは、酸化膜を介さず前記シリコン粒子を被覆していることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  2. 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質であって、
    前記シリコン粒子は少なくとも一つの鱗片状黒鉛に接していることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  3. 請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質であって、
    前記鱗片状黒鉛は、熱膨張黒鉛であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  4. 請求項1乃至のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池負極活物質であって、
    前記シリコン粒子の含有量は、5質量%以上95質量%以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  5. 請求項1乃至のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質であって、
    前記表面が炭素被覆された前記シリコン粒子の粒子径は、1nm以上100nm以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  6. 請求項1乃至のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質であって、
    粒子径が1μm以上100μm以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  7. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質であって、
    前記鱗片状黒鉛の長径は、0.5μm以上100μm以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  8. 請求項1乃至のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質と、鱗片状黒鉛粒子と、を含むリチウムイオン二次電池用負極材料。
  9. 請求項1乃至のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質粒子を有する負極と、正極活物質を含む正極と、電解質と、を備えるリチウムイオン二次電池。
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