JP6569019B1 - 酢酸の製造方法 - Google Patents

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Abstract

酢酸の減産や増産を簡易な操作でスムーズに行うことができ、酢酸の生産量が変化しても、品質を保持しつつ工業的に効率よく安定に酢酸を製造できる方法を提供する。金属触媒及びヨウ化メチルを含む触媒系、並びに、酢酸、酢酸メチル、水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続式で反応させるカルボニル化反応工程を含む酢酸の製造方法であって、前記カルボニル化反応工程において、反応槽を2以上の並列で使用する酢酸の製造方法。

Description

本発明は、酢酸の製造方法に関する。
メタノール法酢酸プロセスでは、一般に、反応槽には原料メタノールと原料一酸化炭素と、蒸発槽底部からリサイクルされる触媒液(金属触媒を含む酢酸溶液)と精製系からリサイクルされる助触媒としてのヨウ化メチルが導入され、原料メタノールと一酸化炭素の反応により酢酸を生成させる(例えば、特許文献1)。
プラント設計時においては、設備費を最適化するため、反応槽の容量、蒸発槽の容量、ヨウ化メチル貯留槽(例えばデカンタ)の容量は酢酸の計画生産量に合うスケールより大きく余裕を取ることはなく、1割程度しか大きく設計されない。
ところで連続式プロセスの現状のプラントにおいて、酢酸の生産量を変化(例えば減産や増産)させたい場合、原料メタノールと原料一酸化炭素の供給量を変化させるとともに、反応速度を調整して酢酸の単位時間当たりの製造量を変えることが通常である。例えば、酢酸の生産量を低下させたい場合(減産時)、反応槽中の触媒及び助触媒の濃度を低くしたり、反応温度を下げることにより、反応速度を遅くして酢酸の生成速度を低下させる。
しかし上述したように、例えば蒸発槽の容量は、計画当初の生産量に合わせて設計されているので、酢酸の蒸発量を下げ、蒸発槽の液量を増やして、低濃度の金属触媒の溶液をリサイクルして反応槽中の触媒濃度を低くしようとしても、せいぜい1割程度である。
また反応温度を変えることにより、反応速度を変化させようとした場合には、反応温度が低すぎると、蒸発槽で酢酸を所望量蒸発できなくなり、反応温度が高すぎると、蒸発槽において触媒の飛沫同伴が増加して触媒のロスに繋がる。
特開平07−25813号公報
従来の酢酸の製造方法では、上述したように反応槽中の触媒濃度や助触媒濃度を大きく変化させたり、反応温度を大きく変えることができないので、酢酸の減産や増産をスムーズに行うことができなかった。
したがって、本発明の目的は、酢酸の減産や増産を簡易な操作でスムーズに行うことができ、酢酸の生産量が変化しても、品質を保持しつつ工業的に効率よく安定に酢酸を製造できる方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、金属触媒及びヨウ化メチルを含む触媒系、並びに、酢酸、酢酸メチル、水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続式で反応させるカルボニル化反応工程を含む酢酸の製造方法において、前記カルボニル化反応工程において、反応槽を2以上の並列で使用すると、酢酸の減産や増産を簡易な操作でスムーズに行うことができ、酢酸の生産量が変化しても、品質を保持しつつ工業的に効率よく安定に酢酸を製造できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、金属触媒及びヨウ化メチルを含む触媒系、並びに、酢酸、酢酸メチル、水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続式で反応させるカルボニル化反応工程を含む酢酸の製造方法であって、
前記カルボニル化反応工程において、反応槽を2以上の並列で使用する酢酸の製造方法(以下「第1の酢酸の製造方法」と称する場合がある)を提供する。
前記第1の酢酸の製造方法において、前記カルボニル化工程に加え、前記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸発槽において蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程を有しており、
接続された反応槽と蒸発槽の組み合わせを2以上の並列で使用してもよい。
前記第1の酢酸の製造方法において、前記カルボニル化工程に加え、前記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸発槽において蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程と、
前記蒸気流を蒸留塔による蒸留に付して、ヨウ化メチル及びアセトアルデヒドから選択された少なくとも一種の低沸成分に富むオーバーヘッド流と、酢酸に富む酢酸流とに分離するとともに、前記オーバーヘッド流を凝縮させ、デカンタで分液させて水相と有機相とを得る脱低沸工程を有しており、
接続された反応槽と蒸発槽と蒸留塔の組み合わせを2以上の並列で使用してもよい。
前記第1の酢酸の製造方法において、並列に置かれた2以上の反応槽のうち、稼働反応槽数の増減により酢酸の生産量を増減させてもよい。
前記第1の酢酸の製造方法において、稼働反応槽の数の増減を伴う運転期間中において、
稼働反応槽における反応温度が170℃以上であり、且つ、稼働反応槽数によらず、下記(i)〜(vii)の少なくとも1つの条件を満たすことが好ましい。
(i)稼働反応槽中の金属触媒濃度及びヨウ化メチル濃度の変動が±50%以内である
(ii)前記触媒系がさらにヨウ化物塩を含み、稼働反応槽中のヨウ化物塩濃度の変動が±50%以内である
(iii)稼働反応槽における反応温度の変動が±20℃以内である
(iv)稼働反応槽中の酢酸濃度、及び/又は、酢酸メチル濃度、及び/又は、水濃度の変動が±50%以内である
(v)稼働反応槽における水素分圧の変動が±50%以内である
(vi)稼働反応槽における反応速度の変動が±50%以内である
(vii)稼働反応槽における酢酸の空時収率の変動が±40%以内である
前記第1の酢酸の製造方法において、稼働反応槽数の増減切り替え前後において、前記(i)〜(vii)の少なくとも1つの条件を満たすことが好ましい。
前記第1の酢酸の製造方法は、さらに、
前記カルボニル化工程に加えて、
前記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸発槽において蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程を有しており、
並列に置かれた反応槽の全液量100容量部に対し、蒸発槽の液量(並列に置かれている場合はその全液量)が1〜100容量部であることが好ましい。
前記第1の酢酸の製造方法は、さらに、
前記カルボニル化反応工程に加えて、
前記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸発槽において蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程と、
前記蒸気流を蒸留塔による蒸留に付して、ヨウ化メチル及びアセトアルデヒドから選択された少なくとも一種の低沸成分に富むオーバーヘッド流と、酢酸に富む酢酸流とに分離するとともに、前記オーバーヘッド流を凝縮させ、デカンタで分液させて水相と有機相とを得る脱低沸工程を有しており、
並列に置かれた反応槽の全液量100容量部に対し、前記デカンタの液量(並列に置かれている場合はその全液量)が1〜100容量部であることが好ましい。
前記第1の酢酸の製造方法は、さらに、
前記カルボニル化反応工程に加えて、
前記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸発槽において蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程と、
前記蒸気流を蒸留に付して、ヨウ化メチル及びアセトアルデヒドから選択された少なくとも一種の低沸成分に富むオーバーヘッド流と、酢酸に富む酢酸流とに分離するとともに、前記オーバーヘッド流を凝縮させ、デカンタで分液させて水相と有機相とを得る脱低沸工程を有しており、
稼働反応槽の数の増減を伴う運転期間中において、
稼働反応槽における反応温度が170℃以上であり、且つ、稼働反応槽数によらず、下記(viii)〜(x)の少なくとも1つの条件を満たすことが好ましい。
(viii)稼動反応槽における液面の変動が±20%以内である
(ix)稼動蒸発槽における液面の変動が±20%以内である
(x)稼動デカンタにおける液面の変動が±20%以内である
本発明は、また、金属触媒及びヨウ化メチルを含む触媒系、並びに、酢酸、酢酸メチル、水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続式で反応させるカルボニル化反応工程を含む酢酸の製造方法であって、
酢酸の生産量を30〜90%に減産するに際し、前記カルボニル化反応工程における酢酸の空時収率の変動を±40%以内に維持する酢酸の製造方法(以下、「第2の酢酸の製造方法」と称する場合がある)を提供する。
前記第2の酢酸の製造方法は、反応槽を2以上の並列で使用し、稼働反応槽数を減らすことが好ましい。
本発明によれば、反応槽を2以上の並列で使用するため、酢酸の減産や増産を簡易な操作でスムーズに行うことができ、酢酸の生産量が変化しても、不純物の生成量の変化が少なく、品質を保持しつつ工業的に効率よく安定に酢酸を製造できる。
本発明の一実施形態を示す酢酸製造フロー図である。 並列に接続された2つの反応槽と、2つの蒸発槽を接続した一例を示す概略フロー図である。 並列に接続された2つの反応槽と、2つの蒸発槽と、2つの蒸留塔を接続した一例を示す概略フロー図である。 従来の一実施形態を示す酢酸製造フロー図である。
以下、必要により添付図面を参照しつつ本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態を示す酢酸製造フロー図(連続式で反応させるメタノール法カルボニル化プロセス)の一例である。この酢酸製造フローに係る酢酸製造装置は、反応槽1A,1Bと、蒸発槽2と、蒸留塔3と、デカンタ4と、蒸留塔5と、蒸留塔6と、イオン交換樹脂塔7と、スクラバーシステム8と、アセトアルデヒド分離除去システム9、コンデンサ1a,2a,3a,5a,6aと、熱交換器2bと、リボイラー3b,5b,6bと、ライン11〜56、ポンプ57とを備え、酢酸を連続的に製造可能に構成されている。本実施形態の酢酸の製造方法では、反応槽1A,1B、蒸発槽2、蒸留塔3、蒸留塔5、蒸留塔6、及びイオン交換樹脂塔7において、それぞれ、反応工程、蒸発工程(フラッシュ工程)、第1蒸留工程、第2蒸留工程、第3蒸留工程、及び吸着除去工程が行われる。第1蒸留工程は脱低沸工程、第2蒸留工程は脱水工程、第3蒸留工程は脱高沸工程ともいう。なお、本発明において、工程は上記に限らず、例えば、蒸留塔6、イオン交換樹脂塔7、アセトアルデヒド分離除去システム9(脱アセトアルデヒド塔など)の設備は付帯しない場合がある。また、後述するように、イオン交換樹脂塔7の下流に製品塔を設けてもよい。
第1の酢酸の製造方法では、金属触媒及びヨウ化メチルを含む触媒系、並びに、酢酸、酢酸メチル、水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続式で反応させるカルボニル化反応工程を含む酢酸の製造方法であって、前記カルボニル化反応工程において、反応槽を2以上の並列で使用する。これにより酢酸の生産量の変化(例えば減産や増産)に応じて、稼働反応槽数の増減により、酢酸の生産量を増減させることができる。なお、本明細書において「運転する」とは「稼働させる」ことを意味する。
図1に示すように、反応槽1A,1Bを並列で使用する場合、酢酸の生産量を通常の1/2量とする場合には、プロセス全体で原料メタノールと原料一酸化炭素の仕込量を各々1/2量とし、反応槽1A,1Bのいずれか1つを運転(ハーフロード)すればよい。このように1槽運転に切り替えることにより、仕込量が半分になっても反応組成は、2槽運転時(フルロード時)と同じであるため、効率が良い運転が可能となる。なお、反応槽を2以上使用する場合でも、直列に接続されていると、酢酸の生産量に応じて稼働反応槽数を増減させることができないため本発明の効果は得られない。また、本発明のカルボニル化反応は連続式である必要がある。バッチ式やセミバッチ式では、都度原料や触媒系の量を自在に変更できるため、あえて反応槽を2以上の並列で使用する必要性がないためである。
反応槽1A,1Bは、反応工程を行うためのユニットである。この反応工程は、下記の化学式(1)で示される反応(メタノールのカルボニル化反応)によって酢酸を連続的に生成させるための工程である。酢酸製造装置の定常稼働状態において、反応槽1A,1B内には、例えば撹拌機によって撹拌されている反応混合物が存在する。反応混合物は、原料であるメタノール及び一酸化炭素と、金属触媒と、助触媒と、水と、製造目的である酢酸と、各種の副生成物とを含み、液相と気相とが平衡状態にある。
CH3OH + CO → CH3COOH (1)
反応混合物中の原料は、液体状のメタノール及び気体状の一酸化炭素である。メタノールは、メタノール貯留部(図示略)からライン11を通じて反応槽1A,1Bに所定の流量で連続的に供給される。
一酸化炭素は、一酸化炭素貯留部(図示略)からライン12を通じて反応槽1A,1Bに所定の流量で連続的に供給される。一酸化炭素は必ずしも純粋な一酸化炭素でなくてもよく、例えば窒素、水素、二酸化炭素、酸素等の他のガスが少量(例えば5質量%以下、好ましくは1質量%以下)含まれていてもよい。
反応混合物中の金属触媒は、メタノールのカルボニル化反応を促進するためのものであり、例えばロジウム触媒やイリジウム触媒を使用することができる。ロジウム触媒としては、例えば、化学式[Rh(CO)22]-で表されるロジウム錯体を使用することができる。イリジウム触媒としては、例えば化学式[Ir(CO)22]-で表されるイリジウム錯体を使用することができる。金属触媒としては金属錯体触媒が好ましい。反応混合物中の触媒の濃度(金属換算)は、反応混合物の液相全体に対して、例えば100〜10000質量ppm、好ましくは200〜5000質量ppm、さらに好ましくは400〜2000質量ppmである。
助触媒は、上述の触媒の作用を補助するためのヨウ化物であり、例えば、ヨウ化メチルやイオン性ヨウ化物が使用される。ヨウ化メチルは、上述の触媒の触媒作用を促進する作用を示し得る。ヨウ化メチルの濃度は、反応混合物の液相全体に対して例えば1〜20質量%である。イオン性ヨウ化物は、反応液中でヨウ化物イオンを生じさせるヨウ化物(特に、イオン性金属ヨウ化物)であり、上述の触媒を安定化させる作用や、副反応を抑制する作用を示し得る。イオン性ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどのアルカリ金属ヨウ化物などが挙げられる。反応混合物中のイオン性ヨウ化物の濃度は、反応混合物の液相全体に対して、例えば1〜25質量%であり、好ましくは5〜20質量%である。また、例えばイリジウム触媒などを用いる場合は、助触媒として、ルテニウム化合物やオスミウム化合物を用いることもできる。これらの化合物の使用量は総和で、例えばイリジウム1モル(金属換算)に対して、0.1〜30モル(金属換算)、好ましくは0.5〜15モル(金属換算)である。
反応混合物中の水は、メタノールのカルボニル化反応の反応機構上、酢酸を生じさせるのに必要な成分であり、また、反応系の水溶性成分の可溶化のためにも必要な成分である。反応混合物中の水の濃度は、反応混合物の液相全体に対して、例えば0.1〜15質量%であり、好ましくは0.8〜10質量%、さらに好ましくは1〜6質量%、特に好ましくは1.5〜4質量%である。水濃度は、酢酸の精製過程での水の除去に要するエネルギーを抑制して酢酸製造の効率化を進めるうえでは15質量%以下が好ましい。水濃度を制御するために、反応槽1A,1Bに対して所定流量の水を連続的に供給してもよい。
反応混合物中の酢酸は、酢酸製造装置の稼働前に反応槽1A,1B内に予め仕込まれた酢酸、及び、メタノールのカルボニル化反応の主生成物として生じる酢酸を含む。このような酢酸は、反応系では溶媒として機能し得る。反応混合物中の酢酸の濃度は、反応混合物の液相全体に対して、例えば50〜90質量%であり、好ましくは60〜80質量%である。
反応混合物に含まれる主な副生成物としては、例えば酢酸メチルが挙げられる。この酢酸メチルは、酢酸とメタノールとの反応によって生じ得る。反応混合物中の酢酸メチルの濃度は、反応混合物の液相全体に対して、例えば0.1〜30質量%であり、好ましくは1〜10質量%である。反応混合物に含まれる副生成物としては、ヨウ化水素も挙げられる。このヨウ化水素は、上述のような触媒や助触媒が使用される場合、メタノールのカルボニル化反応の反応機構上、不可避的に生じることとなる。反応混合物中のヨウ化水素の濃度は、反応混合物の液相全体に対して、例えば0.01〜2質量%である。
また、副生成物としては、例えば、水素、メタン、二酸化炭素、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、酢酸ブチル、ジメチルエーテル、アルカン類、ギ酸及びプロピオン酸、並びに、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ヘキシル及びヨウ化デシルなどのヨウ化アルキル等が挙げられる。
また、反応混合物には、装置の腐食により生じる鉄、ニッケル、クロム、マンガン、モリブデンなどの金属[腐食金属(腐食性金属ともいう)]、及びその他の金属としてコバルトや亜鉛、銅などが含まれ得る。上記腐食金属とその他の金属とを併せて「腐食金属等」と称する場合がある。
以上のような反応混合物が存在する反応槽1A,1B内において、反応温度は例えば170℃以上(例えば171℃以上)であり、好ましくは175℃以上(例えば176℃)であり、より好ましくは180℃以上(例えば181℃以上)であり、さらに好ましくは182℃以上(例えば183℃以上)であり、特に好ましくは184℃以上(例えば185℃以上)であり、なかんずく186℃以上(例えば187℃以上)である。反応温度が170℃以上であることにより、後続のフラッシュ工程で酢酸を十分に蒸発させることができる。なお、反応温度が高すぎると(例えば250℃超)、蒸留塔への蒸気流の飛沫同伴が増加して、触媒や助触媒のロスに繋がるため好ましくない。
また全体圧力としての反応圧力は例えば1.5〜5MPa(例えば2.0〜3.5MPa)(絶対圧)に設定され、一酸化炭素分圧は、例えば0.2〜2.5MPa(例えば0.4〜1.8MPa(絶対圧)、好ましくは0.6〜1.6MPa(絶対圧)、さらに好ましくは0.9〜1.4MPa(絶対圧)に設定される。
装置稼働時の反応槽1A,1B内の気相部の蒸気には、例えば、一酸化炭素、水素、メタン、二酸化炭素、窒素、酸素、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、ギ酸及びプロピオン酸などが含まれる。水素は原料として用いられる一酸化炭素中に含まれているほか、反応槽1A,1B中で起きるシフト反応(CO + H2O → H2 + CO2)により生成する。反応槽1A,1Bにおける水素分圧は、例えば0.001MPa(絶対圧)以上[例えば0.005MPa以上]、好ましくは0.01MPa(絶対圧)以上[例えば0.015MPa以上]、より好ましくは0.02MPa(絶対圧)以上、さらに好ましくは0.04MPa(絶対圧)以上、特に好ましくは0.06MPa(絶対圧)以上[例えば0.07MPa(絶対圧)以上]である。なお、反応槽の水素分圧の上限は、例えば0.5MPa(絶対圧)[特に0.2MPa(絶対圧)]である。反応槽の水素分圧を上げすぎると、アセトアルデヒド生成量の増加、アルドール縮合によるクロトンアルデヒドの増加を招き、逆に少なすぎると、クロトンアルデヒド→ブタノールの反応がほとんど起こらなくなるが、水素の微小な変動により反応速度が大きく変動し、運転が不安定になる。反応槽1A,1B内の気相部の蒸気は、反応槽1A,1B内からライン13を通じて抜き取ることが可能である。蒸気の抜き取り量の調節によって、反応槽1A,1B内の圧力を制御することが可能であり、例えば、反応槽1A,1B内の圧力は一定に維持される。反応槽1A,1B内から抜き取られた蒸気は、コンデンサ1aへと導入される。
本発明の酢酸の製造方法では、稼働反応槽の数の増減を伴う運転期間中において、稼働反応槽における反応温度が170℃以上であり、且つ、稼働反応槽数によらず、下記(i)〜(vii)の少なくとも1つの条件を満たしていてもよい。
(i)稼働反応槽中の金属触媒濃度及びヨウ化メチル濃度の変動が±50%以内である
(ii)前記触媒系がさらにヨウ化物塩を含み、稼働反応槽中のヨウ化物塩濃度の変動が±50%以内である
(iii)稼働反応槽における反応温度の変動が±20℃以内である
(iv)稼働反応槽中の酢酸濃度、及び/又は、酢酸メチル濃度、及び/又は、水濃度の変動が±50%以内である
(v)稼働反応槽における水素分圧の変動が±50%以内である
(vi)稼働反応槽における反応速度の変動が±50%以内である
(vii)稼働反応槽における酢酸の空時収率の変動が±40%以内である
前記の変動を観測する期間は、例えば5日間、10日間、30日間、半年間又は1年間である。
また、稼働反応槽数の増減切り替え前後において、前記(i)〜(vii)の少なくとも1つの条件を満たしていてもよい。
なお、本明細書において、稼働反応槽数の増減切り替え前後における変動とは、増減切り替え前の所定期間(例えば5日間、10日間、30日間、半年間又は1年間)の平均値に対する、増減切り替え後の所定期間(例えば5日間、10日間、30日間、半年間又は1年間)の平均値の変動をいう。
前記(i)において、稼働反応槽中の金属触媒濃度の変動は、例えば±50%以内、好ましくは±40%以内、より好ましくは±30%以内、さらに好ましくは±20%以内、特に好ましくは±10%以内、なかんずく±5%以内である。なお、金属触媒濃度の変動の下限値は±0%であるが、通常±0.001%以上である。また、稼働反応槽中のヨウ化メチル濃度の変動は、例えば、例えば±50%以内、好ましくは±40%以内、より好ましくは±30%以内、さらに好ましくは±20%以内、特に好ましくは±10%以内、なかんずく±5%以内である。なお、ヨウ化メチル濃度の変動の下限値は±0%であるが、通常±0.001%以上である。稼働反応槽数によらず、稼働反応槽中の金属触媒濃度やヨウ化メチル濃度の変動が±50%以内に抑えられていることにより、工業的に効率的な反応速度の維持に寄与する。
例えば、稼働反応槽数の増減切り替え前後の、稼働反応槽中の金属触媒濃度の変動が±50%以内とは、図1では、反応槽1A,1Bの両者とも稼働させた後に、反応槽1Aのみを稼働させる場合が挙げられる。この場合、稼働反応槽数切り替え前の反応槽1Aの金属触媒濃度、及び反応槽1Bの金属触媒濃度に対する稼働反応槽数切り替え後の反応槽1Aの金属触媒濃度の変動が±50%以内であることを意味する。なお、稼働反応槽数切り替え前の反応槽1Aの金属触媒濃度と1Bの金属触媒濃度はほぼ同じである。また、稼働反応槽数の増減切り替え前後の、稼働反応槽中のヨウ化メチル濃度の変動も同様に考えられる。
前記(ii)において、前記触媒系がさらにヨウ化物塩を含む場合、稼働反応槽中のヨウ化物塩濃度の変動は、例えば±50%以内、好ましくは±40%以内、より好ましくは±30%以内、さらに好ましくは±20%以内、特に好ましくは±10%以内、なかんずく±5%以内である。なお、ヨウ化物塩濃度の変動の下限値は±0%であるが、通常±0.001%以上である。稼働反応槽数によらず、稼働反応槽におけるヨウ化物塩濃度の変動が±50%以内に抑えられていることにより、工業的に効率的な反応速度の維持に寄与する。また、稼働反応槽数の増減切り替え前後の、稼働反応槽中のヨウ化物塩濃度の変動が±50%以内という意味は、上記金属触媒濃度の例と同様である。
前記(iii)において、稼働反応槽における反応温度の変動は、例えば±20℃以内、好ましくは±15℃以内、より好ましくは±10℃以内、さらに好ましくは±8℃以内、特に好ましくは±5℃以内、なかんずく±3℃以内である。なお、反応温度の変動の下限値は±0℃であるが、通常±0.001℃以上となる。稼働反応槽数によらず、稼働反応槽における反応温度の変動が±20℃以内に抑えられていることにより、工業的に効率的な反応速度の維持に寄与する。また、稼働反応槽数の増減切り替え前後の、稼働反応槽における反応温度の変動が±20℃以内という意味は、上記金属触媒濃度の例と同様である。
前記(iv)において、稼働反応槽中の酢酸濃度の変動は、例えば±50%以内、好ましくは±40%以内、より好ましくは±30%以内、さらに好ましくは±20%以内、特に好ましくは±10%以内、なかんずく±5%以内である。なお、酢酸濃度の変動の下限値は±0%であるが、通常±0.001%以上である。また、稼働反応槽中の酢酸メチル濃度の変動は、例えば±50%以内、好ましくは±40%以内、より好ましくは±30%以内、さらに好ましくは±20%以内、特に好ましくは±10%以内、なかんずく±5%以内である。なお、酢酸メチル濃度の変動の下限値は±0%であるが、通常±0.001%以上である。また、稼働反応槽中の水濃度の変動は、例えば±50%以内、好ましくは±40%以内、より好ましくは±30%以内、さらに好ましくは±20%以内、特に好ましくは±10%以内、なかんずく±5%以内である。なお、水濃度の変動の下限値は±0%であるが、通常±0.001%以上である。稼働反応槽数によらず、稼働反応槽中の酢酸濃度、酢酸メチル濃度、及び水濃度の変動が±50%以内に抑えられていることにより、工業的に効率的な反応速度の維持に寄与する。また、稼働反応槽数の増減切り替え前後の、稼働反応槽中の酢酸濃度、酢酸メチル濃度、及び水濃度の変動が±50%以内という意味は、上記金属触媒濃度の例と同様である。
前記(v)において、稼働反応槽における水素分圧の変動は、例えば±50%以内、好ましくは±40%以内、より好ましくは±30%以内、さらに好ましくは±20%以内、特に好ましくは±10%以内、なかんずく±5%以内である。なお、水素分圧の変動の下限値は±0%であるが、通常±0.001%以上である。稼働反応槽数によらず、稼働反応槽の水素分圧の変動が±50%以内に抑えられていることにより、工業的に効率的な反応速度の維持に寄与する。一般に反応槽の水素分圧を上げすぎると、アセトアルデヒド生成量の増加、アルドール縮合によるクロトンアルデヒドの増加を招き、逆に少なすぎると、クロトンアルデヒド→ブタノールの反応がほとんど起こらなくなるが、水素の微小な変動により反応速度が大きく変動し、運転が不安定になる。本発明の酢酸の製造方法によれば、水素分圧の変動を抑え、一定範囲に維持することができるので安定運転に寄与するというメリットがある。また、稼働反応槽数の増減切り替え前後の、稼働反応槽における水素分圧の変動が±50%以内という意味は、上記金属触媒濃度の例と同様である。
前記(vi)において、稼働反応槽における反応速度の変動は、例えば±50%以内、好ましくは±40%以内、より好ましくは±30%以内、さらに好ましくは±20%以内、特に好ましくは±10%以内、なかんずく±5%以内である。なお、反応速度の変動の下限値は±0%であるが、通常±0.001%以上である。一般に反応速度は、反応温度、触媒濃度(金属触媒濃度、ヨウ化メチル濃度、など)、一酸化炭素濃度(又は一酸化炭素の分圧)、水素分圧、酢酸メチル、水などを適宜選択することにより調整できるが、本発明では、稼働反応槽数によらずこれらのパラメータが一定範囲に維持され、大幅な変動を抑えることができるメリットがある。また、稼働反応槽数の増減切り替え前後の、稼働反応槽における反応速度の変動が±50%以内という意味は、上記金属触媒濃度の例と同様である。
前記(vii)において、稼働反応槽における酢酸の空時収率(酢酸の生成速度とも称される)の変動は、例えば±40%以内、±35%以内、±30%以内、±25%以内、20%以内、好ましくは±15%以内、より好ましくは±10%以内、さらに好ましくは±8%以内、特に好ましくは±5%以内、なかんずく±3%以内である。なお、酢酸の空時収率の変動の下限値は±0%であるが、通常±0.001%以上である。また、稼働反応槽数の増減切り替え前後の、稼働反応槽における酢酸の空時収率の変動が±40%以内という意味は、上記金属触媒濃度の例と同様である。
なお、反応速度と空時収率は同等であるため、前記(vi)における稼働反応槽における反応速度の変動と、前記(vii)における稼働反応槽における酢酸の空時収率の変動は、通常同じ値(変動率)を示すことになる。
本発明の製造方法では、前記(i)〜(vii)の少なくとも1つの条件を満たしていてもよいが、上記条件のうち2以上を同時に満たしていてもよい。同時に満たすことが好ましい2以上の条件の組み合わせとしては、(i)と(ii)、(i)と(iii)、(i)と(iv)、(i)と(v)、(i)と(vi)、(i)と(vii)、(ii)と(iii)、(ii)と(iv)、(ii)と(v)、(ii)と(vi)、(ii)と(vii)、(iii)と(iv)、(iii)と(v)、(iii)と(vi)、(iii)と(vii)、(iv)と(v)、(iv)と(vi)、(iv)と(vii)、(v)と(vi)、(v)と(vii)、(vi)と(vii)、(i)と(ii)と(iii)、(i)と(ii)と(iv)、(i)と(ii)と(v)、(i)と(ii)と(vi)、(i)と(ii)と(vii)、(i)と(iii)と(iv)、(i)と(iii)と(v)、(i)と(iii)と(vi)、(i)と(iii)と(vii)、(i)と(iv)と(v)、(i)と(iv)と(vi)、(i)と(iv)と(vii)、(i)と(v)と(vi)、(i)と(v)と(vii)、(ii)と(iii)と(iv)、(ii)と(iii)と(v)、(ii)と(iii)と(vi)、(ii)と(iii)と(vii)、(ii)と(iv)と(v)、(ii)と(iv)と(vi)、(ii)と(iv)と(vii)、(iii)と(iv)と(v)、(iii)と(iv)と(vi)、(iii)と(iv)と(vii)、(i)と(ii)と(iii)と(iv)、(i)と(ii)と(iii)と(v)、(i)と(ii)と(iii)と(vi)、(i)と(ii)と(iii)と(vii)、(i)と(iii)と(iv)と(v)と(vi)、
(ii)と(iii)と(iv)と(v)と(vi)、及び(i)と(ii)と(iii)と(iv)と(v)と(vi)と(vii)、の組み合わせが挙げられる。なかでも、少なくとも(i)、(ii)及び(iii)を同時に満たすこと、少なくとも(i)、(ii)、(iii)及び(iv)を同時に満たすこと、あるいは、(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、(vii)の全てを同時に満たすことが特に好ましい。
図1に示すように、反応槽1A,1Bを並列で使用する場合、酢酸の生産量を通常の1/2量とする場合には、例えば、プロセス全体で原料メタノールと原料一酸化炭素の仕込量を各々1/2量とし、反応槽1A,1Bのいずれか1つのみを運転(ハーフロード)する。このように1槽運転に切り替える、すなわち稼働反応槽数の減少により、仕込量が半分になっても反応槽内の反応混合物の組成は、2槽運転(フルロード)時とほぼ同じとなり、変動を抑えることができる。また各反応槽の水素分圧、反応温度、反応速度及び空時収率が、一定範囲に維持され、大幅な変動が抑えられるのも同様の理由からである。例えば、蒸発槽の液面調整(すなわち液量を増やす)によって、低濃度の金属触媒の溶液をリサイクルして、反応槽中の触媒濃度を低くする必要が無いメリットがある。
第2の酢酸の製造方法では、金属触媒及びヨウ化メチルを含む触媒系、並びに、酢酸、酢酸メチル、水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続式で反応させるカルボニル化反応工程を含む酢酸の製造方法であって、
酢酸の生産量を30〜90%に減産するに際し、前記カルボニル化反応工程における酢酸の空時収率の変動を±40%以内に維持する。
また、第2の酢酸の製造方法では、反応槽を2以上の並列で使用し、稼働反応槽数を減らしてもよい。
例えば、並列に置かれた2以上の反応槽のうち稼働反応槽数の増減により、酢酸の生産量を30〜90%(例えば、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%)に減産する場合であっても、フルロード時に近似した一定範囲の空時収率を維持することができる。空時収率の変動は、例えば±40%以内、±35%以内、±30%以内、±25%以内、好ましくは±15%以内、より好ましくは±10%以内、さらに好ましくは±8%以内、特に好ましくは±5%以内、なかんずく±3%以内である。なお、空時収率の変動の下限値は±0%であるが、通常0.001%以上である。なお反応系における酢酸の空時収率は、例えば、5〜50mol/L・h、好ましくは8〜40mol/L・h、さらに好ましくは10〜30mol/L・h程度であってもよい。
コンデンサ1aは、反応槽1A,1Bからの蒸気を、冷却して部分的に凝縮させることによって凝縮分とガス分とに分ける。凝縮分は、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、ギ酸及びプロピオン酸などを含み、コンデンサ1aからライン14を通じて反応槽1A,1Bへと導入され、リサイクルされる。ガス分は、例えば、一酸化炭素、水素、メタン、二酸化炭素、窒素、酸素、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド及びギ酸などを含み、コンデンサ1aからライン15を通じてスクラバーシステム8へと供給される。スクラバーシステム8では、コンデンサ1aからのガス分から有用成分(例えばヨウ化メチル、水、酢酸メチル、酢酸など)が分離回収される。この分離回収には、本実施形態では、ガス分中の有用成分を捕集するための吸収液を使用して行う湿式法が利用される。吸収液としては、少なくとも酢酸及び/又はメタノールを含む吸収溶媒が好ましい。吸収液には酢酸メチルが含まれていてもよい。例えば、吸収液として後述の蒸留塔6からの蒸気の凝縮分を使用できる。分離回収には、圧力変動吸着法を利用してもよい。分離回収された有用成分(例えばヨウ化メチルなど)は、スクラバーシステム8からリサイクルライン48を通じて反応槽1A,1Bへと導入され、リサイクルされる。有用成分を捕集した後のガスはライン49を通じて廃棄される。なお、ライン49から排出されるガスは、後述する蒸発槽2の底部あるいは残液流リサイクルライン18,19へ導入するCO源として利用することができる。スクラバーシステム8での処理及びその後の反応槽1A,1Bへのリサイクル及び廃棄については、他のコンデンサからスクラバーシステム8へと供給される後記のガス分についても同様である。本発明の製造方法においては、プロセスからのオフガスを、少なくとも酢酸を含む吸収溶媒で吸収処理して、一酸化炭素に富むストリームと酢酸に富むストリームとを分離するスクラバー工程を有することが好ましい。
装置稼働時の反応槽1A,1B内では、上述のように、酢酸が連続的に生成する。そのような酢酸を含む反応混合物が、連続的に、反応槽1A,1B内から所定の流量で抜き取られてライン16を通じて次の蒸発槽2へと導入される。
蒸発槽2は、蒸発工程(フラッシュ工程)を行うためのユニットである。この蒸発工程は、ライン16(反応混合物供給ライン)を通じて蒸発槽2に連続的に導入される反応混合物を、部分的に蒸発させることによって蒸気流(揮発相)と残液流(低揮発相)とに分けるための工程である。反応混合物を加熱することなく圧力を減じることによって蒸発を生じさせてもよいし、反応混合物を加熱しつつ圧力を減じることによって蒸発を生じさせてもよい。蒸発工程において、蒸気流の温度は例えば100〜260℃、好ましくは120〜200℃であり、残液流の温度は例えば80〜200℃、好ましくは100〜180℃であり、槽内圧力は例えば50〜1000kPa(絶対圧)である。また、蒸発工程にて分離される蒸気流及び残液流の割合に関しては、質量比で、例えば10/90〜50/50(蒸気流/残液流)である。
本工程で生じる蒸気は、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、酢酸ブチル、ギ酸及びプロピオン酸、並びに、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ヘキシル及びヨウ化デシルなどのヨウ化アルキルなどを含み、蒸発槽2内からライン17(蒸気流排出ライン)に連続的に抜き取られる。蒸発槽2内から抜き取られた蒸気流の一部はコンデンサ2aへと連続的に導入され、当該蒸気流の他の一部はライン21を通じて次の蒸留塔3へと連続的に導入される。前記蒸気流の酢酸濃度は、例えば40〜85質量%(好ましくは50〜85質量%)、さらに好ましくは50〜75質量%(例えば55〜75質量%)であり、ヨウ化メチル濃度は、例えば2〜50質量%(好ましくは5〜30質量%)、水濃度は、例えば0.2〜20質量%(好ましくは1〜15質量%)、酢酸メチル濃度は、例えば0.2〜50質量%(好ましくは2〜30質量%)である。
本工程で生ずる残液流は、反応混合物に含まれていた触媒及び助触媒(ヨウ化メチル、ヨウ化リチウムなど)や、本工程では揮発せずに残存する水、酢酸メチル、酢酸、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、酢酸ブチル、ギ酸及びプロピオン酸などを含み、ポンプ57を用い、連続的に蒸発槽2からライン18を通じて熱交換器2bへと導入される。熱交換器2bは、蒸発槽2からの残液流を冷却する。降温した残液流は、連続的に熱交換器2bからライン19を通じて反応槽1A,1Bへと導入され、リサイクルされる。なお、ライン18とライン19とを併せて残液流リサイクルラインと称する。前記残液流の酢酸濃度は、例えば55〜90質量%、好ましくは60〜85質量%である。
蒸発槽2の底部及び/又は残液流リサイクルライン(ライン18及び/又はライン19)には、一酸化炭素含有ガスを導入するための一酸化炭素含有ガス導入ライン54を接続することが好ましい。蒸発槽2の下部に貯まる残液や、残液流リサイクルライン18,19(特にライン18)を通過する残液流に一酸化炭素を導入することにより、残液流中の一酸化炭素溶存量が増大して触媒の安定性が増し、触媒の沈降、蓄積を防止できる。導入する一酸化炭素含有ガス中の一酸化炭素の含有量は、例えば10質量%以上、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。
第1の酢酸の製造方法では、前記カルボニル化工程に加え、前記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸発槽において蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程を有しており、接続された反応槽と蒸発槽の組み合わせを2以上の並列で使用してもよい。
反応槽を2以上の並列で使用し、接続する蒸発槽を1とした場合、個々の反応槽から導入されるプロセス流の圧力や流量等の変動に伴って、蒸発槽の運転が不安定になる場合がある。接続された反応槽と蒸発槽の組み合わせを2以上の並列で使用することにより、一層運転が安定化する。なお、本明細書において、「プロセス流」とは、酢酸製造装置における、反応、蒸発、蒸留、冷却、凝縮、分液、貯留、吸収などのプロセス単位操作を行う際の工程、又はプロセス単位操作を行うための装置若しくは設備内における液相又は気相を意味する。例えば、配管、反応槽、蒸発槽、蒸留塔内の液相又は気相が挙げられる。
また、第1の酢酸の製造方法は、前記カルボニル化工程に加え、前記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸発槽において蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程と、
前記蒸気流を蒸留塔による蒸留に付して、ヨウ化メチル及びアセトアルデヒドから選択された少なくとも一種の低沸成分に富むオーバーヘッド流と、酢酸に富む酢酸流とに分離するとともに、前記オーバーヘッド流を凝縮させ、デカンタで分液させて水相と有機相とを得る脱低沸工程を有しており、接続された反応槽と蒸発槽と蒸留塔の組み合わせを2以上の並列で使用してもよい。脱低沸工程(第1蒸留工程)を行う脱低沸塔(第1蒸留塔)に伝播又は波及するプロセス流の圧力や流量等の負荷変動に極力対応するためである。
これにより、いっそう運転が安定化する。なお以降の工程(例えば、脱水工程(第2蒸留工程)、脱高沸工程(第3蒸留工程)、脱アルデヒド工程、吸着除去工程、吸収工程等)に用いる塔(設備)は、必ずしも脱低沸塔と組み合わせた2以上の並列で使用する必要はない。以降の工程においては、酢酸の精製が進んでおり、プロセス条件の変動、不純物の生成量の変動等による不具合は大きくないためである。
また、第1の酢酸の製造方法は、前記カルボニル化工程に加えて、前記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸発槽において蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程を有しており、並列に置かれた反応槽の全液量100容量部に対し、蒸発槽の液量(並列に置かれている場合はその全液量)が1〜100容量部であってもよい。
好ましい態様において、並列に置かれた反応槽の全液量100容量部に対し、蒸発槽の液量(並列に置かれている場合はその全液量)は、例えば1〜100容量部であってもよく、好ましくは1〜70容量部、より好ましくは1〜50容量部、さらに好ましくは1〜30容量部、特に好ましくは1〜20容量部、なかんずく1〜10容量部である。蒸発槽の気相中の一酸化炭素分圧は極僅かであり、液中の一酸化炭素溶存量は極僅かであるため、蒸発槽での反応は進まないため、容量は液面変動が大きくない程度に僅かでよい。蒸発槽液中での低い一酸化炭素濃度に起因する触媒の沈降は、液量が少ないほど低く抑えられるため、むしろ少量の方がメリットが大きいためである。
コンデンサ2aは、蒸発槽2からの蒸気流を、冷却して部分的に凝縮させることによって凝縮分とガス分とに分ける。凝縮分は、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、酢酸ブチル、ギ酸及びプロピオン酸などを含み、コンデンサ2aからライン22,23を通じて反応槽1A,1Bへと導入され、リサイクルされる。ガス分は、例えば、一酸化炭素、水素、メタン、二酸化炭素、窒素、酸素、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド及びギ酸などを含み、コンデンサ2aからライン20,15を通じてスクラバーシステム8へと供給される。上述の反応工程での酢酸の生成反応は発熱反応であるところ、反応混合物に蓄積する熱の一部は、蒸発工程(フラッシュ工程)において、反応混合物から生じた蒸気に移行する。この蒸気のコンデンサ2aでの冷却によって生じた凝縮分が反応槽1A,1Bへとリサイクルされる。すなわち、この酢酸製造装置においては、メタノールのカルボニル化反応で生じる熱がコンデンサ2aにて効率よく除去されることとなる。
蒸留塔3は、第1蒸留工程を行うためのユニットであり、本実施形態ではいわゆる脱低沸塔に位置付けられる。第1蒸留工程は、蒸留塔3に連続的に導入される蒸気流を蒸留処理して低沸成分を分離除去する工程である。より具体的には、第1蒸留工程では、前記蒸気流を蒸留して、ヨウ化メチル及びアセトアルデヒドから選択された少なくとも一種の低沸成分に富むオーバーヘッド流と、酢酸に富む酢酸流とに分離する。蒸留塔3は、例えば、棚段塔及び充填塔などの精留塔よりなる。蒸留塔3として棚段塔を採用する場合、その理論段は例えば5〜50段であり、還流比は理論段数に応じて例えば0.5〜3000である。蒸留塔3の内部において、塔頂圧力は例えば80〜160kPa(ゲージ圧)に設定され、塔底圧力は、塔頂圧力より高く、例えば85〜180kPa(ゲージ圧)に設定される。蒸留塔3の内部において、塔頂温度は、例えば、設定塔頂圧力での酢酸の沸点より低い温度であって90〜130℃に設定され、塔底温度は、例えば、設定塔底圧力での酢酸の沸点以上の温度であって120〜160℃に設定される。
蒸留塔3に対しては、蒸発槽2からの蒸気流がライン21を通じて連続的に導入され、蒸留塔3の塔頂部からは、オーバーヘッド流としての蒸気がライン24に連続的に抜き取られる。蒸留塔3の塔底部からは、缶出液がライン25に連続的に抜き取られる。3bはリボイラーである。蒸留塔3における塔頂部と塔底部との間の高さ位置からは、側流としての酢酸流(第1酢酸流;液体)がライン27より連続的に抜き取られる。
蒸留塔3の塔頂部から抜き取られる蒸気は、酢酸よりも沸点の低い成分(低沸点成分)を蒸留塔3からの上記缶出液及び側流と比較して多く含み、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド及びギ酸などを含む。この蒸気には酢酸も含まれる。このような蒸気は、ライン24を通じてコンデンサ3aへと連続的に導入される。
コンデンサ3aは、蒸留塔3からの蒸気を、冷却して部分的に凝縮させることによって凝縮分とガス分とに分ける。凝縮分は、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド及びギ酸などを含み、コンデンサ3aからライン28を通じてデカンタ4へと連続的に導入される。デカンタ4に導入された凝縮分は水相(上相)と有機相(ヨウ化メチル相;下相)とに分液される。水相には、水と、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド及びギ酸などが含まれる。有機相には、例えば、ヨウ化メチルと、例えば、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド及びギ酸などが含まれる。本実施形態では、水相の一部はライン29を通じて蒸留塔3に還流され、水相の他の一部はライン29,30,51を通じてアセトアルデヒド分離除去システム9に導入され、アセトアルデヒドがライン53から系外に分離除去される。アセトアルデヒド分離除去後の残液はライン52,23を通じて反応槽1A,1Bにリサイクルされる。水相のさらに他の一部は、アセトアルデヒド分離除去システム9を経ることなく、ライン29,30,23を通じて反応槽1A,1Bにリサイクルされてもよい。有機相はライン31,23を通じて反応槽1A,1Bに導入されてリサイクルされる。有機相の一部は、必要に応じて、ライン31,50を通じてアセトアルデヒド分離除去システム9に導入してもよい。なお、水相の蒸留塔3への還流に加えて、又はそれに代えて、有機相を蒸留塔3に還流してもよい。
第1の酢酸の製造方法は、また、前記カルボニル化反応工程に加えて、前記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸発槽において蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程と、前記蒸気流を蒸留塔による蒸留に付して、ヨウ化メチル及びアセトアルデヒドから選択された少なくとも一種の低沸成分に富むオーバーヘッド流と、酢酸に富む酢酸流とに分離するとともに、前記オーバーヘッド流を凝縮させ、デカンタで分液させて水相と有機相とを得る脱低沸工程を有しており、並列に置かれた反応槽の全液量100容量部に対し、前記デカンタの液量(並列に置かれている場合はその全液量)が1〜100容量部であってもよい。
好ましい態様において、並列に置かれた反応槽の全液量100容量部に対し、前記デカンタの液量(並列に置かれている場合はその全液量)は、例えば1〜100容量部であってもよく、好ましくは1〜70容量部、より好ましくは1〜50容量部、さらに好ましくは1〜30容量部、特に好ましくは1〜20容量部、なかんずく1〜10容量部である。デカンタの容量は、液面変動を一定値以下に保つ事で塔の安定運転が出来る程度において小さい方が設備費の増加を抑制するため好ましい。ただ、小さい場合、反応槽中のヨウ化メチル濃度を調整する際、デカンタの有機相量を増減できなくなるため、反応速度の調整が制限される。
第1の酢酸の製造方法は、また、前記カルボニル化反応工程に加えて、前記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸発槽において蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程と、
前記蒸気流を蒸留に付して、ヨウ化メチル及びアセトアルデヒドから選択された少なくとも一種の低沸成分に富むオーバーヘッド流と、酢酸に富む酢酸流とに分離するとともに、前記オーバーヘッド流を凝縮させ、デカンタで分液させて水相と有機相とを得る脱低沸工程を有しており、
稼働反応槽の数の増減を伴う運転期間中において、
稼働反応槽における反応温度が170℃以上であり、且つ、稼働反応槽数によらず、下記(viii)〜(x)の少なくとも1つの条件を満たしていてもよい。
(viii)稼動反応槽における液面の変動が±20%以内である
(ix)稼動蒸発槽における液面の変動が±20%以内である
(x)稼動デカンタにおける液面の変動が±20%以内である
前記の変動を観測する期間は、例えば5日間、10日間、30日間、半年間又は1年間である。
また、稼働反応槽数の増減切り替え前後において、前記(viii)〜(x)の少なくとも1つの条件を満たしていてもよい。
なお、本明細書において、稼働反応槽数の増減切り替え前後における変動とは、増減切り替え前の所定期間(例えば5日間、10日間、30日間、半年間又は1年間)の平均値に対する、増減切り替え後の所定期間(例えば5日間、10日間、30日間、半年間又は1年間)の平均値の変動をいう。
例えば、稼働反応槽数の増減切り替え前後の、稼働反応槽における液面の変動が±20%以内とは、図1では、反応槽1A,1Bの両者とも稼働させた後に、反応槽1Aのみを稼働させる場合が挙げられる。この場合、稼働反応槽数切り替え前の反応槽1Aの液面及び反応槽1Bの液面に対する、稼働反応槽数切り替え後の反応槽1Aの液面の変動が±20%以内であることを意味する。なお、稼働反応槽数切り替え前の反応槽1Aの液面と1Bの液面はほぼ同じである。また、稼働反応槽数の増減切り替え前後の、稼働蒸発槽、稼働デカンタの変動も同様に考えられる。
前記(viii)において、稼働反応槽における液面の変動は、例えば±20%以内、好ましくは±15%以内、より好ましくは±10%以内、さらに好ましくは±8%以内、特に好ましくは±5%以内、なかんずく±3%以内である。なお、稼働反応槽における液面の変動の下限値は±0%であるが、通常0.001%以上である。本発明の酢酸の製造方法では、稼働反応槽数によらず、稼働反応槽の液面が大幅に変動することがないため、反応系の金属触媒や助触媒の量は一定に維持され、安定且つ効率的な運転が可能となる。
前記(ix)において、稼働蒸発槽における液面の変動は、例えば±20%以内、好ましくは±15%以内、より好ましくは±10%以内、さらに好ましくは±8%以内、特に好ましくは±5%以内、なかんずく±3%以内である。なお、稼働蒸発槽における液面の変動の下限値は±0%であるが、通常0.001%以上である。本発明の酢酸の製造方法では、稼働反応槽数によらず、稼働蒸発槽の液面が大幅に変動することがないため、安定且つ効率的な運転が可能となる。
前記(x)において、稼働デカンタにおける液面の変動は、例えば±20%以内、好ましくは±15%以内、より好ましくは±10%以内、さらに好ましくは±8%以内、特に好ましくは±5%以内、なかんずく±3%以内である。なお、稼働デカンタにおける液面の変動の下限値は±0%であるが、通常0.001%以上である。本発明の酢酸の製造方法では、稼働反応槽数によらず、稼働デカンタの液面が大幅に変動することがないため、安定且つ効率的な運転が可能となる。なお、本明細書において、稼働デカンタの液面とは、分液された水相(上相)と有機相(ヨウ化メチル相;下相)のうち、有機相の液面を指す。
従来、酢酸の減産時は反応槽、蒸発槽、又はデカンタの液面を上昇させることにより、反応槽内にリサイクルされる金属触媒や助触媒の量を調節していたが、連続式プロセスにおける液面調節の効果はわずかに留まり、反応槽内の触媒濃度は1割程度しか減少できなかった。また設備費の最適化の観点から、反応槽の容量、蒸発槽の容量、ヨウ化メチル貯留槽(例えばデカンタ)の容量は酢酸の計画生産量に合うスケールより1割程度しか大きく設計されない。このため液面調整に頼る手法には限界があり、また連続式プロセスにおいて、不安定運転を招くリスクもある。この点、液面調整に頼らない本発明の酢酸の製造方法は、酢酸の生産量が変化しても、安定且つ効率的な連続運転が可能となる。
第1の酢酸の製造方法では、前記(viii)〜(x)の少なくとも1つの条件を満たしていてもよいが、上記条件のうち2以上を同時に満たしていてもよい。同時に満たすことが好ましい2以上の条件の組み合わせとしては、(viii)と(ix)、(ix)と(x)、(viii)と(x)、及び(viii)と(ix)と(x)の組み合わせが挙げられる。なかでも、少なくとも(viii)と(ix)を同時に満たすこと、少なくとも(ix)と(x)を同時に満たすこと、あるいは、(viii)と(ix)と(x)の全てを同時に満たすことが特に好ましい。
アセトアルデヒド分離除去システム9を用いたアセトアルデヒド分離除去工程では、有機相及び/又は水相に含まれるアセトアルデヒドを公知の方法、例えば、蒸留、抽出又はこれらの組み合わせにより分離除去する。分離されたアセトアルデヒドはライン53を通じて装置外へ排出される。また、有機相及び/又は水相に含まれる有用成分(例えばヨウ化メチルなど)は、ライン52,23を通じて反応槽1A,1Bへとリサイクルされて再利用される。
図2は、並列に接続された2つの反応槽と、2つの蒸発槽を接続した一例を示す概略フロー図である。この例では、反応槽1Aと蒸発槽2A,反応槽1Bと蒸発槽2Bとが並列に接続され、1つの蒸留塔3に接続されている。これ以外は、図1の例と同じである。
図3は、並列に接続された2つの反応槽と、2つの蒸発槽と、2つの蒸留塔を接続した一例を示す概略フロー図である。この例では、反応槽1Aと蒸発槽2Aと蒸留塔3A,反応槽1Bと蒸発槽2Bと蒸留塔3Bが、並列に接続されている。蒸留塔3A,3Bからの蒸気は、コンデンサ3aが冷却して部分的に凝縮させることによって凝縮分とガス分とに分ける。凝縮分は、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド及びギ酸などを含み、コンデンサ3aからライン28を通じてデカンタ4A,4Bへと連続的に導入される。これ以外は、図1の例と同じである。
前記図1において、コンデンサ3aで生じるガス分は、例えば、一酸化炭素、水素、メタン、二酸化炭素、窒素、酸素、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド及びギ酸などを含み、コンデンサ3aからライン32,15を通じてスクラバーシステム8へと供給される。スクラバーシステム8に至ったガス分中のヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド及びギ酸などは、スクラバーシステム8にて吸収液に吸収される。ヨウ化水素は吸収液中のメタノールまたは酢酸メチルとの反応によってヨウ化メチルが生じる。そして、当該ヨウ化メチル等の有用成分を含有する液分がスクラバーシステム8からリサイクルライン48,23を通じて反応槽1A,1Bへとリサイクルされて再利用される。
蒸留塔3の塔底部から抜き取られる缶出液は、酢酸よりも沸点の高い成分(高沸点成分)を蒸留塔3からの上記のオーバーヘッド流及び側流と比較して多く含み、例えば、プロピオン酸、並びに、飛沫同伴の上述の触媒や助触媒を含む。この缶出液には、酢酸、ヨウ化メチル、酢酸メチル、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、酢酸ブチル及び水なども含まれる。本実施形態では、このような缶出液の一部は、ライン25,26を通じて蒸発槽2へと連続的に導入されてリサイクルされ、缶出液の他の一部は、ライン25,23を通じて反応槽1A,1Bへと連続的に導入されてリサイクルされる。
蒸留塔3から側流として連続的に抜き取られる第1酢酸流は、蒸留塔3に連続的に導入される蒸気流よりも酢酸が富化されている。すなわち、第1酢酸流の酢酸濃度は前記蒸気流の酢酸濃度よりも高い。第1酢酸流の酢酸濃度は、例えば90〜99.9質量%、好ましくは93〜99質量%である。また、第1酢酸流は、酢酸に加えて、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、酢酸ブチル、ギ酸及びプロピオン酸、並びに、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ヘキシル及びヨウ化デシルなどのヨウ化アルキル等を含む。第1酢酸流において、ヨウ化メチル濃度は、例えば0.1〜8質量%、好ましくは0.2〜5質量%、水濃度は、例えば0.1〜8質量%、好ましくは0.2〜5質量%、酢酸メチル濃度は、例えば0.1〜8質量%、好ましくは0.2〜5質量%である。
なお、蒸留塔3に対するライン27の連結位置は、蒸留塔3の高さ方向において、図示されているように、蒸留塔3に対するライン21の連結位置より上方であってもよいが、蒸留塔3に対するライン21の連結位置より下方であってもよいし、蒸留塔3に対するライン21の連結位置と同じであってもよい。蒸留塔3からの第1酢酸流は、所定の流量で連続的に、ライン27を通じて次の蒸留塔5へと導入される。なお、蒸留塔3の側流として抜き取られる第1酢酸流や、蒸留塔3の塔底液あるいは蒸留塔3の塔底部の蒸気の凝縮液は、そのまま製品酢酸としてもよく、また、蒸留塔5を経ずに、蒸留塔6に直接連続的に導入することもできる。ライン27の材質蒸留塔5の材質(少なくとも接液、接ガス部の材質)は、ステンレス鋼であってもよいが、ヨウ化水素や酢酸による配管内部の腐食を抑制するため、ニッケル基合金やジルコニウム等の高耐腐食性金属とすることが好ましい。
ライン27を通流する第1酢酸流に、ライン55(水酸化カリウム導入ライン)を通じて、水酸化カリウムを供給ないし添加することができる。水酸化カリウムは、例えば水溶液等の溶液として供給ないし添加できる。第1酢酸流に対する水酸化カリウムの供給ないし添加によって第1酢酸流中のヨウ化水素を減少できる。具体的には、ヨウ化水素は水酸化カリウムと反応してヨウ化カリウムと水が生じる。そのことによって、ヨウ化水素に起因する蒸留塔等の装置の腐食を低減できる。なお、水酸化カリウムは本プロセスにおいてヨウ化水素が存在する適宜な場所に供給ないし添加することができる。なお、プロセス中に添加された水酸化カリウムは酢酸とも反応して酢酸カリウムを生じさせる。
蒸留塔5は、第2蒸留工程を行うためのユニットであり、本実施形態ではいわゆる脱水塔に位置付けられる。第2蒸留工程は、蒸留塔5に連続的に導入される第1酢酸流を蒸留処理して酢酸を更に精製するための工程である。蒸留塔5は、例えば、棚段塔及び充填塔などの精留塔よりなる。蒸留塔5として棚段塔を採用する場合、その理論段は例えば5〜50段であり、還流比は理論段数に応じて例えば0.2〜3000である。第2蒸留工程にある蒸留塔5の内部において、塔頂圧力は例えば150〜250kPa(ゲージ圧)に設定され、塔底圧力は、塔頂圧力より高く、例えば160〜290kPa(ゲージ圧)に設定される。第2蒸留工程にある蒸留塔5の内部において、塔頂温度は、例えば、設定塔頂圧力での水の沸点より高く且つ酢酸の沸点より低い温度であって130〜160℃に設定され、塔底温度は、例えば、設定塔底圧力での酢酸の沸点以上の温度であって150〜175℃に設定される。
蒸留塔5の塔頂部からは、オーバーヘッド流としての蒸気がライン33に連続的に抜き取られる。蒸留塔5の塔底部からは、缶出液がライン34に連続的に抜き取られる。5bはリボイラーである。蒸留塔5における塔頂部と塔底部との間の高さ位置から、側流(液体又は気体)がライン34に連続的に抜き取られてもよい。
蒸留塔5の塔頂部から抜き取られる蒸気は、酢酸よりも沸点の低い成分(低沸点成分)を蒸留塔5からの上記の缶出液と比較して多く含み、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド及びギ酸などを含む。このような蒸気は、ライン33を通じてコンデンサ5aへと連続的に導入される。
コンデンサ5aは、蒸留塔5からの蒸気を、冷却して部分的に凝縮させることによって凝縮分とガス分とに分ける。凝縮分は、例えば水及び酢酸などを含む。凝縮分の一部は、コンデンサ5aからライン35を通じて蒸留塔5へと連続的に還流される。凝縮分の他の一部は、コンデンサ5aからライン35,36,23を通じて反応槽1A,1Bへと連続的に導入され、リサイクルされる。また、コンデンサ5aで生じるガス分は、例えば一酸化炭素、水素、メタン、二酸化炭素、窒素、酸素、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド及びギ酸などを含み、コンデンサ5aからライン37,15を通じてスクラバーシステム8へと供給される。スクラバーシステム8に至ったガス分中のヨウ化水素は、スクラバーシステム8にて吸収液に吸収され、吸収液中のヨウ化水素とメタノールまたは酢酸メチルとの反応によってヨウ化メチルが生じ、そして、当該ヨウ化メチル等の有用成分を含有する液分がスクラバーシステム8からリサイクルライン48,23を通じて反応槽1A,1Bへとリサイクルされて再利用される。
蒸留塔5の塔底部から抜き取られる缶出液(あるいは側流)は、酢酸よりも沸点の高い成分(高沸点成分)を蒸留塔5からの上記のオーバーヘッド流と比較して多く含み、例えば、プロピオン酸、酢酸カリウム(ライン27等に水酸化カリウムを供給した場合)、並びに、飛沫同伴の上述の触媒や助触媒などを含む。この缶出液には酢酸も含まれうる。このような缶出液は、ライン34を通じて、第2酢酸流をなして次の蒸留塔6に連続的に導入されることとなる。
蒸留塔5の塔底部から抜き取られる缶出液あるいは塔の中間位置から抜き取られる側流(第2酢酸流)は、蒸留塔5に連続的に導入される第1酢酸流よりも酢酸が富化されている。すなわち、第2酢酸流の酢酸濃度は第1酢酸流の酢酸濃度よりも高い。第2酢酸流の酢酸濃度は、第1酢酸流の酢酸濃度より高い限りにおいて、例えば99.1〜99.99質量%である。また、第2酢酸流は、上記のように、酢酸に加えて、例えば、プロピオン酸、ヨウ化水素などを含みうる。本実施形態では、側流を抜き取る場合、蒸留塔5からの側流の抜き取り位置は、蒸留塔5の高さ方向において、蒸留塔5への第1酢酸流の導入位置よりも低い。
ライン34を通流する第2酢酸流に、ライン56(水酸化カリウム導入ライン)を通じて、水酸化カリウムを供給ないし添加することができる。水酸化カリウムは、例えば水溶液等の溶液として供給ないし添加できる。第2酢酸流に対する水酸化カリウムの供給ないし添加によって第2酢酸流中のヨウ化水素を減少できる。具体的には、ヨウ化水素は水酸化カリウムと反応してヨウ化カリウムと水が生じる。そのことによって、ヨウ化水素に起因する蒸留塔等の装置の腐食を低減できる。
蒸留塔6は、第3蒸留工程を行うためのユニットであり、本実施形態ではいわゆる脱高沸塔に位置付けられる。第3蒸留工程は、蒸留塔6に連続的に導入される第2酢酸流を精製処理して酢酸を更に精製するための工程である。なお、本実施形態では必ずしも必要な工程ではない。蒸留塔6は、例えば、棚段塔及び充填塔などの精留塔よりなる。蒸留塔6として棚段塔を採用する場合、その理論段は例えば5〜50段であり、還流比は理論段数に応じて例えば0.2〜3000である。第3蒸留工程にある蒸留塔6の内部において、塔頂圧力は例えば−100〜150kPa(ゲージ圧)に設定され、塔底圧力は、塔頂圧力より高く、例えば−90〜180kPa(ゲージ圧)に設定される。第3蒸留工程にある蒸留塔6の内部において、塔頂温度は、例えば、設定塔頂圧力での水の沸点より高く且つ酢酸の沸点より低い温度であって50〜150℃に設定され、塔底温度は、例えば、設定塔底圧力での酢酸の沸点より高い温度であって70〜160℃に設定される。
蒸留塔6の塔頂部からは、オーバーヘッド流としての蒸気がライン38に連続的に抜き取られる。蒸留塔6の塔底部からは、缶出液がライン39に連続的に抜き取られる。6bはリボイラーである。蒸留塔6における塔頂部と塔底部との間の高さ位置からは、側流(液体又は気体)がライン46に連続的に抜き取られる。蒸留塔6の高さ方向において、蒸留塔6に対するライン46の連結位置は、図示されているように、蒸留塔6に対するライン34の連結位置より上方であってもよいが、蒸留塔6に対するライン34の連結位置より下方であってもよいし、蒸留塔6に対するライン34の連結位置と同じであってもよい。
蒸留塔6の塔頂部から抜き取られる蒸気は、酢酸よりも沸点の低い成分(低沸点成分)を蒸留塔6からの上記の缶出液と比較して多く含み、酢酸のほか、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、ジメチルエーテル、メタノール及びギ酸などを含む。このような蒸気は、ライン38を通じてコンデンサ6aへと連続的に導入される。
コンデンサ6aは、蒸留塔6からの蒸気を、冷却して部分的に凝縮させることによって凝縮分とガス分とに分ける。凝縮分は、酢酸のほか、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、ジメチルエーテル、メタノール及びギ酸などを含む。凝縮分の少なくとも一部については、コンデンサ6aからライン40を通じて蒸留塔6へと連続的に還流される。凝縮分の一部(留出分)については、コンデンサ6aからライン40,41,42を通じて、蒸留塔5へと導入される前のライン27中の第1酢酸流へとリサイクルすることが可能である。これと共に或はこれに代えて、凝縮分の一部(留出分)については、コンデンサ6aからライン40,41,43を通じて、蒸留塔3へと導入される前のライン21中の蒸気流へとリサイクルすることが可能である。また、凝縮分の一部(留出分)については、コンデンサ6aからライン40,44,23を通じて、反応槽1A,1Bへリサイクルしてもよい。さらに、コンデンサ6aからの留出分の一部については、前述したように、スクラバーシステム8へと供給して当該システム内で吸収液として使用することが可能である。スクラバーシステム8では、有用分を吸収した後のガス分は装置外に排出され、そして、有用成分を含む液分がスクラバーシステム8からリサイクルライン48,23を通じて反応槽1A,1Bへと導入ないしリサイクルされて再利用される。加えて、コンデンサ6aからの留出分の一部については、装置内で稼働する各種ポンプ(図示略)へと図外のラインを通じて導いて当該ポンプのシール液として使用してもよい。更に加えて、コンデンサ6aからの留出分の一部については、ライン40に付設される抜き取りラインを通じて、定常的に装置外へ抜き取ってもよいし、非定常的に必要時において装置外へ抜き取ってもよい。凝縮分の一部(留出分)が蒸留塔6での蒸留処理系から除かれる場合、その留出分の量(留出量)は、コンデンサ6aで生ずる凝縮液の例えば0.01〜30質量%であり、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.3〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。一方、コンデンサ6aで生じるガス分は、例えば、一酸化炭素、水素、メタン、二酸化炭素、窒素、酸素、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド及びギ酸などを含み、コンデンサ6aからライン45,15を通じてスクラバーシステム8へと供給される。
蒸留塔6の塔底部からライン39を通じて抜き取られる缶出液は、酢酸よりも沸点の高い成分(高沸点成分)を蒸留塔6からの上記のオーバーヘッド流と比較して多く含み、例えばプロピオン酸、酢酸カリウム等の酢酸塩(ライン34等に水酸化カリウム等のアルカリを供給した場合)などを含む。また、蒸留塔6の塔底部からライン39を通じて抜き取られる缶出液は、この酢酸製造装置の構成部材の内壁で生じて遊離した金属などの腐食金属等、及び腐食性ヨウ素に由来するヨウ素と当該腐食金属等との化合物も含む。このような缶出液は、本実施形態では酢酸製造装置外に排出される。
蒸留塔6からライン46に連続的に抜き取られる側流は、第3酢酸流として、次のイオン交換樹脂塔7に連続的に導入されることとなる。この第3酢酸流は、蒸留塔6に連続的に導入される第2酢酸流よりも酢酸が富化されている。すなわち、第3酢酸流の酢酸濃度は第2酢酸流の酢酸濃度よりも高い。第3酢酸流の酢酸濃度は、第2酢酸流の酢酸濃度より高い限りにおいて、例えば99.8〜99.999質量%である。本実施形態では、蒸留塔6からの側流の抜き取り位置は、蒸留塔6の高さ方向において、蒸留塔6への第2酢酸流の導入位置よりも高い。他の実施形態では、蒸留塔6からの側流の抜き取り位置は、蒸留塔6の高さ方向において、蒸留塔6への第2酢酸流の導入位置と同じかそれよりも低い。なお、蒸留塔6は、単蒸留器(蒸発器)でも代用可能であり、また、蒸留塔5で不純物除去を十分に行えば、蒸留塔6は省略できる。
イオン交換樹脂塔7は、吸着除去工程を行うための精製ユニットである。この吸着除去工程は、イオン交換樹脂塔7に連続的に導入される第3酢酸流に微量含まれる主にヨウ化アルキル(ヨウ化ヘキシルやヨウ化デシルなど)を吸着除去して酢酸を更に精製するための工程である。イオン交換樹脂塔7においては、ヨウ化アルキルに対する吸着能を有するイオン交換樹脂が塔内に充填されてイオン交換樹脂床をなす。そのようなイオン交換樹脂としては、例えば、交換基たるスルホン酸基、カルボキシル基、ホスホン酸基等における脱離性のプロトンの一部が銀や銅などの金属で置換された陽イオン交換樹脂を挙げることができる。吸着除去工程では、例えばこのようなイオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂塔7の内部を第3酢酸流(液体)が通流し、その通流過程において、第3酢酸流中のヨウ化アルキル等の不純物がイオン交換樹脂に吸着されて第3酢酸流から除去される。吸着除去工程にあるイオン交換樹脂塔7において、内部温度は例えば18〜100℃であり、酢酸流の通液速度[樹脂容積1m3当たりの酢酸処理量(m3/h)]は、例えば3〜15m3/h・m3(樹脂容積)である。
イオン交換樹脂塔7の下端部からライン47へと第4酢酸流が連続的に導出される。第4酢酸流の酢酸濃度は第3酢酸流の酢酸濃度よりも高い。すなわち、第4酢酸流は、イオン交換樹脂塔7に連続的に導入される第3酢酸流よりも酢酸が富化されている。第4酢酸流の酢酸濃度は、第3酢酸流の酢酸濃度より高い限りにおいて例えば99.9〜99.999質量%又はそれ以上である。本製造方法においては、この第4酢酸流を図外の製品タンクに貯留することができる。
この酢酸製造装置においては、イオン交換樹脂塔7からの上記の第4酢酸流を更に精製するための精製ユニットとして、蒸留塔であるいわゆる製品塔ないし仕上塔が設けられてもよい。そのような製品塔が設けられる場合、当該製品塔は、例えば、棚段塔及び充填塔などの精留塔よりなる。製品塔として棚段塔を採用する場合、その理論段は例えば5〜50段であり、還流比は理論段数に応じて例えば0.5〜3000である。精製工程にある製品塔の内部において、塔頂圧力は例えば−195〜150kPa(ゲージ圧)に設定され、塔底圧力は、塔頂圧力より高く、例えば−190〜180kPa(ゲージ圧)に設定される。製品塔の内部において、塔頂温度は、例えば、設定塔頂圧力での水の沸点より高く且つ酢酸の沸点より低い温度であって50〜150℃に設定され、塔底温度は、例えば、設定塔底圧力での酢酸の沸点より高い温度であって70〜160℃に設定される。なお、製品塔ないし仕上塔は、単蒸留器(蒸発器)でも代用可能である。
製品塔を設ける場合、イオン交換樹脂塔7からの第4酢酸流(液体)の全部又は一部が、製品塔に対して連続的に導入される。そのような製品塔の塔頂部からは、微量の低沸点成分(例えば、ヨウ化メチル、水、酢酸メチル、ジメチルエーテル、クロトンアルデヒド、アセトアルデヒド及びギ酸など)を含むオーバーヘッド流としての蒸気が連続的に抜き取られる。この蒸気は、所定のコンデンサにて凝縮分とガス分とに分けられる。凝縮分の一部は製品塔へと連続的に還流され、凝縮分の他の一部は反応槽1A,1Bへとリサイクルされるか、系外に廃棄されるか、あるいはその両方であってもよく、ガス分はスクラバーシステム8へと供給される。製品塔の塔底部からは、微量の高沸点成分を含む缶出液が連続的に抜き取られ、この缶出液は、例えば蒸留塔6へ導入される前のライン34中の第2酢酸流へとリサイクルされる。製品塔における塔頂部と塔底部との間の高さ位置からは、側流(液体)が第5酢酸流として連続的に抜き取られる。製品塔からの側流の抜き取り位置は、製品塔の高さ方向において、例えば、製品塔への第4酢酸流の導入位置よりも低い。第5酢酸流は、製品塔に連続的に導入される第4酢酸流よりも酢酸が富化されている。すなわち、第5酢酸流の酢酸濃度は第4酢酸流の酢酸濃度よりも高い。第5酢酸流の酢酸濃度は、第4酢酸流の酢酸濃度より高い限りにおいて例えば99.9〜99.999質量%又はそれ以上である。この第5酢酸流は、例えば、図外の製品タンクに貯留される。なお、イオン交換樹脂塔7は、蒸留塔6の下流に設置する代わりに(又はそれに加えて)、製品塔の下流に設置し、製品塔出の酢酸流を処理してもよい。
以下に、実施例を例に挙げて説明を行う。本実施例は一試験運転例に基づくものであり実施にあたっての成分組成、運転条件等は極めて具体的な数値を挙げるが、本発明はこれらの数値に拘束されない。また、系内の成分組成は、水素や酸素等の影響を受けて反応し、前記組成はわずかに変動する場合がある。したがって、表に示す実施例の数値は、実施時のある時点での数値を表している。
なお、部、%、ppmはすべて重量基準である。水濃度はカールフィッシャー水分測定法、金属イオン濃度はICP分析(又は原子吸光分析)、その他の成分の濃度はガスクロマトグラフィーにより測定した。
比較例1
連続式のメタノール法酢酸パイロットプラントにおいて、以下の実験を行った(図4参照)。
全圧2.7MPaG(ゲージ圧)で反応槽(容量1部)に、メタノール1重量部と一酸化炭素1重量部を仕込み、表1に示す組成でカルボニル化反応を行なった。反応後、蒸発槽、脱低沸塔、脱水塔の運転を行ない、脱低沸塔と脱水塔の塔頂から低沸物を反応系にリサイクルした。脱水塔缶出液のプロピオン酸濃度を測定したところ、588質量ppm、脱高沸塔蒸気比1で、製品プロピオン酸濃度は160ppmであった。結果を表1に示す。
なお、反応槽のその他の不純物は、ジメチルエーテル、腐食金属、蟻酸などの有機カルボン酸、アルカン、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、ヨウ化エチル等の有機ヨウ化物などであった。
比較例2
メタノールと一酸化炭素の仕込み量を比較例1の半分とし、反応温度、ロジウム触媒濃度、ヨウ化メチル濃度を低下させ、稼働反応槽のみ液面を変動させ、比較例1を100としたとき、比較例2では110とした以外は同様の実験を行なった。その結果、次のフラッシュ工程で酢酸が十分に蒸発できず、運転が不安定となった。結果を表1に示す。
比較例3
メタノールと一酸化炭素の仕込み量を比較例1の半分とし、反応温度を低下させた以外は、同様の実験を行った。その結果、反応温度が170℃では、酢酸が蒸発するぎりぎりの運転となり、安定的に酢酸が製造できなかった。結果を表1に示す。
比較例4
メタノールと一酸化炭素の仕込み量を比較例1の半分とし、稼働反応槽のみ液面を変動させ、比較例1を100としたとき、比較例4では120とした以外は同様の実験を行なった。結果を表1に示す。
比較例5
メタノールと一酸化炭素の仕込み量を比較例1の半分とし、稼働蒸発槽のみ液面を変動させ、比較例1を100としたとき、比較例5では120とした以外は同様の実験を行なった。結果を表1に示す。
比較例6
メタノールと一酸化炭素の仕込み量を比較例1の半分とし、稼働デカンタ有機相のみ液面を変動させ、比較例1を100としたとき、比較例6では120とした以外は同様の実験を行なった。結果を表1に示す。
比較例7
メタノールと一酸化炭素の仕込み量を比較例1の半分とし、稼働反応槽と稼働デカンタ有機相の液面を変動させ、比較例1を100としたとき、比較例7では、各120とした以外は同様の実験を行なった。結果を表1に示す。
実施例1
反応槽の容量を比較例1、2の半分とし、2つの反応槽を並列で使用した以外、比較例1と同様の実験を行なった(図1参照)。結果、脱水塔缶出液のプロピオン酸濃度は、586質量ppm、脱高沸塔蒸気比は比較例1と同様であった。結果を表1に示す。
実施例2
反応槽の容量を比較例1、2の半分とし、並列に接続した2つの反応槽のうちの1つを運転した以外、比較例1(もしくは実施例1)と同様の実験を行なった。結果、脱水塔缶出液のプロピオン酸濃度は、589質量ppm、脱高沸塔蒸気比は比較例1、実施例1と同様であった。結果を表1に示す。
表1において、「CO」は一酸化炭素、「MeOH」はメタノール、「LiI」はヨウ化リチウム、「Rh」はロジウム触媒、「MeI」はヨウ化メチル、「PCO」は一酸化炭素分圧、「PH2」は水素分圧、「STY」は空時収率、「AC」は酢酸、「PA」はプロピオン酸を示す。
なお、メタノールと一酸化炭素の量は相対的に比較できない。モル数に換算した場合、メタノールのモル数は、一酸化炭素モル数に0.9を乗じた数(すなわちCO仕込量モル数×0.9)となる。また、脱水塔の缶出液の酢酸量は、メタノールの仕込量モル数に99.9%を乗じた数(すなわち仕込量モル数×99.9%)となる。
Figure 0006569019
[結果の考察]
比較例1〜7は、反応槽を1槽とした運転例、実施例1と2は、反応槽を2槽とし並列に使用した運転例である。
比較例1と2を対比する。比較例2は、メタノールと一酸化炭素の仕込み量を比較例1の半分とし、反応温度、ロジウム触媒濃度、ヨウ化メチル濃度を低下させて反応速度を落とした運転例であるところ、脱水塔缶出液のプロピオン酸濃度は942ppmと非常に高くなっている。そのため、脱高沸塔蒸気量を1.8部としないと、製品プロピオン酸濃度として162ppmを確保できなかった。つまり、多量の蒸気が必要となり、精製にエネルギーを要することが分かる。なお、稼働反応槽の液面を比較例1を100としたとき、110まで上昇させたため、ロジウム触媒濃度、ヨウ化メチル濃度、ヨウ化リチウム濃度が比較例1より若干低下でき、反応不可となる著しい反応速度の低下は免れた。しかしながら、負荷低減は避けられず、反応液酢酸メチル濃度が比較例1よりも低下し、その結果、シフト反応が増加して反応槽水素分圧が上昇した。この酢酸メチル濃度低下と水素分圧上昇とが相まって2重の影響を及ぼし、アセトアルデヒド生成に続いたプロピオン酸の生成増加を引き起こした。これにより脱水塔缶出液のプロピオン酸濃度が約2倍に上昇したものと考えられる。つまり、比較例2のような従来の酢酸の製造方法では、酢酸の生産量が半分に低下した場合、反応系の触媒や助触媒量は大きく変動させることはできないことから、同一品質の酢酸を生産するには、追加のエネルギーやコストを要することが分かる。
比較例3は、液面調節を行わず、反応槽内の反応温度を170℃とした例である。その結果、稼働蒸発槽内で酢酸が蒸発するぎりぎりの運転となり、安定的に酢酸が製造できなかった。反応槽の水素分圧も比較例1よりも低下した。これらのことから、単に反応温度を下げて、蒸発率を制御する手法では、安定した運転に影響を及ぼすため、好ましい製造条件とは言えないことが分かる。
次に従来技術である液面調節の効果に着目し、比較例2、4〜7の結果を考察する。比較例2と4は、稼働反応槽の液面を比較例1を100としたとき、それぞれ110、120へと上昇させた例である。この結果、液面上昇の大きさに比例して、ロジウム触媒濃度、ヨウ化メチル濃度、ヨウ化リチウム濃度は、比較例1よりも低下した。しかしながら、負荷低減は避けられず、酢酸製造量を調節するため、反応液酢酸メチル濃度を比較例1の約半分に低下させると、シフト反応が増加して反応槽水素分圧が上昇した。この酢酸メチル濃度低下と水素分圧上昇とが相まって2重の影響を及ぼし、アセトアルデヒド生成に続いたプロピオン酸の生成増加を引き起こした。このため脱高沸塔蒸気量を約2部としないと、製品プロピオン酸濃度として162ppmを確保できなかった。つまり、多量の蒸気が必要となり、精製にエネルギーを要する結果となった。
また、比較例5は、稼働蒸発槽の液面を比較例1を100としたとき、120に上昇させた例である。この結果、ロジウム触媒濃度、ヨウ化リチウム濃度は、比較例1よりも低下した。しかしながら、負荷低減は避けられず、酢酸製造量を調節するため、反応液酢酸メチル濃度を比較例1の約半分に低下させると、シフト反応が増加して反応槽水素分圧が上昇した。この酢酸メチル濃度低下と水素分圧上昇とが相まって2重の影響を及ぼし、アセトアルデヒド生成に続いたプロピオン酸の生成増加を引き起こした。このため脱高沸塔蒸気量を2.3部としないと、製品プロピオン酸濃度として163ppmを確保できなかった。つまり、多量の蒸気が必要となり、精製にエネルギーを要する結果となった。
また、比較例6は、稼働デカンタの有機相(ヨウ化メチル相)液面を比較例1を100としたとき、120に上昇させた例である。この結果、反応液ヨウ化メチル濃度は、比較例1よりも低下した。しかしながら、負荷低減は避けられず、酢酸製造量を調節するため、反応液酢酸メチル濃度を比較例1の約半分に低下させると、シフト反応が増加して反応槽水素分圧が上昇した。この酢酸メチル濃度低下と水素分圧上昇とが相まって2重の影響を及ぼし、アセトアルデヒド生成に続いたプロピオン酸の生成増加を引き起こした。このため脱高沸塔蒸気量を2.3部としないと、製品プロピオン酸濃度として161ppmを確保できなかった。つまり、多量の蒸気が必要となり、精製にエネルギーを要する結果となった。
また、比較例7は、稼働反応槽と稼働デカンタ有機相の液面を比較例1を100としたとき、各120に上昇させた例である。この結果、ロジウム触媒濃度、ヨウ化メチル濃度、ヨウ化リチウム濃度は、比較例1よりも低下した。しかしながら、負荷低減は避けられず、酢酸製造量を調節するため、反応液酢酸メチル濃度を比較例1よりも低下させる必要があった。なお、反応槽の水素分圧の大きな上昇はなかったものの、プロピオン酸の生成増加を引き起こした。このため脱高沸塔蒸気量を1.3部としないと、製品プロピオン酸濃度として161ppmを確保できなかった。つまり、精製にエネルギーを要する結果となった。
以上の比較例の効果から、連続式プロセスの現状のプラントにおいて、原料メタノールと原料一酸化炭素の供給量を変化させるとともに、反応槽中の触媒及び助触媒の濃度を低くしたり、反応温度を調節したり、反応槽、蒸発槽、又はデカンタの液面を上昇させることにより、反応槽内にリサイクルされる金属触媒や助触媒の量を調節しても、その効果はわずかに留まることが裏付けられた。むしろ、通常のプラント設備をそのまま稼働させ、酢酸の製造量のみを通常時の半分に減産すると、追加のエネルギーやコストを要し、デメリットの方が大きいことが分かる。
これに対し実施例1と2は、脱水塔缶出液のプロピオン酸濃度と脱高沸塔蒸気比は、従来の運転例である比較例1と同等の結果であった。つまり、従来と同等の品質の酢酸を、簡便な操作で効率よく生産できていることが分かる。
実施例1と2とを対比する。実施例1と2は、反応槽を並列2槽とした点が同一であり、稼働反応槽の数を2又は1とした点が相違する。反応槽における金属触媒(ロジウム触媒)濃度、ヨウ化メチル濃度、ヨウ化物塩濃度、酢酸濃度、水濃度、酢酸メチル濃度、水素分圧、及び反応温度の変動を評価したところ、稼働反応槽の数による変動は無いか、又は極めて少なく、酢酸の反応速度も同一であることが分かる。
以上の結果から、カルボニル化反応工程において、反応槽を2以上の並列で使用する本発明の酢酸の製造方法によれば、酢酸の減産や増産を簡易な操作でスムーズに行うことができ、酢酸の生産量が変化しても、品質を保持しつつ工業的に効率よく安定に酢酸を製造できることが分かる。また、稼働反応槽の数によらず、反応槽内の反応混合物濃度、反応温度、水素分圧は大きく変動することなく一定に維持されることが分かる。
また、本発明の酢酸の製造方法によれば、稼働反応槽の数によらず、稼働反応槽、稼働蒸発槽、及び稼働デカンタの液面は、変動することなく一定に維持されていることが分かる。
また、本発明の酢酸の製造方法によれば、酢酸の生産量を50%に減産しても、前記カルボニル化反応工程における酢酸の空時収率は一定に維持されていることが分かる。
以上のまとめとして、本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記しておく。
[1]金属触媒及びヨウ化メチルを含む触媒系、並びに、酢酸、酢酸メチル、水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続式で反応させるカルボニル化反応工程を含む酢酸の製造方法であって、
前記カルボニル化反応工程において、反応槽を2以上の並列で使用する酢酸の製造方法。
[2]前記カルボニル化工程に加え、前記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸発槽において蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程を有しており、
接続された反応槽と蒸発槽の組み合わせを2以上の並列で使用する[1]記載の酢酸の製造方法。
[3]前記カルボニル化工程に加え、前記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸発槽において蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程と、
前記蒸気流を蒸留塔による蒸留に付して、ヨウ化メチル及びアセトアルデヒドから選択された少なくとも一種の低沸成分に富むオーバーヘッド流と、酢酸に富む酢酸流とに分離するとともに、前記オーバーヘッド流を凝縮させ、デカンタで分液させて水相と有機相とを得る脱低沸工程を有しており、
接続された反応槽と蒸発槽と蒸留塔の組み合わせを2以上の並列で使用する[1]又は[2]記載の酢酸の製造方法。
[4]並列に置かれた2以上の反応槽のうち、稼働反応槽数の増減により酢酸の生産量を増減させる、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[5]稼働反応槽の数の増減を伴う運転期間中において、
稼働反応槽における反応温度が170℃以上であり、且つ、稼働反応槽数によらず、下記(i)〜(vii)の少なくとも1つの条件を満たす[1]〜[4]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
(i)稼働反応槽中の金属触媒濃度及びヨウ化メチル濃度の変動が±50%以内である
(ii)前記触媒系がさらにヨウ化物塩を含み、稼働反応槽中のヨウ化物塩濃度の変動が±50%以内である
(iii)稼働反応槽における反応温度の変動が±20℃以内である
(iv)稼働反応槽中の酢酸濃度、及び/又は、酢酸メチル濃度、及び/又は、水濃度の変動が±50%以内である
(v)稼働反応槽における水素分圧の変動が±50%以内である
(vi)稼働反応槽における反応速度の変動が±50%以内である
(vii)稼働反応槽における酢酸の空時収率の変動が±40%以内である
[6]前記(i)において、稼働反応槽中の金属触媒濃度の変動が±40%以内(好ましくは±30%以内、より好ましくは±20%以内、さらに好ましくは±10%以内、特に好ましくは±5%以内)である、[5]記載の酢酸の製造方法。
[7]前記(i)において、稼働反応槽中のヨウ化メチル濃度の変動が±40%以内(好ましくは±30%以内、より好ましくは±20%以内、さらに好ましくは±10%以内、特に好ましくは±5%以内)である、[5]又は[6]記載の酢酸の製造方法。
[8]前記(ii)において、稼働反応槽中のヨウ化物塩濃度の変動が±40%以内(好ましくは±30%以内、より好ましくは±20%以内、さらに好ましくは±10%以内、特に好ましくは±5%以内)である、[5]〜[7]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[9]前記(iii)において、稼働反応槽における反応温度の変動が、・15℃以内(好ましくは・10℃以内、より好ましくは・8℃以内、さらに好ましくは・5℃以内、特に好ましくは・3℃以内)である、[5]〜[8]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[10]前記(iv)において、稼働反応槽中の酢酸濃度の変動が、・40%以内(好ましくは・30%以内、より好ましくは・20%以内、さらに好ましくは・10%以内、特に好ましくは・5%以内)である、[5]〜[9]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[11]前記(iv)において、稼働反応槽中の酢酸メチル濃度の変動が、・40%以内(好ましくは・30%以内、より好ましくは・20%以内、さらに好ましくは・10%以内、特に好ましくは・5%以内)である、[5]〜[10]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[12]前記(iv)において、稼働反応槽中の水濃度の変動が、・40%以内(好ましくは・30%以内、より好ましくは・20%以内、さらに好ましくは・10%以内、特に好ましくは・5%以内)である、[5]〜[11]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[13]前記(v)において、稼働反応槽における水素分圧の変動が、±40%以内(好ましくは±30%以内、より好ましくは±20%以内、さらに好ましくは±10%以内、特に好ましくは±5%以内)である、[5]〜[12]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[14]前記(vi)において、稼働反応槽における反応速度の変動が、±40%以内(好ましくは±30%以内、より好ましくは±20%以内、さらに好ましくは±10%以内、特に好ましくは±5%以内)である、[5]〜[13]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[15]前記(vii)において、稼働反応槽における酢酸の空時収率(酢酸の生成速度とも称される)の変動が、±35%以内(例えば、±30%以内、±25%以内、±20%以内、好ましくは±15%以内、より好ましくは±10%以内、さらに好ましくは±8%以内、特に好ましくは±5%以内、なかんずく±3%以内)である、[5]〜[14]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[16]稼働反応槽数の増減切り替え前後において、少なくとも前記(i)〜(vii)の1つの条件を満たす[5]〜[15]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[17]稼働反応槽数の増減切り替え前後において、少なくとも前記(i)、(ii)及び(iii)を同時に満たす[5]〜[16]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[18]稼働反応槽数の増減切り替え前後において、少なくとも前記(i)、(ii)、(iii)及び(iv)を同時に満たす[5]〜[17]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[19]稼働反応槽数の増減切り替え前後において、少なくとも前記(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)を同時に満たす[5]〜[18]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[20]稼働反応槽数の増減切り替え前後において、少なくとも前記(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)及び(vi)を同時に満たす[5]〜[19]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[21]稼働反応槽数の増減切り替え前後において、前記(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)及び(vii)の全ての条件を満たす[5]〜[20]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[22]前記カルボニル化工程に加えて、
前記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸発槽において蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程を有しており、
並列に置かれた反応槽の全液量100容量部に対し、蒸発槽の液量(並列に置かれている場合はその全液量)が1〜100容量部(例えば、1〜70容量部、好ましくは1〜50容量部、より好ましくは1〜30容量部、さらに好ましくは1〜20容量部、特に好ましくは1〜10容量部)である、[1]〜[21]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[23]前記カルボニル化反応工程に加えて、
前記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸発槽において蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程と、
前記蒸気流を蒸留塔による蒸留に付して、ヨウ化メチル及びアセトアルデヒドから選択された少なくとも一種の低沸成分に富むオーバーヘッド流と、酢酸に富む酢酸流とに分離するとともに、前記オーバーヘッド流を凝縮させ、デカンタで分液させて水相と有機相とを得る脱低沸工程を有しており、
並列に置かれた反応槽の全液量100容量部に対し、前記デカンタの液量(並列に置かれている場合はその全液量)が1〜100容量部(例えば、1〜70容量部、好ましくは1〜50容量部、より好ましくは1〜30容量部、さらに好ましくは1〜20容量部、特に好ましくは1〜10容量部)である、[1]〜[22]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[24]前記カルボニル化反応工程に加えて、
前記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸発槽において蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程と、
前記蒸気流を蒸留に付して、ヨウ化メチル及びアセトアルデヒドから選択された少なくとも一種の低沸成分に富むオーバーヘッド流と、酢酸に富む酢酸流とに分離するとともに、前記オーバーヘッド流を凝縮させ、デカンタで分液させて水相と有機相とを得る脱低沸工程を有しており、
稼働反応槽の数の増減を伴う運転期間中において、
稼働反応槽における反応温度が170℃以上であり、且つ、稼働反応槽数によらず、下記(viii)〜(x)の少なくとも1つの条件を満たす[1]〜[23]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
(viii)稼動反応槽における液面の変動が±20%以内である
(ix)稼動蒸発槽における液面の変動が±20%以内である
(x)稼動デカンタにおける液面の変動が±20%以内である
[25]前記(viii)において、稼働反応槽における液面の変動が、±15%以内(好ましくは±10%以内、より好ましくは±8%以内、さらに好ましくは±5%以内、特に好ましくは±3%以内)である、[24]記載の酢酸の製造方法。
[26]前記(ix)において、稼働蒸発槽における液面の変動が、±15%以内(好ましくは±10%以内、より好ましくは±8%以内、さらに好ましくは±5%以内、特に好ましくは±3%以内)である、[24]又は[25]記載の酢酸の製造方法。
[27]前記(x)において、稼働デカンタにおける液面の変動が、±15%以内(好ましくは±10%以内、より好ましくは±8%以内、さらに好ましくは±5%以内、特に好ましくは±3%以内)である、[24]〜[26]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[28]稼働反応槽数の増減切り替え前後において、少なくとも前記(viii)〜(x)の1つの条件を満たす[24]〜[27]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[29]稼働反応槽数の増減切り替え前後において、少なくとも前記(viii)及び(ix)を同時に満たす[24]〜[28]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[30]稼働反応槽数の増減切り替え前後において、前記(viii)、(ix)及び(x)の全ての条件を満たす[24]〜[29]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[31]金属触媒及びヨウ化メチルを含む触媒系、並びに、酢酸、酢酸メチル、水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続式で反応させるカルボニル化反応工程を含む酢酸の製造方法であって、
酢酸の生産量を30〜90%(例えば、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%)に減産するに際し、前記カルボニル化反応工程における酢酸の空時収率の変動を±40%以内(例えば、±35%以内、±30%以内、±25%以内、±20%以内、好ましくは±15%以内、より好ましくは±10%以内、さらに好ましくは±8%以内、特に好ましくは±5%以内、なかんずく±3%以内)に維持する、酢酸の製造方法。
[32]反応槽を2以上の並列で使用し、稼働反応槽数を減らす[30]記載の酢酸の製造方法。
本発明の酢酸の製造方法は、メタノール法カルボニル化プロセス(メタノール法酢酸プロセス)による酢酸の工業的製造法として利用可能である。
1A,1B 反応槽
2A,2B 蒸発槽
3A,3B,5,6,10 蒸留塔
4 デカンタ
7 イオン交換樹脂塔
8 スクラバーシステム
9 アセトアルデヒド分離除去システム
16 反応混合物供給ライン
17 蒸気流排出ライン
18,19 残液流リサイクルライン
54 一酸化炭素含有ガス導入ライン
55,56 水酸化カリウム導入ライン
57 触媒循環ポンプ

Claims (6)

  1. 金属触媒及びヨウ化メチルを含む触媒系、並びに、酢酸、酢酸メチル、水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続式で反応させるカルボニル化反応工程と、
    前記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸発槽において蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程と、
    前記蒸気流を第1の蒸留塔による蒸留に付して、ヨウ化メチル及びアセトアルデヒドから選択された少なくとも一種の低沸成分に富むオーバーヘッド流と、酢酸に富む酢酸流とに分離するとともに、前記オーバーヘッド流を凝縮させ、デカンタで分液させて水相と有機相とを得る脱低沸工程を有し、
    前記カルボニル化反応工程において、反応槽を2以上の並列で使用し、
    前記蒸発工程において、残液流を反応槽内にリサイクルさせ、
    並列に置かれた2以上の反応槽のうち、稼働反応槽数の増減により酢酸の生産量を増減させる酢酸の製造方法であって、
    下記(a)〜(c)のいずれかの条件で反応槽を稼働させ、
    (a)反応槽を2以上の並列で使用し、蒸発槽は1基のみ使用する
    (b)接続された反応槽と蒸発槽の組み合わせを2以上の並列で使用し、第1の蒸留塔は1基のみ使用する
    (c)前記脱低沸工程で得られた酢酸流を第2の蒸留塔による蒸留に付して、酢酸をさらに精製するための脱水工程を有しており、接続された反応槽と蒸発槽と第1の蒸留塔の組み合わせを2以上の並列で使用し、第2の蒸留塔は1基のみ使用する
    稼働反応槽の数の増減を伴う運転期間中において、
    稼働反応槽における反応温度が170℃以上であり、且つ、稼働反応槽数によらず、下記(i)〜(vii)の少なくとも1つの条件を満たす酢酸の製造方法。
    (i)稼働反応槽中の金属触媒濃度及びヨウ化メチル濃度の変動が±50%以内である
    (ii)前記触媒系がさらにヨウ化物塩を含み、稼働反応槽中のヨウ化物塩濃度の変動が±50%以内である
    (iii)稼働反応槽における反応温度の変動が±20℃以内である
    (iv)稼働反応槽中の酢酸濃度、及び/又は、酢酸メチル濃度、及び/又は、水濃度の変動が±50%以内である
    (v)稼働反応槽における水素分圧の変動が±50%以内である
    (vi)稼働反応槽における反応速度の変動が±50%以内である
    (vii)稼働反応槽における酢酸の空時収率の変動が±40%以内である
  2. 稼働反応槽数の増減切り替え前後において、前記(i)〜(vii)の少なくとも1つの条件を満たす請求項1記載の酢酸の製造方法。
  3. 並列に置かれた反応槽の全液量100容量部に対し、蒸発槽の液量(並列に置かれている場合はその全液量)が1〜100容量部である請求項1又は2に記載の酢酸の製造方法。
  4. 並列に置かれた反応槽の全液量100容量部に対し、前記デカンタの液量(並列に置かれている場合はその全液量)が1〜100容量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の酢酸の製造方法。
  5. 稼働反応槽の数の増減を伴う運転期間中において、
    稼働反応槽数によらず、下記(viii)〜(x)の少なくとも1つの条件を満たす請求項1〜4のいずれか1項に記載の酢酸の製造方法。
    (viii)稼動反応槽における液面の変動が±20%以内である
    (ix)稼動蒸発槽における液面の変動が±20%以内である
    (x)稼動デカンタにおける液面の変動が±20%以内である
  6. 金属触媒及びヨウ化メチルを含む触媒系、並びに、酢酸、酢酸メチル、水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続式で反応させるカルボニル化反応工程と、
    前記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸発槽において蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程と、
    前記蒸気流を第1の蒸留塔による蒸留に付して、ヨウ化メチル及びアセトアルデヒドから選択された少なくとも一種の低沸成分に富むオーバーヘッド流と、酢酸に富む酢酸流とに分離するとともに、前記オーバーヘッド流を凝縮させ、デカンタで分液させて水相と有機相とを得る脱低沸工程を有し、
    前記カルボニル化反応工程において、反応槽を2以上の並列で使用し、
    前記蒸発工程において、残液流を反応槽内にリサイクルさせ、
    並列に置かれた2以上の反応槽のうち、稼働反応槽数を減らすことにより、前記カルボニル化反応工程における酢酸の空時収率の変動を±40%以内に維持しつつ、酢酸の生産量を30〜90%に減産する酢酸の製造方法。
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