以下、本発明の例である各実施形態について図面を用いて説明する。
<第一実施形態>
(微弱電流調理具:ピーラー)
図1は、本実施形態に係る微弱電流調理具であるピーラー100の一例に関する図である。ピーラーは単に皮を剥くというだけではなく、例えばキャベツを千切りにしたり、根野菜を削って切削片をサラダなどの食材としたり等、切削片を形作り調理するための道具を含むものである。具体的には、図1(a)は、ピーラー100の正面図である。図1(b)は、ピーラー100を上側から見た平面図である。図示するように、ピーラー100は、把持部10と、保持部20と、作用部30とを有している。把持部10は、ユーザがピーラー100を把持する部位である。保持部20は、先端部が二股に分かれ、作用部30の両端を支持している。
作用部30は、所定角の範囲内で回動するように両端が保持部20に支持されており、刃部31と、ガイド部32と、接続部33と、隙間34とを有している。
刃部31は、食材の表面を薄く切削(切断)する部位である。具体的には、刃部31は、把持部10の向きに対して略垂直方向に連なった複数の刃から構成されており、隙間34を挟んでガイド部32と向き合う位置に形成されている。
ガイド部32は、食材表面に沿ってピーラー100をガイドする部位である。具体的には、ガイド部32は、刃部31の刃が連なる方向と同一方向に長い薄板状の部材であり、隙間34を挟んで刃部31と向き合う位置に形成されている。
なお、刃部31とガイド部32との間には、食材の切削厚みに相当する高さの段差が設けられている。具体的には、ピーラー100を食材に押し当てた状態において、ガイド部32よりも刃部31がより食材に近い位置となるよう刃部31とガイド部32との間には段差が設けられている。
接続部33は、刃部31とガイド部32とを接続する部位である。接続部33は、隙間34を挟んで相互に対向する刃部31およびガイド部32の両端に接続され、保持部20に回動可能に固定されている。
隙間34は、刃部31とガイド部32との間に位置し、切削された食材が通過する貫通穴である。刃部31によって切削された食材は、隙間34を通って下側に落下する。
ピーラー100は、通常のピーラー100と同様に、ユーザが把持部10を持ち、食材の表面に作用部を押し当てながら把持部10の方向に引くようにして使用される。これにより、ピーラー100は、刃部31が押し当てられた食材の表面を、刃部31とガイド部32との間の段差の分だけ剥くことができる。
このような刃部31、ガイド部32および接続部33は各々、導電性の金属(例えば、ステンレス材)から形成されている。また、刃部31の表面には、例えば亜鉛(Zn)メッキが施されている。また、ガイド部の表面には、例えば金(Au)メッキが施されている。
亜鉛メッキが施されている刃部31は、負電極部として機能する。また、金メッキが施されているガイド部32は、正電極部として機能する。また、隙間34は、正電極部と負電極部とを分離させる無接触部の働きをする。
このように、刃部31およびガイド部32の表面には、相互にイオン化傾向の異なる金属によるメッキ加工が施されている。これにより、作用部30に接触する食材が電池における電解質の役割を果たし、食材を介して刃部31(負電極部)とガイド部32(正電極部)との間に微弱電流が流れる。微弱電流は、例えば50〜200マイクロアンペアのマイクロカレントである。
図2は、ピーラー100の作用部30を接触させた食材に発生する微弱電流の流れを示した図である。図示するように、作用部30には、ガイド部32から接続部33を介して刃部31に向かって電流E1が流れる。また、刃部31およびガイド部32を接触させた食材Dの内部には、刃部31からガイド部32に向かって微弱電流E2が流れる。
食材の切削時に食材内部に微弱電流が流れることにより、食材の切削物に極性が加わり、食材の細胞の電荷が一方方向(切削方向)に荷電される。これにより、切削された食材の細胞は電流で引き締まり、食べた時に食材が新鮮に感じる印象を与えるという効果を生じ得る。また、微弱電流により食材に含まれる金属元素をイオン化させることで、味に変化が生じると考えられる。
なお、刃部31を正電極部にし、ガイド部32を負電極部にしても良い。この場合、例えば刃部31には金(Au)メッキが施され、ガイド部32には亜鉛(Zn)メッキが施される。
刃部31を正電極部にし、ガイド部32を負電極部とすることで、刃部31を錆び難くし、刃こぼれを抑制することができる。
また、ピーラー100は、金メッキにより正電極部を形成し、チタンコーティングにより負電極部を形成しても良い。
(微弱電流調理具:ハマグリ刃の包丁)
図3は、本実施形態に係る微弱電流調理具である包丁200の一例を示した正面図である。図4は、図3に示す包丁200の横断面に関する図である。図示するように、包丁200は、把持部210と、本体部220とを有している。把持部210は、ユーザが包丁200を握る部位である。本体部220は、薄板状の部材であり、中子と呼ばれる部位を介して把持部210に取り付けられている。また、本体部220は、食材に接触する作用部221を有している。
作用部221は、刃先から緩やかな円弧で本体部に接続する横断面形状のいわゆるハマグリ刃となっており、食材に切り込む部位である。作用部221は、第一接触部222と、第二接触部223と、絶縁部224とを有している。
第一接触部222は、食材を切る刃先を有する部位である。第一接触部222は、本体部220の厚みに直交する向き(把持部210の長さ方向と同じ向き)に本体部220の下端に形成されている。
第二接触部223は、絶縁部224よりも本体部220内側に位置する部位であって、第一接触部222と同じ向きに設けられている。
絶縁部224は、後述するように、作用部221に接触した食材表面において正電極部(第一接触部222)と負電極部(第二接触部223)とを分離するための部位である。絶縁部224は、把持部210側の端から包丁200の先端付近まで作用部221側面に直線状に形成されている。例えば、包丁200を正面から見た場合、絶縁部224は、上下に位置する第一接触部222および第二接触部223に挟み込まれるように形成されている。
包丁200は、通常の包丁と同様に、ユーザが把持部210を持ち、食材の表面に刃先を押し当てながら、把持部210の方向に押すようにして(または引くようにして)使用される。
なお、包丁200は、図4(a)〜図4(c)に示すように、複数の形態がある。
図4(a)は、第一形態に係る包丁200の横断面図である。図4(b)は、第二形態に係る包丁200の横断面図である。図4(c)は、第三形態に係る包丁200の横断面図である。
図4(a)に示す第一形態に係る包丁200は、第一接触部222および第二接触部223が各々、導電性の金属(例えば、ステンレス材)から形成され、第一接触部の表面には金(Au)メッキ225が施されている。また、絶縁部224は、把持部210側の端から包丁200の先端付近まで作用部221側面に形成された直線状の溝に絶縁部材が塗布されている。
金メッキ225が施されている第一接触部222は、正電極部として機能する。また、ステンレス材が露出する第二接触部223は、負電極部として機能する。また、絶縁部224は、作用部221に接触した食材D表面において正電極部と負電極部とを分離する役割を果たす。
このように、第一接触部222および第二接触部223の表面には、相互にイオン化傾向の異なる金属が露出している。そのため、作用部221では、第一接触部222(正電極部)と第二接触部223(負電極部)との間に電位差が生じ、作用部221に接触した食材D内部には第二接触部223から第一接触部222に向かって微弱電流Eが流れる。なお、作用部221内部では、第一接触部222から第二接触部223に向かって電流が流れる(図示せず)。
図4(b)に示す第二形態に係る包丁200は、第一接触部222および第二接触部223が各々、導電性の金属(ステンレス材)から形成され、第一接触部222の表面には金(Au)メッキ225が施されている。また、第二接触部223の表面には、亜鉛(Zn)メッキ226が施されている。なお、絶縁部224については第一形態と同様である。
金メッキ225が施されている第一接触部222は正電極部として機能し、亜鉛メッキ226が施されている第二接触部223は負電極部として機能する。また、絶縁部224は、作用部221に接触した食材D表面において正電極部と負電極部とを分離する役割を果たす。
このように、第一接触部222および第二接触部223の表面には、相互にイオン化傾向の異なる金属によるメッキ加工が施されているため、作用部221では、第一接触部222(正電極部)と第二接触部223(負電極部)との間に電位差が生じ、作用部221に接触した食材D内部に微弱電流Eが流れる。なお、作用部221内部では、第一接触部222から第二接触部223に向かって電流が流れる(図示せず)。
図4(c)に示す第三形態に係る包丁200は、絶縁部224が把持部210側の端から包丁200の先端付近まで作用部221側面に形成された直線状の凹みである溝227のみから構成されている。なお、第一接触部222および第二接触部223については第二形態と同様である。
金メッキ225が施されている第一接触部222は正電極部として機能し、亜鉛メッキ226が施されている第二接触部223は負電極部として機能する。また、溝227である絶縁部224は、食材Dに接触しない非接触部である。そのため、絶縁部224は、絶縁部材を塗布した場合と同様、作用部221に接触した食材D表面において正電極部と負電極部とを分離する役割を果たす。
このように、第一接触部222および第二接触部223の表面には、相互にイオン化傾向の異なる金属が露出している。そのため、作用部221では、第一接触部222(正電極部)と第二接触部223(負電極部)との間に電位差が生じ、作用部221に接触した食材D内部には第二接触部223から第一接触部222に向かって微弱電流Eが流れる。なお、作用部221内部では、第一接触部222から第二接触部223に向かって電流が流れる(図示せず)。
以上の通り、第一形態、第二形態および第三形態に係る包丁200は、食材への切込み時に食材内部に微弱電流を流すことができる。そのため、本実施形態に係る包丁200によれば、微弱電流により食材の細胞を引き締め、食べた時に食材が新鮮に感じる印象を与えるという効果を生じ得る。
なお、第二接触部223を正電極部にし、第一接触部222を負電極部にしても良い。すなわち、第二接触部223に金メッキを施し、第一接触部222に亜鉛メッキを施しても良い。
また、包丁200のメッキ部は、スパッタリングや、各金属を貼り合わせたり、溶着したものでも良い。また、絶縁部224は、溝227を設けず、絶縁部材を塗布したり溶着あるいはテープ状の絶縁部材を貼り付けて形成しても良い。また、上記では第一接触部222、第二接触部223および絶縁部224との構成は一組の場合について説明したが、例えば第一接触部222、第二接触部223および絶縁部224を連続して複数組設けても良い。
(微弱電流調理具:作用部をクラッド材から形成した包丁)
図5は、図3および図4に示す包丁200とは異なる他の形態の包丁200の横断面に関する図である。図示するように、包丁200は、異種金属を接合したクラッド材を用いた作用部221を有している。
図5(a)は、芯材230と、第一の母材232と、第二の母材231とを接合したクラッド材を用いて形成された作用部221の横断面図である。図示するように、作用部221は、芯材230の両側を第二の母材231が挟み込み、第二の母材231の両側を第一の母材232が挟み込んだ構成になっている。
芯材230は、食材を切り込む刃が設けられた薄板状の金属部材である。第一の母材232および第二の母材231は薄板状の金属部材である。第二の母材231は、芯材230の下側一部が露出するように芯材230の両側に配置されている。また、第一の母材232は、第二の母材231の下側一部が露出するように第二の母材231の両側に配置されている。
また、第二の母材231の下部端面すなわち芯材230と第二の母材231との間の段差には、絶縁部233が形成されている。また、第一の母材232の下部端面すなわち第二の母材231と第一の母材232との間の段差には、絶縁部233が形成されている。すなわち、絶縁部233は、把持部210側の端から包丁200の先端付近までこれらの段差に沿って作用部221側面に直線状に形成されている(図示せず)。
このような作用部221は、芯材230と、第二の母材231と、第一の母材232とが各々、導電性の金属から形成されている。例えば、芯材230および第一の母材232はステンレス材から形成され、露出する部分に金メッキ234が施されている。また、第二の母材231は、例えばステンレス材から形成される。また、絶縁部233は、芯材230と第二の母材231との間の段差および第二の母材231と第一の母材232との間の段差に塗布された絶縁部材により形成されている。
金メッキ234が施されている芯材230および第一の母材232は、正電極部として機能する。また、ステンレス材が露出する第二の母材231は、負電極部として機能する。つまり、作用部221は、負電極部を挟む形で正電極部が交互に露出している。また、絶縁部233は、作用部221に接触した食材表面において正電極部と負電極部とを分離する役割を果たす。
このように、芯材230、第二の母材231および第一の母材232の表面には、相互にイオン化傾向の異なる金属が露出している。そのため、作用部221では、芯材230(正電極部)と第二の母材231(負電極部)との間および第二の母材231(負電極部)と第一の母材232(正電極部)との間に電位差が生じ、作用部221に接触した食材内部には第二の母材231から芯材230に向かう微弱電流Eと、第二の母材231から第一の母材232に向かう微弱電流Eとが発生する。なお、作用部221内部は、芯材230および第一の母材232から各々、第二の母材231に向かって電流が流れる(図示せず)。
なお、作用部221の構成はこれに限定されるものではない。例えば、芯材230および第一の母材232を負電極部とし、第二の母材231を正電極部としても良い。この場合、例えば第二の母材231をステンレス材から形成し、露出する部分に金メッキを施す。また、芯材230および第一の母材232はステンレス材から形成し、メッキ加工は施さずにステンレス材を露出させる。これにより、芯材230および第一の母材232は負電極部となり、第二の母材231は正電極部となる。
また、例えば芯材230と第二の母材231との間でのみ正電極部および負電極部を構成するようにしても良いし、芯材230と第一の母材232との間でのみ正電極部および負電極部を構成するようにしても良い。あるいは、第二の母材231と第一の母材232との間でのみ正電極部と負電極部とを形成するようにしても良い。いずれの場合も、どちらが正電極部または負電極部であっても良い。
図5(b)は、芯材240と、母材241と、絶縁部材242とを接合したクラッド材を用いて形成された作用部221の横断面図である。図示するように、作用部221は、芯材240の両側を絶縁部材242が挟み込み、絶縁部材242の両側を母材241が挟み込んだ構成になっている。なお、作用部221の上端側は、芯材240および母材241の両方に接触する導電性の接続部243が設けられている。
芯材240は、食材を切り込む刃が設けられた薄板状の金属製刃物材である。また、絶縁部材242は、薄板状の絶縁材である。母材241は、薄板状の金属部材である。接続部243は、芯材240の一部と母材241の一部に各々接触する導電性の金属部材である。絶縁部材242は、芯材240の下側一部が露出するように芯材240の両側に配置されている。また、母材241は、絶縁部材242の下側一部が露出するように絶縁部材242の両側に配置されている。すなわち、絶縁部材242は、把持部210側の端から包丁200の先端付近まで作用部221側面に直線状に露出するように形成されている(図示せず)。
このような作用部221は、芯材240、母材241および接続部243が各々、導電性の金属から形成されている。例えば、芯材240はステンレス材から形成され、露出する部分に金メッキ244が施されている。また、母材241は、例えばステンレス材から形成され、露出する部分にチタンコーティング245が施されている。また、絶縁部材242は、例えば熱硬化樹脂などから形成される。なお、絶縁部材242は、セラミック樹脂、陶器、磁器、熱可塑性樹脂などであっても良い。
金メッキ244が施されている芯材240は、正電極部として機能する。また、チタンコーティング245が施された部分が露出する母材241は、負電極部として機能する。絶縁部材242は、作用部221に接触する食材表面において正電極部と負電極部とを分離する役割を果たす。
このように、芯材240および母材241の表面には、相互にイオン化傾向の異なる金属が露出している。そのため、作用部221では、芯材240(正電極部)と母材241(負電極部)との間に電位差が生じ、作用部221に接触した食材内部には母材241から芯材240に向かって微弱電流Eが流れる。なお、作用部221内部では、接続部243を伝わって芯材240から母材241に向かって電流が流れる(図示せず)。
なお、作用部221の構成はこれに限定されるものではなく、芯材240を負電極部、母材241を正電極部として構成しても良い。
(微弱電流調理具:スライサー)
図6は、本実施形態に係る微弱電流調理具であるスライサー300の一例を示した図である。図示するように、スライサー300は、把持部310と、スライサー台320と、スライサー台刃330と、作用部340とを有している。把持部310は、ユーザがスライサー300を把持する部位である。スライサー台320は、切削する食材を押し当てる台である。スライサー台刃330は、スライサー台320の表面両側に形成されている一対の縦細刃である。
作用部340は、ピーラー100と同様、所定角の範囲内で回動するように両端がスライサー台320に支持された刃部341と、導電性の接続線342によって電気的に接続されスライサー台320に設けられている台部343とを有している。
刃部341は、食材の表面を薄く切削する部位である。具体的には、刃部341は、食材の摺動方向に対して略垂直方向に連なった複数の刃から構成されており、スライサー台320に設けられた矩形の貫通穴の両端に回動可能に支持されて固定されている。
なお、刃部341は、前述のピーラー100の作用部30と同じ構造をしている。すなわち、刃部341は、食材表面に沿ってピーラー100をガイドする部位であって、隙間を挟んで複数の刃と向き合う位置に形成されたガイド部344を有している。また、ピーラー100を食材に押し当てた状態において、ガイド部344よりも刃部341がより食材に近い位置となるよう刃部341とガイド部344との間には段差が設けられている。
台部343は、刃部341の刃が連なる方向と同一方向に長い薄板状の部材であって、刃部341と向き合う位置に設けられている。台部343は、スライサー台320の表面であって、刃部341に向けて摺動する食材に接触する面に設けられている。
接続線342は、刃部341と台部343とを接続する部位である。接続線342は、スライサー台320の内部に埋め込まれ、一端が刃部341に接続され、他端が台部343に接続されている。
なお、スライサー台320の貫通穴に刃部341が固定されているため、刃部341と台部343との間には貫通穴による隙間345が形成されている。
スライサー300は、通常のスライサーと同様に、ユーザが把持部310を持ち、食材をスライサー台320の表面に押し当てながら刃部341に向かって摺動させて使用される。これにより、スライサー300は、刃部341が押し当てられた食材の表面を、刃部341とガイド部344との間の段差の分だけ剥くことができる。
このような刃部341、台部343および接続線342は各々、導電性の金属から形成されている。例えば、刃部341および台部343は、ステンレス材から形成され、刃部341の表面には金(Au)メッキが施されている。また、台部343の表面には、例えば亜鉛(Zn)メッキが施されている。
金メッキが施されている刃部341は、正電極部として機能する。また、亜鉛メッキが施されている台部343は、負電極部として機能する。また、隙間345は、作用部340に接触する食材表面において正電極部と負電極部とを分離する役割を果たす。
このように、刃部341および台部343の表面には、相互にイオン化傾向の異なる金属によるメッキ加工が施されているため、作用部340では、刃部341(正電極部)と台部343(負電極部)との間に電位差が生じ、作用部340に接触した食材内部に微弱電流が流れる。具体的には、刃部341および台部343に接触する食材内部には、台部343から刃部341に向かって微弱電流が流れる。また、作用部340には、接続線342で接続されている刃部341から台部343に向かって微弱電流が流れる。
食材の切削時に食材内部に微弱電流が流れることにより、食材の切削物に極性が加わり、食材の細胞の電荷が一方方向(切削方向)に荷電される。これにより、切削された食材の細胞は電流で引き締まり、食べた時に食材が新鮮に感じる印象を与えるという効果を生じ得る。
なお、スライサー300は、台部343を正電極部とし、刃部を負電極部として構成しても良い。
<第二実施形態>
第一実施形態の微弱電流調理具では、相互にイオン化傾向の異なる金属(またはメッキ加工)を用いることで、食材に接触する作用部に正電極部と負電極部とを形成し、食材内部に微弱電流を発生させた。一方、第二実施形態に係る微弱電流調理具は、電池を用いることで、正電極部および負電極部により大きな電位差を発生させ、作用部に接触した食材内部に比較的大きな微弱電流を流すものである。なお、第一実施形態と同一の部位については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図7および図8は、本実施形態に係る微弱電流調理具に関する図である。具体的には、図7(a)は、電池式ピーラー400の一例を透過的に示した図である。図7(b)は、電池式スライサー500の一例を透過的に示した図である。図8(a)は、電池式包丁600の一例を示した透過的に示した図である。図8(b)は、作用部にクラッド材を用いた電池式包丁の電極接続例を示した横断面図である。
図7(a)に示すように、電池式ピーラー400は、把持部10内に電池401とスイッチ402とを有し、電池401の正極および負極には各々、刃部31およびガイド部32が接続線403により接続されている。
電池式ピーラー400の使用方法は、スイッチ402をONにした状態で食材を切削する。スイッチ402がONになると作用部30には微弱電流が流れる。具体的には、電池401の正極が接続された刃部31は正電極部となり、電池401の負極が接続されたガイド部32は負電極部となる。
作用部30に接触した食材内部には、刃部31からガイド部32に向かって微弱電流が流れる。特に、電池式ピーラー400は、第一実施形態のピーラー100と比べて大きい電位差を生じさせることができるため、食材内部に比較的大きな微弱電流を流すことができる。そのため、切削された食材の細胞をより引き締める効果を期待することができる。
図7(b)に示すように、電池式スライサー500は、把持部310内に電池501とスイッチ502とを有し、電池501の正極および負極には各々、刃部341および台部343が接続線503により接続されている。
なお、電池式スライサー500は、刃部341と台部343とが接続線503により接続されず、刃部341と台部343との間には貫通穴による隙間345が設けられているため、刃部341と台部343とは通電しないようになっている。
電池式スライサー500の使用方法も同様に、スイッチ502をONにした状態で食材を切削する。スイッチ502がONになると作用部340には微弱電流が流れる。具体的には、電池501の正極が接続された刃部341は正電極部となり、電池501の負極が接続された台部343は負電極部となる。
作用部340に接触した食材内部には、刃部341から台部343に向かって微弱電流が流れる。特に、電池式スライサー500は、第一実施形態のスライサー300と比べて大きい電位差を生じさせることができるため、食材内部に比較的大きな微弱電流を流すことができる。そのため、切削された食材の細胞をより引き締める効果を期待することができる。
図8(a)および(b)に示すように、電池式包丁600は、把持部210内に電池601とスイッチ602とを有し、電池601の正極および負極には各々、芯材240および母材241とが接続線603により接続されている。
なお、芯材240と母材241との間には絶縁部材242が挟み込まれているため、芯材240と母材241とは絶縁されている。
電池式包丁600の使用方法も同様に、スイッチ602をONにした状態で食材を切り込む。スイッチ602がONになると作用部221には微弱電流が流れる。具体的には、電池601の正極が接続された芯材240は正電極部となり、電池601の負極が接続された母材241は負電極部となる。
作用部221に接触した食材内部には、芯材240から母材241に向かって微弱電流が流れる。特に、電池式包丁600は、第一実施形態の包丁200と比べて大きい電位差を生じさせることができるため、食材内部に比較的大きな微弱電流を流すことができる。そのため、切り込まれた食材の細胞をより引き締める効果を期待することができる。
なお、前述の第二実施形態では、電池式ピーラー400、電池式スライサー500および電池式包丁600について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、図8(a)に示すように、これらの微弱電流調理具は内部に小型の整流器604を備え、家庭用のコンセントから電源を得る。また、微弱電流調理具は、交流電流を整流した直流電流を用いて作用部に接触する食材内部に微弱電流を流す。なお、整流器は、半波整流回路を備えた簡易的なものであれば良い。
このような微弱電流調理具によれば、家庭用のコンセントから微弱電流用の電力を供給することができる。
さらには、これらの微弱電流調理具は、内部に太陽電池を設け、太陽電池を電源として電流を流すようにしても良い。また、微弱電流調理具は、把持部10(把持部210、310)に圧電素子を設け、ユーザが微弱電流調理具を握った時の荷重(圧力)に基づき電流が生じるようにしても良い。
なお、ピーラー、包丁およびスライサーの刃の形状は特に限定されるものではなく、例えばギザ刃や三角刃あるいは波刃であっても良い。
また、対象とする食材は、野菜、肉類、果物、麺類およびパン類などあらゆる食材にも及ぶものである。
<その他の実施形態>
前述の通り、第一実施形態ではピーラー、包丁およびスライサーに関する微弱電流調理具について説明し、第二実施形態では電池などを微弱電流の電力源とした微弱電流調理具について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、上記以外の様々な調理具や食器具などに適用することができる。以下では、上記以外の調理具および食器具に本発明を適用した実施例について説明する。
図9、10は、微弱電流食器具である箸に関する図である。具体的には、図9(a)は、第一の形態に係る箸700の一例を示した図である。図示するように、箸700は、一般的な箸と同様、1対の箸片(第一の箸片701、第二の箸片702)から構成され、把持部710と、作用部720と、2箇所の連結部(第一連結部730、第二連結部740)とを有している。なお、箸700は、人の口に入れるものではなく、食材の取り分け等に使う菜箸とすることができる。
把持部710は、第一連結部730と第二連結部740との間に設けられた領域であって、ユーザが箸700を使う際に手に持つ部位である。作用部720は、第二連結部740よりも箸先寄りに設けられた領域であって、食材を掴む部位である。
第一連結部730は、箸頭(箸先とは逆側の端部)付近に設けられ、一対の箸片同士を連結している部位である。第二連結部740は、箸片の略中央付近に設けられ、一対の箸片同士を連結している部位である。第一連結部730および第二連結部740は、カプラーにより構成されている。カプラーは、導電性シリコーン材を用いて形成されており、第一の箸片701および第二の箸片702が挿入される輪っか状の部材を連結した連結具である。なお、第一連結部730および第二連結部740のうち、少なくとも一方の連結部に用いられるカプラーが導電性であれば、他方の連結部は導電性でなくとも良い。
このような箸700は、各箸片が導電性の金属(例えば、ステンレス材)から形成されている。また、第一の箸片701の表面には、例えば金(Au)メッキが施されている。
金メッキが施されている第一の箸片701は、正電極部として機能する。また、ステンレス材が露出する第二の箸片702は、負電極部として機能する。また、第一連結部730および第二連結部740の少なくとも一方は、導電部として機能する。なお、第一の箸片701と第二の箸片702とで食材を掴んだ際、第一の箸片701および第二の箸片702同士の間には正電極部と負電極部とを分離させる隙間が形成される。
このように、箸700の作用部720には、相互にイオン化傾向の異なる金属が露出している。そのため、第一の箸片701の作用部720と、第二の箸片702の作用部720との間に電位差が生じ、両箸片の作用部720に接触した食材が電池における電解質の役割を果たし、食材を介して負電極部から正電極部に向かって微弱電流が流れる。なお、第一の箸片701と第二の箸片702との間には、導電性のカプラーを介して、正電極部である第一の箸片701から負電極部である第二の箸片702に向かって電流が流れる。
図9(b)は、第二の形態に係る箸750の一例を示した図である。図示するように、箸750は、一対の箸片(第一の箸片751、第二の箸片752)から構成され、箸頭にのみ導電性のカプラーが取り付けられている。
箸750は、把持部760と、作用部770と、連結部780とを有している。作用部770は、箸750の略中央付近よりも箸先寄りに設けられている。また、連結部780は、カプラーを用いて箸頭付近に設けられている。なお、カプラーは、前述と同様、導電性シリコーン材から形成された輪っか状の連結具である。
このような箸750は、各箸片が導電性の金属(例えば、ステンレス材)から形成されている。また、第一の箸片751の作用部表面には、金(Au)メッキが施されている。
金メッキが施されている第一の箸片751の作用部770は、正電極部として機能する。また、ステンレス材が露出する第二の箸片752の作用部770は、負電極部として機能する。また、連結部780は、導電部として機能する。なお、第一の箸片751と第二の箸片752とで食材を掴んだ際、第一の箸片751および第二の箸片752同士の間には正電極部と負電極部とを分離させる隙間が形成される。
このように、箸750の作用部770表面には、相互にイオン化傾向の異なる金属が露出している。そのため、第一の箸片751の作用部770と、第二の箸片752の作用部770との間に電位差が生じ、両箸片の作用部770に接触した食材の内部には負電極部から正電極部に向かって微弱電流が流れる。なお、第一の箸片751と第二の箸片752との間には、導電性のカプラーを介して、正電極部である第一の箸片751から負電極部である第二の箸片752に向かって電流が流れる。
図10(a)は、第三の形態に係る箸800の一例を示した図である。図示するように、第三の形態に係る箸800は、一対の箸片(第一の箸片801、第二の箸片802)から構成され、把持部810と、作用部820とを有し、連結部は設けられていない。なお、把持部810および作用部820の構成は、第二の形態に係る箸750と同様である。
このような箸800は、各箸片が導電性の金属(例えば、ステンレス材)から形成されている。また、第一の箸片801の作用部820表面には、金(Au)メッキが施されている。
金メッキが施されている第一の箸片801の作用部820は、正電極部として機能する。また、ステンレス材が露出する第二の箸片802の作用部820は、負電極部として機能する。また、把持部810を握っている人の手が導電部として機能する。なお、第一の箸片801と第二の箸片802とで食材を掴んだ際、第一の箸片801および第二の箸片802同士の間には正電極部と負電極部とを分離させる隙間が形成される。
このように、第一の箸片801および第二の箸片802の作用部820表面には、相互にイオン化傾向の異なる金属が露出している。そのため、第一の箸片801の作用部820と、第二の箸片802の作用部820との間に電位差が生じ、両箸片の作用部820に接触した食材内部には負電極部から正電極部に向かって微弱電流が流れる。なお、第一の箸片801と第二の箸片802との間には、把持部810を握っている人の手を介して、第一の箸片801から第二の箸片802に向かって電流が流れる。
図10(b)は、第四の形態に係る箸850の一例を示した図である。図示するように、箸850は、一対の箸片(第一の箸片851、第二の箸片852)から構成され、第一の箸片851にのみ作用部870が設けられている。
第一の箸片851に設けられている作用部870は、正電極部871と負電極部872とが絶縁部873を挟んで交互に現れるように箸先付近に設けられている。具体的には、作用部870には、正電極部871、絶縁部873および負電極部872という並び順の電極部が箸先から箸頭に向かって所定数(1つ以上)設けられている。
このような箸850は、少なくとも第一の箸片851が導電性の金属(例えば、ステンレス材)から形成されている。また、作用部870の表面には、箸先から箸頭に向かって金(Au)メッキが施された領域と、絶縁部材が塗布された領域と、ステンレス材が露出した領域とが交互に設けられている。
金メッキが施されている領域は、正電極部871として機能する。また、ステンレス材が露出している領域は、負電極部872として機能する。また、絶縁部材が塗布されている領域は、正電極部と負電極部とを相互に絶縁する絶縁部873として機能する。
このように、箸850の作用部870には、相互にイオン化傾向の異なる金属が露出している。そのため、作用部870の正電極部871と負電極部872との間に電位差が生じ、作用部870に接触した食材内部には負電極部872から正電極部871に向かって微弱電流が流れる。
なお、このような作用部870は、第一の箸片851だけではなく、第二の箸片852にも設けられていても良い。
これらの箸700、750、800、850は、箸片同士の間で食材を掴んだ時に食材内部に微弱電流が流れる。これにより、食材に極性が加わり、食材の細胞の電荷が一方方向(切削方向)に荷電される。そのため、食材の細胞は電流で引き締まり、食べた時に食材が新鮮に感じる印象を与えるという効果を生じ得る。また、微弱電流により食材に含まれる金属元素をイオン化させることで、味に変化が生じると考えられる。
図11は、微弱電流調理具であるトングの一例を示した図である。具体的には、図11(a)は、第一の形態に係るトング900の一例を示した図である。トング900は、先端に設けられた一対の作用部940同士の間で食材を挟み持つ調理具である。図示するように、トング900は、把持部910と、本体部920とを有している。
把持部910は、ユーザがトング900を把持する部位であって、コの字型に形成されており、本体部920が接続される一対の接続部911を有している。なお、把持部910は、食材を挟み込む動作すなわち接続部911同士を近づける方向に圧力をかけると、元の位置に戻ろうとする復元力が備わっている。
本体部920は、スプーンの形状に湾曲させた複数のワイヤーを、本体部920の輪郭を形作る最外周から内側方向に所定数(例えば、4つ)連ねた複数の層で構成されている。具体的には、本体部920は、保持部930と、作用部940とを有している。なお、本体部920には、一方の接続部911に接続される第一の本体部921と、他方の接続部911に接続される第二の本体部922とがある。
保持部930は、接続部911から先端方向に向かって略直線状に形成され、先端側端部で作用部940を保持している。作用部940は、食材を挟み持つ部位であり、湾曲させた複数のワイヤーの層により、スプーン形など所定の形状をしている。
なお、接続部911に固定されている第一の本体部921および第二の本体部922の端部は各々、導電性の接続線により把持部910内に設けられた電池のプラス極とマイナス極に接続されている。
このようなトング900は、本体部920が導電性の金属(例えば、ステンレス材)から形成されている。また、電池のプラス極に接続されている第一の本体部921側の作用部940は正電極部となり、電池のマイナス極に接続されている第二の本体部922側の作用部940は負電極部となる。そのため、第一の作用部940および第二の作用部940同士の間で食材を挟み込むと、作用部940に接した食材内部には第一の本体部921側の作用部940から第二の本体部922側の作用部940に向かって微弱電流が流れる。
なお、トング900は、電池を用いない形態もある。この形態では、第一の本体部921の表面には、例えば金(Au)メッキが施される。また、第一の本体部921の把持部910側端部と第二の本体部922の把持部910側端部とが導電性の接続線により電気的に接続される。
金メッキが施された第一の本体部921側の作用部940は正電極部として機能する。また、ステンレス材が露出する第二の本体部922側の作用部940は負電極部として機能する。
この場合、トング900の作用部940の表面には、相互にイオン化傾向の異なる金属が露出している。そのため、第一の本体部921側の作用部940と、第二の本体部922側の作用部940との間に電位差が生じ、作用部940に挟み込まれた食材内部には負電極部から正電極部に向かって電流が流れる。なお、第一の本体部921と第二の本体部922との間には、接続線を介して、正電極部である第一の本体部921から負電極部である第二の本体部922に向かって電流が流れる。
図11(b)は、第二の形態のトング950の一例を示した図である。図示するように、トング950は、トング900と同様、把持部960と、本体部970とを有し、本体部970は第一の本体部971と、第二の本体部972とから構成されている。なお、把持部960はトング900と同様であるため、詳細な説明は省略する。
第一の本体部971および第二の本体部972は各々、トング900と同様、スプーンの形状に湾曲された複数のワイヤーから構成されている。また、第一の本体部971は、正電極部と負電極部とが交互に現れるように、最外周(1番目)のワイヤー981および3番目のワイヤー983が把持部960内の電池のプラス極に接続され、2番目のワイヤー982および4番目のワイヤー984が電池のマイナス極に接続されている。
また第二の本体部972は、最外周(1番目)のワイヤー985および3番目のワイヤー987が把持部960内の電池のマイナス極に接続され、2番目のワイヤー986および4番目のワイヤー988が電池のプラス極に接続されている。
このようなトングの作用部980で食材を挟み込むと、第一の本体部971における最外周のワイヤー981および3番目のワイヤー983と、2番目のワイヤー982と4番目のワイヤー984との間に微弱電流が流れる。また、第二の本体部972における最外周のワイヤー985および3番目のワイヤー987と、2番目のワイヤー986と4番目のワイヤー988との間に微弱電流が流れる。さらに、第一の本体部971における正電極側のワイヤーから第二の本体部972における負電極側のワイヤーとの間に微弱電流が流れる。
なお、トング950は、電池を用いない形態もある。この形態では、第一の本体部971の最外周(1番目)のワイヤー981および3番目のワイヤー983の表面には、例えば金(Au)メッキが施される。また、第二の本体部972の2番目のワイヤー986および4番目のワイヤー988の表面には、例えば金(Au)メッキが施される。また、第一の本体部971と第二の本体部972とは導電性の接続線により電気的に接続される。
金メッキが施された第一の本体部971の1番目のワイヤー981および3番目のワイヤー983と、第二の本体部972の2番目のワイヤー986および4番目のワイヤー988とは正電極部として機能する。また、ステンレス材が露出する第一の本体部971の2番目のワイヤー982および4番目のワイヤー984と、第二の本体部972の1番目のワイヤー985および3番目のワイヤー987とは負電極部として機能する。
第一の本体部971および第二の本体部972の作用部980において、隣り合うワイヤー同士の表面にはイオン化傾向の異なる金属が露出している。そのため、第一の本体部971および第二の本体部972の作用部980では、隣り合うワイヤーとの間に電位差が生じ、作用部980に接触した食材の内部には負電極部から正電極部に向かって電流が流れる。また、作用部980に挟み込まれた食材内部には第一の本体部971(または第二の本体部972)の負電極部から第二の本体部972(または第一の本体部971)の正電極部に向かって電流が流れる。
このように、トング900、950は、食材を掴んだ時に食材内部に微弱電流が流れる。これにより、食材に極性が加わり、食材の細胞の電荷が一方方向(切削方向)に荷電される。そのため、食材の細胞は電流で引き締まり、食べた時に食材が新鮮に感じる印象を与えるという効果を生じ得る。また、微弱電流により食材に含まれる金属元素をイオン化させることで、味に変化が生じると考えられる。
なお、このような形態の作用部940、980が適用される微弱電流調理具は、前述のワイヤーを湾曲して成形されたトング900、950に限られるものではなく、一般的なスプーン形のトングや先端部がフォーク形のトングに適用されても良い。
図12は、微弱電流調理具である筋切り/肉叩きの一例を示した図である。図示するように、筋切り/肉叩き1000は、ハンマー形であり、機能の異なる2つの面を有している。具体的には、筋切り/肉叩き1000は、把持部1010と、本体部1020と、2つの作用部1030、1040とを有している。
把持部1010は、筋切り/肉叩き1000の使用時にユーザが握る部位である。本体部1020は、肉などの食材を叩く部位であって、左右に機能の異なる第一の作用部1030と、第二の作用部1040とを有している。
第一の作用部1030は、筋切り機能を有する部位である。具体的には、第一の作用部1030は、肉の筋を断ち切るための所定長さ(例えば、数cm)の針状突起1031を複数有している。なお、隣り合う針状突起1031同士の間には隙間が形成されている。また、第一の作用部1030の表面は、絶縁部材が塗布された絶縁部になっている。すなわち、各針状突起1031の付け根部分は絶縁部になっている。
第二の作用部1040は、肉叩き機能を有する部位である。具体的には、第二の作用部1040は、数mm程度の比較的低い高さであって、固定されている面(土台部分)よりも反対側の面(使用時に食材に接触する面)の表面積が小さい台形ブロック1041を複数有している。なお、台形ブロック1041は、食材と接する面が本体部1020の表面積よりも小さいため、肉などの食材に接触する台形ブロック1041同士の間には隙間が形成される。また、第二の作用部1040の表面は、絶縁部材が塗布された絶縁部になっており、各台形ブロック1041の土台部分は絶縁部になっている。
このような筋切り/肉叩き1000は、少なくとも本体部1020が導電性の金属(例えば、ステンレス材)から形成されている。また、第一の作用部1030は、金メッキが施された針状突起1031と、亜鉛メッキが施された針状突起1031とが交互に現れるように構成されている。なお、金メッキが施された針状突起1031と亜鉛メッキが施された針状突起1031とは、本体部1020の内部において導電性の接続線で相互に接続されている。
また、第二の作用部1040は、金メッキが施された台形ブロック1041と、亜鉛メッキが施された台形ブロック1041とが交互に現れるように構成されている。なお、金メッキが施された台形ブロック1041と亜鉛メッキが施された台形ブロック1041とは、本体部1020内部において導電性の接続線で相互に接続されている。
金メッキが施された針状突起1031および台形ブロック1041は、正電極部として機能する。また、亜鉛メッキが施された針状突起1031および台形ブロック1041は、負電極部として機能する。また、食材を叩いた際、針状突起1031同士の間や台形ブロック同士の間には隙間が形成されるが、これらの隙間は正電極部と負電極部とを分離させる無接触部としての働きをする。また、正電極部として機能する針状突起1031と負電極部として機能する針状突起1031とは、第一の作用部1030の表面において絶縁部材により相互に絶縁されている。同様に、また、正電極部として機能する台形ブロック1041と負電極部として機能する台形ブロック1041とは、第二の作用部1040の表面において絶縁部材により相互に絶縁されている。
このように、針状突起1031の表面および台形ブロック1041の表面には、相互にイオン化傾向の異なる金属によるメッキ加工が施されている。これにより、針状突起1031や台形ブロック1041に接触する食材が電池における電解質の役割を果たす。これにより、食材を介して正電極の針状突起1031と負電極の針状突起1031との間、および、正電極の台形ブロック1041と負電極の台形ブロック1041との間に微弱電流が流れる。
このような筋切り/肉叩き1000は、食材の筋切りを行った際、あるいは、肉を叩いた際に、食材内部に微弱電流が流れる。そのため、作用部1030、1040に触れた食材には極性が加わり、食材の細胞の電荷が一方方向に荷電される。これにより、食材の細胞は電流で引き締まり、食べた時に食材が新鮮に感じる印象を与えるという効果が生じ得る。また、食材に含まれる金属元素を微弱電流によりイオン化することで、味に変化が生じると考えられる。
なお、筋切り/肉叩き1000は、把持部1010に電池を備える構成であっても良い。この場合、金メッキを施す代わりに正電極部として機能させる針状突起1031には導電性の接続線で電池のプラス極が接続される。また、亜鉛メッキを施す代わりに負電極部として機能させる針状突起1031には導電性の接続線で電池のマイナス極が接続される。
また、金メッキを施す代わりに正電極部として機能させる台形ブロック1041には導電性の接続線で電池のプラス極が接続される。また、亜鉛メッキを施す代わりに負電極部として機能させる台形ブロック1041には導電性の接続線で電池のマイナス極が接続される。
このような電池式の筋切り/肉叩きによっても前述の筋切り/肉叩き1000と同様の効果を得ることができる。なお、電池は把持部1010の内部に収容されていれば良い。
図13は、微弱電流食器具である器に関する図である。具体的には、図13(a)は、皿の一例を示した図である。図13(b)は、椀の一例を示した図である。13(a)に示すように、皿1100は、胴部1110と、台部1120とを有している。同様に、椀1200は、胴部1210と、台部1220とを有している。
皿の胴部1110は、食材を載せる部位である。胴部1110は、内側面全体が作用部1130になっている。具体的には、作用部1130は、底部1111から口部1112の間に内側面を一周する複数の正電極部1131と、正電極部1131同士の間に設けられた負電極部1132と、正電極部1131と負電極部1132とを分離する絶縁部1133とを有している。
同様に、椀の胴部1210は、食材やスープなどの液体を入れる部位である。胴部1210は、内側面全体が作用部1230になっている。具体的には、作用部1230は、底部1211から口部1212の間に内側面を一周する複数の正電極部1231と、正電極部1231同士の間に設けられた負電極部1232と、正電極部1231と負電極部1232とを分離する絶縁部1233とを有している。
このような皿1100および椀1200は、胴部1110、1210が導電性の金属(例えば、ステンレス材)から形成されている。また、正電極部1131、1231には金メッキが施されている。負電極部1132、1232は、ステンレス材が露出している。絶縁部1133、1233には絶縁部材が塗布され、正電極部1131と負電極部1132および正電極部1231と負電極部1232とを相互に絶縁する。
このように、皿1100の正電極部1131と負電極部1132および椀1200の正電極部1231と負電極部1232との表面には、相互にイオン化傾向の異なる金属が露出している。そのため、正電極部1131と負電極部1132および正電極部1231と負電極部1232との間に電位差が生じ、作用部1130、1230に接触した食材内部には負電極部1132(1232)から正電極部1131(1231)に向かって微弱電流が流れる。
食材を作用部1130、1230に置くと食材内部に微弱電流が流れる。そのため、作用部1130、1230に触れた食材には極性が加わり、食材の細胞の電荷が一方方向に荷電される。これにより、食材の細胞は電流で引き締まり、食べた時に食材が新鮮に感じる印象を与えるという効果が生じ得る。また、食材に含まれる金属元素を微弱電流によりイオン化することで、味に変化が生じると考えられる。
なお、皿1100および椀1200は、陶器製であっても良い。その場合、正電極部1131、1231は、例えば真空蒸着法により金メッキが施される。また、負電極部1132、1232は、例えば真空蒸着法により亜鉛メッキが施される。
このような陶器製の皿1100および椀1200でも、導電性の金属から形成された皿1100および椀1200と同様の効果を得ることができる。
なお、このような形態の微弱電流食器具は、前述の皿1100や椀1200に限られるものではなく、例えばお酒やワインなどの液体を入れるグラス、カップあるいはピッチャーであっても良い。
図14は、他の形態の椀1300の一例を示した図である。椀1300は、前述の椀1200と同様、胴部1310と、台部1320とを有している。
胴部1310は、内側面全体が作用部1330になっている。具体的には、作用部1330は、底部1311から口縁1312にかけて枝状に伸びる複数の正電極部1331と、正電極部1331を縁取る絶縁部1332と、絶縁部1332により正電極部1331と分離されている負電極部1333とを有している。
このような椀1300は、胴部1310が導電性の金属(例えば、ステンレス材あるいは錫材)から形成されている。また、正電極部1331には金メッキが施されている。負電極部1333は、ステンレス材(または錫材)が露出している。絶縁部1332には絶縁部材が塗布され、正電極部1331と負電極部1333を相互に絶縁する。
このように、作用部1330の表面には、相互にイオン化傾向の異なる金属が露出している。そのため、正電極部1331と負電極部1333との間に電位差が生じ、作用部1330に接触した食材内部には負電極部1333から正電極部1331に向かって微弱電流が流れる。
このような椀1300でも、椀1200と同様の効果を得ることができる。また、椀1300のように、作用部1330は様々な模様にデザインすることができるため、デザイン性のある微弱電流食器具を製造することが可能である。なお、作用部1330の模様は、例えば水玉模様のデザインなどがある。
図15は、微弱電流食器具の導電部および絶縁部に関する断面図である。具体的には、図15(a)は、金属製の胴部を有する微弱電流食器具の断面の一例を示した図である。図15(b)は、金属以外の材料で形成された胴部を有する微弱電流食器具の断面の一例を示した図である。
図15(a)に示すように、金属製の胴部を有する椀や皿などの微弱電流食器具は、胴部などの土台1400がステンレス材や錫材などの金属製であるため、負電極部1401として機能する。また、金メッキ(あるいは銀メッキ)を施した部位は正電極部1402として機能する。また、正電極部1402を縁取るようにして土台1400には溝1403が設けられ、絶縁部材(例えば、漆や塗料など)が塗布された絶縁部1404が形成される。
また、図15(b)に示すように、金属以外の胴部を有する椀や皿などの微弱電流食器具は、胴部などの土台1450が陶器や磁器あるいは木製などであるため、土台1450の表面に亜鉛メッキなどを施すことで負電極部1451を形成する。また、金メッキ(あるいは銀メッキ)を施した部位は正電極部1452となる。また、正電極部1452を縁取るようにして土台1450には溝1453が設けられ、絶縁部材(例えば、漆や塗料など)が塗布された絶縁部1454が形成される。
図16は、微弱電流食器具であるポット(あるいはピッチャー)に関する図である。具体的には、図16(a)は、第一の形態に係るポット1500の一例を示した図である。図示するように、ポット1500は、把持部1510と、本体部1520とを有している。
把持部1510は、ポット1500を持つ部位である。本体部1520は、水やお茶などの液体を入れる容器としての部位である。本体部1520は、内側に作用部1530を有している。
作用部1530は、本体部1520の内側に設けられ、本体部1520の内側面1531と、正電極部1532と、絶縁部1533とを有している。
本体部1520の内側面1531は、本体部1520に入れられた液体に直接接する面である。正電極部1532は、ポット1500の口縁付近から底付近までの長さを有するL字型に形成され、本体部1520の内側面1531に固定されている。なお、正電極部1532は、本体部1520の内側面1531に直接接している。
絶縁部1533は、本体部1520内に入れられた液体において、正電極部1532と本体部1520の内側面1531とを分離、絶縁する役割を果たす。なお、絶縁部1533は、円筒形をしており、正電極部1532が挿入された状態で内側面1531に固定されている。
このようなポット1500は、本体部1520が導電性の金属(例えば、ステンレス材)から形成されている。また、正電極部1532は、導電性の金属(例えば、ステンレス材)から形成され、表面に金メッキが施されている。また、ステンレス材が露出する本体部1520の内側面1531は、負電極部として機能する。なお、正電極部1532は、固定された本体部1520との間で電気的に接続されている。
このように、作用部1530には、相互にイオン化傾向の異なる金属が配置されているため、本体部1520に液体を入れると、正電極部1532と、負電極部である内側面1531との間に電位差が生じる。これにより、作用部1530に入れられた液体には、本体部1520の内側面1531から正電極部1532に向かって微弱電流が流れる。なお、作用部1530では、正電極部1532から本体部1520に向かって電流が流れる。入れられる液体としては、例えば、水、レモン水、茶(紅茶、日本茶、ウーロン茶など、)コーヒー、果物や野菜のジュース、スープ、酒類、炭酸飲料等が挙げられる。
図16(b)は、第二の形態に係るポット1550の一例を示した図である。図示するように、第二の形態に係るポット1550は、本体部1570が極性を持たず、L字型の正電極部1582および負電極部1583を本体部1570の内側面1581に設けている。
具体的には、ポット1550は、把持部1560と、本体部1570とを有し、本体部1570の内側面が作用部1580になっている。
作用部1580は、本体部1570の内側面1581と、正電極部1582と、負電極部1583と、絶縁部1584とを有している。
正電極部1582および負電極部1583は、ポット1550の口縁付近から底付近までの長さを有するL字型に形成され、本体部1570の内側面1581に固定されている。なお、正電極部1582と負電極部1583とは、導電性の接続線(図示せず)で電気的に接続されている。
絶縁部1584は、作用部1580内に入れられた液体において、正電極部1582と負電極部1583とを分離、絶縁する役割を果たす。なお、各絶縁部1584は円筒形をしており、正電極部1582および負電極部1583が挿入された状態で本体部1570の内側面1581に固定されている。
このようなポット1550は、本体部1570が非導電性の素材(例えば、ガラスやプラスチック)で形成されている。また、正電極部1582は、導電性の金属(例えば、ステンレス材)から形成され、表面に金メッキが施されている。また、負電極部1583は、ステンレス材など導電性の金属から形成され、表面に亜鉛メッキが施されている。なお、負電極部1583は、亜鉛メッキを施さず、ステンレス材を露出させても良い。
このように、作用部1580には、相互にイオン化傾向の異なる金属が配置されているため、本体部1570に液体を入れると、正電極部1582と、負電極部1583との間に電位差が生じる。これにより、作用部1580に入れられた液体には、負電極部1583から正電極部1582に向かって微弱電流が流れる。なお、作用部1580では、接続線を介して正電極部1582から負電極部1583に向かって電流が流れる。なお、正電極部1582および負電極部1583を、例えば籠型、柵型あるいは網型などとしても良い。また、正電極部1582および負電極部1583には、外部から電力(電流)が供給されるようにしても良い。
また、図16(c)に示す第三の形態に係るポット1590のように、正電極部1591および負電極部1592が各々、軸1593および軸1594周りに回転する攪拌機能を有していても良い。具体的には、ポット1590の正電極部1591および負電極部1592は各々、軸1593および軸1594を介してモーター1595に接続固定されており、モーター1595の回転に伴ってお互いが接触しないように軸回転する。このような第三の形態にかかるポット1590によれば、作用部1580に接した水などの液体に対して微弱電流を流すと共に攪拌することができるため、より効率的に微弱電流を流す効果を期待できる。なお、第二の形態に係るポット1550と同じ部分については同一の符号を付して説明を省略する。
また、第一の形態に係るポット1500および第二の形態に係るポット1550においても同様に、正電極部1532あるいは正電極部1582および負電極部1583と図示しないモーターとを接続固定し、これらの電極部の長手方向の軸周りに回転運動させても良い。
図17(a)は、第四の形態に係るポット1600の一例を示した図である。ポット1600は、把持部1610と、本体部1620とを有している。なお、把持部1610は、ポット1600を持つための部位である。
本体部1620は、液体を入れるポット1600の外郭をなし、内側に容器部1630を内包している。また、本体部1620の外側表面であって口金1621および首金1622には導電性の金属から形成された導電部1623が形成されている。
容器部1630は、本体部1620よりも一回り小さい大きさで、本体部1620の内側に固定されている容器状の部位である。容器部1630は、内側面に作用部1640を有している。
作用部1640は、口縁から底部までの縦長帯状の正電極部1641および負電極部1642と、正電極部1641および負電極部1642と導電部1623とが電気的に接続する接続部1643と、を有している。なお、接続部1643は、正電極部1641と導電部1623との間および負電極部1642と導電部1623との間を貫通する導電性の金属ピンなどで形成される。
このようなポット1600は、本体部1620および容器部1630が非導電性のガラスやプラスチックから形成されている。また、導電部1623は、導電性の金属から形成されている。また、正電極部1641および負電極部1642は各々、導電性の金属(例えば、ステンレス材)から形成されている。また、正電極部1641の表面には金メッキが施され、負電極部1642の表面は亜鉛メッキが施されている。なお、負電極部1642は、亜鉛メッキを施さずステンレス材が露出したものであっても良い。
このように、作用部1640には、相互にイオン化傾向の異なる金属が配置されているため、容器部1630に液体を入れると、正電極部1641と、負電極部1642との間に電位差が生じる。これにより、容器部1630に入れられた液体には、負電極部1642から正電極部1641に向かって微弱電流が流れる。なお、本体部1620では、導電部1623および接続部1643を介して正電極部1641から負電極部1642に向かって電流が流れる。
図17(b)は、第五の形態に係るポット1650の一例を示した図である。図示するように、ポット1650は、把持部1660と、本体部1670とを有している。
本体部1670は、液体を入れる容器である。本体部1670の内側面には作用部1680が設けられ、外側面には正電極部と負電極部とを電気的に接続する接続線1671が設けられている。
作用部1680は、正電極部1681と、負電極部1682と、絶縁部1683とを有している。正電極部1681および負電極部1682は、突起状の電極であり、本体部1670の内側面に固定されている。また、絶縁部1683は、円筒形をしており、正電極部1681および負電極部1682の縁を囲んだ状態で本体部1670の内側面に固定されている。なお、正電極部1681と負電極部1682とは、接続線1671で電気的に接続されている。
このようなポット1650は、本体部1670が非導電性の素材(例えば、ガラスやプラスチック)から形成されている。また、正電極部1681は、導電性の金属(例えば、ステンレス材)から形成され、表面に金メッキが施されている。また、負電極部1682は、ステンレス材など導電性の金属から形成され、表面に亜鉛メッキが施されている。なお、負電極部1682は、亜鉛メッキを施さず、ステンレス材を露出させても良い。
このように、作用部1680には、相互にイオン化傾向の異なる金属が配置されているため、本体部1670に液体を入れると、正電極部1681と、負電極部1682との間に電位差が生じる。これにより、作用部1680に入れられた液体には、負電極部1682から正電極部1681に向かって微弱電流が流れる。なお、作用部1680では、接続線1671を介して正電極部1681から負電極部1682に向かって電流が流れる。
図17(c)は、第六の形態に係るポット1700の一例を示した図である。ポット1700は、本体部1710の底部1711が凸状になっており、例えばステンレス材から形成された電熱板で形成されている。また、本体部1710の内側面に設けられた作用部1720には、例えばステンレス材の表面に金メッキが施されたリング部材1721が金属製の留め具1722により取り付けられている。また留め具1722と底部1711とは、導電性の接続線1723により電気的に接続されている。すなわち、リング部材1721と底部1711とは、相互に電気的に接続されている。なお、リング部材1721は正電極部として機能し、底部1711の電熱板は負電極部として機能する。なお、本体部1710は、ガラスやプラスチックなどの絶縁部材から形成されている。
このようなポット1700によっても、作用部1720に接した液体に対して微弱電流を流すことができる。
ポット1500、1550、1600、1650、1700は、液体に含まれる金属元素を微弱電流によりイオン化することができ、味に変化を生じさせるという効果を期待できる。
図18は、微弱電流調理具である鍋などに関する図である。具体的には、図18(a)は、鍋(お米を炊くご飯鍋を含む)1800の一例を示した図である。図18(b)および(c)は各々、片手鍋(フライパン)1850、1900の一例を示した図である。
図18(a)に示すように、鍋1800は、ステンレス材などから形成され、負電極部1832として機能する電熱板を底部1810としている。また、鍋1800は、例えば金メッキを施した金属部材(例えば、ステンレス材)から形成された正電極部1831が金属製の留め金を介して本体部1820に固定されている。また、正電極部1831と負電極部1832とは、図示しない導電性の接続線により電気的に接続されている。なお、これらの正電極部1831および負電極部1832が設けられた本体部1820の内側が作用部1830になっている。また、本体部1820は、ガラスやプラスチックなどの絶縁部材から形成されている。
このような鍋1800によっても、作用部1830に接した食材あるいはスープなどの液体に対して微弱電流を流すことができる。
なお、鍋1800は、正電極部1831が蓋1840に取り付けられ、本体部1820に蓋1840を被せた時に作用部1830内の食材あるいはスープなどの液体に正電極部1831が接触することで、負電極部1832から正電極部1831に向かって微弱電流が流れるようにしても良い。
また、図18(b)に示すように、片手鍋1850は、ステンレス材などから形成され、負電極部1872として機能する本体部1860と、例えば金メッキを施した金属部材(例えば、ステンレス材)から形成された正電極部1871と、正電極部1871を本体部1860に固定しつつ正電極部1871と負電極部1872とを相互に絶縁する絶縁部(例えば、絶縁部材を塗布した留め具)1873とを有している。なお、正電極部1871は、本体部1860に接触しつつ絶縁部1873の留め具により本体部1860に固定されている。なお、これらの正電極部1871および負電極部1872を有する本体部1860の内部が作用部1870になっている。
このような片手鍋1850によっても、作用部1870に接した食材あるいはスープなどの液体に対して微弱電流を流すことができる。
また、図18(c)に示すように、片手鍋1900は、ステンレス材などから形成され、負電極部1932として機能する電熱板を底部1910としている。また、片手鍋1900は、例えば金メッキを施した金属部材(例えば、ステンレス材)から形成されたリング状の正電極部1931が本体部1920の内側面に固定されつつ、金属製の留め具1933に接続している。また、留め具1933と負電極部1932とは、図示しない導電性の接続線により電気的に接続されている。なお、これらの正電極部1931および負電極部1932が設けられた本体部1920の内側が作用部1930になっている。また、本体部1920は、ガラスやプラスチックなどの絶縁部材から形成されている。
このような片手鍋1900によっても、作用部1930に接した食材あるいはスープなどの液体に対して微弱電流を流すことができる。
なお、これらの微弱電流調理具および微弱電流食器具は、上記において特に言及していない場合でも、電池あるいは外部電源などから正電極部および負電極部に電力供給し、これらの電極部に接触する飲食物に電流が流れる形態が存在するものとする。
また、これらの微弱電流調理具および微弱電流食器具は、前述の第二実施形態と同様、内部に太陽電池を設け、太陽電池を電源として電流を流すようにしても良い。また、微弱電流調理具および微弱電流食器具は、内部に小型の整流器を備え、家庭用コンセントを電源として電流を流すようにしても良い。また、微弱電流調理具および微弱電流食器具は、交流電流を整流した直流電流を用いて作用部に接触する食材内部に微弱電流を流すようにしても良い。なお、整流器は、半波整流回路を備えた簡易的なものであれば良い。また、微弱電流調理具および微弱電流食器具は、直流ばかりでなく、三角波や方形波などを含む交流電流や脈流などを用いても良い。また、把持部に圧電素子を設け、ユーザが微弱電流調理具および微弱電流食器具を握った時(手で持った時)の荷重(圧力)に基づき電流が生じるようにしても良い。
また、微弱電流調理具および微弱電流食器具は、電流の量や周波数を制御したり、導通時間を規定したり、断続的に行うなど稼働時間を制御しても良い。なお、かかる制御は、マイコン制御であっても良く、外部からの無線を含む通信による制御であっても良い。
また、対象とする食材は、野菜、肉類、果物、麺類およびパン類などあらゆる食材にも及ぶものであり、椀やポットに入れる液体は水、お茶、お酒、ジュース、お吸い物、味噌汁、スープなどあらゆる飲み物が対象となる。