上記特許文献1に開示の吸音器は、長方形状の箱体を用いて構成されており構造が複雑である。また、上記特許文献2に開示の吸音器では、隔壁を蓋部材にボルト固定する場合には部品点数が増えるし、隔壁をホイールリムのリム外周面側に設ける場合にはホイールリムの構造が複雑になるという問題が生じ得る。
そこで、本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、自動車用ホイールにおいて、タイヤ主気室で生じた空洞共鳴音を吸音するための構造を簡素化するのに有効な技術を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明にかかる自動車用ホイール(101,201)は、円筒状のホイールリム(102)及び平板状のプレート(110,210)を備える。ホイールリム(102)は、タイヤとの間にタイヤ主気室(107)を区画するリム外周面において、タイヤのビードを保持する車両外側のビードシート(102g)と車両内側のビードシート(102g)との間にホイール径方向(Y)内方に凹み且つホイール周方向(X)に延びる凹溝(102c)を有する。プレート(110,210)は、ホイールリム(102)に固定され、タイヤ主気室(107)に連通するタイヤ副気室(108)を凹溝(102c)との間に区画する。プレート(110,210)は、ホイール周方向(X)に沿って湾曲しつつ延在する湾曲板部(111,211)と、湾曲板部(111,211)のホイール周方向(X)の両端部(111a;111b,211a;211b)のうちの少なくとも一方の端部から凹溝(102c)のホイール軸方向(Z)の横断面を塞ぐように一体的に延出した隔壁部(112,212)と、を用いて構成される。このプレート(110,210)は、湾曲板部(111,211)が凹溝(102c)の互いに対向する車両外側の溝壁(102e)と車両内側の溝壁(102e)とに接続されている。湾曲板部(111,211)が車両外側の溝壁(102e)と車両内側の溝壁(102e)とに接続されている2つの位置(P1,P2)は、タイヤを組むための空間(106)を確保するようにホイール径方向(Y)についていずれもビードシート(102g)のホイール径方向(Y)の高さよりも低い位置であると共に凹溝(102c)の溝底(102d)からのホイール径方向(Y)外方への高さ(H)が同一の位置である。
上記の「平板状のプレート」とは、一様な厚みを有する平板を用いて構成されたものであり、湾曲板部及び隔壁部を一体的に備える板状部材である。このような単純形状のプレートとホイールリムの凹溝との協働によって空洞共鳴音の吸音のためのタイヤ副気室が区画されるため、タイヤ副気室を区画するための構造を簡素化することができる。また、タイヤを組むための空間を確保しつつリムの凹溝にプレートに固定することが可能になる。
上記構成の自動車用ホイール(101,201)では、プレート(110,210)は、金属材料によって構成され、ホイールリム(102,202)は、プレート(110,210)の湾曲板部(111,211)が車両外側の溝壁(102e)と車両内側の溝壁(102e)とのそれぞれに接続されている位置に、ホイール径方向(Y)外方に向き且つホイール周方向(X)に延びる係止面を有する係止部(102f)を備え、プレート(110,210)は、湾曲板部(111,211)のプレート幅方向の両端が係止部(102f)によって係止された状態で溶接によってホイールリム(102,202)に固定されるのが好ましい。本構成によれば、ホイールリムの係止部を利用してホイールリムへのプレートの固定を容易且つ精度良く行うことが可能になる。
上記構成の自動車用ホイール(101,201)では、プレート(110,210)は、湾曲板部(111,211)と隔壁部(112,212)との境界部分において、プレート幅方向の両端(111c;111c,211c;211c)がそれぞれ係止部(102f)に沿って形成された一定幅の延出片(113,213)を備えると共に延出片(113,213)のプレート幅方向の内側にプレート周方向(X)に延びる切り欠き(114,214)を備え、切り欠き(114,214)のプレート幅方向の内側のみが折り曲げられているのが好ましい。本構成によれば、プレートの隔壁部を折り曲げる際に、隔壁部の外縁がホイールリムの凹溝の表面に倣って当接しやすくなる。その結果、隔壁部と凹溝との間に形成され得る隙間を小さく抑えることができる。
上記構成の自動車用ホイール(101,201)では、プレート(110,210)は、湾曲板部(111,211)と隔壁部(112,212)との境界部分において、プレート幅方向の車両外側にある切り欠き(114,214)と車両内側にある切り欠き(114,214)との間でプレート幅方向に延在する溝(115,215)を備えているのが好ましい。本構成によれば、溝における折り曲げ加工によって隔壁部を容易に形成することが可能になる。
上記構成の自動車用ホイール(101)では、プレート(110)の隔壁部(112)は、湾曲板部(111)のホイール周方向の両端部(111a,111b)のうち一方の端部(111a)のみから一体的に延出し、一方の端部(111a)の領域においては隔壁部(112)を介してタイヤ副気室(108)とタイヤ主気室(107)が分断される一方で、両端部(111a,111b)のうち他方の端部(111b)の領域においては凹溝(102c)のホイール軸方向の横断面によって構成された開口(109)を通じてタイヤ副気室(108)がタイヤ主気室(107)に連通するように構成されるのが好ましい。
この構成によれば、平板状のプレートとリムの凹溝との協働によって、タイヤ主気室から開口を通じて分岐した後に凹溝に沿ってホイール周方向に延びるタイヤ副気室が区画される。この場合、プレート及びリムが所謂「サイドブランチ管」を構成している。このサイドブランチ管では、車両走行時の路面入力によってタイヤ主気室内で生じたタイヤ空洞共鳴音がタイヤ副気室において吸収される。この場合、湾曲板部の一方の端部のみに隔壁部を備える単純形状のプレートを用いてタイヤ副気室を区画することができる。
上記構成の自動車用ホイール(201)では、プレート(210)の隔壁部(212)は、湾曲板部(211)のホイール周方向の両端部(211a,211b)からそれぞれ一体的に延出し、両端部(211a,211b)のそれぞれの領域においては隔壁部(212)を介してタイヤ副気室(108)とタイヤ主気室(107)が分断される一方で、湾曲板部(211)の板厚方向に貫通形成された連通孔(217)を通じてタイヤ副気室(108)がタイヤ主気室(107)に連通するように構成されるのが好ましい。
この構成によれば、平板状のプレートとリムの凹溝との協働によって、タイヤ主気室から湾曲板部の連通孔を通じて分岐した後に凹溝に沿ってホイール周方向に延びるタイヤ副気室が区画される。この場合、プレート及びリムが所謂「ヘルムホルツレゾネータ」を構成している。このヘルムホルツレゾネータでは、車両走行時の路面入力によってタイヤ主気室内で生じたタイヤ空洞共鳴音がタイヤ副気室において吸収される。この場合、連通孔を有する湾曲板部の両端部に隔壁部を備える単純形状のプレートを用いてタイヤ副気室を区画することができる。
尚、上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
以上のように、本発明によれば、自動車用ホイールにおいて、タイヤ主気室で生じた空洞共鳴音を吸音するための構造を簡素化することが可能になった。
(第1実施形態)
以下、本発明の自動車用ホイール(以下、単に「ホイール」ともいう)の第1実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、当該図面では、ホイール周方向を矢印Xで示し、ホイール径方向を矢印Yで示し、ホイール軸方向を矢印Zで示している。
図1に示されるように、ホイール101は、円環状のタイヤ(図示省略)が取り付けられる円筒状のホイールリム(以下、単に「リム」ともいう)102と、リム102の車外側筒端部に一体状に接合された円盤状のホイールディスク(以下、単に「ディスク」ともいう)103と、を備えている。このリム102が本発明の「ホイールリム」に相当する。ディスク103は、円筒状のリム102にその車外側開口を覆うように設けられるものであり、ハブ部104と、複数(本実施例では8つ)のスポーク部105を備えている。このホイール101は、アルミニウム合金を主要材料とし、リム102及びディスク103が鋳造製法によって成型された鋳造アルミホイールである。
ハブ部104は、ディスク103のディスク中央領域(円盤中心側の領域)に設けられており、このハブ部104が車両側の車軸ハブ120に取付けられる。このハブ部104には、車軸ハブ120側の複数の締結用ボルト(図示省略)がそれぞれ挿通されるボルト穴104aが複数(本実施例では4つ)設けられている。
複数のスポーク部105は、ホイール101のホイール径方向Yについてハブ部104からリム102まで放射状に延出してリム102に接続されている。これら複数のスポーク部105は、ホイール周方向Xについて等間隔で配置されている。
図2に示されるように、ホイール101のリム102は、車両外側に設けられた円環状のアウターリム102aと、車内側に設けられた円環状のインナーリム102bと、リム102のリム外周面においてホイール軸方向Zについてアウターリム102aの車両外側のビードシート102gとインナーリム102bの車両内側のビードシート102gとの間に介在する凹溝(ウェル部)102cと、を備えている。2つのビードシート102gはいずれも、タイヤのビードを保持する。リム102のリム外周面は、タイヤとの間に空気が導入されるタイヤ主気室107を区画する。凹溝102cは、リム102のリム外周面においてホイール径方向(図1中のホイール径方向Y)内方に凹み且つホイール周方向(図1中のホイール周方向X)に沿って環状に延びる溝部分である。この凹溝102cは、ホイール周方向Xに沿って円環状に延在した溝底102dと、溝底102dの車両外側及び車両内側のそれぞれからホイール径方向外方に沿って立設した2つの溝壁(車両外側の溝壁102eと車両内側の溝壁102e)と、を備えている。この凹溝102cが本発明の「凹溝」に相当する。本実施の形態のリム102は、特にこの凹溝102cがホイール径方向内方に深く落ち込んでおり、凹溝102cの凹み深さが相対的に大きいリム、所謂「深底リム」として構成されている。
リム102には平板状の2つのプレート110が設けられている。2つのプレート110は、ホイール周方向Xについて概ね等間隔で配置されている。プレート110は、一様な板厚を有する金属材料製の平板を用いて構成されている。このプレート110は、リム102の凹溝102cをホイール径方向(図1中のホイール径方向Y)外方から覆うようにリム102に固定されている。このプレート110が本発明の「プレート」に相当する。尚、必要に応じて、プレート110の数(即ち、後述のタイヤ副気室108の数)として2つ以外の数を採用することもできる。
図2及び図3に示されるように、プレート110は、湾曲板部111及び隔壁部112を一体的に備える1つの部材からなる。湾曲板部111は、ホイール軸方向Zの一定の板幅d1でホイール周方向Xに沿って湾曲しつつ長尺状に延在している。この湾曲板部111が本発明の「湾曲板部」に相当する。隔壁部112は、湾曲板部111の長手方向(ホイール周方向X)の一方の端部111aから凹溝102cのホイール軸方向Zの横断面を塞ぐように一体的に延出している。即ち、この隔壁部112は、凹溝102cの溝形状に倣った形状になるように寸法設定されており、具体的には凹溝102cのホイール軸方向Zの横断面と概ね同形状になっている。この隔壁部112は、湾曲板部111の一方の端部111aが折れ曲がった折れ曲がり形状によって構成されている。この隔壁部112が本発明の「隔壁部」に相当する。これに対して、プレート110は、湾曲板部111の長手方向(ホイール周方向X)の他方の端部111bに隔壁部112のような部位を備えていない。これにより、湾曲板部111の他方の端部111bの領域においては凹溝112cのホイール軸方向Zの横断面によって開口109が構成されている。
図4に示されるように、プレート110は、湾曲板部111が凹溝102cの互いに対向する2つの溝壁102e,102eに接続されている。湾曲板部111が2つの溝壁102e,102eに接続されている2つの位置(車両外側の位置P1及び車両内側の位置P2)は、タイヤを組むための空間106を確保するようにいずれもビードシート102gのホイール径方向Yの高さよりも低い位置であると共にそれぞれ凹溝102cの溝底102dからのホイール径方向Y外方への高さHが同一の位置である。上記のように、プレート110が凹溝102cの2つの溝壁102e,102e同士を接続する構造は、凹溝102cのように凹み深さが大きい深底リムにおいてプレート110をリム102に固定するのに適している。
プレート110の固定のために、リム102は、凹溝102cの2つの溝壁102e,102eの位置P1,P2のそれぞれに、ホイール径方向Y外方に向き且つホイール周方向Xに延びる係止面を有する係止部102fを備えている。2つの係止部102f,102fの係止面のホイール軸方向Zの間隔d2が湾曲板部111の板幅d1を若干下回るように構成されている。この係止部102fが本発明の「係止部」に相当する。本構成において、プレート110の湾曲板部111は、ホイール軸方向Zの両端111c,111cにおいてホイール径方向Y外方から係止部102f,102fに当接することによって係止される。そして、この湾曲板部111は、車両外側の係止部102fと車両内側の係止部102fとによって係止された状態で溶接によってリム102に固定される。これにより、リム102の係止部102fを利用してリム102へのプレート110の固定を容易且つ精度良く行うことが可能になる。
プレート110の湾曲板部111が係止部102fに固定された状態(以下、「プレート110の固定状態」ともいう)では、湾曲板部111の外表面よりも外側(ホイール径方向外方)の空間(第1空気室)がタイヤ主気室107として構成される。一方で、プレート110の固定状態では、湾曲板部111の内表面よりも内側(ホイール径方向内方)の空間、即ち湾曲板部111及び隔壁部112とリム102の凹溝102cとの間に区画された空間(第2空気室)がタイヤ副気室108として構成される。ここでいうタイヤ主気室107及びタイヤ副気室108がそれぞれ、本発明の「タイヤ主気室」及び「タイヤ副気室」に相当する。
更に、プレート110は、湾曲板部111と隔壁部112との境界部分において、プレート幅方向の両端111c,111cがそれぞれ係止部102fに沿って形成された一定幅の延出片113を備えている。延出片113は、プレート幅方向の大きさが係止部102fの係止面のプレート幅方向の大きさに相当するように寸法設定されている。この延出片113は、プレート110の湾曲板部111が係止部102fに係止される際に、係止部102fに対する湾曲板部111の位置決めを行う位置決め手段となる。
図5に示されるように、タイヤ副気室108は、湾曲板部111の一方の端部111aの領域においては、隔壁部112を介してタイヤ主気室107と分断されている。これに対して、このタイヤ副気室108は、湾曲板部111の他方の端部111bの領域においては、開口109を通じてタイヤ主気室107に連通している。本実施の形態では、2つのプレート110によって互いに独立した2つのタイヤ副気室108が形成される。これら2つのタイヤ副気室108は、ホイール周方向Xについて互いに離間して配置されており全周にわたる環形状を構成するものではなく、各タイヤ副気室108が開口109を通じてタイヤ主気室107に連通している。
この場合、平板を用いて構成されたプレート110とリム102の凹溝102cとの協働によってホイール周方向Xに延びるタイヤ副気室108が区画されている。タイヤ副気室108は、開口109においてタイヤ主気室107から分岐しており、このタイヤ副気室108が、所謂「サイドブランチ管」を構成している。本構成では、湾曲板部111の一方の端部111aのみに隔壁部112を備える単純形状のプレート110を用いてタイヤ副気室108が区画されるため、タイヤ副気室108を区画するための構造を簡素化することができる。
タイヤ副気室108によって構成されたサイドブランチ管は、車両走行時の路面入力によってタイヤ主気室107内で生じたタイヤ空洞共鳴音を吸収する吸音器としての機能を果たす。この機能を達成するために、本実施の形態では、タイヤ副気室108のホイール周方向Xの長さLを、タイヤ主気室107における空洞共鳴波長の4分の1に相当する基準長さに近似した長さに設定している。これにより、タイヤ主気室107における音波と、開口109を通じてタイヤ副気室108に導入され隔壁部112に衝突した後に開口109を通じて再びタイヤ主気室107へと戻る音波とが、互いに逆位相で合成されて音を打ち消すように作用する。その結果、タイヤ主気室107における特定周波数(典型的には200〜250Hz付近の周波数)の振動を吸収することができ、車両走行時の車内騒音を低減することが可能になる。尚、このサイドブランチ管によって特定周波数の音を吸収するという具体的な作用効果については、例えば先行技術文献である特開2005−205934号公報に開示の、タイヤ空洞部(タイヤ主気室)に開口するように形成された2本の管(図1中の2つの管4,4)を用いる技術を参照することができる。
図6に示されるように、プレート110は、隔壁部112のプレート幅方向の長さが湾曲板部111のプレート幅方向の長さを下回るように構成されている。プレート110は、湾曲板部111と隔壁部112との境界部分において、延出片113のプレート幅方向の内側にプレート周方向Xに延びる切り欠き114を備えている。そして、プレート110は、この切り欠き114のプレート幅方向の内側のみが折り曲げられている。プレート110のうち隔壁部112のプレート幅方向の両端を係止部102fの係止面の大きさに合わせて切り欠き114の形状のように溝カットすることによって、プレート幅方向の大きさが係止部102fの係止面のプレート幅方向の大きさに相当するように寸法設定された延出片113を設けることができる。更に、プレート110は、湾曲板部111と隔壁部112との境界部分において、プレート幅方向の車両外側にある切り欠き114と車両内側にある切り欠き114との間でプレート幅方向(プレート110の固定状態でのホイール軸方向Z)に直線状に延在する溝115を備えている。この溝115は、プレート110の折り曲げ加工(プレス加工)の際の隔壁部112の折り曲げの起点になる。
図7に示されるように、溝115は、プレート110の板厚を他の部位よりも薄肉にすることによって形成されている。この溝115を設けることにより、折り曲げ加工前の位置(図7中の実線で示される位置)にある隔壁部112を所定の折り曲げ方向Rに折り曲げる際、この隔壁部112を、凹溝102cのホイール軸方向Zの横断面を塞ぐ折り曲げ加工後の位置(図7中の二点鎖線で示される位置)まで容易に折り曲げることが可能になる。これにより、プレート110の溝115における折り曲げ加工によって隔壁部112を容易に形成することが可能になる。また、隔壁部112のプレート幅方向の両側に切り欠き114を設けることにより、隔壁部112を折り曲げ方向Rに折り曲げる際に、隔壁部112の外縁112aがリム102の凹溝102cの表面に倣って当接しやすくなる。具体的には、図4が参照されるように、隔壁部112は、その外縁112aが凹溝102cの溝底102d及び溝壁102eに倣って配置される。その結果、隔壁部112と凹溝102cとの間に形成され得る隙間を小さく抑えることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のホイール201について説明する。尚、このホイール201において、プレート110の変更例であるプレート210以外の構成要素は、ホイール101の構成要素と同一である。従って、ホイール201に関する以下の説明では、プレート210以外の構成要素についてはホイール101の場合と同一の符号を付したうえで、当該構成要素についての説明は省略する。
図8及び図9に示されるように、リム102には平板状の4つのプレート210が設けられている。4つのプレート210は、ホイール周方向Xについて概ね等間隔で配置されている。プレート210は、前記のプレート110と同様に一様な板厚を有する金属材料製の平板によって構成されている。このプレート210は、リム102の凹溝102cをホイール径方向(図9中のホイール径方向Y)外方から覆うようにリム102に固定されている。このプレート210が本発明の「プレート」に相当する。尚、必要に応じて、プレート210の数(即ち、後述のタイヤ副気室208の数)として4つ以外の数を採用することもできる。
プレート210は、湾曲板部211及び隔壁部212を一体的に備える1つの部材からなる。湾曲板部211は、ホイール軸方向Zの一定の板幅d1でホイール周方向Xに沿って湾曲しつつ長尺状に延在している。プレート210は、前記のプレート110と同様に湾曲板部211が凹溝102cの互いに対向する2つの溝壁102e,102eに前記の位置P1,P2と同様の位置において接続されている。この湾曲板部211が本発明の「湾曲板部」に相当する。隔壁部212は、前記の隔壁部112と同様の形状を有し、湾曲板部211の長手方向(ホイール周方向X)の両端部211a,211bからそれぞれ凹溝102cのホイール軸方向Zの横断面を塞ぐように一体的に延出している。即ち、湾曲板部211の両端部211a,211bが折れ曲がった折れ曲がり形状によって2つの隔壁部212,212が構成されている。本構成において、プレート210の湾曲板部211は、ホイール軸方向Zの両端211c,211cにおいてホイール径方向Y外方から係止部102fに当接することによって係止される。そして、この湾曲板部211は、車両外側の係止部102fと車両内側の係止部102fとによって係止された状態で溶接によってリム102に固定される。これにより、リム102の係止部102fを利用してリム102へのプレート210の固定を容易に行うことが可能になる。この隔壁部212が本発明の「隔壁部」に相当する。
更に、プレート210は、湾曲板部211と隔壁部212との境界部分において、プレート幅方向の両端211c,211cがそれぞれ係止部102fに沿って形成された一定幅の延出片213を備えている。延出片213は、前記の延出片113と同様に、プレート幅方向の大きさが係止部102fの係止面のプレート幅方向の大きさに相当するように寸法設定されている。この延出片213は、プレート210の湾曲板部211が係止部102fに係止される際に、係止部102fに対する湾曲板部211の位置決めを行う位置決め手段となる。
タイヤ副気室208は、湾曲板部211の両端部211a,211bのそれぞれの領域においては、隔壁部212を介してタイヤ主気室107と分断されている。このタイヤ副気室208が本発明の「タイヤ副気室」に相当する。また、プレート210は、湾曲板部211の板厚方向に貫通形成された連通孔217を備えている。このため、タイヤ副気室208が湾曲板部211の連通孔217を通じてタイヤ主気室107に連通している。本実施の形態では、4つのプレート210によってそれぞれが独立した4つの副気室208が形成される。これら4つのタイヤ副気室208は、ホイール周方向Xについて互いに離間して配置されており全周にわたる環形状を構成するものではなく、各タイヤ副気室208が連通孔217を通じてタイヤ主気室107に連通している。
この場合、平板を用いて構成されたプレート210とリム102の凹溝102cとの協働によってホイール周方向Xに延びるタイヤ副気室208が区画されている。タイヤ副気室208は、連通孔217においてタイヤ主気室107から分岐しており、これらタイヤ副気室208と連通孔217が、所謂「ヘルムホルツレゾネータ」を構成している。本構成では、連通孔217を有する湾曲板部211の両端部211a,211bに隔壁部212を備える単純形状のプレート210を用いてタイヤ副気室208が区画されるため、タイヤ副気室208を区画するための構造を簡素化することができる。
タイヤ副気室208と連通孔217とによって構成されたヘルムホルツレゾネータは、車両走行時の路面入力によってタイヤ主気室107内で生じたタイヤ空洞共鳴音を吸収する吸音器としての機能を果たす。この場合、タイヤ副気室208の容積と連通孔217の孔径及び孔長を適宜に調整することによって、タイヤ主気室107における特定周波数(典型的には200〜250Hz付近の周波数)の振動を吸収することができ、車両走行時の車内騒音を低減することが可能になる。連通孔217の断面形状は、円形、楕円形、多角形等のいずれの形状であってもよい。尚、このヘルムホルツレゾネータによって特定周波数の音を吸収するという具体的な作用効果については、例えば先行技術文献である特開2005−219739号公報に開示の、タイヤ主気室に貫通孔を通じて連通する副気室(図3中の副気室50)を用いる技術を参照することができる。
図10に示されるように、プレート210の湾曲板部211のうち凹溝102cに対向する裏面211dにはプレート210の板厚を増やすように構成された厚肉部216が設けられている。連通孔217は、湾曲板部211及び厚肉部216にわたって貫通形成されている。厚肉部216を設けることによって、ホイール201の軽量化のために湾曲板部211を薄肉にした場合でも、連通孔217を所望の孔長にすることができる。
更に、図11に示されるように、プレート210は、前記の切り欠き114と同様に、湾曲板部211と隔壁部212との境界部分において、延出片213のプレート幅方向の内側にプレート周方向Xに延びる切り欠き214を備えている。そして、プレート210は、この切り欠き214のプレート幅方向の内側のみが折り曲げられている。この切り欠き214を設けることによって、隔壁部212の外縁212aがリム102の凹溝102c(溝底102d及び溝壁102e)の表面に倣って当接しやすくなり、隔壁部212と凹溝102cとの間に形成され得る隙間を小さく抑えることができる。更に、プレート210は、前記の溝115と同様に、湾曲板部211と隔壁部212との境界部分において、プレート幅方向の車両外側にある切り欠き214と車両内側にある切り欠き214との間でプレート幅方向(プレート210の固定状態でのホイール軸方向Z)に直線状に延在する溝215を備えている。これにより、プレート210の溝215における折り曲げ加工によって隔壁部212を容易に形成することが可能になる。
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
上記の実施形態では、プレート110,210の隔壁部112,212を板状部材の折り曲げ加工(プレス加工)によって形成する場合について記載したが、本発明では、折り曲げ加工以外の他の加工方法、例えば鋳造、切削加工、粉末焼成等によって隔壁部112,212を形成することもできる。折り曲げ加工以外の他の加工方法を用いる場合には、プレート110,210の切り欠き114,214及び溝115,215の少なくとも一方を省略することもできる。
上記の実施形態では、プレート110,210を溶接によってリム102に固定する場合について記載したが、本発明では、プレート110,210を溶接以外の他の固定方法、例えばボルト固定、圧入、接着等を用いてリム102に固定することもできる。
上記の実施形態では、金属材料製のプレート110,210について記載したが、本発明では、プレート110,210を、樹脂材料やゴム材料等、金属材料以外の材料を用いて構成することもできる。
上記の実施形態では、アルミニウム合金を主要材料とした鋳造アルミホイールであるホイール101,102について記載したが、本発明では、ホイール101,102の主要材料として、アルミニウム合金以外の材料、例えば、マグネシウム合金、チタン合金などの軽合金、炭素繊維強化樹脂(カーボン)等、種々の材料を用いることもできる。また、本発明では、ホイール101,102の製造方法として鋳造製法以外に鍛造製法を用いることもできる。