JP6562614B2 - 接着剤組成物および接着シート - Google Patents

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Description

本発明は、接着剤組成物および接着シートに関する。
接着剤の硬化物における相分離構造は、接着特性にとって重要である。従来、外力が印加されて当該硬化物が凝集破壊する際、分離した相同士の境界に沿って破壊が進行し、高い強度が得られることが知られている。
例えば、特許文献1には、所定のエポキシ樹脂と、エポキシ基を有する高分子化合物と、エポキシ硬化剤とを含有する接着剤組成物を硬化させると、相分離して構造周期が0.01μm以上0.5μm未満である相分離構造が形成されることが記載されている。
また、例えば、特許文献2には、マトリックス樹脂としてのエポキシ樹脂と、炭素繊維と、を含むエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られるエポキシ樹脂硬化物であって、構造周期が1nm〜5μmである相分離構造を有するエポキシ樹脂硬化物が記載されている。
特許第5109572号公報 特開2014−122312号公報
特許文献1および2のように所定の構造周期の相分離構造を有する樹脂硬化物が開示されているが、従来の接着剤組成物よりも硬化後に高い接着性を発現させることのできる接着剤組成物が求められている。
本発明の目的は、硬化物の接着性を向上させることのできる接着剤組成物および接着シートを提供することである。
本発明の一態様によれば、アクリル重合体と、エポキシ系熱硬化性樹脂と、熱硬化剤と、を含む接着剤組成物であって、
前記接着剤組成物を硬化させて得られる硬化物は、相分離構造を有し、
前記硬化物の相分離構造は、1.2μm以下の第1の相関長L、および6.5μm以上の第2の相関長Lを有することを特徴とする接着剤組成物が提供される。
前述の本発明の一態様に係る接着剤組成物において、前記第1の相関長Lは、下記数式(数1)で算出され、前記第2の相関長Lは、下記数式(数2)で算出されることが好ましい。
=2π/q≦1.2μm …(数1)
=2π/q≧6.5μm …(数2)
(前記数式(数1)において、qは、走査型プローブ顕微鏡を用いて前記硬化物の表面位相像を観察し、前記表面位相像に対して2次元高速フーリエ変換を施してフーリエ変換像を得て、前記フーリエ変換像に基づいて波数に対する強度の関係を示す1次元強度分布プロファイルを得て、前記1次元強度分布プロファイルにおいて第1のピークを示す波数(単位は、μm−1)であり、
前記数式(数2)において、qは、前記第1のピークよりも低い波数領域において第2のピークを示す波数(単位は、μm−1)である。)
前述の本発明の一態様に係る接着剤組成物において、さらにシラン化合物を含むことが好ましい。
また、本発明の一態様によれば、前述の本発明に係る接着剤組成物を含む接着剤層と、基材と、を有することを特徴とする接着シートが提供される。
本発明によれば、硬化物の接着性を向上させることのできる接着剤組成物および接着シートを提供することができる。
実施例および比較例に係る接着剤組成物の硬化物の表面位相像である。 図1よりも観察領域を狭くして得た表面位相像である。 前記表面位相像に対して2次元高速フーリエ変換を施して得たフーリエ変換像である。 実施例に係る前記硬化物の1次元強度分布プロファイルである。 補正後の前記1次元強度分布プロファイルである。
〔接着剤組成物〕
本実施形態の接着剤組成物は、第1の樹脂成分と、第2の樹脂成分と、熱硬化剤と、を含む。本実施形態の接着剤組成物を硬化させて得られる硬化物は、所定の構造周期性を示す相分離構造を有する。本実施形態の接着剤組成物に含まれる第1の樹脂成分としては、アクリル重合体であることが好ましく、第2の樹脂成分としては、エポキシ系熱硬化性樹脂であることが好ましい。本実施形態の接着剤組成物は、硬化前は粘着性を有し、熱により硬化して接着強度が向上する粘接着型の接着剤組成物であることが好ましい。
相分離構造としては、例えば、海島構造および共連続構造が挙げられる。海島構造は、連続的に繋がった海(連続相)と、島(分散相)とを有し、海に島が点在している構造である。共連続構造は、相分離した各相が、それぞれ三次元的に繋がった連続相となっている構造である。
前記硬化物の相分離構造は、1.2μm以下の第1の相関長Lおよび6.5μm以上の第2の相関長Lを有する。第1の相関長Lは、下記数式(数1)で算出され、第2の相関長Lは、下記数式(数2)で算出されることが好ましい。
=2π/q≦1.2μm …(数1)
=2π/q≧6.5μm …(数2)
前記数式(数1)において、qは、走査型プローブ顕微鏡を用いて前記硬化物の表面位相像を観察し、前記表面位相像に対して2次元高速フーリエ変換を施してフーリエ変換像を得て、前記フーリエ変換像に基づいて波数に対する強度の関係を示す1次元強度分布プロファイルを得て、前記1次元強度分布プロファイルにおいて第1のピークを示す波数(単位は、μm−1)である。前記数式(数2)において、qは、前記1次元強度分布プロファイルにおいて、前記第1のピークよりも低い波数領域に第2のピークを示す波数(単位は、μm−1)である。
走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope; SPM)としては、例えば、走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope; STM)、原子間力を利用する原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope; AFM)等を用いることが好ましい。原子間力顕微鏡において、センサー部であるカンチレバーを共振させた状態でレバーの振動振幅が一定になるように、試料表面との距離を制御しながら形状を測定するダイナミックフォースモード(DFM)で、前記硬化物を観察することがより好ましい。走査型プローブ顕微鏡にて前記硬化物の表面位相像を観察する際、観察領域は、特に限定されないが、例えば、縦125μmおよび横125μmの正方形に設定される。
2次元高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform; FFT)は、前記表面位相像に対して施される。2次元高速フーリエ変換は、画像解析ソフトウエアを備えたコンピュータを用いて行われる。画像解析ソフトウエアとしては、例えば、ImageJ(アメリカ国立衛生研究所(NIH)製)等が用いられる。
2次元高速フーリエ変換の処理を施すと、前記表面位相像における濃淡の位置情報が周期情報に変換され、フーリエ変換像が得られる。さらに、1次元強度分布プロファイルは、フーリエ変換像における強度を方位角方向に平均化することで得られる。この1次元強度分布プロファイルは、縦軸が強度(単位は、任意単位(arbitrary unit; a.u.))であり、横軸が波数(単位は、μm−1)である。前記硬化物について得られる1次元強度分布プロファイルは、2つ以上のピークを示す。1次元強度分布プロファイルに対しては、バックグラウンドの補正処理を施すことが好ましい。
本実施形態では、1次元強度分布プロファイルにおいて、高波数側のピークを第1のピークとし、第1のピークを示す波数がqであり、第1のピークよりも低波数側のピークを第2のピークとし、第2のピークを示す波数がqである。求めた波数qおよび波数q並びに前述の数式(数1)および(数2)に基づいて、第1の相関長Lおよび第2の相関長Lが算出される。ピークの存在の判定基準としては、バックグラウンドとして後述する指数関数を選択し、求めた1次元強度分布プロファイルからバックグラウンドを差し引いたとき、上に凸の形状が存在し、その最大値の前後で接線の傾きが負から正に変化するとき、ピークであると判断できる。
第1の相関長Lは、0.01μmよりも大きく、0.1μm以上1.2μm以下であることが好ましく、1.0μm以上1.2μm以下であることがより好ましい。Lが、0.01μm以下である場合、組成物である高分子の1つが持つ慣性半径と等しくなるため、相が形成された状態ではなくなってしまい、目的とする構造が得られない。
第2の相関長Lは、7.0μm以上であることが好ましく、7.5μm以上であることがより好ましい。また、第2の相関長Lは、125μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。
また、LとLの比率(L/L)は、6.5/1.2=5.4以上であることが好ましく、7.5以上であることがより好ましい。
本実施形態に係る接着剤組成物は、その硬化物の相分離構造において、さらに所定範囲の相関長を有していてもよい。例えば、第3の相関長Lを有していてもよい。第3の相関長Lを与える第3のピークが前記1次元強度分布プロファイルにおいて観測された場合、当該第3のピークを示す波数q(単位は、μm−1)および下記数式(数3)に基づいて、第3の相関長Lが算出される。
=2π/q …(数3)
第3の相関長Lは、125μmよりも大きいことが好ましく、この場合、第2の相関長Lは、125μm以下であることが好ましい。
上述の範囲で定義される2つ以上の相関長を有する相分離構造が形成される要因としては、例えば、接着剤組成物の粘度、接着剤組成物の反応性、接着剤組成物に含まれる水酸基および芳香族環の数、硬化条件などが現時点では推測される。しかしながら、本発明は、これらの推測される要因に限定されて構成されるものではない。本発明の接着剤組成物は、その硬化物が上述の相関長LおよびLの関係を満たす相分離構造を有していればよい。
(アクリル重合体(A))
アクリル重合体(A)としては、従来公知のアクリル重合体を用いることができる。
アクリル重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、1万以上200万以下であることが好ましく、10万以上150万以下であることがより好ましい。アクリル重合体(A)のMwが1万以上であれば、接着剤組成物を半導体用材料としてのダイシングシート等に用いた場合に接着剤層と基材との接着力が強過ぎて生じる半導体チップのピックアップ不良を低減できる。アクリル重合体(A)のMwが200万以下であれば、被着体の凹凸へ接着剤層が追従し易くなり、ボイド等の発生を抑制できる。
アクリル重合体(A)のMwは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
アクリル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、−60℃以上70℃以下であることが好ましく、−30℃以上50℃以下であることがより好ましい。アクリル重合体(A)のTgが−60℃以上であれば、前述と同様、半導体チップのピックアップ不良を低減できる。アクリル重合体(A)のTgが70℃以下であれば、接着剤組成物をダイシングシート等に用いた場合にウェハを固定するための接着力が十分得られる。
なお、アクリル重合体(A)のTgは、アクリル重合体(A)を構成するモノマーの単独重合体のTgからFoxの式を用いて算出したものである。
アクリル重合体(A)を構成するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル基を有するアクリル酸エステル、および不飽和カルボン酸等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1以上18以下であることが好ましく、より具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、および(メタ)アクリル酸ブチルなどが挙げられる。
環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、およびイミドアクリレート等が挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、および2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
グリシジル基を有するアクリル酸エステルとしては、例えば、グリシジルアクリレート、およびグリシジルメタクリレート等が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等が挙げられる。
アクリル重合体(A)を構成するモノマーは、1種類であってもよいし、2種以上であってもよい。
アクリル重合体(A)を構成するモノマーとしては、少なくとも水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いることが好ましい。アクリル重合体(A)を構成するモノマーとして、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いることで、エポキシ系熱硬化性樹脂(B)との相溶性が向上する。
この場合、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位は、アクリル重合体(A)において、1質量%以上20質量%以下の範囲で含まれることが好ましく、3質量%以上15質量%以下の範囲で含まれることがより好ましい。
アクリル重合体(A)は、具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体であることが好ましい。
また、上記(メタ)アクリル酸エステルおよびその誘導体などと共に、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、及びスチレン等をアクリル重合体(A)の原料モノマーとして用いてもよい。
(エポキシ系熱硬化性樹脂(B))
エポキシ系熱硬化性樹脂(B)としては、従来公知の種々のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ系熱硬化性樹脂(B)としては、1分子中に2つ以上の官能基を含むエポキシ樹脂が挙げられ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、および縮合環芳香族炭化水素変性エポキシ樹脂等、並びにこれらエポキシ樹脂のハロゲン化物等が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されないが、150g/eq以上1000g/eq以下であることが好ましい。なお、エポキシ当量は、JISK7236に準じて測定される値である。
本実施形態の接着剤組成物において、エポキシ系熱硬化性樹脂(B)の含有量は、アクリル重合体(A)100質量部に対して、1質量部以上1500質量部以下であることが好ましく、3質量部以上1000質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上1000質量部以下であることがさらに好ましい。
エポキシ系熱硬化性樹脂(B)の含有量が1質量部以上であれば、より高い接着力を有する接着剤層が得られる。また、エポキシ系熱硬化性樹脂(B)の含有量が1500質量部以下であれば、前述と同様、ダイシングシート等に用いた場合に基材と接着剤層との接着力が強すぎて生じる半導体チップのピックアップ不良を低減できる。
(熱硬化剤(C))
熱硬化剤(C)は、エポキシ系熱硬化性樹脂(B)に対する熱硬化剤として機能する。
熱硬化剤(C)としては、分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。その官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、および酸無水物基などが挙げられる。これらの中では、フェノール性水酸基、アミノ基、および酸無水物基が好ましく、フェノール性水酸基およびアミノ基がより好ましい。
熱硬化剤(C)の具体例としては、フェノール系熱硬化剤およびアミン系熱硬化剤が挙げられる。フェノール系熱硬化剤としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、多官能系フェノール樹脂、およびアラルキルフェノール樹脂などが挙げられる。アミン系熱硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド(DICY)などが挙げられる。
熱硬化剤(C)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の接着剤組成物において、熱硬化剤(C)の含有量は、エポキシ系熱硬化性樹脂(B)100質量部に対して、0.1質量部以上500質量部以下であることが好ましく、1質量部以上200質量部以下であることがより好ましい。
熱硬化剤(C)の含有量が0.1質量部以上であれば、接着剤組成物の硬化性が不足することを防止でき、その結果、より高い接着力を有する接着剤層が得られる。熱硬化剤(C)の含有量が500質量部以下であれば、接着剤組成物の吸湿性が高まることを抑制でき、例えば、接着剤組成物をダイシングダイボンディングシート等の接着剤層に用いた場合に吸湿による半導体パッケージの信頼性低下を抑制できる。
(シラン化合物(D))
本実施形態の接着剤組成物は、さらに、シラン化合物(D)を含んでいることが好ましい。接着剤組成物がシラン化合物(D)を含んでいれば、被着体に対する接着力をさらに向上させることができる。また、シラン化合物(D)を使用することで、接着剤組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱性を損なうことなく、吸湿処理を行った場合であっても硬化物の接着特性を維持することができる。
シラン化合物(D)としては、アクリル重合体(A)やエポキシ系熱硬化性樹脂(B)などが有する官能基と反応する基を有する化合物が好ましく使用される。シラン化合物(D)としては、シランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロプロピル)トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、およびイミダゾールシランなどが挙げられる。
また、アルコキシ基の加水分解および脱水縮合により縮合した生成物であるオリゴマータイプのシランカップリング剤であってもよい。例えば、アルコキシ基を2つまたは3つ有する低分子シラン化合物と、アルコキシ基を4つ有する低分子シラン化合物とが脱水縮合して生成されるオリゴマーが、アルコキシ基の反応性に富み、かつ十分な数の有機官能基を有しているので好ましい。
アルコキシ基を2つまたは3つ有する低分子シラン化合物としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタクリロプロピル)トリメトキシシラン等が挙げられる。
アルコキシ基を4つ有する低分子シラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
共重合体であるオリゴマーとしては、例えば、ポリ3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピルメトキシシロキサンとポリジメトキシシロキサンの共重合体であるオリゴマーが挙げられる。
シランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の接着剤組成物において、シラン化合物(D)の含有量は、アクリル重合体(A)およびエポキシ系熱硬化性樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。シラン化合物(D)の含有量が、0.1質量部以上であれば、被着体に対する接着力をさらに向上させることができる。シラン化合物(D)の含有量が、20質量部以下であれば、アウトガスの発生を抑制できる。
(硬化促進剤(E))
硬化促進剤(E)は、接着剤組成物の硬化速度を調整するために用いられる。硬化促進剤(E)としては、好ましくは、エポキシ基とフェノール性水酸基やアミン等との反応を促進し得る化合物である。この化合物としては、具体的には、3級アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、およびテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
3級アミン類としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、およびトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。
イミダゾール類としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、および2−フェニル−4,5−ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
有機ホスフィン類としては、例えば、トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、およびトリフェニルホスフィン等が挙げられる。
テトラフェニルボロン塩としては、例えば、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、およびトリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等が挙げられる。
なお、本発明の接着剤組成物に含まれる硬化促進剤(E)は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
本実施形態の接着剤組成物には、エポキシ系熱硬化性樹脂(B)と熱硬化剤(C)の合計100質量部に対して、硬化促進剤(E)が、0.001質量部以上100質量部以下含まれることが好ましく、0.01質量部以上50質量部以下含まれることがより好ましく、0.1質量部以上10質量部以下含まれることがさらに好ましい。
(エネルギー線重合性化合物(F))
本実施形態の接着剤組成物は、エネルギー線重合性化合物(F)を含有してもよい。エネルギー線重合性化合物(F)をエネルギー線照射によって重合させることで、接着シートにおける接着剤層の接着力を低下させることができる。このため、半導体チップのピックアップ工程において、基材と接着剤層との層間剥離を容易に行えるようになる。
エネルギー線重合性化合物(F)は、紫外線や電子線などのエネルギー線の照射を受けると重合および硬化する化合物である。エネルギー線重合性化合物(F)としては、分子内に1つ以上のエネルギー線重合性二重結合を有する化合物、例えばアクリレート系化合物が挙げられる。
上記アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジシクロペンタジエンジメトキシジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシ変性アクリレート、ポリエーテルアクリレート、およびイタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
エネルギー線重合性化合物(F)の分子量(オリゴマーまたはポリマーの場合は重量平均分子量)は、100以上30000以下であることが好ましく、200以上9000以下程度であることがより好ましい。
本実施形態の接着剤組成物において、エネルギー線重合性化合物(F)の含有量は、アクリル重合体(A)100質量部に対して、1質量部以上400質量部以下であることが好ましく、3質量部以上300質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上200質量部以下であることがさらに好ましい。エネルギー線重合性化合物(F)の含有量がアクリル重合体(A)100質量部に対して400質量部以下であれば、有機基板やリードフレームなどに対する接着剤層の接着力を抑制できる。
(光重合開始剤(G))
本実施形態の接着剤組成物の使用に際して、前記エネルギー線重合性化合物(F)を使用する場合、紫外線などのエネルギー線を照射して、例えば、チップピックアップ工程における基材と接着剤層との接着力を低下させることが好ましい。接着剤組成物中に光重合開始剤(G)を含有させることで、重合および硬化時間、並びに光線照射量を少なくすることができる。
光重合開始剤(G)としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、1,2−ジフェニルメタン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、およびβ−クロールアンスラキノン等が挙げられる。
光重合開始剤(G)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤(G)の含有量は、エネルギー線重合性化合物(F)100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。光重合開始剤(G)の含有量が0.1質量部以上であれば、光重合の不足によるピックアップ性の低下を抑制できる。光重合開始剤(G)の含有量が10質量部以下であれば、光重合に寄与しない残留物の生成を抑制し、粘着剤組成物を充分に硬化させることができる。
(無機充填材(H))
本実施形態の接着剤組成物は、さらに無機充填材(H)を含んでいてもよい。
無機充填材(H)を接着剤組成物に配合することにより、該組成物の硬化物の熱膨張係数を調整し易くなる。半導体チップ、リードフレームおよび有機基板に対して硬化後の接着剤層の熱膨張係数を最適化することで、半導体パッケージの信頼性をより向上させることができる。また、接着剤硬化物の吸湿率を低減させることもできる。
無機充填材(H)としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、および窒化ホウ素等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維、並びにガラス繊維などが挙げられる。
これらの中でも、シリカフィラーおよびアルミナフィラーが好ましい。無機充填材(H)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の接着剤組成物において、無機充填材(H)の含有量は、接着剤組成物全体に対して、通常は、0質量%以上80質量%以下である。
(その他の成分(I))
本実施形態の接着剤組成物は、上記各成分(A)〜(H)の他に、その他の成分(I)として各種添加剤が必要に応じて含まれていてもよい。各種添加剤としては、例えば、ポリエステル樹脂等の可とう性成分、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、顔料、および染料などが挙げられる。
・接着剤組成物の調製
本実施形態の接着剤組成物は、上記各成分を適宜の割合で混合して得られる。混合に際しては、各成分を予め溶媒で希釈してから混合してもよいし、溶媒を加えながら混合してもよい。また、接着剤組成物を溶媒で希釈してから使用してもよい。溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、およびヘプタン等が挙げられる。
〔接着シート〕
本実施形態に係る接着シートは、基材と、前述の本実施形態に係る接着剤組成物を含む接着剤層を有する。接着剤層は、基材上に形成されている。接着シートの形状は、テープ状、ラベル状などあらゆる形状をとり得る。
接着シートの基材としては、例えば、合成樹脂フィルムや、上質紙、含浸紙、グラシン紙、およびコート紙などの紙材や、不織布、木材、並びに金属箔などのシート材料などを用いることができる。合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、およびフッ素樹脂フィルム等が挙げられる。その他、接着シートの基材としては、これらの架橋フィルムや積層フィルム等が挙げられる。また、基材の表面には、粘着剤が塗布されて粘着処理が施されていてもよい。基材の粘着処理に用いられる粘着剤としては、例えば、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、およびウレタン系等の粘着剤が挙げられる。
粘着剤として、再剥離性の粘着剤を用いることが好ましい。再剥離性の粘着剤としては、微弱な粘着性を示す粘着剤、表面凹凸を有する粘着剤、エネルギー線硬化型粘着剤、および熱膨張成分を含有する粘着剤などが挙げられる。再剥離性の粘着剤を用いることで、被着体を加工している間は基材と接着剤層間を強固に固定し、その後、接着剤層を被着体に固着残存させて基材から剥離することが容易となる。
本実施形態の接着シートは、半導体ウェハなどの被着体に貼付され、被着体に所要の加工を施した後、接着剤層を被着体に固着残存させて基材から剥離する。すなわち、接着剤層を、基材から被着体に転写する工程を含むプロセスに好適に使用される。このため、基材の接着剤層に接する面の表面張力は、40mN/m以下であることが好ましく、37mN/m以下であることがより好ましく、35mN/m以下であることがさらに好ましい。基材の接着剤層に接する面の表面張力の下限値は、通常、25mN/m程度である。このような表面張力が低い基材は、材質を適宜に選択して得ることが可能であるし、また基材の表面に剥離剤を塗布して剥離処理を施すことで得ることもできる。
接着シートにおける基材の厚みは、10μm以上500μm以下であることが好ましく、15μm以上300μm以下であることがより好ましく、20μm以上250μm以下であることがさらに好ましい。
接着シートにおける接着剤層の厚みは、1μm以上500μm以下であることが好ましく、5μm以上300μm以下であることがより好ましく、10μm以上150μm以下であることがさらに好ましい。
接着シートの製造方法は、特に限定されない。
例えば、接着剤組成物を基材上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥させて接着剤層を形成させることにより、接着シートを製造してもよい。また、接着剤層を剥離フィルム上に形成し、この接着剤層を基材に転写することにより、接着シートを製造してもよい。
接着シートは、接着剤層を保護するための保護層を有していてもよい。保護層は、基材上の接着剤層を覆うように設けられていることが好ましい。保護層としては、剥離フィルムであることが好ましく、接着剤層の上に剥離フィルムが積層されていてもよい。また、接着シートが半導体製造工程で用いられる場合、接着剤層の表面外周部には、リングフレーム等の他の治具を固定するために、別途、接着剤層や接着テープが設けられていてもよい。
本実施形態に係る接着剤組成物の硬化物は、前述した範囲内に第1の相関長Lおよび第2の相関長Lを有するという特定の相分離構造を有するので、高い接着性を有する。
本実施形態に係る接着シートの接着剤層に含まれる接着剤組成物において、その硬化物は、上述の特定の相分離構造を有するので、高い接着性を有する。
本実施形態の接着剤組成物および接着シートは、半導体用材料や光学材料として用いられることが好ましく、半導体用の接着剤組成物および接着シートであることがより好ましい。
本実施形態の接着剤組成物は、いわゆるダイボンディングシート、およびダイシングダイボンディングシートを構成する接着剤層の形成材料として好適に用いることができ、ダイシングダイボンディングシートに用いることがより好ましい。
本実施形態の接着シートは、ダイボンディングシート、およびダイシングダイボンディングシートとして好適に用いることができ、ダイシングダイボンディングシートとして用いることがより好ましい。
本実施形態の接着剤組成物であれば、その硬化物は、半導体の製造プロセスにおいて、厳しい熱湿条件およびリフロー工程を経た後であっても、被着体に対する高い接着力を有する。
接着剤組成物および接着シートを半導体用材料として用いる場合、赤外線や熱風等を利用して半導体装置を加熱する表面実装時には、半導体装置内で被着体となる金属材料や有機基板材料と接着剤層との線膨張係数の差に起因した応力が発生し、この応力が接着剤層と被着体との界面において剪断方向に加わる。接着剤硬化物に応力が加わって凝集破壊が発生する際、破壊が発生する制動開始時は、破壊の進展が遅く、破壊進展時には急速に破壊面が材料内部に進展する。
本実施形態の接着剤組成物および接着シートであれば、硬化物において構造周期性を示す第1の相関長Lおよび第2の相関長Lを有する相分離構造が形成されるので、破壊の発生が抑制され、かつ破壊の進展も抑制される。その結果、上述の応力に耐え得る高い接着信頼性を発現する。第2の相関長Lが6.5μm以上であれば、破壊がゆっくりと進展する制動開始時に、相の境界に沿って破壊面が形成されてアンカー的効果が得られ、十分な強度が発現すると考えられる。第1の相関長Lが1.2μm以下であれば、破壊が急激に進展する破壊進展時に、相を貫く破壊面が形成され難く、アンカー的な効果が得られ、十分な強度が発現すると考えられる。
本実施形態の接着剤組成物および接着シートは、接着剤層が接する被着体面が平滑であっても高い接着性を示す。従来、半導体チップの接着面の表面平均粗さRaは、120μm程度であるが、近年、半導体チップは、薄型化し、強度維持のために平滑化が図られ、実用されている。本実施形態の接着剤組成物および接着シートであれば、Raが120μm以下の接着面を有する半導体チップをより強い接着力で有機基板、リードフレーム、および別の半導体チップ等に実装させることができ、Raが10nm以下、さらには、Raが5nm程度であっても、強い接着力で実装させることができる。
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良等は、本発明に含まれる。
例えば、接着シートは、基材の両面に接着剤層を有していてもよい。この場合、少なくともいずれかの接着剤層に前記実施形態に係る接着剤組成物が含まれていればよい。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
〔1.接着剤硬化物の構造周期性評価〕
接着シートの接着剤層を硬化させて硬化物を得た。なお、接着剤層は、室温から昇温速度3℃/分にて昇温させ、125℃で1時間加熱した後、さらに昇温速度3℃/分にて昇温させ、175℃で2時間加熱して硬化させた。
得られた硬化物の表面を、走査型プローブ顕微鏡(島津製作所製、SPM−9700)を用いて観察した。表面観察は、DFMモードにて行った。観察の結果、125μm×125μmの領域の表面位相像を得た。得られた表面位相像に対して画像解析ソフトImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)を用いて2次元高速フーリエ変換(2D−FFT)を施し、画像の濃淡の位置情報を周期情報に変換した。次いで、方位角方向に平均化することにより半径方向の1次元強度分布プロファイルを得た。1次元強度分布プロファイルは、横軸を波数(単位は、μm−1。)、縦軸を強度(単位は、任意単位(a.u.)。)とした。
得られた1次元強度分布プロファイルに対して指数関数で表されるバックグラウンド補正を行った。まず、全波数領域を下記数式(数4)でフィッティングし、バックグラウンド値を求めた。
(バックグラウンド)=A×exp(−B×q)+C …(数4)
前記数式(数4)において、Aは、強度全体に対しての縮尺を補正するための係数であり、Bは、波数の依存性を直接的に示す係数であり、Cは、強度全体の高さを補正する係数であり、qは、各波数である。前記数式(数4)でフィッティングする際、各波数qにおける解析から求めた強度と、前記数式(数4)との差の自乗和が最小値となるように、各パラメータA、B、およびCを決定した。本実施例では、各パラメータA、B、およびCの決定において、マイクロソフト社製エクセル(登録商標)が備えるソルバー機能を利用したが、その他のソフトウエアを利用してもよい。
1次元強度分布プロファイルからバックグラウンドを引いて傾き補正を行った。補正後のプロファイルにおいてピークqおよびqを示す波数並びに前述の数式(数1),(数2)に基づいて、第1の相関長Lおよび第2の相関長Lを算出した。
〔2.引張強度試験〕
引張強度試験は、万能引張試験機5581シリーズ(Instron社製)を用いて行った。
測定用サンプルは、まず、厚さ40μmの接着剤層を重ねて厚さ約160μmの接着剤層を得て、次に、この接着剤層を熱硬化させ、硬化物を150mm×15mmサイズの矩形状に切り出すことにより作製した。なお、接着剤層は、室温から昇温速度3℃/分にて昇温させ、125℃で1時間加熱した後、さらに昇温速度3℃/分にて昇温させ、175℃で2時間加熱して硬化させた。
作製した測定サンプルを試験機に取り付けた。このとき、測定サンプルを支持する支持体間距離を100mmに調整した。引張速度は、0.5mm/分または30mm/分とした。測定用サンプルが破壊した時の強度を求めた。求めた強度は、測定用サンプルの断面積で除して、応力(単位は、MPaとした。)に換算した。なお、測定環境の温度は、250℃とした。
〔3.剪断強度試験〕
(3−1)上段チップの作製
ウェハバックサイドグラインド装置((株)ディスコ製、DGP8760)により、シリコンウェハの表面にドライポリッシュ処理を施した。接着シートを、処理後のシリコンウェハ(200mm径、厚さ500μm)のドライポリッシュ処理面に、テープマウンター(リンテック(株)製、Adwill RAD−2500 m/8)を用いて貼付するとともに、リングフレームに固定した。その後、紫外線照射装置(リンテック(株)製、Adwill RAD−2000)を用いて、前記接着シートの基材面側から紫外線を照射した。紫外線照射条件は、350mW/cm、および190mJ/cmとした。
次に、ダイシング装置((株)ディスコ製、DFD651)を使用し、シリコンウェハを5mm×5mmのサイズのチップにダイシングした。ダイシングの際の切り込み量は、接着シートの基材に対してチップ側から20μmの深さで切り込むようにした。ダイシング後、接着シートの接着剤層とともにチップを基材からピックアップして、上段チップを得た。Adwillは、登録商標である。
(3−2)測定用試験片の作製
ポリイミド系樹脂(日立化成デュポンマイクロシステムズ(株)製、PLH708)がコーティングされたシリコンウェハ(200mm径、厚さ725μm)にダイシングテープ(リンテック(株)製、AdwillD−650)を上記(3−1)と同様にテープマウンターを用いて貼付し、ダイシング装置を用いて12mm×12mmのチップサイズにダイシングし、ピックアップした。上記(3−1)で得た上段チップを、ダイシングされたシリコンウェハチップのポリイミド系樹脂がコーティングされた面へ接着剤層を介して100℃、2.94N/チップ、および1秒間の条件にてボンディングした。その後、室温から昇温速度3℃/分にて昇温させ、125℃で1時間加熱した後、さらに昇温速度3℃/分にて昇温させ、175℃で120分間加熱して、接着剤層を硬化させ、試験片を得た。
得られた試験片を、85℃、および85%RHの環境下に48時間放置し吸湿させた。吸湿後の測定用試験片に対して、最高温度260℃、加熱時間1分間のIRリフローを3回行った。IRリフロー後、さらに、プレッシャークッカーテストを、121℃、2.2気圧、および100%RHの条件で168時間行った。このようにして熱湿処理が施された測定用試験片を得た。なお、IRリフローは、(株)相模理工製のリフロー炉(WL−15−20DNX型)を用いて行った。
(3−3)剪断強度の測定
前記(3−2)で得た測定用試験片を、250℃に設定されたボンドテスターの測定ステージ上に30秒間放置した。放置後、ボンディング界面(接着剤層界面)より100μmの高さの位置よりスピード500μm/sで接着剤層界面に対し水平方向(せん断方向)に応力をかけた。測定用試験片の接着状態が破壊するときの力(剪断強度。単位は、Nとした。)を測定した。なお、6つの測定用試験片について、それぞれの剪断強度を測定し、その平均値を剪断強度とした。なお、ボンドテスターとしては、Dage社製のボンドテスターSeries4000を用いた。
〔4.表面実装性の評価〕
(4−1)上段チップの作製
ウェハバックサイドグラインド装置((株)ディスコ製、DGP8760)により、シリコンウェハの表面にドライポリッシュ処理を施した。接着シートを、シリコンウェハ(200mm径、厚さ75μm)のドライポリッシュ処理面に、テープマウンター(リンテック(株)製、Adwill RAD−2500 m/8)を用いて貼付するとともに、リングフレームに固定した。その後、紫外線照射装置(リンテック(株)製、Adwill RAD−2000)を用いて、前記接着シートの基材面側から紫外線を照射した。紫外線照射条件は、350mW/cm、および190mJ/cmとした。
次に、ダイシング装置((株)ディスコ製、DFD651)を用いて、シリコンウェハを8mm×8mmのサイズのチップにダイシングした。ダイシングの際の切り込み量は、接着シートの基材に対してチップ側から20μmの深さで切り込むようにした。ダイシング後、接着シートの接着剤層とともにチップを基材からピックアップして、上段チップを得た。
(4−2)下段チップの作製
前記(4−1)の上段チップの作製と同様、ウェハバックサイドグラインド装置((株)ディスコ製、DGP8760)を用いて、シリコンウェハの表面にドライポリッシュ処理を施した。ダイシングダイボンディングシート(リンテック(株)製、LE4738)を、シリコンウェハ(200mm径、厚み75μm)のドライポリッシュ処理面に、テープマウンター(リンテック(株)製、Adwill RAD−2500 m/8)を用いて貼付するとともに、リングフレームに固定した。その後、紫外線照射装置(リンテック(株)製、Adwill RAD−2000)を用いて、前記接着シートの基材面側から紫外線を照射した。紫外線照射条件は、350mW/cm、および190mJ/cmとした。
次に、ダイシング装置((株)ディスコ製、DFD651)を用いて、シリコンウェハを8mm×8mmのサイズのチップにダイシングした。ダイシングの際の切り込み量は、ダイシングダイボンディングシートの基材に対してチップ側から20μmの深さで切り込むようにした。ダイシング後、ダイシングダイボンディングシートの接着剤層とともにチップを基材からピックアップして、下段チップを得た。
(4−3)半導体パッケージの製造
チップをダイボンドする配線基板として、銅箔張り積層板の銅箔に回路パターンが形成され、該パターン上にソルダーレジストを有している2層両面基板を用いた。具体的には、銅箔張り積層板は、三菱ガス化学(株)製のBTレジンCCL−HL832HSであり、ソルダーレジストは、太陽インキ製造(株)製のPSR−4000 AUS303であり、2層両面基板は、日本CMK(株)製のLNTEG0001(サイズ:157mm×70mm×0.22t、最大凹凸15μm)を用いた。なお、水分を除去するため、2層両面基板を125℃の雰囲気下に20時間静置して、乾燥させた。
前記(4−2)でピックアップして得た下段チップを、接着剤層が2層両面基板とチップとの間に介在するように、乾燥後の2層両面基板の上に載置した。載置後、125℃、2.45N/チップ、および0.5秒間の条件で下段チップを2層両面基板にダイボンドさせた。ダイボンドの後、室温から昇温速度3℃/分にて昇温させ、120℃で30分間加熱し、さらに昇温速度3℃/分にて昇温させ、140℃で30分間加熱し、接着剤層を充分に加熱硬化させた。
次いで、前記(4−1)でピックアップして得た上段チップを、2層両面基板の上にダイボンドされ接着剤層が硬化した下段チップ上に、さらにダイボンドさせた。この時、接着剤層が下段チップのチップと上段チップとの間に介在するように上段チップをダイボンドさせた。ダイボンドは、125℃、2.45N/チップ、および0.5秒間の条件で行った。ダイボンド後、室温から昇温速度3℃/分にて昇温させ、125℃で1時間加熱し、上段チップの接着剤層を加熱硬化させた。
その後、上段チップおよび下段チップが実装された2層両面基板を、封止厚さが400μmになるようにモールド樹脂で封止した。封止は、封止装置を用いて、180℃、樹脂注入圧力6.9MPa、および120秒の条件で、トランスファー成型によって行った。その後、常圧下、175℃、および5時間の条件でモールド樹脂を充分に硬化させた。モールド樹脂として、京セラケミカル(株)製のKE−G1250を用いた。封止装置として、アピックヤマダ(株)製のMPC−06M Trial Pressを用いた。
次いで、封止された前記2層両面基板をダイシングテープ(リンテック(株)製、AdwillD−510T)に貼付して、ダイシング装置((株)ディスコ製、DFD651)を使用して15.25mm×15.25mmサイズにダイシングすることで、表面実装性評価用の半導体パッケージを得た。
(4−4)半導体パッケージの表面実装性の評価
得られた半導体パッケージを、85℃、および85%RHの条件下に168時間放置して、吸湿させた。吸湿後の半導体パッケージを、最高温度260℃、および加熱時間1分間の条件でIRリフローを3回行った。なお、IRリフローは、(株)相模理工製のリフロー炉(WL−15−20DNX型)を用いて行った。
IRリフロー後の半導体パッケージについて、上段チップと下段チップとの接合部の剥がれの有無、およびパッケージクラック発生の有無を、走査型超音波探傷装置および断面観察により評価した。上段チップと下段チップとの接合部に面積5.0mm以上の剥離を観察した場合に、剥がれが発生していると判断した。また、チップ接合部の外周の封止樹脂部に面積5.0mm以上の割れを観察した場合に、パッケージクラックが生じていると判断した。走査型超音波探傷装置としては、日立建機ファインテック(株)製のHye−Focusを用いた。
評価した半導体パッケージの数は、25個とした。25個中、剥がれ、およびパッケージクラックが生じていない半導体パッケージの個数を数えて、良品数を求めた。
〔5.接着剤組成物の調製〕
実施例および比較例に係る接着剤組成物の調製に用いた化合物を以下に示す。
(5−1)アクリル重合体(A)
(A1)メチルアクリレートホモポリマー
(Mw=31万、Tg=10℃)
(A2)メチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレートランダムポリマー
共重合組成モル比:
メチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート=85/15
(Mw=30万、Tg=6℃)
(A3)メチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレートランダムポリマー
共重合組成モル比:
メチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート=95/5
(Mw=75万、Tg=9℃、Mw/Mn=4.2)
(A4)メチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレートランダムポリマー
共重合組成モル比:
メチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート=95/5
(Mw=70万、Tg=9℃、Mw/Mn=1.8)
(A5)メチルアクリレート/ベンジルアクリレートランダムポリマー
共重合組成モル比:
メチルアクリレート/ベンジルアクリレート=95/5
(Mw=30万、Tg=10℃)
(A6)メチルアクリレート/グリシジルメタアクリレートランダムポリマー
共重合組成モル比:
メチルアクリレート/グリシジルメタアクリレート=85/15
(Mw=30万、Tg=14℃)
(5−2)エポキシ系熱硬化性樹脂(B)
(B1)液状エポキシ樹脂:
ビスフェノールA型エポキシ樹脂20重量%アクリル粒子含有品
エポキシ当量235g/eq、粘度=1500mPa・s(23℃)
(B2)固体エポキシ樹脂:
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂
エポキシ当量213〜223g/eq、軟化点90〜94℃、
粘度=3000mPa・s(150℃)
(B3)固体エポキシ樹脂:多官能型エポキシ樹脂
エポキシ当量158〜178g/eq、軟化点60〜72℃、
粘度=210mPa・s(150℃)
(B4)固体エポキシ樹脂:DCPD型エポキシ樹脂
エポキシ当量265〜300g/eq、軟化点75〜90℃、
粘度=800mPa・s(150℃)
(5−3)熱硬化剤(C)
(C)ノボラック型フェノール樹脂
フェノール性水酸基当量104g/eq、軟化点111℃、
粘度=3030mPa・s(150℃)
(5−4)シラン化合物(D)
(D)シランカップリング剤化合物:
(ポリ3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピルメトキシシロキサン、およびポリジメトキシシロキサンの共重合体(メトキシ当量13.7〜13.8mmol/g、分子量2000〜3000)と、ポリメトキシシロキサン(メトキシ当量20.8mmol/g、分子量600)との混合物
(5−5)硬化促進剤(E)
(E)硬化促進剤:2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール
(5−6)エネルギー線重合性化合物(F)
(F)エネルギー線重合性化合物:ジシクロペンタジエンジメトキシジアクリレート
(5−7)光重合開始剤(G)
(G)光重合開始剤:α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
(5−8)無機充填材(H)
(H)無機充填材:SiOフィラー
(5−9)その他の成分(I)
(I)その他の成分:熱可塑性ポリエステル樹脂
(Mw=3000、Tg=53℃、粘度=600mPa・s(200℃))
実施例1〜3および比較例1〜4において調製した接着剤組成物の組成を表1に示す。表1中、各化合物の配合量の値は、固形分換算の質量部を示す。本明細書において固形分とは、溶媒以外の全成分をいう。
表1に記載の実施例および比較例に係る接着剤組成物を、メチルエチルケトンにて固形分濃度が50質量%となるように希釈した。希釈した接着剤組成物をシリコーン処理された剥離フィルム(リンテック(株)製、SP−PET381031)上に塗布して塗膜を形成した。塗布後、塗膜をオーブンで100℃、および2分間の条件で加熱して乾燥させて、厚みが約40μmの接着剤層を形成させた。その後、接着剤層と基材であるポリエチレンフィルム(厚み100μm、表面張力33mN/m)とを貼り合わせ、接着剤層を基材上に転写させることで、接着シートを得た。得られた接着シートを用いて前述の各種試験を行った。
実施例および比較例に係る接着剤組成物の硬化物について、走査型プローブ顕微鏡で観察した。得られた125μm×125μmの領域の表面位相像を図1に示し、20μm×20μmの領域の表面位相像を図2に示す。表面位相像について2次元高速フーリエ変換(2D−FFT)を施して得たフーリエ変換像を、図3に示す。
図4には、実施例1に係るフーリエ変換像(図3(A))に基づいて得た1次元強度分布プロファイル、およびバックグラウンドが示され、図5には、実施例1に係る補正後のプロファイルが示されている。図5に示されているように、補正後のプロファイルは、波数q=0.80[μm−1]の位置に第1のピークを示し、波数q=5.7[μm−1]の位置に第2のピークを示した。実施例2〜3および比較例1〜4についても、実施例1と同様にして、補正後のプロファイルから第1のピークおよび第2のピークを示す波数を求めた。
実施例および比較例に係る接着シートを用いて、前述の方法により接着剤組成物を評価した。評価結果を表2に示す。
表2に示されているように、実施例1〜3に係る接着剤組成物は、その硬化物において前述の相関長LおよびLの関係を満たす構造周期性を有しており、当該構造周期性を有していない比較例1〜4に係る接着剤組成物に比べて高い接着性を示した。具体的には以下の通りである。実施例1〜3に係る接着剤組成物は、引張強度試験において、低速および高速の条件においていずれも比較例1〜4に比べて高い引張強度を示した。実施例1〜3に係る接着剤組成物は、剪断強度試験において、比較例1〜4に比べて高い剪断強度を示した。また、実施例1〜3に係る接着剤組成物は、半導体の製造プロセスにおける熱湿条件およびリフロー工程を経た場合においても、被着体に対する高い接着力を示した。
本発明は、接着剤組成物および接着シートに利用できる。

Claims (4)

  1. アクリル重合体と、エポキシ系熱硬化性樹脂と、熱硬化剤と、を含む接着剤組成物であって、
    前記アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーの重合体であり、
    前記アクリル重合体は、分子中に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を含み、
    前記エポキシ系熱硬化性樹脂は、分子中に2つ以上の官能基を有し且つエポキシ当量が150g/eq以上1000g/eq以下のエポキシ樹脂であり、
    前記エポキシ系熱硬化性樹脂は、少なくともビスフェノールA型エポキシ樹脂を含み、
    前記熱硬化剤は、分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物からなり、
    前記接着剤組成物を硬化させて得られる硬化物は、相分離構造を有し、
    前記硬化物の相分離構造は、1.2μm以下の第1の相関長L、および6.5μm以上の第2の相関長Lを有することを特徴とする接着剤組成物。
  2. 請求項1に記載の接着剤組成物において、
    前記第1の相関長Lは、下記数式(数1)で算出され、前記第2の相関長Lは、下記数式(数2)で算出されることを特徴とする接着剤組成物。
    =2π/q≦1.2μm …(数1)
    =2π/q≧6.5μm …(数2)
    (前記数式(数1)において、qは、走査型プローブ顕微鏡を用いて前記硬化物の表面位相像を観察し、前記表面位相像に対して2次元高速フーリエ変換を施してフーリエ変換像を得て、前記フーリエ変換像に基づいて波数に対する強度の関係を示す1次元強度分布プロファイルを得て、前記1次元強度分布プロファイルにおいて第1のピークを示す波数(単位は、μm−1)であり、
    前記数式(数2)において、qは、前記第1のピークよりも低い波数領域において第2のピークを示す波数(単位は、μm−1)である。)
  3. 請求項1または請求項2に記載の接着剤組成物において、
    さらにシラン化合物を含むことを特徴とする接着剤組成物。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の接着剤組成物を含む接着剤層と、
    基材と、を有することを特徴とする接着シート。
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