以下に本発明に係る畜舎について図面を参照しながら説明を行う。なお、以下の説明は本発明に係る畜舎の一実施形態の説明であり、これに限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下の実施形態は変更することができる。なお、以下の説明においては、畜舎を牛舎として説明を行う。しかし、本発明の畜舎は特に牛舎に限定されるものはなく、鶏舎、豚舎にも適用することができる。
図1に本発明に係る畜舎(牛舎)の斜視図を示す。また、図2には、牛舎1の側面図とその一部拡大図を示す。また、図3には、牛舎1の短辺方向の側面図を示す。図1、2、3を参照して、牛舎1は、長方形の床面10と、床面10の短辺側に設けられた端壁12a、12bと、床面10の長辺側に設けられた側壁14a、14bと、屋根16によって形成される。
床面10は、長方形の形状をしている。ただし、正方形を排除するものではない。牛舎を建設する土地の都合により、多少のゆがみはあってもよい。ここで「ゆがみ」とは、各辺が完全な直線でない若しくは、各辺をなす角度が90度からずれるという状況を含む。しかし、牛舎1は、舎内に均一な空気の流れを発生させることで、牛にとっての快適性を確保するものであるので、均一な空気の流れを阻害するほど、ゆがんでしまうのは好ましくない。
床面10の仕上がりは特に限定されるものではなく、多少の盛り土がされていてもよい。ただし、盛り土も、後述する均一な空気の流れを阻害するほど、凸凹ができるものは好ましくない。
図3を参照して、端壁12aと12bは、長方形の床面10の対向する短辺に設けられる。ここには、開閉扉13a、13bが設けられる。開閉扉13a、13bは、牛舎1への牛の出入りや、作業車両若しくは作業者の出入りのために利用される。通常、この開閉扉13a、13bは、閉じておくのが望ましい。端壁12a、12bに開口部があると、牛舎1内に発生させる均一な空気の流れを乱す原因になるからである。
図2を参照して、側壁14aは、長方形の床面10の対向する長辺に設けられる。なお、側壁14aと側壁14bは、ほぼ同じなので、側壁14aで説明を続ける。側壁14aには、貫通孔14ah(側壁14bなら貫通孔14bh)が形成されている。貫通孔14ahは、側壁一杯に広がる1つの貫通孔であってもよいし、複数の貫通孔が設けられていても良い。この貫通孔14ah(14bh)には、後述する送風機20a(20b)が設置される。また、貫通孔14ahは、側壁14a若しくは壁部材(側壁を形成するボード状の材料)を形成してから穿設してもよいし、凹状の切り込みが形成された壁部材を組み合わせて設けられた側壁14aの孔であってもよい。
図1を参照して、屋根16は、牛舎1内の均一な空気の流れを作る空間を形成する一部であるので、空気の流れを阻害しない程度の天井の平坦さを有するのが望ましい。屋根16が直接天井となる場合は、屋根16はフラットに近い方が望ましい。形状は、特に限定されるものではなく、切妻屋根、寄棟屋根など自由に利用してよい。切妻屋根で、屋根16の傾斜が1寸勾配(5.7度)のものが好適に利用することができる。なお、寒冷地では積雪防止及び屋根16の強度の観点から、2寸勾配(11.4度)であってもよい。また、勾配がこれ以上あっても、牛舎1内にバッフルと呼ばれる導風幕を張ることで、天井を形成することなく、空気の流れを均一にすることができる。
図2(a)には、側壁14aの正面図を示し、図2(b)には、一部拡大図を示す。側壁14a、14bに設けられる貫通孔14ah、14bhには、送風機20a、20bが、設置される。送風機20a、20bは、それぞれの側壁14a、14bに同数ずつ配置され側壁14a、14bの全面に配置されるのが望ましい。また、配置は隣接する送風機同士が等間隔になるように配置するのが望ましく、隣接する送風機同士の間隔は、使用するファンの直径20d以内の距離であるのが望ましい。均一な空気の流れを作るためには、隣接する送風機同士の間隔が開きすぎていては、空気が流れない空間ができてしまうからである。ただし、後述するように、上記の条件を満たしていなくとも、均一な空気の流れを作ることができる態様を排除しない。
図4には、1台の送風機20の例を示す。図4(a)は側面視、図4(b)は平面視である。送風機20は1120mm×1120mmの大きさであり、幅20wおよび高さとも同じ寸法である。ファンの直径20dは、1000mmの大きさを有する。送風機20の前面20fと後面20rには、ワイヤで形成された羽根ガードが設けられている。空気は後面20rから入り、前面20fから吹き出される。図4で例示した送風機20は、吸込側と吹出側が決まっているタイプの送風機20を示したが、ファンの回転方向によってどちらの面も吸込側にできるタイプの送風機20であればより好ましい。
図2を再度参照する。図2(a)に示すように、送風機20は、一方の側壁の全面に配置している。図2では、側壁14aに縦に接近して設けられた貫通孔14ah1、14ah2が設けられており、それぞれの貫通孔14ah1、14ah2に、送風機20aが設置されている様子を示す。つまり、縦方向に2段に送風機20aを配置した構成である。
横方向を見ると、それぞれの貫通孔14ah1、14ah2の間隔には、狭い部分15aと広い部分15bがある。広い部分15bは、側壁14a(14b)の柱等を設ける箇所である。狭い部分15aおよび広い部分15bともに、送風機20aのファンの直径20dより狭い間隔で設置されている。なお、ここで、隣接する送風機の間隔とは、隣接する送風機のファンの先端同士が最も短くなる距離を言う。
また、側壁14aの両端でも、端14at1、14at2から最初の送風機20aまでの距離は、送風機20aのファンの直径20dよりも短い間隔で配置されている。また、図2で示すように、送風機20aを縦方向に重ねる場合も、各送風機20a間の距離はファンの直径20dよりも短い間隔で配置されている。なお、送風機20aは、1段だけで配置してもよい。床面10から牛の頭の高さまでに均一な空気の流れができればよいからである。また、送風機20aは、3段以上の配置にすることを排除しない。
図示してないが、他方の側壁14bの全面にも同じように送風機20bが配置されている。一方の側壁14aの全面に配置された送風機20aと、他方の側壁14bに配置された送風機20bは、それぞれの送風機20a、20b同士が対向する位置に配置されている。ここで対向する位置とは、互いに向かい合う送風機20a、20bのファンの軸心がほぼ一致する位置関係をいう。
しかしながら、一方の側壁14aから他方の側壁14bまでの十分長い距離(少なくとも10m以上の距離)を空気が流れるため、送風機20a、20b同士が対向する位置になくても、均一な空気の流れを作ることはできる。なお、図4に示すように吸引と排出の方向が決まった送風機を用いる場合は、牛舎1の一方の側壁に配置した送風機は吸引側を外側に向け(プッシュ側送風機)、他方の側壁に配置した送風機は、排出側を外側に向ける(プル側送風機)。
また、プッシュ側送風機とは、送風機を吸引方向に配設した送風機であり、プル側送風機とは、送風機を排出方向に配設した送風機と言ってもよい。また、プル側送風機が配置されている側壁14bを第1側壁と呼び、プッシュ側送風機が配置されている側壁14aを第2側壁と呼ぶ。
図5には、これらの送風機を一斉に稼動させた場合に牛舎内に起こる空気の流れをシミュレーションしたベクトル図を示す。牛舎は、間口12wが25m、奥行き14wが48m、軒高16h(図3参照)が3mとした。また、プッシュ側14pushおよびプル側14pullはそれぞれ、ファンの直径が1m、送風量は345m3/minのものを22台、2段に配置した。牛舎1内に風速2m/sの均一な空気の流れを作る場合を想定している。全部で88台の送風機を用いた計算である。
図5の牛舎内の矢印は、2m/sの風速を示す。牛舎の隅々まで2m/sの風速の空気の流れが生じていることがわかる。
一方、図6には、他方の側壁14bだけに送風機20bを配置し、一方の側壁14aには、貫通孔14ahだけを形成した場合のシミュレーションのベクトル図を示す。牛舎内の中央付近では2m/sの均一な空気の流れを生みだすことができている。しかし、両端壁の近傍17では、2m/sの空気の流れはできていない。すなわち、この範囲にいる牛にとっては、所定の風量の空気の流れを得られないことを意味する。
なお、風速2m/sとは、ここでの送風機で見込める最大出力風速であり、より強力な送風機を用いて、2m/s以上の最大出力風速を出せるようになっていてもよい。
このように、対向する側壁にプッシュ側送風機とプル側送風機を設けることで、牛舎内の空気の流れは極めて均一になる。すなわち、牛舎のどこにいても、所定の風を受けることができる。
図7には、他方の側壁14bには、図5および図6の場合同様に送風機を配置し、一方の側壁14aには、側壁14bに並設した送風機の両端部に対向する位置だけに送風機を配置した場合のシミュレーションの結果を示す。側壁14aに配置した送風機は、図5の場合同様に2段に送風機を配置した。
図7を見ると、プッシュ側14pushの送風機は、プル側14pullに配置した送風機の両端部に対向する位置に1台ずつ(2段なので、全部で4台)配置するだけで、図6のように端壁12a、12bの付近で均一な空気の流れが生じない部分を回避することができる。すなわち、プッシュ側の送風機は少なくともプル側の送風機の両端の送風機に対向する位置に1台ずつ配置されることで、牛舎内に均一な空気の流れを作ることができる。
しかし、図7では、若干ではあるが最大風速が低下する。したがって、プッシュ側14pushの送風機は、図5のように、プル側14pullの送風機と同じ設置範囲に配置されるのが好ましい。ただし、本発明では、図7の態様を排除するものではない。
すなわち、本発明に係る牛舎1は、プッシュ側14pushに設けられた貫通孔14ahに、プル側14pullの個々のプル側送風機20bと対向する位置にプッシュ側送風機20aを配設するだけでなく、プル側送風機20bのうち、両端のプル側送風機20bに対向する位置にプッシュ側送風機20aを設け、プッシュ側送風機20a間に少なくとも貫通孔14ahを設けるだけという形態も含む。もちろん、貫通孔14ahには、牛舎1内に均一な空気の流れを作ることができるように、プッシュ側送風機20aを設置してもよい。すなわち、プッシュ側送風機20aはプル側送風機20bと同数以下若しくは同数以上の数が配置されることを含む。
したがって、牛舎1の送風機20の配置は図8の状態を含む。図8を参照して、プル側の送風機20bは、ファンの直径20dより短い間隔で他方の側壁14bに配置される。配置された送風機20bの両端の送風機を送風機20bt1、20bt2とする。一方の側壁14aには、他方の側壁14bの送風機20bの両端の送風機20bt1、20bt2に対向する位置に送風機20a1、20a2が配置される。そして、送風機20a1と送風機20a2の間には貫通孔14ah3が設けられる。
なお、貫通孔14ah3は、均一な空気の流れを阻害しない程度に柱や壁が配置されていてもよい。例えば、プル側の送風機20bと対向する位置に送風機取付用の貫通孔14ah1、14ah2(図2参照)を設けることができる。
また、プッシュ側の送風機20a1と送風機20a2の間に適当な間隔で送風機を配してもよい。すなわち、プッシュ側の送風機20aは、両端の送風機20a1と送風機20a2が、プル側の送風機20bの両端の送風機20bt1と送風機20bt2に対向する位置にあれば、プル側の送風機20bと同数配置しなくてもよい。
なお、プル側14pullの送風機20bが設置されている幅19は、牛を居住させる空間の側壁14a、14b方向の長さである。この幅19が、牛舎1の幅(端壁12a、12bの長さ)12wより長ければ、側壁14a、14bの長さ14wより短くてもよい。すなわち、送風機20bは、側壁14bの全面にファンの直径以下の間隔で配置していなくてもよい。牛舎1の中で牛が居住する部分に均一な空気の流れを発生させればよいからである。
また、プッシュ側に配置した送風機20a1と送風機20a2の外側に送風機20a3と送風機20a4が配置されていてもよい。プル側の両端の送風機20bt1、20bt2に対向する位置より外側にプッシュ側送風機が配置されても、プル側送風機が配置されている幅19の範囲では、ほとんど空気の流れに影響はないからである。
図9は、牛舎1を端壁に平行な面で切った断面の模式図である。この図を用いて牛舎1の送風機20a、20bおよびその他の手段の処理フローについて説明する。牛舎1内に設けられた温度センサ22、無線機24、位置センサ26、風速センサ28は、制御器50と接続されている。制御器50は、全ての送風機20a、20bと接続されている。
これらのセンサ類は、牛舎1の奥行方向に向かって、所定間隔で複数個配置されていてもよい。牛舎1は長方形をしているので、1つのセンサの値で牛舎1内の全ての位置をカバーすることはできない場合もあるからである。特に、風速センサ28は、複数個を配置するのがのぞましい。本発明に係る牛舎1では、牛舎1内の所定の箇所の風速を他の箇所よりも強くする場合が生じるからである。
制御器50は、温度センサ22からの信号Sh、無線機24からの信号Si、位置センサ26からの信号Sp、風速センサ28からの信号Swを受信する。
制御器50は、送風機20a、20bに対しては、インバータの周波数(高い程出力が高い)を指示する指示信号C20a、C20bを送信する。なお、指示信号C20aとC20bは、側壁14a、14bの全面に配置した送風機20a、20bの全てを一様に制御してもよいし、特定の送風機を個別に制御してもよい。
本発明の牛舎1では、牛舎1内に、均一な空気の流れを作ることを目的とするので、側壁14a、14bに並列に配置した送風機20a、20bの一部を間欠的に駆動させる若しくは、部分的に風速の強弱をつけることで、均一な空気の流れを作れる場合があれば、そのような制御を排除するものではない。
また、制御器50は、送風機20a、20bに給電する給電線に設けられた、切断スイッチ36とも接続されている。制御器50は指示信号Cdを送信することで、給電を切断することができる。
また、制御器50は、入出力装置52と接続されている。入出力装置52は、表示画面52dと、キーボード等の入力手段52kを有する。主として作業者が用いて制御器50に指示を行う若しくは、現在の牛舎1の状態を確認するために各ステータスを表示させる場合に利用される。制御器50は入出力装置52との間で、信号Sdを送信して、データ等を受け渡し、指示信号Ccを受け取り、作業者の指示に従う。
なお、入出力装置52は、警告灯54等のアラームが搭載されていてもよい。アラームは警告灯54以外の警告ブザー等であってもよい。
本発明に係る牛舎1では、牛舎(畜舎)1内にいる牛に個体情報端末30が装着されている。個体情報端末30は、個々の牛の個体状態を検査し、個体情報としてそれを送信することができる。ここで個体情報とは、体温および血中ストレス物質濃度といったバイタルサインと位置情報を含む。血中ストレス物質としては、コルチゾールを含んでよい。コルチゾールは、家畜がストレスを感じた時に分泌されるホルモンとして知られている。
個体情報端末30は一定時間毎若しくは指示を受信したら、これらの項目について検査を行い、結果を記録する。また、通信装置(無線機24)から問い合わせがあった場合は、速やかに最新のデータを送信するようにしてもよい。通信装置は、個体情報端末30と通信を行い、各個体(牛)からの個体情報を収集する。各個体情報端末30との通信方法は特に限定されるものではない。
各個体情報端末30に固有の識別IDを付与しておき、特定の周波数で各個体情報端末30を指定し、個体情報を取得する方法が好適に使用できる。なお、各個体情報端末30はこの識別IDを受信したら、最新の個体情報を送信する。また全ての個体情報端末30は、個体状態の検査を行う旨の信号を受信したら、個体状態の検査を行う。この個体状態の検査を行う旨の信号は全個体情報端末30共通であってもよい。
このような方法を用いた場合、同時に1頭の個体としか通信できない。従って、全ての個体から個体情報を得るには順次個々の個体情報端末30と通信しなければならない。しかし、これらの個体情報は緊急性が比較的低く、数分から十数分毎に個体情報を取得できればよい。
位置センサ26は、牛舎1内で個体情報端末30を装着した個体が、どこにいるかを識別する。位置センサ26は、牛舎1内に複数個配置してもよい。複数個の位置センサ26を配置し、各位置センサ26毎に受信電波強度を計測することで、個体の居場所を正確に知ることができる。
個体からの電波は、各個体情報端末30が無線機24と通信する際の電波を利用してもよい。位置センサ26が個体の位置を特定するのに、各個体情報端末30と無線機24との通信電波を使えば、体温や血中ストレス物質濃度とともに、個体の位置情報Bpも同時に得ることができる。なお、位置センサ26は、無線タグを利用したものに限定されず、赤外線やカメラを用いた方法であってもよい。
また、体温や血中ストレス物質濃度とともに、個体の位置情報Bpも個体情報と言ってよい。また、位置センサ26および無線機24は通信装置である。したがって、通信装置は、個体情報を受信するといってよい。
本発明に係る牛舎(畜舎)1は、各個体情報端末30からの個体情報を、通信装置を使って受信し、各個体の状態によって送風機20a、20bの回転数を制御する。
<制御フロー>
以下に本発明に係る牛舎(畜舎)1の動作について説明する。牛舎(畜舎)1の動作は制御器50の処理フローといってもよい。図10に制御器50のメインフローを示す。処理が開始されると(ステップS100)、初期設定を行い(ステップS101)、終了判断を行う(ステップS102)。初期設定は、以後の処理中で使用する変数のリセットを含んでよい。終了判断は、制御器50への停止命令や、緊急停止の割り込み信号によって行ってもよい。処理を終了する場合(ステップS102のY分岐)は、終了処理を行い(ステップS148)、処理を終了する(ステップS150)。終了処理には、送風機20a、20bの電力を遮断する処理を含めてよい。
処理を終了しない場合(ステップS102のN分岐)は、牛舎1に属する全頭からの個体情報を取得する(ステップS104)。ここで個体情報には、体温Bt、血中ストレス物質濃度Bs、位置情報Bpが含まれる。個体情報を全頭から取得したら、個体情報の中にストレス情報が含まれるか否かを判断する(ステップS106)。ストレス情報とは、血中ストレス物質濃度Bsの情報をいう。
ストレス情報が存在すれば(ステップS106のY分岐)、ストレス処理を行う(ステップS108)。ストレス処理は、個体情報からストレスを感じていると判断できる牛の数を判断し、その数に応じて送風機20a、20bの回転数を制御する。なお、この時、舎内温度Shを判断要素としてもよい。また、ステップS108のストレス処理でストレスを感じていると判断できる牛は異常個体Asと識別してもよい。ストレス処理が終了したら、メインに戻る(次のステップS110に移る。)。
ストレス情報が存在しない場合(ステップS106のN分岐)は、体温情報が存在するか否かを判断する(ステップS110)。体温情報が存在すれば(ステップS110のY分岐)、体温処理(ステップS112)を行う。ここでは、各個体の体温の平均値に基づいて送風機20a、20bの回転数を制御する。なお、この時、体温が所定値より高い牛は異常個体Atと識別してもよい。体温処理が終了したらメインに戻る(次のステップS114に移る。)。
体温情報が存在しなかったら(ステップS110のN分岐)、位置情報Bpの有無を判断する(ステップS114)。個体情報の中に位置情報Bpがあれば(ステップS114のY分岐)、位置処理(ステップS116)を行う。ここでは、各個体の牛舎1内の位置取りに基づいて送風機20a、20bの回転数を制御する。ここでは、ストレス処理(ステップS108)および体温処理(ステップS112)によって異常個体と識別された個体に関する情報を参考にしてもよい。位置処理が終了したらメインに戻り、終了判定(ステップS102)に戻る。
以上のように、本発明に係る牛舎1では、体温Bt、血中ストレス物質濃度Bs、舎内温度Sh、個体の位置情報Bpに基づいて送風機20a、20bの回転数を制御する。なお、ステップS106、ステップS110、ステップS114で示したように、取得した個体情報の中に体温Bt、血中ストレス物質濃度Bs、位置情報Bpがなければ、それぞれの処理はスキップされる。言い換えると、ストレス処理(ステップS108)、体温処理(ステップS112)、位置処理(ステップS116)は、それぞれ個別に実施されてもよい。
<個体情報取得処理>
次に個体情報取得処理について詳細を説明する。図11にフローを示す。個体情報取得処理が開始されたら(ステップS200)、初期設定(ステップS202)を行う。初期設定は、全ての個体情報端末30に個体情報を取得する旨の信号を一斉信号として送る処理を含めてよい。なお、ここでは処理のための変数Nがあるとし、変数Nも初期化(=1)される。また、各個体からの個体情報をまとめたものを個体情報集GIとする。個体情報集GIも初期化する。
次に終了判定を行う(ステップS204)。ここで終了判定は、全ての個体情報端末30から個体情報を取得したか否かで判断される。具体的には、指定する個体情報端末30が最後のものであったか否かで判断してよい。ここでは、全個体数がM頭いるとして、変数NがMを越えたか否かで判定を行っている。
終了する場合(ステップS204のY分岐)は、終了処理(ステップS248)を行い終了する(ステップS250)。終了処理には取得した個体情報集GIを記録する処理を含める事ができる。
終了しない場合(ステップS204のN分岐)は、N番目の個体情報端末30を指定し、受信する(ステップS206)。指定するとは、N番目の個体情報端末30の識別IDを送信することを含む。なお、個体情報端末30は識別IDを受信したら測定した個体情報を送信する。
なお、位置センサ26がある場合は、個体情報が送信された電波で、位置情報Bpを取得してもよい。個体情報I(N)には、体温Bt、血中ストレス物質濃度Bs、位置情報Bpが含まれる。なお、これらの情報の内、欠けている情報があってもよい。受信した個体情報I(N)は、個体情報集GIに記録される。また、個体情報端末30にはGPSを用いて、位置情報を取得するようにしてもよい。
受信を完了したら変数Nをインクリメントする(ステップS208)。そして、終了判定(ステップS204)に戻る。なお、終了処理には、温度センサ22から舎内温度Shを測定してもよい。
<ストレス処理>
次にストレス処理について詳細を説明する。図12にフローを示す。ストレス処理が開始されたら(ステップS300)、個体情報集GI中の個体情報から血中ストレス物質濃度Bsと閾値Tssを比較し、閾値Tssを超える血中ストレス物質濃度Bsの個体については、ストレス異常個体Asと認定する(ステップS302)。この処理は、個体情報集GIに記録する。
次に全個体の(100×Q)%にあたる個体の血中ストレス物質濃度Bsが閾値Tssを超えたか否かを判断する(ステップS304)。なお、図では全ての個体の血中ストレス物質濃度Bsを「ABs」と表した。したがって、全個体の(100×Q)%の個体の血中ストレス物質濃度は、「ABsQ」と表される。例えば、(100×Q)%は60%とするのが好適である。なお、このQは、入出力装置52から入力することで、変更可能な数値とするのが望ましい。
全個体の(100×Q)%の個体の血中ストレス物質濃度Bsが閾値Tssを超えた場合(ステップS304のY分岐)は、さらに舎内温度Shが閾値Thを超えたか否かを判断する(ステップS314)。舎内温度Shが閾値Thを超えた場合(ステップS314のY分岐)は、送風機20a、20bの回転数を上げ(ステップS316)、メインに戻る(ステップS350)。
すなわち、全個体の(100×Q)%にあたる個体の血中ストレス物質濃度Bsが所定の閾値Tssを越え、さらに舎内温度Shが所定の閾値Thを越えたら畜舎内に送る風量を増やす。なお、このときフラグF1を立てておく(=1)。これは、ストレス処理によって、送風機20a、20bの回転数を制御したことを示す。なお、フラグAFをリセット(=0)という動作も行う。このフラグAFはステップS320内で使うフラグである。
ステップS314に戻って、舎内温度Shが閾値Thを越えなかった場合(ステップS314のN分岐)は、全個体の(100×Q)%にあたる個体がストレスを感じているけども、舎内温度Shは高くない場合を示す。これは暑熱以外のストレスによって血中ストレス物質濃度Bsが上昇していることを示している。この場合は、暑熱以外のストレス処理(ステップS320)を行う。
図13にステップS320の詳細を示す。ステップS320は、暑熱以外のストレスが一定時間以上継続した場合は、アラームを表示若しくは鳴らして、少なくとも血中ストレス物質濃度Bsが所定の閾値Tssを越えている個体の位置を表示する。ステップS320が始まると、まずフラグAFが立っている(=1)か否かを判定する。このフラグAFは、この処理が所定時間継続しているか否かを判定するためのフラグである。
フラグAFが立っていない(=1)でない場合(ステップS322のN分岐)は、初めてこの処理に入ったと判断し、フラグAFを立て(=1)、さらに変数Tnに現在時刻Tmを代入する(ステップS324)。ここで、Tnはこの処理に初めて入った時刻を記録することとなる。
フラグAFが立っていた(=1)場合(ステップS322のY分岐)、若しくはステップS324を経由した処理のフローは、Tm−TnでΔTを算出する(ステップS326)。ΔTは、初めてこの処理(暑熱以外のストレスの処理)に入った時刻からの経過時間を表す。次にこのΔTが閾値Tttを越えたら否かを判断する(ステップS328)。つまり、暑熱以外のストレスを感じている処理に最初に入ってからTtt時間経過していた場合(ステップS328のY分岐)は、アラーム表示等をおこなう。
なお、図12のステップS316でフラグAFをリセット(=0)にしているので、繰り返し暑熱以外のストレス処理(ステップS320)を行わなければ、変数Tnは常に現時刻Tmが入力される。すなわち、暑熱以外のストレス処理(ステップS320)が行われても、ステップS314で舎内温度Shが閾値Thを越えてステップS316に進めば、ΔTを算出する基準となる変数Tnはリセットされることになる。
暑熱以外のストレスの処理(ステップS320)に入ってからの経過時間ΔTが、閾値Tttより大きくない場合(ステップS328のN分岐)は、ストレス処理のステップS306へ向かう(ステップS345)。経過時間ΔTが閾値Tttより長ければ(ステップS328のY分岐)、アラームの処理(ステップS330以下)へ移る。
アラームの処理では、まず、フラグAFをリセット(=0)する(ステップS330)。次にアラーム表示を行う(ステップS332)。アラーム表示は警告音を鳴らす若しくは警告灯54を回転させるなどしてもよい。また、血中ストレス物質濃度Bsが所定の閾値Tssを越えている個体の位置を表示画面52dに表示する(ステップS334)。暑熱以外の原因でストレスを感じている場合は、飼育員が直接確認する趣旨である。
なお、図13では、ステップS332とステップS334をループする。これを解消するには、システム自体をリセットする。しかし、個体位置を表示(ステップS334)してからステップS320を抜けてもよい(ステップS345へ)。また、警告表示、警告音、個体位置表示はいずれか1つを行うだけでもよい。
図12を再度参照する。全個体の(100×Q)%にあたる個体の血中ストレス物質濃度Bsが閾値Tssを超えていない場合(ステップS304のN分岐)、若しくは、舎内温度Shが閾値Thを超えなかった場合(ステップS314のN分岐からのフロー)は、次に送風機20a、20bが回転しているか否かを判断する(ステップS306)。回転している場合(ステップS306のY分岐)は、他のフラグが立っているか否かを判断する(ステップS308)。他のフラグというのは、体温処理(フラグF2)や位置処理(フラグF3)によって送風機20a、20bの回転数が制御されている場合に立つフラグである。
他のフラグが立っていない場合(ステップS308のY分岐)は、送風機20a、20bの回転数を必要換気量が確保できる程度にまで低下させる(ステップS310)。そして、フラグF1をゼロにし(ステップS312)、メインに戻る(ステップS350)。全個体の(100×Q)%にあたる個体の血中ストレス物質濃度Bsが閾値Tssを超えていない場合(ステップS304のN分岐)、若しくは、舎内温度Shが閾値Thを超えなかった場合(ステップS314のN分岐)は、ストレス処理において、送風機20a、20bの回転数を上げるという判断にならなかったのであるから、送風機20a、20bの回転数を必要換気量が確保できる程度にまで低下させるのである。
他のフラグが立っている場合(ステップS308のN分岐)は、フラグF1をゼロにしただけで(ステップS312)、メインに戻る(ステップS350)。送風機20a、20bの回転数の制御は他の処理に委ねるためである。このようにフラグの状態を介して、ストレス処理、体温処理、位置処理の、どの処理が送風機20a、20bの回転の制御の主体となっているかを他の処理間で判断し合うことができる。
ステップS306に戻って、送風機20a、20bが回転してなかった場合(ステップS306のN分岐)は、そのままメインに戻る(ステップS350)。ストレス処理で送風機20a、20bを回転させることはなく、またもともと送風機20a、20bが回転していなかった場合であるので、そのままメインに戻るのである。
<体温処理>
次に体温処理について詳細を説明する。図14にフローを示す。体温処理が開始されたら(ステップS400)、個体情報集GI中の各個体の体温Btと閾値Ttを比較し、体温Btが閾値Ttより高い個体については、体温異常個体Atと認定する(ステップS402)。この処理は、個体情報集GIに記録する。次に各個体の体温Btの平均値(Btm)を求める(ステップS404)。
次に体温Btの平均値Btmが閾値Ttより高いか否かを判断する(ステップS406)。体温Btの平均値Btmが閾値Ttより高い場合(ステップS406のY分岐)は、送風機20a、20bの回転数を増加し、フラグF2を立てる(=1)(ステップS408)。つまり、ここでは、全個体の体温Btの平均値Btmが所定の閾値Ttより高い場合に風を送る。
体温Btの平均値Btmが閾値Ttより高くない場合(ステップS406のN分岐)は、送風機20a、20bがすでに回転しているか否かを判断する(ステップS410)。送風機20a、20bがすでに回転している場合(ステップS410のY分岐)は、他のフラグが立っているか否かを判断する(ステップS412)。
他のフラグが立っていない場合(ステップS412のY分岐)は、送風機20a、20bの回転数を最低換気量が確保できるまで下げる(ステップS414)。つまり、この体温処理を通過することで、必ず最低換気量が確保できる程度の送風機20a、20bの運転がされる。
他のフラグが立っている場合(ステップS412のN分岐)は、フラグF2をゼロにし(ステップS416)、メインに戻る(ステップS450)。他の処理が送風機20a、20bの制御を行っており、尚且つ体温処理では、送風機20a、20bを制御することがないこという意味である。
送風機20a、20bが回転していない場合(ステップS410のN分岐)は、そのままメインに戻る(ステップS450)。またステップS408およびステップS414で送風機20a、20bの回転数を変更した場合もメインに戻る(ステップS450)。
<位置処理>
次に位置処理について詳細を説明する。図15にフローを示す。位置処理が開示されたら(ステップS500)、個体情報集GIを見て、血中ストレス物質濃度Bsのデータか、体温Btのデータの少なくともどちらかが計測されているか否かを判断する(ステップS502)。いずれのデータも計測されていない場合(ステップS502のN分岐)は、メインに戻る(ステップS550)。位置情報Bpだけでは、送風機20a、20bの制御の根拠とならないからである。つまり、位置情報Bpは、各個体のバイタル情報を少なくとも1つを利用して送風機20a、20bを制御する。
いずれかのデータが測定されている場合(ステップS502のY分岐)は、個体情報集GI中のストレス異常個体As若しくは体温異常個体At(これらを合わせて以後「異常個体」と呼ぶ。)を選択する(ステップS504)。位置処理では、異常個体の場所に基づいて送風機20a、20bの回転数を制御する。
次に選択された個体の位置情報Bpから個々の間の距離を求める(ステップS506)。図16には、畜舎の平面図を示す。プル側送風機は8台あり、プッシュ側送風機は4台あるとする。また、ステップS504で選択された異常個体は、図16において、黒丸で示された位置にいたとする。白丸で示されたのは、異常個体でない牛である。
それぞれに振られた番号は、個体IDに相当する番号とする。今10頭の牛がいる。なお、位置情報Bpは、このように畜舎の平面図上の位置座標として表すことができる。図16では、1、3、6、8、10の牛が異常個体と認定されている。すなわち、体温Btが高い若しくは血中ストレス物質濃度Bsが高いか、のいずれかである。
各異常個体間の距離とは、各異常個体の位置座標から数学的な距離を求めることを意味する。例えば、1番目の個体の畜舎の平面図上の座標を(x1、y1)とし、6番目の個体の座標を(x6、y6)とすると、よく知られているように、距離dは(1)式によって求められる。
なお、ここで、座標軸は任意に設定してもよい。例えば、図16では、牛舎の短辺をX軸とし、長辺をY軸とするなどである。
全ての異常個体間の距離dを求めたら、それぞれの異常個体から所定の距離Tdより短い範囲にいる異常個体の数D(k)を調べる(ステップS508)。kは個体情報端末30を装着された牛の識別IDに相当する数である。ここでは、上記の番号である。異常個体だけが選別されている(ステップS504)ので、kは連続する数とは限らない。図16では、1、3、6、8、10の5頭が対象となる。D(k)は全ての牛の中からk番目の牛が異常個体として認定され、そのk番目の牛から距離Td以内にいる異常個体の数である。
図16では、所定の距離Tdが点線で示した円であるとすると、D(1)は1番目の個体から距離Td内にいる他の異常個体であるから、6番目と8番目がこれに相当する。すなわち、D(1)=2である。一方、10番目および3番目には距離Td内に他の異常個体はない。
そして、その数D(k)がn頭以上いるか否かを判断する(ステップS510)。n頭以上存在する場所がある場合(ステップS510のY分岐)は、距離Td以内にn頭以上の異常個体が集合しているということである。これは、ストレスを感じている個体若しくは体温Btの高い個体が集まっている箇所が存在することを示している。
そこで、そのような場合は、その個体に最も近い送風機の回転数を上げ、フラグF3を立てる(=1)(ステップS512)。最も近い送風機とは図16でいうと符号20b2の送風機に相当する。なお、この送風機だけでなくその周囲の送風機の回転数を同時に上げてもよい。また、すでに送風機が均一な風を作る様に稼働していても、送風機20b2は、それ以上の送風を行ってもよい。この処理は、血中ストレス物質濃度Bs若しくは体温Btに関する処理で、送風機20a、20bの回転数を上げなかった場合であっても、異常個体の集まり具合で、送風機の回転数を制御するものである。
異常個体が集まっている場所がない場合(ステップS510のN分岐)は、送風機20a、20bがすでに回転しているか否かを判断する(ステップS514)。
送風機が回っている場合(ステップS514のY分岐)は、他のフラグが立っているか否かを判断する(ステップS516)。他のフラグが立っていない場合(ステップS516のY分岐)は、送風機20a、20bの回転数を最低換気量が確保できるまで下げる(ステップS518)。そして、フラグF3をリセット(=0)にしてメインに戻る(ステップS550)。
他のフラグが立っている場合(ステップS516のN分岐)は、フラグF3をゼロにし(ステップS520)、メインに戻る(ステップS550)。他の処理が送風機20a、20bの制御を行っており、尚且つ体温処理では、送風機20a、20bを制御することがないという意味である。
以上のように、本発明に係る牛舎は各個体の個体情報に基づいて送風機の回転数を制御するので、飼育している牛のストレスを低減させることができる。特にストレスを受けていると考えられる個体若しくは個体群に効率的に暑熱対策を行えるので、搾乳量の維持を効率的に行うことができると言える。