以下に本発明に係るニワトリの飼育方法および環境計測ロボットについて図面を利用しながら説明を行う。なお、本発明において以下の説明は単に複数の実施形態を例示するものであり、本発明は発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下の実施形態は改変することができる。また、各実施形態は、特定の機能について理解しやすいように記載したものであり、特定の実施形態で示した機能を他の実施形態に追加してもよい。
(実施の形態1)
本発明において主として対象としているのは、食肉用のニワトリ所謂ブロイラーである。しかし、すでに述べたようにレイヤーを排除するものではない。以下の説明はブロイラーを主として説明するが、鶏舎内を自由に移動できるレイヤーに適用してもよい。
ブロイラーの品種としては、従来ブロイラーとして使用される品種を利用することができる。具体的には、チャンキー、コッブ、アーバーエーカー等が好適に利用することができる。また、これらの交配種を用いてもよい。
用いる餌は公的に用いられているものでよい。すなわち高エネルギーで高タンパク質のものが好適に利用できる。具体的には、配合飼料と呼ばれるものがよく、とうもろこし、マイロ、大麦といった穀類、ふすま、米ぬか、コーングルテンフィードといった糟糠類、大豆油かす、なたね油かすといった植物性油かす類、魚粉、脱脂粉乳といった動物質性原料、炭酸カルシウムやリン酸カルシウムといったミネラル類などの混合肥料である。
給餌の方法は、常に食べられるような給餌装置によって与えられてよい。給餌装置は、飼料がはいったサイロから自動的に各給餌点に飼料が送られるものである。また、給餌には、水を含めてよい。さらに、本発明の飼育方法において、給餌の工程には、鶏舎内の照明を給餌のタイミングに合わせて変化させる光線管理工程を含めてもよい。ブロイラーの飼育については、ブロイラーが餌を食べることが生産性の向上に繋がるからである。
次に本発明でブロイラーの注意を喚起するロボットについて説明する。ロボットは、鶏舎内を移動することで、ブロイラーがロボットの存在に気づく。ロボットが移動することでロボットに気づいたブロイラーが自ら立ち上がり移動することで運動を促進する。
ロボットは、鶏舎の床面を走行若しくは歩行するもの、若しくは飛行するものであってよい。ここで、「走行」とは、タイヤ、キャタピラといった回転体を回転させることで移動することをいう。「歩行」とは、複数の足を移動させることで移動することをいう。なお、本明細書では、「走行」と「歩行」はともに「走行」とも呼ぶ。
「飛行」とは、床面に接することなく、空中を移動することをいう。したがって、プロペラ、空気噴射といった揚力を使うことだけでなく、鶏舎の天井からワイヤーで吊り下げたものであってもよい。
ブロイラーは密飼されているので、群れをなしているといってよい。したがって、全体に一度に大きな刺激を与えると、パニックがパニックを呼び、全羽がショック死することもある。したがって、ロボットは、動きながら、その周辺のブロイラーの注意を喚起すればよい。
走行するロボット(「走行型ロボット」とも呼ぶ。)の高さは、好ましくは成長したブロイラーと同じ程度もしくは2倍程度が望ましい。高すぎると鶏舎全体のブロイラーに刺激を与えてしまうからである。
鶏舎の床は通常おがくず等が敷き詰められている。したがって、走行型ロボットは、おがくずにうまることなく、移動できる移動手段を有するものがよい。例えば、キャタピラ、大径のタイヤ、多足歩行のできる足等が好適に利用できる。外観は必要な装置が露出していてもよい。しかし、ある程度成長したブロイラーの鶏舎に入れる場合は、ニワトリの形態をまねて偽装してもよい。
また、鶏舎には、給餌装置や給水装置といった装置が備えられており、これらへの餌や水の補給は天井側から行われる場合が多い。つまり、鶏舎内の空間には、ホースやワイヤーが固定されている場合が多い。したがって、飛行するロボット(「飛行型ロボット」とも呼ぶ。)は、空間中に配置された物に衝突しても破損を受けない構造のものが望ましい。
また、カラスよけやジェット機のエンジンの中心に円形の模様が描かれているように、鳥類は丸い模様若しくは丸い回転体を猛禽類などの眼として忌避する性質があるといわれている。したがって、そのような模様もしくは回転体を有していてもよい。
ロボットは、移動してその存在を気づかせるだけでなく、音や光を発してブロイラーの注意を喚起してもよい。そのため、ロボットに回転灯、点灯表示灯、点滅表示灯や発光体のいずれか若しくは複数(以後「注意喚起ライト」とする。)、スピーカーが搭載されていてもよい。鳥類は、哺乳類と比較して視神経の数が多く、色に対しては敏感である。したがって、赤色や青色など色のついたライトが回転することで点滅しているように見える注意喚起ライトには注意を喚起される。
また、音は突発音よりブロイラーの鳴き声程度のブザー音若しくは、ブロイラーが怒った際に鳴く声等を発するのが望ましい。
また、ロボットにはカメラが搭載されていると望ましい。ニワトリはH5N1型またはこれらの亜種の鳥インフルエンザに羅患すると、ほぼ100%が死亡する。鳥インフルエンザは水鳥や野鳥は羅患しても発病しない。したがって、鶏舎の近くに野生する鳥類が鳥インフルエンザに羅患していると、鶏舎のブロイラーが全滅し、多大な被害が発生する。
そのため、鶏舎自体はできる限り、密閉するのが望ましい。そうすると、密閉された鶏舎に病原体を持ち込むのはもはや人間しかいない。したがって、人ができる限り鶏舎内に入らなくても、外部から内部の様子を観察できるようにするのが望ましい。
鶏舎内を移動するロボットがカメラを搭載していると、個々の個体について詳細な状況を鶏舎に入ることなく観察することができる。また、赤外線カメラが搭載してあれば、ブロイラーの体温上昇を検知することができ、病気にかかった個体をいち早く発見することも可能だからである。
ロボットは、自立式であっても、他者に操縦(依存式)されていてもよい。自立式とは、予め記録されたプログラムの指示によって、走行若しくは飛行するロボットをいう。自立式の場合は、鶏舎内の決められたコースを走行若しくは飛行し、その走行中の様子をカメラで記録若しくは、監視者に送信する。
依存式とは、使用者がロボットの動き自体をリアルタイムで制御(操縦)するロボットをいう。依存式の場合は、別途鶏舎の天井に監視カメラを配置し、ロボットの位置を見ながら監視者が操縦するのが望ましい。なお、基本的には自立式で移動し、カメラによる監視によって異常の認められるブロイラーを発見した場合は、依存式に制御が切り替わる方式であってもよい。
ロボットは、ブロイラーの目線に近い高さから、ブロイラーの近くまで接近する。したがって、ロボットに搭載したカメラは、天井に設置されたカメラ等よりも詳しくブロイラーの状態を観察できる位置に置かれる。
そこで監視者は、自立式で移動しながらブロイラーの運動状態を別室からカメラを通じた映像で監視し、異常が認められる個体にマーキングをしてもよい。マーキングされた個体は、後ほど別途隔離し詳しく調べるなどすることができる。
図1には、走行するロボット1を例示する。ロボット1はキャタピラ30を有したロボットである。図1(a)は側面図で、図1(b)は正面図である。外観は戦車若しくはブルドーザーの模型に似ている。本体10の上部には、カメラ12と注意喚起ライト14およびスピーカー16が配置されている。また、円形の回転体18およびマーキング装置22が備えられていてもよい。
回転体18は、単に円盤状の板が回転するだけであるが、その表面に渦巻き状の模様が描かれている。このような模様が回転する状態は、猛禽類を天敵とする鳥類は忌避するといわれている。
また、マーキング装置22は、ブロイラーに接近してカメラで観察したときに、異常を認められる個体に印をつけるものである。例えば、水溶性のインクを発射できる噴射装置等が利用できる。なお、異常の認められるブロイラーは、そもそも動きが遅くなっているので、ロボットでも十分マーキングできるほど接近することができる。
進行方向には、車幅若しくはそれより広いガイドバー20が設けられている。ガイドバー20は、ロボット1の接近でも自ら移動しない個体に接触してロボット1の存在を気づかせるためのものである。より具体的には、ガイドバー20をその個体に接触することで、その個体の自らの移動を促進などする。
駆動は充電可能な電池で駆動するのが望ましい。また燃料電池を利用してもよい。一方、燃焼式のエンジンは望ましくない。鶏舎内に排気ガスが放出されるからである。
図2には、飛行するロボット2を例示する。図2(a)は平面図であり、図2(b)は正面図である。ブロイラーの運動を強要するが、それほど激しい運動を促進する必要はない。したがって、早い速度で飛行することはなく、むしろゆっくりと飛行できることが必要となる。したがって、ロボット2はヘリコプター若しくはマルチコプター型のものが好ましい。図2には、4ローターのマルチコプタータイプのロボット2を例示する。
ロボット2は、本体40と、4つのローター41a〜41dと、フレームバー46およびガイドフレーム45を含む。4つのローター41a〜41dは、平面視(図2(a))で、本体40を中心として放射状に等間隔に配置されている。それぞれのローター41a〜41dは、対応するローター支柱43a〜43dで本体40に固定されている。
本体40には、またフレームバー46によってガイドフレーム45が固定されている。ガイドフレーム45は、全てのローター41a〜41dのプロペラの可動範囲を囲むように設けられている。鶏舎内では、天井から床に向かって配置されている部材も多くある。ガイドフレーム45は、それらの部材にローター41a〜41dやローター支柱43a〜43dがひっかからないために設けられている。
本体40の下部には、前後にカメラ12が備えられている。下方や正面のブロイラーを観察するためである。また、注意喚起ライト14と、スピーカー16、マーキング装置22も備えられていてよい。
次に上記のロボット1若しくはロボット2についてその動きを説明する。図3には、鶏舎50の平面図を例示する。鶏舎50は通常の平飼い用を例示している。給餌装置52の給餌器54が供給ライン56に沿って設けられている。また、水の飲み場は餌の供給ライン56と同じラインに設けられている。供給ライン56はサイロ58に接続されている。サイロ58から餌が供給ライン56を通って、各給餌器54に分配される。
図4には、鶏舎50内を走行若しくは飛行するロボット移動ラインを例示する。図4の各点線は、自立型のロボットの移動ラインの一例である。鶏舎50内のロボットの数は特に限定されるものではない。ライン60は鶏舎50内に1台のロボットが配置された場合である。ロボットは、鶏舎50内をくまなく移動し、全てのブロイラーに注意を喚起し、ブロイラーの運動を促進する。
ライン62は、2台のロボットが互いに区画を決めて移動する場合の例である。互いの区画はオーバーラップしている部分があってもよい。これらの動きは、監視者がロボットを操縦する場合でも用いることができる。
ロボットの走行若しくは飛行は、ブロイラーの日齢によって変化させてもよい。まだ幼齢の時は、自分の体重で動けなくなることはないので、一定のパターンを走行させるだけでもよい。一方、30日齢を過ぎると、ブロイラーも大きく成長するので、次第に自らの体重で動けなくなる個体も出てくる。そこで、一定以上に成長した後は、監視者がロボットを操縦しながら、特に動きの鈍い個体だけに注意を喚起する等してもよい。
この際は、ロボットに搭載されたカメラだけでなく、鶏舎の天井付近に設けられた監視カメラでロボットの周囲を確認しながら走行させるのが望ましい。ロボットのカメラの視界だけであると、視界から外れた所で、座ったままの個体を見落とすおそれがあるからである。
ロボットの走行若しくは飛行は、一定の間隔をあけて行ってよい。鶏舎内は、ブロイラーの餌の摂取回数を多くするため、光線管理が行われている。具体的には、点灯時間を長くする若しくは一定期間の点灯時間が断続的に繰り返される。
そこで、ロボットは、点灯している間だけ移動させるのがよい。消灯されている間は、ブロイラーも寝ていると考えられるからである。なお、ここで、消灯とは、完全に灯りを消すだけでなく、点灯時よりも照度を落とした状態も含む。
また、ブロイラーが明所に集まるという習性を利用して、ロボットを移動させる時に、ブロイラーに給餌する場所、すなわち給餌点を周囲より明るく照らすことが好ましい。特に、屋外からの昼光の入らないウィンドレス鶏舎に有効である。
これにより、ロボットの走行に気づいて立ち上がったブロイラーが給餌点に移動し、給餌促進の効果が得られる。
具体的には、ロボットの走行位置に応じて、近傍の給餌点のみを照らすことにより、全ての給餌点を同時に照らすより効率的にブロイラーの給餌促進を行うことができる。
ここで、給餌点を周囲より明るく照らす手段としては、鶏舎内の照明とは別にスポット照明を設けたり、鶏舎内の照明をスポット照明に変える筒状の集光器を取り付けたり、鶏舎内の照明を下方に移動したり、等の手段が適用できる。この中では、周囲が暗くなると活動が鈍くなるため別にスポット照明を設けるのが好ましい。
(実施の形態2)
次に他の飛行型ロボットであるデコイについて説明する。デコイは鶏舎内を移動することで、ブロイラーに注意を喚起する。デコイの移動に気づいたブロイラーが自ら移動することで運動を促進する。
デコイは、鶏舎の床面をワイヤーで引き摺られて移動するものはもとより、複数のワイヤーで鶏舎の床面から浮いた状態で移動するものであってもよい。床面近くに牽引用のワイヤーがあると、ニワトリが脚を引っ掛けて怪我をする虞がある。したがって、ワイヤーは床面から高い位置にあると好適である。またデコイを鳥型の形状にすることで、鶏舎内のブロイラーに注意を喚起させ、鳥型の形状のデコイが移動することで床面に大きな影ができ、刺激を受けたブロイラーが自ら移動することで運動促進を行うこともできる。
デコイはワイヤーで牽引される。一方、鶏舎内には給餌器や給水器、ブルーダー(暖房機)が配置される。従って、デコイは鶏舎を自由に引き回すのは容易ではない。そこでデコイには、鶏舎の一端から他端に向かって配置された1つの方向を往復するルートが設定される。そのルートに沿ってデコイは鶏舎の中を往復移動する。
上記のようにデコイは、1つのルートに沿った往復移動しかできない。したがって、広い鶏舎の場合は、全てのニワトリに注意を喚起させるのは容易でない。そのため、デコイは鶏舎の中に複数台設置されるのが望ましい。
また、デコイには、カメラを搭載しておくのが望ましい。デコイの移動はニワトリに注意を喚起し、運動を促進する点にある。したがって、デコイの移動によって、どこかにニワトリを挟んだり、引っ掛けたりして傷つけないために、移動するデコイは周囲に注意する必要があるからである。
図5には、デコイの一形態を例示する。デコイ210は、本体212と、翼214(214a、214b)を有する。本体212には、カメラ216(216s、216t)、カメラ217が備えられている。カメラ216は、進行方向に向いて配置されている。したがって、これらをカメラ216s、カメラ216tとする。なお、カメラ216tは図5では、見えない位置にある。
カメラ217は、本体212の上面に突設された円柱状の取付部218内に設置されている。そして、取付部218が回転することで、カメラ217は、デコイ210の周囲の状況を撮影することができる。カメラ216s、カメラ216tおよびカメラ217の映像は、内蔵された通信手段(図示せず)によって鶏舎外に設置される制御装置250(図7参照)に送られる。
本体212には、ワイヤー222(ワイヤー222sとワイヤー222t)を係止するワイヤー留め212s、212tが設けられる。このようにこのデコイ210は、本体212の前後をワイヤー222sとワイヤー222tで吊り上げられ、鶏舎の床面上を移動する。
本体212には、翼214が備えられる。翼214は本体212からの長さがLの翼214aと翼214bで構成される。翼214の根元には、翼214を開閉するモータ215(モータ215aとモータ215b)が備えられている(なお、モータ215bは、図5では隠れて見えない。)。このため、翼214は、その先端が本体212に沿った位置(閉じた状態:図5では点線で示した)と離れた位置(開いた状態)およびこれらの間の位置に設定することができる。これらのモータ215aおよび215bによる翼214aと214bの開閉は、制御装置250からの指示で行われる。
また、翼214は、本体212に対して翼214の高さが変更できるように、内部にリフター213(リフター213aおよびリフター213b)が設けられていても良い。なお、リフター213は翼214の根元に設けられ、モータ215ごと翼214の位置を変更できる。また、図5では、リフター213bは、本体212に隠れて見えない位置にある。
翼214は、移動の際に開いた状態にされ、デコイ210の移動ルートを中心とした2Lの幅(実際は、本体212の幅Wも含まれる)のニワトリの注意を喚起する。翼214の目的は、ニワトリに翼214を跨ぐか、翼214の進路を回避するように運動を促進することである。
したがって、デコイ210は、翼214や本体212でニワトリを傷つけることがない程度の速度で移動する。
また、デコイ210の進行方向の幅2Lの範囲に障害物等が認められる場合は、その場合だけ、翼214を必要なだけ閉じることができる。また、ロボット1や2が有している注意喚起ライト14と、スピーカー16、マーキング装置22が備えられていてもよい。
次にデコイ210の設置および動作について説明する。図6には、鶏舎290の平面図を例示する。鶏舎290は通常の平飼い用を例示している。給餌装置292の給餌器294が供給ライン296に沿って設けられている。また、水の飲み場は餌の供給ライン296と同じラインに設けられている。供給ライン296はサイロ298に接続されている。サイロ298から餌が供給ライン296を通って、各給餌器294に分配される。
デコイ210のルートは、これらの設備の干渉を受けないように設定される。図7では、図6の鶏舎290に供給ライン296にそったルート260(ルート260a、ルート260b)が2本設定された状態を示す。もちろん、ルート260は3本以上のルートを設けても良い。
鶏舎290のルート260に沿った両端には、デコイ210を操作するウインチ280(ウインチ280a、ウインチ280b)が設けられる。ウインチ280aはワイヤー222tを操作し、ウインチ280bはワイヤー222sを操作するものとする。これらのウインチ280a、280bは、制御装置250と接続され、制御装置250の指示信号によって駆動する。また、ウインチ280a、ウインチ280bは、それぞれのワイヤー222にかかる張力を調整するため、張力の検出器が内蔵されているものが望ましい。
図8には、鶏舎290の側面断面図を示す。鶏舎290の両端には、ウインチ280aとウインチ280bが設けられている。ウインチ280に隣接して、支柱282(支柱282aおよび支柱282b)が設けられる。支柱282の先端には、滑車283(滑車283a、滑車283b)がそれぞれ設けられる。ワイヤー222は、それぞれのウインチ280から支柱282の先端の滑車283を介してデコイ210の両端に接続されている。
支柱282は高さが変えられるように構成されていてもよい。デコイ210の姿勢を変える際に、ワイヤー222の張力だけでなく、滑車283の位置も変化できるようにしておくことで、床面からの高さを変えずに、姿勢を制御することができるからである。
ウインチ280aおよびウインチ280b両方でワイヤー222t、ワイヤー222sを引っ張れば、デコイ210は、鶏舎290の床面290fから浮き上がる(図8(a)参照)。また、ウインチ280aおよびウインチ280b両方でワイヤー222tとワイヤー222sを繰り出せば、デコイ210は、床面290f近くまで降下する(図8(b)参照)。
また、ウインチ280aでワイヤー222tを牽引し、ウインチ280bでワイヤー222sを適度な張力をかけながら繰り出すことで、デコイ210は鶏舎290の床面290fから一定の高さを保ったまま、ウインチ280aの方向に移動する。また、逆にすれば、ウインチ280bの方向に移動する(図8(c)参照)。
デコイ210の床面290fからの高さHは牽引する側のウインチの張力と繰り出す側のウインチの張力の差で調節することができる。制御装置250は、両ウインチ280のワイヤー222の繰り出し長さから、両ウインチ280の適切な張力および巻き取り若しくは繰り出し速度の指示を行う。
このように、デコイ210はウインチ280と、支柱282と、滑車283と制御装置250によって、鶏舎290内を移動する。
次にこのような構成を有するデコイ210の動作について説明する。デコイ210は、通常、鶏舎290の一端の天井付近に吊り下げられている。デコイ210の稼動は、鶏舎290内に電灯が灯されている間に行う。ニワトリが寝ている際には、ニワトリの睡眠を邪魔しないようにするためである。
今、デコイ210がウインチ280b側の壁に吊り下げられているとする(図8(a)の状態)。デコイ210を稼動させる場合は、まず、ウインチ280bおよびウインチ280aからワイヤー222sおよびワイヤー222tを繰り出し、デコイ210を床面290f付近まで降下させる(図8(b)の状態)。
そして、ウインチ280bがワイヤー222sを繰り出しながら、ウインチ280aがワイヤー222tを巻き取る。このようにすることで、デコイ210は、床面290f付近を浮いたまま移動する。この時の高さHは、ニワトリの視点と同じ程度の高さがよい。また翼214の床面290fからの高さは、ニワトリが跳び越せる程度の高さであるのが望ましい。
移動の際には、ライトまたはLEDを点灯して、下部にデコイ210の影を投影して、ニワトリに注意を喚起してもよい。またニワトリが翼214に当たる場合は、ゆっくりと、移動する。デコイ210の急激な移動は、ニワトリにストレスを与えるからである。また、障害物が翼214にあたる場合は、翼214を適度な角度だけ閉じてもよい。これらの操作は制御装置250を通じて、監視者が行うことができる。
なお、実施の形態1で説明したロボットと鶏舎の照明の関係は、本実施形態で適応してもよく、詳細な説明は省略する。
(実施の形態3)
以下に本実施の形態に係る飼育方法について説明する。本実施の形態では、ブロイラーは、移動する光スポットを忌避し、それを避けるように行動することを利用して、ブロイラーの運動を促進する。
図9に本発明に係るロボット3の外観を例示する。図9(a)は側面図で、図9(b)は正面図である。本発明のロボット3は、移動装置120と、光照射装置122と、バッテリー140(図12参照)、位置検出装置124(図12参照)、通信装置126(図12参照)および制御装置128(図12参照)を有する。また、カメラ装置130を搭載してもよい。さらに、ロボット1や2が有している注意喚起ライト14と、スピーカー16、マーキング装置22が備えられていてもよい。なお、ここでは図1で示した戦車タイプのロボット(走行型ロボット)で説明するが、図2で示したマルチコプタータイプやデコイの飛行型ロボットであってもよい。
図10には、鶏舎50の平面図およびロボット3を稼動させるための周辺装置の関係を示す。ロボット3は、鶏舎50中の基地170に通常載置される。鶏舎50には、給餌器54および餌と水の供給源であるサイロ58が備えられている。ロボット3には親制御装置150が用意される。親制御装置150は、少なくとも1台のロボット3を制御することができる。さらに、ロボット3には、鶏舎50内に基地170が設けられても良い。基地170は、ロボット3が一次帰還し、記録したデータの送信やバッテリー140(図12参照)への充電などを行うことが出来る。
再び図9を参照して、移動装置120は、ロボット3を移動させることができれば、形態が限定されるものではない。例えば、複数足歩行やキャタピラ、複数車輪といった方法を利用することができる。なお、鶏舎50の床面にはオガコ等の敷料が敷き詰められている。このような床面を移動するに際しては、キャタピラは、能力面およびコスト面から好適に利用できる移動手段であるといえる。ここでは、ロボット3は、キャタピラを移動装置120として有する例について説明を続ける。
移動装置120は下部筐体110bに設置される。下部筐体110bの上には上部筐体110aが配置される。上部筐体110aには、回転塔112が設けられる。回転塔112は、上部筐体110aに対して回転可能に枢支されている。なお、回転塔112の回動装置112d(図12参照)は、下部筐体110b中に設置されている。
また、上部筐体110aの周囲には、バンパー110sが設けられている。バンパー110sは、発砲ウレタン等のクッション材で形成されている。バンパー110sと上部筐体110aの間には、タッチセンサ132aが備えられていてもよい。ロボット3が何かに衝突した際に、衝突を検知することができるからである。バンパー110sは、ロボット3がニワトリに接触したり、またロボット3が壁等に衝突した際に、ニワトリおよびロボット3を保護する。
回転塔112には、光照射窓112wが設けられている。また光照射窓112wの内部には、光照射装置122(図11参照)が設置されている。光照射装置122は、光照射窓112wから光を照射し左右に走査することができる。また、ロボット3の前方のどれくらいの位置に照射するかを表す照射位置を変更する照射角変更装置123(図11参照)が備えられていてもよい。
また、回転塔112中には、カメラ装置130も搭載されている。カメラ装置130は、ロボット3の周囲の状況を把握したり、光照射窓112wから照射された光がどこに当たっているかを確認することができる。また、周囲の状況を画像データとして記録してもよい。
光照射装置122は少なくとも上記の性能を有していれば、構成に限定されるものではない。ここでは図11に、光照射装置122の構成を例示する。図11(a)は回転塔112の平面図であり、図11(b)は、側面断面図である。光照射装置122は、光源122aと、ポリゴンミラー122b、ポリゴンミラー122bの駆動モータ122c、照射角変更装置123および光源制御装置122dを含む。
光源122aは、平行光線を照射することのできる光源122aが用いられる。光スポットを床面に発生させるためである。レーザー装置や、焦点からの光を平行光線にできるアフォーカル系の組レンズを有する光学系が用いられる。特に発明者は、赤の光(波長635〜690nm)のレーザー光で、効果的にニワトリを誘導できることを確認している。光の強度も特に強い光が必要ではなく、レーザーポインターに用いられる0.2mW程度のパワーの光源122aでよい。また、光源122aは単数ではなく、複数あってもよい。光スポットが複数あるとニワトリが認識しやすいからである。
ポリゴンミラー122bは、多面体ミラーであり、設置される回転塔112中のスペースや、走査範囲によって、三角形から八角形程度のものが用いられる。ポリゴンミラー122bは、光源122aからの光を反射して、光照射窓112wから光を射出する。
ポリゴンミラー122bは、駆動モータ122cによって回転する。回転する毎に、光照射窓112wから光が放出され、かつ走査される。また、ポリゴンミラー122bと駆動モータ122cは、1つのステージ123a上に固定されており、そのステージ123aの俯角を変更する照射俯角変更モータ123bが設けられる。ステージ123aは、回転塔112内に支柱123cで揺動可能に枢支されている。照射俯角変更モータ123bは、ステージ123aの枢支されていない部分を下から突き上げ、ステージ123aの俯角を調整することができる。ステージ123aと照射俯角変更モータ123bと支柱123cは、照射角変更装置123を構成する。
光源制御装置122dは、光源122aのON/OFFと、ポリゴンミラー122bの駆動モータ122c、および照射俯角変更モータ123bを駆動し、ポリゴンミラー122bの回転角度と、照射光の俯角を調整する。照射光の俯角を調整することで、光照射装置122からどの程度前方の床目に光スポットを発生させるかを調整することができる。光源制御装置122dは、制御装置128(図12参照)からの指示によって、これらの制御を行う。なお、光源制御装置122dは、制御装置128が兼務してもよい。
なお、ここでは光照射装置122として、光源122aとポリゴンミラー122bを用いた例を示したが、ロボット3では、光照射装置122はこれに限定されない。例えば、レーザーポインターを複数個回転塔112上端に固定し、回転塔112を回転することで光スポットを走査するように構成してもよい。また、光照射装置122の部分だけを回転塔112とは別に回動させるようにしてもよい。たとえば、上記の例では、光源122aが載置されたステージ123aを回転させるといった構成にしてもよい。また、このような光照射装置122はマルチコプタータイプやデコイのロボット(飛行型ロボット)に搭載してもよい。
再び図9を参照して、回転塔112には、カメラ装置130も搭載されている。図9では、カメラ装置130は、光照射装置122より下に搭載したが、上であってもよい。カメラ装置130において、カメラ130aの数は特に限定されない。図9では、回転塔112の前後左右に一対ずつ、計4つのカメラ130aが搭載されている。各カメラ130aの画角は広く、4つのカメラ130aでロボット3の周囲360°がカバーできる。カメラ装置130の画像は、通信装置126(図12参照)に送られ、親制御装置150に送られるようにしてもよい。
回転塔112は、回動装置112d(図9では見えない。図12参照)によって上部筐体110aに対して回転することができる。したがって、光照射窓112wと、カメラ130aは、上部筐体110aに対して角度を変更することができる。
図12には、各種装置間の接続関係を示す。制御装置128は、移動装置120と光照射装置122とカメラ装置130と通信装置126およびバッテリー140と接続される。制御装置128は、MPU(Micro Processor Unit)128aおよびメモリ128bで構成される。メモリ128b中には、ロボット3が自走する際の走行ルートや、行動プログラムが記憶されている。なお、メモリ128b中には、走行中に生じた事象の画像を記録してもよい。
通信装置126は、無線通信機である。親制御装置150との間で通信を行う。また、基地170との間で有線による通信を行ってもよい。
位置検出装置124は、GPS若しくは鶏舎50内に備えられた無線ビーコンに基づいて現在の位置を確定する。また、加速度計および方位磁石によって、出発点からの位置を算出し、自立で出発点に帰還する所謂慣性走行を行っても良い。制御装置128は位置検出装置124からの位置情報に基づいて鶏舎50内の現在の位置を知る。
タッチセンサ132aは、バンパー110s(図9参照)と上部筐体110a(図9参照)(若しくは下部筐体110bでもよい)との間に設けられる。そして、バンパー110sが何かと接触したら制御装置128に通知する。このようなタッチセンサ132aは走行妨害検知装置132を構成する。
なお、走行妨害検知装置132は、タッチセンサ132aで好適に構成することができるが、何かに衝突し、それ以上進行することができないことで走行妨害検知装置132を構成してもよい。例えば、位置検出装置124から位置情報を数秒毎に取得し、移動装置120を駆動させているにも係らず、位置情報に変化がなければ、何かに衝突しているために走行が妨害されていると判断することで、走行妨害検知装置132を構成することもできる。
図13にロボット3と基地170と親制御装置150の関係を詳しく示す。基地170は鶏舎50(図10参照)内に配置されるロボット3の収容場所である。ロボット3が収容された際に、バッテリー140(図12参照)への充電端子および、通信装置126の有線による通信端子がロボット3との間で接続される。したがって、基地170はバッテリー充電器172と親制御装置150との間の基地通信装置174を有している。なお、基地170は、鶏舎50外部から取り出し可能に設けられているのが好ましい。鶏舎50の中に入らなくても、ロボット3を回収できるからである。
親制御装置150は、少なくとも1台のロボット3を鶏舎50外部から制御することができる。親制御装置150は、親通信装置152を有する。親通信装置152は基地170が有する基地通信装置174と、ロボット3が有する通信装置126(図12参照)との間の通信を行う。また、親制御装置150は、ロボット3を遠隔操作で操縦する。したがって、操縦装置154を有している。操縦装置154は、操縦桿やコマンドの入力が可能な入力装置156および状況を映し出すディスプレイ装置158を含む。また、親制御装置150は、ロボット3からの画像データやその他のデータを記憶する記憶装置160を有する。
親制御装置150は、入力装置156からロボット3に走行コースの変更や動作の変更を指示することができる。また、実時間でロボット3を走行させ、カメラ装置130(図9参照)からの画像を見ながら、光スポットを発生させたり、走査させたりすることができる。
次にロボット3の動作について説明する。
<自立モード>
自立モードは、一定の時刻になったら、鶏舎50内の見回りを自動的に行い、また戻ってくるモードである。この間操縦装置154からの指示は受けなくてもよい。ここで見回りとは、光スポットを走査しながら鶏舎50内を走行し、ニワトリの注意を喚起して、ニワトリの運動を促進することをいう。
ロボット3は、基地170に収納されている。ここでは、バッテリー140の充電や、有線による操縦装置154との通信を行う。ロボット3は、規定時刻になったら、鶏舎50内の見回りに出発する。
図14は、鶏舎50の平面図を示す。ロボット3は、鶏舎50内の決められたルートを走行する。ルートとしては、鶏舎50の壁沿いに沿って走行するのが好ましい。図14では鎖線で示した。鶏舎50の中央側には、給餌器54が備えられており、元気なニワトリは、そこで餌や水を取得する。一方、調子の悪いニワトリほど、鶏舎50の壁際に押しやられるからである。ロボット3は、このようなニワトリを給餌器54のある鶏舎50の中央側に誘導する。
ロボット3は、走行しながら、光源122a(図11参照)からの光を前方壁面に照射する。また、ロボット3のおよそ50cm先に向けて照射してもよい。照射された光は、平行光線なので、ロボット3の前方の床面に光スポット144を発生させる。ロボット3は、その光スポット144を走査する。
走査角度は、特に限定されない。自立モードでは予め決められた角度だけ走査を行う。例えば、ロボット3の正面から左45°から右45°までの90°を走査するなどである。走査の速度は、90°の走査に1〜2秒程度であればよい。早すぎても遅すぎても、ニワトリが光スポット144の走査を認識できないからである。
走査の方法も特に限定されない。上記の例では、ポリゴンミラー122bを一方向にだけ回転させると、光スポットは右から左、若しくは左から右方向にだけ走査される。しかし、光スポットは、右から左そして再び左から右に走査してもよい。
光スポットは複数あってもよい。ニワトリが視認しやすいからである。直径1cm以下のスポットが1つ程度では、密飼されている鶏舎50内のニワトリは気がつかない場合が多い。小さな径の光スポットは複数個あるのが望ましい。
また、大きすぎると投光機になってしまい、単にまぶしいだけになる。また、密飼されている鶏舎50内で大きな光スポットを床面に発生させるだけの隙間は出来にくい。したがって、光スポットの大きさは、およそ0.5cm程度から10cm程度までが望ましい。また、光スポットの色は、鶏舎内の照明の色でない色がよい。目立つためである。特に、人間にとっての赤色はニワトリの注意を喚起できる。
光スポットが走査されると、ニワトリは、走査された領域を避けるように移動する。この原因は、明らかではない。おそらく、ニワトリは、光スポットを忌避し、光スポットから逃げるために移動するものと思われる。なお、このような操作でニワトリ自身がパニックにはならない。
ロボット3は、何かに衝突しなければ、決められたルートを走行し、再び基地170に戻ってくる。何かに衝突した場合は、衝突した回数と位置を記録する。基地170に戻ったら、バッテリー140の充電と、見回り中に録画した画像データを親制御装置150に送信する。また、衝突回数及び位置も同様に送信する。
見回り中にロボット3が何かに衝突したら、ロボット3は、これを回避する。回避の方法は特に限定されないが、壁から離れる方向に一定の距離を進み、再び壁と平行に進み、再度壁に沿ったコースまで戻ってくるといった方法が考えられる。
このように回避行動を行った箇所には、すでに動けなくなったニワトリがいる可能性が高い。ロボット3は、この地点の情報を親制御装置150に通信する。この際に通知する情報は、衝突を検知した位置であってもよいし、回避行動を行った位置でもよい。共にほぼ同じ位置を示すからである。
ロボット3は、人間にとって夜中の間、鶏舎50を巡回する。したがって、朝、飼育員は前夜にロボット3が回避行動を行った(若しくは衝突した)際の画像を調べる。そして、回避行動(若しくは衝突)の原因が動きにくくなったニワトリである場合は、人間が見回る際に、ロボット3が回避行動を行った(若しくは衝突した)地点を調べ、異常の兆しのあるニワトリを確認することができる。
<依存モード>
ロボット3は、親制御装置150からの指示によって、鶏舎50内を走行することができる。この場合、カメラ装置130で撮影した画像は、親制御装置150のディスプレイ装置158上に映し出され、操縦者はロボット3の視線で鶏舎50内を見ることが出来る。
また、操縦者は光照射を行いながら移動することもできるし、光照射は行わない状態でロボット3を移動させることもできる。特に、自立モードにおいて、ロボット3が回避行動を行った(若しくは衝突をした)地点を確認するために、ロボット3をその地点に向かわせ、カメラ装置130で撮影した画像で、その地点の付近を確認するといったことが可能になる。
なお、実施の形態1で説明したロボットと鶏舎の照明の関係は、本実施形態で適応してもよく、詳細な説明は省略する。
(実施の形態4)
本実施の形態では、鶏舎50内のニワトリを群れとしてとらえ、発育状態を向上させる。鶏舎50内のニワトリは、自由に動き回れるが、鶏舎50中に密集した群れができると、その中の一部のニワトリは、餌を食べる機会を得ず、発育不良となることが多い。したがって、鶏舎50内に複数のニワトリが特定の場所に密集するような場合は、この密集状態を解消することで、個々のニワトリが餌を取る機会を均等に与える必要がある。
図15は鶏舎50の平面図を示す。本実施の形態では、鶏舎50の天井に、監視カメラ70を備える。また、図10で示したように、ロボット3、ロボット3の基地170および親制御装置150も備えられている。なお、本実施の形態におけるロボット3は、実施の形態2で説明したロボット3であり、実施の形態3で説明した付加してもよい機能が付加されたロボットであってもよい。もちろん、飛行型ロボットであってもよい。
図16には、図13同様に、ロボット3と基地170と親制御装置150と監視カメラ70の接続関係を示す。監視カメラ70は親制御装置150に接続されている。したがって、監視カメラ70の画像は、ディスプレイ装置158で監視することができる。
本実施の形態では、監視カメラ70で鶏舎50内のニワトリの群れの状態を監視し、鶏舎全体に渡って見たときに群れに偏りが生じた場合は、ロボット3をニワトリが集中した箇所に送り込み、密集した群れを拡散させる。なお、ロボット3が密集した群れを拡散させるのは、ニワトリの運動を促進することであると言ってよい。
通常鶏舎内では密飼されているので、ニワトリは床面のどこを見ても平均的な密度(単位面積当たりにいるニワトリの数)はほぼ同じになると考えられる。しかし、実際には、鶏舎50の壁沿いに集まる傾向がある。そして、餌の摂取量が減るニワトリは、このような壁際に集まる群れの中に発生する場合が多い。
そこで、ロボット3で定期的に運動を促進するのとは別に、偏った状態の群れを拡散することでも、鶏舎全体のニワトリの育成に寄与することができる。
監視カメラ70で群れの偏りを検出する方法は特に限定されない。人間が監視カメラ70の画像を見て、偏りの有無を判断してもよい。また、画像処理によって偏りを数値化してもよい。画像処理で群れに偏りがあることを判断できれば、人間が見ていなくても監視カメラ70とロボット3でニワトリの群れを動かすことができるので、人間が睡眠をとる夜中でもニワトリの群れの偏りを解消することができる。
具体的な方法について一例を示す。図17には、親制御装置150の処理のフローを示す。処理がスタートしたら(ステップS100)、終了判断を行う(ステップS102)。終了判断は特に限定されず、特定の時刻で停止する、停止指示があったなどが考えられる。処理を終了する場合(ステップS102のY分岐)は停止する(ステップS150)。
終了しない場合(ステップS102のN分岐)は、監視カメラ70で床面上を撮影し、画像データGを得る(ステップS104)。次に画像データGを決められた区画に分割する。後の画像処理での個数カウントの精度を上げるために、赤外線カメラを用いても良い。
区画に分割するとは、予め床面を、縦3分割、横3分割の9区画に分割すると決めておき、画像データGをそのように分割することである。分割した区画をg1、g2、・・・gnとする。ただし、「n」は自然数である。9区分に分割するとしたら、nは9である。なお、区画は全て同じ大きさ、同じ形状でなくてもよい。例えば、壁際は、壁際に沿った長い区画であってもよい。
次に、各区画gk中のニワトリの数をカウントする(ステップS106)。それぞれの区画のニワトリの数をC(g1)、C(g2)、・・・、C(gk)、・・・、C(gn)とする。区画中のニワトリは、天井側から見ると、個々が紡錘形をして隣のニワトリと分離しているので、画像処理ソフトで個数をカウントすることができる。なお、ここで「k」は、1≦k≦nを満たす自然数で、分割した区画のうち任意の区画を表す変数である。
鶏舎50の床面積は予めわかっているし、鶏舎50内に現在存在するニワトリの数もわかっている。したがって、ニワトリが鶏舎50に均一に分散して存在していれば、1つの区画内にどれだけの数のニワトリがいるか求められる。これを区画平均数Cavとする。なお、区画の中には、給餌器54等も設置してある。また、上記のように区画は同じ広さでない場合もある。したがって、全ての区画において区画平均数Cavが同じでなくてもよい。言い換えると、区画平均数Cavは区画毎に設けられていても良い。
各区画でカウントされたニワトリの数C(gk)と区画平均数Cavを比較する(ステップS108)。区画内のニワトリの数C(gk)が、区画平均数Cavより多い大きな区画は群れが密集していて偏りがあると判断できる。なお、ステップS108中「m」は重み定数である。たとえば、mを1.1にすると、区画平均数Cavの1.1倍の数のニワトリがいても、群れの偏りがあるとはみなさない。つまり、密集の度合い(群れの偏り)はある程度区画平均数Cavより多くないと判断してもよい。
ステップS108で、群れの偏りがあると判断されたら(ステップS108のY分岐)、親制御装置150はロボット3をその区画gkに派遣する(ステップS110)。実施の形態2で説明したロボット3は、光スポットを走査させながら区画gkまで移動し、例えば区画gk内を往復し、群れを分散させる。
群れの偏りがないと判断されたら(ステップS108のN分岐)、処理は終了処理(ステップS102)に戻る。
なお、ここでは、撮影した床面を区画に分割し、区画毎のニワトリの数をカウントしたが、サーモイメージカメラなどで、各区画毎の温度を求めても良い。群れが密集している区画では、温度が高く表示され、群れが希薄な区画は温度が低くなるからである。
以上のように、鶏舎50の天井に監視カメラ70を配置し、そのカメラの画像に基づいてニワトリの群れの偏り有無を判断し、ロボット3で、群れの偏りを解消させることで、個々のニワトリは、餌を食べる機会を得ることができる。言い換えると、餌を食べずに成長不良となる個体数が減少し、生産性を向上させることができる。
なお、実施の形態1で説明したロボットと鶏舎の照明の関係は、本実施形態で適応してもよく、詳細な説明は省略する。
(実施の形態5)
以下に実施の形態4の環境計測を行うロボットについて説明する。図18に本発明に係る鶏舎監視ロボットの構成を示す。鶏舎監視ロボット301は、走行部310と、通信装置312と、位置検出手段314と、バッテリー316と、制御部320とセンサユニット330を有する。センサユニット330には、温度センサ331a、331b、湿度センサ332a、332b、二酸化炭素センサ333a、333b、アンモニアセンサ334a、334b等が備えられる。
なお、センサの種類はこれらに限定されず、上記以外のセンサが搭載されてもよい。また、センサユニット330には、1種類のセンサだけが搭載されていてもよい。ここでは、上記のセンサが搭載されているとして説明を続ける。これらのセンサ類は、上部用および下部用の2セットが用意されている。また、センサユニット330には、カメラ340とサーモセンサ341が搭載されていてもよい。
より具体的には、実施の形態1、2、3で説明したロボット1、ロボット2、ロボット3、デコイ210が有する機能を適宜搭載させることができる。
図19には、鶏舎監視ロボット301の外観例を示す。鶏舎監視ロボット301の形状は特に限定されるものではない。しかし、例えばブロイラーの鶏舎の場合、床面にはオガコ等の敷料が敷き詰められている。この敷料は2〜5cmの厚さに形成される。したがって、このような敷料の上を走行できるような走行手段を有する必要がある。
例えば、複数足歩行やキャタピラといった形態が好適に利用できる。ここでは、キャタピラ362を用いた戦車型のロボットを例示する。本体360の上面にはセンサユニット330が内蔵される上部センサドーム364が設けられている。カメラ340およびサーモセンサ341は、カメラ塔366内に収納されている。このカメラ塔366は、回転することで360°の視野を有する。本体360の下面には下部センサドーム363が設けられている。敷料の直上の環境を計測できるためである。
図20には、鶏舎監視ロボット301が監視する鶏舎400の平面図を例示する。鶏舎400には、配管411とフィーダー412およびサイロ413を有する給餌・給水装置410が備えられている。また、換気を行うための換気ファン402や、鶏舎400内を暖房するブルーダ403、鶏舎400内に空気を取り入れる際に取り入れ空気を冷却するクーリングパット404、壁に取り付けられた微調節ファン405等の環境制御装置類が備えられている。
また、鶏舎400には、鶏舎監視ロボット301に充電するための充電ステーション406が設けられる。充電ステーション406は、鶏舎監視ロボット301が所定の位置に来れば、鶏舎ロボット301のバッテリー316を充電する。
また、鶏舎監視ロボット301が鶏舎400内における自らの位置を認識できるための、基準信号送信器407が備えられていてもよい。基準信号送信器407は、鶏舎400の四隅の天井に設けられており、それぞれ異なる周波数の信号を送信する。
また、鶏舎監視ロボット301から送信される計測データを受信し、記録するコントロールユニット370が備えられていてもよい。
コントロールユニット370は、鶏舎監視ロボット301からの計測データを受信し、記録および集計を行う。また、コントロールユニット370には、表示画面372が設けられており、鶏舎監視ロボット301からの映像信号を受信し、表示させることができる。さらに、コントロールユニット370は、鶏舎監視ロボット301の操縦装置373が設けられていてもよい。コントロールユニット370側から鶏舎監視ロボット301を操縦するためである。
再び図18を参照して、走行部310は左右の駆動輪を駆動するモータ310a、310bおよびキャタピラ362(図19参照)で構成される。これらのモータ310a、310bは制御部320に接続されている。そして制御部320からの指示によって駆動する。鶏舎監視ロボット301は左右のモータ310a、310bを独立して駆動することで、直進、後進、左右への方向転換を行うことが可能である。
バッテリー316は、図18の各機器に対して電力を供給する。また、外部からの電力の供給によって電力を蓄電する。つまり、バッテリー316は二次電池であるのが望ましい。
通信装置312は、無線による通信装置である。通信のプロトコルは特に限定されない。例えば、公衆回線を利用する方式であってもよい。通信装置312は、鶏舎監視ロボット301が取得した計測データを送信する。また、鶏舎400に備えられたコントロールユニット370からの指示を受信してもよい。
位置検出手段314は、鶏舎400に設けられた基準信号送信器407を用いる方法、GPSを用いる方法、通信装置312の無線を利用した三辺測量による方法、および充電ステーション406からの移動方向と移動速度および移動時間から位置を求める方法(所謂慣性航行)などが利用できる。ここでは鶏舎400に設けられた基準信号送信器407を使う例を示す。
バッテリー316は充放電可能な二次電池が好適に利用できる。バッテリー316は鶏舎監視ロボット301の全ての電気消費部分に電力を供給する。
センサユニット330は、ニワトリの生活空間の環境指数を計測するセンサの集合である。センサユニット330には少なくとも、温度センサ331a、331b、湿度センサ332a、332b、二酸化炭素センサ333a、333b、アンモニアセンサ334a、334bを備えているのが望ましい。これらのセンサ類は、本体360の上面に設けられた上部センサドーム364内と下部センサドーム363内の2箇所に設けられる。上部センサドーム364に備えられるセンサ類は「a」の拡張子を付け、下部センサドーム363に備えられるセンサ類は「b」の拡張子を付す。
ニワトリの高さ程度での温度湿度等の計測データと、敷料直上の温度湿度等の計測データは、ニワトリにとって快適な環境を与えるために非常に有効である。敷料直上の湿度は、敷料の湿気を反映する。したがって、敷料をより乾燥させるように鶏舎400の空調を制御しなければならないという指針を得ることができる。
また、ニワトリの高さ程度の空間の二酸化炭素濃度やアンモニア濃度を把握することで、換気が不要と判断できる場合には換気量を減少させ、エネルギーの節約になる。もちろん、ニワトリの生活する空間の二酸化炭素が多ければ、床面付近の換気量が増えるようにしなければならない。
また、上部センサドーム364には、照度計335およびマイク装置336が設けられていてもよい。照度計335は鶏舎400内の明るさを測定する。またマイク装置336は特定の周波数帯の音量を測定するようにしてもよい。ニワトリが警戒若しくは恐れを感じた際には比較的高音の鳴き声を発する。その音を計測するためである。
カメラ340は、通常の可視光を撮影できるカメラが搭載される。鶏舎400内は通常25ルクス程度の明るさにされる。したがって、Fナンバーはできるだけ小さなレンズを装着しているのが望ましい。また、撮影に際して照明を当てる必要がある場合があるので、スポットライト340aが備えられていてもよい。
サーモセンサ341は、二次元の撮像面を有するものが望ましい。撮影対象物を温度分布のイメージで見ることができるからである。また、カメラ340とサーモセンサ341は並設し、レンズの光軸は同じ方向を向けておくと、カメラ340で撮影したものの温度分布を観察することができる。カメラ340とスポットライト340aとサーモセンサ341は、本体360の上面に設けられたカメラ塔366に備えられる。
制御部320は、センサユニット330のセンサ類、走行部310、通信部312、位置検出手段314と接続されている。そして各部へ指示信号を送信し、各部からの信号を受信する。また、制御部320は内部に時計321とメモリ322が設けられる。そして、制御部320の動作はメモリ322内部にインストールされた制御プログラム323で制御される。また、目標地点リスト324がメモリ322に記憶される。目標地点リスト324は例えば鶏舎400内の位置座標であってよい。
以上の構成を有する鶏舎監視ロボット301の動作について説明する。図21には、鶏舎監視ロボット301の基本動作のフローを示す。鶏舎監視ロボット301は、自立モードと操縦モードを有する。自立モードは、鶏舎監視ロボッ301が内蔵された制御プログラム323によって鶏舎400内を走行し、予め決められた計測ポイントで環境指数を計測する。
図21を参照して、鶏舎監視ロボット301の制御部320が処理を始めると(ステップS400)、初期設定を行う(ステップS402)。初期設定は、時刻合わせ、バッテリー残量確認、最初の目標地点の設定等である。初期設定が終了したら鶏舎監視ロボット301は移動を開始する。
移動を開始したら、帰還条件が満たされたか否かを確認する(ステップS404)。帰還条件とは、時刻及びバッテリー残量である。例えば、活動予定時間が決まっている場合には、出発時刻からの経過時間を確認し、活動予定時間を越えていれば帰還条件を満たすことになる。また、活動予定時間内であっても、バッテリーの残量が残り少ない場合は帰還条件を満たすことになる。
帰還条件を満たしたら(ステップS404のY分岐)、目標地点を鶏舎400の充電ステーション406に設定し、移動する。充電ステーション406に到達したら終了する(ステップS420)。
帰還条件が満たされていない場合(ステップS404のN分岐)は、目標地点に到達したか否かを判断する(ステップS406)。目標地点とは、鶏舎400内で鶏舎監視ロボット301が移動する移動先の位置である。これは予めメモリ322内に目標地点リスト324として記録されている。初期設定(ステップS402)の際に最初の目標地点が設定されている。したがって、鶏舎監視ロボット301は、この目標地点リスト324の最初の目標地点に向かって移動する。
制御部320は位置検出手段314によって、自分が鶏舎400内のどの位置にいるかを知る。位置検出手段314は、鶏舎400に備えられた基準信号送信器407からの信号によって鶏舎400内の位置を算出する。ここでは鶏舎400にはそれぞれ送信周波数の異なる基準信号送信器407が4つ設けられている。鶏舎監視ロボット301は、これらの信号の受信強度の比から鶏舎400内のいずれの位置にいるかを知ることができる。したがって、自分の位置と目標地点の位置を比較し、その差が小さくなるように走行部310を制御する。
図22には、設定された目標地点を例示する。図22を参照して、点線は鶏舎400内を走行する鶏舎監視ロボット301の巡回経路を示す。また、丸で囲んだ数字は、設定された目標地点である。鶏舎監視ロボット301は、巡回経路上に設定された目標地点を数字の順に訪れ、その地点でセンサによる計測を行う。
このように、鶏舎400内を巡回することで、鶏舎監視ロボット301は、環境指数を計測するだけでなく、ニワトリの運動を促進する。また、この際に、ニワトリの注意を喚起するため、光スポットの走査、注意喚起ライトの点灯、音の発音を行ってもよい。これらを実施するための装置は、実施の形態1、2、3、4で説明したロボット1、2、3、210が有する構成で実施できる。
再び図21を参照する。目標地点に到達していなければ、再びステップS404から繰り返す。鶏舎監視ロボット301が目標地点に到達したら(ステップS406のY分岐)、停止し、センサ類で環境指数を計測する(ステップ408)。
鶏舎監視ロボット301が停止した地点での温度や湿度といった環境指数が本体360の上面側および下面側で計測される。これらの計測データは、測定地点の位置情報および測定時刻と共に通信装置312によって送信される(ステップS410)。
計測データを送信したら、次の目標地点をメモリ322から読み出し、その地点に向かって移動を開始する(ステップ412)。処理のフローはステップS404に戻す。
このように鶏舎監視ロボット301は基本的に、鶏舎400内を予め決められた目標地点まで移動し、目標地点で環境指数を計測する。そして、計測データを送信するという動作を繰り返す。
鶏舎監視ロボット301は、移動している最中に、カメラ塔366のカメラ340およびサーモセンサ341で周囲を撮影する。また、照度計335およびマイク装置336で周囲の照度や音声を測定する。
図23に鶏舎監視ロボット301の走行中の動作フローを示す。次の目標地点までの移動が開始されたら(ステップS500)、目標地点に到着したか否かを判断する(ステップS502)。目標地点に到着したら(ステップS502のY分岐)この処理フローは終了する(ステップS520)。環境計測を行うからである。
目標地点に到着してなければ(ステップS502のN分岐)、照度が所定の明るさThLより低いか否かを判断する(ステップS504)。鶏舎400内は一定の間25ルクス程度の明るさに維持されているはずであるが、照明装置などに不具合が起こると鶏舎400内で暗い箇所ができる。
また、所定の高周波数帯での音量が閾値Thi以上あるか否かを判断する(ステップS506)。ニワトリは、驚いたり、恐怖を感じたりすると、比較的高音の警戒鳴きを行う。
また、突発音が生じたか否かを判断する(ステップS508)。ニワトリは比較的継続的な騒音には順応性を示す。しかし、突発音に対しては恐怖を感じるとされる。
これらの計測の何れかが観測された場合(ステップS504、S506、S508のY分岐)は、鶏舎監視ロボット301はその場で停止し、現在の位置、時刻および観測結果を送信する(ステップS510)。送信が終了したら、再び移動を開始する(ステップS512)。
再び図22を参照して、鶏舎監視ロボット301はコントロールユニット370の操縦装置373で外部から操縦することもできる。監視者は、コントロールユニット370の表示画面372での映像や、鶏舎監視ロボット301からの計測データによって、鶏舎400内に異常を認めた場合などは、操縦装置373で鶏舎監視ロボット301を所望の地点まで移動させる。この際カメラ340の画像によって、ニワトリを間近で観察することができる。
例えば、接触性皮膚炎の有無や羽毛の汚れなどは容易に発見することができる。また、人が見回る場合、趾蹠(シセキ)や膝節といったニワトリの脚部は、逐一抱き上げて観察しなければならなかった。しかし、ニワトリと同じ程度の高さからのカメラ340であれば、歩行するニワトリの足元を観察することで、趾蹠や膝節の感染症を早期に発見することもできる。
また、サーモセンサ341での画像を観察することで、体温が上がっている個体の発見や、逆に体温が低下している個体の発見も可能になる。
コントロールユニット370は、鶏舎監視ロボット301からの計測データを記録する。そしてこれらの計測データを集計するようにしてもよい。記録されたデータは、鶏舎400内の位置データと観測時刻データが一緒になっている。したがって、鶏舎400内の温度分布や湿度分布とともに、床面の温度湿度についても表示することができる。
なお、実施の形態1で説明したロボットと鶏舎の照明の関係は、本実施形態で適応してもよく、詳細な説明は省略する。
実施の形態3、4で説明したロボット3を実際に稼動させた場合のブロイラーの育成状況について試験を行った。ロボット3は、回転可能な回転塔112の上部に3本のレーザーポインターを搭載し、走行中は90°を2秒で走査した。レーザーポインターは赤色(波長635nm)で0.2mWのものを用いた。光スポットはロボット3の前方左手壁床上約50cmのところに発生させた。つまり、ロボット3の手前(走行方向)50cmのところに、3つの光スポットが発生し、90°を約2秒の角速度で走査されている。
試験は、試験区(ロボット1を走行させた鶏舎50)として6300羽の鶏舎50を使い、対照区として6600羽の鶏舎50を使った。鶏種はチャンキーである。入雛後3日齢の夜から7日齢の朝まで行った。
日中は8時から9時まで、13時から14時まで、16時から17時までの3回にわたり、人間が鶏舎50内を見回る。そして夜は19時から20時、22時から23時、1時から2時、4時から5時の4回にわたりロボット3が鶏舎50の壁に沿って見回りを行った。
ロボット3は3日齢の夜、4日齢の夜、5日齢の夜、6日齢の夜の計16回の見回りを行った。対照区では、夜間のロボット3の走行は行っていない。したがって、試験区のブロイラーは、計16回分だけ対照区のブロイラーより多く運動を行っている。
7日齢の昼13時から14時の間にそれぞれ450羽の雛の体重を測定した。なお、試験の間、光スポットの走査によって、移動しない個体はなく、したがって、ロボット3が決められたコース上に衝突を発生させることはなかった。
その結果、入雛時の平均体重は、試験区では46.56g、対照区で48.03gと、試験区の方が対照区より軽かった。これに対して7日齢での体重は試験区では165.00g、対照区では160.90gと、試験区の方が対照区より重くなった。増体倍率も試験区では3.54倍、対照区では3.35倍と、試験区の方が対照区よりも重くなった。
したがって、ロボット3を鶏舎50内で走行させることで、ニワトリの運動を促進し、ニワトリの食欲が増進し、体重も重くなったと考えられる。これ以後の試験はまだ行っていないが、ロボット3を走行させることで、体重増加に足腰が追従せず、動けなくなる個体の数の減少が、期待できると考えられる。