以下に本発明に係る畜舎について図面を参照しながら説明を行う。なお、以下の説明は本発明に係る畜舎の一実施形態の説明であり、これに限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下の実施形態は変更することができる。なお、以下の説明においては、畜舎を牛舎として説明を行う。しかし、本発明の畜舎は特に牛舎に限定されるものではなく、鶏舎、豚舎にも適用することができる。
図1に本発明に係る牛舎(畜舎)1の斜視図を示す。また、図2には、牛舎1の短辺方向の側面図を示す。また、図3には、牛舎1において、後述するプル側送風機が設けられた側面(以後「プル側側壁」と呼ぶ。)の図とその一部拡大図を示す。また、図6には、牛舎1において、後述するプッシュ側送風機が設けられた側面(以後「プッシュ側側壁」と呼ぶ。)の図とその一部拡大図を示す。
図1を参照する。牛舎1は、長方形の床面10と、床面10の短辺側に設けられた端壁12a、12b(いずれか若しくは両方を「端壁12」とも呼ぶ。)と、床面10の長辺側に設けられたプル側側壁14aとプッシュ側側壁14b(両方をまとめて「側壁14」とも呼ぶ。)と、屋根16によって形成される。なお、屋根16と側壁14と端壁12は建築物を構成するといってもよい。また、以後の説明で「牛舎1の長手方向」とは、床面10の長辺方向を言い、「牛舎1の幅方向」とは床面10の短辺方向を言う。
床面10は、長方形の形状をしている。ただし、正方形を排除するものではない。畜舎を建設する土地の都合により、多少のゆがみはあってもよい。ここで「ゆがみ」とは、各辺が完全な直線でない若しくは、各辺をなす角度が90度からずれるという状況を含む。しかし、牛舎1は、舎内に均一な空気の流れを発生させることで、牛にとっての快適性を確保するものであるので、均一な空気の流れを阻害するほど、ゆがんでしまうのは好ましくない。
床面10の仕上がりは特に限定されるものではなく、多少の盛り土がされていてもよい。ただし、盛り土も、後述する均一な空気の流れを阻害するほど、凸凹ができるものは好ましくない。
側壁14は、長方形の床面10の対向する長辺に設けられる。一方の側壁がプル側側壁14aであり、他方の側壁がプッシュ側側壁14bとなる。それぞれの側壁14には、後述する送風機と貫通孔が設けられる。
図2を参照して、端壁12aと12bは、長方形の床面10の対向する短辺に設けられる。ここには、開閉扉13a、13bが設けられる。開閉扉13a、13bは、牛舎1への牛の出入りや、作業車両若しくは作業者の出入りのために利用される。通常、この開閉扉13a、13bは、閉じておくのが望ましい。端壁12a、12bに開口部があると、牛舎1内に発生させる均一な空気の流れを乱す原因になるからである。符号16hは軒高を表し、側壁14の高さである。
また、端壁12aと端壁12bには、換気扇22aと換気扇22b(両方まとめて指示する場合は「換気扇22」と呼ぶ。)が設けられる。換気扇22はフード付きのものであるのが望ましい。換気扇22は、プッシュプル換気が使用できない場合に使用される。具体的には、本発明に係る牛舎1は、外気温度が所定の温度以下になると、冷気の侵入を防止するために、側壁14に設けた送風機20を停止させ、送風機20のシャッター21(図5参照)を閉じる。このような場合は、換気扇22だけで換気を行う。なお、図2では、換気扇22aと換気扇22bをそれぞれ3つずつ記載したが、換気扇22の数については、3つに限定されるものではない。
再び、図1を参照して、屋根16は、牛舎1内の均一な空気の流れを作る空間を形成する一部であるので、空気の流れを阻害しない程度の天井の平坦さを有するのが望ましい。屋根16が直接天井となる場合は、屋根16はフラットに近い方が望ましい。形状は、特に限定されるものではなく、切妻屋根、寄棟屋根など自由に利用してよい。切妻屋根で、屋根16の傾斜が1寸勾配(5.7度)のものが好適に利用することができる。なお、寒冷地では積雪防止及び屋根16の強度の観点から、2寸勾配(11.4度)であってもよい。また、勾配がこれ以上あっても、牛舎1内にバッフルと呼ばれる導風幕を張ることで、天井を形成することなく、空気の流れを均一にすることができる。
図3(a)には、プル側側壁14aの正面図を示し、図3(b)には、一部拡大図を示す。プル側側壁14aには、貫通孔14ahが形成されている。貫通孔14ahは、側壁一杯に広がる1つの貫通孔であってもよいし、複数の貫通孔が設けられていても良い。この貫通孔14ahには、後述するプル側送風機20aが設置される。また、貫通孔14ahは、プル側側壁14a若しくは壁部材(側壁を形成するボード状の材料)を形成してから穿設してもよいし、凹状の切り込みが形成された壁部材を組み合わせて設けられたプル側側壁14aの孔であってもよい。なお、図3(b)では、貫通孔14ahは、貫通孔14ah1と、貫通孔14ah2を総称している。
プル側側壁14aに設けられる貫通孔14ahには、プル側送風機20aが、設置される。プル側側壁14aに配置されたプル側送風機20aは、牛舎1内部から外部に向けて空気を流す送風機である。これをプル側送風機20aと呼んでもよい。プル側送風機20aの配置は、隣接するプル側送風機20a同士が等間隔になるように配置するのが望ましい。また、隣接するプル側送風機20a同士の間隔は、使用するファンの直径以内の距離であるのが望ましい。
均一な空気の流れを作るためには、隣接するプル側送風機20a同士の間隔が開きすぎていては、空気が流れない空間ができてしまうからである。ただし、後述するように、上記の条件を満たしていなくとも、均一な空気の流れを作ることができる態様を排除しない。
図4には、1台の送風機20の例を示す。図4(a)は側面視、図4(b)は平面視である。送風機20は1120mm×1120mmの大きさであり、幅20wおよび高さ20hとも同じ寸法である。ファンの直径20dは、1000mmの大きさを有する。もちろん、この大きさに限定されるものではない。
送風機20の前面20fと後面20rには、ワイヤで形成された羽根ガードが設けられている。空気は後面20rから入り、前面20fから吹き出される。図4で例示した送風機20は、吸込側と吹出側が決まっているタイプの送風機20を示したが、ファンの回転方向によってどちらの面も吸込側にできるタイプの送風機であればより好ましい。
図5には、送風機20にシャッター21が施された状態を示す。本発明に係る牛舎1で用いられる送風機20にはシャッター21が備えられる。図5(a)はプル側送風機20aにシャッター21が設置されたものであり、図5(b)はプッシュ側送風機20bにシャッター21が設置されたものである。
シャッター21はいずれも牛舎1の外側に向かって開く。シャッター21の開閉は後述する制御器50からの指示により、駆動モータ21mが行う。シャッター21は開いたらそこでロックがかかり、容易に戻らない構成(例えば、エアーダンパをシャッター21の開閉機構部材に取付ける)にするのが望ましい。強風でシャッター21が突然閉まると、その時の衝撃音が牛にストレスを与えるからである。
なお、本発明に係る牛舎1において、シャッター21は、図5に示されるものに限定されず、巻上式のカーテンのような形状であったり、左右若しくは一方にスライドするカーテンのようなものであってもよい。また、シャッター21は、送風機20毎に取り付けられるものではなく、複数個を一度に開閉してしまうような、大きなものであってもよい。
再度図3を参照して、プル側送風機20aは、プル側側壁14aの全面に配置している。図3では、プル側側壁14aに高さ方向に接近して貫通孔14ah1、14ah2が設けられており、それぞれの貫通孔14ah1、14ah2に、プル側送風機20aが設置されている様子を示す。つまり、高さ方向に2段にプル側送風機20aを配置した構成である。
牛舎1の長手方向を見ると、それぞれの貫通孔14ah1、14ah2の間隔には、狭い部分(間隔)15aと広い部分(間隔)15bがある。広い部分15bは、プル側側壁14aの柱等を設ける箇所である。狭い部分15aおよび広い部分15bともに、プル側送風機20aのファンの直径20d(図4(b)参照)より狭い間隔で設置されているのが望ましい。なお、ここで、隣接するプル側送風機20aの間隔とは、隣接するプル側送風機20aのファンの先端同士が最も短くなる距離を言う。
また、プル側側壁14aの両端でも、端14at1、14at2から最初のプル側送風機20aまでの距離15cは、プル側送風機20aのファンの直径20dよりも短い間隔で配置されている。ただし、プル側側壁14aの端から端まで牛舎1として使用した場合であり、牛舎1に車庫やストッカーといった付帯設備用の空間を追設している場合は、端14at1、14at2から最初のプル側送風機20aまでの距離15cは、ファンの直径20dより長くてもよい。
また、プル側送風機20aを高さ方向に重ねる場合も、各プル側送風機20a間の距離はファンの直径20dよりも短い間隔で配置されている。なお、プル側送風機20aは、1段だけで配置してもよい。床面10から牛の頭の高さまでに均一な空気の流れができればよいので、ファンの直径20dが2m程度の送風機なら1段でよいからである。また、プル側送風機20aは、3段以上の配置にすることを排除しない。
図6(a)、(b)にはプッシュ側側壁14bの全面を示し、図6(c)には、一部拡大図を示す。プッシュ側側壁14bには、貫通孔14bh2が形成され、プッシュ側送風機20bが配置される。プッシュ側送風機20bは、プル側側壁14aとは異なり、広い間隔で配置される。ただし、プル側側壁14aに配置したプル側送風機20aの両端のプル側送風機20aに対応する部分には、プッシュ側送風機20bt1とプッシュ側送風機20bt2が配置される。
特許文献3に示されているように、プル側側壁14aに配置された両端のプル側送風機20aに対応する位置にプッシュ側送風機20b(プッシュ側送風機20bt1とプッシュ側送風機20bt2)を配置することで牛舎1内には、均一な風の流れを作ることができるからである。
したがって、プッシュ側送風機20bはプル側送風機20aの両端の位置に対応する位置に配置する2機と、この2機の間をほぼ等間隔に配置できる数だけ配置する。したがって、プッシュ側送風機20bは、プッシュ側側壁14bに、2機以上、好ましくは3機以上を配置するのが望ましい。もちろん、最大数は、プル側側壁14aに配置したプル側送風機20aと同数である。しかし、プル側送風機20aの数より少なくても、牛舎1内に均一な風の流れを発生させることができる。
なお、プッシュ側側壁14bに配置されるプッシュ側送風機20bは、外部から牛舎1内部に向けて空気を流す送風機である。
プッシュ側送風機20bは、少なくともファンの直径20d以上の距離を上下に移動可能に配置される。図6(c)では、プッシュ側送風機20bが縦方向に2機分配置できるだけの貫通孔14bh2が形成され、そこに1機のプッシュ側送風機20bが配置されている様子を示す。プッシュ側送風機20bは、上方からつり上げ若しくは下方から押し上げる機構によって、この貫通孔14bh2に沿って、プッシュ側側壁14bの高さ方向に移動可能に設けられている。
プッシュ側送風機20bが下側にある場合を下位置にあるといい、上側にある場合を上位置にあるという。なお、上位置と下位置の中間の位置にあることを排除しない。
すなわち、プッシュ側送風機20bは、1つの設置個所に1台だけ設置される。また、プッシュ側送風機20bの上側若しくは下側には、開口が形成される。図6(c)では、実線で示すように現在プッシュ側送風機20bは下位置に配置され、点線で示すように、上位置に持ち上げることもできる。また、図6(a)は全てのプッシュ側送風機20bが上位置に配置され、図6(b)は全てのプッシュ側送風機20bが下位置に配置されている様子を示す。
また、プッシュ側送風機20bは、プッシュ側側壁14bに沿って(牛舎1の長手方向に)移動可能に配置されていてもよい。牛舎1を部分的に用いる場合には、牛舎1内の使用する領域だけに、プッシュ側送風機20bを配置し、その領域をカバーできるプル側送風機20aと共に使用することで、牛舎1の部分的な領域だけに均一な風を発生させることができる。
なお、プッシュ側送風機20bは、プッシュ側側壁14bに沿って移動可能に配置されても、プッシュ側送風機20b間には、ファンの直径20d以上の間隔(貫通孔)が空くように配置される。
また、貫通孔14bh2に上下に2個のプッシュ側送風機20bを配置することを排除しない。さらに、プッシュ側側壁14bに形成される貫通孔(貫通孔14bh1や貫通孔14bh2)は、冬季には封鎖されるようにしておく。冬季は牛舎1内に外気が入りにくい状態にして、牛舎1内の温度が下がらないようにするためである。この時の封鎖は、ビニール製の遮断カーテンやシャッター等を用いることができる。また、封鎖は手動で行うようにしてもよい。
図7には、牛舎1の平面図を例示する。牛舎1の中央部分には餌場60が2列に配置されている。餌場60は、餌が配置される領域である。餌は床面10に直接配置してもよいし、樋状の容器にいれてもよい。餌場60はどちらの状態をも含むものである。牛は、側壁14と餌場60の間で飼われる。餌場60の間にはレール72が設けられている。レール72に沿って、キャリア74が走行する。キャリア74は、餌を貯蔵するストッカー76で餌を搭載し、餌場60に配送する。キャリア74は通常は車庫78で待機している。
また、牛舎1には、自動搾乳機80が配置されていてもよい。自動搾乳機80に入った牛は、乳頭の洗浄から搾乳まで全自動で行われ、搾乳された生乳の体細胞数や生乳の電気伝導度測定により、乳房炎の牛を発見することができる。より具体的には、生乳中の塩化ナトリウム成分が増加すれば潜在的な乳房炎を発見でき、乳房炎に感染している牛がいる区画をみつけることができる。また、自動搾乳機80は出荷に適さない生乳を自動的に分離し良質の生乳のみをバルククーラーに送ることができる。
キャリア74や自動搾乳機80の動きは後述する制御器50が制御してよい。また、他の制御器が制御してもよい。ストッカー76、キャリア74、レール72は、自動給餌装置を構成する。ここでは、自動給餌装置は、ストッカー76、キャリア74、レール72および制御器などで構成される例を挙げた。しかし、自動給餌装置は、これに限定されることはなく、餌を貯蔵するストッカー76から餌場60まで餌を機械的に運搬するものであれば、本発明に係る自動給餌装置としてよい。例えば、スタンドアロンで牛舎1内を移動するロボット等であってもよい。なお、自動給餌装置および自動搾乳機80は舎内作業装置70に含まれる。これらの舎内作業装置70は、凍結すると作動できなくなる。
次にプッシュ側送風機20bの配置の例を説明する。プル側送風機20aの中で両端のプル側送風機20at1、プル側送風機20at2に対応する位置にプッシュ側送風機20bt1、プッシュ側送風機20bt2が配置されている。その他のプッシュ側送風機20b3やプッシュ側送風機20b4等は、ファンの直径20d以上の距離を空けて配置されている。
なお、プル側送風機20aが設置されている長手方向の領域の長さ19は、牛を居住させる空間の側壁14a、14b方向(長手方向)の長さである。この長さ19が、牛舎1の幅(端壁12a、12bの長さ12w)より長ければ、プル側側壁14a、プッシュ側側壁14bの長さ14wより短くてもよい。すなわち、プル側送風機20aは、プル側側壁14aの全面にファンの直径20d以下の間隔で配置していなくてもよい。牛舎1の中で牛が居住する部分に均一な空気の流れを発生させればよく、牛のいない部分に送風機20を配置する必要はないからである。
また端壁12aおよび端壁12bには、換気扇22(換気扇22aと換気扇22b)が設けられている。また、端壁12aおよび端壁12bの間に送風ファン24が設けられていてもよい。送風ファン24は、牛舎1の長手方向に風の流れを作るファンである。図7では、送風ファン24を12個(縦線の入った四角形)描いたが、送風ファン24の数はこれに限定されるものではない。
図8には、牛舎1を部分的に利用する場合の配置について示す。ここでは、使用される領域をカバーするように、運転するプル側送風機20acが決められる。図では稼働状態のプル側送風機20acを、斜線を入れた四角形で示した。
一方、プッシュ側送風機20bは、運転するプル側送風機20acの両端のプル側送風機20act1、とプル側送風機20act2に対応する位置に2機(プッシュ側送風機20b3とプッシュ側送風機20b4。何れも斜線を入れた四角形)が配置される。また、これらの領域を区切るように、端壁12と平行な導風手段12c1、12c2(一点鎖線で表示した。)が配置されてもよい。具体的には、カーテンが好適に利用できる。
なお、図8においては、餌場60には、利用する長さ19の部分だけ餌が供給される状態を、ドットによる模様で示した。
図9には牛舎1の他の形態を示す。牛舎2は、長手方向の途中に管理棟3が配置されている。本発明に係る畜舎は、長方形の床面10の幅(端壁の長さ12w)方向に主たる通気を行うので、側壁14は長くなる。そこで、管理棟3を牛舎2の中央付近に設けると、どちらの端壁12方向に移動するにもほぼ同じ時間で移動できる。したがって、全体としてみると、牛舎2は、管理棟3を境にしてAゾーンとBゾーンの2つのゾーンで牛を飼育することができる。
このような構造であっても、Aゾーン若しくはBゾーンの少なくともいずれかにおいて、プル側送風機20aが連続して配置されている部分の長さ19が端壁の長さ12wより長ければ本発明に係る畜舎といってよい。また、プル側送風機20aが連続して配置されている部分の両端に配置されたプル側送風機20at1とプル側送風機20at2には、それぞれプッシュ側送風機20bt1及びプッシュ側送風機20bt2が対向して配置されている。
また、牛舎2のような構造であっても、端壁12aおよび端壁12bには換気扇22aおよび換気扇22bが配置されている。
なお、図9の構成であると、管理棟3が設置された部分の牛舎2内の領域3Rでは、自動搾乳機80が配置されるユーティリティゾーンとして利用することができる。自動搾乳機80は水分を扱う部分が多く、凍結しやすいため、外気温度の影響を受けにくい牛舎2内の領域3Rに設置することが好ましい。また、牛が自ら自動搾乳機80に向かい列をなす為、牛舎2内の領域3Rのように比較的広いスペースが必要である。領域3Rはこの要求を満足させることができる。
また、管理棟3のすぐ両脇の側壁14には、補助換気扇23が配置されていてもよい。管理棟3が設置された領域3Rの換気を行うためである。補助換気扇23は、牛舎2の幅方向に空気の流れを作る。
図10は、牛舎1を端壁12に平行な面で切った断面の模式図である。牛舎2も同様のシステムを有する。この図を用いて牛舎1の送風機20およびその他の手段の処理フローについて説明する。牛舎1内に設けられた内気温度計30、外気温度計32、風速センサ34、舎内作業装置用温度計40は、制御器50と接続されている。送風機20が稼働すると牛舎1内の空気は符号18の方向に流れる。
舎内作業装置用温度計40は、キャリア74、ストッカー76、車庫78、自動搾乳機80といった舎内作業装置70の表面に設置されている各温度計をまとめた総称である。また前記以外の舎内作業装置70であって、低温によって動作が停止するものを含めてもよい。制御器50は、全ての送風機20とシャッター21にも接続されている。
内気温度計30、外気温度計32、風速センサ34といったセンサ類は、牛舎1の長手方向(側壁14に沿った方向)に向かって、所定間隔で複数個配置されていてもよい。牛舎1は長方形をしているので、1つのセンサの値で牛舎1内の全ての位置をカバーすることはできない場合もあるからである。
制御器50は、内気温度計30からの信号Sti、外気温度計32からの信号Sto、風速センサ34からの信号Sw、舎内作業装置用温度計40からの信号RRを受信する。また、制御器50はタイマ56を有し、現在の時刻や、ある時刻からの経過時間を知ることができる。
これらの受信する信号は、一種類のセンサに複数個の信号の入力があり得る。同種のセンサは複数個配置することを予定しているからである。この場合、制御器50は、同一種類のセンサからの複数の入力に対して、その平均値で全体を制御するようにしてもよい。また、分散を求めておいて、分散値の大きな測定値がある場合は、個々のセンサの位置を考慮して制御を行ってもよい。
制御器50は、送風機20および換気扇22に対しては、インバータの周波数(高い程出力が高い)を指示する指示信号C20a、C20b、C22を送信する。なお、指示信号C20aとC20bは、側壁14a、14bの全面に配置した送風機20の全てを一様に制御してもよいし、特定の送風機20を個別に制御してもよい。特に図9で示した牛舎2のような構成の場合はゾーン毎に送風機20を運転してもよい。また、端壁12に配置した換気扇22も部分的に運転させることができる。
また、制御器50は、シャッター21に対して、開閉の指示信号Cstを送信する。指示信号Cstを受信したシャッター21は、指示信号Cstに従って、閉じる若しくは開くといった動作を行う。なお、ここでは、シャッター21は開閉動作を行うとして説明を続けるが、シャッター21の開度を調節するような制御を行ってもよい。
本発明の牛舎1では、牛舎1内に、均一な空気の流れを作ることを目的とするので、プル側側壁14aおよびプッシュ側側壁14bに並列に配置したプル側送風機20aとプッシュ側送風機20bの一部を間欠的に駆動させる若しくは、部分的に風速の強弱をつけることで、均一な空気の流れを作れる場合があれば、そのような制御を排除するものではない。
また、制御器50は、送風機20および換気扇22に給電する給電線に設けられた、切断スイッチ36とも接続されている。制御器50は指示信号Cdを送信することで、給電を切断することができる。また、送風機20および換気扇22にインバータの周波数を指示する指示信号C20a、C20b、C22を送信して、送風量を抑制して消費電力を制御することもできる。
また、制御器50は、入出力装置52と接続されている。入出力装置52は、表示画面52dと、キーボード等の入力手段52kを有する。主として作業者が用いて制御器50に指示を行う若しくは、現在の牛舎1の状態を確認するために各ステータスを表示させる場合に利用される。制御器50は入出力装置52との間で、信号Sdを送信して、データ等を受け渡し、指示信号Ccを受け取り、作業者の指示に従う。
なお、入出力装置52は、警告灯54等のアラームが搭載されていてもよい。アラームは警告灯54以外の警告ブザー等であってもよい。
<制御フロー>
以下に制御器50の制御フローを例示する。ただし、制御器50は以下のフローに限定されない。したがって、以下の処理フローにおいて、本発明の趣旨を変更しない範囲で、処理同士を入れ替えたり、他の処理を挿入することができる。
<メインフロー>
図11には、制御器50による牛舎1内の換気のメインフローを示す。図10で示した制御器50の処理フローは、必ず終了判定(ステップS102)に戻る。つまり、制御器50は、終了判断を行わない限り、各種の処理を繰り返し行う。なお、それぞれの処理の詳細は、メインフローの説明後に行う。
制御器50が処理を開始すると(ステップS100)、終了判定を行う(ステップS102)。終了判定は、制御器50のコンソールから作業者によって指示される場合以外であってもよいし、緊急に停止する必要がある場合は、割り込みによってこのフローに戻ってもよい。終了する場合(ステップS102のY分岐)は、制御を終了する(ステップS150)。なお、ステップS150には、送風機20、換気扇22への給電を停止し、シャッター21を閉じるとするなどの最終処理を含めてもよい。
制御を継続する場合(ステップS102のN分岐)は、次に初期処理を行う(ステップS104)。初期処理(ステップS104)は、舎内作業装置70の各機械に設置された温度計の温度を確認し所定の温度以下の場合は換気を止めて外気の侵入を防ぐように動作する。舎内作業装置70の温度が低いと、舎内作業装置70は凍結で動作しなくなる。また餌自体が凍結してしまう場合もある。
特に、自動搾乳機80は搾乳する牛の、乳頭の洗浄から搾乳までを全自動で行い、搾乳中の生乳の成分データを瞬時に計測する計測器も兼ねている。したがって、自動搾乳機80が凍結で動作しなくなると、搾乳ができなくなるばかりでなく、牛の健康管理もできなくなる。初期処理(ステップS104)の詳細は、<初期処理>の項目で詳説する。
初期処理(ステップS104)を抜けたら、次に風処理(ステップS106)を行う。風処理(ステップS106)は、外気の風力が強い場合には、シャッター21を閉じる。外気の強い風によって、シャッター21が勢いよく閉じてしまうと牛舎内に大きな音が響き、牛が驚いてストレスを受けるからである。なお、風処理(ステップS106)では、判断の一部の分岐で初期処理(ステップS104)に戻ることがある。風処理(ステップS106)も、<風処理>の項目で詳説する。
風処理(ステップS106)が終了したら、外気温度Toおよび内気温度Tiに基づいてプル側送風機20a、プッシュ側送風機20bおよび換気扇22の制御を行う。以下の処理において、最大運転処理(ステップS110)、内気制御処理(ステップS114)、昼夜付内気制御処理(ステップS118)、冬モード処理(ステップS120)の各処理は、それぞれの項目で後程詳説する。
まず、ステップS108では、内気温度Tiが明らかに牛のストレス温度TMAX以上に上昇した場合(ステップS108のY分岐)に最大運転処理(ステップS110)を行う。
次に、ステップS112では、外気温度Toが所定の温度(Tot2)以上の場合(ステップS112のY分岐)には、内気制御処理(ステップS114)を行う。つまり、明らかなストレス温度TMAXではないが、所定温度以上より高い場合に内気制御処理(ステップS114)を行う。内気制御処理(ステップS114)とは、内気温度Tiに基づいて、プル側送風機20a、プッシュ側送風機20bおよび換気扇22の駆動を制御する処理である。
ステップS116では、外気温度Toが所定の温度(Tot1)以上の場合(ステップS116のY分岐)は、昼夜付内気制御処理(ステップS118)を行う。昼夜付内気制御処理(ステップS118)とは、内気制御処理(ステップS114)と同じ処理を行うが、外気温度Toと内気温度Tiが所定の関係になった場合は、夜間はシャッター21を閉じたままにする手順が付加されている。後述するが、牛にショックを与えないようにするためである。
外気温度Toが所定の温度(Tot1)未満である場合(ステップS116のN分岐)は、冬モード処理(ステップS120)を行う。したがって、明らかに所定温度Tot2は所定温度Tot1より高い温度である。
また、昼夜付内気制御処理(ステップS118)は、外気温度Toが所定温度Tot1より高く、所定温度Tot2より低い温度帯で行われる処理である。つまり、冬モード処理(ステップS120)ほど寒くなく、内気制御処理(ステップS114)を継続して行うほど安定して高い外気温度でもない場合の処理である。
制御器50はこれらの処理を終了判定(ステップS102のY分岐)になるまで繰り返し実行する。
<初期処理>
次にメインフローにおけるステップS104の処理を詳説する。初期処理(ステップS104)は、牛舎内の付帯設備である舎内作業装置70や餌が凍結するおそれがある場合に、全ての換気を停止して、牛舎内の温度保持に努める。寒冷地では、舎内作業装置70や餌自体が凍結してしまうと、牛舎自体の動きが停止してしまう。
図12を参照して、初期処理(ステップS104)に処理が移ったら、舎内作業装置70の温度(RR)が所定温度T5以下であるか否かを調べる(ステップS162)。所定温度T5以下であれば(ステップS162のY分岐)、警告を発し(ステップS166)、換気を停止する(ステップS168)。そうでなければ(ステップS162のN分岐)、メインフローに戻る(ステップS170)。
なお、舎内作業装置70の温度(RR)とは、舎内作業装置70に含まれるとした全ての機械の温度を意味する。それらの機械の温度のうち少なくとも1つの機械の温度がT5以下であれば、ステップS162では、Y分岐が選択される。
ここで、警告は制御器50に接続されている表示画面52dや警告灯54で行うほか、警告音や決まった通知先に通知するといった方法が行える。また、換気を停止する(ステップS168)とは、プル側送風機20a、プッシュ側送風機20bおよび換気扇22を停止し、さらにシャッター21を閉じる。また、それ以外の部分(例えば、プッシュ側側壁14bの貫通孔14bh等を塞ぐカーテン)で、制御器50が開閉制御できるものがあれば、それも閉じる。
以上のように、初期処理(ステップS104)では、ストッカー76、自動給餌装置、自動搾乳機80といった機械の温度RRの全てが所定温度T5を超えなければ、メインのフローには戻らない。しかし、牛舎内で牛が飼育されていれば、牛舎内は牛の体温ですぐに温度があがり、舎内作業装置70の温度(RR)の温度も上昇する。
なお、ここで所定温度T5は5℃程度の温度に設定するのが好適である。水分を多く扱う自動搾乳機80も5℃であれば凍結することはないからである。
<風処理>
次に図11のメインフローにおけるステップS106の風処理のフローを、図13を参照して詳説する。風処理(ステップS106)とは、外気風力Woが強すぎる場合の処理である。外気風力Woが強すぎると、シャッター21が風圧で突然閉じてしまい、牛舎内に衝撃音が響く。このような衝撃音は牛のストレスを著しく高める。また、急激なシャッター21の遮蔽動作はシャッター21の破損にもつながる。したがって、外気風力Woが強い場合は、シャッター21を閉じる。
図13を参照して、処理が風処理(ステップS106)に移ったら、外気風力Woを測定する(ステップS180)。外気風力Woが所定値W10より小さければ(ステップS180のN分岐)、メインフローに戻る(ステップS196)。外気風力Woが所定値W10以上である場合(ステップS180のY分岐)はシャッター21を閉じる(ステップS182)。なお、所定値W10は、シャッター21の強度に依存する。例えば、W10を10m/sに設定することが妥当なシャッター21は市販されている。
次に外気温度Toを調べる(ステップS184)。外気温度Toが所定温度Tot3以上である場合(ステップS184のY分岐)は、換気扇22を最大能力運転する(ステップS186)。ここで最大能力運転とは、最大の送風量を作り出せる運転をいう。例えば、換気扇22をインバータ制御する場合は、最大周波数で運転することをいう。一方、最小能力運転とは、最小の送風量を作り出す運転をいう。
所定温度Tot3より外気温度Toが低い場合(ステップS184のN分岐)は、換気扇22は最小能力運転を行う。若しくは間欠運転を行ってもよい(ステップS188)。ステップS186とステップS188は、外気風力Woが強すぎて、シャッター21を開くことができない場合には、端壁12に設けた換気扇22による換気を行う処理である。
その際に、所定温度Tot3より外気温度Toが高い場合は、牛舎内の温度も高くなるので、換気扇22を最大出力で運転する意味である。一方所定温度Tot3よりも低い場合は、換気扇22は最小能力運転でよい。なお、ステップS188の最小能力運転は、最大能力運転より低い能力の運転を含んでよい。また、所定温度Tot3は、所定温度Tot1と所定温度Tot2との間の温度にするのが好適である。
ステップS186若しくはステップS188が実行されたら、舎内作業装置70の温度RRが所定温度T5以上になっているかを調べる(ステップS190)。舎内作業装置70の温度RRが所定温度T5以下の場合(ステップS190のY分岐)は、初期処理(ステップS104)に処理を移す(ステップS192)。
寒冷地では、外気風力Woが強い場合で外気温度Toが急激に低下する場合が起こり得る。その場合は、舎内作業装置70の温度を指標として風の収まりを待つか、初期処理(ステップS104)に戻って、換気扇22まで閉じてしまう(ステップS168の「換気停止処理」:図12参照)かを、選択するようにしたものである。
舎内作業装置70の温度RRが所定温度T5より高ければ(ステップS190のN分岐)、処理をステップS180に戻して外気風力Woを再度測定する。
このように、風処理(ステップS106)では、外気風力Woが所定値W10より弱くなるまで待機している。なお、ステップS180の判断に時定数を設け、所定値W10の風が一定時間以上凪いでいたらメインフローに戻るようにしてもよい。
<最大運転>
次に図11のメインフローにおいて、最大運転(ステップS110)について説明する。風処理(ステップS106)を抜けると、処理は、内気温度Tiが明らかに牛がストレスを感じる温度(ストレス温度TMAX)より高いか否かを判定する(ステップS108)。なお、このストレス温度TMAXは、湿度との関係で求められてもよい。例えば、THI指数によって求めてもよい。
図14を参照して、内気温度Tiがストレス温度TMAXより高い場合(ステップS108のY分岐:図11参照)は、シャッター21を開けて(ステップS200)、プル側送風機20aおよびプッシュ側送風機20bを最大能力運転する(ステップS202:「FANMAX」と記載した。)。ステップS108のY分岐は、牛にとって非常にストレスがかかる状態なので、早急に牛舎内を涼しくする必要があるからである。その後メインフローに戻る(ステップS204)。図11のメインフローでは、最大運転(ステップS110)が実行されたら、終了処理(ステップS102)に戻る。
<内気制御>
次に図11のメインフローにおいて、内気制御(ステップS114)について説明する。ステップS108のN分岐によって、牛舎内の内気温度Tiは、明らかに牛がストレスを感じる温度(ストレス温度TMAX)よりは低い状態になっている。そこで、外気温度Toが所定温度Tot2より高いか否かを判定する(ステップS112)。内気制御(ステップS114)は、この判断でのY分岐に行われる処理である。したがって、内気制御(ステップS114)は、内気温度Tiがストレス温度TMAXより低く、外気温度Toが所定温度Tot2より高い場合に選択される処理である。
図15を参照する。内気制御(ステップS114)に処理が移ったら、内気温度Tiが所定温度Tit2以上であるか否かを調べる(ステップS220)。さらに内気温度Tiが所定温度Tit2より低い場合(ステップS220のN分岐)は、内気温度Tiが所定温度Tit1以上であるか否かの判定を行う(ステップS222)。そして、共にY分岐であった場合(ステップS220およびステップS222のY分岐)は、シャッター21を開いて(ステップS224)、温度制御を行う(ステップS226)。なお、ここで所定温度Tit2は所定温度Tit1より高い温度であるとする。
内気制御(ステップS114)は、内気温度Tiがストレス温度TMAXより低い場合であったから、ステップS220とステップS222が共にY分岐であるということは、内気温度Tiが所定温度Tit1より高く、ストレス温度TMAXより低いことを意味する。このような範囲にある場合は、内気温度Tiに応じた換気制御を行う。温度制御(ステップS226)の詳細は、図17で詳説する。
ステップS222のN分岐は、内気温度Tiが所定温度Tit1より低い場合を意味する。このような場合は、牛舎の側壁14に設けた送風機20を用いた換気を行わず、シャッター21を閉じて(ステップS228)、換気扇22に最小能力運転させる(ステップS230)。なお、この場合も最小能力運転は、最大能力運転でない状態を含んでよい。処理を実行したらメインフローに戻る(ステップS232)。
次に図11のメインフローにおいて、昼夜付内気制御(ステップS118)について、図16を参照しながら説明する。昼夜付内気制御(ステップS118)は、外気温度Toが所定温度Tot1以上所定温度Tot2未満である場合に選択される処理である。
図16を参照し、処理が昼夜付内気制御(ステップS118)に移ったら、内気温度Tiが所定温度Tit2以上か否かを調べ(ステップS240)、所定温度Tit2未満である場合(ステップS240のN分岐)は、さらに内気温度Tiが所定温度Tit1以上か否かを調べる(ステップS242)。どちらの判断でもY分岐の場合(ステップS240およびステップS242のY分岐)は、シャッター21を開き(ステップS244)、温度制御処理(ステップS226)を行う。そしてメインルーチンに戻る(ステップS258)。
内気温度Tiが所定温度Tit1未満である場合(ステップS242のN分岐)は、夜間であるか否かを調べる(ステップS248)。これは、制御器50が有するタイマ56で時刻を調べることで判断することができる。例えば、夕方18時から翌朝8時までは夜間とするなどである。
夜間でない場合(ステップS248のN分岐)では、シャッター21を閉じて(ステッ
プS250)、換気扇22に最小能力運転をさせる(ステップS252)。そして、メイ
ンルーチンに戻る(ステップS258)。
一方、夜間である場合(ステップS248のY分岐)は、シャッター21を閉じて(ステップS254)、換気扇22に最小能力運転をさせ(ステップS256)、夜が明けるまで待つ(ステップS248に戻る)。この夜間の処理の意味は、フローを説明した後に図19を用いて説明する。
次に図17を参照して、温度制御(ステップS226)を詳説する。温度制御(ステップS226)は、内気制御(ステップS114)および昼夜付内気制御(ステップS118)で使われる処理である。温度制御(ステップS226)は、内気温度Tiに基づいてプル側送風機20aおよびプッシュ側送風機20bを制御する処理である。どのように制御するかは、予めプログラムされる必要がある。ここでは比例制御とTHI制御の2つの制御が用意されているとする。また、どの制御を行うかは予め決定されているとする。
具体的には、入出力装置52の入力手段52kから入力される。すなわち、制御器50は外部からの指示としてどの比例制御を行うか支持される。ただし、季節や外気温度Toに基づいて自動的に選択されるように制御することを排除しない。
温度制御(ステップS226)に処理が移ったら、比例制御を行うか否かを判断する(ステップS260)。比例制御である場合(ステップS260のY分岐)は、シャッター21を開き(ステップS264)、送風機20に内気温度Tiに比例した電力を送る(ステップS266)。
ステップS266をさらに説明する。PFは、プル側送風機20aおよびプッシュ側送風機20bに送る電力である。インバータ制御の場合は周波数といってもよい。G1(Ti)は内気温度Tiに比例することを表すものでG1は関数を意味する。関数G1は内気温度Tiに比例するものであれば特に限定はない。例えば、送電できる最大電力をPMAXとすると、(1)式のようにしてもよい。
なお、ここでaは比例定数であり、所定温度Tit2はストレス温度TMAXを用いてもよい。
ステップS260でN分岐の場合は、THI制御となる(ステップS262)。図17では、ステップS262では判断を行うこととなっているが、比例制御やTHI制御以外の制御を加える場合はステップS262のN分岐に続けて挿入することができる。図17では、「選択要求」(ステップS272)としてステップS262でN分岐になった場合は、制御の方式を選択するような処理が挿入されることを表した。
THI制御を行う場合(ステップS262のY分岐)は、シャッター21を開き(ステップS268)、THI制御を行う(ステップS270)。THIは不快指数(温湿度指数)(Temperature Humidity Index)と呼ばれるもので、(2)式で定義される(非特許文献1)。
ここで、Tは内気温度TiでありHは内気湿度である。つまり、THI制御を行う場合は、牛舎には内気湿度計(図示していない。)を配置しておく必要がある。(2)式で算出されるTHIは不快になるほど大きくなる指数であるので、THIに比例した電力をプル側送風機20aおよびプッシュ側送風機20bに送電すればよい。図17のステップS270では、以下のように表した。
ここで、G2は指数THIを含む関数である。この関数の形は特に限定されるものではないが、THIが大きくなるほどPFが大きくなるような関数G2が設定される。なお、ステップS266およびステップS270におけるPFは、送風機20それぞれに好適な電力を送電することであって、必ず全ての送風機20に同じ電力を送電するという意味ではない。以上の処理が実行されると、図15若しくは図16の内気制御に戻る(ステップS274)。
図17を再度参照して、所定温度Tit2および所定温度Tit1は例えば、10℃と5℃で設定される。もちろん、適宜変更することができる。
<冬モード>
再度図11を参照する。ステップS116でN分岐に進むと冬モードの処理(ステップS120)を行う。ステップS116は外気温度Toが所定温度Tot1より低い場合の処理である。例えば、所定温度Tot1は5℃以下であれば冬モード処理(ステップS120)に移ることができる。もちろん、Tot1の値の設定はこれに限定されるものではない。
図18を参照する。冬モード(ステップS120)に処理が移ると、まずシャッター21が閉じられる(ステップS280)。冷気が牛舎内に入らないようにするためである。この処理は、従前のステップS116(図11のメインフロー参照)において、外気温度Toが所定温度Tot1より低い場合に行われる処理であるので、外気温度Toに基づいてシャッター21が閉じられたと言ってよい。
次に夜か否かを判断する(ステップS282)。これは制御器50が有するタイマ56によって、夕方18時から翌朝8時までを夜と判断するなどとすればよい。
夜である場合(ステップS282のY分岐)は、内気温度Tiが所定温度Tit2以上であるか否かを判断する(ステップS284)。内気温度Tiが所定温度Tit2以上である場合(ステップS284のY分岐)は、換気扇22に最小能力運転をさせる(ステップS286)。その後メインフローに戻る(ステップS300)。
内気温度Tiが所定温度Tit2より低い場合(ステップS284のN分岐)は、さらに所定温度Tit1以上であるか否かを判断する(ステップS288)。所定温度Tit1以上であった場合(ステップS288のY分岐)は、換気扇22に最小能力運転状態で間欠運転を行わせる(ステップS290)。ここで運転時間をTW1とし、休止時間をTL1とする。すなわち、内気温度Tiは所定温度Tit1以上であるものの、牛舎内は冷えており、外気温度Toも低いので牛舎内の温度低下を抑えながら換気を行うために、間欠運転を行う。
なお、内気温度Tiが所定温度Tit1より低い場合(ステップS288のN分岐)は、換気をせずにメインフローに戻る(ステップS300)。すなわち、シャッター21を閉じただけの処理になる。
ステップS282で昼だと判断された場合(ステップS282のN分岐)は、内気温度Tiが所定温度Tit2より高いか否かを判断する(ステップS292)。高い場合(ステップS292のY分岐)は、換気扇22に最小能力運転を行わせる(ステップS294)。内気温度Tiが所定温度Tit2より低い場合(ステップS292のN分岐)は、さらに所定温度Tit1以上であるか否かを判断する(ステップS296)。内気温度Tiが所定温度Tit1以上の場合(ステップS296のY分岐)は、換気扇22を最小能力運転状態で間欠運転させる(ステップS298)。運転時間をTW2とし、休止時間をTL2とする。
ステップS290で示した夜の場合と同じ表示になるが、夜の場合の運転時間TW1より昼間の運転時間TW2の方が長く設定するのが望ましい。夜間の冷気の方が冷たい場合が多いからである。また休止時間については夜の休止時間TL1を昼の休止時間TL2より長くするのが望ましい。夜間の冷気の侵入する時間を少なくするためである。
昼の場合も内気温度Tiが所定温度Tit1より低ければ(ステップS296のN分岐)、何もせずにそのままメインフローに戻る(ステップS300)。
制御器50は、上記のフローに従って、牛舎のシャッター21、送風機20、換気扇22等を運転する。図19に実際の運転例を示す。図19(a)は、外気温度Toが急激に低下するような場合を示す。なお、外気温度Toの所定温度Tot1、Tot2と内気温度Tiの所定温度Tit1、Tit2は、Tot1≦Tit1<Tit2≦Tot2の関係であるとする。
図19(a)では、横軸が時刻であり、縦軸が温度である。外気温度Toは急激に低下する場合がある。一方、内気温度Tiは、外気温度Toに引きずられ、低下するが、外気温度Toほど急激には低下しない。この様な場合、外気温度Toが所定温度Tot1を下回る時刻(Time−Co)は、内気温度Tiが所定温度Tit1を下回る時刻(Time−Ci)より早い。
これは、図11のステップS116のN分岐で、冬モード処理(ステップS120)に処理が移行した場合のステップS280(図18参照)による処理である。すなわち、外気温度Toに基づいてシャッター21が閉じられたと言える。
図19(b)は、外気温度Toと内気温度Tiがほぼ同じように低下する場合である。外気温度Toと内気温度Tiの差が少なく、ゆっくりと温度が下がる場合にこのようなケースが生じる。なお、横軸は時刻であり、縦軸は温度である。この様な場合、内気温度Tiが所定温度Tit1を下回る時刻(Time−Ci)は、外気温度Toが所定温度Tot1を下回る時刻(Time−Co)より早い。
これは、図11のステップS116でY分岐が選択され、昼夜付内気制御(ステップS118)のステップS242で内気温度Tiが所定温度Tit1より低くなった場合の処理でシャッター21が閉じられた(ステップS250若しくはステップS254)。したがって、この場合は、内気温度Tiに基づいてシャッター21が閉じられたと言える。
以上のように、本実施の形態で説明した牛舎では、外気温度Toおよび内気温度Tiのどちらかに基づいてシャッター21を閉じることができる。なお、牛舎では、外気温度Toおよび内気温度Tiを共に判断するようにしたので、外気温度Toと内気温度Tiの変化の仕方に応じた細かい制御ができるようにした。しかし、本発明に係る牛舎(畜舎)は、外気温度Toだけ、若しくは内気温度Tiだけでシャッター21の開閉を制御することを排除しない。
次に図19(c)を参照する。図16で示した昼夜付内気制御(ステップS118)のステップS248の動作について説明する。ステップS248で夜間か否かを判断しているが、これは、外気温度Toが所定温度Tot1以上であり(図11のステップS116のY分岐)、さらに、内気温度Tiが所定温度Tit1より低い場合(図19(c)の温度帯M)を示す。
夜になる前に内気温度Tiがこの温度帯Mにあると、夜間になってから、シャッター21の開閉が発生する可能性が高い。夜間は牛も寝ており、シャッター21が突然開閉すると、牛に対して大きなストレスをかけることになる。特に、長い側壁14に沿って、密に設置された送風機20のシャッター21が一斉に開閉するので、寝ている牛はパニックになりやすい。
パニックになった牛は、暴走し、牛舎内の壁や柱に追突して、怪我を負ったり、死亡する場合も起こり得る。そこで、このような温度帯Mになった場合は、夜が明けるまではシャッター21を閉じたままにしておくのが、昼夜付内気制御(ステップS118)の夜間の判断(ステップS248)の意味である。
つまり、外気温度Toが所定温度Tot1以上であり、内気温度Tiが所定温度Tit1より低い場合に本発明の牛舎は夜間の間シャッター21を閉じたままにする。なお、内気温度Tit1は外気温度Tot1より高い値である。
以上のフローによって、本発明の畜舎は運転される。このように畜舎が運転されるので、畜舎内の内気温度Tiは所定温度Tit1より下がることはほとんど回避される。したがって、舎内作業装置70やストッカー76中の餌が凍結することはない。
特に寒冷地に広い畜舎を建設する場合には、畜舎内を暖房するのは容易ではない。その点本発明に係る畜舎では、特に暖房設備を配置しなくても、畜舎内の温度が所定温度Tit1より低くはなりにくいので、好適に運営することができる。