JP6561455B2 - データの分析方法およびデータの表示方法 - Google Patents
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Description
複数の特性値(目的関数)を対象とする多目的最適化では、特性値の間にトレードオフ関係が存在することが少なくない。その場合、最適解はパレート解と呼ばれる解集合を形成する。そのパレート解と設計変数との因果関係を分析することで特定の特性値バランスを実現するための設計変数の方向性を知ることができ、その情報を設計に役立てることができる。パレート解のデータから、特性値と設計変数の因果関係を分析する従来の方法として、自己組織化マップが提案されている(非特許文献1参照)。
ここで、多目的最適化問題において複数の特性値を向上させる設計値を探索することが重要である。同時に設計変数空間において、複数の特性値を向上させる設計変数が何かを判別することも重要である。しかしながら、通常の製品設計では設計変数、特性値の数はきわめて多く、どの設計変数の寄与が大きいか判別しづらい。また経験の浅い解析者では結果を図示しても因果関係が理解できないことがあるという問題点がある。
また、特性値と設計変数の因果関係を可視化した自己組織化マップでは、解析者が理解し易いようにデータをまとめてはいるが、経験の浅い解析者では、どの因子が特性値に影響を与えているか理解しにくいという問題点がある。
さらに、前記自己組織化マップ上で前記閾値に対応する前記領域を用いて回帰分析をする工程とを有することが好ましい。
例えば、前記入力値を表わす前記入力データは、構造体および構造体を構成する材料の設計変数を表すものであり、前記出力値を表わす前記出力データは、構造体および構造体を構成する材料の特性値を表すものである。例えば、前記出力データは、パレート解を含む。
さらに、前記自己組織化マップ上で前記閾値に対応する前記領域を用いて回帰分析をする工程と、前記回帰分析の結果を前記自己組織化マップ上に表示する工程とを有することが好ましい。
例えば、前記入力値を表わす前記入力データは、構造体および構造体を構成する材料の設計変数を表すものであり、前記出力値を表わす前記出力データは、構造体および構造体を構成する材料の特性値を表すものである。例えば、前記出力データは、パレート解を含む。
また、本発明のデータの表示方法によれば、入力値が複数あり、出力値が複数ある場合において、入力値と出力値との因果関係を、例えば、経験の浅い解析者であっても視覚的に容易に理解することができる。
図1(a)は、2つの特性値の関係を示すグラフであり、(b)は、2つの設計変数の関係を示すグラフである。
図1(b)に示すように、望ましい設計値H1は、設計変数x1および設計変数x2が大きい値である。望ましい設計値H2は、設計変数x1が小さい値であり、設計変数x2が大きい値である。このように、特性値f1、f2が良好な特性となる設計値H1、設計値H2は設計変数x1、x2の値が異なる。しかし、設計変数x2の値が大きいと特性値f1、f2は良好な特性となる。設計変数x2の値が特性値f1、f2の良好な特性を得るに重要な設計変数である。例えば、特性値f1、f2は、タイヤの横ばね定数、タイヤの転がり抵抗であり、設計変数x1、x2は、タイヤの形状のパラメータである。
本実施形態のデータの分析方法およびデータの表示方法には、図2に示すデータ処理装置10が用いられるが、データの分析方法およびデータの表示方法をコンピュータ等のハードウェアおよびソフトウェアを用いて実行することができればデータ処理装置10に限定されるものではない。
入力値を表わす入力データXi(i=1,l)と、出力値を表わす出力データYj(j=1,m)の2種類のデータを組としたデータセットを対象としており、出力値空間において分析し、その結果を表示する。なお、lは入力データの数、mは出力データの数を表わす。入力値および特性値は、それぞれ複数ある。入力値と出力値とは所定の関係を有する。この所定の関係とは、因果関係であり、例えば、入力値と出力値とが関数により表わされることをいう。
データセットでは、例えば、l=6、m=2のとき、入力データX1〜X6と出力データY1〜Y4の合計10のデータを1組として扱い、この10のデータの組(入力データX1〜X6、出力データY1〜Y4)が複数組存在する。データセットにおいて、上記組の数をデータ数という。例えば、データ数が100であれば、10のデータで構成される組が100存在する。なお、入力データと出力データの数は、複数であればよく、特に10に限定されるものではない。
なお、データセットにおいては、入力値を表わす入力データ(設計変数)と出力値を表わす出力データ(特性値)のデータは、特に限定されるものではなく、シミュレーションまたは最適化のようなコンピュータ演算されたものでもよいし、各種試験の計測データでもよく、また、パレート解を含んでもよい。
処理部12は、制御部26により制御される。また、処理部12において解析部20はメモリ24に接続されており、解析部20のデータがメモリ24に記憶される。また、メモリ24には、外部から入力される上述のデータセットが記憶される。
また、解析部20は、入力データおよび出力データの2種類のデータを用いて、自己組織化マップを作成する。第1の指標および第2の指標のうち、少なくとも一方に対して閾値を設定し、自己組織化マップ上での閾値に対応する領域を求め、その自己組織化マップ上での位置情報を得る。さらには、解析部20は、閾値に対応する領域に印をつけるように画像データを作成する。
解析部20は、自己組織化マップ上で閾値に対応する領域を用いて回帰分析をする。自己組織化マップ上で閾値に対応する領域を用いてクラスタリング処理をする。このクラスタリング処理により、領域がクラスタに分けられるかを判定する。判定の結果、クラスタに分けられる場合、領域の数が多いクラスタについて回帰分析を用いて線を作成する。
表示制御部22は、解析部20で解析して得られた結果、例えば、自己組織化マップ等を表示部16に表示させるものである。それ以外にも、パレート解をメモリ24から読み出し、表示部16に表示させる。この場合、例えば、特性値を軸にとって、パレート解を散布図の形態で表示することもできる。すなわち、特性値空間に設計変数を表示する。散布図以外にも、レーダチャートの形態で表示することができる。
また、表示制御部22は、例えば、得られたパレート解について、設計変数の値に応じて、設計変数の値を表すシンボルの色、種類および大きさのうち、少なくとも1つを変える。表示形態を変更したパレート解の情報はメモリ24に記憶される。得られたパレート解は、表示制御部22で表示形態が変えられて表示部16で表示される。さらには、表示制御部22では、設計変数の値毎に、そのパレート解を結んだ線を表示させる機能も有する。自己組織化マップについても、特性値の値毎に、設計変数の値毎に表示させる機能も有する。
図3(a)は、第1の指標を説明するためのグラフであり、(b)は、第2の指標を説明するためのグラフである。
図3(a)に特性値f1、f2のパレート解を示す。符号Eはパレートフロントを示す。特性値は、要求される仕様等に応じて好ましい方向があり、値が大きくなる、値が小さくなる、または所定の値に近づく等がある。第1の指標Aは、複数の特性値(目的関数)の値のうち、少なくとも2つの特性値(目的関数)の値の、予め設定された値に対する距離で表される。すなわち、特性値f1、f2の値に値して、予め設定された値に対する距離で表される。
例えば、第1の指標Aは、パレートフロントEからのパレート解E1迄の距離である。なお、第1の指標Aは、パレートフロントEからの距離に限定されるものではない。例えば、少なくとも2つの目的関数の値、この場合、特性値f1、f2について、予め値を設定しておき、この設定された値に対する距離を、第1の指標Aとすることもできる。
また、パレートフロントEに沿って距離を算出し、これを第2の指標Bとしてもよい。以下、図3(c)、(d)を用いて、パレートフロントEに沿って距離を算出して得る第2の指標Bについて説明する。なお、図3(c)、(d)において、図3(a)、(b)と同一のものに同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
まず、点P1を通るパレートフロントEとの垂線Lvを求める。次に、垂線LvとパレートフロントEとの交点E3を求める。
ここで、2つの極限パレート解Ea、Ebがあるが、極限パレート解が複数ある場合、基準とする極限パレート解を1つ定める。図3(c)に示す例では、Ebを基準として定めた極限パレート解とする。基準として定めた極限パレート解Ebと交点E3との距離RBを求める。この距離RBを第2の指標Bとする。
この場合、まず、パレートフロントEを直線近似して、近似直線L1を求める。次に、近似直線L1と直交する垂線L2を求める。垂線L2を中心軸として符号を変える。具体的には、近似直線L1と垂線L2の交点Phを求める。交点Phを基準点、すなわち、ゼロとして、交点Phの極限パレート解Ea側をマイナス、交点Phの極限パレート解Eb側をプラスとする。
例えば、点P2について第2の指標Bを求める場合、点P2を通り、かつ近似直線L1と直交する垂線Lvを求める。そして、垂線Lvと近似直線L1との交点E4を求める。次に、交点Phと交点E4との距離R4を求める。交点E4は、交点Phの極限パレート解Eb側であるため、プラスの符号がつく。この距離R4が、第2の指標Bである。
なお、垂線L2の位置は、近似直線L1上であれば、特に限定されるものではない。また、第2の指標Bを求める点は、垂線L2上にあってもよい。
例えば、図4(a)〜(h)に示す自己組織化マップは、特性値F1〜F4、設計変数x1〜x6のデータセットのうち、特性値F1、F2について自己組織化マップを作成したものである。図4(a)は、特性値F1の自己組織化マップであり、図4(b)は、特性値F2の自己組織化マップである。図4(c)は、設計変数x1の自己組織化マップであり、図4(d)は、設計変数x2の自己組織化マップであり、図4(e)は、設計変数x3の自己組織化マップであり、図4(f)は、設計変数x4の自己組織化マップであり、図4(g)は、設計変数x5の自己組織化マップであり、図4(h)は、設計変数x6の自己組織化マップである。なお、特性値F1、F2は、例えば、横ばね定数、ころがり抵抗であり、設計変数x1〜x6は、例えば、タイヤの形状に関するパラメータである。
本実施形態では、第1の指標Aまたは第2の指標Bを用いて、自己組織化マップ上に印をつけることで、経験の浅い解析者であっても、設計変数のうち、どの設計変数が重要な因子であるかを理解しやすくしている。また、第1の指標Aまたは第2の指標Bを用いて、設計変数のうち、重要な因子をメモリ24に記憶し、重要な因子の情報を外部に出力するようにしてもよい。これにより、重要な設計変数の情報を得ることができる。次に、本実施形態のデータ分析方法および表示方法について説明する。
例えば、上述のデータセットを用意し、予め用意しておいたデータセットを、入力部14を介して解析部20に直接入力するか、入力部14を介してメモリ24記憶させる。
次に、解析部20において、データセットから、第1の指標Aまたは第2の指標Bを計算する(ステップS10)。
次に、解析部20で、データセットを用いて自己組織化マップを作成する(ステップS12)。これにより、例えば、上述のように図4(a)〜(h)に示す自己組織化マップが得られる。
次に、解析部20で、第1の指標Aおよび第2の指標Bのうち、少なくとも一方を用いて、閾値を設定する(ステップS14)。閾値は、第1の指標Aの場合、第1の指標Aの最大値の1/5〜1/7とすることが好ましい。第2の指標Bの場合、閾値は、中間値とすることが好ましい。
次に、表示制御部22により、自己組織化マップと共に、閾値に対応する領域を表示部16に表示させる(ステップS16)。なお、自己組織化マップ上に付ける印は、特に限定されるものではなく、例えば、自己組織化マップのセルの色を変えたもの、セルの大きさを変えたもの、セルの形状を変えたもの等が挙げられる。
図6(a)は、自己組織化マップへの描画方法の一例を示す模式図であり、(b)は、自己組織化マップへの描画方法の他の例を示す模式図である。
図6(a)は自己組織化マップの一部を示しており、自己組織化マップを構成するセル50が複数並んでいる。セル50内に記載されている数値は、セル50の値を示している。
閾値を9.5としたとき、解析部20で、横方向Vに走査し、セル50の数値を調べていき、セル50の数値が10から9に変わっていた場合、この数値が変わる前のセル52を閾値に対応する領域とする。そして、セル52の位置情報を、例えば、メモリ24に記憶する。このようにして、図6(a)に示す例では、3つのセル52が閾値に対応する領域として得られる。
図6(a)、(b)のいずれも横方向Vに走査したが、これに限定されるものではなく、例えば、横方向Vと直交する方向であってもよく、走査方向は、特に限定されるものではない。
図7(a)は、特性値F1の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものであり、(b)は、特性値F2の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものである。図7(c)は第1の指標の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものであり、図7(d)は第2の指標の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものである。
図8(a)は、設計変数x1の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものであり、図8(b)は、設計変数x2の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものであり、図8(c)は、設計変数x3の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものであり、図8(d)は、設計変数x4の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものであり、図8(e)は、設計変数x5の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものであり、図8(f)は、設計変数x6の自己組織化マップに第1の指標が描画されたものである。
また、図8(f)の設計変数x6の自己組織化マップでは、設計変数x6の値を変えることで、特性値F1と特性値F2を同時に変えることができる。このことから、設計変数x6は、特性値F1、F2を両立させるに重要なパラメータであることが理解できる。
一方、図8(a)の設計変数x1では、第1の指標に対して値が略変わらない。設計変数x1は、値を変えても特性値F1、F2は変わらず影響が小さく、特性値F1、F2に対して重要なパラメータではないことがわかる。
このように、第1の指標を設計変数x1〜x6の自己組織化マップ上に表示することにより、特性値と設計変数との因果関係を容易に理解でき、設計変数のうち、重要な因子を、経験の浅い解析者であっても容易に理解することができる。
また、本実施形態においては、自己組織化マップ上に表示させているが、これに限定されるものではなく、解析部20で分析されて得られた結果、例えば、閾値に対応する領域の位置情報を外部に出力するような構成でもよい。これにより、例えば、データ処理装置10以外の装置を用いて、第1の指標または第2の指標が表示された自己組織化マップを見ることができる。
閾値に対応する領域を点ではなく、線60で表示することにより、特性値と設計変数の因果関係を、さらに容易に理解しやすくなる。
ここで、図10(a)、(b)は、第2の指標が描画された特性値の自己組織化マップであり、(c)〜(e)は、第2の指標が描画された設計変数の自己組織化マップであり、(f)、(g)は、第2の指標が矢線状に描画された特性値の自己組織化マップであり、(h)〜(j)は、第2の指標が矢線状に描画された設計変数の自己組織化マップである。
線62への矢印は、線62の両端のうち、第1の指標Aが小さくなる方の端に付ける。第1の指標Aが小さくなると、パレート解との距離が縮まるため、線62の矢印は、特性値F1、F2が両立する方向を示す。
第2の指標においても、閾値に対応する領域を点ではなく、線62で表示することにより、特性値と設計変数の因果関係を、さらに容易に理解しやすくなる。
さらに、上述のように、矢印のついた線62を表示することで、図10(j)に示すように、より一層容易に理解しやすくなる。
また、図10(c)、(h)に示すように設計変数x1の値は、印に沿って略変わらない。このことから、設計変数x1は特性値F1、F2の値を変えることに寄与しないパラメータであることが理解できる。
また、図10(d)、(i)に示すように設計変数x5の値も、印に沿って略変わらない。このことから、第1の指標Aと第2の指標Bとでは、設計変数x5の特性値F1、F2に対する寄与が異なることも理解できる。
ここで、図11(a)は、クラスタリング処理される前の自己組織化マップの一例を示す模式図であり、(b)は、クラスタリング処理された自己組織化マップの一例を示す模式図であり、(c)は、クラスタリング処理しない自己組織化マップの一例を示す模式図である。
図11(a)に示す自己組織化マップ70において、第1の指標の閾値に対応する領域が第1の領域72と第2の領域74が2つある場合、解析部20で、クラスタリング処理し、回帰分析を行うことにより、図11(b)に示す線76が得られる。一方、クラスタリング処理をしない場合には、図11(c)に示す線78が得られる。
クラスタリング処理には、例えば、単連結法、完全連結法、k−means法、またはその他のクラスタリング手法を用いることができる。
図11(a)に示す自己組織化マップ70では、第1の領域72と、第2の領域74とがあるが、クラスタリング処理によっては図11(b)に示すような結果となる。解析部20によるクラスタリング処理において、例えば、自己組織化マップ70の幅Kに対して、例えば、K/5を閾値として、距離がK/5以上離れている場合、別のクラスタとする。この場合、図11(a)に示す自己組織化マップ70では、図12(a)に示すように、第1の領域72と、第2の領域74とを別々のクラスタと判別される。領域が多い第1の領域72について回帰分析を行い線を作成する。これにより、例えば、図11(b)に示す線76を得ることができる。
一方、クラスタリング処理において、クラスタの判別の閾値が大きい場合、第1の領域72と、第2の領域74とが同じクラスタであると判定されて、図12(b)に示すクラスタリング処理結果となる。これにより、回帰分析した結果、例えば、図11(c)に示す線78が得られることになる。
このように、クラスタリング処理の際のクラスタの判別の閾値を適切に設定することで、解析部20において、適正なクラスタ分類ができ、自己組織化マップ上に、解析者等の理解を助けるための適正な線を描画することができる。
図13は、本発明の実施形態のデータの分析方法およびデータの表示方法に利用されるデータ処理装置の他の例を示す模式図である。
図13に示すデータ処理装置10aは、図1に示すデータ処理装置10に比して、データ処理部30を有し、上述のデータセットを作成する点が異なり、それ以外の構成は、図1に示すデータ処理装置10と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
図13に示すデータ処理装置10aでは、データ処理部30が解析部20に接続されている。また、データ処理部30にはメモリ24と制御部26が接続されており、データ処理部30は制御部26で制御される。
データ処理部30は、条件設定部32、モデル生成部34、演算部36、パレート解探索部38およびデータ作成部40を有する。
なお、データセットについては、データ処理部30で作成することなく、上述のように、入力部14を介して解析部20に直接入力されるようにしてもよい。また、データセットについては、入力部14を介してメモリ24記憶させるようにしてもよい。いずれの場合も、データ処理部30でデータセットを作成することなく処理がなされる。このため、データ処理部30でデータセットを作成する必要は必ずしもない。
条件設定部32は、パレート解を特性値空間(目的関数空間)で散布図または自己組織化マップとして表示する際に必要な各種の条件、情報が入力され、設定される。各種の条件、情報は、入力部14を介して入力される。条件設定部32で設定する各種の条件、情報はメモリ24に記憶される。
また、データセットのデータとして、例えば、構造体および構造体を構成する材料を規定するパラメータのうち特性値(目的関数)として定めた複数のパラメータが設定される。特性値には、コスト等の物理的および化学的な特性値以外の、構造体および構造体を構成する材料を評価する指標を用いてもよい。
構造体および構造体を構成する材料は、構造体単体ではなく、構造体を構成するパーツ、構造体のアッセンブリ形態等の構造体を含むシステム全体、またはその一部を対象としてもよい。
構造体がタイヤである場合、特性値はタイヤの特性値である。この場合、特性値としては、タイヤ性能として評価しようとする物理量であり、例えば、操縦安定性の指標となるスリップ角1度における横力であるCP(コーナーリングパワー)、操縦安定性の指標となるコーナーリング特性、乗心地性の指標となるタイヤの1次固有振動数、転動抵抗の指標となる転がり抵抗、操縦安定性の指標となる横ばね定数、耐摩耗性の指標となるタイヤトレッド部材の摩耗エネルギ等が挙げられる。目的関数は、それらを求めるための関数である。目的関数は、性能として好ましい方向があり、値が大きくなる、小さくなる、または所定の値に近づく等がある。
制約条件は、目的関数の値を所定の範囲に制約したり、設計変数の値を所定の範囲に制約するための条件である。
また、構造体がタイヤである場合、タイヤの負荷荷重、タイヤの転動速度を初めとする走行条件、タイヤが走行する路面条件、例えば、凹凸形状、摩擦係数等、車両の走行シミュレーションに用いるための車両諸元の情報等が設定される。
条件設定部32では、非線形応答関係により生成するモデル、そのモデルの境界条件、FEM等の数値シミュレーションする場合には、そのシミュレーション条件、シミュレーションにおける制約条件を設定する。さらには、パレート解を得るための最適化条件、例えば、パレート解探索のための条件等を設定する。
これ以外に、条件設定部32で、設計変数の定義域を設定する。また、条件設定部32では後述するようにパレート解を縮約する際に用いられる離散値を設定する。
演算部36では、例えば、路面上を転動するタイヤの転動を再現するシミュレーション条件を、モデル生成部34で生成したタイヤモデル、または路面モデル等に与えたときの、タイヤモデルの挙動、またはタイヤモデルに作用する力等の物理量を時系列に求める。演算部36は、例えば、公知の有限要素ソルバーによるサブルーチンを実行することで機能するものである。
また、演算部36では、モデル生成部34で理論式および近似式等を作成した場合には、理論式および近似式等を解き、特性値を算出する。
パレート解探索部38は、例えば、遺伝的アルゴリズムを用いてパレート解を探索する。遺伝的アルゴリズムとしては、例えば、解集合を目的関数に沿って複数の領域に分割し、この分割した解集合毎に多目的GAを行うDRMOGA(Divided Range Multi-Objective GA)、NCGA(Neighborhood Cultivation GA),DCMOGA(Distributed Cooperation model of MOGA and SOGA)、NSGA(Non-dominated Sorting GA)、NSGA2(Non-dominated Sorting GA-II)、SPEAII(Strength Pareto Evolutionary Algorithm-II)法等の公知の方法を用いることができる。その際、解集合が解空間に幅広く分布し、精度の高いパレート解の集合を求める必要がある。このため、パレート解探索部38では、例えば、ベクトル評価遺伝的アルゴリズム(Vector Evaluated Generic Algorithms:VEGA)、パレートランキング法、またはトーナメント法を用いた選択が行われる。遺伝的アルゴリズム以外に、例えば、焼きなまし法(SA)または粒子群最適化(PSO)を用いてもよい。
データ作成部40で作成されたデータセットは、メモリ24に記憶される。
図14は、本発明の実施形態のデータの分析方法の一例を工程順に示すフローチャートである。
まず、対象となる構造体について設計変数および特性値を設定する。本実施形態では、構造体を、例えば、タイヤとした。タイヤに対して、設計変数として、タイヤの形状パラメータを設定する。そして、特性値として、ころがり抵抗、横ばね定数の2つを設定する。本実施形態では、入力がタイヤの形状パラメータであり、出力がころがり抵抗と横ばね定数となる。タイヤの形状パラメータの値により、ころがり抵抗と横ばね定数がどのように変化するかを表示する。タイヤの形状パラメータ、ころがり抵抗と横ばね定数が条件設定部32に設定される。
このように、データ処理装置10aでは、パレート解を算出し、その後、データ作成部40でデータセットを作成する。作成したデータセットを用いて解析部20にて各種のデータ処理を行う。その後、必要に応じて表示制御部22を介して表示部16に、上述のように、自己組織化マップを表示することができる。データ処理装置10aは、パレート解を作成する点以外は、上述のデータ処理装置10と同様にして、自己組織化マップに第1の指標または第2の指標に基づく領域を表示することができるため、その詳細な説明は省略する。この場合でも、経験の浅い解析者であっても、視覚的に入力値と出力値の因果関係、および重要な設計変数(入力値)等を理解しやすくすることができる。また、理解しやすくする情報を得ることができる。
図15は、本発明の実施形態のデータの分析方法およびデータの表示方法に利用されるデータ処理装置の他の例を示す模式図である。
図15に示すデータ処理装置10bは、図1に示すデータ処理装置10に比して、移動平均処理部28を有し、上述のデータセットに移動平均処理をする点が異なり、それ以外の構成は、図1に示すデータ処理装置10と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
図15に示すデータ処理装置10bでは、移動平均処理部28が解析部20に接続されている。また、移動平均処理部28にはメモリ24と制御部26が接続されており、移動平均処理部28は制御部26で制御される。
次に、移動平均処理部17での移動平均処理方法について図16〜図19に基づいて説明する。図16は、本発明の実施形態のデータの分析方法の移動平均処理を工程順に示すフローチャートである。
平均区間は、移動平均処理を行う際に、後述するマスター点の平均値を求めるための設定領域である。この平均領域は、データセットの入力データのデータ種、例えば、入力パラメータ数と、出力データのデータ種、例えば、出力パラメータ数に応じて、適宜設定されるものであり、形状等は特に限定されるものではない。例えば、出力値空間が、例えば、出力データのうち、2つのデータ種で表わされる場合、すなわち、出力値空間が2次元である場合、平均区間は、例えば、四角形等の多角形、および円等の2次元形状である。
また、出力値空間が出力データのうち、3つのデータ種で表わされる場合、すなわち、出力値空間が3次元である場合、平均区間は、例えば、四角柱等の多角柱、および球等の3次元形状である。さらには、出力値空間が出力データのうち、4つのデータ種で表わされる場合、すなわち、出力値空間が4次元である場合、平均区間は、例えば、超立方体、および超球等である。
また、平均区間の大きさについても特に限定されるものではない。さらには、平均区間を設定する際に、出力値空間を正規化してもよい。すなわち、後述する特性値空間を正規化してもよい。
下記式(1)の関数w(r)において、r0は平均区間の大きさを表し、rはマスター点とスレーブ点との距離を表す。r0は平均区間が円であれば円の半径、超球であれば超球の半径である。なお、下記式(1)の関数w(r)では、図17に示すように、マスター点とスレーブ点との距離r=1.0が平均区間の大きさである。
さらに、出力値空間内のデータの粗密に応じて平均区間および重み関数のうち、少なくとも一方を変えてもよい。
具体的には、図18に示すように、平均区間Pが設定された、特性値G1、特性値G2の特性値空間Qにおいて、平均区間P内で、既に存在する入力データの中からマスター点Mを設定する。これにより、特性値空間Qではマスター点M以外はスレーブ点sとなる。マスター点Mのデータがマスターデータであり、スレーブ点sのデータがスレーブデータである。
マスター点Mの設定方法は、例えば、図19に示すように、特性値空間Qにグリッドgを設定し、グリッドgの交点nをマスター点Mとしてもよい。この場合、マスター点Mは必ずしも存在する入力データとは限らない。なお、グリッドgの大きさは特に限定されるものではなく、データ数等に応じて適宜設定される。
ステップS36において、算出した距離が平均区間P内にある場合、すなわち、r≦r0である場合、重み関数を用いて重みの値(wv)を計算し、この重みの値(wv)を、例えば、メモリ24に記憶する。また、入力値の各入力データの値、例えば、設計変数の値(x)に重みの値を乗じて、入力データの値と重みの値の積の値(wvx)を算出する。そして、算出された入力データの値と重みの値の積の値(wvx)を、例えば、メモリ24に記憶する(ステップS38)。この場合、入力データ毎に、入力データの値と重みの値の積の値(wvx)が算出される。すなわち、設計変数毎に、設計変数の値(x)と重みの値の積の値(wvx)が算出される。
ステップS42において、マスター点としたデータを除いたデータセットのデータをスレーブ点として計算処理した場合には、入力データ毎に、入力データの値と重みの値の積の値(wvx)の和(wvxtot)を重みの値(wv)の和(wvtot)で除して得られた値、すなわち、wvxtot/wvtotで得られた値を、入力データ毎のマスター点Mの入力データの平均値、例えば、設計変数毎のマスター点Mの設計変数の平均値とし、例えば、メモリ24に記憶させる(ステップS44)。
ステップS44では、図18、図19に示す平均区間Pにおいて、マスター点Mを中心とした設計変数の平均値を設計変数毎に得ることができる。
なお、マスター点Mをグリッドgの交点nとした場合には、交点nの数と、計算したマスター点Mの数とを比較することにより、ステップS42の計算処理の判定をすることができる。
以上のようにして、出力値空間での入力データの移動平均処理、例えば、特性値空間内での設計変数の移動平均処理が終了する。
なお、データ処理部30は、図13にデータ処理装置10aと同じ構成であるため、その詳細な説明は省略する。
データ処理装置10cでも、パレート解を作成する点および移動平均処理を施す点以外、データ処理装置10と同様にして、自己組織化マップに第1の指標または第2の指標に基づく領域を表示することができるため、その詳細な説明は省略する。この場合でも、経験の浅い解析者であっても、視覚的に入力値と出力値の因果関係、および重要な設計変数(入力値)等を理解しやすくすることができる。また、理解しやすくする情報を得ることができる。
12 処理部
14 入力部
16 出力部
20 解析部
22 表示制御部
24 メモリ
26 制御部
28 移動平均処理部
30 データ処理部
32 条件設定部
34 モデル生成部
36 演算部
38 パレート解探索部
40 データ作成部
50、52 セル
54 領域
60、62、76、78 線
70 自己組織化マップ
72 第1の領域
74 第2の領域
Claims (10)
- 所定の関係を有する複数の入力値と複数の出力値において、前記複数の入力値を表わす入力データと、前記複数の出力値を表わす出力データの2種類のデータを対象とした、コンピュータを用いたデータの分析方法であって、
前記複数の出力値がそれぞれ目的関数として定められており、前記コンピュータが目的関数空間における第1の指標および第2の指標の少なくとも一方を求める工程を実行し、
前記第1の指標は、複数の目的関数の値のうち、少なくとも2つの目的関数の値の、予め設定された値に対する距離であり、
前記第2の指標は、複数の目的関数の値のうち、少なくとも2つの目的関数の値の比率で表されるものであり、
前記コンピュータが、さらに、前記入力データおよび前記出力データの前記2種類のデータを用いて、自己組織化マップを作成する工程と、
前記第1の指標および前記第2の指標のうち、少なくとも一方を用いて閾値を設定する工程と、
前記自己組織化マップ上での前記閾値に対応する領域を求める工程とを実行することを特徴とするデータの分析方法。 - 前記コンピュータが、さらに、前記自己組織化マップ上で前記閾値に対応する前記領域を用いて回帰分析をする工程を実行する請求項1に記載のデータの分析方法。
- 前記コンピュータが、さらに、前記自己組織化マップ上で前記閾値に対応する前記領域を用いてクラスタリング処理をする工程と、
前記クラスタリング処理により、前記領域がクラスタに分けられるかを判定する工程とを実行し、
前記クラスタに分けられる場合、前記コンピュータが前記領域の数が多いクラスタについて回帰分析を用いて線を作成する工程を実行する請求項1に記載のデータの分析方法。 - 前記入力値を表わす前記入力データは、構造体および構造体を構成する材料の設計変数を表すものであり、前記出力値を表わす前記出力データは、構造体および構造体を構成する材料の特性値を表すものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のデータの分析方法。
- 前記出力データは、パレート解を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のデータの分析方法。
- 所定の関係を有する複数の入力値と複数の出力値において、前記複数の入力値を表わす入力データと、前記複数の出力値を表わす出力データの2種類のデータを対象とした、コンピュータを用いたデータの表示方法であって、
前記コンピュータが、前記複数の出力値がそれぞれ目的関数として定められており、目的関数空間における第1の指標および第2の指標の少なくとも一方を求める工程と、
前記第1の指標および前記第2の指標の少なくとも一方を、前記入力データおよび前記出力データの前記2種類のデータと共に、表示する工程と、
前記入力データおよび前記出力データの前記2種類のデータを用いて、自己組織化マップを作成する工程と、
前記第1の指標および前記第2の指標のうち、少なくとも一方を用いて閾値を設定する工程と、
前記自己組織化マップ上での前記閾値に対応する領域を求める工程と、
前記自己組織化マップ上で前記閾値に対応する前記領域に印をつけて表示する工程とを実行し、
前記第1の指標は、複数の目的関数の値のうち、少なくとも2つの目的関数の値の、予め設定された値に対する距離であり、
前記第2の指標は、複数の目的関数の値のうち、少なくとも2つの目的関数の値の比率で表されるものであることを特徴とするデータの表示方法。 - 前記コンピュータが、さらに、前記自己組織化マップ上で前記閾値に対応する前記領域を用いて回帰分析をする工程と、
前記回帰分析の結果を前記自己組織化マップ上に表示する工程とを実行する請求項6に記載のデータの表示方法。 - 前記コンピュータが、さらに、前記自己組織化マップ上で前記閾値に対応する前記領域を用いてクラスタリング処理をする工程と、
前記クラスタリング処理により、前記領域がクラスタに分けられるかを判定する工程とを実行し、
前記クラスタに分けられる場合、前記コンピュータが前記領域の数が多いクラスタについて回帰分析を用いて線を作成し、前記クラスタの近似式で表される前記線を、前記自己組織化マップ上に表示させる工程を実行する請求項6に記載のデータの表示方法。 - 前記入力値を表わす前記入力データは、構造体および構造体を構成する材料の設計変数を表すものであり、前記出力値を表わす前記出力データは、構造体および構造体を構成する材料の特性値を表すものである請求項6〜8のいずれか1項に記載のデータの表示方法。
- 前記出力データは、パレート解を含む請求項6〜9のいずれか1項に記載のデータの表示方法。
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