JP2020201736A - タイヤの初期形状設計方法、タイヤの初期形状設計装置、およびプログラム - Google Patents
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Abstract
Description
さらには、特許文献1のタイヤの設計方法で得られたタイヤの最適形状の計算結果を用いて金型の寸法を規定する場合について十分なものとはいえない。
タイヤモデルの断面形状の情報から、形状最適化計算により得られたタイヤの外形線を得て、形状最適化計算により得られたタイヤの外形線を金型形状データとして出力する出力工程とを有し、設計変数に、トレッド部の外形線を規定する関数のパラメータのうち、少なくとも1つが含まれることが好ましい。
作成工程は、関数のパラメータa、b、p、q、x0、y0のうち、少なくとも1つを固定し、残りのパラメータを設計変数に含めるか、または固定したパラメータを残りのいずれかのパラメータに従属させて、演算工程で、タイヤモデルについて形状最適化計算を行うことが好ましい。
また、作成工程では、タイヤモデルをコンピュータで数値解析可能な複数の節点および要素にて構成されるメッシュで作成しており、演算工程では、タイヤモデルにおけるメッシュを再分割して新規タイヤモデルを作成し、新規タイヤモデルに対して形状最適化計算を行うことが好ましい。
問題設定工程で設定される設計変数は、タイヤモデルのトレッド部の端部とサイドウォール部との接続点を含む領域の形状変化を含むことが好ましい。
データ作成部は、タイヤモデルの断面形状の情報から、形状最適化計算により得られたタイヤの外形線を得て、形状最適化計算により得られたタイヤの外形線を金型形状データとして出力することが好ましい。
モデル作成部では、タイヤモデルをコンピュータで数値解析可能な複数の節点および要素にて構成されるメッシュで作成しており、演算部では、タイヤモデルにおけるメッシュを再分割して新規タイヤモデルを作成し、新規タイヤモデルに対して形状最適化計算を行うことが好ましい。
条件設定部は、条件設定部で規定される基準となるタイヤの断面形状に対して接地解析を実施するものであり、接地解析で特定された接地領域は、少なくともトレッド中央部から接地端迄の範囲を含んでおり、条件設定部は、接地領域に対して関数を用いて外形線を規定することが好ましい。
条件設定部で設定される設計変数は、タイヤモデルのトレッド部の端部とサイドウォール部との接続点を含む領域の形状変化を含むことが好ましい。
本発明によれば、抽出した解を構成する設計変数の組合せに対応するタイヤモデルの断面形状の情報を用いて、目的特性を満足する形状の特徴を損なわずに、タイヤ外側の輪郭線が影響する物理量を考慮したタイヤ断面形状を、金型形状データとして効率よく算出することもできる。
図1は本発明の実施形態のタイヤの初期形状設計方法に利用されるタイヤの初期形状設計装置を示す模式図である。
本実施形態のタイヤの初期形状設計方法の実行には、図1に示すタイヤの初期形状設計装置10が用いられる。以下、タイヤの初期形状設計装置10のことを、単に設計装置10ともいう。
処理部12は、制御部32により制御される。また、処理部12において条件設定部20、モデル作成部22、演算部24、データ作成部26はメモリ28に接続されており、条件設定部20、モデル作成部22、演算部24、およびデータ作成部26のデータがメモリ28に記憶される。
以下に説明するタイヤの初期形状設計方法において、処理部12の各部で種々の処理がなされる。以下の説明では制御部32により処理部12の各部で種々の処理がなされることの説明を省略しているが、各部の一連の処理は制御部32により制御される。メモリ28には、後述する各種の判定条件も記憶されている。制御部32がメモリ28から判定条件を読み出して、演算部24で得られた結果と比較し、判定結果に基づいて各部の動作を決定し、決定した動作に基づいて各部を動作させる。
タイヤの初期形状設計方法では、抽出した解を構成する設計変数の組合せに対応するタイヤモデルの断面形状の情報を用いて、予め関数を用いて外形線を規定するため、目的特性を満足する形状の特徴を損なわずに、タイヤ外側の輪郭線が影響する物理量を考慮したタイヤの初期形状を、効率よく探索でき、かつ算出できる。これにより、目的特性を満足するタイヤ形状の特徴を損なうことがないタイヤの初期形状データを得ることができる。
また、タイヤの初期形状設計方法では、抽出した解を構成する設計変数の組合せに対応するタイヤモデルの断面形状の情報を用いて、予め関数を用いて外形線を規定するため、目的特性を満足する形状の特徴を損なわずに、タイヤ外側の輪郭線が影響する物理量を考慮したタイヤ断面形状を、金型形状データとしても効率よく探索でき、かつ算出できる。これにより、目的特性を満足するタイヤ形状の特徴を損なうことがない金型形状データを得ることができる。
また、タイヤおよびタイヤを構成する材料を規定するパラメータのうち特性値(目的関数)として定めた複数のパラメータが設定される。特性値には、コスト等の物理的および化学的な特性値以外の、タイヤおよびタイヤを構成する材料を評価する指標を用いてもよい。
タイヤおよびタイヤを構成する材料は、タイヤ単体ではなく、タイヤを構成するパーツ、タイヤのアッセンブリ形態等のタイヤを含むシステム全体、またはその一部を対象としてもよい。
なお、外形線とは、タイヤ赤道面と直交するタイヤ断面において、一方のビードトウからトレッド部を通過して反対側のビードトウ迄の外表面側の線のことである。
条件設定部20には、外形線の規定に利用される節点の抽出条件を設定することもできる。
目的関数はタイヤの特性値である。この場合、特性値としては、タイヤ性能として評価しようとする物理量であり、例えば、操縦安定性の指標となるスリップ角ゼロ近傍における横力であるCP(コーナリングパワー)、乗心地性の指標となるタイヤの1次固有振動数、燃費性能の指標となる転がり抵抗、操縦安定性の指標となる横ばね定数、耐摩耗性の指標となるタイヤトレッド部の摩耗エネルギー等が挙げられる。これ以外に、タイヤの物理量の例として、形状および寸法値がある。形状としては、例えば、断面形状である。寸法値としては、例えば、タイヤの幅、タイヤの外径等である。タイヤの物理量の例として、形状または寸法値に加えて、たわみ量、接地圧、転がり抵抗およびコーナリング特性等がある。
また、タイヤの負荷荷重、タイヤの転動速度を初めとする走行条件、タイヤが走行する路面条件、例えば、凹凸形状、摩擦係数等、車両の走行シミュレーションに用いるための車両諸元の情報等が設定される。
条件設定部20では、非線形応答関係により生成するモデル、そのモデルの境界条件、FEM等の数値シミュレーションする場合には、そのシミュレーション条件、シミュレーションにおける制約条件を設定する。
本実施形態では、例えば、パレート解を探索するための手法として、遺伝的アルゴリズム(GA)を用いることができる。一般に、特性値(目的関数)の増大と共に、遺伝的アルゴリズムの探索能力が低下することが知られている。それを解決する方法の一つが、個体数を増加させる方法である。
これ以外に、条件設定部20に設計変数の定義域を設定する。設計変数の定義域は、離散的な水準値でも、定数であってもよい。なお、複数種の設計変数があるため、全ての設計変数に対して、それぞれに離散的な水準値を設定し、残りの設計変数については定義域を定数として、設計変数の組合せをコンピュータが変更しながら特性値を算出し、後述するパレート解の抽出を行ってもよい。
また、条件設定部20には、上述のように外形線の規定に利用される節点の抽出条件を設定することもできる。節点の抽出条件は、例えば、抽出する節点の数、および節点を抽出する範囲等である。
また、解析に用いるタイヤモデルの形態は、特に限定されるものではなく、溝のないスムースタイヤでも主溝のみのものでもパターン付きであってもよい。
例えば、タイヤを複数の節点で構成される有限個の要素に分割して、タイヤモデルを作成する。
タイヤモデルを構成する要素は、例えば、2次元平面では四辺形要素、3次元体では四面体ソリッド要素、五面体ソリッド要素、六面体ソリッド要素等のソリッド要素、三角形シェル要素、四角形シェル要素等のシェル要素、面要素等のコンピュータで解析可能な要素とする。このようにして分割された要素は、解析の過程においては、3次元モデルでは3次元座標を用いて、2次元モデルでは2次元座標を用いて逐一特定される。
演算部24は、非線形応答関係を用いて、複数種の設計変数の値と特性値で構成される特性値空間での出力値(サンプリング点)を計算する。また、演算部24は、設計変数と出力値(サンプリング点)とを用い、出力値である特性値を目的関数として、近似モデル(メタモデル)を作成する。
上述の近似モデル(メタモデル)は、入出力の関係を近似する数学的モデルのことであり、パラメータを調整することにより、様々な入出力関係を近似できるものである。上述の近似モデルには、例えば、多項式モデル、クリギング、ニューラルネットワークおよび動径基底関数等を用いることができる。
ここで、パレート解は、トレードオフの関係にある複数の特性値(目的関数)において、他の任意の解よりも優位にあるとはいえないが、より優れた解が他に存在しない解をいう。一般にパレート解は集合として複数個存在する。パレート解の探索には、例えば、パレートランキング法を用いる。
タイヤモデルの断面形状の情報から、形状最適化計算により得られたタイヤの外形線を得る方法は、タイヤモデルの断面形状の外形線を抽出することができれば、特に限定されるものではなく、公知の方法が利用可能である。
金型形状データとは、外形線を構成する直線の長さ、曲線の曲率、直線の位置座標、曲線の位置座標を示す寸法データのことである。具体的には、例えば、NC加工機を用いて金型を作製する際に必要な寸法データのことである。金型形状データとしては、寸法データ以外に、外形線を構成する節点間が関数にて規定されているタイヤモデルの形状で示したものであってもよく、この場合、タイヤモデルは、例えば、数値解析可能な要素でモデル化されたものでもよい。
また、表示制御部30は、入力部14を介して入力される各種の情報、タイヤモデル、数値計算の結果、および最適解を表示部16に表示させることもできる。例えば、タイヤモデル、タイヤモデルの形状最適化計算の結果をメモリ28から読み出し、表示部16に表示させる。
設計装置10では、形状または構造を変化させる際の入力ファイルにおいて、境界条件および解析ステップ等の共通した部分と節点座標値、補強材の配置角度および初期張力等の個々の形状によって異なる部分を分割し、共通部分に取り込むようなファイル形式を用いて自動化すること、すなわち、個別の情報をインクルードファイル化することにより、多数のタイヤ形状について検討を行う場合であっても容易にタイヤ形状の検討が可能である。
熱収縮計算では、製造時における熱収縮を考慮し、出力した金型形状を基に熱収縮計算を行い、得られた結果を用いて金型形状、例えばタイヤ外形線上におけるトレッド各陸部形状を膨出させ、対となる金型側の形状を凹ませたラインに修正する処理が含まれてもよい。熱収縮計算には、タイヤ形状、およびタイヤの組成等に応じた熱収縮率が予め設定されている。設定された熱収縮率は、メモリ28に記憶されていてもよく、入力部14により入力されてもよい。また、冷却され安定な状態となるまでを計算により模擬する場合、実際の製造プロセスを鑑み、内圧を充填した状態において、熱による変形と内圧との力が釣り合った状態を計算するように設定してもよい。
なお、タイヤの初期形状とは、金型にて加硫する前の成型した未加硫タイヤ(グリーンタイヤまたは生タイヤ)が加硫され、金型から解放された後、冷却され安定した形状となった状態における製品形状のことである。
次に、本実施形態のタイヤの初期形状設計方法について説明する。
図2は本発明の実施形態のタイヤの初期形状設計方法の一例を工程順に示すフローチャートである。図3(a)は本発明の実施形態のタイヤの初期形状設計方法に用いられるタイヤモデルの一例を示す模式図であり、(b)はトレッド部外形線を構成する楕円弧の作成方法の一例を示す模式図であり、(c)はトレッド部外形線を構成する楕円弧の作成方法の他の例を示す模式図である。
次に、基準となるタイヤの断面形状におけるトレッド部の外形線を、上述の関数を用いて規定する(ステップS12)。すなわち、ステップS12(外形規定工程)では、上述の関数を用いてタイヤの断面形状のトレッド部の外形線を近似している。
ステップS12において、トレッド部の外形線を上述の関数を用いて規定する場合、外形線を規定する手法は特に限定されるものではない。例えば、基準となるタイヤの断面形状が、有限要素モデルをベースとする場合は、節点と楕円弧間の距離に着目し、最小二乗法のように残差平方和を最小化する手法、および各節点における残差のうち、それらの最大値が最も小さくなる楕円弧を選択する手法等が挙げられる。以下、具体的に説明する。
外側の輪郭において抽出した複数の節点、すなわち、抽出形状の外形線上において抽出した複数の節点は、タイヤトレッド部の代表的な位置における節点が含まれることが好ましい。タイヤ断面形状を例にすると、キャップトレッドセンター位置(トレッド中央部)、トレッド展開幅位置等である。なお、抽出した複数の節点は上記代表的な位置における節点を不変とし、他の節点を近似曲線上に補正してもよく、全ての抽出した節点を近似曲線上に補正するようにしてもよい。
楕円弧61は、抽出した6つの節点52a、節点52b、節点52c、節点52d、節点52eおよび節点52fに対して近似したものであるが、楕円弧61と、抽出した6つの節点52a、節点52b、節点52c、節点52d、節点52eおよび節点52fのそれぞれとは距離δ(残差)が小さい程、近似の精度が高い。楕円弧61は、近似精度が高いものが好ましい。
近似手法としては、特に限定されるものではない。例えば、上述の節点と楕円弧間の距離に着目し、最小二乗法のように残差平方和を最小化する手法、および各節点における距離δ(残差)のうち、それらの最大値が最も小さくなる楕円弧を選択する手法等が挙げられる。
下記数式において、riは楕円弧61の中心O(x0、y0)から各節点56a〜56d迄の距離である。siは楕円弧の中心O(x0、y0)と各節点56a〜56dを通る直線上における、楕円弧の中心Oと楕円弧と直線との交点間の距離である。図3(c)に、各節点56a〜56dの距離s1〜s4を示す。
図3(b)では、6つの節点52a〜52fに対して固定点を設けていないが、これに限定されるものではなく、例えば、両端の節点を固定点として、楕円弧を作成してもよい。
また、作成した楕円弧において、対象となる節点を含むタイヤ断面形状上に周方向溝が存在し、複数の陸部に分割されている場合、製造時における熱収縮を考慮し、出力した金型形状を基に熱収縮計算を行い、得られた結果を用いてトレッド各陸部形状を膨出させたラインに修正する処理をステップS18の最後に与えてもよい。具体的には作成した楕円弧を基準とし、楕円弧よりもトレッド外側に膨出し、かつ陸部の両端を通る曲線を関数としてパラメトリックに定義し、熱収縮計算後のラインとの差分を最小化させるパラメータの探索を最適化アルゴリズムに組み込み、コンピュータに実施させることにより修正後のラインを規定する。
設計変数として、例えば、タイヤの形状またはタイヤの断面形状を変化させる設計変数を設定する。設計変数の設定方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ラテンハイパーキューブ法(ラテン超方格法)を用いて設計変数の設計値が設定される。
特性値としては、例えば、タイヤの物理特性としてタイヤ剛性、接地圧、転がり抵抗、空気抵抗やコーナリング性能、摩擦エネルギー等がある。例えば、第1の特性値と第2の特性値の2つのタイヤ物理特性を目的関数として設定する。なお、目的関数として設定する特性値は1でもよく、3つ以上でもよい。
本実施形態では、このような設定条件でタイヤの初期形状設計方法により、近似モデルが作成される。タイヤの断面形状のパラメータの値による第1の特性値と第2の特性値の変化を求める。
条件設定部20に設定された情報を用いて、モデル作成部22において、コンピュータで数値解析可能な要素でタイヤモデル、例えば、複数の節点および要素にて構成されるメッシュを有するメッシュモデル等のタイヤモデルを作成する(作成工程)。
次に、サンプリング計算で得られた出力値を用いて近似モデルを作成する。すなわち、設計変数と特性値の関係を近似モデルにて表す。
次に、演算部24で近似モデルを用いた形状最適化計算を実行する(ステップS16)。
ステップS16(演算工程)の形状最適化計算に関しては、入力変数と出力変数の非線形関係(応答曲面)を用いて探索する手法や最適化アルゴリズムに従い入力変数を逐次的に変化させながら出力値を算出して探索する手法のどちらを用いても良い。形状最適化計算は、目的関数が複数設定されていれば、多目的最適化計算ともいう。
なお、抽出工程では、設定する抽出条件として、パレート解探索部にてパレート解を抽出し、パレート解を得てもよい。また、パレート解に限らず全ての個体(解)から目的関数以外の特性を制約条件として解を抽出してもよい。
タイヤモデル50(図4(a)および(b)参照)の断面形状の情報とは、有限要素モデルであれば、各要素の大きさおよび配置位置の情報、ならびにタイヤモデル50の輪郭を表す最も外側の節点の情報である。なお、図4(a)はタイヤモデル50が接地面BGに接している状態を示す。
図形データであれば、例えば、タイヤモデル50の輪郭を表す外形線を構成する点の座標データである。これ以外に、外形線がスプライン曲線で表されている場合には、スプライン関数が図形データである。
また、基準となるタイヤの断面形状におけるトレッド部の外形線は、所定の荷重における接地解析をした後に、上述の関数を用いて規定してもよい。これにより、関数で規定する外形線の範囲が明確になる。接地解析工程は、ステップS10(形状設定工程)と、ステップS12(外形規定工程)との間で実行される工程である。接地解析工程は、基準となるタイヤの断面形状に対して接地解析を実施し、接地領域を特定する工程である。条件設定部20が、条件設定部20で規定される基準となるタイヤの断面形状に対して接地解析を実施し、接地領域に対して上述の関数を用いて外形線を規定する。接地解析は、具体的には、以下のようにして行うことができる。
条件設定部20において、図4(b)に示すタイヤモデル50のように、少なくともトレッド中央部60から接地端62迄の範囲で複数の節点を抽出し、タイヤモデル50の少なくともトレッド中央部60から接地端62迄の範囲の節点を利用して、外形線を構成する楕円弧を作成することができる。
図4(b)に示すようにタイヤモデル50のトレッド中央部60から接地端62迄の範囲が接地領域64である。この接地領域64が、外形線により近似される。
このように、節点を抽出する抽出範囲を接地領域64とし、予め計算により接地する領域を見出しておき、トレッド外側の輪郭線を1つの楕円弧にて作成することにより、複数の楕円弧を接続することが不要になり、円弧間の接続点に起因したタイヤ特性への悪影響を改善することができる。このため、接地領域64は1つの楕円弧で近似することが好ましい。
所定の荷重における接地解析において、その荷重は、特に限定されるものではないが、例えば、最大負荷能力相当の荷重、それに安全率を考慮した荷重、または指定した車両における軸荷重相当値を与えることが挙げられる。
接地端62側における楕円弧の端点とサイドウォール部53の外形線との接続は特に限定されるものではないが、公知の手法を用いることができ、例えば、楕円弧の端部にて接する円弧が用いられる。上述の接地端62側における楕円弧の端点とサイドウォール部53の外形線との接続において、接地端62では、トレッド部外形線58(楕円弧61)の1次微分と、サイドウォール部53の1次微分とが一致することが例として挙げられる。すなわち、接地端62側における楕円弧の端点とサイドウォール部53の外形線とが接線を共有して接続することが例として挙げられる。
図5は本発明の実施形態のタイヤの初期形状設計方法に基づく楕円弧の第1の例を示す模式図であり、図6は本発明の実施形態のタイヤの初期形状設計方法に基づく楕円弧の第2の例を示す模式図である。なお、図5および図6において、図4(a)および(b)に示すタイヤモデル50と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図5に示す楕円弧70は、中心Oを固定しており、パラメータa、b、p、q、x0、y0のうち、パラメータb、x0、y0が定数であり、パラメータa、p、qの値を変えて作成されたものである。このようにして、形状最適化計算における変数の数を減らすことができる。
図5の楕円弧70は、トレッド中央部60と接地端62との間の接地領域64を近似しており、トレッド部外形線58を構成する。符号63はトレッド中央部60の節点を示し、符号65は接地端62の節点を示す。楕円弧70において、パラメータbは、中心Oからトレッド中央部60の節点63迄の距離の値である。パラメータp、qおよびパラメータaは、接地領域64を近似するように調整されたものである。楕円弧70は、上述の近似方法を用いて作成することができる。
この場合、固定点間における全ての節点と楕円弧との残差二乗和を最小化させるのではなく、一部の領域の精度を高めるような重みを与えてもよい。例えば、パラメータaが表す位置を最大幅位置に固定し、トレッド中央部60と接地端62との間(接地領域64)における残差二乗和が最小となるp,qの値を算出する手法を用いてもよい。
なお、パラメータa、bを定数とする場合、パラメータa、bは、タイヤ赤道面CL、タイヤ幅方向における最大長さで表される最大幅、ビード底面からタイヤ最大幅位置迄のタイヤ径方向の距離(タイヤ最大幅位置高さ)等にて規定される。
ここで、図7(a)はタイヤのトレッド部のメッシュ再分割の一例を示す模式図であり、(b)はタイヤのトレッド部のメッシュ再分割の他の例を示す模式図である。
上述の再分割とは、形状最適化計算において、物理特性を計算する場合、メッシュピッチによっては、物理特性を反映しない場合がある。この場合、図7(a)に示すようにタイヤモデル50のトレッド部51を小さいメッシュ80に再分割する。これにより、関数を用いて規定したトレッド部の外形線と要素モデルとの誤差が少なくなるため、精度の良い形状探索が可能になる。
一方、図7(b)に示すようにタイヤモデル50のトレッド部51を大きいメッシュ82に再分割する。これにより、形状最適化計算に要する時間を短くできる。
なお、図7(a)および(b)では、いずれもトレッド部の領域におけるメッシュを一律に再分割しているが、これに限定されるものではない。例えば、タイヤモデルにおいて、キャップ部と、ケーシング部とに分けておき、キャップ部のみに対して再分割を行い、ケーシング部のメッシュと結合させたものを用いてもよい。これは、外形線を構成し、形状最適化計算に影響を与える領域、すなわち、キャップ部だけを再分割すればよいためである。上記手法を実施するため、メッシュ品質の判定条件として、予めオペレータがサイズ、要素の角度、または対象領域等を定めておくことにより、コンピュータが自動的に判断してメッシュの再分割を実行するプログラムを演算工程(ステップS16)に加えてもよい。
設計変数は、図8に示すように、タイヤモデル50のトレッド部51の接地端62とサイドウォール部53との接続点68とを含む領域59の形状変化を含んでもよい。これにより、上述の関数を用いて規定したトレッド部外形線58とサイドウォール部53の接続点68とにおけるトレッド部外形線58の目的関数への感度を明らかにするとともに、目的特性に応じた接続点68の最適形状を与えることができる。
上述の領域59の形状変化は発熱または剛性に関するタイヤ物理特性と関連しており、上述の領域59の形状変化を設計変数とすることにより、目的とする特性が複数あっても、より高い次元にて特性をバランスさせた形状を取得可能にする。
タイヤモデル50のトレッド部51の接地端62とサイドウォール部53との接続点68との接続は、公知の方法により接続することができる。例えば、トレッド部外形線58(楕円弧61)の接地端62で接する円弧をトレッド部まで延伸し、サイドウォール部53と接続させる手法が挙げられる。
また、上述の形状変化とは、図9(b)に示すように、領域59の体積が変化することが含まれてもよい。体積変化には、体積の増加と、体積の減少とが含まれる。図9(b)に示す体積変化の場合、領域59の体積変化量が設計変数である。
なお、以上、説明したタイヤの初期形状設計方法は、いずれもタイヤの初期形状設計方法を実行するプログラムにより、上述のタイヤの初期形状設計方法の各工程を手順としてコンピュータに実行させることができる。
次に、本実施形態のタイヤの初期形状設計方法の他の例について説明する。
図10は本発明の実施形態のタイヤの初期形状設計方法の他の例を工程順に示すフローチャートである。図10に示すタイヤの初期形状設計方法の他の例においては、上述の図2に示すタイヤの初期形状設計方法と同様の工程について、その詳細な説明は省略する。
収縮補正工程の後、タイヤモデルの熱収縮断面形状をタイヤの初期形状データとして出力する(ステップS24)。これにより、タイヤの初期形状データを得ることができる。
なお、ステップS24(出力工程)では、タイヤモデルの熱収縮断面形状から、タイヤの外形線を得て、得られたタイヤの外形線をタイヤの初期形状データとして出力することもできる。
なお、以上、説明したタイヤの初期形状設計方法は、タイヤの初期形状設計方法を実行するプログラムにより、上述のタイヤの初期形状設計方法の各工程を手順としてコンピュータに実行させることができる。
本実施例では、以下に示す実施例1および比較例1を用いて本発明のタイヤの初期形状設計方法の効果について確認した。なお、実施例1および比較例1は、基準タイヤをもとに比較した。
なお、タイヤモデルでは、接触不良とならない様にリム接触部は形状を不変として形状最適化計算を実施している。また、実施例1と比較例1は、外形線の補正方法が異なるだけであり、元とする形状は同じ結果を用いている。
比較例1は、接続部において接線を共有する2種の円弧を組み合わせてタイヤモデルの外形線を作成したものである。
上述のように、実施例1は楕円弧で外形線が構成され、比較例1は2種の円弧を組み合わせて外形線が構成されたものであり、実施例1と比較例1とはタイヤモデルの外形線が異なる以外は、同じ構成であり、FEM解析の際もタイヤモデルの外形線が異なる以外は同じ構成とした。
また、実施例1、比較例1および基準タイヤについて、それぞれ接地面積を求め、さらに各接地圧から接地圧分散を求めた。実施例1および比較例1の結果を下記表1に示す。
接地圧分散とは、タイヤモデルの各節点において、検出された接地圧と全節点における接地圧の平均値との差分(偏差)の二乗和を算出し、それを検出した節点数にて除した値のことである。接地圧分散の値が低いほど接地領域における接地圧のばらつきが小さい、すなわち、接地圧が均一化されていることを示す。
また、図11(b)に示すように、実施例1は接地圧の圧力差が小さい。これに対して、図11(c)に示す比較例1には接地端部に接地圧の高い領域があった。
本発明では、タイヤモデルの断面形状において外側の輪郭を構成する円弧の接続端近傍に発生する局所的な接地圧の上昇を改善することができ、かつ接地圧が均一化されたタイヤ形状の外形線を取得することができた。このように、本発明では、目的特性を満足するタイヤ形状の特徴を損なうことがない金型形状データを得ることができた。
12 処理部
14 入力部
16 表示部
20 条件設定部
22 モデル作成部
24 演算部
26 データ作成部
28 メモリ
30 表示制御部
32 制御部
50 タイヤモデル
52a〜52f、56a〜56d 節点
53 サイドウォール部
58 トレッド部外形線
60 トレッド中央部
61、70、72 楕円弧
62 接地端
64 接地領域
63、65、67 節点
66 最大幅位置
80、82 メッシュ
BG 接地面
CL タイヤ赤道面
O 中心
δ 距離
Claims (15)
- 基準となるタイヤの断面形状を設定する形状設定工程と、
基準となる前記タイヤの断面形状におけるトレッド部の外形線を、x、yを変数とし、a、b、p、q、x0、y0をパラメータとする数式で表される関数を用いて規定する外形規定工程と、
前記タイヤについて、形状に関係する設計変数、目的関数、制約条件、および最適解の判定条件を設定する問題設定工程と、
前記タイヤについて、コンピュータで数値解析可能な要素でタイヤモデルを作成する作成工程と、
前記問題設定工程で設定された前記設計変数、前記目的関数、前記制約条件、および前記最適解の判定条件に基づき、前記タイヤモデルについて形状最適化計算を行う演算工程と、
前記演算工程の前記形状最適化計算の結果から、所定の抽出条件を用いて少なくとも1つの解を抽出し、抽出した前記解を構成する設計変数の組合せに対応する前記タイヤモデルの断面形状の情報を得る取得工程とを有する、ことを特徴とするタイヤの初期形状設計方法。
- 前記取得工程で得られた前記タイヤモデルの断面形状に対して熱収縮計算を実施し、前記タイヤモデルの熱収縮断面形状の情報を得る収縮補正工程と、
前記タイヤモデルの前記熱収縮断面形状をタイヤの初期形状データとして出力する出力工程とを有する、請求項1に記載のタイヤの初期形状設計方法。 - 前記タイヤモデルの断面形状の前記情報から、前記形状最適化計算により得られたタイヤの外形線を得て、前記形状最適化計算により得られた前記タイヤの前記外形線を金型形状データとして出力する出力工程とを有し、
前記設計変数に、前記トレッド部の前記外形線を規定する前記関数の前記パラメータのうち、少なくとも1つが含まれる、請求項1に記載のタイヤの初期形状設計方法。 - 前記作成工程は、前記関数の前記パラメータa、b、p、q、x0、y0のうち、少なくとも1つを固定し、残りのパラメータを前記設計変数に含めるか、または前記固定したパラメータを残りのいずれかのパラメータに従属させて、前記演算工程で、前記タイヤモデルについて前記形状最適化計算を行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤの初期形状設計方法。
- 前記作成工程では、前記タイヤモデルを前記コンピュータで数値解析可能な複数の節点および要素にて構成されるメッシュで作成しており、
前記演算工程では、前記タイヤモデルにおける前記メッシュを再分割して新規タイヤモデルを作成し、前記新規タイヤモデルに対して前記形状最適化計算を行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤの初期形状設計方法。 - 前記形状設定工程と前記外形規定工程との間に、前記形状設定工程で設定された、前記基準となるタイヤの断面形状に対して接地解析を実施し、接地領域を特定する接地解析工程を有し、
前記接地解析工程で特定された前記接地領域は、少なくともトレッド中央部から接地端迄の範囲を含み、
前記外形規定工程では、前記接地領域に対して前記関数を用いて前記外形線を規定する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタイヤの初期形状設計方法。 - 前記問題設定工程で設定される前記設計変数は、前記タイヤモデルのトレッド部の端部とサイドウォール部との接続点を含む領域の形状変化を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のタイヤの初期形状設計方法。
- 基準となるタイヤの断面形状を設定し、基準となる前記タイヤの断面形状におけるトレッド部の外形線を、x、yを変数とし、a、b、p、q、x0、y0をパラメータとする数式で表される関数を用いて規定し、かつ前記タイヤについて、形状に関係する設計変数、目的関数、制約条件、および最適解の判定条件を設定する条件設定部と、
前記タイヤについて、コンピュータで数値解析可能な要素でタイヤモデルを作成するモデル作成部と、
前記条件設定部で設定された前記設計変数、前記目的関数、前記制約条件、および前記最適解の判定条件に基づき、前記タイヤモデルについて形状最適化計算を行う演算部と、
前記演算部の前記形状最適化計算の結果から、所定の抽出条件を用いて少なくとも1つの解を抽出し、抽出した前記解を構成する設計変数の組合せに対応する前記タイヤモデルの断面形状の情報を得る、データ作成部とを有し、
前記設計変数に、前記トレッド部の前記外形線を規定する前記関数の前記パラメータのうち、少なくとも1つが含まれることを特徴とするタイヤの初期形状設計装置。
- 前記データ作成部は、得られた前記タイヤモデルの断面形状に対して熱収縮計算を実施し、前記タイヤモデルの熱収縮断面形状の情報を取得し、前記タイヤモデルの前記熱収縮断面形状をタイヤの初期形状データとして出力する、請求項8に記載のタイヤの初期形状設計装置。
- 前記データ作成部は、前記タイヤモデルの断面形状の前記情報から、前記形状最適化計算により得られたタイヤの外形線を得て、前記形状最適化計算により得られた前記タイヤの前記外形線を金型形状データとして出力する、請求項8に記載のタイヤの初期形状設計装置。
- 前記条件設定部では、前記関数の前記パラメータa、b、p、q、x0、y0のうち、少なくとも1つを固定し、残りのパラメータを設計変数に含めるか、または前記固定したパラメータを残りのいずれかのパラメータに従属させて、前記演算部で、前記タイヤモデルについて前記形状最適化計算を行う、請求項8〜10のいずれか1項に記載のタイヤの初期形状設計装置。
- 前記モデル作成部では、前記タイヤモデルを前記コンピュータで数値解析可能な複数の節点および要素にて構成されるメッシュで作成しており、
前記演算部では、前記タイヤモデルにおける前記メッシュを再分割して新規タイヤモデルを作成し、前記新規タイヤモデルに対して前記形状最適化計算を行う、請求項8〜11のいずれか1項に記載のタイヤの初期形状設計装置。 - 前記条件設定部は、前記条件設定部で規定される前記基準となるタイヤの断面形状に対して接地解析を実施するものであり、前記接地解析で特定された接地領域は、少なくともトレッド中央部から接地端迄の範囲を含んでおり、
前記条件設定部は、前記接地領域に対して前記関数を用いて前記外形線を規定する、請求項10に記載のタイヤの初期形状設計装置。 - 前記条件設定部で設定される前記設計変数は、前記タイヤモデルのトレッド部の端部とサイドウォール部との接続点を含む領域の形状変化を含む、請求項8〜13のいずれか1項に記載のタイヤの初期形状設計装置。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のタイヤの初期形状設計方法の各工程を手順としてコンピュータに実行させるためのプログラム。
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