以下の詳細な説明では、本明細書の一部を構成する添付の図面を参照する。これらの図面では、同様の記号は通常、文脈が逆のことを明示しない限り、同様の構成要素群を指している。詳細な説明、図面、及び請求項に記載される例示的な実施形態は、限定的な意味に捉えられてはならない。他の実施形態を利用してもよく、かつ他の変更を、本明細書において提示される主題の思想または範囲から逸脱しない限り行うこともできる。本明細書において概要説明され、かつ複数の図に例示される本開示の種々態様は、多種多様な異なる構成で配置する、置き換える、組み合わせる、分離する、そして設計することができ、これらの構成の全ては、本明細書において明示的に想到される。
I.例示的なX線管の概要説明
本技術の種々実施形態は、真空筐体を有する種類のx線管に関するものであり、この真空筐体内に、陰極及び陽極が配置される。陰極は電子エミッタを含み、電子エミッタは、電子を電子ビームの形態で放出し、電子ビームは、エミッタの放出面に略垂直に放出され、そして電子は、陰極と陽極との間の電圧差により加速されて、収束スポットと表記される電子領域の陽極のターゲット面に衝突する。種々実施形態は更に、電子ビーム収束部及び/または電子ビーム走査部を含み、電子ビーム収束部及び/または電子ビーム走査部は:(1)電子ビームを偏向させて、または走査させて、陽極ターゲット上の収束スポットの位置を変更することにより;かつ/または(2)電子ビームを収束させて収束スポットの寸法を変更することにより電子ビームを操作するように構成される。異なる実施形態は、磁気システムのような収束部及び/または走査部の異なる構造を利用し、磁気システムとして、コイル部品により四極子及び/または二極子として形成される電磁石群からなる複合磁性体を挙げることができ、コイル部品には、電流が流れ、かつコイル部品は、適切な材料により構成されるキャリア/ヨークに配置される。
本開示の種々実施形態は、平板電子エミッタ構造を有する電子エミッタを示している。更に、平板エミッタは、放出電子ビームの放出特性を調整できるように設計され、かつ構成され、これにより、所定の撮像用途における収束スポットサイズ、形状、及び位置を調整することができる−従って最適化することができる能力が得られる。平板電子エミッタパターンを調整することにより、エミッタ構造を強化することができ、これにより、収束スポットの最適な収束状態が劣化することによる画像品質問題を回避することができる。例えば、平板電子エミッタパターンを設計することにより、空間分解能を高めて、画像アーチファクトを低減することができる。x線管の1つの実施例は、これらの特徴のうちの特定の特徴を有しており−以下に更に詳細に説明される−図1A〜図1Cに図示されている。
概して、本明細書において記載される例示的な実施形態は、平板電子エミッタを有する陰極機構に関するものであり、この平板電子エミッタは、例えば照射長が長いx線管のように、ほぼ全てのx線管に使用することができる。本明細書において開示される例示的な実施形態のうちの少なくとも幾つかの実施形態では、x線管の照射長が長いことに関連する困難は、平板放出面を有する平板電子エミッタを用いることにより克服することができる。本開示の実施形態では、平板放出面は、2つの電極の間を延在する略平坦な放出面を有する連続した切り欠き形状の平板部材で形成することができる。連続した平坦な放出面は、切り欠きで画定される湾曲部または屈曲部で接続合体される複数の放出面部を有することができる。適切な電流をエミッタに流すと、平板放出面は、電子ビームを形成する電子を放出し、この電子ビームは、電子ビームが加速領域及びドリフト領域を通過して(例えば、磁気走査または磁気収束させて、または磁場走査または磁気収束させないで)陽極のターゲット面に収束スポットの位置で衝突すると、ほぼ層流になる。
図1A〜図1Cは、x線管1の1つの実施例の図であり、この実施例では、本明細書において記載される1つ以上の実施形態を実現することができる。詳細には、図1Aが、x線管1の斜視図を示しており、図1Bが、x線管1の側面図を示しているのに対し、図1Cは、x線管1の断面図を示している。図1A〜図1Cに示すx線管1は、例示的な動作環境を表しており、本明細書において記載されるこれらの実施形態に限定されるものではない。
概して、x線は、x線管1内で発生し、これらのx線のうちの幾つかのx線は、x線管1から出射して、1つ以上の用途で利用されることになる。x線管1は、真空筐体構造2を含むことができ、この真空筐体構造2は、x線管1の外郭構造として機能することができる。真空構造2は、陰極ハウジング4と、陽極ハウジング6と、を含むことができる。陰極ハウジング4を陽極ハウジング6に固定して、内部陰極容積3が陰極ハウジング4で画定され、かつ内部陽極容積5が陽極ハウジング6で画定されるようにすることができ、これらの内部容積の各内部容積を連結して真空筐体2を画定している。
幾つかの実施形態では、真空筐体2は、外側ハウジング(図示せず)内に配置され、この外側ハウジング内では、液体または空気のような冷媒が循環して、熱を真空筐体2の外側表面から放散させる。外部熱交換器(図示せず)を動作可能に接続して、熱を冷媒から除去して、冷媒を外側ハウジング内で再循環させる。
図1A〜図1Cに示すx線管1は、遮蔽部材(電子遮蔽部材、アパーチャ、または電子コレクタと表記される場合がある)7を含み、この遮蔽部材7は、陽極ハウジング6と陰極ハウジング4との間に配置されて、真空筐体2を更に画定している。陰極ハウジング4及び陽極ハウジング6はそれぞれ、遮蔽部材7に溶接される、ろう付けされる、またはその他には、機械的に接続される。他の構成を使用することができるが、適切な遮蔽形態の例が、2011年12月16日に出願された「X−ray Tube Aperture Having Expansion Joints(伸縮継手を有するX線管アパーチャ)」と題する米国特許出願第13/328,861号、及び「Shield Structure And Focal Spot Control Assembly For X−ray Device(X線装置の遮蔽構造及び収束スポット制御機構)」と題する米国特許第7,289,603号に更に記載されており、これらの特許出願の各特許出願の内容は、あらゆる目的で引用されて本明細書に組み込み記載されているものとする。
x線管1は更に、x線透過窓8を含むことができる。x線管1内で発生するこれらのx線の幾つかのx線は、窓8を通って出射する。窓8は、ベリリウムにより構成することができる、または別の適切なx線透過材料により構成することができる。
特に図1Cを参照するに、陰極ハウジング4は、陰極機構10と表記されるx線管の一部を形成する。陰極機構10は普通、電子の発生に関与する部品群を含み、これらの電子が一体となって、参照番号12で図示される電子ビームを形成する。陰極機構10は更に、x線管の部品群を陰極ハウジング4の端部16と陽極14との間に含むことができる。例えば、陰極機構10は、参照番号22で総称され、かつ陰極ヘッド15の端部に配置される電子エミッタを有する陰極ヘッド15を含むことができる。以下に更に説明されるように、本開示の実施形態では、電子エミッタ22は、平板電子エミッタとして構成される。電流を電子エミッタ22に流すと、電子エミッタ22は、電子を熱電子放出により放出するように構成され、これらの電子が一体となって層流電子ビーム12を形成し、この電子ビーム12が陽極ターゲット28に向かって加速される。
陰極機構10は更に、陰極ハウジング4で更に画定され、かつ電子エミッタ22に隣接する加速領域26を含むことができる。電子エミッタ22から放出されるこれらの電子は電子ビーム12を形成して、加速領域26に入射して加速領域26を通過し、そして適切な電圧差が生じているので陽極14に向かって加速される。更に詳細には、図1A〜図1Cに含まれる任意に定義される座標系に従って、電子ビーム12は、z方向に、かつ電子エミッタ22から遠ざかって加速領域26を通過する方向に加速される。
陰極機構10は更に、陰極ハウジング4のネック部24aで画定されるドリフト領域24の少なくとも一部を含むことができる。本実施形態及び他の実施形態では、ドリフト領域24は更に、遮蔽部材7に形成されるアパーチャ50と連通することにより、電子エミッタ22から放出される電子ビーム12が、陽極ターゲット面28に衝突するまで、加速領域26、ドリフト領域24、及びアパーチャ50を通過することができる。ドリフト領域24では、電子ビーム12の加速度は、加速領域26における加速度から下げることができる。本明細書において使用されるように、「drift」という用語は、電子ビーム12の形態の電子がドリフト領域24を通過している状態を表す。
陽極ハウジング6で画定される陽極内部容積5の内部に配置されるのが、参照番号14で総称される陽極14である。陽極14は、陰極機構10の反対側のドリフト領域24の終端部に、陰極機構10から離間して配置される。概して、陽極14は、参照番号60で図示される熱伝導性材料または熱伝導性基板により少なくとも部分的に構成することができる。例えば、熱伝導性材料として、タングステンまたはモリブデン合金を挙げることができる。陽極基板60の裏面は、例えばこの場合、参照番号62で図示されるグラファイト基材のような更に別の熱伝導性材料を含むことができる。
陽極14は、ここでは参照番号64で図示される回転可能に装着されたシャフトを介して回転するように構成することができ、このシャフトは、回転力が誘導電磁界により生じてロータ機構に、ボール軸受、液体金属軸受、または他の適切な構造を介して作用することにより回転する。電子ビーム12が電子エミッタ22から放出されると、電子が陽極14のターゲット面28に衝突する。ターゲット面28は、回転陽極14の外周面に沿った環状面の形状に形成される。電子ビーム12がターゲット面28に衝突する位置は、収束スポット(図示せず)として知られている。収束スポットについての幾つかの更に別の詳細を以下に説明する。ターゲット面28は、タングステンまたは高い原子番号(「high Z」)を持つ同様の物質により構成することができる。高い原子番号を持つ物質は、当該物質が、原子番号が高いことから、「high(エネルギーの高い)」電子殻に存在する電子を含むことになるのでターゲット面28に使用することができ、これらの電子が、衝突電子と相互作用してx線を公知の態様で発生させることができる。
x線管1の動作状態では、陽極14及び電子エミッタ22は電気回路で接続される。この電気回路により、高電位を陽極14と電子エミッタ22との間に印加することができる。更に、電子エミッタ22は、電源に接続されて、電流が電子エミッタ22に流れて電子が熱電子放出により発生するようになる。大きな差電圧を陽極14と電子エミッタ22との間に印加すると、放出電子が電子ビーム12を形成するようになり、この電子ビーム12が加速領域26で加速されて、加速領域26及びドリフト領域24をターゲット面28に向かって通過する。詳細には、大きな差電圧により、電子ビーム12は加速領域26で加速され、次にドリフト領域24をドリフトする。電子ビーム12内の電子が加速されると、電子ビーム12は運動エネルギーを取得する。ターゲット面28に衝突すると、この運動エネルギーの相当部分が、高周波の電磁放射線、すなわちx線に変換される。ターゲット面28の向きは、窓8を基準にして、x線が窓8に向かって進むように設定される。次に、これらのx線の少なくとも幾つかのx線が、x線管1から窓8を通って出射する。
任意であるが、1つ以上の電子ビーム操作装置を設けることができる。このような装置を設けて、電子ビームが領域24を通過するときに電子ビーム12を「steer(走査させる)」かつ/または「deflect(偏向させる)」ことにより、ターゲット面28上の収束スポットの位置を操作する、または「toggling(切り替える)」ことができる。更に、または別の構成として、操作装置を使用して、電子ビームの断面形状を変更する、または「focus(収束させる)」ことにより、ターゲット面28上の収束スポットの形状を変化させることができる。図示の実施形態では、電子ビーム収束及び電子ビーム走査は、参照番号100で総称される磁気システムによって行われる。
磁気システム100は、四極子形状または二極子形状を組み合わせた種々の多極子形状を含むことができ、これらの多極子形状は、磁力を電子ビームに作用させて、ビームを走査させる、かつ/または収束させるように配置される。磁気システム100の1つの実施例を図1A〜図1E、及び図2Aに示す。本実施形態では、磁気システム100は、x線管の電子ビーム経路12に配置される2段の磁場四極子として設けられる。2段の磁場四極子は、(a)ビーム経路に垂直な両方向の収束を行い、かつ(b)ビームをビーム経路に垂直な両方向に走査させるように構成される。このように、2段の四極子は、一体となって作用して磁気レンズ(「doublet(ダブレット)」と表記される場合がある)を形成し、収束及び走査は、電子ビームが四極子「lens(レンズ)」を通過すると行われる。「focusing(収束)」を行うと、所望の収束スポット形状及びサイズが得られ、「steering(走査向)」を行うと、収束スポットを陽極ターゲット面28上で位置決めすることができる。各段の四極子は、参照番号104で陰極コアとして図示される、及び参照番号102で陽極コアとして図示されるコア部またはヨークを有するように設けられる。図1Dは、陽極コア102の1つの実施形態を示し、図1Eは、陰極コア104の1つの実施形態を示している。各コア部は、対向して配置される4つの磁極突起114a,114b、及び116a,116bを陰極コア104側に含み、そして4つの磁極突起122a,122b、及び124a,124bを陽極コア102側に含む。各磁極突起は、参照番号106a,106b、及び108a,108bで図示される対応するコイルを陰極コア104側に含み、そして参照番号112a,112b、及び110a,110bで図示される対応するコイルを陽極コア102側に含む。以下に更に詳細に説明されるように、電流をこれらのコイルに供給して、所望の収束及び/または走査を行う。
図1Cは、陰極機構10の1つの実施形態の断面図を示しており、この陰極機構10は、本明細書において記載される平板電子エミッタ22及び磁気システム100を有するx線管1に使用することができる。図示のように、電子エミッタ22と陽極14のターゲット面28との間の照射経路は、加速領域26と、ドリフト領域24と、遮蔽部材7に形成されるアパーチャ50と、を含むことができる。図示の実施形態では、アパーチャ50は、開口ネック54、及び陽極14の方を向くように向きが設定された拡大電子収集面56を経由するように形成される。
図2Aは、x線装置の構成部材を示しており、これらの構成部材は、電子放出、電子ビーム走査または電子ビーム収束、及びx線放出に対応して配置される。陰極ヘッド15は、ビーム12の電子を陽極14に向かって放出するように設定された向きを有する平板電子エミッタ22を有するものとして図示されている。図2Aでは、ビーム経路の途中に配置されるのは、磁気システム100であり、磁気システム100は、上に説明したように、電子ビームを、陽極14に到達する前に収束させる、または走査させるように構成される。
II.放出特性を調整できる平板エミッタの例示的な実施形態
図2Bは、陰極機構10の一部分を示しており、この部分は、電子エミッタ22が陰極ヘッド15の端部に位置する構成の陰極ヘッド15を有することにより、電子エミッタの向きが陽極14を向くように、または陽極を指すように設定されている(向きに関しては、図1C及び図2Aを参照)。陰極ヘッド15は、エミッタ領域23を有するヘッド面19を含むことができ、エミッタ領域23は、ヘッド面19の凹部として形成され、この凹部は、電子エミッタ22を収容するように構成され、電子エミッタ22は更に、電子エミッタ22の第1リード27aを収容するように構成される第1リード収容部25aと、電子エミッタ22の第2リード27bを収容するように構成される第2リード収容部25bと、を含む(第1リード27a及び第2リード27bについては図2Cを参照)。エミッタ領域23は、平坦面のような種々の形状を有するか、または電子エミッタ22を収容する形状に形成される図示の凹部を有することができ、第1リード収容部25a及び第2リード収容部25bは、陰極ヘッド15の本体の内部に延在する導管とすることができる。ヘッド面19は更に、電子エミッタ22の両側に位置する電子ビーム収束装置11を含む。
図2Cは、陰極ヘッド15の内部領域の1つの実施形態を示しており、この内部領域は、平板電子エミッタ22の電気リード27a,27bを示している。図示のように、ベース部21は、陰極ヘッド15をベース部の上に収容するように寸法決定することができる。ベース部21は、ベース面21aから突出するリード収容部17を含むことができる。リード収容部17はリード収容面17bを含むことができ、リード収容面17bは、当該リード収容面に形成される第1リード収容部25a及び第2リード収容部25bを有する。第1リード収容部25aは第1リード27aを収容し、第2リード収容部25bは第2リード27bを収容する。第1リード27aは第1脚部31aに電気的に接続され、第2リード27bは第2脚部31bに電気的に接続される。この電気的な接続は、リード27aとリード27bとの間に脚部31a、31bを機械的に接続した状態の構造的な補強とすることができる。機械的な接続は、第1リード27a及び第2リード27bが、対応する第1脚部31a及び第2脚部31bに物理的かつ機械的に接続された状態を保持する溶接、ろう付け、接着剤、機械接続、または他の接続により行うことができる。第1リード27a及び第2リード27bは、この技術分野で周知の如く、陰極機構10に電気的に接続することができる。
図3Aは、第1リード27a及び第2リード27bに接続される電子エミッタ22の1つの実施形態を示している。電子エミッタ22はエミッタ本体29を含み、エミッタ本体29は、第1リード27aから第2リード27bまで連続しており、エミッタパターン30を形成する。エミッタパターン30は、2次元パターンとすることにより、平板エミッタ表面34を形成することができ、エミッタ本体29の異なる領域は、一体となって平板エミッタ表面34を形成している。ギャップ群32(例えば、部材群の間の直線で図示される)をエミッタ本体29の異なる領域の間に設け、これらのギャップ32は、第1端部33aから中心領域33cまで連続する第1ギャップ32aを形成することができ、これらのギャップ32は、中心領域33cから平板エミッタ表面34の第2端部33bまで連続する第2ギャップ32bを形成することができる。図示のように、平板エミッタ表面34の中心領域33cは、電子エミッタ22の中心領域、及びエミッタ本体29及びエミッタパターン30の中心領域でもある。しかしながら、他の配置、形状、またはパターンを電子エミッタ22に対して適用して、平板エミッタ表面34を有するようにしてもよい。
エミッタ本体29は、種々の形状を有することができるが;1つの形状は、少なくとも1つの平坦面41(例えば、フラット面、図3C参照)を含み、この平坦面41は、平板エミッタパターン30にパターニングされると、平板電子エミッタ22を形成する。すなわち、エミッタ本体29は連続しており、エミッタ本体をパターニングして、電流が第1リード27aからエミッタパターン30のエミッタ本体29内を流れて第2リード27bに流れ込むようにしている、または逆に、電流が第2リード27bからエミッタパターン30のエミッタ本体29内を流れて第1リード27aに流れ込むようにしている。
1つの態様では、エミッタ本体29の構成部分または構成領域は、第1端部33aから第2端部33bに至るまで互いに接触しない。エミッタパターン30は、1つ以上の折り曲げ部、直線部、湾曲部、屈曲部、または他の形状部を有する曲がりくねったパターンとしてもよいが;エミッタ本体29は、エミッタ本体自体の別の領域に接触する領域を全く含んでいない。1つの態様では、これらのコーナー部、またはこれらの屈曲部の間のパターン構成部材群の全てが真っ直ぐになっており、これにより、非常に大きな寸法の隙間窓、または隙間開口がエミッタパターン30内に形成されるのを回避することができ、非常に大きな寸法の隙間により、照射経路50の側方に不所望な側方電子放出が生じてしまう。従って、電流は、第1リード27aから第2リード27bに至る経路を1つしか持たず、電流は、エミッタ本体29内をエミッタパターン30に沿って第1端部33aから第2端部33bまで流れる。しかしながら、更に別のリード群をエミッタ本体29に、エミッタパターン30の種々の位置で接続して、温度プロファイル及び電子放出プロファイルを調整することができる。更に別のリード群の位置及び形状の例について、以下に更に詳細に説明する。
電子エミッタ22の電流経路を平板配置(例えば、平板エミッタパターン30)にして、調整後の加熱プロファイルを形成する。この調整は、設計局面で、1つ以上の最終用途の種々のパラメータを考慮に入れて行うことができる。この場合、電子放出は熱電子放出であるので、放出領域の加熱プロファイルを設計することにより、放出を制御して、電子エミッタ平板面34の所望の放出領域(例えば、1つ以上の横木部材35、図3B参照)に一致させることができる。更に、温度プロファイル及び放出プロファイルを設計手順中に調整することにより、放出電子ビームのプロファイルを制御することができ、かつ当該プロファイルを使用して、1つ以上の所望の収束スポットを形成することができる。この形状の平板電子エミッタ22は、従来の螺旋巻きの形状のワイヤエミッタとは全く異なっており、この螺旋巻きの形状のワイヤエミッタは、エミッタ表面に垂直な電子経路を形成しないので、例えば所謂「long throw(照射長が長い)」用途では有用ではない。更に、円形平坦エミッタの形状及びサイズによって、総放出量が小さく抑えられ、かつこの円形形状によって、スポットサイズ及びスポット形状を特定の用途に合うように調整することが容易ではない。これとは異なり、図3A〜図3Bに示すような提案する平板エミッタの種々実施形態は、拡大縮小が可能であり、かつエミッタ形状及びエミッタパターンは、種々の形状に調整されるように設計することができ、任意の種類のx線管に使用することができ、任意の種類のx線管として、これらには限定されないが、照射長が長いx線管、照射長が短いx線管、及び照射長が中程度のx線管だけでなく、他のx線管を挙げることができる。これらの磁気システムは、任意の種類のx線管に使用することもでき、任意の種類のx線管として、これらには限定されないが、照射長が長いx線管、照射長が短いx線管、及び照射長が中程度のx線管だけでなく、他のx線管を挙げることができる。
図3Aは更に、第1リード27aは、エミッタ本体29の第1端部33aに位置する第1脚部31aに接続することができ、第2リード27bは、エミッタ本体29の第2端部33bに位置する第2脚部31bに接続することができる様子を示している。図示のように、第1脚部31aは第2脚部31bの反対側に位置しているが;幾つかの構成では、第1脚部31aは、第2脚部31bに隣接して、または近接して配置するか、またはエミッタパターン30の任意の箇所に配置してもよい。
1つの実施形態では、電子エミッタ22は、タングステン箔により構成することができるが、他の材料を使用することができる。タングステンの合金、及び他のタングステン系材料を使用することができる。また、放出面に放出温度を低下させる組成物をコーティングすることができる。例えば、コーティングは、タングステン、タングステン合金、トリア含有タングステン、ドープトタングステン(例えば、カリウムドープタングステン)、炭化ジルコニウム混合物、バリウム混合物とすることができる、または他のコーティングを使用して、放出温度を低下させることができる。放出温度を低下させる材料のような任意の公知のエミッタ材料またはエミッタコーティングをエミッタ材料またはエミッタコーティングに使用することができる。適切な材料の例は、「Cathode Structures for X−Ray Tubes(X線管の陰極構造)」と題する米国特許第7,795,792号に記載されており、この特許出願の内容全体は、特定の目的で引用されて本明細書に組み込み記載されているものとする。
図3Bは、図3Aに関連して説明された電子エミッタ22の上面図を示している。この上面図により、以下に詳細に説明される電子エミッタ22の種々の形状部を明確に観察することができる。エミッタ本体29は、複数の横木部材35を含み、これらの横木部材35は、複数のコーナー部36で接続合体されてエミッタパターン30を形成し、これらの横木部材35は、これらのコーナー部36の間の長尺部材であり、これらのコーナー部36で、第1端部33aから第2端部33bまで両端間(例えば、35a〜35o)に接続される。図3Bに示すように、用紙の向きを基準の向きとすると、4つの左側横木部材35a,35e,35i,35m、4つの右側横木部材35c,35g,35k,35o、3つの上側横木部材35d,35j,35n、3つの下側横木部材,35b,35f,35l、及び1つの中心横木部材35hが設けられる。しかしながら、中心横木部材35hまたは中心箇所から外側横木部材に右側に、左側に、上側に、または下側に移行する任意の数の横木部材35を妥当な構成として使用することができる。また、中心横木部材35hと中心横木部材に接続される横木部材35g、35iとの間のエミッタ領域35p、35qは、これらのエミッタ領域35p、35qがウェブ群37の間に位置する構成の横木部材35または小型横木部材であると考えることができ、これらのウェブ37により、4つの左側横木部材、右側横木部材、上側横木部材、及び下側横木部材が得られる。しかしながら、電子エミッタ22は、任意の向きの、または任意の形状の任意の数の横木部材を含むことができる。各コーナー部36は、ギャップ32からコーナー部36の内部に突出するスロット38を有するものとして図示されている。スロット38とコーナー部の頂点部との間のコーナー部36の本体はウェブ37と表記され、ウェブ37は、これらのコーナー部36の破線で図示されている。ウェブ37は、奥底部(例えば、内側部分または凹状部分)から頂点部(例えば、外側部分または凸状部分)まで延在することができる。これらのスロット38は全て、ギャップ32から奥底部を通って頂点部に向かって延在するものとして図示されているが;これらのスロット38は、頂点部から奥底部に向かって延在するようにしてもよい。スロット38が奥底部に存在する場合、奥底部は、仮にスロット38を設けないとして、奥底部がスロットに含まれるとした場合にこれらの横木部材35が接続されることにより生じる交差部であると考えられる。このように、奥底部は、コーナー部36の内部のスロット38の終端部の位置には存在しない。頂点部及び奥底部は、スロットまたは切り欠きをコーナー部に全く持たない実在の頂点部及び奥底部である。図示のように、これらのギャップ32は、これらの横木部材35の全てを互いに分離し、かつこれらのコーナー部36の全てを互いに分離する。これにより、第1端部33aから第2端部33bに至るような矢印で示す単一の電流経路が得られる。
これらの横木部材35は、第1端部33aから第2端部33bに至るまで、全て同じ寸法(例えば、高さ及び/または幅)とすることができる、全て異なる寸法とすることができる、または同じ寸法、及び異なる寸法を任意に組み合わせた寸法とすることができる。これらのギャップ32は、第1端部33aから中心領域33cに至り、そして中心領域33cから第2端部33bに至るまで、全て同じ寸法(例えば、隣接する横木部材35の間のギャップ幅寸法)とすることができる、全て異なる寸法とすることができる、または同じ寸法、及び異なる寸法を任意に組み合わせた寸法とすることができる。これらのコーナー部36は、第1端部33aから第2端部33bに至るまで、全て同じ形状とすることができる、全て異なる形状とすることができる、または同じ形状、及び異なる形状を任意に組み合わせた形状とすることができる。これらのウェエブ37は、第1端部33aから第2端部33bに至るまで、全て同じ寸法とすることができる、全て異なる寸法とすることができる、または同じ寸法、及び異なる寸法を任意に組み合わせた寸法とすることができる。これらの形状部のいずれかの形状部の寸法を単独で変更する、または組み合わせて変更することにより、電子放出プロファイルを変化させることができ、これにより、選択的な組み合わせを行って電子放出プロファイルを調整することができる。更に、各横木部材の長尺長さを変更するか、または最適化して、所望の温度プロファイルを取得することができる。
1つの実施例では、外側横木部材35a,35b,35n,35oの全ての横木部材の幅を同じ寸法とすることができるのに対し、これらの横木部材の残りの横木部材は全て、別の異なる寸法とすることができる。1つの実施例では、外側横木部材35a,35b,35n,35oの全てに隣接するギャップ群32を同じ寸法とすることができるのに対し、これらのギャップ32の残りのギャップは全て、別の異なる寸法とすることができる。1つの実施例では、これらのコーナー部36は、なだらかに丸みを帯びた頂点部、または鋭く尖った頂点部を有することができる。1つの実施例では、外側コーナー部36に位置するこれらのウェブ37は、内側コーナー部36に位置するこれらのウェブ37とは異なる寸法とすることができる。
例えば、これらの外側横木部材35は、中間横木部材及び/または内側横木部材35よりも幅広になるように形成することができることにより、電気抵抗を確実により小さくして、より低温の状態を保持して、電子の放出をより少なくする(または、ゼロにする)ことができる。更に、隣接する横木部材35の間のギャップ32の幅を調整して、横木部材幅の熱膨張、及び横木部材長さの熱膨張だけでなく、幅収縮及び長さ収縮を打ち消すことができる。
1つの実施形態では、ウェブ37の幅を使用してこれらの横木部材35の抵抗を調整することができるので、電流が横木部材を流れることによる各横木部材35の加熱温度を調整することができる。例えば、特定の用途では、これらの横木部材35の中心箇所は、容易に加熱することができ、これらのコーナー部36に位置する端部、またはこれらのウェブ37に位置する端部は、より低温になり易い。これらのウェブ37の寸法を調整することにより、所定のレベルの制御を行って、電子エミッタ22の熱電子放出特性を「tune(調整する)」ことができる。これらのウェブ37は、これらの横木部材35の温度が所望の値に一致し、かつコーナー部36とコーナー部36との間で、各横木部材35の長さに沿って一層均一になるように寸法決定することができる。これは、これらの横木部材35に、コーナー部36の両側で影響を与えるので、ウェブ37を2つの横木部材の長さに、これらの横木部材35のうちの、特定のウェブ37が両側の横木部材の間に挟まれる箇所で一致させることができる。これにより更に、個々の横木部材35の温度に対する制御が相当程度に可能になるので、電子エミッタ22全体の幅及び長さに沿った温度プロファイルを形成することができ、幅及び長さを調整するか、または調節して種々の要求、または特定の用途に合わせることができる。ウェブ37寸法の調整は、これらのギャップ32から突出し、かつこれらのコーナー部36で終端するスロット群38の寸法を変化させることにより行うことができる。ウェブ寸法の調整は、電子エミッタ22の温度プロファイル及び電子放出プロファイルを調整するための主要な設計手段であると考えることができる。多くの場合、ウェブ37は、これらの横木部材35の幅と略同じ寸法とすることができる、または当該幅の1%、2%、4%、5%、または10%以内の差に収まる寸法とすることができる。
1つの実施形態では、これらの横木部材35のうちの1つ以上の横木部材の幅を調整して温度プロファイルを調整することができ、これにより今度は、電子放出プロファイルを調整することができるが;この手法は、特定の温度プロファイル及び電子放出プロファイルを実現するという観点では、補助的な設計手段であると考えることができる。特定の用途では、これらの横木部材35の幅の変更は、温度プロファイルに与える影響がさほど大きくなく、横木部材35の全長を加熱または冷却する傾向がある。しかしながら、この手法を使用して、電子エミッタ22の外側横木部材35a,35b,35n,35o側からの放出を抑制することができる。外側横木部材35a,35b,35n,35oの寸法をより大きくする、または外側横木部材35a,35b,35n,35oがより大きな寸法を有するようにすることにより、外側横木部材35a,35b,35n,35oからの放出を回避することができ、これらの外側横木部材35a,35b,35n,35oからの放出によって、不所望なx線が発生してしまい、これにより、ウィング及び/または二重ピークが収束スポットに現われる。これとは異なり、中間横木部材または内側横木部材の寸法だけでなく、中心横木部材の寸法を相対的に小さくなるように決定することにより、これらの横木部材35からの放出を促進することができる。このようにして、1つ以上の横木部材35の寸法を、1つ以上の他の横木部材35の寸法よりも小さくなるように決定することにより、より大きな横木部材よりも、より小さな横木部材からの電子放出が促進されるようにすることができる。従って、接続される、または分離されるいずれか1つ以上の横木部材35の寸法をより小さくなるように決定して、電子放出を多くすることができる、またはより大きくなるように決定して、電子放出を阻止することができる。
特定の実施形態では、電子エミッタ22は、異なる寸法の横木部材35、ギャップ32、及び/またはウェブ27を有するように構成されて、エミッタの特定の横木部材35からの電子放出を制限または抑制して、電子がエミッタの異なる領域から異なる放出量で放出されるようにすることができる。例えば、電子エミッタ22の外周に位置する他の構造に近接していることにより、放出電子が不所望な軌跡を辿ってしまうので、これらの外側横木部材35は、内側横木部材35または中心横木部材35hよりも大きな寸法(例えば、幅広の寸法)を有するようにすることができ、これにより、これらの外側横木部材35の温度がより低くなるようにして、これらの外側横木部材35からの電子放出を比較的少なくすることができる。横木部材35、ギャップ32、及び/またはウェブ27の異なる寸法パラメータを使用して、より小さい電子放出面積を物理的により大きな電子エミッタ22から実現することができる。例えば、中心横木部材35h及び隣接する内側横木部材35のみが、殆どの電子を電子エミッタ22から、異なる寸法パラメータを調整することにより放出することができるようにする。別の構成として、中心横木部材35h及び/または最内側横木部材35の寸法を、これらの横木部材35と外側横木部材35との間の横木部材35の寸法よりも厚くなるように決定して、中空電子ビームを形成することができる。不均一なプロファイルまたは一様でないプロファイルを含む、異なる数の放出プロファイルのうちのいずれか1つの放出プロファイルは、平板電子エミッタ22の横木部材、ウェブ、及びギャップの寸法パラメータを調整することにより形成することができる。
横木部材35、ギャップ32、及び/またはウェブ27の寸法は普通、図3Bに示す平板寸法に考慮に入れられるが、垂直寸法(例えば、図3Bの用紙に向かう方向、または用紙から出て行く方向の高さ)を調整してもよい。また、調整対象の横木部材35、ギャップ32、及び/またはウェブ27の寸法を幅または高さとすることにより、断面積を調整することができる。これとは異なり、高さは、幅が調整される場合に設定されて、平板エミッタ表面34が電子放出について調整されるようにすることができる。
1つの実施形態では、他の位置にある横木部材35は、これらの横木部材35を、必要に応じて相対的に大きくすることにより相対的に低温にして、放出プロファイルを変更する、かつ/または他の収束スポットまたは複数の収束スポットを形成ことができる。例えば、上に説明したように、電子エミッタ22の中心横木部材35hまたは最内側横木部材(例えば、35f,35g,35i,35j,任意であるが、35p,35q)は、これらの横木部材に、中間横木部材(例えば、35c,35d,35e,35k,35l,35m)よりも大きな寸法を持たせることにより相対的に低温にして、特定の用途の中空ビームを形成することができる。外側横木部材(例えば、35a,35b,35n,35o)を中間横木部材35よりも大きくして、これらの外側横木部材35が、電子を殆ど放出しないようにすることができる。また、中心横木部材35h及び中間横木部材35が最内側横木部材35よりも小さい場合、ハロー電子放出プロファイルのスポットを発生させることができる。中心横木部材35及び任意の最内側横木部材が中間横木部材及び外側横木部材よりも小さい場合、電子放出を電子エミッタ22の中心に集中させることができる。従って、異なる横木部材35の寸法を単独で調整して、またはウェブ37の寸法と一緒に調整して、温度プロファイル及び電子放出プロファイルを調整することができる。
別の実施形態では、幅を可変にして、1つ以上の横木部材35の長さを短くすることにより、温度プロファイル及び放出プロファイルを調整することができる。しかしながら、このようにして決定される横木部材35の寸法は、ギャップ32を跨いで隣接する横木部材35のために調整して、横木部材35と横木部材35との間のギャップ32が大きくなるのを回避する必要があり、ギャップ32がより大きくなると、今度は、非平行経路を辿るより多くのエッジ放出電子が発生してしまい、これは好ましくない。
1つの実施形態では、ギャップ32の寸法を、エミッタ本体材料の熱膨張率に応じて決定して、ギャップ32が必ず、隣接する横木部材35の間に、冷却中に、かつ全加熱時間にわたって存在するようにすることが望ましい。これにより、第1端部33aから第2端部33bに至る単一の電流経路を維持することができる。
エミッタパターン30及びエミッタパターンの寸法を設計段階で最適化しておくために、以下の寸法が、本明細書において記載される設計手順で設計することができる例示的な寸法であると考えることができる。各横木部材35の高さ(例えば、材料厚さ)は、約0.004インチ、または約0.004インチ〜0.006インチ、或いは約0.002インチ〜約0.010インチとすることができる。横木部材35の幅は、約0.0200インチ、または約0.0200インチ〜約0.0250インチ、或いは約0.0100インチ〜約0.0350インチとすることができる。横木部材35の幅は、横木部材の長さ、及び横木部材の厚さと一緒に決定することにより、各横木部材をエミッタに供給可能な電流に一致するように設計することができる。横木部材35の長さは、約0.045インチ〜約0.260インチ、または約0.030インチ〜約0.350インチ、或いは約0.030インチ〜約0.500インチとすることができ、この場合、横木部材35の長さは、放出面積及び結果的に得られる電子放出面面積によって異なるように寸法決定することができる。ギャップ32の幅は、約0.0024インチ〜約0.0031インチ、または約0.002インチ〜約0.004インチ、或いは約0.001インチ〜約0.006インチとすることができ、この場合、ギャップ32の幅は、隣接する横木部材35が接触しないようにギャップを維持するために必要な熱膨張相殺部材によって異なり得る。ウェブ37の寸法は、約0.0200インチ〜約0.0215インチ、または約0.0200インチ〜約0.0250インチ、或いは約0.0100インチ〜約0.0350インチとすることができ、この寸法は、横木部材35の幅、及び所望の加熱プロファイルに結び付けることができる。エミッタ22の寸法を決定する結果、加熱電流、所望の放出電流(mA)、収束スポットサイズ、及び許容電子放出面面積が与えられる場合に、横木部材35、ウェブ37、及びギャップ32の寸法を変更して、特定の用途に必要な層流電子ビームを発生するエミッタ22を設計することができる。
更に、図3Bは、異なる参照番号が付された5つのブロック:R1、R13、R45、R80、及びR92を示しており、これらのブロックは、横木部材35上の四角で囲んで図示されるように、第1端部33a(例えば、領域R1)から第2端部33b(例えば、領域R92)に至るエミッタ本体29の92個の個別領域に一致している。これらの領域の各領域は、電流が流れて熱電子放出する温度について分析されており、その際のデータは、以下に、図5A及び図5B、及び表1及び表2に図示され、かつ記載されている。
図3Cは、横木部材35の種々の断面形状40a〜40hを示しており、各横木部材は平坦放出面41を有する。従って、電子は、平坦放出面41から優先的に放出されて、これらの横木部材35の平坦放出面41の全てが一体となって平板エミッタ表面34を形成する。しかしながら、丸みを帯びた放出面(図示せず)を幾つかの例において使用して、平板エミッタ表面34を形成するようにしてもよい。
更に他の実施形態では、他の全体形状及び/または他の切断パターンを設計して、電子エミッタの所望の放出プロファイルを実現することができる。種々の他の構造、形状、及びパターンは、本明細書において記載される電子エミッタの実施形態に従って決定することができる。
また、更に別の付属部材を取り付けて、例えば電流経路を短くする、または同じ磁場中に隣接して位置するエミッタを形成することができる。1つの実施例では、付属部材は、更に別の脚部とすることができ、これらの脚部は、更に別の電気リードに接続することができる、または接続しなくてもよい。これらの付属部材は、領域R1から領域R92(図3B参照)に至るいずれの領域にも設けることができる。電気リード群に接続されると、これらの付属部材は、新たな電子経路を画定して、幾つかの領域に電流が流れ、他の領域に電流が流れないようにすることができ、これにより、温度プロファイル及び放出プロファイルを不均一にすることができる。従って、これらの付属部材の位置が専用設計電子経路となることにより、専用設計放出パターンを実現することができる。図示しないが、更に別の脚部、例えば導電体または非導電体を設けて、電子エミッタを必要に応じて、所定の用途に対応して支持することができる。これらの脚部は、これらの横木部材の端部、辺縁、中心、または他の位置にエミッタに沿って取り付けるか、または他のいずれかの位置に取り付けることができる。非導電体の場合、これらの脚部は、いずれかの領域に取り付けることができ、そして支持体となってエミッタ22が平板エミッタ表面34を有する状態を保つことができる。導電体の場合、これらの脚部は、いずれかの領域に取り付けることができることにより支持体となって、エミッタ22が平板表面34を有する状態を保つことができ、そして電流経路を画定して、温度プロファイル及び放出プロファイルを顧客の要求に合わせて形成することができる。
1つの実施形態では、これらの横木部材35のうちの幾つかの横木部材35の間のギャップ32は、冷却中に真のギャップ32となるように寸法決定することができるが、次に一旦、熱膨張が生じると、これらのギャップ32が収縮して、隣接する横木部材35が互いに接触して新たな電流経路を形成する。この現象が発生してしまうと、有効寸法が低温で小さくなるが、次には、より高い温度で大きくなって、熱膨張が生じると接触するこれらの横木部材35が、効果的により大きな横木部材35となり、これにより局所温度を低下させてしまう。加熱すると閉じるこのような可変のギャップ32の寸法は、電子エミッタが、最大動作時に特定の温度プロファイル及び電子放出プロファイルを有するように設計することができる。例えば、外側横木部材35と外側横木部材35との間のギャップ32が、横木部材が加熱時に閉じてしまって、これらの外側横木部材35からは中心横木部材35よりも遥かに少ない電子しか放出されなくなる。
1つの実施形態では、電子エミッタ22の設計は、エミッタ22の加熱プロファイルを調整して、いずれの所望の温度プロファイル及び放出プロファイルにも一致することができるように行うことができる。また、いずれの横木部材35、ウェブ37、またはギャップ32に沿った各方向も、平板放出面全体の温度プロファイルを調整して、所望の電子放出プロファイル全体を実現することができるように設計することができる。電子放出をエミッタ上の所望の領域において抑制して、所定の用途の要求に合わせることができる。中空ビーム、方形ビーム、または矩形ビームだけでなく、特定の電子放出密度分布を形成して、所定の撮像要求に合わせることができる。変調伝達関数(MTF)応答を、所望の用途に合わせることもでき、この変調伝達関数応答は、ビーム収束装置を用いて求めることができる。
1つの実施形態では、電子エミッタ22の配置の設計において、スケーリングを行って、放出面積を大きくして、高分解能撮像を容易に実現することができる、または特定の用途の電力レベルに合わせることができる。すなわち、選択横木部材35を他の横木部材35よりも相対的に小さくして、いずれの横木部材35が優先的に電子を放出するかについて決定することができる。幾つかの例では、非常に多くの横木部材35の寸法をより小さくして、これらの横木部材35からの放出を多くすることにより、放出電子流の大きさを大きくすることができる。
1つの実施形態では、平板エミッタ表面34を加熱時及び電子放出時全体を通じて維持するように設計される電子エミッタ22は、図示のエミッタパターン30を用いて実現することができる。エミッタが平板状になっているので、放出面に略垂直な電子経路を形成することができる。比較的小さなギャップ32を、窓または開口がエミッタパターン30に無い状態で維持することにより、エッジ電子放出または垂直電子放出を低減することができる。
1つの実施形態では、エミッタパターン30は図示の通り、エミッタ22が放出領域(例えば、中心領域)で自立して支持構造を追加する必要がないような構造デザインを有することができる。図3Bのエミッタパターンは、高温時に、かつ電子放出時に大きくゆがむことなく、大きく湾曲することなく、または大きくねじれることなく自立するように設置されている。
1つの実施形態では、エミッタパターン30は、エミッタ22の外側部分から電子が放出されない(例えば、或いは、非常に多くの電子が放出されない)ことにより、収束構造が電磁場にエミッタの周縁で与える影響を必ず低減させるように設計することができる。多くの場合、収束構造(例えば、ビーム収束装置12)は、磁場成形部材(群)(例えば、磁石群)を放出経路または照射経路50の外周の周りに含む。外側横木部材35からの放出をこのように設定して低減させることにより、電子ビームの挙動を向上させて電子ビームを全体的に更に層流状態にすることができる。
1つの態様では、横木部材25、ギャップ32、及びウェブ37の寸法は、電子が均一に放出されることがない(すなわち、エミッタの異なる領域から、他の領域からよりも多くの電子が放出される)ように変更する、設計する、または最適化することができる。エミッタパターン30は、特定の抵抗を1つ以上の選択位置に有することにより、エミッタ22の異なる部分が、異なる温度に加熱されて異なる放出プロファイルを有するように整形され、かつ寸法決定される。
1つの実施形態では、本明細書において記載される平板エミッタをx線管内に適用して、電子ビームを陰極から陽極に向かって放出させることができる。電流が流れると、平板エミッタの形状により、第1端部から第2端部に至る平板エミッタ表面の全体に沿った温度プロファイルが不均一になる。不均一な温度プロファイルは、平板エミッタパターンが、横木部材、ウェブ、及びギャップ寸法を有する結果として現われる。更に、本明細書において提供される平板エミッタについての記載では、エミッタを調整して異なる温度プロファイルを取得することができることについて説明している。電流を流して平板エミッタの温度プロファイルが不均一になると、エミッタの異なる領域が異なる温度を有するようになって、平板エミッタからの電子ビームの放出が、不均一なプロファイルで行われるようになる。不均一な電子ビームプロファイルは、温度プロファイルが不均一になる結果であり、この場合、異なる温度の領域は、異なる電子放出率を有する。温度プロファイルを調整することができることにより、不均一な電子ビームプロファイルを、例えば異なる形状部の寸法を選択的に決定して、幾つかの領域が他の領域よりも動作時に高温になるようにすることにより調整することができる。放出が熱電子放出であるので、異なる領域が異なる温度になることにより、電子放出率が異なるようになって、電子ビームが不均一になる。この法則によって更に、1つ、2つ、または2つよりも多くの収束スポットが、複数の領域に高い放出温度を持たせ、他の領域に低い放出温度を持たせることにより得られる、或いは他の領域が、電子を熱電子放出により放出することがないようにしてもよい。特定の領域では、電子が放出されないようにすることができる、または他の領域よりも極めて少ない電子しか放出されないようにすることができる。従って、単一の電子エミッタが動作している間、特定の領域からの電子放出を促進することができ、かつ他の領域からの電子放出を抑制して、不均一な電子ビームプロファイルに影響を及ぼすことができる。
平板エミッタは、電子ビームの電子を、エミッタの略平板状の表面から、横方向のエネルギー放出を少なく抑えて不均一に放出することができる。
エミッタパターンは、異なる横木部材、ウェブ、及びギャップの寸法を変化させて、エミッタの幾つかの領域(例えば、1つの実施例における外側領域または外側横木部材)から電子が放出されない、または他の領域よりも極めて少ない数の電子しか放出されないようにすることにより設計することができる。これにより、これらの収束装置(図2B参照)が電磁界にエミッタの周縁で与える影響を小さくすることができる。これらの収束装置は、エミッタの外周縁の周りに配置される磁場成形部材であるが、この磁場成形部材は、エミッタの外側横木部材から電子が放出されない、または中間領域のような他の領域よりも極めて少ない電子しか放出されない場合に、収束作用への影響を小さくしている。いずれにしても、不均一な温度プロファイルを調整して、不均一な電子放出プロファイルを調整することにより、不均一な電子ビームの挙動を向上させて全体的に更に層流状態になるようにすることができる。
1つの実施形態では、電子を電子エミッタから不均一に放出させる方法は:複数の長尺横木部材により形成される平板エミッタ表面を有する請求項1に記載の電子エミッタを設けるステップと;不均一な電子ビームを平板エミッタ表面から垂直方向に放出するステップと、を含むことができる。
図4は、図3A〜図3Bのエミッタパターン30を有する電子エミッタ22を示している。エミッタ22の選択領域は、寸法を最適化するために選択される。一方の端部を基準とする1つの領域の寸法は、対応領域に他方の端部に関して対称に複写され、この様子は、複数の箇所に位置する指示記号W−1、W−2、W−3、W−4、及びW−5で図示され、異なる指示記号に対応する寸法は異なっており、そして同じ指示記号が付されている場合は同じになっている。
図4の例示的なエミッタ22に図示されているように、これらの形状部の距離は以下の通りである:A〜Bは0.0224インチ;A〜Cは0.0447インチ;A〜Dは0.0681インチ;A〜Eは0.1445インチ;A〜Fは0.1679インチ;A〜Gは0.1902インチ;そしてA〜Hは0.2126インチ;AA〜ABは0.0231インチ;AA〜ACは0.0455インチ;AA〜ADは0.0679インチ;AA〜AEは0.0912インチ;AA〜AFは0.1132インチ;AA〜AGは0.1366インチ;AA〜AHは0.159インチ;そしてAA〜AIは0.1813インチである。ギャップG1は0.0031インチ;ギャップG2は0.0024インチ;そしてギャップG3、G4、G5、G6、G7、及びG8は全て、0.0024インチである。横木部材の寸法は、上記寸法に基づいて計算することができる。また、ウェブW−1は0.0236インチであり、当該ウェブに対応するスロット38は0.0016インチであり;ウェブW−2は0.0215インチであり、当該ウェブに対応するスロット38は0.0016インチであり;ウェブW−3は0.0205インチであり、当該ウェブに対応するスロット38は0.0016インチであり;ウェブW−4は0.0204インチであり、当該ウェブに対応するスロット38はそれぞれ、0.0016インチであり;そしてウェブW−5は0.02インチであり、当該ウェブに対応するスロット38は0.0016インチである。また、脚部31a、31bは0.346インチとすることができる。これまでに挙げた寸法から、エミッタパターン30を決定することができる。また、本明細書において記載されるこれらの寸法のいずれの寸法も一括して、または単独で、1%、2%、5%、または10%、或いはそれ以上の割合で変更することができる。
図5Aは、電流が7.75A、電圧が8.74V、入力電力が67.7Wのときに最大温度(Tmax)が2250℃になっている状態の図4のエミッタのエミッタ温度プロファイルを示している。領域R1から領域R92(図3Bの領域指示記号を参照)に至る特定の領域の摂氏温度を表1に示す。
表1
図5Bは、電流が8.25A、電圧が9.7V、入力電力が80Wのときに最大温度(Tmax)が2350℃になっている状態の図4のエミッタのエミッタ温度プロファイルを示している。領域R1から領域R92(図3Bの領域指示記号を参照)に至る特定の領域の摂氏温度を表2に示す。
表2
図6Aは、切欠き部60をウェブ37の位置に有するコーナー部36を示している。これらの切欠き部60によってウェブ37の相対寸法が変化し、この相対寸法は、コーナー部に隣接する横木部材35に応じて調整することができる。これらの切欠き部60の寸法は、抵抗整合及び抵抗変更に使用することができ、この場合、これらの切欠き部60のサイズ、またはこれらの切欠き部60の配置、或いはこれらの切欠き部60の個数(例えば、ウェブ37の位置にある1個、2個、または3個以上の切欠き部)を使用して、横木部材35の抵抗を調整することができる。
図6Bは、先端部スロット62及び切欠き部60を有するコーナー部30を示し、種々の形状及び寸法の種々の切欠き部60を有する横木部材35を示している。コーナー部にあるこれらの横木部材の切欠き部は、変えることができる。これらの切欠き部は、寸法を揃えることができるが;これらの切欠き部は、寸法を揃えなくてもよい。ギャップの位置のこれらの切欠き部は、ギャップに通じる不均一な開口部を有することもできる。横木部材は更に、横木部材の長さに沿って延在する先細の長尺切欠き部を含むことができる。このように、図示の切欠き部は、横木部材に対していかなる寸法とすることもできる。
1つの実施形態では、電子エミッタは:平面内で第1エミッタ端部から第2エミッタ端部まで両端間に互いに接続されて平板パターンを形成する複数の長尺横木部材であって、各長尺横木部材が横木部材幅寸法を有する、複数の長尺横木部材と;複数のコーナー部であって、各長尺横木部材が別の長尺横木部材に、複数のコーナー部の1つのコーナー部を介して接続され、各コーナー部が、コーナー頂点部、及び反対側のコーナー奥底部を複数の長尺横木部材の接続長尺横木部材と接続長尺横木部材との間に有する、複数のコーナー部と;複数の長尺横木部材のうちの隣接する非接続長尺横木部材と非接続長尺横木部材との間の第1ギャップであって、第1ギャップが、第1エミッタ端部から中間横木部材まで延在する、第1ギャップと;複数の長尺横木部材のうちの隣接する非接続長尺横木部材と非接続長尺横木部材との間の第2ギャップであって、第2ギャップが、第2エミッタ端部から中間横木部材まで延在し、第1ギャップが第2ギャップと交差しない、第2ギャップと;コーナー頂点部とコーナー奥底部との間の複数のコーナー部のうちの1つ以上のコーナー部に位置する、またはコーナー奥底部に位置する1つ以上の切欠き部と、を含むことができる。
1つの実施形態では、1つ以上の切欠き部を除く、コーナー頂点部とコーナー奥底部との間の各コーナー部の1つ以上の本体部分は、一体となってウェブ寸法をコーナー頂点部とコーナー奥底部との間に画定し、ウェブ寸法は、コーナー部に位置する接続長尺横木部材の横木部材幅寸法の10%以内の差に収まる。
1つの実施形態では、第1端部から中間横木部材に至るまで、第1ギャップは、複数の第1ギャップ部を有し、各第1ギャップ部は、ギャップ部幅を有し、各ギャップ部幅は、エミッタが熱電子を放出しない温度、及び熱電子放出温度になるときに第1ギャップを維持する寸法を有し、そして第2端部から中間横木部材に至るまで、第2ギャップは、複数の第2ギャップ部を有し、各第2ギャップ部は、ギャップ部幅を有し、各ギャップ部幅は、エミッタが熱電子を放出しない温度、及び熱電子放出温度になるときに第2ギャップを維持する寸法を有する。
1つの実施形態では、第1ギャップは、第1端部から中間横木部材まで、時計回り方向または反時計回り方向のいずれかの方向に延在し、第2ギャップは、中間横木部材から第2端部まで、時計回り方向または反時計回り方向のうちの他方の方向に、第1ギャップの向きと逆向きに延在する。
1つの実施形態では、複数の長尺横木部材の第1部分は第1横木部材幅寸法を有し、複数の長尺横木部材の第2部分は、少なくとも異なる第2横木部材幅寸法を有する。
1つの実施形態では、これらの第1ギャップ部のうちの2つ以上の第1ギャップ部は、異なるギャップ部幅寸法を有し、これらの第2ギャップ部のうちの2つ以上の第2ギャップ部は、異なるギャップ部幅寸法を有する。
1つの実施形態では、第1エミッタ端部から数えて1番目及び2番目の横木部材は、第1横木部材幅寸法を有し、2番目の横木部材よりも先の中間横木部材までの他の横木部材は、第1横木部材幅寸法とは異なる少なくとも1種類の横木部材幅寸法を有する。また、第2エミッタ端部から数えて最後の横木部材、及び最後から2番目の横木部材は、第1横木部材幅寸法を有し、最後から2番目の横木部材よりも先の中間横木部材までの他の横木部材は、第1横木部材幅寸法とは異なる少なくとも1種類の横木部材幅寸法を有する。
1つの実施形態では、複数の長尺横木部材の各長尺横木部材は平坦面を有し、この平坦面が複数の平坦面と一体となって、平板パターンの形状の平板放出面を形成する。
1つの実施形態では、第1長尺脚部は、第1長尺横木部材に第1端部で接続することができ、第2長尺脚部は、最後の長尺横木部材に第2端部で接続することができる。また、第1長尺脚部及び第2長尺脚部は、平板放出面に対して所定の角度で傾斜させることができる。
1つの実施形態では、本技術は、平板エミッタパターンを設計する設計手順を含むことができ、当該設計では、エミッタパターンの特定の寸法の設計を行うことができる。当該設計では、図3Bに示す特定のエミッタパターン30の設計を行うことができる。設計手順では、所望の温度プロファイルまたは所望の放出プロファイルを導出することができ、特定の横木部材、ウェブ、及び/またはギャップの寸法を決定して、所望のプロファイルを実現することができる。これらの決定は、ユーザが、計算システムへのデータ入力を行って、温度プロファイルをコンピュータで入力に基づいてシミュレーションすることにより行うことができる。これらの寸法の設計は、CADプログラムのようなコンピュータプログラムで、コンピュータへのユーザによるデータ入力に基づいて行うことができる。次に、当該設計では、シミュレーションをコンピュータで行って、シミュレーションから所望の温度プロファイルが得られるかどうかについて判断することができる。シミュレーションは、ユーザからコンピュータに入力される命令に基づいて行うことができる。コンピュータにより得られるシミュレーションによる温度プロファイルは、電子放出プロファイルを表すことができ、これによりコンピュータCAD設計による温度シミュレーションが可能になる。一旦、所望の温度プロファイルを、ユーザがコンピュータで設計してシミュレーションすることができると、実際の電子エミッタを製造して実際の温度プロファイル及び/または電子放出プロファイルについて調査することができる。一旦、調査すると、実際のエミッタに関するデータを次に、ユーザがコンピュータに入力し、そして当該データを使用して、横木部材、ウェブ、及び/またはギャップの寸法を別のコンピュータCADモデルで変更することができ、次に、新たなエミッタ構造を、コンピュータでシミュレーションすることができ、次に製造して調査することができる。ユーザがコンピュータへのユーザ入力に基づいて操作するCAD設計では:各横木部材の横木部材寸法を決定し;各ウェブのウェブ寸法を決定し;そして各ギャップのギャップ寸法を決定することができる。この場合、これらの異なる形状部のうちの1つ以上の形状部は、同じ寸法を有することができ、これらの同じ形状部のうちの1つ以上の形状部は、異なる寸法を有することができる。すなわち、幾つかの横木部材は同じ寸法を有することができ、そして幾つかの横木部材は異なる寸法を有することができ、幾つかのギャップは同じ寸法を有することができ、そして幾つかのギャップは異なる寸法を有することができ、幾つかのウェブは同じ寸法を有することができ、そして幾つかのウェブは異なる寸法を有することができる。
設計方法の1つの実施例は、平板エミッタを設計する設計手順の以下のステップを含むことができる。これらのステップのいずれのステップも、ユーザが、コンピュータへのデータ入力を行って、命令をコンピュータに入力して、コンピュータに計算演算及びシミュレーションを実行させることにより実行することができる。第1ステップでは、x線の特定の用途を決定する。特定の用途を決定すると、特定のx線放出パターン、または収束スポット群の収束スポット形状、またはスポット数を特定することができる。このように、所望の放出プロファイルは、特定の用途に基づいて決定される。第2ステップでは、エミッタパターンの初期パターン形状を決定することができる。この場合、パターン形状は、本明細書において例示されるエミッタパターンとすることができ、このエミッタパターンは、90度の角度のコーナー部で互いに接続されて第1端部を起点として第2端部で終端する複数の横木部材を含み、この場合、各コーナー部は1つのウェブを有することができる。第3ステップでは、所望の放出プロファイルをエミッタパターンに一致させて、または重ね合わせて、電子を放出するように構成されるこれらの横木部材が、放出プロファイルに一致し、かつ放出を少なくするように、または放出しないように構成されるこれらの横木部材が、放出プロファイルの無放出領域に一致することができるようにする。第4ステップでは、放出プロファイルに対応する電子を放出するこれらの横木部材を特定することができ、電子を殆ど放出しない横木部材を特定することができる。これにより、エミッタパターンの寸法の概略寸法が得られる。第5ステップでは、これらの横木部材の各横木部材の長さ寸法、及び幅寸法を決定して、エミッタパターンを放出プロファイルに一致させることができる。第6ステップでは、ギャップ寸法を横木部材と横木部材との間の各ギャップについて決定することができ、これらの寸法は、熱膨張率を勘案して決定することができ、これらのギャップが冷却中に、全加熱時間にわたって、電子を放出している間は残存するようにする。第7ステップでは、横木部材寸法及びギャップ寸法を有するエミッタパターンを所望の放出プロファイルに重ね合わせるか、またはその他には、所望の放出プロファイルと比較することができ、あらゆる調整を行って、エミッタパターンから放出プロファイルに従って放出され得るようにする。第8ステップでは、ウェブ寸法を横木部材幅に一致するように決定して、横木部材温度プロファイルを取得することができる。これらのウェブ寸法は、多くの場合、横木部材幅の寸法にほぼ一致するように調整することができ、例えば1%以内、2%以内、または最大5%以内、または最大10%以内の差に収まるように調整することができる。これらのステップから得られる結果に基づいて、平板エミッタ形状を適切な寸法を持つように、コンピュータに搭載されるコンピュータ支援設計プログラムで設計することができる。平板エミッタパターンは、寸法と一緒に、データとしてコンピュータのデータ記憶媒体のデータベースとして保存することができる。しかしながら、これらのステップのいずれのステップも適用するかどうかは任意である。
一旦、設計されると、平板エミッタパターンは寸法と一緒に、コンピュータで実行されるシミュレーション手順で処理することができる。このような処理は、ユーザがコンピュータへのパラメータ入力を行うことにより実行することができる。シミュレーション手順は、設計方法の一部とすることができる。シミュレーションでは、これらの横木部材の各横木部材の温度を、平板エミッタパターンに基づいて、コンピュータに入力することができる1つ以上の電流プロファイルを用いてシミュレーションすることができる。すなわち、平板エミッタに流す電流は、変化させることができる種々のパラメータを用いてシミュレーションすることができる。従って、平板エミッタパターンは、1つ以上の電流プロファイルを用いてシミュレーションすることにより、エミッタ全体、各横木部材、及び種々領域の温度プロファイルを導出することができる(例えば、図3B、及び表1及び2を参照)。エミッタ全体、各横木部材、及び/または種々領域の温度プロファイルは、データとしてコンピュータのデータベースに保存することができる。
一旦、エミッタの1つ以上の温度プロファイルをシミュレーションに基づいて導出すると、繰り返し手順をコンピュータで、ユーザによる入力に基づいて行って、ウェブ群のいずれかのウェブの寸法、横木部材幅、及び/またはギャップ寸法のいずれかを変更して、繰り返しエミッタパターンが、所望の温度プロファイルに一致する温度プロファイルを実現することができるようにする。繰り返し手順は、設計手順及びシミュレーション手順を含むことができ、この繰り返し手順は、ユーザがコンピュータを用いて、エミッタパターンが適切な温度プロファイルを実現するまで繰り返すことができる。
一旦、エミッタパターンをシミュレーションして適切な温度プロファイルを実現すると、エミッタパターン、及びウェブ、横木部材幅、及び/またはギャップの適切な寸法を取り入れた物理的な平板電子エミッタを製造することができる。製造は、製造方法の一部とすることができる。一般的に、適切な厚さ(例えば、高さ)を有する所定の種類の平坦材料をレーザ加工することにより、ウェブ、横木部材幅、及びギャップの適切な寸法を有するエミッタパターンを形成することができる。
一旦、物理的なエミッタを製造すると、当該エミッタを、1種類以上の電流を流して調査することにより、これらの温度の各温度に対応する温度プロファイルを導出することができる。測定される実際の温度プロファイルから、エミッタ全体、各横木部材、及び/または種々領域の温度を特定することができる。1つ以上の電流プロファイルに対応するエミッタ全体、各横木部材、及び/または種々領域の実際の温度プロファイルは、コンピュータに、コンピュータのデータベースのデータとして保存されているユーザからの命令に基づいて入力することができる。この温度データをエミッタパターン及び寸法データにリンクさせて、エミッタパターン及び寸法を、対応する温度プロファイルが要求される場合に呼び出すことができる。すなわち、ユーザは、命令をコンピュータに入力して、エミッタパターン及び寸法データをデータベースから取得することができる。従って、データベースは、1つ以上の電流プロファイルに対応する温度プロファイルにリンクさせた複数のエミッタパターン及び設計寸法を含むことができる。これにより、温度プロファイルをユーザが、ユーザからのコンピュータへの入力に基づいて選択することができ、次に当該温度プロファイルに対応するエミッタパターン及び寸法をデータベースから取得してユーザに供給することができる。
データベースは、温度プロファイル、及びそれに対応するエミッタパターン及び寸法の格納部として機能することができる。これにより、1つの温度プロファイルに対応する特定のエミッタパターンを設計して、既知の温度プロファイルを有するエミッタパターン構造から開始することができ、次にパラメータを、所望の温度プロファイルに近付くように繰り返し変化させることができる。所望の温度プロファイルが既に導出されている場合、対応するエミッタパターン及び寸法は、データベースからユーザが選択することができる。
1つの実施形態では、平板電子エミッタを製造する方法は:コンピュータで設計してシミュレーションすることができる設計対象パターンを取得するステップと;板状材料を取得するステップと;そしてエミッタパターンをレーザ加工により板状材料に転写することにより形成するステップと、を含むことができる。次に、脚部は、平板エミッタパターンを屈曲させて形成することができる。1つの実施例では、一旦、パターンの整形が行われると、パターン形成材料を再結晶化して凝固することができる。
1つの実施形態では、電子エミッタを設計する方法は:電子エミッタからの電子放出の所望の断面プロファイルを導出するステップであって、電子エミッタのパラメータをコンピュータに入力することができる、導出するステップと;放出を所望の断面プロファイルで行う電子エミッタの所望の温度プロファイルを導出するステップと;そして所定の電流を電子エミッタに流した状態で所望の温度プロファイルを実現する所望のエミッタ寸法を決定するステップであって、所望の温度プロファイルは、シミュレーションを、ユーザから入力される命令を受けてコンピュータで実行することにより導出することができる、決定するステップと、を含むことができる。エミッタ寸法は:各横木部材幅寸法;各第1ギャップ部寸法;各第2ギャップ部寸法;及び各ウェブ寸法を含むことができる。電子エミッタは:両端間に接続され、かつコーナー部で互いに接続される複数の長尺横木部材であって、各コーナー部がコーナー頂点部及び反対側のコーナー奥底部を有し、かつ各長尺横木部材が横木部材幅寸法を有する、複数の長尺横木部材と;第1エミッタ端部から中間横木部材に至る隣接する非接続長尺横木部材と非接続長尺横木部材との間の第1ギャップであって、第1ギャップが複数の第1ギャップ部を含み、各第1ギャップ部が第1ギャップ部幅を有する、第1ギャップと;第2エミッタ端部から中間横木部材に至る隣接する非接続長尺横木部材と非接続長尺横木部材との間の第2ギャップであって、第2ギャップが複数の第2ギャップ部を含み、各第2ギャップ部が第2ギャップ部幅を有する、第2ギャップと;コーナー頂点部とコーナー奥底部との間の各コーナー部の1つ以上の本体部分であって、これらの本体部分が一体となって、各コーナー部に対応するウェブ寸法を画定する、1つ以上の本体部分と、を含むことができる。
1つの実施形態では、本方法は:電子エミッタのエミッタパターンをコンピュータにユーザが入力するステップであって、エミッタパターンがエミッタ寸法を含む、入力するステップと;所定の電流を流した状態のエミッタパターンの温度プロファイルをコンピュータで、ユーザによる入力に基づいてシミュレーションするステップと;そしてエミッタパターンが、所定の電流を流した状態で所望の温度プロファイルを有するかどうかについて判断するステップと、を含むことができる。
1つの実施形態では、本方法は:(a)これらのエミッタ寸法のうちの1種類以上のエミッタ寸法をコンピュータでユーザが変更することにより、繰り返しエミッタ寸法を有する繰り返しエミッタパターンを取得するステップと;そして(b)所定の電流を流した状態の繰り返しエミッタパターンの温度プロファイルをコンピュータで、ユーザによる入力に基づいてシミュレーションするステップと;そして(c)繰り返しエミッタパターンが、所定の電流を流した状態で所望の温度プロファイルを有するかどうかについて判断するステップを含むことができ、所望の温度プロファイルを有していない場合、ステップ(a)〜(c)を繰り返す。
1つの実施形態では、本方法は:ウェブ横木部材寸法を、エミッタパターンに一致するように設定するステップと;そしてウェブ寸法を変化させて所望の温度プロファイルを取得するステップと、を含むことができる。これらの操作は、コンピュータを用いてユーザによるコンピュータへの入力に基づいて実行することができる。
1つの実施形態では、本方法は:ウェブ横木部材寸法を、エミッタパターンに一致するように設定するステップと;ウェブ寸法を変化させて所望の温度プロファイルとは異なる第1温度プロファイルを取得するステップと;そしてウェブ寸法を変化させた後に、横木部材幅寸法を変化させて所望の温度プロファイルを取得するステップと、を含むことができる。これらの操作は、コンピュータを用いてユーザによるコンピュータへの入力に基づいて実行することができる。
1つの実施形態では、本方法は:各横木部材幅寸法、各第1ギャップ部寸法、及び各第2ギャップ部寸法に対応するエミッタ寸法を設定するステップと;そして各ウェブ寸法を変化させて所望の温度プロファイルを取得するステップと、を含むことができる。これらの操作は、コンピュータを用いてユーザによるコンピュータへの入力に基づいて実行することができる。
1つの実施形態では、本方法は:所望の温度プロファイルに対応するシミュレーションによる温度プロファイルを取得するステップと;シミュレーションによる温度プロファイルを実現したエミッタパターンを有する物理的な電子エミッタを製造するステップと;物理的な電子エミッタを所定の電流を流して調査するステップと;そして物理的な電子エミッタの温度プロファイルを測定するステップと、を含むことができる。
1つの実施形態では、物理的な電子エミッタの温度プロファイルが所望の温度プロファイルに一致する場合、物理的な電子エミッタをx線管内に取り付ける。別の構成として、物理的な電子エミッタの温度プロファイルが所望の温度プロファイルに一致しない場合、本方法は(a)これらのエミッタ寸法のうちの1種類以上のエミッタ寸法を変更して、繰り返しエミッタ寸法を有する繰り返しエミッタパターンを取得するステップと;そして(b)所定の電流を流した状態の繰り返しエミッタパターンの温度プロファイルをコンピュータでシミュレーションするステップと;そして(c)繰り返しエミッタパターンが、所定の電流を流した状態で所望の温度プロファイルを有するかどうかについて判断するステップを更に含むことができ、所望の温度プロファイルを有していない場合、ステップ(a)〜(c)を繰り返す。変更及びシミュレーションは、ユーザによるコンピュータへの入力に基づいて行うことができる。
1つの実施形態では、本方法は:所望の温度プロファイルの複数の温度ポイントを取得して、温度ポイントのデータをコンピュータシステムにユーザにより入力するステップと;所定の電流を流した状態のエミッタパターンの温度プロファイルをコンピュータでシミュレーションして、シミュレーションによる温度プロファイルのシミュレーションによる複数の温度ポイントを取得するステップであって、取得するステップをユーザによるコンピュータへの入力に基づいて実行することができる、取得するステップと;複数の温度ポイントを、シミュレーションによる複数の温度ポイントと比較するステップと;そして複数の温度ポイントが、シミュレーションによる複数の温度ポイントに一致する場合に、エミッタパターンを選択するステップと、を含むことができる。
1つの実施形態では、電子エミッタを製造する方法は:板状の電子エミッタ材料を取得するステップと;電子エミッタパターンを取得するステップと;そして電子エミッタパターンをレーザ加工により電子エミッタ材料に転写することにより形成するステップと、を含むことができる。電子エミッタパターンは:平面内で第1エミッタ端部から第2エミッタ端部まで両端間に互いに接続されて平板パターンを形成する複数の長尺横木部材であって、各長尺横木部材が横木部材幅寸法を有する、複数の長尺横木部材と;複数のコーナー部であって、各長尺横木部材が別の長尺横木部材に、複数のコーナー部の1つのコーナー部を介して接続され、各コーナー部が、コーナー頂点部及び反対側のコーナー奥底部を、複数の長尺横木部材のうちの接続長尺横木部材と接続長尺横木部材との間に有する、複数のコーナー部と;複数の長尺横木部材のうちの隣接する非接続長尺横木部材と非接続長尺横木部材との間の第1ギャップであって、第1ギャップが、第1エミッタ端部から中間横木部材まで延在する、第1ギャップと;複数の長尺横木部材のうちの隣接する非接続長尺横木部材と非接続長尺横木部材との間の第2ギャップであって、第2ギャップが、第2エミッタ端部から中間横木部材まで延在し、第1ギャップが第2ギャップと交差しない、第2ギャップと;そしてコーナー頂点部とコーナー奥底部との間の複数のコーナー部のうちの1つ以上のコーナー部に位置する、またはコーナー奥底部に位置する1つ以上の切欠き部と、を含むことができる。1つの態様では、本方法は更に、電子エミッタパターンが、所定の電流を流した状態で所望の温度プロファイルを実現することができることを確認するステップを含むことができる。
この技術分野の当業者であれば、本明細書において開示されるこのプロセス、及び他のプロセス、及び方法では、プロセス及び方法において実行される種々の機能は異なる順序で実行してもよいことを理解できるであろう。更に、概説したステップ及び操作は、例としてのみ提供され、これらのステップ及び操作のうちの幾つかのステップ及び操作は、適用するかどうかは任意であり、本開示の実施形態の本質から逸脱しない範囲で、組み合わせてより少ないステップ及び操作とすることができる、または拡張してステップ及び操作を追加することができる。
本開示は、本出願に記載される特定の実施形態が種々の態様の例示と考えられるので限定的に解釈されるべきではない。多くの変形及び変更は、この技術分野の当業者には明らかなように、本開示の思想及び範囲から逸脱しない限り行うことができる。本明細書において列挙される方法及び装置の他に、本開示の範囲に含まれる機能的に等価な方法及び装置は、この技術分野の当業者であれば、これまでの説明から想到できるであろう。このような変形及び変更は、添付の請求項の範囲に含まれるものとする。本開示は、添付の請求項を、権利が与えられるこのような請求項の均等物の全範囲と併せて勘案することによってのみ限定されるものとする。本開示は、当然変わり得る特定の方法、試薬、化合物組成物、または生体システムに制限されないことを理解されたい。また、本明細書において記載される専門用語は、特定の実施形態について説明するために用いられるのであり、本開示を限定するために用いられるのではないことを理解されたい。
本明細書におけるほぼ全ての複数形及び/または単数形の使用に関して、この技術分野の当業者であれば、文脈及び/または用途に適するように、複数形から単数形に読み替える、かつ/または単数形から複数形に読み替えることができる。明瞭化のため、ここでは様々な単数形/複数形の置き換えを明示的に説明することがある。
この技術分野の当業者であれば、一般的に、本明細書、特に、添付の請求項(例えば、添付の請求項の本文)において使用される用語は普通、「オープンな」用語(例えば、「including(〜を含む)」という用語は、「including but not limited to(これに限定されないが〜を含む)」と解釈されるべきであり、「having(〜を有する)」という用語は、「having at least(〜を少なくとも有する)」と解釈されるべきであり、「includes(含む)」という用語は、「includes but is not limited to(これに限定されないが〜を含む)」と解釈されるべきであるなど)として用いられることを理解できるであろう。更に、この技術分野の当業者であれば、特定の数の項目を請求項で列挙しようとする場合、このような列挙は、請求項に明示的に記載されることになり、このような列挙が行われない場合は、このような列挙は、請求項には記載されないことを理解できるであろう。例えば、理解し易くするために、添付の請求項では、項目を請求項で列挙するために「at least one(少なくとも1つの)」及び「one or more(1つ以上の)」という導入句を使用することができる。しかしながら、このような語句の使用は、項目を請求項で不定冠詞「a」または「an」によって列挙することにより、請求項で列挙されるこのような項目を含むいずれの特定の請求項も、同じ請求項が導入句「one or more(1つ以上の)」または「at least one(少なくとも1つの)」、及び「a」または「an」のような不定冠詞を含んでいる場合でも、列挙される項目を1つしか含んでいない実施形態に限定されてしまうものと解釈されてはならない(例:「a」及び/または「an」は、「at least one(少なくとも1つの)」または「one or more(1つ以上の)」を意味するものと解釈されるべきである)。同じことが、項目を請求項で列挙するために使用される定冠詞の用法についても言える。また、特定の数の項目が請求項で明示的に列挙される場合でも、この技術分野の当業者であれば、このような列挙が、列挙される数以上の数を意味すると解釈されるべきであることを理解できるであろう(例えば、他に修飾語が付いていない単に「two recitations(2つの項目)」の列挙は、少なくとも2つの項目、または2つ以上の項目を意味する)。更に、「at least one of A, B, and C, etc.(A、B、及びCなどのうちの少なくとも1つ)」に類似した慣例句が使用される例では、一般的に、そのような並びの語句は、この技術分野の当業者が慣例句を理解している意味で用いられる(例えば、「a system having at least one of A, B, and C(A、B、及びCのうちの少なくとも1つを有するシステム)」は、これらには限定されないが、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを共に、A及びCを共に、B及びCを共に、かつ/またはA、B、及びCを全て有するシステムなどを含む)。「at least one of A, B, or C, etc.(A、B、またはCなどのうちの少なくとも1つ)」に類似した慣例句が使用される例では、一般的に、そのような並びの語句は、この技術分野の当業者が慣例句を理解している意味で用いられる(例えば、「a system having at least one of A, B, or C(A、B、またはCのうちの少なくとも1つを有するシステム)」は、これらには限定されないが、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを共に、A及びCを共に、B及びCを共に、かつ/またはA、B、及びCを全て有するシステムなどを含む)。更に、この技術分野の当業者であれば、2つ以上の選択項目があることを表すほぼ全ての離接語及び/または語句は、詳細な説明、請求項、または図面に含まれているかどうかに関係なく、これらの項目のうちの1つの項目(one of the terms)、いずれかの項目(either of the terms)、または両方の項目(both terms)を含んでいる可能性があると考えられることを理解すべきである。例えば、「A or B(AまたはB)」という語句は、「A」、「B」、または「A and B(A及びB)」である可能性を含んでいるものと理解されたい。
更に、本開示の特徴または態様がマーカッシュ形式で記載される場合、この技術分野の当業者であれば、本開示は従って、マーカッシュグループの種々構成要素のいずれかの個別構成要素、または種々構成要素からなるサブグループについても記載されることを理解できるであろう。
この技術分野の当業者であれば理解できることであるが、いずれの目的にも、及び全ての目的に、例えば記述の説明を行うという観点から、本明細書に開示される全範囲は、全範囲について考えられるあらゆる全ての細分範囲、及び全範囲の細分範囲の複合範囲も含む。列挙されるいずれの範囲も、同じ範囲を細分化して少なくとも均等な半分の範囲、三分の一の範囲、四分の一の範囲、五分の一の範囲、十分の一の範囲などとすることができることを十分詳細に記載し、かつ可能にしていることを容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書に説明される各範囲は、容易に細分化することにより、小さい値の三分の一の範囲、中間の値の三分の一の範囲、及び大きい値の三分の一の範囲などとすることができる。これも、この技術分野の当業者であれば理解できることであるが、「up to(最大で)」、「at least(少なくとも)」などの全ての表現は、列挙される数を含み、かつ上に説明されるように、続いて細分化して複数の細分範囲とすることができる範囲を指している。最後に、この技術分野の当業者であれば理解できることであるが、1つの範囲は各個々の構成範囲を含む。従って、例えば1〜3個のセルを有するグループとは、1個、2個、または3個のセルを有するグループを指している。同様に、1〜5個のセルを有するグループとは、1個、2個、3個、4個、または5個のセルを有するグループなどを指している。
III.電子ビーム収束及び2軸ビーム走査を2段の四極子を利用して行う磁気システムの例示的な実施形態
上に説明したように、特定の実施形態は電子ビーム操作用偏向器を含み、この電子ビーム操作用偏向器により、電子ビームを走査させる、かつ/または収束させることにより、陽極ターゲット上の収束スポットの位置及び/またはサイズ、及び形状を制御することができる。1つの実施形態では、この操作は、電子ビーム経路に配置される2段の磁場四極子として実現される磁気システムにより行われる。例えば、1つの実施形態では、2段の四極子を使用して、電子ビームの走査及び収束を同時に行う。この手法では、磁場の収束は、両方の段の四極子(陽極側の四極子、及び陰極側の四極子)で行われ、電子ビーム走査用磁場は、これらの四極子のうちの一方の段の四極子(例えば、陽極側の四極子)から発生する。別の構成として、磁場の走査は、一方の方向に一方の段の四極子で行うことができ、他方の方向に他方の段の四極子で行うことができる。このようにして、ビーム収束及び走査は、四極子のみを使用して同時に行うことができる。この特定の手法では、コイル−各運動方向に対応する2つのコイル−をコア/ヨークに追加することにより、例えば磁場二極子を形成してビームを走査させる必要を無くすことができる。
この状況では、図1A〜図1E、及び図2Aに示す実施形態に関連して(特に、磁気システム100を参照するに)、図7A及び図7Bを更に参照する。図7Aは、四極子(陰極側の磁場四極子103)として構成される陰極コア104の1つの実施形態を示しており、図7Bは、これもまた四極子(陽極側の磁場四極子103)として構成される陽極コア102の1つの実施形態を示している。前に説明したように、この実施例では、各コア部は、対向配置される4個の磁極突起114a,114b、及び116a,116bを陰極コア104に、そして4個の磁極突起122a,122b、及び124a,124bを陽極コア102に含む。各磁極突起は、参照番号106a,106b、及び108a,108bで図示される対応するコイルを陰極コア104に、そして参照番号112a,112b、及び110a,110bで図示される対応するコイルを陽極コア102に含む。略円形の形状を有するものとして図示されているが、コア(または、ヨーク)部102,104の各コア部は、正方形姿勢のような異なる形状を有するように構成することもできることを理解できるであろう。
2段の磁場四極子101,103はレンズとして作用し、かつ互いに平行に、電子ビーム12で画定される光軸に垂直に配置することができる。これらの四極子は一体となって、加速電子を偏向させて、所望の形状及びサイズの収束スポットを形成することができるように電子ビーム12を収束させる。各段の四極子レンズは、勾配を有する磁場を発生させ、この場合、磁場強度は磁場中で異なっている。勾配は、磁場四極子場によって、電子ビームが第1方向に収束し、かつ第1方向に垂直な第2方向にデフォーカスするような勾配である。2段の四極子は、これらの四極子のそれぞれの磁場勾配を、互いに対して約90°だけ回転させるように配置することができる。電子ビームがこれらの四極子を通過すると、電子ビームは、所望の割合の長さ対幅比を有する長尺スポットに収束する。従って、2段の四極子レンズの磁場は、光軸に対して、または光軸を通過する平面に対して対称性を有することができる。
四極子効果を発現させる他に、図示の実施形態では、これらの四極子うちの第1段の四極子は更に、二極子レンズ効果を発現させるように、かつ二極子コイルを追加する必要がないように構成される。この二極子効果は、以下に更に説明するように、オフセット電流を特定のコアの特定のコイルに所定の順序で選択的に供給することにより発現させることにより、二極子効果を四極子効果とともに発現させることができる。この二極子磁場効果を発現させることにより、好ましくは電子ビームの光軸に垂直な方向に配向する均一磁場が発生し、この均一磁場を使用して、電子を選択的に偏向させて、電子ビームを「走査する(steer)」ことができ、従って陽極ターゲット上の収束スポットの位置を走査することができる。
これらの図を参照し続けると、参照番号100で総称される2段の磁場四極子は、参照番号101で総称される陽極側の磁場四極子と、参照番号103で総称される陰極側の第2段の磁場四極子と、を含み、これらの磁場四極子は共に、前に説明したように、ほぼ陰極とターゲット陽極との間に配置され、かつネック部24aの周りに配置される。陽極側の四極子101は更に、二極子レンズ効果を発現させて、収束スポットがx/z方向に、すなわちX線装置の電子ビーム12に対応する光軸に垂直な平面内でシフトすることができるように構成される。例示的な実施形態では、陰極側の磁場四極子103は、収束スポットを収束スポットの長さ方向に収束させて、幅方向にデフォーカスさせる。次に、電子ビームを、次段の陽極側の磁場四極子101で幅方向に収束させて、長さ方向にデフォーカスさせる。連続して2段に配置される磁場四極子を組み合わせて、正味の収束効果が、収束スポットの両方向に確実に得られるようにする。更に、陽極側の磁場四極子101は二極子レンズ効果を発現させて、収束スポットをx/z方向にシフトさせることができる。
図7Aを参照し続けると、陰極側の磁場四極子103の上面図が図示されている。参照番号104で図示される円形コア部または円形ヨーク部が配設され、円形コア部または円形ヨーク部は、円形コア104の中心に向かって配設された4つの磁極突起114a,114b,116a,116bを含む。これらの磁極突起の各磁極突起には、参照番号106a、106b,108a,及び108bで図示されるコイルが配設される。例示的な実施形態では、コア104及びこれらの磁極突起は、鉄芯で形成される。更に、各コイルは、22番手の太さのマグネットワイヤを60回巻回して形成される;明らかなことであるが、他の構成が、特定の用途の要求に応じて適切な構成になる。
図7Aに更に図示されているように、図示の実施例は、所定の電流を4つのコイルに供給する『Focus Power Supply(収束電源)』175を含み、これらのコイルは、150,150a,150b,及び150cで模式的に図示されるように、電気的に直列に接続される。本実施形態では、供給される電流は略一定であり、電流が供給されると電流が、文字『I』及び対応する矢印で図示されるように、各コイル内を流れるようになり、今度は、参照番号160で模式的に図示される磁場が発生する。電流の大きさは、所望の収束効果を発現させる所望の磁場を発生するように選択される。
次に、図7Bを参照するに、図7Bは、参照番号101で図示される陽極側の磁場四極子の上面図の一例を示している。四極子103と同じように、参照番号102で図示される円形コア部または円形ヨーク部が配設され、円形コア部または円形ヨーク部は、この場合もまた円形コア102の中心に向かって配設された4つの磁極突起122a,122b,124a,124bを含む。これらの磁極突起の各磁極突起には、参照番号110a、110b,112a,及び112bで図示されるコイルが配設される。四極子103に関連して説明したように、四極子101のコア102及び突起は、低損失フェライト材料により構成されて、走査周波数により良好に応答する(以下に説明する)。これらのコイルには、同じ番手の太さのマグネットワイヤ、及び同じ巻回数比を適用することができ、マグネットワイヤ及び巻回数比は、所定の用途の要求に応じて変えることができる。
図7Bの例示的な実施形態に更に図示されているように、かつ四極子103とは異なり、陽極側の四極子101のコイル群の各コイルは、電流を供給して磁場をそれぞれのコイル内に発生させる別体の個別電源を含み、各電源は、参照番号180(電源A)、182(電源B)、184(電源C)、及び186(電源D)で図示されている。四極子磁場を発生させるために、一定の『Focus Current(収束電流)』が、各電源(181,183,184,186)に接続される模式的な電気回路で図示されているように、コイル群の各コイルに供給される。更に、『I』で表される電流の向きを指す矢印で図示されているように、陽極側の四極子101に流れる収束電流は、陰極側の四極子103に流れる収束電流とは反対向きに流れて、打ち消し磁場及び必要な収束効果を発現させる。
前に説明したように、四極子103は更に、二極子磁場効果を発現させて、二極子コイルを追加する必要がないように構成される。このためには、コイル群の各コイルに−上に説明した一定の収束電流の他に−Xオフセット電流及びYオフセット電流を供給する。これらのオフセット電流を流す時間長は、所定の周波数で変動させ、それぞれのオフセット電流の大きさは、所望の二極子磁場を実現すると次に、電子ビーム(及び、収束スポット)が結果的にシフトするように設計される。従って、各コイルは、一定の収束電流で個別に駆動され、二極子の変位が、所望の収束スポット走査周波数で、所望のXオフセット電流及びYオフセット電流を対応する二極子対に流すことにより発生して、磁場にオフセット成分が生ずる。これにより、磁場の中心を『x』方向または『y』方向に効果的に移動させることができ(例えば、代表的な効果を図示している図13B及び図13Cを参照)、これにより今度は、電子ビーム(及び、陽極ターゲット上の収束スポットの結果的な位置)が所定の『x』方向または『y』方向にシフトするようになる。
次に、図8を参照するに、図8は、図7A/図7Bの四極子システムの動作を制御する磁場制御システムの1つの実施形態を示す機能構成図を示している。高位では、図8の磁場制御システムは、四極子対101及び103に供給されるコイル電流に対して不可欠な制御を行って、(1)不可欠な四極子磁場を発生させることにより、収束スポットの所望の収束を行い;そして(2)不可欠な二極子磁場を発生させることにより、収束スポットの所望の位置決めを行う。上に説明したように、コイル電流に対する制御は、所望の走査周波数が得られるように行われる。
図8の実施形態はコマンド処理装置176を含み、このコマンド処理装置176は、マイクロプロセッサ、またはマイクロコントローラ、或いは同等の電子装置のような任意の適切なプログラマブル装置により実現することができる。コマンド処理装置176は、例えばこれらの個別電源(すなわち、個別電源は、対応するコイル動作電流を供給して、磁場を発生させる)の各電源の動作を、好適には、Command Inputs(コマンド入力)190の位置に図示されているパラメータのような、不揮発性メモリに格納されているパラメータに従って制御する。例えば、例示的な動作方法では、コマンド入力190に格納されている/定義されているパラメータは、収束スポットの収束及び走査に関連する以下のパラメータ群のうちの1つ以上のパラメータを含むことができる:Tube Current(X線管電流:ミリアンペア単位で表示される動作時のX線管電流の大きさを特定する数値);Focal Spot L/S(収束スポットL/S:『大』収束スポットサイズまたは『小』収束スポットサイズのような);Start/Stop Sync(開始/停止同期:収束を開始すべき時刻、及び収束を停止すべき時刻を指定する);Tube Voltage(X線管電圧:キロボルト単位で表示されるX線管動作電圧を指定する);Focal Spot Steering Pattern(収束スポット走査パターン:例えば、収束スポットの所定の走査パターンを示す数値);及びData System Synch(データシステム同期:x線ビームパターンを、対応する撮像システムと同期させるための)。
例示的な実施形態では、コマンド入力190は、ルックアップテーブル配列内の不可欠な値に対応する。収束電源175は、AC収束電流を、上に説明した陰極側の磁場四極子103のコイルに供給する。同様に、電源A(180)、電源B(182)、電源C(184)、及び電源D(186)は、収束電流を陽極側の磁場四極子101の対応コイルに、各コイルの収束コイル部宛てのAC信号により供給し、そしてDCオフセット電流を供給して二極子効果を発現させる。
従って、一例として、上に説明したように、収束スポットサイズが『small(小)』と指定されることにより、コマンド処理ユニット176が収束電源175を制御して、所定の大きさ(『小』収束スポットに対応する)を有する一定の収束電流を、陰極側の磁場四極子103のコイル群(106b,108a,106a,108b)の各コイルに供給するようになる。同様に、電源180(コイル110a)、電源182(コイル112b)、電源184(コイル110b)、及び電源186(コイル112a)の各電源を更に制御して、電源175から供給される電流の大きさと同じ大きさを有する一定の収束(AC)電流を、陽極側の磁場四極子101のコイル群の各コイルに供給する。この場合も同じように、これにより、四極子磁場から収束力が電子ビームに作用して、『small(小)』収束スポットが陽極ターゲット上に形成されるようになる(例えば、図13Aの磁場を参照)。
同様に、FS(収束スポット)走査パターンから、特定の収束スポット走査周波数、及び『x』方向または『y』方向の不可欠な変位を規定することができる。これにより、上に説明したように、コマンド処理ユニット176が電源180、182,184,及び186の各電源を制御して、所定の大きさの不可欠なXオフセットDC電流及びYオフセットDC電流を陽極側の磁場四極子101の対応コイルに供給することにより、ビーム(収束スポット)収束の他に、二極子により電子ビームの所望の走査を行う。
例示的な実施形態では、電源175,180,182,184,及び186の各電源は、高速スイッチング電源であり、これらの高速スイッチング電源は、電力を参照番号192で図示される主電源から受電する。Magnetic Control Status(磁場制御状態監視部)は、電源及びコイルの動作に関する状態情報を受信し、かつコマンド処理ユニット176及び/または外部監視制御装置(図示せず)によって監視することができる。
このようにして、図7A〜図7B、及び図8の実施形態では、電子ビーム収束及び2軸ビーム走査を2段の四極子で行う磁気システムが提供される。例示的な実施形態を示しているが、別の手法が想到されることを理解されたい。例えば、電子ビームの走査は、陽極側の磁場四極子101のコイル群によって全て発現される二極子効果を発現させることにより行われるが、陽極コア102及び陰極コア104を共に、フェライト材料から形成することができ、かつ走査をこれらのコアの間で「分割して」行って、各コアが二極子効果を、例えば『x』方向及び『y』方向に発現させることができることを理解できるであろう。他の変形例も想到される。
III.電子ビーム収束及び2軸ビーム走査を、磁極突起に共配置される2段の四極子、及び2つの二極子で行う磁気システムの例示的な実施形態
更に別の例示的な実施形態では、x線管の電子ビーム経路に配置される2段の磁場四極子、及び2つの二極子として実現される磁気システムが提供される。上に説明した実施形態と同様に、2段の磁場四極子は、電子ビーム経路を、ビーム経路に垂直な両方向に収束させるように構成される。しかしながら、二極子を、上に説明したように、四極子コイルを利用して作用させるのではなく、2つの二極子を共配置して(これらの四極子コアの一方の四極子コアに配置して)、ビームを、ビーム経路に垂直な両方向(『x』方向及び『y』方向)に走査させる。この場合も同じように、2段の四極子が四極子磁気レンズ(「doublet(ダブレット)」と表記される場合がある)を形成し、収束は、ビームが四極子レンズを通過すると行われる。走査が、コアのこれらの磁極突起のうちの1つの磁極突起に巻回されるコイルによって構成される2つの二極子で行われるのに対し、四極子コイル(同じ突起/磁極に巻回される)は、収束コイル電流を維持する。電子ビームの走査(及び、結果的に生じる収束スポットのシフト)は、適切なコイル対を励磁することにより行われ、かつ1軸方向に、または合成軸方向に行うことができる。1つの実施形態では、第1段の四極子を使用して第1方向の収束を行い、2つの二極子を有する第2段の四極子を使用して第2方向の収束を行うだけでなく、両方向の走査を行う。
次に、共に1つの例示的な実施形態を示している図9A及び図9Bを参照する。図9Aを参照するに、陰極側の磁場四極子103’の上面図が図示されている。本実施形態では、四極子は、図7Aの四極子と殆ど同じである。参照番号104で図示されている円形コア部または円形ヨーク部が配設され、円形コア部または円形ヨーク部は、円形コア104の中心に向かって配設された4つの磁極突起114a,114b,116a,116bを含む。これらの磁極突起の各磁極突起には、参照番号106a、106b,108a,及び108bで図示されるコイルが配設される。例示的な実施形態では、コア104及びこれらの磁極突起は、鉄芯で形成される。更に、各コイルは、22番手の太さのマグネットワイヤを60回巻回して形成される;明らかなことであるが、他の構成が、特定の用途の要求に応じて適切な構成となる。
図9Aに更に図示されているように、『Focus Power Supply 1(収束電源1)』275が、所定の電流を4つのコイルに供給し、これらのコイルは、参照番号250,250a,250b,及び250cで模式的に図示されるように、電気的に直列に接続される。本実施形態では、供給される電流は略一定であり、電流が供給されると電流が、文字『I』及び対応する矢印で図示されるように、各コイル内を流れるようになり、今度は、参照番号260で模式的に図示される磁場が発生する。電流(AC)の大きさは、所望の収束効果を発現させる所望の磁場を発生するように選択される。
次に、図9Bを参照するに、図9Bは、参照番号101’で図示されている陽極側の磁場四極子の上面図の一例を示している。四極子103’と同じように、参照番号102’で図示されている円形コア部または円形ヨーク部が配設され、円形コア部または円形ヨーク部は、この場合もまた円形コア102の中心に向かって配設された4つの磁極突起122a,122b,124a,124bを含む。これらの磁極突起の各磁極突起には、参照番号110a、110b,112a,及び112bで図示されている四極子コイルが配設される。更に、参照番号111a、111b,及び113a,113bで図示されているように、一対の二極子コイルが、これらの磁極突起の各磁極突起に共配置される。
図9Bの例示的な実施形態に更に図示されているように、四極子コイル110a、110b,112a,及び112bの各四極子コイルは、参照番号251,251a、251b,及び251cで模式的に図示されている所定の収束電流を供給する『Focus Power Supply1(収束電源1)』276に電気的に直列に接続される。四極子磁場を発生させるために、既に説明したように、一定の『Focus Current(収束電流)』が、これらの四極子コイルの各四極子コイルに供給される。
更に、陽極側の磁場四極子101’の二極子コイル111a、111b,及び113a,113bの各二極子コイルは、電流を供給して磁場をそれぞれのコイル内に発生させる別体の個別電源に接続される。これらの電源は、参照番号280(走査電源A)、282(走査電源B)、284(走査電源C)、及び286(走査電源D)で図示されており、各電源に接続される模式的な電気回路(281,283,285,287)で図示される通り、電気的に接続される。更に、電流が流れる方向を指す矢印『I』で図示されるように、陽極側の四極子101’に流れる収束電流は、陰極側の四極子103’に流れる収束電流とは反対向きに流れて、打ち消し磁場及び必要な収束作用を発生させる。
この場合、これらの二極子対は、二極子磁場効果を発現させるように構成され、そしてこれらの二極子コイルの各二極子コイルに給電することにより発現する不可欠な二極子効果は、Xオフセット電流及びYオフセット電流を流すことにより発現する。これらのオフセット電流の時間長は、所定の周波数で変動させ、それぞれのオフセット電流の大きさは、所望の二極子磁場を実現すると次に、電子ビーム(及び、収束スポット)が結果的にシフトするように設計される。従って、各コイルは、各コイルは個別に駆動され、これらの四極子コイルは一定の収束電流を流すことにより駆動され、そして二極子コイル対は、所望のXオフセット電流及びYオフセット電流を対応する二極子対に印加することにより、適切な電流を所望の収束スポット走査周波数で流すことにより駆動される。これにより、磁場の中心を『x』方向または『y』方向に効果的に移動させることができ(例えば、代表的な効果を図示している図13B及び図13Cを参照)、これにより今度は、電子ビーム(及び、陽極ターゲット上の収束スポットの結果的な位置)が所定の『x』方向または『y』方向にシフトするようになる。
次に、図10を参照するに、図10は、図9A/図9Bの四極子/二極子システムの動作を制御する磁場制御システムの1つの実施形態の機能構成図を示している。高位では、図10の磁場制御システムは、四極子コイル及び二極子コイルに供給されるコイル電流に対して不可欠な制御を実行して、(1)不可欠な四極子磁場を発生させることにより、収束スポットの所望の収束を行い;そして(2)不可欠な二極子磁場を発生させることにより、収束スポットの所望の位置を実現する。上に説明したように、コイル電流に対する制御は、所望の走査周波数が得られるように行われる。
図10の磁場制御システムに関連する機能処理は、図8の機能処理と殆どの点で同様であるが、収束電源1(275)及び2(276)の各収束電源が、不可欠な収束AC電流をこれらの四極子コイルに供給し、かつ走査電源A(280),B(282),C(284),及びD(286)が、所定の振幅の不可欠な走査AC電流をこれらの二極子コイルに供給して、所望の二極子磁場効果を発現させることにより、必要な電子ビームシフト(収束スポット移動)を実現することができる点が異なっている。
このようにして、図9A〜図9B、及び図10の実施形態では、電子ビーム収束及び2軸ビーム走査を、2段の四極子、及び2つの二極子で行う磁気システムが提供される。例示的な実施形態を示しているが、別の手法が想到されることを理解できるであろう。例えば、電子ビームの走査は、陽極側の磁場四極子101’に形成される2つの二極子によって全て発現される二極子効果を発現させることにより行われるが、陽極コア102’及び陰極コア104’を共に、フェライト材料から形成することができ、かつ走査をこれらのコアの間で“分割して”行って、各コアが、当該コア上に形成される二極子を有することにより、二極子磁場効果を、例えば1方向に発現させることを理解できるであろう。他の変形例も想到される。
次に、図11を参照するに、図11は、図8または図10に図示されている磁場制御機能を動作させる方法の一例を示している。ステップ302から開始して、ユーザは、メモリ190にコマンド入力として格納されている適切な動作パラメータを選択するか、または特定することができる。ステップ304では、これらの動作パラメータを、コマンド処理ユニット176を含むX線管制御ユニットに転送する。各動作パラメータに対応して、ステップ306では、コマンド処理ユニット176は、ルックアップテーブル/校正テーブルに対して、対応する値、例えば陰極四極子電流、陽極四極子電流、及び二極子磁場バイアス電流について問い合わせを行う。ステップ308では、コイルに、それぞれの電流値で通電して、ユーザに対して確認をとる。ステップ310では、ユーザが照射を開始して、x線撮像を開始する。終了時、ステップ312では、コマンドを転送することにより、コイルの通電を停止する。
本明細書において記載される電子ビーム走査の種々の実施形態は、調整可能なエミッタと一緒に使用することができるので有利であり、かつ各実施形態の特徴は互いに補完していることを理解できるであろう。しかしながら、また、−電子ビーム走査または平板エミッタのいずれの−種々の特徴も、一体的に使用する必要がなく、かつ別々の形態で適用することができ、機能させることができることを理解できるであろう。
これまでの説明から、本開示の種々の実施形態を本明細書において例示のために説明してきたのであり、本開示の範囲及び思想から逸脱しない限り、種々の変形が可能なことを理解できるであろう。従って、本明細書において開示される種々の実施形態は、本発明を限定するものではなく、真の範囲及び思想は、以下の特許請求の範囲によって示される。
本明細書において引用される全ての参考文献の全記載内容は、特定の引用をもって本明細書に組み込み記載されているものとする。