JP6557538B2 - 化合物半導体基板、半導体装置及び化合物半導体基板の製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、InSb層の厚さが薄くて移動度が高く、デバイス設計を容易にすることが可能な化合物半導体基板と、この化合物半導体基板を用いた半導体装置、及び、化合物半導体基板の製造方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明の一態様に係る化合物半導体基板は、基板と、前記基板上に形成されたInSb層と、を備え、前記InSb層の膜厚は10[nm]以上、600[nm]以下であり、前記InSb層のX線回折によるωスキャンロッキングカーブ測定から算出される半値幅FWHMは、下記式(1)で算出される範囲であり、前記InSb層のVan der Pauw法によるホール測定で算出される電気抵抗の面内異方性は1以上、1.3以下であることを特徴とする。
(t=InSb層の膜厚[nm])
本発明の一態様に係る半導体装置は、上記の化合物半導体基板と、前記化合物半導体基板に形成された素子と、を備え、前記InSb層は、前記素子の少なくとも一部として機能する活性層であることを特徴とする。
<化合物半導体基板>
本実施形態に係る化合物半導体基板は、基板と、基板上に形成されたInSb層とを備える。InSb層の膜厚は10[nm]以上、600[nm]以下である。InSb層のX線回折によるωスキャンロッキングカーブ測定から算出される半値幅FWHMは、下記式(1)で算出される範囲である。また、InSb層のVan der Pauw法によるホール測定で算出される電気抵抗の面内異方性は1以上1.3以下である。
370[arcsec]≦FWHM[arcsec]≦−300×ln(t)+1660[arcsec]・・・(1)
(t=InSb層の膜厚[nm])
これにより、結晶性が良好で、かつ薄く、面内の電気的な異方性が小さく、高移動度な化合物半導体基板が実現される。
また、本実施形態に係る化合物半導体基板において、InSb層は、第1のInSb層と、第1のInSb層上に形成された第2のInSb層と、を有してもよい。第2のInSb層は、第2のInSb層の厚さ方向に向かってIn単原子層とSb単原子層とが交互に繰り返し配置された構造を有してもよい。これにより、InSb結晶が一層から複数層ずつ成長し、膜厚が薄い場合にも結晶性の優れた第2のInSb層を実現することができる。なお、単原子層とは、原子1個の厚さで形成された層のことを意味する。
本実施形態に係る化合物半導体基板において、基板としては、InSb層を形成可能なものであれば特に制限されない。InSb層を各種電子デバイスに応用する際の絶縁性を確保する観点から、電気抵抗率が1×105Ωcm以上の基板であることが好ましい。基板は、結晶性が良好なInSb層を形成する観点から、InSbと同じ結晶対称性を有する基板であることが好ましく、さらに安価かつ大型の基板が入手しやすいことからGaAs、Si、InAsまたはGaSbのいずれか一つで構成される基板であることが好ましい。
本実施形態に係る化合物半導体基板において、InSb層は、膜厚が10nm以上、600nm以下である。このInSb層のX線回折によるωスキャンロッキングカーブ測定から算出される半値幅FWHMは、下記式(1)で算出される範囲である。また、このInSb層のVan der Pauw法によるホール測定で算出される電気抵抗の面内異方性は、1以上1.3以下である。
370≦FWHM[arcsec]≦−300×ln(t)+1660[arcsec]・・・(1)
(t=InSb層の膜厚[nm])
ここでいう半値幅FWHMとは、化合物半導体基板上のInSb層の主面に対し、X線回折によるωスキャンロッキングカーブを測定したとき、ピークトップ(すなわち、測定された回折強度のピーク値)から回折強度が半分になる角度幅のことである。
ここでいう面内異方性とは、Van der Pauw法によってInSbを電気測定したときに得られる値である。ある一定の電流を基板に対して基板平面上のある方向(X方向)と基板平面内でそれに垂直な方向(Y方向)とにそれぞれ印加し、それぞれの方向で電圧を測定する。そのようにして得られた電圧のうち、絶対値の大きい方の電圧を分子、絶対値の小さな方の電圧を分母としたときに、その両者の比を面内異方性と定義している。つまり面内異方性は、ここでは1以上の値として定義されている。
また本実施形態に係る化合物半導体基板において、InSb層は、原子間力顕微鏡(AFM)による測定(以下、AMF測定)から算出される表面二乗粗さが、0.2nm以上、1.5nm以下であってもよい。InSb層の表面二乗粗さが上述した範囲にあることで、光デバイスへの応用適合性が高まる。
ここでいう表面二乗粗さとは、原子間力顕微鏡(AFM)測定における表面観察から算出される値である。表面二乗粗さは、二乗平均粗さ(Rms)と同じ意味である。ここでAFM測定は、基板内の5μm×5μmのエリアで測定を行う。
また本実施形態の化合物半導体基板において、InSb層は、当該化合物半導体基板に形成される素子の少なくとも一部として機能する活性層であってもよい。結晶性の優れたInSb層を活性層として用いることで、高特性の半導体装置を得ることが可能となる。
本実施形態に係る化合物半導体基板において、バッファ層は、格子不整合を緩和する観点から、InSbであることが好ましい。バッファ層の膜厚に特に制限はないが、全体の膜厚を薄く保つという観点からは、5nm以上、30nm以下であることが好ましい。
[応用]
InSb化合物半導体層上にさらに複数の化合物半導体、保護膜または電極を形成することも可能である。この場合、化合物半導体として物質は特に制限されない。またドーピングに関しても特に制限はされない。
次に、本実施形態に係る化合物半導体基板の断面構造の具体例を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、各図は模式的なものであり、各層の厚さは現実のものとは異なり、各層の厚さの比率も現実のものとは異なる場合がある。具体的な厚さと寸法は、本実施形態や実施例の説明を参酌して判断すべきものである。
図1に示すように、本実施形態に係る化合物半導体基板は、基板1と、基板1上に形成されたInSb層10とを備える。また、InSb層10は、第1のInSb層11と、第1のInSb層11上に形成された第2のInSb層12とを備える。InSb層10の膜厚は10[nm]以上、600[nm]以下である。InSb層10のX線回折によるωスキャンロッキングカーブ測定から算出される半値幅FWHMは、上述の式(1)で算出される範囲である。また、InSb層10のVan der Pauw法によるホール測定で算出される電気抵抗の面内異方性は1以上1.3以下である。
図3は、第2のInSb層12の構成例を示す断面図である。図3に示すように、第2のInSb層12は、例えば、In単原子層12aとSb単原子層12bとが交互に繰り返し成長した構造を有する。
次に、本実施形態の化合物半導体層の製造方法について説明する。
本実施形態に係る化合物半導体基板の製造方法は、電気抵抗率が1×105Ωcm以上の基板を用意する工程と、基板の温度を260℃以上、360℃以下に保持した状態で、有機金属気相成長法を用いて基板上にIn原料とSb原料とを供給して第1のInSb層を成長させる工程と、基板の温度を260℃以上、360℃以下に保持した状態で、有機金属気相成長法を用いて第1のInSb層上にIn原料とSb原料とを交互に供給して第2のInSb層を成長させる工程と、を備える。
また、第2のInSb層を成長させる工程では、In原料の供給時間を1秒/回以上、12秒/回以下とし、Sb原料の供給時間を1秒/回以上、1.5秒/回以下としてもよい。
有機金属気相成長(MOCVD)装置を用いて、電気抵抗率が1×105Ωcm以上の基板の温度(以下、基板温度)を260℃以上、360℃以下に保持した状態で、この基板上にIn原料とSb原料とを供給して第1のInSb層を成長させる。ここで基板温度とは、パイロメーターによって測定した化合物半導体基板表面の温度である。
In原料およびSb原料の各供給量を3×10−7mol/回より小さくすると、マスフローコントローラー(MFC)による供給量の制御が困難になる。また、In原料及びSb原料の各供給量をそれぞれ1.5×10−5mol/回および6×10−6mol/回より大きくすると、InおよびSbのドロップレットが発生し、白濁膜となり、結晶性および表面粗さが悪化する。第2のInSb層を成長させる際に、In原料の供給時間は1秒/回以上、12秒/回以下、Sb原料の供給時間は1秒/回以上、1.5秒/回以下であってもよい。
In原料およびSb原料の供給時間を1秒より小さくすると、エアバルブの開閉制御が困難になる。またInまたはSbの供給時間をそれぞれ12秒または1.5秒より大きくするとInおよびSbのドロップレットが発生し、白濁膜となり、結晶性および表面粗さが悪化する。
また、本実施形態に係る化合物半導体基板を用いて半導体装置を作製してもよく、その場合は、化合物半導体基板のInSb層を活性層としてもよい。InSb層を活性層とする半導体装置の具体例としては、磁気センサやホール素子や赤外線センサ素子等が挙げられる。いずれも公知の方法を用いて作製することが可能である。結晶性が良好で、かつ薄く、面内の電気的な異方性が小さく、高移動度な化合物半導体基板を用いているため、高特性の半導体装置を得ることが可能である。
図4は、本実施形態に係る半導体装置200の構成例を示す断面図である。
図4に示すように、この半導体装置200は、化合物半導体基板100と、この化合物半導体基板100に形成された素子150とを備える。素子150は、例えばホール素子であり、その上面側に複数の電極151を有する。化合物半導体基板100が有するInSb層10は、この素子150の少なくとも一部として機能する活性層(例えば、感磁層)である。
本実施形態によれば、InSb層10は厚さが薄いため、InSb層10の電気抵抗を低くすることができ、低消費電力化が可能である。また、InSb層10は、結晶性が良好であるため移動度が高い。さらに、InSb層10は電気的な異方性が小さいため、InSb層10の少なくとも一部が活性層として機能する素子の形状を変えて、面内の異方性を小さくする必要がない。このため、デバイス設計が容易である。
[実施例1]
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×107Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を340℃に保ちながらInSbの原料としてトリメチルインジウム(TMIn)、トリスジメチルアミノアンチモン(TDMASb)を用いて、第1のInSb層を形成した。TMInはIn原料であり、TDMASbはSb原料である。この第1のInSb層の形成には、MOCVD装置を用いた。この第1のInSb層の膜厚は、蛍光X線分析装置(XRF)による測定(以下、XRF測定)によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から20nmであった。
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、交互供給回数を215回にした以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は49nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、2350cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.3の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、520arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.8nmであった。
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、TMInの供給量は0.40×10−6mol/回、1回あたりの供給時間は10秒とした、またTDMASbの供給量は0.40×10−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。この交互供給を1160サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は58nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、2100cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.3の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、570arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.8nmであった。
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、TMInの供給量は4.05×10−6mol/回、供給時間は5秒とした、またTDMASbの供給量は2.95×10−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。この交互供給を445サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は138nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、6300cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.2の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、495arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.6nmであった。
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、TMInの供給量は11.60×10−6mol/回、1回あたりの供給時間は10秒とした、またTDMASbの供給量は5.68×10−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。この交互供給を392サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は290nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、17000cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.2の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、530arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.5nmであった。
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、交互供給回数を500回にした以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は116nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、5100cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.3の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、510arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.6nmであった。
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、交互供給回数を1650回にした以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は380nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、26500cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.1の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、490arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.4nmであった。
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、交互供給回数を2520回にした以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は580nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、36000cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.0の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、420arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.4nmであった。
第2のInSb層を形成する際に表面温度を300℃にし、交互供給回数を490回にした以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は98nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、3700cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.2の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、530arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.8nmであった。
第2のInSb層を形成する際に表面温度を300℃にし、TMInの供給量は0.81×10−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした、またTDMASbの供給量は0.82×10−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。この交互供給を930サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は56nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、2200cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.2の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、570arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが1.0nmであった。
第2のInSb層を形成する際に表面温度を300℃にし、TMInの供給量は11.60×10−6mol/回、1回あたりの供給時間は10秒とした、またTDMASbの供給量は5.68×10−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。この交互供給を220サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は77nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、2400cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.2の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、495arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.8nmであった。
第2のInSb層を形成する際に表面温度を300℃にし、TMInの供給量は8.10×10−6mol/回、1回あたりの供給時間は10秒とした、またTDMASbの供給量は4.16×10−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。この交互供給を382サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は111nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、3700cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.1の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、550arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.7nmであった。
第2のInSb層を形成する際に表面温度を260℃にし、交互供給回数を1080回にした以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は54nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、2400cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.1の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、500arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.8nmであった。
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×107Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を340℃に保ちながらInSbの原料としてトリメチルインジウム(TMIn)、トリスジメチルアミノアンチモン(TDMASb)を用いて、第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MOCVD装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が20nmであった。
試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、1330cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.3の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、850arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが3.4nmであった。
第2のInSb層を形成する際に表面温度を240℃にし、交互供給回数を1200回にした以外は比較例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定を実施したが、InSbの膜厚は測定できず、膜が成長しなかった。
[比較例3]
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、TMInの供給量は7.41×10−6mol/回、1回あたりの供給時間は40秒とした、またTDMASbの供給量は2.95×10−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。この交互供給を150サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。このようにして形成された試料は完全に白濁しており、各種測定の実施が困難であった。AFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが20.5nmであった。
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、TMInの供給量は11.6×10−6mol/回、1回あたりの供給時間は10秒とした、またTDMASbの供給量は2.95×10−6mol/回、1回あたりの供給時間は2秒とした。この交互供給を180サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。このようにして形成された試料は完全に白濁しており、各種測定の実施が困難であった。AFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが50.4nmであった。
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、TMInの供給量は13.00×10−6mol/回、1回あたりの供給時間は3秒とした、またTDMASbの供給量は2.95×10−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。この交互供給を230サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。このようにして形成された試料は完全に白濁しており、各種測定の実施が困難であった。AFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが34.3nmであった。
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、TMInの供給量は2.43×10−6mol/回、1回あたりの供給時間は10秒とした、またTDMASbの供給量は9.00×10−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。この交互供給を215サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。このようにして形成された試料は完全に白濁しており、各種測定の実施が困難であった。AFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが44.1nmであった。
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×107Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を340℃に保ちながらInSbの原料としてトリメチルインジウム(TMIn)、トリスジメチルアミノアンチモン(TDMASb)を用いて、第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MOCVD装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が125nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、8400cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.2の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、940arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが8.5nmであった。
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×107Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を340℃に保ちながらInSbの原料としてトリメチルインジウム(TMIn)、トリスジメチルアミノアンチモン(TDMASb)を用いて、第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MOCVD装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が232nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、11600cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.3の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、730arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが6.9nmであった。
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×107Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を340℃に保ちながらInSbの原料としてトリメチルインジウム(TMIn)、トリスジメチルアミノアンチモン(TDMASb)を用いて、第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MOCVD装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が318nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、18500cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.3の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ640arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが6.5nmであった。
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×107Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を340℃に保ちながらInSbの原料としてトリメチルインジウム(TMIn)、トリスジメチルアミノアンチモン(TDMASb)を用いて、第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MOCVD装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が20nmであった。
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×107Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を350℃に保ちながら第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MBE装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が34nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、1200cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.2の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ1500arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.6nmであった。
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×107Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を350℃に保ちながら第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MBE装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が58nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、2100cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.1の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ1300arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.5nmであった。
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×107Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を350℃に保ちながら第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MBE装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が115nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、4700cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.1の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ1040arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.6nmであった。
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×107Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を350℃に保ちながら第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MBE装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が234nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、12350cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.0の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ840arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.6nmであった。
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×107Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を350℃に保ちながら第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MBE装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が466nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、29600cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.0の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ590arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.6nmであった。
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×107Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を350℃に保ちながら第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MBE装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が702nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、41150cm2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.0の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ440arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.6nmであった。
図5からわかるように、実施例1〜13におけるInSb層の膜厚と結晶性(FWHM)との関係は、上述の式(1)を満たしている。
本発明は、以上に記載した実施形態と実施例に限定されるものではない。当業者の知識に基づいて実施形態と実施例に設計の変更等を加えることが可能であり、そのような変更等を加えた態様も本発明に含まれる。
5 バッファ層
10 InSb層
11 第1のInSb層
12 第2のInSb層
12a In単原子層
12b Sb単原子層
100 化合物半導体基板
150 素子
151 電極
200 半導体装置
Claims (7)
- GaAs、Si、InAsまたはGaSbのいずれか一つで構成される基板と、
前記基板上に形成されたInSb層と、を備え、
前記InSb層は、
第1のInSb層と、
前記第1のInSb層上に形成された第2のInSb層と、を有し、
前記第2のInSb層は、前記第2のInSb層の厚さ方向に向かってIn単原子層とSb単原子層とが交互に繰り返し配置された構造を有し、
前記InSb層の膜厚は49[nm]以上、580[nm]以下であり、
前記InSb層のX線回折によるωスキャンロッキングカーブ測定から算出される半値幅FWHMは、下記式(1)で算出される範囲であり、
前記InSb層のVan der Pauw法によるホール測定で算出される電気抵抗の面内異方性は1以上、1.3以下である化合物半導体基板。
370[arcsec]≦FWHM[arcsec]≦−300×ln(t)+1660[arcsec]・・・(1)
(t=InSb層の膜厚[nm]) - 前記InSb層のAFM測定から算出される表面二乗粗さが、0.2nm以上、1.5nm以下である請求項1に記載の化合物半導体基板。
- 前記基板と前記InSb層との間に、前記基板と前記InSb層との格子不整合を緩和するバッファ層をさらに備える請求項1または請求項2に記載の化合物半導体基板。
- 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の化合物半導体基板と、
前記化合物半導体基板に形成された素子と、を備え、
前記InSb層は、前記素子の少なくとも一部として機能する活性層である半導体装置。 - GaAs、Si、InAsまたはGaSbのいずれか一つで構成され、電気抵抗率が1×105Ωcm以上の基板を用意する工程と、
前記基板の温度を260℃以上、360℃以下に保持した状態で、有機金属気相成長法を用いて前記基板上にIn原料とSb原料とを供給して第1のInSb層を成長させる工程と、
前記基板の温度を260℃以上、360℃以下に保持した状態で、有機金属気相成長法を用いて前記第1のInSb層上にIn原料とSb原料とを交互に供給して、厚さ方向に向かってIn単原子層とSb単原子層とが交互に繰り返し配置された構造を有する第2のInSb層を成長させる工程と、を備える化合物半導体基板の製造方法。 - 前記第2のInSb層を成長させる工程では、
In原料の供給量を3×10−7mol/回以上、1.5×10−5mol/回以下とし、
Sb原料の供給量を3×10−7mol/回以上、6×10−6mol/回以下とする請求項5に記載の化合物半導体基板の製造方法。 - 前記第2のInSb層を成長させる工程では、
In原料の供給時間を1秒/回以上、12秒/回以下とし、
Sb原料の供給時間を1秒/回以上、1.5秒/回以下とする請求項5または請求項6に記載の化合物半導体基板の製造方法。
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