JP6547544B2 - 鋼製セル - Google Patents

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Description

本発明は、複数の鋼製部材を周方向に連設させた鋼製セルに関する。
従来から、海底等に打ち込まれて大規模な壁体を形成することで、各種港湾構造物等が構築されるものとして、例えば、複数の直線鋼矢板が円形状に連設される鋼矢板セル工法、又は、複数の鋼板が円形状に連設される鋼板セル工法が提案されている。
鋼矢板セル工法又は鋼板セル工法では、特に、空港等に隣接して空頭制限が厳しく設定された工事現場や輸送部材長の制約が厳しい工事現場等において、各々の直線鋼矢板又は鋼板の長さ寸法に制約が課されることから、各々の直線鋼矢板又は鋼板を材軸方向に連結しながら打ち込むことが必要となる。
このため、材軸方向に連結された各々の直線鋼矢板又は鋼板を円形状に連設するものとして、特許文献1に開示される鋼板等の連結構造体が提案されている。ここで、特許文献1に開示される鋼板等の連結構造体は、複数の直線鋼矢板又は鋼板が材軸方向及び周方向に隣接させて互いに接合されることで、略管状に組み立てられた管状部が形成される。
特開2013−163906号公報
特許文献1に開示される鋼板等の連結構造体は、複数の直線鋼矢板又は鋼板が材軸方向に接合されて縦継接合部が形成されるとともに、材軸方向に接合された複数の直線鋼矢板又は鋼板が周方向に接合される。そして、特許文献1に開示される鋼板等の連結構造体は、複数の直線鋼矢板又は鋼板の縦継接合部が、管状部の周方向で略千鳥状に配置される。
このため、特許文献1に開示される鋼板等の連結構造体は、複数の直線鋼矢板又は鋼板の縦継接合部が周方向で略千鳥状に配置されることで、管状部の所定の水平断面に多数の縦継接合部が断続的に形成されるものとなる。このとき、特許文献1に開示される鋼板等の連結構造体は、複数の直線鋼矢板又は鋼板の縦継接合部に溶接欠陥等が発生した場合に、各々の直線鋼矢板又は鋼板に伝達される曲げモーメントが過大となるおそれがあった。
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであって、その目的とするところは、鋼製部材に伝達される曲げモーメントの集中を軽減することで、鋼製セル全体の健全性を確保することのできる鋼製セルを提供することにある。
第1発明に係る鋼製セルは、複数の鋼製部材を周方向に連設させた鋼製セルであって、材軸方向に連結するための縦継部が各々に形成された5枚以上の鋼製部材を備え、前記鋼製部材は、周方向で所定の箇所に連続して設けられる少なくとも5枚の前記鋼製部材で、各々の前記縦継部が周方向の時計回り又は反時計回りで材軸方向の位置を段階的に高くして配置されることを特徴とする。
発明に係る鋼製セルは、第1発明において、前記鋼製部材は、材軸方向の1箇所にのみ前記縦継部が形成されることを特徴とする。
発明に係る鋼製セルは、第1発明又は第2発明において、前記鋼製部材は、材軸方向で長さ寸法を3等分したうちの中央側の1/3となる範囲にのみ前記縦継部が配置されることを特徴とする。
第1発明〜第発明によれば、鋼製部材の所定の材軸方向の位置に形成された応力集中領域に対して、周方向で一方側に隣り合って配置された鋼製部材からは曲げモーメントが伝達されるものの、他方側に隣り合って配置された鋼製部材からは曲げモーメントが伝達されないため、各々の鋼製部材に形成された応力集中領域に伝達される曲げモーメントの集中を軽減することができる。
第1発明〜第発明によれば、周方向に隣り合った鋼製部材が接合部で緊密な接合状態となるにもかかわらず、鋼製部材の縦継部に溶接欠陥が発生した場合であっても、各々の鋼製部材に形成された応力集中領域に伝達される曲げモーメントの集中を軽減することで、鋼製部材の平板部が曲げモーメントの集中により降伏・座屈等することを防止して、鋼製セル全体の健全性を確保することが可能となる。
第1発明〜第3発明によれば、周方向で所定の箇所に連続して設けられる少なくとも5枚の鋼製部材で、各々の縦継部が周方向の時計回り又は反時計回りで材軸方向の位置を段階的に高くして配置されるため、複数の鋼製部材を周方向で順次連設するときに、各々の縦継部での材軸方向の位置の管理が容易となることで、複数の鋼製部材の連設作業の施工性を向上させることが可能となる。
特に、第発明によれば、鋼製セルの周方向に連設される全ての鋼製部材で、各々の鋼製部材の材軸方向の1箇所にのみ縦継部が形成されて、鋼製部材1枚あたりの縦継部数を最大でも1箇所とすることで、応力集中領域そのものを低減することが可能となる。
特に、第発明によれば、各々の鋼製部材の材軸方向の両端側を除いて、中央側の1/3となる範囲にのみ縦継部が配置されて、長さ寸法の1/3〜2/3の範囲でのみ短尺の鋼製部材を用意して、これらの短尺の鋼製部材を材軸方向に連結させて長尺の鋼製部材とすることができるため、短尺の鋼製部材の長さ寸法のバラツキを低減させて、製造可能長さの制約、輸送部材長の制約の影響を低減することが可能となる。
本発明を適用した鋼製セルにより構築される壁体を示す斜視図である。 (a)は、本発明を適用した鋼製セルを示す平面図であり、(b)は、その正面図である。 (a)は、本発明を適用した鋼製セルで中詰が充填された状態を示す平面図であり、(b)は、その中詰から内圧が作用した状態を示す平面図である。 本発明を適用した鋼製セルで直線鋼矢板が用いられた鋼製部材を示す斜視図である。 (a)は、本発明を適用した鋼製セルで直線鋼矢板が用いられた鋼製部材を示す平面図であり、(b)は、その正面図である。 本発明を適用した鋼製セルで鋼板が用いられた鋼製部材を示す斜視図である。 (a)は、本発明を適用した鋼製セルで鋼板が用いられた鋼製部材を示す平面図であり、(b)は、その正面図である。 本発明を適用した鋼製セルで材軸方向の中央側の1箇所にのみ縦継部が配置された鋼製部材を示す正面図である。 (a)は、本発明を適用した鋼製セルで時計回りに縦継部が配置された鋼製部材を示す斜視図であり、(b)は、その反時計回りに縦継部が配置された鋼製部材を示す斜視図である。 (a)は、本発明を適用した鋼製セルで緊密な接合状態となる直線鋼矢板の接合部を示す平面図であり、(b)は、その緊密な接合状態となる鋼板の接合部を示す平面図である。 (a)は、本発明を適用した鋼製セルで曲げモーメントが伝達される鋼製部材を示す正面図であり、(b)は、その溶接欠陥が発生した場合での曲げモーメントの伝達を示す正面図である。 (a)は、従来の鋼板等の連結構造体で曲げモーメントが伝達される長尺鋼板を示す正面図であり、(b)は、その溶接欠陥が発生した場合での曲げモーメントの伝達を示す正面図である。 本発明を適用した鋼製セルの全周で断続的に配置された鋼製部材の縦継部を示す展開正面図である。
以下、本発明を適用した鋼製セル1を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明を適用した鋼製セル1は、図1に示すように、例えば、1又は複数の鋼製セル1を海底等に打ち込んで大規模な壁体8を構築するものである。本発明を適用した鋼製セル1は、主に、護岸、岸壁等の港湾構造物等として、壁体8を構築するために用いられる。
本発明を適用した鋼製セル1は、図2に示すように、例えば、略円筒形状に形成されたものが用いられる。本発明を適用した鋼製セル1は、海底地盤80等に根入れした状態で設けられて、又は、海底地盤80等の上面に載置した状態で設けられる。
本発明を適用した鋼製セル1は、図2(a)に示すように、平面方向で略円形状の側壁11が形成されて、例えば、略円形状の内径Dを10m〜30m程度として、また、板厚tを8mm〜17mm程度とする。さらに、本発明を適用した鋼製セル1は、図2(b)に示すように、例えば、材軸方向Yで側壁11の高さ寸法Hを5m〜25m程度とする。
本発明を適用した鋼製セル1は、略円筒形状に側壁11が形成されることで、略中空状の内空部10が形成される。本発明を適用した鋼製セル1は、図3に示すように、砂等の中詰12が内空部10に充填されて、必要に応じて、コンクリートの蓋等が設けられる。
ここで、本発明を適用した鋼製セル1は、図3(a)に示すように、砂等の中詰12が内空部10に充填されて、略円筒形状に形成された側壁11で、中詰12が自立するように保持される。本発明を適用した鋼製セル1は、内空部10に中詰12が充填されることで、図3(b)に示すように、側壁11が中詰12から内圧Nを受けるものとなる。
本発明を適用した鋼製セル1は、側壁11の周方向Wの各位置で、平面方向で側壁11と略直交する方向に内圧Nが作用する。このとき、本発明を適用した鋼製セル1は、側壁11が中詰12から受ける内圧Nが、平面方向で側壁11の接線方向に向けた引張力Tとして作用するものとなり、側壁11が周方向Wに膨張変形しようとするものとなる。
本発明を適用した鋼製セル1は、図4に示すように、複数の直線鋼矢板4等の鋼製部材2を周方向Wに連設させて形成される。本発明を適用した鋼製セル1は、港湾構造物等の規模に応じて、例えば、50枚〜200枚程度の鋼製部材2が周方向Wに連設される。
本発明を適用した鋼製セル1は、複数の鋼製部材2を周方向Wに連続させて略円形状に配列することで、略円筒形状に形成される。本発明を適用した鋼製セル1は、周方向Wに隣り合った複数の鋼製部材2を互いに接合することで、複数の鋼製部材2が連設される。
ここで、本発明を適用した鋼製セル1は、特に、空頭制限が厳しく設定された工事現場等において、各々の鋼製部材2の材軸方向Yの長さ寸法Lに制約が課されるため、各々の鋼製部材2を短尺の状態から材軸方向Yに連結して長尺の状態とすることが必要となる。
このとき、本発明を適用した鋼製セル1は、各々の鋼製部材2を材軸方向Yに連結して長尺の状態とするために、短尺の状態の鋼製部材2を材軸方向Yに連結するための縦継部3が、各々の鋼製部材2の材軸方向Yの所定の位置に形成される。
本発明を適用した鋼製セル1は、略円筒形状の側壁11を形成するものとして周方向Wに連設される5枚以上の鋼製部材2を備えるものであり、5枚以上の鋼製部材2の各々に材軸方向Yに連結するための縦継部3が形成される。
鋼製部材2は、図5に示すように、直線鋼矢板4が用いられて、幅方向Xで略直線状に延びる平板部20と、平板部20の幅方向Xの両側端に設けられた一対の接合部21とを有する。鋼製部材2は、所定の板厚tとなるように平板部20が形成される。
直線鋼矢板4は、図5(a)に示すように、略平板状に形成されたウェブ部を平板部20として、ウェブ部の両側端で断面略C形状に形成された継手部を接合部21とする。直線鋼矢板4は、幅方向Xに隣り合った複数の直線鋼矢板4を互いに反転させて継手部を嵌合させることで、複数の鋼製部材2が接合部21で互いに接合される。
直線鋼矢板4は、図5(b)に示すように、材軸方向Yに連結して長尺の状態となったときに、材軸方向Yの長さ寸法Lが5m〜25m程度となる。直線鋼矢板4は、材軸方向Yで上側の短尺の直線鋼矢板4と下側の短尺の直線鋼矢板4とが、溶接接合等により互いの平板部20で連結されることで、材軸方向Yの所定の位置に縦継部3が形成される。
鋼製部材2は、図6に示すように、略矩形状等に形成された鋼板5が用いられてもよい。鋼板5は、図7(a)に示すように、略平板状に形成された平板部20と、平板部20の両側端に設けられた一対の接合部21とを有して、幅方向Xに隣り合った複数の鋼板5を互いの接合部21で溶接接合等させることで、複数の鋼製部材2が互いに接合される。
鋼板5は、図7(b)に示すように、材軸方向Yに連結して長尺の状態となったときに、材軸方向Yの長さ寸法Lが5m〜20m程度となる。鋼板5は、材軸方向Yで上側の短尺の鋼板5と下側の短尺の鋼板5とが、溶接接合等により互いの平板部20で連結されることで、材軸方向Yの所定の位置に縦継部3が形成される。
ここで、鋼製部材2は、図8に示すように、鋼製セル1の周方向Wに連続して5枚以上連設されて、周方向Wで所定の箇所に連続して少なくとも5枚の鋼製部材2が設けられる。鋼製部材2は、特に、鋼製セル1の周方向Wに連設される全ての鋼製部材2で、各々の鋼製部材2の材軸方向Yの1箇所にのみ縦継部3が形成される。
鋼製部材2は、各々の長さ寸法Lを3等分程度に分割したとすると、材軸方向Yの上側1/3程度及び下側1/3程度の範囲が両端側E、材軸方向Yの中央を含む1/3程度の範囲が中央側Cとなる。鋼製部材2は、材軸方向Yの両端側Eを除いて、材軸方向Yで長さ寸法Lを3等分したうちの中央側Cの1/3となる範囲にのみ縦継部3が配置される。
鋼製部材2は、鋼製セル1の周方向Wに連続して5枚以上連設されて、周方向Wで所定の箇所に連続して設けられる少なくとも5枚の鋼製部材2で、各々の縦継部3が材軸方向Yの位置を全て異ならせて配置される。鋼製部材2は、周方向Wで所定の箇所に連続して設けられる少なくとも5枚の鋼製部材2で、特に、材軸方向Yで中央側Cの1/3となる範囲にのみ、各々の縦継部3が材軸方向Yの位置を全て異ならせて配置されてもよい。
鋼製部材2は、周方向Wで所定の箇所に連続して設けられる少なくとも5枚の鋼製部材2で、周方向Wで互いに隣り合った各々の縦継部3が、材軸方向Yの位置を段階的に高くして階段状に配置される。鋼製部材2は、周方向Wに連続して設けられる複数の鋼製部材2で、周方向Wで互いに隣り合った各々の縦継部3が、例えば、材軸方向Yで0.5m〜3m程度の離間距離Fで、材軸方向Yの位置を互いに異ならせて配置される。
鋼製部材2は、図9に示すように、周方向Wに連続して設けられる複数の鋼製部材2で、周方向Wに隣り合った複数の縦継部3が段階的に高い位置に配置されて、複数の縦継部3が略螺旋状に配置されるものとなる。鋼製部材2は、図9(a)に示すように、周方向Wの時計回りとなる略螺旋状に、又は、図9(b)に示すように、周方向Wの反時計回りとなる略螺旋状に、複数の縦継部3が材軸方向Yの位置を段階的に高くして配置される。
鋼製部材2は、鋼製セル1の全周に亘って、周方向Wの時計回り又は反時計回りとなる略螺旋状で連続的に縦継部3が配置される。鋼製部材2は、これに限らず、鋼製セル1の周方向Wで半周等の部分的な箇所でのみ、周方向Wの時計回り又は反時計回りで縦継部3が配置されてもよい。鋼製部材2は、例えば、周方向Wの時計回りと反時計回りとを組み合わせて縦継部3が配置されてもよく、また、縦継部3が略螺旋状で連続的に配置されることなく、周方向Wの時計回り又は反時計回りで縦継部3が断続的に配置されてもよい。
本発明を適用した鋼製セル1は、図3(b)に示すように、側壁11が中詰12から内圧Nを受けることで、図10に示すように、平面方向で側壁11の接線方向に向けた引張力Tがフープテンションとして作用する。このとき、本発明を適用した鋼製セル1は、幅方向Xに隣り合った複数の直線鋼矢板4又は鋼板5が、互いの接合部21で接合された状態で、幅方向Xで互いに離間する方向に引っ張られるものとなる。
直線鋼矢板4は、特に、図10(a)に示すように、幅方向Xに隣り合った複数の直線鋼矢板4が、互いの継手部を嵌合させたままの状態で、幅方向Xで互いに離間する方向に引っ張られることで、鋼製部材2の接合部21が緊密な接合状態となる。また、鋼板5も、図10(b)に示すように、幅方向Xに隣り合った複数の鋼板5が、互いの接合部21で溶接接合により頑強に接合されて、鋼製部材2の接合部21が緊密な接合状態となる。
また、本発明を適用した鋼製セル1は、主に、水平方向の引張力Tにより安定を保つが、荷重条件によっては、図11に示すように、材軸方向Yの上側から下側まで、各々の鋼製部材2に曲げモーメントMが伝達される。このとき、本発明を適用した鋼製セル1は、各々の鋼製部材2の縦継部3の上側から下側まで、周方向Wで互いに隣り合った鋼製部材2を経由しながら、曲げモーメントMが材軸方向Yに伝達されるものとなる。
本発明を適用した鋼製セル1は、図11(a)に示すように、各々の鋼製部材2が溶接接合等により縦継部3で連結されることで、各々の鋼製部材2に縦継部3で剛性の変化が生じる。このとき、本発明を適用した鋼製セル1は、各々の鋼製部材2の縦継部3で曲げモーメントMが伝達されるだけでなく、周方向Wに隣り合った鋼製部材2の平板部20に向けて、縦継部3の側方の接合部21でも一部の曲げモーメントMが伝達される。
本発明を適用した鋼製セル1は、各々の鋼製部材2の縦継部3で溶接割れ等が発生していない場合に、材軸方向Yの曲げモーメントMが、各々の鋼製部材2の縦継部3と縦継部3の側方の接合部21とで分担しながら伝達される。そして、本発明を適用した鋼製セル1は、特に、互いに隣り合った鋼製部材2が接合部21で緊密な接合状態となることから、縦継部3の側方の接合部21に伝達される曲げモーメントMが大きくなる傾向となる。
本発明を適用した鋼製セル1は、各々の鋼製部材2の縦継部3で溶接割れ等が発生していない場合に、各々の鋼製部材2の縦継部3でも曲げモーメントMが伝達される。しかし、本発明を適用した鋼製セル1は、図11(b)に示すように、鋼製部材2の縦継部3で溶接割れ等の溶接欠陥Bが発生した場合に、鋼製部材2の縦継部3の溶接接合が不完全となり、鋼製部材2の縦継部3で曲げモーメントMの伝達が遮断されるものとなる。
本発明を適用した鋼製セル1は、周方向Wで互いに隣り合った鋼製部材2が接合部21で緊密な接合状態となるとともに、縦継部3での曲げモーメントMの伝達が溶接欠陥Bにより遮断されて、縦継部3の側方の接合部21に大きい曲げモーメントMが伝達される。本発明を適用した鋼製セル1は、縦継部3の側方に大きい曲げモーメントMが伝達されることで、周方向Wに隣り合った鋼製部材2の平板部20に応力集中領域Sが形成される。
本発明を適用した鋼製セル1は、特に、周方向Wに連続して設けられる少なくとも5枚の鋼製部材2で、各々の縦継部3が材軸方向Yの位置を全て異ならせて配置される。このとき、本発明を適用した鋼製セル1は、周方向Wに隣り合った鋼製部材2の平板部20に向けて、各々の縦継部3の側方の接合部21から曲げモーメントMが伝達される材軸方向Yの位置が、各々の鋼製部材2で全て異なるものとなる。
ここで、本発明を適用した鋼製セル1は、例えば、周方向Wに連続して設けられる5枚の鋼製部材2のうち、周方向Wの中央に配置された鋼製部材2を中央鋼製部材2aとする。また、本発明を適用した鋼製セル1は、周方向Wで中央鋼製部材2aに隣り合って配置された鋼製部材2を隣接鋼製部材2bとして、周方向Wで隣接鋼製部材2bに隣り合って中央鋼製部材2aの反対側に配置された鋼製部材2を側端鋼製部材2cとする。
このとき、本発明を適用した鋼製セル1は、中央鋼製部材2aの縦継部3に溶接欠陥Bが発生した場合に、中央鋼製部材2aの縦継部3の側方に大きい曲げモーメントMが伝達されて、隣接鋼製部材2bの平板部20に応力集中領域Sが形成される。しかし、本発明を適用した鋼製セル1は、各々の縦継部3から伝達される曲げモーメントMの材軸方向Yの位置が、各々の鋼製部材2で全て異なるものとなるため、側端鋼製部材2cからは隣接鋼製部材2bの応力集中領域Sに曲げモーメントMの伝達がなされない。
このように、本発明を適用した鋼製セル1は、鋼製部材2の所定の材軸方向Yの位置に形成された応力集中領域Sに対して、周方向Wで一方側に隣り合って配置された鋼製部材2からは曲げモーメントMが伝達されるものの、他方側に隣り合って配置された鋼製部材2からは曲げモーメントMが伝達されないため、各々の鋼製部材2に形成された応力集中領域Sに伝達される曲げモーメントMの集中を軽減することができる。
本発明を適用した鋼製セル1は、鋼製部材2の縦継部3に溶接欠陥Bが発生した場合であっても、各々の鋼製部材2に形成された応力集中領域Sに伝達される曲げモーメントMの集中を軽減することで、鋼製部材2の平板部20が曲げモーメントMの集中により降伏・座屈等することを防止して、各々の鋼製部材2が直立状態を維持したものとなり、鋼製セル1全体の健全性を確保することが可能となる。
これに対して、従来の鋼板等の連結構造体9は、図12(a)に示すように、鋼板等が縦継接合部91で材軸方向Yに接合された複数の長尺鋼板90を、連結構造体9の周方向Wに連続して接合させる。そして、従来の鋼板等の連結構造体9は、長尺鋼板90の縦継接合部91が、周方向Wで所定の箇所に連続する複数の長尺鋼板90で、1枚おきに材軸方向Yの位置を同一のものとして、連結構造体9の周方向Wで略千鳥状に配置される。
このとき、従来の鋼板等の連結構造体9は、図12(b)に示すように、長尺鋼板90の縦継接合部91に溶接欠陥Bが発生した場合に、所定の材軸方向Yの位置に形成された応力集中領域Sに対して、特に、周方向Wで一方側に隣り合って配置された長尺鋼板90から曲げモーメントMが伝達されるだけでなく、他方側に隣り合って配置された長尺鋼板90からも曲げモーメントMが伝達されることで、各々の長尺鋼板90に形成された応力集中領域Sに曲げモーメントMが集中して伝達されるものとなる。
従来の鋼板等の連結構造体9は、複数の長尺鋼板90の縦継接合部91が、周方向Wで略千鳥状に配置されることで、周方向Wで隣り合った長尺鋼板90から曲げモーメントMが伝達される材軸方向Yの位置が、1枚おきの長尺鋼板90で同一のものとなる。このため、従来の鋼板等の連結構造体9は、長尺鋼板90の縦継接合部91に溶接欠陥Bが発生した場合に、長尺鋼板90の応力集中領域Sに曲げモーメントMが集中して過大なものとなり、長尺鋼板90が過大な曲げモーメントMにより降伏・座屈等するおそれがあった。
本発明を適用した鋼製セル1は、図9に示すように、周方向Wで所定の箇所に連続して設けられる少なくとも5枚の鋼製部材2で、特に、各々の縦継部3が周方向Wの時計回り又は反時計回りで材軸方向Yの位置を段階的に高くして配置される。このとき、本発明を適用した鋼製セル1は、各々の縦継部3が周方向Wの時計回り又は反時計回りで段階的に配置されるため、複数の鋼製部材2を周方向Wで順次連設するときに、各々の縦継部3での材軸方向Yの位置の管理が容易となることで、複数の鋼製部材2の連設作業の施工性を向上させることが可能となる。
なお、本発明を適用した鋼製セル1は、図13に示すように、例えば、周方向Wで連続する6枚以上の鋼製部材2で、各々の縦継部3が材軸方向Yの位置を全て異ならせて配置されてもよい。本発明を適用した鋼製セル1は、複数の鋼製部材2の縦継部3が、図9に示すように、周方向Wで連続的に高くして配置されるだけでなく、図13に示すように、周方向Wで断続的に高くして配置されてもよい。本発明を適用した鋼製セル1は、周方向Wで連続する複数の鋼製部材2で、各々の縦継部3が材軸方向Yの位置を全て異ならせて配置されて、これらの連続する複数の鋼製部材2ごとに、各々の縦継部3が段階的に高くして配置されることで、各々の縦継部3が断続的に高くして配置されるものとなる。
本発明を適用した鋼製セル1は、図8に示すように、各々の鋼製部材2の材軸方向Yの両端側Eを除いて、材軸方向Yで長さ寸法Lを3等分したうちの中央側Cの1/3となる範囲にのみ縦継部3が配置される。このとき、本発明を適用した鋼製セル1は、長さ寸法Lの1/3〜2/3の範囲でのみ短尺の鋼製部材2を用意して、これらの短尺の鋼製部材2を材軸方向Yに連結させて長尺の鋼製部材2とすることができる。これにより、本発明を適用した鋼製セル1は、短尺の鋼製部材2の長さ寸法Lのバラツキを低減させて、短尺の鋼製部材2の製造可能長さの制約、輸送部材長の制約の影響を低減することが可能となる。
本発明を適用した鋼製セル1は、図13に示すように、特に、鋼製セル1の周方向Wに連設される全ての鋼製部材2で、各々の鋼製部材2の材軸方向Yの1箇所にのみ縦継部3が形成される。本発明を適用した鋼製セル1は、鋼製部材2の1枚あたりの縦継部3の数を最大でも1箇所とすることで、応力集中領域Sそのものを低減することが可能となる。
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならない。
例えば、本発明を適用した鋼製セル1は、特に、平面方向で略円形状に形成された円筒形状のものが用いられるが、これに限らず、平面方向で略楕円形状、又は、略多角形状等に形成されたものが用いられてもよい。
1 :鋼製セル
10 :内空部
11 :側壁
12 :中詰
2 :鋼製部材
2a :中央鋼製部材
2b :隣接鋼製部材
2c :側端鋼製部材
20 :平板部
21 :接合部
3 :縦継部
4 :直線鋼矢板
5 :鋼板
8 :壁体
80 :海底地盤
S :応力集中領域
W :周方向
X :幅方向
Y :材軸方向

Claims (3)

  1. 複数の鋼製部材を周方向に連設させた鋼製セルであって、
    材軸方向に連結するための縦継部が各々に形成された5枚以上の鋼製部材を備え、
    前記鋼製部材は、周方向で所定の箇所に連続して設けられる少なくとも5枚の前記鋼製部材で、各々の前記縦継部が周方向の時計回り又は反時計回りで材軸方向の位置を段階的に高くして配置されること
    を特徴とする鋼製セル。
  2. 前記鋼製部材は、材軸方向の1箇所にのみ前記縦継部が形成されること
    を特徴とする請求項1記載の鋼製セル。
  3. 前記鋼製部材は、材軸方向で長さ寸法を3等分したうちの中央側の1/3となる範囲にのみ前記縦継部が配置されること
    を特徴とする請求項1又は2記載の鋼製セル。
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