以下に、本願発明を具体化した実施形態を、8条植え式の乗用型田植機1(以下、単に田植機1という)に適用した場合の図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、走行機体2の進行方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく進行方向に向かって右側を単に右側と称する。
まず、図1及び図2を参照しながら、田植機1の概要について説明する。実施形態の田植機1は、走行部としての左右一対の前車輪3及び同じく左右一対の後車輪4によって支持された走行機体2を備えている。走行機体2の前部にはエンジン5が搭載されている。エンジン5からの動力を後方のミッションケース6に伝達して、前車輪3及び後車輪4を駆動させることにより、走行機体2が前後進走行するように構成されている。ミッションケース6の左右側方にフロントアクスルケース7を突出させ、フロントアクスルケース7から左右外向きに延びる前車軸36に前車輪3が舵取り可能に取り付けられている。ミッションケース6の後方に筒状フレーム8を突出させ、筒状フレーム8の後端側にリヤアクスルケース9を固設し、リヤアクスルケース9から左右外向きに延びる後車軸37に後車輪4が取り付けられている。
図1及び図2に示すように、走行機体2の前部及び中央部の上面側には、作業者搭乗用の作業ステップ(車体カバー)10が設けられている。作業ステップ10の前部の上方にはフロントボンネット11が配置され、フロントボンネット11の内部にエンジン5を設置している。作業ステップ10の上面のうちフロントボンネット11の後部側方に、足踏み操作用の走行変速ペダル12が配置されている。詳細は省略するが、実施形態の田植機1は、走行変速ペダル12の踏み込み量に応じた変速電動モータの駆動にて、ミッションケース6の油圧式無段変速機40から出力される変速動力を調節するように構成されている。
また、フロントボンネット11の後部上面側にある運転操作部13には、操縦ハンドル14と走行主変速レバー15と昇降操作具としての作業レバー16とが設けられている。作業ステップ10の上面のうちフロントボンネット11の後方には、シートフレーム17を介して操縦座席18が配置されている。なお、フロントボンネット11の左右側方には、作業ステップ10を挟んで左右の予備苗載台24が設けられている。
走行機体2の後端部にリンクフレーム19が立設されている。リンクフレーム19には、ロワーリンク20及びトップリンク21からなる昇降リンク機構22を介して、8条植え用の苗植付装置23が昇降可能に連結されている。この場合、苗植付装置23の前面側に、ローリング支点軸140(図5参照)を介してヒッチブラケット38を設けている。昇降リンク機構22の後部側にヒッチブラケット38を連結することによって、走行機体2の後方に苗植付装置23を昇降動可能に配置している。筒状フレーム8の上面後部に、油圧式の昇降シリンダ39のシリンダ基端側を上下回動可能に支持させる。昇降シリンダ39のロッド先端側はロワーリンク20に連結している。昇降シリンダ39の伸縮動にて昇降リンク機構22を上下回動させる結果、苗植付装置23が昇降動する。なお、苗植付装置23はローリング支点軸140回りに回動して左右方向の傾斜姿勢を変更可能に構成している。
作業者は、作業ステップ10の側方にある乗降ステップ25から作業ステップ10上に搭乗し、運転操作にて圃場内を移動しながら、苗植付装置23を駆動させて圃場に苗を植え付ける苗植え作業(田植え作業)を実行する。なお、苗植え作業中において、苗植付装置23には、予備苗載台24上の苗マットを作業者が随時補給する。
操縦座席18の後方には施肥装置117が配置されている。施肥装置117は、粒状肥料を収容するホッパ118を備えている。施肥装置117の肥料繰出部を介して定量送出されるホッパ118内の粒状肥料は、送風機119の送風搬送作用により、フレキシブル型のホース120を介して、苗植付装置23によって植え付けられた苗に隣接する田面の泥土中に投下される。
図1及び図2に示すように、苗植付装置23は、エンジン5からミッションケース6を経由した動力が伝達される植付入力ケース26と、植付入力ケース26に連結する8条用4組(2条分で1組)の植付伝動ケース27と、各植付伝動ケース27の後端側に設けられた計8条分の苗植付機構28と、8条植え用の苗載台29と、各植付伝動ケース27の下面側に配置された田面均平用のフロート32とを備えている。各苗植付機構28には、1条分2本の植付爪30を有するロータリケース31がそれぞれ設けられている。植付伝動ケース27に2条分のロータリケース31が配置されている。ロータリケース31の1回転によって、2本の植付爪30が各々1株ずつの苗を切り取ってつかみ、フロート32にて整地された田面に植え付ける。苗植付装置23の前面側には、圃場面を均す(整地する)整地ロータ85が昇降動可能に設けられている。
詳細は後述するが、エンジン5からミッションケース6を経由した動力は、前車輪3及び後車輪4に伝達されるだけでなく、苗植付装置23の植付入力ケース26にも伝達される。この場合、ミッションケース6から苗植付装置23に向かう動力は、リヤアクスルケース9の右側上部に設けられた株間変速ケース75(図3参照)に一旦伝達され、株間変速ケース75から植付入力ケース26に動力伝達される。当該伝達された動力にて、各苗植付機構28や苗載台29が駆動する。図3に示すように、株間変速ケース75には、植え付けられる苗の株間を例えば疎植、標準植又は密植等に切り換える株間変速機構76と、苗植付装置23への動力伝達を継断する植付クラッチ77とが内蔵されている。
なお、苗植付装置23の左右外側にはサイドマーカ33が設けられている。サイドマーカ33は、筋引き用のマーカ輪体34と、マーカ輪体34を回転可能に軸支するマーカアーム35とを有している。各マーカアーム35の基端側が苗植付装置23の左右外側に左右回動可能に軸支されている。サイドマーカ33は、運転操作部13にある作業レバー16の操作に基づき、次工程での基準となる軌跡を田面に着地して形成する作業姿勢と、マーカ輪体34を上昇させて田面から離間させた非作業姿勢とに回動可能に構成されている。
次に、図3を参照しながら、田植機1の駆動系統について説明する。エンジン5の出力軸69はエンジン5の左右両側面から外向きに突出している。出力軸69のうちエンジン5左側面から突出した突端部にエンジン出力プーリ70を設け、ミッションケース6から左外側に突出したミッション入力軸71にミッション入力プーリ72を設け、両プーリ70,72に伝達ベルト73を巻き掛けている。両プーリ70,72及び伝達ベルト73を介して、エンジン5からミッションケース6に動力伝達する。
ミッションケース6内には、油圧ポンプ40a及び油圧モータ40bからなる油圧式無段変速機40、遊星歯車装置41、油圧式無段変速機40及び遊星歯車装置41を経由した変速動力を複数段に変速する歯車式副変速機構42、遊星歯車装置41から歯車式副変速機構42への動力伝達を継断する主クラッチ43、並びに、歯車式副変速機構42からの出力を制動させる走行ブレーキ44等を備えている。ミッション入力軸71からの動力で油圧ポンプ40aを駆動させ、油圧ポンプ40aから油圧モータ40bに作動油を供給し、油圧モータ40bから変速動力が出力される。油圧モータ40bの変速動力は、遊星歯車装置41及び主クラッチ43を介して歯車式副変速機構42に伝達される。そして、歯車式副変速機構42から、前後車輪3,4と苗植付装置23との二方向に分岐して動力伝達される。
前後車輪3,4に向かう分岐動力の一部は、歯車式副変速機構42から差動歯車機構45を介して、フロントアクスルケース7の前車軸36に伝達され、左右前車輪3を回転駆動させる。前後車輪3,4に向かう分岐動力の残りは、歯車式副変速機構42から、自在継手軸46、リヤアクスルケース9内のリヤ駆動軸47、左右一対の摩擦クラッチ48及び歯車式減速機構49を介して、リヤアクスルケース9の後車軸37に伝達され、左右後車輪4を回転駆動させる。走行ブレーキ44を作動させた場合は、歯車式副変速機構42からの出力がなくなるので、前後車輪3,4共にブレーキがかかる。また、田植機1を旋回させる場合は、リヤアクスルケース9内の旋回内側の摩擦クラッチ48を切り作動させて旋回内側の後車輪4を自由回転させ、動力伝達される旋回外側の後車輪4の回転駆動によって旋回する。
リヤアクスルケース9内には、整地ロータ85への動力継断用の整地ロータクラッチを有するロータ駆動ユニット86を備えている。歯車式副変速機構42から自在継手軸46に伝達された動力はロータ駆動ユニット86にも分岐して伝達され、ロータ駆動ユニット86から自在継手軸84を介して整地ロータ85に動力伝達される。整地ロータ85の回転駆動によって圃場面が均される。
苗植付装置23に向かう分岐動力は、自在継手軸付きのPTO伝動軸機構74を介して株間変速ケース75に伝達される。株間変速ケース75内には、植え付けられる苗の株間を例えば疎植、標準植又は密植等に切り換える株間変速機構76と、苗植付装置23への動力伝達を継断する植付クラッチ77とを備えている。株間変速ケース75に伝達された動力は、株間変速機構76、植付クラッチ77及び自在継手軸付きの植付伝動軸78を介して苗植付装置23の植付入力ケース26に伝達される。植付クラッチ77は、運転操作部13に設けられた作業レバー16の操作に基づく植付クラッチモータ211(図13参照)の駆動によって、入り(動力接続)状態と切り(動力遮断)状態とに切換作動するように構成されている。
植付入力ケース26内には、苗載台29を横送り移動させる苗台横送り機構79の横送り軸79b及び苗載台29上の苗マットを縦送り搬送させる苗縦送り機構80の縦送り駆動軸80aが連結される横送り駆動軸92と、植付入力ケース26から各植付伝動ケース27に動力伝達する植付出力軸81が設けられている。植付入力ケース26に伝達された動力によって、苗台横送り機構79及び苗縦送り機構80が駆動し、苗載台29を連続的に往復で横送り移動させ、苗載台29が往復移動端(往復移動の折返し点)に到達したときに苗載台29上の苗マットを間欠的に縦送り搬送する。植付入力ケース26から植付出力軸81を経由した動力は各植付伝動ケース27に伝達され、各植付伝動ケース27のロータリケース31並びに植付爪30を回転駆動させる。なお、施肥装置117を設ける場合は株間変速ケース75から施肥装置117に動力伝達される。
次に、図4から図7を参照して苗植付装置23の構成について説明する。
図4から図6に示すように、苗植付装置23は、8条用4組の植付伝動ケース27の前端間を連結する、左右方向に延設された植付フレーム111を備えている。植付フレーム111の中央部に植付入力ケース26が取り付けられている。
図7に示すように、植付入力ケース26の内部には左右長手の中間軸91と横送り駆動軸92が配置されている。植付伝動軸78の回転は入力軸及び1対のベベルギヤを介して中間軸91に伝達される。横送り駆動軸92に、苗載台29の左右方向の横送りを行う苗台横送り機構79の横送り軸79bが連結されている。横送り駆動軸92には例えば3枚の横送り量調節従動ギヤ93が固定されている。また、横送り駆動軸92に平行に配置された左右長手の中間軸91には横送り量調節従動ギヤ93に対応して3枚の横送り量調節主動ギヤ94が遊嵌されている。3枚の横送り量調節主動ギヤ94のうちいずれか1つのみに、スライドキー95によって中間軸91から選択的に動力伝達される。スライドキー95は横送り切替レバー82(図5参照)によってスライド操作される。横送り量調節ギヤ86,88の対はそれぞれ歯数の比率が相違しており、横送り量調節ギヤ93,94の組み合わせを変えると、植付伝動軸78に対する横送り駆動軸92の回転比率が変わる。その結果、苗載台29の横送りピッチが変化して横送り方向の苗の掻き取り量が変化する。
中間軸91の回転は、中間軸91に固定された第1中継ギヤ、横送り駆動軸92に相対回転自在に嵌まった第2中継ギヤ、植付入力ケース26にアイドル軸を介して回転自在に保持された第3中継ギヤ、及び植付出力軸81にスリーブを介して取り付けられた第4中継ギヤを介して、植付出力軸81に伝達される。植付入力ケース26から植付出力軸81を経由した動力は各植付伝動ケース27に伝達され、各植付伝動ケース27のロータリケース31及び植付爪30(苗植付機構28)を回転駆動させる。ロータリケース31が1/2回転するごとに植付爪30による苗の掻き取りと植付けが行われる。また、植付伝動軸78が1回転するとロータリケース31は1/2回転するように設定されている。そして、植付伝動軸78の回転数は基本的に走行機体2の走行速度に比例しているが、株間変速機構76によって走行速度と植付伝動軸78の回転数との関係を変えることにより、苗の植付け間隔(株間)を変更することができる。
植付伝動ケース27内において、ロータリケース31を回転させる植付中心軸89に苗植付爪ユニットクラッチ141が設けられている。苗植付爪ユニットクラッチ141は通常、ばね(図示は省略)でベベルギヤ90に噛み合う状態に押されて入り状態にされている。苗植付爪ユニットクラッチ141が切り状態にされると、苗植付爪ユニットクラッチ141が植付中心軸89の軸心に沿ってベベルギヤ90から離反し、植付中心軸89への動力が遮断される。例えば、いわゆる回り植えにおける畦際での苗植付け作業において、8つの苗植付機構28のうち一部は作動させたくない場合がある。このような場合に苗植付爪ユニットクラッチ141を操作して、一部の苗植付機構28の機能を停止させることができる。つまり、植付け条数を減らす条止め機能が発揮される。
次に、条止め機構について説明する。図5から図7に示すように、植付伝動ケース27ごとに内設された4つの苗植付爪ユニットクラッチ141と、苗載台29に設けられた4つの縦送りユニットクラッチ142が設けられている。苗植付爪ユニットクラッチ141は、植付伝動ケース27を挟む2条分の苗植付機構28を1組として駆動の入切を行う。縦送りユニットクラッチ142は、苗植付機構28の組に対応する2条分の苗縦送りベルト155を1組として駆動の入切を行う。また、苗載台29の裏面上部に、植付伝動ケース27を挟む2条分ごとに苗植付爪ユニットクラッチ141及び縦送りユニットクラッチ142の入切を制御するユニットクラッチ作動装置143が設けられている。各ユニットクラッチ141,142とユニットクラッチ作動装置143はクラッチワイヤ(図示は省略)によって連結されている。植付ユニットクラッチモータ144の駆動によってユニットクラッチ作動装置143内部の操作アーム(図示は省略)が揺動されることによって、植付伝動ケース27を挟む2条分ごとにユニットクラッチ141,142の入切が制御される。
次に、苗継センサ166(苗検出部材)について説明する。図2及び図5に示すように、苗載台29の縦方向中途部の下方寄りの位置(苗取出板131寄りの位置)で苗の有無を検出する合計8つの苗継センサ166が設けられている。8つの苗継センサ166は8条分の苗植付機構28に対応して配置されている。苗継センサ166は苗載台29上の苗マット底面に当接される苗検出カムと該カムに接触させる苗検出スイッチ(図示は省略)を備えている。苗マットの有無で苗検出カムが揺動して苗検出スイッチがオン又はオフすることによって苗マットの有無、ひいては苗継ぎ時期を検出するように構成している。
次に、苗台横送り機構79と苗縦送り機構80について説明する。図5に示すように、苗台横送り機構79の送り体79aは苗載台29の裏面下部側に連結されており、上部ガイドレール151及び下部ガイドレール152に沿った左右幅方向に苗載台29を横送り移動させる。このため、苗載台29上の苗マットは連続的に往復で横送り搬送される。一方、苗縦送り機構80の縦送り駆動軸80aには一対の縦送り駆動カム80bが固着されている。苗載台29が往復移動端(往復移動の折返し点)に到達すると、縦送り駆動軸80aにより各縦送り駆動カム80bが回転駆動される。このとき、図10に示すように、駆動カム80bは従動カム153に当接され、これによって苗縦送りベルト155が駆動され、苗載台29上の苗マットが間欠的に縦送り搬送される。連動ワイヤ156を介して、苗取調節軸136に固着された苗取連動カム138と縦送りローラ軸154に取り付けられた従動カム153を連結させ、苗取量の変化に対応させて苗縦送り量も変化させて、苗取量に応じた適正な苗縦送りを行う。
次に、苗縦取量の調節機構について説明する。図8から図10に示されるように、苗植付装置23には、苗取出口130(図6参照)を有する苗取出板131を上下動させて苗縦取量を調節する苗取調節具132が設けられている。苗取出板131は苗載台29の下端に配置されている。苗取調節具132は、植付伝動ケース27にボルト締結されたガイド部材133に上下動自在に支持されたガイドロッド134上部に固着されている。左右方向に延設された苗取調節軸136に苗取調節カム135の基端部が固着されている。苗取調節カム135の先端部は苗取調節具132に挿入されている。また、苗取調節軸136に苗取調節部材137の基端部が固着されている。後述する苗取調節アクチュエータ機構181によって苗取調節部材137が位置調節されることによって、苗取調節軸136及び苗取調節カム135を介して苗取出板131、苗取調節具132及びガイドロッド134が上下移動されて、植付爪30が取り出す1株分の苗縦取量の調節が行われる。苗取調節軸136は、植付伝動ケース27上部に固設する各軸受板に回動自在に支持される。
次に、苗取調節アクチュエータ機構181について説明する。図5、図6及び図8に示すように、苗取調節アクチュエータ機構181はヒッチブラケット38よりも左側方位置で植付フレーム111に取り付けられている。苗取調節アクチュエータ機構181は植深さ(フロート32a,32bの高さ位置)を調節する植深さ調節アクチュエータ機構171とともにアクチュエータカバー162で覆われている。苗取調節アクチュエータ機構181は、植深さ調節アクチュエータ機構171よりも走行機体2中央側に配置されている。
図8及び図9に示すように、苗取調節アクチュエータ機構181は、送りねじ182と、滑り子183と、電動式の苗取調節モータ184と、送りねじ上部支持部材185と、送りねじ下部支持部材186を備えている。苗取調節モータ184によって送りねじ182が回転されることにより、送りねじ182上で滑り子183が直線運動される。送りねじ上部支持部材185は送りねじ182の上端側(モータ側)を回転自在に支持する。送りねじ下部支持部材186は送りねじ182の下端部を回転自在に支持する。なお、苗取調節モータ184は、電動式モータに替えて油圧モータであってもよい。植深さ調節アクチュエータ機構171と苗取調節アクチュエータ機構181は基本的に同様の構成を有している。
図8から図10に示すように、苗取調節アクチュエータ機構181は、運転操作部13に配置された苗取量調節ダイヤル187(図12参照)によって調節される設定苗縦取量に応じて、苗取調節モータ184の駆動によって送りねじ182を回転させて滑り子183を移動させる。滑り子183とともに係合ピン部材183bが移動されると、連結部材139を介して苗取調節部材137が苗取調節軸136を回動支点として回転されて位置調節される。苗取調節部材137の回転によって苗取調節軸136を介して苗取調節カム135が回転され、苗取出板131が、苗取量調節ダイヤル187によって設定された設定苗縦取量に応じた設定苗縦取量位置に配置される。
苗取出板131の位置は、基端部が苗取調節軸136に固着された検出用棒状部材188の先端部の位置を、植付フレーム111にセンサブラケット189を介して取り付けられた苗取出板センサ190(苗縦取量検出部材)の検出することよって検出され得る。苗取出板センサ190は例えばポテンショメータである。苗取出板センサ190の検出値は、苗取出板131の位置、つまり苗取出口130付近における植付爪30の軌道と苗取出板131との間の距離に対応している。したがって、苗取出板センサ190の検出値に基づいて1株あたりの苗縦取量を求めることができる。苗取出口130付近における植付爪30の軌道と苗取出板の間の距離が大きいほど苗縦取量は大きくなり、逆に当該距離が小さいほど苗縦取量は小さくなる。苗縦取量は例えば8〜17mm(ミリメートル)の間に設定される。
次に、苗載台端寄せ機構について説明する。図5及び図11に示すように、苗載台横フレーム158に端寄せ検出センサ159(苗横送り量測定部材)が取り付けられている。端寄せ検出センサ159は、苗載台29が左右一方の移動端まで到達したか否かを検出する端寄せ検出手段としての接触式のセンサである。端寄せ検出センサ159は上向きに延びる感知体159aを有している。感知体159aが上部ガイドレール151に固着されたL字状の当接アーム160に接触して弾性に抗して逃げ回動すると、端寄せ検出センサ159が入り作動して、左右一方の移動端への苗載台29の到達が検出される。苗載台29の左右他方への横送り移動にて当接アーム160が感知体159aから離れると、感知体159aが弾性復原力にて戻り回動し、端寄せ検出センサ159が切り作動する。この実施形態では、端寄せ検出センサ159は苗載台横フレーム158の右寄り部位に配置され、当接アーム160は端寄せ検出センサ159よりも右側方の位置で上部ガイドレール151の右寄り部位に配置されている。端寄せ検出センサ159の感知体159aに当接アーム160が接触した状態では、苗載台29が走行機体2左外側にはみ出すことになる。
苗植え作業(田植え作業)においては、苗載台29の各苗マット載面に苗マットを載せたのち、操縦座席18に作業者が座乗して田植機1を圃場内で移動させる。移動の間、苗台横送り機構79にて苗載台29を左右幅方向に横送り移動させながら、苗マットにおける苗取出口130付近の苗1株分を植付爪30にて掻き取り、当該掻き取られた苗1株分をフロート32にて均平に整地された田面(圃場面)に植え付ける。苗台横送り機構79によって苗載台29が横送り移動して往復移動端(左右一方の移動端)に到達すると、苗縦送り機構80によって苗縦送りベルト155を作動させ、苗載台29上の苗マットを苗取出し方向(後方斜め下向き)に搬送する。苗縦送りベルト155の苗縦送り動作が完了して苗縦送りベルト155が停止すると、再び苗台横送り機構79によって、苗載台29が左右他方の移動端に向けて横送り移動する。
次に、苗マット使用量算出のための構造及びその動作態様について説明する。図13に示すように、走行機体2には、主に苗植付装置23に関連する制御を司る制御手段としての植付作業コントローラ200(制御装置)が搭載されている。植付作業コントローラ200は、各種演算処理や制御を実行するCPU(Central Processing Unit)や、制御プログラムや各種データを記憶したROM(Read Only Memory)、制御プログラムや各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)を含む記憶装置222、入力インターフェース等を有している。
植付作業コントローラ200の入力側には、少なくとも端寄せ検出センサ159と、端寄せモード実行のための端寄せ操作具としての端寄せボタン201と、走行主変速レバー15の操作位置を検出する主変速レバーセンサ202と、作業レバー16の操作方向及び操作回数を検出する作業レバーセンサ203と、植付クラッチ77の入切状態を検出する植付クラッチセンサ204と、走行変速ペダル12の踏込み量を検出する変速ポテンショ205と、苗取量調節操作具としての苗取量調節ダイヤル187と、苗取出板131の位置を検出する苗取出板センサ190と、2条分ごとに苗植付けを停止する条止め操作具としての4つの条止めスイッチ206と、8条植え用の苗載台29における苗マットの有無を8条分の苗植付機構28に対応して検出する8つの苗継センサ166と、ミッションケース6からの走行出力を検出する車速センサ207と、ユニットクラッチ作動装置143内部の操作アームの位置を検出して苗植付機構28の作動が停止されている数(条止め数)を検出する植付ユニットクラッチ位置センサ208(条止め数検出部材)と、苗植付装置23の位置を検出する昇降位置センサ209が電気的に接続されている。
植付作業コントローラ200の出力側には、少なくとも植付クラッチ77を切換作動させる植付クラッチモータ211のモータ駆動回路部212と、ミッションケース6における油圧式無段変速機40の調節部を制御する変速電動モータ213のモータ駆動回路部214と、苗植付爪ユニットクラッチ141及び縦送りユニットクラッチ142の入切を制御する植付ユニットクラッチモータ144のモータ駆動回路部215と、苗取出板131の位置を調節する苗取調節モータ184のモータ駆動回路216と、運転操作部13における表示パネル217に苗マット使用量等を表示する液晶パネル218(表示部)が電気的に接続されている。なお、図13は苗マット使用量算出に関する概略的な機能ブロック図であり、図示は省略されているが植付作業コントローラ200には他にも各種センサや駆動装置等が電気的に接続されている。
図12に示すように、運転操作部13において、端寄せボタン201は、運転操作部13のうち操縦ハンドル14のハンドル軸近傍に配置されている。端寄せボタン201には、1回目の押し操作で端寄せモードを開始し、もう1回の押し操作で端寄せモードを取り止めるという機能を持たせている。主変速レバーセンサ202は、運転操作部13において操縦ハンドル14の左側に配置された走行主変速レバー15の根元部に配置されている。走行主変速レバー15は、運転操作部13に形成されたガイド溝83に沿って操作することによって、田植機1の走行モードを前進、中立、後進、苗継及び移動の各モードに切換え可能になっている。走行主変速レバー15は、走行機体2の進行方向及び走行速度を操作するための走行変速操作具を構成している。
作業レバーセンサ203は、操縦ハンドル14の右側に配置された作業レバー16の根元部に配置されている。なお、作業レバー16は十字方向に操作可能に構成されていて、苗植付装置23の昇降操作、植付クラッチ77の継断操作及び左右サイドマーカ33の選択操作という複数の操作を単独で担うものである。作業レバー16は、植付クラッチ77を入り切り操作するクラッチ操作具を構成している。
この場合、作業レバー16を1回前傾操作すると苗植付装置23が下降し、もう1回前傾操作すると植付クラッチ77が入り作動する(動力接続状態になる)。逆に、作業レバー16を1回後傾操作すると植付クラッチ77が切り作動し(動力遮断状態になり)、もう1回前傾操作すると苗植付装置23が上昇する。苗植付装置23の昇降動作を取り止める場合は、作業レバー16を逆方向に傾動操作する。例えば苗植付装置23の下降動を途中で停止させる場合は作業レバー16を後傾操作すればよい。作業レバー16を1回左へ傾動操作すると左側のサイドマーカ33が作業姿勢となり、もう1回左へ傾動操作すると左側のサイドマーカ33は非作業姿勢に戻る。作業レバー16を1回右へ傾動操作すると右側のサイドマーカ33が作業姿勢となり、もう1回右へ傾動操作すると右側のサイドマーカ33は非作業姿勢に戻る。
4つの条止めスイッチ206は運転操作部13のうち操縦座席18側の部位に左右方向に並んで配置されている。各条止めスイッチ206には、1回目の押し操作で2条分ごとに苗植付爪ユニットクラッチ141及び縦送りユニットクラッチ142を切断状態にして苗植付機構28の作動を停止させるとともに内蔵ランプを点灯させ、もう1回の押し操作で両ユニットクラッチ141,142を接続状態にして2条分の苗植付機構28の作動を再開させるとともに内蔵ランプを消灯するという機能を持たせている。液晶パネル218は運転操作部13のうち前方側中央部に配置された表示パネル217内に配置されている。なお、苗植付装置23の位置を検出する昇降位置センサ209は、例えばロワーリンク20又はトップリンク21(図1参照)の回動部に取り付けられたポテンショメータ等のセンサで構成されている。
図14を参照して苗マット使用量算出の流れについて説明する。植付作業コントローラ200は、植付爪30が掻き取る1回(苗1株)あたりの苗縦取量と、苗載台29の往復動による苗横送り量と、植付け条数(苗植付機構28の稼働数)を積算して、使用した苗マットの量(苗マット使用量)を算出する。そして、植付作業コントローラ200は、算出した苗マット使用量を液晶パネル218に表示する。
まず、植付爪30が苗マットの左右一端側から苗を掻き取ることができるように、走行主変速レバー15が中立位置に操作され(S1:YES)、端寄せボタン201が押し操作される(ステップS2:YES)。これにより、苗載台29を左右一方の移動端(実施形態では左移動端)まで横送りして停止させる端寄せモードが実行される。端寄せモードでは、植付クラッチモータ211の駆動にて植付クラッチ77が入り作動され、端寄せボタン201に内蔵されたランプが点灯し、また、液晶パネル218配置位置とは異なる位置で表示パネル217内に配置されたPTOクラッチランプ(図示は省略)が適宜周期で点滅する。そして、作業者が走行変速ペダル12を踏み込むと、変速ポテンショ205が踏込み量を検出し、当該踏込み量が所定量以上であれば、変速電動モータ213の駆動にて、油圧式無段変速機40からの変速動力を踏込み量に拘らず一定に保持し、この状態で苗載台29の横送り移動を開始させる。走行変速ペダル12の踏み込みを解除すれば、油圧式無段変速機40からの変速動力がアイドリング状態となるため、苗載台29は横送り移動しなくなる。
端寄せモードの実行中、端寄せ検出センサ159は苗載台29が左右一方の移動端へ到達したことを検出する(ステップS3)。端寄せ検出センサ159が入り作動(苗載台29の端寄せを検出)すると、苗載台29が左右一方の移動端まで到達しているので、植付クラッチモータ211の駆動にて植付クラッチ77を切り作動させ、苗載台29の横送り移動を停止させる。そして、端寄せボタン201に内蔵されたランプと上記PTOクラッチランプが消灯される。
苗載台29が左右一方の移動端に位置している状態で、苗載台29に苗マットが載置される。通常、苗植付け作業の最初には、8条植え用の苗載台29には8条分の苗マットが載置される。苗載台29に設けられた各苗継センサ166は、それら出力値が苗マット検出(オン)になり、苗載台29に苗マットがあることを検出する(ステップS4)。
作業者は、走行機体2を圃場内の苗植付け開始位置に移動させ、走行主変速レバー15を前進位置に操作し(ステップS5:YES)、作業レバー16を1回前傾操作して苗植付装置23を下降位置(植付作業位置)まで下降させ(ステップS6:YES)、作業レバー16をもう1回前傾操作して植付クラッチ77を入り作動させる(ステップS7:YES)。そして作業者が走行変速ペダル12を踏み込むと、主クラッチ43が入り状態になり、走行機体2が発進するとともに苗植付装置23が作動して苗の植付けが開始される(ステップS8:YES)。走行主変速レバー15の操作位置は主変速レバーセンサ202によって検出される(ステップS5)。また、作業レバー16の操作方向及び操作回数は作業レバーセンサ203によって検出され、苗植付装置23の位置は昇降位置センサ209によって検出される(ステップS6,S7)。また、走行変速ペダル12の踏込み量は変速ポテンショ205によって検出される(ステップS8)。
植付け作業が開始されると、左右に往復動する苗載台29に載置された苗マットから8条分の苗植付機構28の植付爪30がそれぞれ苗を掻き取って圃場面へ植え付ける。植付作業コントローラ200は、苗載台29が左右1往復されて端寄せ検出センサ159が苗載台29の端寄せを再度検出するのを待つ(ステップS9)。
ステップS9で端寄せ検出センサ159が苗載台29の端寄せを検出すると(YES)、端寄せ検出センサ159が前回に苗載台29の端寄せを検出したときから苗載台29が左右1往復したことになる。植付作業コントローラ200は、端寄せ検出センサ159による苗載台29の端寄せ検出に応じて植付け条数(苗植付機構28の稼働数)を算出する(ステップS10,S11)。
まず、植付作業コントローラ200は、植付ユニットクラッチ位置センサ208(条止め数検出部材)の出力値から苗植付機構28の作動が停止されている条止め数を検出する(ステップS10)。例えば畦際での苗植付け作業において、4つの苗植付機構28のうち一部を作動させたくない場合に、条止めスイッチ206(図12参照)が操作されて一部の苗植付機構28が条止めされる。条止めされている苗植付機構28では、対応する苗植付爪ユニットクラッチ141が切り状態にされてロータリケース31及び植付爪30の作動が停止されている。また、切り状態の苗植付爪ユニットクラッチ141に対応する縦送りユニットクラッチ142も切り状態にされて、苗縦送りベルト155の作動が停止される。
次に、ステップS10で得られた条止め数を苗植付装置23に設けられた苗植付機構28の数(本機条数)から差し引いた値を植付け条数とする(ステップS11)。条止めされている苗植付機構28がないときは、植付け条数は苗植付装置23に設けられた苗植付機構28の数(例えば8条分)である。このように、この実施形態は、条止め機構の作動を検出する植付ユニットクラッチ位置センサ208(条止め数検出部材)の出力値に基づいて、条止めされて作動停止している苗植付機構28の数を苗植付装置23に設けられた苗植付機構28の数から減算する。これにより、苗マット使用量を算出するにあたり、条止めされて作動していない苗植付機構を除外できる。
ステップS10,S11で求めた植付け条数を用いて、苗載台29の1往復あたりの苗マット使用量が算出される(ステップS11)。植付作業コントローラ200は、苗縦取量と苗横送り量と植付け条数(苗植付機構28の稼働数)を積算して苗載台29の1往復あたりの苗マット使用量を算出する。
ここで、苗縦取量は植付爪30の1回(1株)あたりの縦方向での苗取量である。この苗縦取量は、上述のように、苗取量調節ダイヤル187の出力値に基づいて位置調節された苗取出板131の位置を検出する苗取出板センサ190の検出値に基づいて求めることができる。苗縦取量の算出は、植付作業コントローラ200内の記憶装置222に苗取出板センサ190の検出値と苗縦取量の関係を表す関数やテーブルなどの情報を予め記憶しておくことにより行うことができる。
また、苗横送り量は例えば苗マット使用行数で表される。ここで、苗マット使用行数は、苗載台29が左右一端から他端へ移動するときに苗マットから苗が掻き取られる行数を1行として、苗載台29の1往復あたり2行である。
例えば、苗縦取量を10mmとすると、苗載台29の1往復あたりの苗マット使用行数(苗横送り量)は2行なので、苗マット縦方向に20mm(10mm×2)の苗が使用されたことになる。そして、苗マット1枚あたりの縦長さ寸法を例えば560mm/枚とすると、苗載台29が1往復する間に、1条につき、約0.035枚(=10mm×2÷(560mm/枚))の苗マットが使用されたことになる。また、植付け条数を例えば8条分とすると、苗載台29が1往復する間に、苗植付装置23全体で約0.29枚(=10mm×2÷(560mm/枚)×8)の苗マットが使用されたことになる。ここで、苗マット1枚あたりの縦長さ寸法に関して、苗載台29上の苗マットの圧縮を考慮して、規格値(例えば560mm)に圧縮率を積算すれば、苗マット使用量をより正確に算出できる。この圧縮率は、例えば予め設定された値であってもよいし、作業者によって入力される値であってもよいし、後述する算出によって得られる圧縮率κの値であってもよい。
植付作業コントローラ200は、ステップS12で算出した苗マット使用量を記憶装置222に記憶する(ステップS13)。また、先に算出された苗マット使用量が記憶装置222に記憶されているときは、植付作業コントローラ200は、それらの苗マット使用量を加算して合計の苗マット使用量を算出及び記憶する。そして、植付作業コントローラ200は、合計の苗マット使用量(枚)を運転操作部13の表示パネル217内の液晶パネル218に表示する(ステップS14)。なお、苗マット使用量を記憶する記憶装置は植付作業コントローラ200内の記憶装置222であってもよいし、植付作業コントローラ200の外部に設けられた例えばフラッシュメモリやHDD、RAM等の記憶装置であってもよいし、田植機1に着脱可能に接続される例えばUSBメモリ等の記憶装置であってもよい。
その後、苗マット使用量の算出を続けるべく、例えばステップS8に移行して走行変速ペダル12の踏み込みが判定される。苗植付け作業において、例えば走行機体2の枕地での旋回時又は後進時や苗継ぎ作業時などで、走行主変速レバー15が後進位置、苗継位置又は中立位置に操作されたり(ステップS5:NO)、苗植付装置23が上昇されたり(ステップS6:NO)、植付クラッチ77が切り状態にされたり(ステップS7:NO)、走行変速ペダル12の踏み込みが解除されたりする(ステップS8:NO)。このような状態が苗植付け作業の一時的な中断であり、同一圃場内で苗植付け作動が再開される場合には、苗植付け作動再開後に苗マット使用量の算出を継続することが好ましい。そこで、苗植付け作業の中断か終了かを判定すべく、走行主変速レバー15が移動位置に操作されたときに苗植付け作業の終了と判定する(ステップS15:YES)。そして、走行主変速レバー15が移動位置に操作されるまでは、植付作業コントローラ200は苗植付け作業が継続されていると判定し、走行主変速レバー15の操作位置、苗植付装置23の田面への接地、植付クラッチ77の入り切り状態及び苗載台29の端寄せの検出、ならびに苗マット使用量の算出、記憶、加算及び表示を繰り返す(ステップS5からS15)。
このようにして苗マット使用量が算出及び表示されることにより、作業者は、例えば圃場毎や全体での苗マット使用量を管理する際、使用した苗マットの枚数を数えなくても苗マット使用量が分かる。また、得られた苗マット使用量を、作業機からの情報を無線通信で受信する作業状態管理システム(例えば特許文献2参照)の位置情報と連携させることにより、圃場毎の苗マット使用量の算出に使用するなど、苗マット使用量を活用することができる。
また、この実施形態は、苗載台29が左右の移動端へ移動されたことを検出する端寄せ検出センサ159の検出値に基づいて苗マットに対して植付爪30が苗を掻き取った苗マット使用行数(苗載台29の往復移動回数×2)を苗横送り量として算出している。端寄せ検出センサ159は苗載台端寄せ機構で必須となる装置である。したがって、苗マットに対して植付爪30が苗を掻き取った苗マット使用行数(苗横送り量)を算出するにあたり、格別な検出装置を別途設ける必要がなく、田植機1の製造コストの増大を抑制できる。
また、植付作業コントローラ200は、苗マット使用量を算出するにあたり、苗植付装置28の作動が停止されている条止め数を検出する植付ユニットクラッチ位置センサ208の出力値から条止め数を算出する(ステップS10)。さらに、植付作業コントローラ200は、本機条数(苗植付装置23に設けられた苗植付機構28の数)から条止め数を差し引いた値を植付け条数(苗植付機構28の稼働数)として算出し(ステップS11)、その植付け条数を用いて苗マット使用量を算出する(ステップS12)。これにより、条止めされて駆動していない苗植付機構28を除外して苗マット使用量を算出でき、苗マット使用量の算出精度を向上させることができる。
なお、苗マット使用量は液晶パネル218に常時表示される必要はなく、苗植付け作業が終了したときや、作業者による操作によって適宜表示されるようにしてもよい。この場合、例えば端寄せ検出センサ159が苗載台29の移動端到達を検出するごとに苗マット使用量の算出、加算及び記憶(ステップS12,S13)を行い、苗マット使用量を液晶パネル218に表示するときに合計苗マット使用量を表示する。
なお、ステップS14後の移行先のステップは、ステップS5からS9及びS15のいずれであってもよい。また、ステップS5からS8は、苗植付装置23の圃場への苗植付け作動を検出できるフローであれば、どのようなフローであってもよい。また、苗植付け作業の終了(苗マット使用量の算出終了)を判定する条件は、走行主変速レバー15が移動位置に操作されたときに限定されず、任意の条件を設定可能である。また、苗載台29の端寄せ(ステップS1からS3)は、苗マット使用量の算出開始の必須工程ではない。苗マット使用量の算出開始時期は、作業者が任意に設定できるようにしてもよい。
また、植付け作業中に苗載台29上の苗が少なくなって苗継ぎが必要な位置まで減ると、苗継センサ166の出力値がオフ(苗マット未検出)になって、表示パネル217中に苗継警報ランプ(図示は省略)が点滅する。作業者は、必要に応じて、走行主変速レバー15を苗継位置にした後、苗載台29に苗マットを補給する。通常、苗マットを補給は苗継センサ166の下方側に載置された苗がすべて消費される前に行われる。苗マット補給の際には、走行変速ペダル12の踏み込みが解除され(ステップS8:NO)、走行機体2が停止した後、走行主変速レバー15が苗継位置に操作される(ステップS5:NO)。苗載台29に苗マットが補給されると、苗継センサ166の出力値がオフ(苗マット未検出)からオン(苗マット検出)になる。
また、上記ステップS11での植付け条数算出の変形例として、植付作業コントローラ200は、植付け作業中に出力値がオンからオフに変化した苗継センサ166に対応する苗植付機構28について、条止め数に加算するか否かを判断する。この場合、植付作業コントローラ200は、出力値がオン(苗マット検出)からオフ(苗マット未検出)に変化した苗継センサ166に対応する苗植付機構28について、その苗植付機構28の稼働により苗継センサ166下方側の苗がすべて掻き取られるまではその苗植付機構28を植付け条数(苗植付機構28の稼働数)に含める。また、苗継センサ166下方側の苗がすべて掻き取られても苗継センサ166の出力値がオンにならないときは、植付作業コントローラ200はその苗継センサ166に対応する苗植付機構28を条止め数に加算する。
ここで、苗継センサ166下方側の苗がすべて掻き取られる時期は、例えば、苗継センサ166と苗取出板131の間の寸法と、苗縦取量と、苗載台29の往復移動回数から求めることができる。ここで、苗取出板131の位置は調節可能であり、苗取出板131の位置変化に応じて苗継センサ166と苗取出板131の間の寸法は変化する。そこで、苗取出板131の基準位置を設け、苗継センサ166の基準位置と苗取出板131の間の寸法を予め記憶装置222に記憶しておけば、苗取出板131の現在位置と基準位置のズレ量を求めることにより、苗継センサ166と苗取出板131の間の寸法を算出できる。また、上述のように苗縦取量は苗取出板センサ190の検出値から算出できる。そして、苗継センサ166と苗取出板131の間の寸法を苗縦取量で除算すれば、苗継センサ166下方側の苗がすべて掻き取られる苗載台29の往復移動回数を算出できる。
植付作業コントローラ200は、出力値がオンからオフに変化した苗継センサ166について、出力値がオフになってからの苗載台29の往復移動回数(端寄せ検出センサ159の検出回数)を監視する。そして、苗継センサ166下方側の苗がすべて掻き取られる苗載台29の往復移動回数に到達しても苗継センサ166の出力値がオンにならないときは、植付作業コントローラ200はその苗継センサ166に対応する苗植付機構28を条止め数に加算する。これにより、作動しているが掻き取るべき苗が苗載台29にないために圃場への苗の植付けを行っていない苗植付機構28を植付け条数から除外して、苗マット使用量をさらに正確に算出できる。
また、上記実施形態では、ステップS12において、苗取出板センサ190の検出値から苗縦取量の寸法を算出した後、苗マット1枚あたりの縦長さ寸法に対する、苗載台29の1往復あたりの苗マット縦方向掻き取寸法(苗縦取量寸法×苗マット使用行数)の割合を算出して苗マット使用量を算出したが、苗マット使用量の算出方法はこれに限定されない。例えば、「苗取出板センサ190の検出値」を「苗マット1枚あたりの縦長さに対する苗縦取量の割合」に換算可能な関数やテーブルなどの情報を例えば記憶装置222に予め記憶しておくことにより、苗取出板センサ190の検出値をミリメートル単位の苗縦取量に変換しなくても、苗マット1枚あたりの縦長さに対する苗縦取量の割合(単位:枚)を求めることができる。そして、この苗縦取量の割合に苗マット使用行数(2行)と植付け条数を積算すれば、苗載台29の1往復あたりの苗マット使用量(単位:枚)を算出できる。
また、苗マット使用量を算出するにあたり、苗横送り量として苗の横方向移動量を用いてもよい。苗載台29の1往復あたりの苗の横方向移動量(苗マット1枚あたりの横幅寸法×2)を算出し、その横方向移動量に苗縦取量の寸法と植付け条数を積算して、苗載台29の1往復あたりの苗マット使用面積を算出することができる。例えば、苗マット1枚あたりの横幅寸法を280mm、苗縦取量を10mm、植付け条数を8条とすると、苗載台29の1往復あたり、苗縦取量10mm×横方向移動量560mm×植付け条数8条=44800mm2だけ苗マットを消費したことになる。その苗マット使用面積を苗マット1枚あたりの面積で除算すれば、苗載台29の1往復あたりの苗マット使用量が求まる。例えば、苗マット1枚あたりの縦長さ寸法を560mmとすると、苗載台29の1往復につき、約0.29枚(=10mm×(280mm×2)×8÷(560mm×280mm))の苗マットが使用されたことになる。ここで、苗載台29上での苗マットの圧縮を考慮して、苗マット1枚あたりの縦長さ寸法及び横幅寸法を補正してもよい。
また、苗載台29の1往復ごとに苗マット使用量を算出しなくてもよい。例えば、端寄せ検出センサ159の端寄せ検出値から苗載台29の往復移動回数を測定し、その往復移動回数を2倍した総計苗マット使用行数と苗縦取量と植付け条数を積算して総計苗マット使用量を算出してもよい。この実施形態は、植付作業コントローラ200が苗載台29の1往復ごとに苗マット使用量を算出しないので植付作業コントローラ200の負荷を低減できる。
ここで、往復移動回数を記憶装置222に記憶するにあたり、苗縦取量情報と植付け条数情報を往復移動回数情報に関連付けて記憶することが好ましい。これにより、総計苗マット使用量を算出するにあたり、苗植付け作業中における苗縦取量と植付け条数の変更を考慮して苗マット使用量を正確に算出できる。例えば、植付作業コントローラ200は、同一の苗縦取量情報及び植付け条数情報に紐付けされた往復移動回数ごとに苗マット使用量を算出し、それらの苗マット使用量を加算して総計苗マット使用量を算出する。
また、苗載台29が1往復して端寄せ検出センサ159が苗載台29の端寄せを検出するごとに植付け条数を2倍した値を1往復合計苗マット使用行数として算出して記憶装置222に記憶し、記憶装置222に記憶された1往復合計苗マット使用行数を加算した総計苗マット使用行数に苗縦取量を積算して総計苗マット使用量を算出してもよい。この実施形態は、植付作業コントローラ200が苗載台29の1往復ごとに苗マット使用量を算出しないので植付作業コントローラ200の負荷を低減できるとともに、1往復合計苗マット使用行数を算出するにあたり条止め数を考慮するので総計苗マット使用行数を正確に算出でき、ひいては苗マット使用量を正確に算出できる。
ここで、算出した1往復合計苗マット使用行数を記憶装置222に記憶するにあたり、苗縦取量情報を1往復合計苗マット使用行数情報に関連付けて記憶することが好ましい。これにより、総計苗マット使用量を算出するにあたり、苗植付け作業中における苗縦取量の変更を考慮して苗マット使用量を正確に算出できる。例えば、植付作業コントローラ200は、同一の苗縦取量情報に紐付けされた1往復合計苗マット使用行数ごとに、総計苗マット使用行数を算出し、紐付けされた苗縦取量を総計苗マット使用行数に積算して苗縦取量ごとに合計苗マット使用量を算出する。そして、植付作業コントローラ200は、算出した苗縦取量ごとの合計苗マット使用量を加算して総計苗マット使用量を算出する。
次に、単位面積あたりの苗マット使用量の算出について説明する。上述のようにして算出する苗マット使用量は、圃場に対する単位面積あたりの苗マット使用量の算出に用いることができる。図15を参照して単位面積あたりの苗マット使用量の算出について説明する。単位面積あたりの苗マット使用量の算出に関する演算は例えば植付作業コントローラ200(図13参照)により行われる。
図14を参照して説明したステップS5からステップS13の苗マット使用量算出処理と同様にして、苗載台29の1往復あたりの苗マット使用量Aを算出する。また、苗載台29の1往復に要する時間(苗載台端寄せ検出時から次の苗載台端寄せ検出時までの時間)と、車速センサ207(図13参照)によって検出された車速(例えばメートル/秒)に基づいて、苗載台29が1往復したときに田植機1が移動した移動距離Lを算出する。
また、図14のステップS10,S11を参照して説明した植付け条数と、隣り合う苗植付機構28の植付爪30の横方向配置間隔(既知)に基づいて、苗植付け作業が行われた作業条幅Wを算出する。そして、移動距離Lと苗植付け作業条幅Wを積算して、苗植付け作業面積Sを求める。ここで、植付クラッチ77(図7参照)が入り状態になっている(苗植付け作業が行われている)ときの車速を用いて移動距離L(ひいては苗植付け作業面積S)を算出することに留意する。また、圃場220のスリップ率を考慮して、スリップ率係数(例えば0.8)を移動距離L又は苗植付け作業面積Sに積算することが好ましい。
苗載台29の1往復あたりの苗マット使用量Aと苗植付け作業面積Sに基づいて、
「単位面積あたりの苗マット使用量」=「苗マット使用量A」/「作業面積S」
を算出する。算出した「単位面積あたりの苗マット使用量」を例えば「1反あたりの苗マット使用枚数(枚/反)」に換算し、運転操作部13に配置された表示パネル217内の液晶パネル218に常時又は適宜表示する。例えば端寄せ検出センサ159が苗載台29の左右一方の移動端への到達(1往復)を検出するたびに「1反あたりの苗マット使用枚数(枚/反)」を計算して表示する。これにより、リアルタイムで単位面積あたりの苗マット使用量が分かる。
従来、苗植付け作業中には、リアルタイムでは単位面積あたりの苗マット使用量が分からなかったので、苗マット使用量の調整は、各圃場での苗植付け作業の後半で行わなければならず、1つの圃場内で苗植付け密度や1株あたりの苗量にバラつきが生じるという不具合があった。このような不具合に対し、この実施形態の田植機1は、単位面積あたりの苗マット使用量をリアルタイムで液晶パネル218に表示できる。したがって、作業者は、例えば、ある圃場に対する苗植付け作業の開始後の早い段階で、用意した苗マット数に対して1株あたりの苗量や苗植付け密度を単位面積あたりの苗マット使用量及び圃場面積から逆算して調整できる。また、作業者は、所望の1株あたりの苗取量や苗植付け密度に対して必要な苗マット数を単位面積あたりの苗マット使用量及び圃場面積から逆算して求めることもできる。これにより、1つの圃場内や圃場毎での苗植付け密度や1株あたりの苗量のバラつきを低減できる。
また、施肥装置117(図1及び図2参照)を用いた施肥についても、苗植付け作業面積S(図15参照)を用いて、肥料の消費量をリアルタイムに計算することができる。施肥装置117のホッパ118内の肥料重さを測定する重量センサ(例えば特許文献3参照)を設け、田植機1が移動距離L(図15参照)だけ進む間に圃場220に繰り出された肥料の重さを測定する。測定した肥料重さを苗植付け作業面積Sで除算することにより、単位面積あたりの肥料の消費量を算出することができる。例えば端寄せ検出センサ159が苗載台29の左右一方の移動端への到達(1往復)を検出するごとに単位面積あたりの肥料の消費量を計算して液晶パネル218に表示することにより、リアルタイムで肥料の消費量がわかり、計画通りの施肥量を確保できるとともに、圃場220内での施肥量のバラつきをなくして苗の生育ムラをなくすことができる。
ところで、田植機1には、図4に示すように、苗台横送り機構79の横送り量を切り替える横送り切替レバー82が設けられている。横送り切替レバー82の位置を調節することにより、苗載台29の横送りピッチが変化し、苗載台29が左右一方の移動端から他方の移動端へ移動する間に植付爪30が苗を掻き取る回数(横送り回数)が調節される。苗載台29の横移動が速いほど苗を掻き取る回数は少なくなるので、横送り回数が少ないほど苗載台29の横移動は速くなる。また、苗載台29の横移動が速いほど、植付爪30による苗の掻き取り量は少なくなる。
このように、横送り切替レバー82の位置(横送り回数)の調節は1株あたりの苗量を決定するので重要である。しかし、横送り切替レバー82は苗植付装置23に設けられているために飛散する泥水等によって汚れてしまうので、作業者は横送り切替レバー82の設定位置を確認しづらく、操作性の観点から改善の余地があった。
そこで、株間変速ケース75から植付入力ケース26に動力伝達するための植付伝動軸78(図3及び図7参照)の回転数を計測する機能を例えば植付作業コントローラ200(図13参照)に設け、苗載台29が左右1往復するのに要する時間Ct+1−Ct(ここでCtは任意の端寄せ検出時期)を端寄せ検出センサ159を用いて測定し、時間Ct+1−Ctにおける植付伝動軸78の回転数と横送り回数の関係に基づいて横送り切替レバー82の設定位置(横送り回数)を算出するようにしてもよい。
上述のように、植付伝動軸78の回転速度に対して、ロータリケース31(植付爪30)の回転速度(苗掻き取り回数)は一定であるが、苗載台29の横移動の速さは設定されている横送り回数に応じて変化する。つまり、横送り切替レバー82の設定位置(横送り回数)ごとに、時間Ct+1−Ctにおける植付伝動軸78の回転数が変化する。また、横送り切替レバー82の設定位置と時間Ct+1−Ctにおける植付伝動軸78の回転数の関係は、横送り切替レバー82の設定位置ごとに一定である。したがって、例えば植付作業コントローラ200の記憶装置222に、横送り回数と植付伝動軸78の回転数の関係を示す関数やテーブルなどの情報を予め記憶しておけば、その情報と、時間Ct+1−Ctにおける植付伝動軸78の回転数を用いて、横送り切替レバー82の設定位置を検出することができる。
例えば、時間Ct+1−Ctにおける植付伝動軸78の検出回転数をN[min−1]とし、上記検出時期Ct+1、Ctにおける植付伝動軸78の検出回転数をそれぞれNt+1、Ntとする。そして、端寄せ検出センサ159の検出値と、植付伝動軸78の回転数を計測する機能とを用いて、時間Ct+1−Ctにおける検出回転数N(=Nt+1−Nt)を算出する。例えば植付伝動軸78が1回転するとロータリケース31が1/2回転して植付爪30が苗を1回掻き取るように設定されているとする。このとき、検出回転数N=Nt+1−Nt=40であれば、苗載台29の1往復あたりの苗掻き取り回数は40回なので、横送り切替レバー82の設定位置(横送り回数)は20回の位置である。また、検出回転数N=Nt+1−Nt=36であれば、横送り切替レバー82の設定位置は18回の位置である。なお、これらの数値は一例である。
このように、検出回転数Nと横送り回数との関係を示す情報を用いて横送り回数(横送り切替レバー82の設定位置)を算出できる。算出した横送り回数を液晶パネル218に適宜表示するようにすれば、作業者は泥水で汚れた横送り切替レバー82を触って設定位置を確認することなく、操縦座席18に座ったまま横送り回数(横送り切替レバー82の設定位置)を把握することが可能になる。
なお、植付伝動軸78の回転数を計測する機能は、例えば植付伝動軸78の回転数を計測する植付伝動軸回転数検出装置223(図7参照)の出力値から植付作業コントローラ200が植付伝動軸78の回転数を算出することにより実現される。なお、植付伝動軸回転数検出装置223は苗植付装置23側に配置されていてもよい。また、PTO伝動軸機構74に接続されるミッションケース6のPTO出力軸の回転数を検出する回転数検出装置と株間変速ケース75内の株間変速機構76のギヤ選択状態を検出するセンサの出力値を用いて植付作業コントローラ200が演算することによっても実現できる。ただし、植付伝動軸78の回転数を計測する機能は他のセンサ等を用いて実現されてもよい。
また、上記のようにして算出した横送り回数と、苗取出板センサ190の検出値を用いて算出される上記苗縦取量と、苗継センサ166(図2、図4及び図13参照)の検出値と、端寄せ検出センサ159の検出値と、時間Ct+1−Ctにおける植付伝動軸78の上記検出回転数Nを用いて、苗マットの圧縮度合いを推測することができる。端寄せボタン201が押し操作されて苗載台29が左右一方の移動端に移動された後、苗載台29に苗マットが載置されて苗継センサ166の出力値がオン(苗マット検出)になる。苗植付け作業が開始され、苗マットの下端側から苗が順次掻き取られると、苗マットは下方側へ間欠的に縦送りされ、やがて苗継センサ166の出力値がオフ(苗マット未検出)になる。ここで、苗継センサ166の出力値がオンからオフに切り替わるまでの植付伝動軸78の上記検出回転数Nは、苗縦取量(苗縦送り量)が多いほど少なくなる。また、横送り回数が多く設定されているほど、苗載台29の横移動が遅くなる(縦送り間隔が長くなる)ので、上記検出回転数Nは多くなくなる。つまり、苗縦取量及び横送り回数の変化に応じて、苗継センサ166の出力値がオンからオフに切り替わるまでの上記検出回転数Nは変化する。
そこで、苗縦取量及び横送り回数と、苗継センサ166の出力値がオンからオフに切り替わるまでの上記検出回転数Nとの関係を表す関数やテーブルなどの情報などを例えば植付作業コントローラ200の記憶装置222に設定検出回数Ntargetとして予め記憶しておく。そして、苗縦取量及び横送り回数に応じた設定検出回数Ntargetを読み出し、その設定検出回転数Ntargetと、苗継センサ166の出力値がオンからオフに切り替わるまで実際に計測された植付伝動軸78の検出回転数Nactualとの差分を求めることにより、苗マットの圧縮度合を推測できる。実際の検出回転数Nactualが設定検出回転数Ntargetよりも少ないほど、苗マットの圧縮度合が大きいことを意味する。この苗マットの圧縮度合は苗植付け作業における苗消費量の一指標として利用することができる。
例えば、苗マットの圧縮率κは次の式(1)により求めることができる。
圧縮率κ=(Nactual/Ntarget)×C+α ・・・(1)
ここで、Cは圧縮補正係数、αは苗継センサ166の特性定数である。圧縮補正係数Cは苗マット強度(崩れやすさ)などによって左右される。また、特性定数αは苗マット重量の違いによる苗継センサ166の出力値特性変化の調整項である。このように、苗マット強度のバラつきや、苗マット重量に対する苗継センサ166の検出特性変化を考慮して苗マットの圧縮率κを推測する。
なお、意図的に縦方向長さが調整された苗マット等が使用されることを考慮して、設定検出回転数Ntargetに公差を設定した上で、実際の検出回転数Nactualがその公差の範囲外である場合には苗マットの圧縮度合の推測に使用しない等、計算上のフィルターを設けることも有効である。また、苗マットの圧縮率κに任意範囲の公差を設定し、その公差範囲外の圧縮率κが算出されたときには異常値として取り扱い、苗マットの圧縮程度の推測精度を向上させることも有効である。また、8つの苗継センサ166の出力値を用いて8つの上記圧縮率κをそれぞれ算出し、それらの圧縮率κの平均値もしくは最大値又は最小値を用いることも可能である。
上述のように、上記実施形態では単位面積あたりの苗マット使用量を算出するようにした。この単位面積あたりの苗マット使用量を算出する機能を用い、単位面積あたりの苗マット使用量の目標値を設定したときにそれを満足するように苗縦取量が制御されるようにしてもよい。図15を参照して説明したように、「単位面積あたりの苗マット使用量」は「苗マット使用量A」/「作業面積S」で表すことができる。
ここで、「苗マット使用量A」は、苗載台29の1往復あたりの苗マット使用量であり、図14を参照して説明したように、例えば、苗載台29の1往復あたりの「苗マット1枚あたりの縦長さに対する苗縦取量(苗縦取量/苗マット縦長さ)」と「苗マット使用行数(2行)」と「植付け条数」の積算値である。また、「作業面積S」は「移動距離L」と「苗植付け作業条幅W」である。この「移動距離L」は、「時間Ct+1−Ct(苗載台29が左右1往復するのに要する時間)」と田植機1の「車速」の積におおよそ比例する。また、「苗植付け作業条幅W」は「植付け条数」に応じる。また、苗載台29の1往復あたりの「苗マット使用行数」は一定である。
したがって、「植付け条数」と「時間Ct+1−Ct」と「車速」がわかれば、「単位面積あたりの苗マット使用量」の目標値に対する「苗縦取量」を算出することができる。そして、算出した「苗縦取量」に応じる苗取出板センサ190の検出値を目標値として苗取調節モータ184が駆動されて苗取出板131の位置が調節されることにより、単位面積あたりの苗マット使用量の目標値に対して苗縦取量を自動で調節することができる。
従来、面積が確定した一定面積に対して苗を植え付けてみないと苗マット使用量がわからなかったが、この実施形態によれば、単位面積あたりの苗マット使用量の目標値を設定することにより、自動的に苗縦取量が調節されるので、1つの圃場内や圃場毎での苗植付け密度や1株あたりの苗量のバラつきを低減できる。なお、単位面積あたりの苗マット使用量は、スリップ率や苗の植付け間隔(株間)などの変数に応じて変化するので、これらの変数を考慮して、単位面積あたりの苗マット使用量の目標値に対する苗縦取量を算出することが好ましい。
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。