JP6544945B2 - 位置検出装置、これを用いた装置及び位置検出方法 - Google Patents

位置検出装置、これを用いた装置及び位置検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、可動部材の絶対位置を検出する位置検出装置および位置検出方法に関し、特に光学スケールを用いた位置検出装置および位置検出方法に関する。
光学式の位置検出装置(以下、光学式エンコーダという)は、可動部材と固定部材のうち一方に取り付けられた受光センサと、他方に取り付けられた光学スケールとにより構成される。光学スケールには光を反射または透過する周期パターンが設けられ、可動部材が移動する際に周期パターンからの光を受光センサにより検出することで、周期パターンの周期に応じた周期で変化する検出信号が得られる。
このような光学式エンコーダとして、光学スケールに互いに位相が異なる2つ(1組)の周期パターンを設け、該2つの周期パターンからの光を受光センサにより検出することで互いに位相が異なる2つの周期信号(1組の2相信号)を得るものがある。そして、これら2相信号を用いた演算を行うことで、可動部材と固定部材の相対位置を検出することができる。
さらに、光学式エンコーダには、特許文献1に開示されているように、光学スケールに互いに周期が異なる長周期と短周期の2つの周期パターンの組を、それら長周期と短周期をわずかずつ異ならせて複数組設けたものがある。この光学式エンコーダでは、複数組の周期パターンからの光を受光センサにより検出することで複数組の2相信号を得て、該複数組の2相信号に対する演算を行うことにより互いに周期が異なる複数の位置信号(長周期の上位信号と短周期の下位信号)を生成する。そして、これら複数の位置信号を結合することで可動部材の絶対位置を検出することができる。
特開2013−234861号公報
しかしながら、上記のような光学式エンコーダには、光学スケールに汚れ(傷を含む)や塵埃が付いた場合に検出信号にノイズが発生し、正確な位置検出ができなくなる、つまりは位置の誤検出が発生するという問題がある。特に特許文献1にて開示された光学式エンコーダでは、上位信号と下位信号とを結合するために上位信号を逓倍処理する際にノイズまで増幅されるため、光学スケール上の汚れや塵埃の影響が大きい。
本発明は、光学スケールに汚れや塵埃が付いた場合の位置の誤検出を回避することができるようにした位置検出装置を提供する。
本発明の一側面としての位置検出装置は、互いに周期が異なる複数の周期パターンが形成された光学スケールとともに用いられ、可動部材の移動に伴って光学スケールと相対移動する際に複数の周期パターンからの光を受光して該複数の周期パターンの周期に応じた周期でそれぞれ変化する複数の第1の検出信号を生成する光学式の第1の位置検出手段と、可動部材の移動に伴って変化する第2の検出信号を生成する非光学式の第2の位置検出手段と、複数の第1の検出信号を用いて複数の折り返しを有する第1の位置信号を生成するとともに、第2の検出信号を用いて第1の位置信号とは分解能が異なり、前記第1の位置信号における前記複数の折り返しのうち1つを特定可能な分解能を有する第2の位置信号を生成し、第1の位置信号と第2の位置信号とに基づいて可動部材の絶対位置を示す絶対位置信号を生成する演算手段と、第1の位置信号に含まれるノイズ成分が所定量より小さい場合は可動部材の位置を示す信号として絶対位置信号を選択し、ノイズ成分が所定量より大きい場合は可動部材の位置を示す信号として第2の位置信号を選択する選択手段とを有することを特徴とする。
なお、上記位置検出装置と、該位置検出装置により絶対位置が検出される可動部材とを有する装置も、本発明の他の一側面を構成する。
本発明では、光学スケールに付いた汚れや塵埃の影響により第1の位置信号のノイズ成分が所定量より大きい場合には、絶対位置信号に代えて第2の位置信号を可動部材の位置を示す信号として選択する。これにより、光学スケールに付いた汚れや塵埃の影響による可動部材の位置の誤検出を回避することができる。そして、この位置検出装置を用いて可動部材の絶対位置を検出することで、光学スケールに汚れや塵埃が付いても可動部材の良好な位置制御や絶対位置の情報を用いた良好な処理等を行うことが可能な各種装置を提供することができる。
本発明の実施例1であるエンコーダの構成を示すブロック図。 実施例1におけるスケールトラックおよびトラックパターンの検出方法を説明する図。 従来の絶対位置演算処理を示すフローチャート。 バーニア演算を説明する図。 従来の絶対位置演算処理における上位、中位、下位および最下位信号を示す図。 従来の絶対位置演算処理における上位信号および中位信号の結合処理を説明する図。 従来の絶対位置演算処理における信号の結合処理に関する課題を説明する図。 実施例1の絶対位置演算処理における上位、中位、下位および最下位信号を示す図。 実施例1におけるポテンショメータの正規化処理を示すフローチャート。 実施例1における絶対位置演算処理を示すフローチャート。 実施例1におけるポテンショメータの回路を示す図。 実施例1における異物判定処理および位置誤回避処理を示すフローチャート。 本発明の実施例2である撮像装置の構成を示す図。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の実施例1である位置検出装置としてのエンコーダの構成を示している。101は光学スケール(以下、単にスケールという)であり、固定部材104に対して移動可能な可動部材102に取り付けられている。スケール101には、図2(a)にも示す第1のスケールトラック101−1と第2のスケールトラック101−2とが設けられている。
103は光学式の第1の位置検出手段としての光学センサユニット(以下、単に光学センサという)であり、固定部材104に取り付けられている。光学センサ103には、LEDを光源とする発光部103−1と、第1の受光部103−2および第2の受光部103−3とが設けられている。第1および第2の受光部103−2,103−3にはそれぞれ、複数の受光素子がスケール101(可動部材102)の移動方向、すなわちスケール101と光学センサ103の相対移動方向である位置検出方向に配列されている。
本実施例ではスケール101が可動部材102に取り付けられ、光学センサ103が固定部材104に取り付けられている場合について説明するが、スケール101が固定部材104に取り付けられ、光学センサ103が可動部材102に取り付けられていてもよい。すなわち、可動部材102が固定部材104に対して移動することで、スケール101と光学センサ103とが相対移動すればよい。
光学センサ103は、スケール101に対向するように配置されている。光学センサ103の発光部103−1から発せられた発散光束としての光は、スケール101上の第1のスケールトラック101−1および第2のスケールトラック101−2に照射される。第1のスケールトラック101−1に設けられた複数の周期パターン(図2(a)に示す2つの周期パターン201−1,201−2)で反射した光は、第1の受光部103−2に向かう。これにより、第1のスケールトラック101−1の2つの周期パターン201−1,201−2の光学像(以下、パターン像という)が第1の受光部103−2上に形成される。
また、第2のスケールトラック101−2に設けられた複数の周期パターン(図2(a)に示す2つの周期パターン202−1,202−2)で反射した光は、第2の受光部103−3に向かう。これにより、第2のスケールトラック101−2の2つの周期パターン202−1,202−2の光学像(パターン像)が第2の受光部103−3上に形成される。各周期パターンは、光を反射する反射部と光を反射しない非反射部とが位置検出方向に交互に配置されて構成されている。
第1の受光部103−2は、受光した2つパターン像を光電変換し(すなわち、周期パターン201−1,201−2を読み取り)、該2つのパターン像に対応する2つの検出信号を出力する。同様に、第2の受光部103−3は、受光した2つパターン像を光電変換し(すなわち、周期パターン202−1,202−2を読み取り)、該2つのパターン像に対応する2つの検出信号を出力する。可動部材102とともにスケール101が光学センサ103に対して移動すると、各検出信号はこれに対応する周期パターンの周期に応じた周期で変化する信号(以下、周期信号という)となる。
第1の受光部103−2から出力された各周期信号はAD変換部105−1でデジタル信号に変換されて絶対位置演算部106に入力される。第2の受光部103−3から出力された各周期信号はAD変換部105−2でデジタル信号に変換されて絶対位置演算部106に入力される。
演算手段としての絶対位置演算部106は、AD変換部105−1,105−2から入力された信号を用いて、可動部材102の絶対位置を演算する。
ピッチ切り替え信号出力部107は、第1および第2の受光部103−2,103−3のそれぞれに設けられた複数の受光素子における受光ピッチ(検出ピッチ)を切り替えるためのピッチ切り替え信号を光学センサ103に出力する。光学センサ103は、ピッチ切り替え信号に応じて、受光ピッチを周期の周期パターン201−1,202−1のピッチに対応した第1の受光ピッチと周期の周期パターン201−2,202−2のピッチに対応した第2の受光ピッチとに切り替える。これにより、第1および第2の受光部103−2,103−3のそれぞれが2つずつの周期パターンを読み取ることができる。
図2(a)に示す第1および第2のスケールトラック101−1,101−2の周期パターン201−1,201−2,202−1,202−2についてさらに詳しく説明する。なお、図2(a)は各スケールトラックの周期パターンを簡略化して示したものである。実際の各スケールトラックには、スケール101における位置検出方向に直交する方向(以下、スケール幅方向という)において、図2(a)に示した2つの周期パターンよりも多くの数の周期パターンが形成されている。
第1のスケールトラック101−1に設けられた2つの周期パターン201−1,201−2は、互いに異なる周期P1,P2を有する。周期P1は周期P2より長い。以下の説明では、周期パターン201−1を長周期パターンともいい、周期パターン201−2を短周期パターンともいう。実際のスケールでは、長周期パターン201−1と短周期パターン201−2とがスケール幅方向に交互に配置されている。
一方、第2のスケールトラック101−2に設けられた2つの周期パターン202−1,202−2は、互いに異なる周期P1′,P2′を有する。周期P1′は周期P2′より長い。以下の説明では、周期パターン202−1を長周期パターンともいい、周期パターン202−2を短周期パターンともいう。実際のスケールでは、長周期パターン202−1と短周期パターン202−2とがスケール幅方向に交互に配置されている。
長周期パターン201−1の周期P1と長周期パターン202−1の周期P1′とは互いにわずかに異なっており(P1<P1′)、短周期パターン201−2の周期P2と短周期パターン202−2の周期P2′も互いにわずかに異なっている(P2<P2′)。
図2(b)には、長周期パターン201−1,202−1または短周期パターン201−2,202−2を読み取った光学センサ103の第1および第2の受光部103−2,103−3から出力される2つの周期信号を示している。縦軸は各受光部からの周期信号の値(10bitのAD変換値)を示し、横軸は光学センサ103に対するスケール101(可動部材102)の位置を示す。可動部材102の移動に伴って第1および第2の受光部103−2,103−3から互いに位相が異なる2相の周期信号(以下、まとめて2相信号ともいう)203,204が出力される。これら2相信号203,204は互いに位相が90°異なるサイン波とコサイン波に相当する。
図2(c)には、サイン波およびコサイン波としての2相信号203,204を逆正接変換により0から2πにて変化する信号205に変換した結果を示している。縦軸は0から2πの角度(ラジアン)であり、横軸は光学センサ103に対するスケール101の位置を示す。
ここまでの構成は、従来の光学式エンコーダの構成と同じである。ここでは、従来の光学式エンコーダにおける絶対位置の演算処理とそれにより生ずる課題について説明する。
図3のフローチャートには、従来の光学式エンコーダにおいて絶対位置演算部106が行う絶対位置演算処理を示している。ここでは例として、スケール101の位置検出方向での長さ(スケール長)を40mmとする。また、スケール101上の周期パターン201−1,201−2,202−1,202−2のパターン数(反射部の数)をそれぞれ75,300,74,290とする。また、以下の説明では、周期パターン201−1,201−2,202−1,202−2に対応する周期信号をそれぞれ、P1,P2,P1′,P2′と称する。
ステップS301においてピッチ切り替え信号出力部107がP2,P2′に対応する受光ピッチを選択していることを検出した絶対位置演算部106は、ステップS302に進む。そして、ステップS302において、AD変換部105−1,105−2でサンプリングされた信号をP2,P2′として検出する。
次に、ステップS303では、絶対位置演算部106は、P2,P2′の逆正接変換処理を行って信号θ2,θ2′を生成する。サイン波とコサイン波としてのP2,P2′をそれぞれ、
[P2]sinθ/[P2]cosθ
[P2′]sinθ/[P2′]
として表すと、P2,P2′の逆正接変換は以下の式(1),(2)で求められる。
θ2=ATAN2([P2]sinθ,[P2]cosθ) (1)
θ2′=ATAN2([P2′]sinθ,[P2′]cosθ) (2)
この逆正接変換処理の後、絶対位置演算部106は、ステップS304にてピッチ切り替え信号出力部107にP1,P1′に対応する受光ピッチの選択命令を出力する。その後、ステップS301に戻る。
ステップS301においてピッチ切り替え信号出力部107がP1,P1′に対応する受光ピッチを選択していることを検出した絶対位置演算部106は、ステップS305に進む。そして、ステップS305において、AD変換部105−1,105−2でサンプリングされた信号をP1,P1′として検出する。
次に、ステップS306では、絶対位置演算部106は、P1,P1′の逆正接変換処理を行って信号θ1,θ1′を生成する。サイン波とコサイン波としてのP1,P1′をそれぞれ、
[P1]sinθ/[P2]cosθ
[P1′]sinθ/[P1′]
として表すと、P1,P1′の逆正接変換は以下の式(3),(4)で求められる。
θ1=ATAN2([P1]sinθ,[P1]cosθ) (3)
θ1′=ATAN2([P1′]sinθ,[P1′]cosθ) (4)
この逆正接変換処理の後、絶対位置演算部106は、ステップS307にてピッチ切り替え信号出力部107にP2,P2′に対応する受光ピッチの選択命令を出力する。その後、ステップS308に進む。
ステップS308では、絶対位置演算部106は、信号θ1,θ1′に対するバーニア演算処理(以下、単にバーニア演算という)を行って絶対位置を求めるために用いる上位信号を生成する。また、絶対位置演算部106は、信号θ2,θ2′に対するバーニア演算を行って絶対位置を求めるために用いる中位信号を生成する。この後、ステップS309に進む。
図4には、信号θ1,θ1′に対するバーニア演算を示している。401,402は信号θ1,θ1′を示す。信号θ1,θ1′に対するバーニア演算によって生成される上位信号としてのバーニア信号をθ1−1′とすると、θ1−1′は以下の式(5)より算出される。
θ1−1′=INT(θ1−θ1′) (5)
図4中の403はバーニア信号θ1−1′を示している。
同様に、信号θ2,θ2′に対するバーニア演算によって生成される中位信号としてのバーニア信号をθ2−2′とすると、θ2−2′は以下の式(6)より算出される。
θ2−2′=INT(θ2−θ2′) (6)
バーニア信号の0〜2πにおける折り返しの位置は、バーニア演算の対象となった2つの信号の折り返しが一致する位相(つまりは2つの信号に対応する周期パターンのパターン数の最小公倍数)となる。このため、0〜2πにおいてθ1−1′の折り返しは1回、θ2−2′の折り返しは10回となる。
θ1−1′の折り返しの位置は、P1とP1′に対応する周期パターン201−1,202−1における下記の位置となる。
(P1:P1′)=(75,74)
θ2−2′の折り返しの位置は、P2とP2′に対応する周期パターン201−2,202−2における下記の位置となる。
(P2:P2′)=(30,29),(60,58),(90,87),
(120,116),(150,145),(180,174),(210,203),(240,232),(270,261),(300,290)
以上説明したステップS301からステップS308の処理によって、絶対位置を算出するための上位信号θ1−1′と、中位信号θ2−2′と、下位信号としての信号θ1と、最下位信号としての信号θ2の4種類の信号が算出される。中位信号θ2−2′、下位信号θ1および最下位信号θ2が第1の位置信号に相当する。
図5には、演算処理によって得られる絶対位置を示している。図5において、(a)はバーニア信号θ1−1′に相当する上位信号を示している。この上位信号はスケール101上で1回の折り返しのみ有する。(b)はバーニア信号θ2−2′に相当する中位信号を示している。この中位信号は、スケール101上で10回の折り返しを有する。中位信号では、上位信号のレベルから何番目の折り返し信号かを求めることができる。つまり、10回の折り返しのうち1つの折り返しを特定可能である。(c)は信号θ1に相当する下位信号を示している。この下位信号は、スケール101上で75回の折り返しを有する。下位信号では、中位信号のレベルから何番目の折り返し信号かを求めることができる。(d)は信号θ2に相当する最下位信号を示している。この最下位信号は、スケール101上で300回の折り返しを有する。最下位信号では、下位信号のレベルから何番目の折り返し信号かを検出することができる。したがって、これら上位、中位、下位および最下位信号を結合することで、絶対位置を得ることができる。
次に上位、中位、下位および最下位信号の結合処理について説明する。まず結合処理の例として、上位信号と中位信号の結合処理を図6を用いて説明する。
図6において、(a)は上位信号θ1−1′を、(b)は中位信号θ2−2′をそれぞれ示している。まず、上位信号と中位信号を結合するためにゾーン信号を生成する。ゾーン信号とは、中位信号が何番目の折り返し信号かを特定するために生成される信号である。上述したように、上位信号はスケール101上で1回の折り返しを有し、中位信号はスケール101上で10回の折り返しを有するので、上位信号を10倍(逓倍)すると(c)に示すように中位信号の傾きと一致する傾きを有する信号が得られる。
上位信号を10倍して得られた信号と中位信号との差分をとることで、(d)に示すゾーン信号が得られる。ただし、ゾーン信号はノイズを含む信号であるため、ゾーン信号を離散化処理することでノイズを除去する。(e)は離散化処理されたゾーン信号を示している。
最後に、離散化されたゾーン信号に対して中位信号を足し合わせると、(f)に示すようにこれらが結合された信号(以下、結合信号という)を得ることができる。結合信号は、中位信号と同じ分解能と上位信号と同じスケールレンジとを併せ持つ信号である。
ステップS309では、絶対位置演算部106は、図6を用いて説明した結合処理と同様の結合処理により、最下位信号と下位信号とを結合する。次に、ステップS310において、同様に下位信号と中位信号を結合する。続いて、ステップS311において、図6に示した結合処理により中位信号と上位信号を結合する。こうして、最終的に最下位信号、下位信号、中位信号および上位信号が結合されて1つの絶対位置信号が生成される。
以下、ステップS309〜ステップS311での結合処理を数式を用いて説明する。
[下位信号と最下位信号の結合処理(ステップS309)]
最下位信号がスケール101上で300回の折り返しを有し、下位信号がスケール101上で75回の折り返しを有するので、下位信号を4(=300/75)倍すると最下位信号と傾きが一致する。絶対位置演算部106は、以下の式(7)に示すように、下位信号θ1を4倍することで得られた信号と最下位信号θ2との差分をとることでゾーン信号Zone(θ1)を得る。
Zone(θ1)=(θ1)×4−(θ2) (7)
さらに、以下の式(8)によりゾーン信号の離散化処理を行ってノイズを除去する。
ZoneN(θ1)=INT((Zone(θ1)+180)/360) (8)
次に、離散化されたゾーン信号ZoneN(θ1)と最下位信号θ2を以下の式(9)のように足し合わせることで、下位信号と最下位信号とを結合した下位結合信号Abs−θ1を算出する。
Abs−θ1=ZoneN(θ1)+θ2 (9)
[中位信号と下位信号の結合処理(ステップS310)]
下位信号がスケール101上で75回の折り返しを有し、中位信号がスケール101上で10回の折り返しを有するので、中位信号を7.5(=75/10)倍すると下位信号との傾きが一致する。絶対位置演算部106は、以下の式(10)に示すように、中位信号θ2−2′を7.5倍することで得られた信号と下位信号θ1との差分をとってゾーン信号Zone(θ2−2′)を得る。
Zone(θ2−2′)=(θ2−2′)×7.5−(θ1)・・・(10)
さらに、以下の式(11)によりゾーン信号の離散化処理を行ってノイズを除去する。
ZoneN(θ2−2′)=INT((Zone(θ2−2′)+180)/360) (11)
次に、離散化されたゾーン信号ZoneN(θ2−2′)と下位結合信号abs−θ1を以下の式(12)のように足し合わせることで、中位信号と下位信号とを結合した中位結合信号Abs−(θ2−2′)を算出する。
Abs−(θ2−2′)=ZoneN(θ2−2′)+(abs−θ1) (12)
ここで、下位結合信号abs−θ1は下位信号と最下位信号とが結合された信号であるので、中位結合信号Abs−(θ2−2′)は中位信号、下位信号および最下位信号が結合された信号に相当する。
「上位信号と中位信号の結合処理(ステップS311)」
上位信号がスケール101上で1回の折り返しを有し、中位信号がスケール101上で10回の折り返しを有するので、上位信号を10(=10/1)倍すると中位信号と傾きが一致する。絶対位置演算部106は、以下の式(13)に示すように、上位信号θ1−1′を10倍することで得られた信号と中位信号θ2−θ2′との差分をとってゾーン信号を得る。
Zone(θ1−1′)=(θ1−1′)×10−(θ2−θ2′) (13)
さらに、以下の式(14)によりゾーン信号の離散化処理を行ってノイズを除去する。
ZoneN(θ1−1′)=INT((Zone(θ1−1′)+180)/360) (14)
次に、離散化されたゾーン信号ZoneN(θ1−1′)と中位結合信号Abs−(θ2−2′)を以下の式(15)のように足し合わせることで、上位信号と中位信号とを結合した上位結合信号Abs−(θ1−1′)を算出する。
Abs−(θ1−1′)=ZoneN(θ1−1′)+(Abs−(θ2−2′)) (15)
ここで、中位結合信号Abs−(θ2−2′)は中位信号、下位信号および最下位信号を結合した信号であるので、上位結合信号Abs−(θ′)は上位信号、中位信号、下位信号および最下位信号が全て結合された信号に相当する。したがって、上位結合信号Abs−(θ1−1′)は、最下位信号と同じ分解能と上位信号と同じスケールレンジとを併せ持った信号となる。
以上説明したステップS300からステップS311の処理によって、絶対位置を示す信号である絶対位置信号Abs−(θ1−1′)が生成される。
次に、上述した従来の絶対位置演算処理により生ずる課題について説明する。上述したように構成される光学式エンコーダでは、スケール101上の複数の周期パターンを光学センサ103で読み取ることで生成された互いに周期(折り返し数)が異なる上位、中位、下位および最下位信号を結合することで、高い精度で絶対位置を得る。しかし、スケール101に付いた汚れ(傷を含む)や塵埃の影響を受けやすいことが問題である。特に、ゾーン信号の分割数が多くなる上位信号と中位信号を結合する場合にその影響が顕著に表れる。その原因について説明する。
図7には、結合される上位信号と中位信号を示している。これらの結合処理については図6を用いて説明した通りである。図7において、(a)は上位信号θ1−1′を、(b)は中位信号θ2−2′を示している。ステップS311の説明で述べたように、上位信号を10倍すると(c)に示すように中位信号の傾きと一致した傾きを有する信号が得られ、この上位信号を10倍した信号と中位信号との差分をとることで(d)に示すゾーン信号が得られる。
ただし、(a)に示す上位信号がスケール101に付いた汚れや塵埃に起因するノイズを含むと、この上位信号を10倍することで、(c)に示すようにノイズ701までも増幅される。ステップS309,S310で説明した下位信号と最下位信号の結合および中位信号と下位信号の結合に際してのゾーン信号生成時における下位信号および中位信号に対する倍率は、前者が4倍で、後者が7.5倍である。これらに比べて、上位信号と中位信号の結合においては上位信号を10倍するため、ノイズの増幅が顕著である。
増幅されたノイズ701を含む(c)に示す信号から(d)に示すゾーン信号を生成すると、ゾーン信号にもノイズ702が残り、このゾーン信号を離散化処理すると、(e)に示すようにゾーンを誤らせるような信号成分703が生じる。この結果、正しい絶対位置を演算することができなくなる。
発明者の実験によれば、スケール101に50μm以上の大きさ汚れや塵埃が付くことによって上位信号のノイズレベルが±130°程度にまで達し、十分な位置検出精度が得られなくなる。一方、中位信号および下位信号においては、スケール101に50μm以上の大きさ汚れや塵埃が付いた場合でも、ノイズレベルは±90°以下に収まっており、位置検出精度には大きな影響はない。
以下、本実施例に特有の構成について、再び図1を用いて説明する。108は非光学式の第2の位置検出手段としてのポテンショメータ(可変抵抗器)であり、固定部材104と一体に形成された又は一体的に接続された固定部材109に取り付けられている。108−1はポテンショメータ108のスケール部(抵抗器)であり、108−2は接点ブラシを介してスケール部108−1に接触しながらスライド可能なスライダ部である。スライダ部108−2は可動部材102と一体に形成された又は一体的に接続された可動部材110に取り付けられており、これにより可動部材110(可動部材102)の移動に伴ってスケール部108−1に対してスライドする。
なお、本実施例では、スケール部108−1を固定部材109に取り付け、スライダ部108−2を可動部材110に取り付けているが、スライダ部108−2を固定部材109に取り付けてもよい。
図11はポテンショメータ108の回路を示している。スケール部108−1を構成する抵抗器1100の両端子はそれぞれ、電源(Vcc)1101とグランド(GND)1102とに接続されている。可動部材110に取り付けられたスライダ部108−2の接点ブラシは、可動部材110の移動に伴って抵抗器1100に対して接触しながらスライドする。
ポテンショメータ108の電気抵抗値はスケール部108−1(抵抗器1100)に対するスライダ部108−2の接触位置、つまりは可動部材110の位置に応じて変化する。ポテンショメータ108は、その電気抵抗値に応じて電源電圧Vccを分圧した電圧信号を分圧端子1103から出力するので、該電圧信号は可動部材110の位置を示す信号となる。
図1に示すように、ポテンショメータ108からの信号はAD変換部111によってデジタル変換されて絶対位置演算部106に入力される。本実施例では、絶対位置演算部106は、ポテンショメータ108から得られた信号(AD変換部111からの信号)を、先に説明した光学式エンコーダにて得られた上位信号θ1−1′に代わる上位信号(第2の位置信号)として絶対位置の演算に用いる。
なお、本実施例では、上位信号をポテンショメータ108により生成する場合について説明するが、他の位置信号(中位信号等)をポテンショメータ108により生成してもよい。絶対位置の演算に用いる位置信号のうちゾーン信号を生成する際にスケール101に付いた汚れや塵埃の影響を受ける位置信号をポテンショメータにより生成すればよい。
ポテンショメータは、一般に64分割程度の分解能しか有さず、精度的にはあまり高くないが、抵抗器であるので、汚れや塵埃の影響をほとんど受けない。しかも、抵抗分圧で電圧変換された信号を出力するので、温度や湿度による抵抗変化の影響が少ない。
ここで、ポテンショメータ108からの出力信号を上位信号として用いることの妥当性に関して検証する。先に述べたように、上位信号と中位信号を結合するのに必要な精度は±180°である。中位信号は0から360°を単位として10回の折り返しを有する信号であるので、スケール全長(可動部材102の全移動範囲)を360°×10=3600°の累積角度で表すことができる。ポテンショメータ108はこのスケール全長をおよそ64分割以上の分解能で分割可能であるので、1つのゾーン当たりで3600°/64≒56°となり、要求される±180°以内の精度を十分に満たすことができる。つまり、ポテンショメータ108からの出力信号として上位信号は、中位信号における複数(10回)の折り返しのうち1つを特定可能な分解能を有する信号である。
図8には、ポテンショメータ108の出力信号である上位信号と、光学センサ103からの出力信号により生成された中位信号、下位信号および最下位信号との関係を示している。(a)は上位信号であり、図5の(a)に示した上位信号θ1-1′に代えて用いられる。(b)に示す中位信号、(c)に示す下位信号および(d)に示す最下位信号は図5の(b),(c),(d)に示したものと同じである。
上位信号はポテンショメータ108の出力信号をAD変換部111でデジタル変換した信号であり、10bit長のデータとして0〜1024の出力レンジを有する。これに対して、光学センサ103からの出力信号により生成された中位信号、下位信号および最下位信号は、0〜360°の角度信号であるので、上位信号とは出力レンジの単位が異なる。したがって、上位信号の出力レンジの単位を中位信号、下位信号および最下位信号の出力レンジの単位(0〜360°)に合わせる出力レンジの正規化が必要である。
さらに、ポテンショメータ108と光学センサ103とは互いに独立した位置検出器であり、ポテンショメータ108のスケール部108−1のスケール長と光学センサ103に対して用いられるスケール101のスケール長とが異なる。前述したように、上位信号と中位信号とを結合するためには、上位信号の傾きと中位信号の傾きとを一致させてゾーン信号を生成する必要がある。そして、傾きを一致させるためには、上位信号のスケールレンジを中位信号のスケールレンジに合わせるスケールレンジの正規化が必要となる。
ポテンショメータ108から得られた上位信号の出力レンジおよびスケールレンジの正規化の処理は、絶対位置の演算に先立って行っておく必要がある。ここでは、図9のフローチャートを用いて、絶対位置演算部106が行うポテンショメータ108から得られた上位信号の出力レンジおよびスケールレンジの正規化処理について説明する。絶対位置演算部106は、コンピュータプログラムに従って本処理を実行する。
ステップS901では、絶対位置演算部106は、ピッチ切り替え信号出力部107を通じて光学センサ103の第1および第2の受光部103−2,103−3からそれぞれ信号P2,P2′を出力させる。
次に、ステップS902では、可動部材102をその一方の移動端(a)まで移動させる。この可動部材102の移動は、本実施例のエンコーダが搭載された装置においてアクチュエータの駆動または人のマニュアル操作によって行われる。後のステップS905でも同じである。
次に、ステップS903にて可動部材102が移動端(a)に到達したことを検出した絶対位置演算部106は、ステップS904にて、移動端(a)でのポテンショメータ108の出力(AD変換部111によるデジタル変換後の出力)AD(a)を記憶する。
次に、ステップS905では、可動部材102を移動端(a)とは反対側の移動端(b)に移動させる。絶対位置演算部106は、可動部材102の移動中にステップS906で信号P2,P2′をサンプリングする。そして、ステップS907でこれら信号P2,P2′の逆正接変換を行い、ステップS908で中位信号θ2−2′を得るためのバーニア演算を行いながら、ステップS909で中位信号θ2−2′により得られる累積角度を計数する。絶対位置演算部106は、これらステップS906〜S909の処理をステップS910にて可動部材110の移動端(b)への到達を検出するまで繰り返す。
ステップS910で移動端(b)への到達を検出した絶対位置演算部106は、ステップS911に進み、移動端(b)でのポテンショメータ108の出力AD(b)を記憶する。
次に、ステップS912では、絶対位置演算部106は、記憶したポテンショメータ108の出力AD(a),AD(b)を用いてポテンショメータ108の出力レンジの正規化を行うための補正係数Wを算出する。補正係数Wは、以下の式(16)により算出できる。
W=1024/(AD(b)−AD(a)) (16)
次に、ステップS91では、絶対位置演算部106は、中位信号θ2−2′により得られた累積角度を用いて、ポテンショメータ108のスケールレンジを正規化するための補正係数Hを求める。補正係数Hは、以下の式(17)により算出できる。
H=累積角度/360 (17)
このようにして、ポテンショメータ108の出力レンジおよびスケールレンジの正規化処理が完了する。
次に、ポテンショメータ108からの出力信号を上位信号として用いた場合に絶対位置演算部106が行う絶対位置の演算処理について図10のフローチャートを用いて説明する。絶対位置演算部106は、コンピュータプログラムに従って本処理を実行する。
ステップS301からステップS306までの処理は、図3に示したステップS301からステップS306で説明した処理と同じである。すなわち、絶対位置演算部106は、信号P1,P1′,P2,P2′をサンプリングして逆正接変換したθ1,θ1′,θ2,θ2′を生成する。
ステップS306の後、ステップS1008では、絶対位置演算部106は、AD変換部111を通じてポテンショメータ108からの信号AD(x)をサンプリングする。そして、ステップS1009において、サンプリングした信号AD(x)の出力レンジの正規化を行う。出力レンジの正規化は、図9のフローチャートで説明した正規化処理で得られたポテンショメータ108からの出力AD(a)と補正係数Wとを用いて以下の式(18),(19)により行われる。
AD(x)′=AD(x)−AD(a) (18)
AD(x)″=W×AD(x)′ (19)
AD(x)″がポテンショメータ108の正規化された出力レンジにおける出力である。
次に、ステップS1010において、絶対位置演算部106は、ポテンショメータ108のスケールレンジの正規化を行う。スケールレンジの正規化は、図9のフローチャートで説明した正規化処理で得られた補正係数Hを用いて以下の式(20)により行われる。
Pot=H×AD(x)″ (20)
Potがポテンショメータ108の正規化されたスケールレンジ(および正規化された出力レンジ)における出力である。
以上のステップS1008からステップS1010までの処理がポテンショメータ108から正規化された上位信号Potを生成するための処理である。
次に、ステップS1011では、絶対位置演算部106は、上述した式(6)を用いて、中位信号を生成するためのバーニア演算を行う。
次に、ステップS1012〜ステップS1014では、絶対位置演算部106は、上位信号、中位信号、下位信号および最下位信号の結合処理を行う。ステップS1012の処理は、下位信号と最下位信号との結合処理であり、図9中のステップS309と同じである。また、ステップS1013の処理は、中位信号と下位信号との結合処理であり、図9中のステップS310と同じである。
ステップS1014の処理は、ポテンショメータ108からの正規化された上位信号と光学センサ103からの中位信号との結合処理であり、以下、これについて説明する。
[上位信号と中位信号との結合処理(ステップS1014)]
正規化された上位信号はスケール101上で1回の折り返しを有する信号を10倍した信号に相当し、下位信号と傾きが一致する。絶対位置演算部106は、以下の式(21)に示すように、上位信号Potと中位信号θ2−θ2′との差分をとってゾーン信号を得る。
Zone(Pot)=(Pot)−(θ2−θ2′) (21)
さらに、以下の式(22)によりゾーン信号の離散化処理を行ってノイズを除去する。
ZoneN(Pot)=INT((Zone(Pot)+180)/360) (22)
次に、絶対位置演算部106は、離散化されたゾーン信号ZoneN(Pot)とステップS1013で生成された中位結合信号Abs−(θ2−2′)を以下の式(23)のように足し合わせる。これにより、上位信号と中位信号とを結合した上位結合信号Abs−(Pot)を算出する。
Abs−(Pot)=ZoneN(Pot)+(Abs−(θ2−2′)) (23)
ここで、中位結合信号Abs−(θ2−2′)は中位信号、下位信号および最下位信号を結合した信号であるので、上位結合信号Abs−(Pot)は上位信号、中位信号、下位信号および最下位信号の全てが結合された信号に相当する。したがって、上位結像信号Abs−(Pot)は、最下位信号と同じ分解能と上位信号と同じスケールレンジとを併せ持った信号となる。このようにして、可動部材102(110)の絶対位置を示す信号である絶対位置信号Abs−(Pot)が生成される。
本実施例によれば、光学スケールに付いた汚れや塵埃の影響を最も受けやすい上位信号を汚れや塵埃の影響をほとんど受けないポテンショメータ108からの出力信号により上位信号を生成し、他の中位信号等を光学センサ103からの信号により生成する。これにより、汚れや塵埃の影響を受けにくい信頼性の高いエンコーダを実現することができる。
(スケール101上の異物判定処理と位置誤検出回避処理)
上述した構成および処理により、上位信号に対する汚れや塵埃の影響は回避することができる。しかし、光学センサ103からの出力信号から生成される中位信号、下位信号および最下位信号についてはスケール101に付いた汚れや塵埃(以下、これらをまとめて異物という)の影響を回避することができない。以下では、スケール101上の異物の存在を判定するための構成と処理(異物判定処理)と、異物に起因する位置の誤検出を回避する処理(位置誤検出回避処理)について説明する。
図1において、120は選択部(選択手段)であり、絶対位置演算部106に内蔵されている。選択部120は、異物判定処理を行い、その結果に応じて絶対位置演算部106により生成された絶対位置信号を出力するかポテンショメータ108(AD変換部111)からの出力信号である位置信号を出力するかを選択する。なお、選択部120を、絶対位置演算部106とは別に設けてもよい。ただし、この場合には、選択部120においてポテンショメータ108からの位置信号を光学センサ103の出力レンジおよびスケールレンジに対して正規化する処理を行う必要がある。
選択部120が行う異物判定処理を図12のフローチャートに示す。この処理は、選択部120がコンピュータプログラムに従って実行する。ここでは、本実施例のエンコーダを、後述する実施例2に示すような撮像装置の可動レンズの位置検出に用いる場合を想定して説明する。この可動レンズと一体に又は連動して可動部材102(110)が移動するものとする。
前述したように、本実施例の絶対位置演算部106は、上位信号、中位信号、下位信号および最下位信号の結合処理を行うためにゾーン信号(中間信号)を生成し、該ゾーン信号を離散化処理して結合処理を行う。この離散化処理を正しく行うためには、ゾーン信号のレベルが±180°以下となることが必要であり、スケール101に異物が付くとこのレベルが劣化する(大きくなる)。
そこで、本実施例では、選択部120は、離散化処理前のゾーン信号のレベルを検出することで、スケール101に異物が付いているか否かの判定(異物判定処理)を行う。具体的には、図10のステップS1014で算出されたZone(Pot)、ステップS1013で算出されたZone(θ2−2′)およびステップS1012で算出されたZone(θ1)がいずれも正しく離散化処理できるレベル以下であるか否かを判定する。ここで、前述したように、正しく離散化処理できるレベルは±180°以下である。しかし、スケール101における異物の影響が概ね±130°以下であることと、環境変化やノイズの影響に対するマージンとを考慮して、本実施例では判定の閾値範囲(所定範囲)を±100°以下とする。ただし、この閾値範囲は例であり、異物の影響の度合いに応じて適宜設定できる。
また、ゾーン信号が閾値範囲内(所定範囲内)にあるということは、該ゾーン信号の生成に用いられる中位信号、下位信号および最下位信号に含まれるノイズ成分がゾーン信号を閾値範囲を超えさせるレベル(所定量より大きいレベル)ではないことを意味する。したがって、ゾーン信号が閾値範囲内か否かを判定することは、中位信号、下位信号および最下位信号に含まれるノイズ成分が所定量より小さい(以下)か大きいかを判定することと等価である。
図12において、まず撮像装置の電源が投入(オン)されると、ステップS1200では、選択部120は、ポテンショメータ108からの位置信号(第2の位置信号)Potの値Q1を取り込む。位置信号Potは、前述した正規化された上位信号に相当する信号である。
次に、ステップS1201では、選択部120は、絶対位置演算部106にて生成された絶対位置信号Abs−(Pot)の値Q2を取り込む。
次に、選択部120は、ステップS1202、S1203およびS1204でそれぞれ、ゾーン信号であるZone(Pot)、Zone(θ2−2′)およびZone(θ1)が閾値範囲である±100°の閾値範囲内にあるか否かを判定する。全てのゾーン信号が±100°の範囲内であればステップS1205に進む。
ステップS1205では、選択部120は、ステップS1202で絶対位置演算部106から取り込んだ絶対位置信号の値Q2を絶対位置Posに設定する。また、選択部120は、絶対位置演算部106から最下位信号θ2も取り込む。そして、ステップS1206に進む。
ステップS1206では、選択部120は、絶対位置Posを最下位信号θ2の変化およびその方向(プラス/マイナス)に応じてインクリメントまたはデクリメントすることで、出力する絶対位置Posを更新する。
次のステップS1207では、選択部120は、撮像装置に搭載されたカメラマイクロコンピュータに絶対位置Posを出力する。カメラマイクロコンピュータは、絶対位置Posを用いて各種レンズ制御を行う。レンズ制御には、可動レンズが変倍レンズである場合のフォーカスレンズのズームトラッキング制御や、可動レンズがフォーカスレンズである場合のオートフォーカスでの該フォーカスレンズの位置の制御等を含む。
ステップS1208では、選択部120は、撮像装置の電源がオフされたか否かを判定し、電源がオフされていない場合はステップS1206およびステップS1207の処理を繰り返し、電源がオフされた場合は本処理を終了する。
一方、ステップS1202、S1203およびS1204においてZone(Pot)、Zone(θ2−2′)およびZone(θ1)のいずれかが±100°の閾値範囲から外れていると判定した選択部120は、ステップS1209に進む。
ステップS1209では、選択部120は、位置誤検出回避処理として、ステップS1201にて取り込んだポテンショメータ108からの位置信号の値Q1を可動部材102の絶対位置Posとして出力する。
次のステップS1210では、選択部120は、上述したカメラマイクロコンピュータに絶対位置Posを出力する。カメラマイクロコンピュータは、ステップS1207にて説明したように各種レンズ制御を行う。
そして、ステップS1211では、選択部120は、撮像装置の電源がオフされたか否かを判定し、電源がオフされていない場合はステップS1212に進む。電源がオフされた場合は本処理を終了する。
ステップS1212では、選択部120は、異物判定処理を再度行うか否かを判定する。異物判定処理を再度行う場合は、可動レンズまたは可動部材102(110)が移動してポテンショメータ108からの位置信号の値Q1の所定変化量以上の変化が生じた場合である。また、この他に異物判定処理を再度行う場合は、可動レンズが停止してからポテンショメータ108からの位置信号の値Q1の変動が所定変動量以下となることで位置信号が安定したとみなせる場合である。選択部120は、本ステップを繰り返すごとにQ1を取得し、前回取得したQ1と今回取得したQ1との差からQ1の変化または変動を判定する。また、位置信号の値Q1の変動が所定変動量以下となってから所定時間が経過することを条件として異物判定処理を再度行うと判定してもよい。
なお、上記実施例では、絶対位置を演算するために上位信号、中位信号、下位信号および最下位信号の4種類の信号を用いる場合について説明したが、本発明の他の実施例は、1種類の信号を用いる場合や5種類以上の信号を用いる場合も含む。
また、上記実施例では、第2のセンサとしてポテンショメータを用いる場合について説明したが、本発明の他の実施例は、第2のセンサとして、磁気式センサや静電容量式センサ等、光学式センサ以外の各種センサを用いる場合も含む。
図13には、上述した実施例1で説明したエンコーダを搭載した装置の一例として、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置(光学機器)を示している。この撮像装置では、エンコーダをレンズ鏡筒内での可動レンズの絶対位置を検出するために用いている。
図13において、301は実施例1で説明した光学スケール101であり、302は実施例1で説明したポテンショメータ108のスライダ部108−2である。また、303は実施例1で説明した光学センサ103とポテンショメータ108のスケール部108−1を含むブロックを示す。340は実施例1で説明したAD変換部105−1,105−2,111、ピッチ切り替え信号出力部107および絶対位置演算部106を含むブロックを示す。これらにより、実施例1のエンコーダが構成される。
光学スケール301とスライダ部302は、レンズ鏡筒内において光軸回りで回転する円筒形状のカム環350の内周面に取り付けられている。カム環350は、不図示のアクチュエータによって回転駆動される。
レンズ鏡筒内には、撮影光学系351が収容されている。撮影光学系351は、カム環350が回転することで、該カム環350に形成されたカムによって光軸方向に移動可能な可動レンズ(例えば、変倍レンズやフォーカスレンズ)352を含む。
355は撮像装置のシステム全体を制御するカメラマイクロコンピュータとしてのCPUである。356は撮影光学系351により形成された被写体像を光電変換するイメージセンサ(撮像素子)であり、CCDセンサやCMOSセンサ等の光電変換素子により構成されている。
可動レンズ352を移動させるためにカム環350が回転すると、エンコーダによりカム環350の絶対回転位置(つまりは可動レンズ352の光軸方向での絶対位置)が検出され、その情報がCPU355に出力される。
CPU355は、その絶対回転位置の情報に基づいてカム環350を回転させるアクチュエータを駆動し、可動レンズ352を目標とする位置に移動させる。
実施例1で説明したエンコーダは、上述した撮像装置に限らず、プリンタ(光学機器)における印字ヘッドや給紙ローラの位置検出、複写機(光学機器)の感光ドラムの回転位置検出をはじめ、ロボットアームの位置検出等、様々な装置に適用することができる。そして、これらの装置において実施例1のエンコーダにより可動部材の絶対位置を検出することで、可動部材の高精度な位置制御や絶対位置の情報を用いた良好な処理等を行うことが可能である。
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
101 光学スケール
102,110 可動部材
103 光学センサ
106 絶対位置演算部
108 ポテンショメータ
120 選択部

Claims (13)

  1. 互いに周期が異なる複数の周期パターンが形成された光学スケールとともに用いられ、可動部材の移動に伴って前記光学スケールと相対移動する際に前記複数の周期パターンからの光を受光して該複数の周期パターンの周期に応じた周期でそれぞれ変化する複数の第1の検出信号を生成する光学式の第1の位置検出手段と、
    前記可動部材の移動に伴って変化する第2の検出信号を生成する非光学式の第2の位置検出手段と、
    前記複数の第1の検出信号を用いて複数の折り返しを有する第1の位置信号を生成するとともに、前記第2の検出信号を用いて前記第1の位置信号とは分解能が異なり、前記第1の位置信号における前記複数の折り返しのうち1つを特定可能な分解能を有する第2の位置信号を生成し、前記第1の位置信号と前記第2の位置信号とに基づいて前記可動部材の絶対位置を示す絶対位置信号を生成する演算手段と、
    前記第1の位置信号に含まれるノイズ成分が所定量より小さい場合は前記可動部材の位置を示す信号として前記絶対位置信号を選択し、前記ノイズ成分が前記所定量より大きい場合は前記可動部材の位置を示す信号として前記第2の位置信号を選択する選択手段とを有することを特徴とする位置検出装置。
  2. 記演算手段は、前記第1および第2の位置信号を用いて前記第1の位置信号における前記複数の折り返しのうち1つを特定するためのゾーン信号を生成し、
    前記選択手段は、前記ゾーン信号が所定範囲内にある場合は前記可動部材の位置を示す信号として前記絶対位置信号を選択し、前記ゾーン信号が前記所定範囲を超える場合は前記可動部材の位置を示す信号として前記第2の位置信号を選択することを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
  3. 前記演算手段は、前記ゾーン信号を離散化処理し、
    前記選択手段は、前記離散化処理前の前記ゾーン信号が前記所定範囲内にある場合は前記可動部材の位置を示す信号として前記絶対位置信号を選択し、前記離散化処理前の前記ゾーン信号が前記所定範囲を超える場合は前記可動部材の位置を示す信号として前記第2の位置信号を選択することを特徴とする請求項2に記載の位置検出装置。
  4. 互いに周期が異なる複数の周期パターンが形成された光学スケールとともに用いられ、可動部材の移動に伴って前記光学スケールと相対移動する際に前記複数の周期パターンからの光を受光して該複数の周期パターンの周期に応じた周期でそれぞれ変化する複数の第1の検出信号を生成する光学式の第1の位置検出手段と、
    前記可動部材の移動に伴って変化する第2の検出信号を生成する非光学式の第2の位置検出手段と、
    前記複数の第1の検出信号を用いて第1の位置信号を生成するとともに、前記第2の検出信号を用いて前記第1の位置信号とは分解能が異なる第2の位置信号を生成し、前記第1の位置信号と前記第2の位置信号とに基づいて前記可動部材の絶対位置を示す絶対位置信号を生成する演算手段と、
    前記第1の位置信号に含まれるノイズ成分が所定量より小さい場合は前記可動部材の位置を示す信号として前記絶対位置信号を選択し、前記ノイズ成分が前記所定量より大きい場合は前記可動部材の位置を示す信号として前記第2の位置信号を選択する選択手段とを有し、
    前記演算手段は、前記第2の位置信号の出力レンジおよびスケールレンジをそれぞれ前記第1の位置信号の出力レンジおよびスケールレンジに対して正規化する処理を行ってから、前記第1の位置信号と前記第2の位置信号とを結合する演算を行うことで前記絶対位置を示す信号を生成することを特徴とする位置検出装置。
  5. 前記複数の第1の検出信号は、互いに位相が90°異なる2相の信号であり、
    前記第1の位置信号は前記2相の信号を逆正接変換して0から360°の角度に変換した出力レンジを有しており、
    前記演算手段は、前記第2の位置信号の出力レンジを、前記第1の位置信号の0から360°の角度に対応するように正規化することを特徴とする請求項4に記載の位置検出装置。
  6. 前記演算手段は、前記第2の位置信号のスケールレンジを、前記可動部材がその全移動範囲を移動したときの前記第1の位置信号における累積角度で正規化することを特徴とする請求項4または5に記載の位置検出装置。
  7. 前記第1の位置信号は、複数の折り返しを有する信号であり、
    前記第2の位置信号は、前記第1の位置信号における前記複数の折り返しのうち1つを特定可能な分解能を有する信号であることを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載の位置検出装置。
  8. 前記選択手段は、前記第2の位置信号を前記可動部材の位置を示す信号として選択した後、前記第2の位置信号の所定変化量以上の変化が生じた場合または前記可動部材が停止してから前記第2の位置信号の変動が所定変動量以下となった場合に、前記可動部材の位置を示す信号の選択を再度行うことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の位置検出装置。
  9. 前記第2の位置信号は、前記第1の位置信号よりも分解能が低いことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の位置検出装置。
  10. 前記第2の位置検出手段は、前記可動部材の移動に伴って電気抵抗値が変化する可変抵抗器であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の位置検出装置。
  11. 請求項1から10のいずれか一項に記載の位置検出装置と、
    該位置検出装置により絶対位置が検出される可動部材とを有することを特徴とする装置。
  12. 互いに周期が異なる複数の周期パターンが形成された光学スケールとともに用いられ、可動部材の移動に伴って前記光学スケールと相対移動する際に前記複数の周期パターンからの光を受光して該複数の周期パターンの周期に応じた周期でそれぞれ変化する複数の第1の検出信号を生成する光学式の第1の位置検出手段からの前記第1の検出信号と、
    前記可動部材の移動に伴って変化する第2の検出信号を生成する非光学式の第2の位置検出手段からの前記第2の検出信号と、に基づいて前記可動部材の絶対位置を示す信号を生成する位置検出方法であって、
    前記複数の第1の検出信号を用いて複数の折り返しを有する第1の位置信号を生成する工程と、
    前記第2の検出信号を用いて前記第1の位置信号とは分解能が異なり、前記第1の位置信号における前記複数の折り返しのうち1つを特定可能な分解能を有する第2の位置信号を生成する工程と、
    前記第1の位置信号と前記第2の位置信号とに基づいて前記可動部材の絶対位置を示す絶対位置信号を生成する工程と、
    前記第1の位置信号に含まれるノイズ成分が所定量より小さい場合は前記可動部材の位置を示す信号として前記絶対位置信号を選択し、前記ノイズ成分が前記所定量より大きい場合は前記可動部材の位置を示す信号として前記第2の位置信号を選択する工程と、を有することを特徴とする位置検出装置方法。
  13. 互いに周期が異なる複数の周期パターンが形成された光学スケールとともに用いられ、可動部材の移動に伴って前記光学スケールと相対移動する際に前記複数の周期パターンからの光を受光して該複数の周期パターンの周期に応じた周期でそれぞれ変化する複数の第1の検出信号を生成する光学式の第1の位置検出手段からの前記第1の検出信号と、
    前記可動部材の移動に伴って変化する第2の検出信号を生成する非光学式の第2の位置検出手段からの前記第2の検出信号と、に基づいて前記可動部材の絶対位置を示す信号を生成する位置検出方法であって、
    前記複数の第1の検出信号を用いて第1の位置信号を生成する工程と、
    前記第2の検出信号を用いて前記第1の位置信号とは分解能が異なる第2の位置信号を生成する工程と、
    前記第2の位置信号の出力レンジおよびスケールレンジをそれぞれ前記第1の位置信号の出力レンジおよびスケールレンジに対して正規化する正規化処理を行う工程と、
    前記正規化処理が行われた前記第2の位置信号と前記第1の位置信号とを結合する演算を行うことで前記絶対位置を示す絶対位置信号を生成する工程と、
    前記第1の位置信号に含まれるノイズ成分が所定量より小さい場合は前記可動部材の位置を示す信号として前記絶対位置信号を選択し、前記ノイズ成分が前記所定量より大きい場合は前記可動部材の位置を示す信号として前記第2の位置信号を選択する工程と、を有することを特徴とする位置検出方法。
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