以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る構造物について説明する。
(構造物)
図1(A)及び図1(B)に示されるように、本実施形態に係る構造物10は、例えば、免震構造物とされる。この構造物10は、下部構造体としての基礎12と、基礎12上に構築される上部構造体30とを備えている。
基礎12は、地盤Gに形成された基礎スラブ14と、基礎スラブ14の外周から立ち上げられた擁壁16とを有している。基礎スラブ14と上部構造体30との間には、免震層18が形成されている。この免震層18には、複数の免震装置20が設置されている。複数の免震装置20は、積層ゴム支承とされており、基礎スラブ14の上面に設置されている。これらの免震装置20は、後述する大チューブ架構32A及び小チューブ架構32Bの各々の外周部に沿って、平面視にて環状に配列されている。
なお、免震装置20は、積層ゴム支承に限らず、滑り支承や転がり支承等であっても良い。また、基礎12には、例えば、直接基礎や杭基礎等の種々の基礎構造を採用することができる。
上部構造体30は、板状構造体とされており、平面視にて矩形状(長方形状)に形成されている。なお、各図に適宜示される矢印X及び矢印Yは、平面視における上部構造体30の長手方向及び短手方向をそれぞれ示している。この上部構造体30は、免震層18の直上階30Aと、直上階30Aの上に構築される上部構造体本体30Bとを有している。上部構造体本体30Bは、複数階で構成されており、各階が同じ柱割とされている。
(連結チューブ架構)
上部構造体本体30Bの各階には、連結チューブ架構32(図2参照)が設けられている。これらの連結チューブ架構32は、上部構造体本体30Bの最下階FLから最上階FTに亘って上下方向に連続して設けられている。なお、上部構造体本体30Bの最下階FLは、構造物10の所定階の一例であり、本実施形態では免震層18の直上階30Aの上階(直上階)に相当する。
図2に示されるように、各連結チューブ架構32は、一対の大チューブ架構32Aと、一対の大チューブ架構32Aを連結する小チューブ架構32Bとを有している。一対の大チューブ架構32A及び小チューブ架構32Bは、各々の外周部に地震力を負担可能な多数の外周柱34及び外周梁36が集中して配置されており、これにより、各々の内部(内側)に内柱及び内梁がない若しくは低減された大空間を確保可能な架構構造(架構形式)とされている。
具体的には、大チューブ架構32Aは、その外周部に沿って配列される複数の外周柱34と、隣り合う外周柱34間に架設される複数の外周梁36とを有し、平面視にて矩形の環状に形成されている。これらの外周柱34及び外周梁36は、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造とされている。また、大チューブ架構32Aは、平面視にて、上部構造体30の短手方向(矢印Y方向)を幅方向(矢印W方向、短手方向)として配置されている。
大チューブ架構32Aの各辺には、少なくとも3本の外周柱34が配列されている。また、大チューブ架構32Aの内側には、スラブ40が設けられている。この大チューブ架構32Aは、その自重及びスラブ40の自重に起因する地震力を負担可能に構成されている。なお、本実施形態では、大チューブ架構32Aの内部に、スラブ40を支持する複数の間柱38が設けられているが、これらの間柱38は適宜省略可能である。
小チューブ架構32Bは、一対の大チューブ架構32Aの間に配置されており、一対の大チューブ架構32Aを横(水平方向)に連結している。この小チューブ架構32Bは、大チューブ架構32Aと同様に、その外周部に沿って配列される複数の外周柱34と、隣り合う外周柱34間に架設される複数の外周梁36とを有し、平面視にて矩形の環状に形成されている。これらの外周柱34及び外周梁36は、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造とされている。なお、小チューブ架構32Bと大チューブ架構32Aとは、その境界部の外周柱34及び外周梁36を共有している。
小チューブ架構32Bは、平面視にて、上部構造体30の長手方向(矢印X方向)を幅方向(矢印W方向、短手方向)として配置されている。つまり、小チューブ架構32Bと大チューブ架構32Aとは、各々の幅方向が交差(本実施形態では、直交)するように配置されている。
小チューブ架構32Bの各辺には、少なくとも3本の外周柱34が配列されている。また、小チューブ架構32Bの内側には、スラブ42が設けられている。この小チューブ架構32Bは、その自重及びスラブ42の自重に起因する地震力を負担可能に構成されている。また、小チューブ架構32Bは、大チューブ架構32Aよりも平面積(平面面積)が小さくされている。
なお、ここでいう小チューブ架構32B及び大チューブ架構32Aの平面積とは、各々の内側領域の面積であり、本実施形態では、スラブ40,42の上面の面積に相当する。また、本実施形態では、一例として、アウトフレーム工法が採用されており、後述するスラブ40の幅方向一方側の端部40Aがバルコニーとされているが、スラブ端部40Aの用途は適宜変更可能である。また、バルコニーやテラス、ベランダは、小チューブ架構32B及び大チューブ架構32A(連結チューブ架構32)の外側に設けられても良い。また、スラブ40の上面には、例えば、幅方向の一端側から中央部に向かって下る勾配(排水勾配)を付けても良い。
(スラブ構造)
図3に示されるように、大チューブ架構32A内のスラブ40は、幅方向(矢印W方向)の両側の端部40Aのスラブ厚TAが、幅方向の中間部40Bのスラブ厚TBよりも厚くされている。具体的には、図4(A)及び図4(B)に示されるように、スラブ40の幅方向の端部(以下、「スラブ端部」という)40Aは、例えば、オムニア版のように、鉄筋付きハーフプレキャスト床版44上にトップコンクリート52を打設することにより形成される。
鉄筋付きハーフプレキャスト床版44は、ハーフプレキャスト床版46と、ハーフプレキャスト床版46の上面に設けられたトラス鉄筋48とを有している。ハーフプレキャスト床版46は、プレキャストコンクリートによって板状に形成されている。このハーフプレキャスト床版46は、スラブ端部40Aの底型枠としても機能する。
トラス鉄筋48は、上弦筋48Aと下弦筋48Bとを斜めのラチス筋48Cで連結することにより形成されている。このトラス鉄筋48の下弦筋48Bは、ハーフプレキャスト床版46に埋設されている。これにより、トラス鉄筋48が、ハーフプレキャスト床版46と一体化されている。
一方、スラブ40の幅方向の中間部40Bは、例えば、スパンクリートやFR板等のプレキャスト床版50上にトップコンクリート52を打設することにより形成される。このスラブ40の中間部(以下、「スラブ中間部」という)40Bのスラブ厚TB(図3参照)は、スラブ端部40Aのスラブ厚TAよりも薄くされている。換言すると、スラブ端部40Aのスラブ厚TAは、スラブ中間部40Bのスラブ厚TBよりも厚くされている。また、スラブ端部40Aの上面とスラブ中間部40Bの上面との間には段差がなく、スラブ端部40Aの下面とスラブ中間部40Bの下面との間に段差部54が形成されている。
なお、プレキャスト床版50には、例えば、PC鋼線等の引張線材によってプレストレスを導入しても良い。また、本実施形態では、プレキャスト床版50の上にトップコンクリート52を打設するため、プレキャスト床版50をハーフプレキャスト床版と捉えることも可能である。また、プレキャスト床版50の上にトップコンクリート52を打設しない場合は、プレキャスト床版50をフルプレキャスト床版と捉えることができる。
ここで、スラブ40の施工方法の一例について説明する。図4(A)に示されるように、先ず、大チューブ架構32Aの幅方向の両側に、ハーフプレキャスト床版46をそれぞれ設置する。この際、ハーフプレキャスト床版46は、例えば、間柱38や図示しないサポートによって適宜支持する。また、外周梁36の側面から突出するスラブ筋36Dとトラス鉄筋48とを適宜ラップさせる。なお、外周梁36には、複数の上端梁主筋36A、複数の下端梁主筋36B、及び上端梁主筋36A及び下端梁主筋36Bの周囲に配置される複数のせん断補強筋36Cが埋設されている。
次に、大チューブ架構32Aの両側に設置されたハーフプレキャスト床版46に、プレキャスト床版50を架け渡す。具体的には、ハーフプレキャスト床版46の端部に、スペーサ56を介してプレキャスト床版50の端部を載置する。これにより、両側のハーフプレキャスト床版46にプレキャスト床版50が掛け渡された状態で保持される。次に、ハーフプレキャスト床版46及びプレキャスト床版50に亘ってスラブ筋36Dを適宜配筋し、トップコンクリート52を打設する。これにより、スラブ40が構築される。
なお、本実施形態では、スラブ端部40Aに鉄筋付きハーフプレキャスト床版44を用いるが、本実施形態はこれに限らない。スラブ端部40Aには、例えば、鉄筋が一体化されていないハーフプレキャスト床版を用いても良いし、フルプレキャスト床版を用いても良い。さらに、スラブ端部40A及びスラブ中間部40Bは、現場打ち工法によって形成することも可能である。
また、本実施形態では、小チューブ架構32B内のスラブ42は、大チューブ架構32A内のスラブ40とは異なり、幅方向の略全長に亘ってスラブ厚が略一定とされているが、本実施形態はこれに限らない。例えば、大チューブ架構32Aのスラブ40と同様に、小チューブ架構32Bのスラブ42の幅方向の端部のスラブ厚を幅方向の中間部のスラブ厚よりも厚くしても良い。
(外周柱の集約構造)
図5に示されるように、免震層18の直上階30Aは、縦柱60と、縦柱60の両側に配置される一対の傾斜柱62とを有している。縦柱60及び傾斜柱62は、例えば、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造とされる。縦柱60は、免震装置20上に設けられたフーチング64上に略鉛直に立てられており、フーチング64を介して免震装置20に支持されている。また、縦柱60は、上部構造体本体30Bの外周柱34の材軸上(同軸上)に配置されており、その上端部が外周柱34の下端部と接合されている。この縦柱60を介して外周柱34が免震装置20に支持されている。
一方、一対の傾斜柱62は、縦柱60に支持された外周柱34(以下、「第1外周柱34A」ともいう)の両側の他の外周柱34(以下、「第2外周柱34B」ともいう)の下端部から免震装置20に向かってそれぞれ傾斜されており、各々の下端部が縦柱60の下端部と接合されている。この一対の傾斜柱62は、縦柱60と共に免震装置20に支持されている。この一対の傾斜柱62を介して、第1外周柱34Aの両側の第2外周柱34Bが免震装置20に支持されている。
なお、図5に二点鎖線で示されるように、縦柱60と一対の傾斜柱62との間にコンクリートやモルタル、グラウト等のセメント系充填材72を充填して縦柱60と一対の傾斜柱62とを一体化させ、剛性(曲げ剛性等)を高めても良い。
また、図6(A)に示されるように、直上階30Aの角部C1では、縦柱60の片側に傾斜柱62が設けられている。この傾斜柱62は、縦柱60と共に免震装置20に支持されている。
次に、連結チューブ架構32の作用について説明する。
図1(A)及び図1(B)に示されるように、上部構造体30は、免震層18の直上階30Aと、直上階30Aの上に構築される上部構造体本体30Bとを有している。上部構造体本体30Bは複数階で構成されており、その各階に連結チューブ架構32(図2参照)が設けられている。連結チューブ架構32は、上部構造体本体30Bの最下階FLから最上階FTに亘って上下方向に連続して設けられている。図2に示されるように、各連結チューブ架構32は、一対の大チューブ架構32Aと小チューブ架構32Bとを横に連結することにより形成されている。
ここで、大チューブ架構32Aは、その外周部に多数(複数)の外周柱34及び外周梁36が集中して配置されており、その自重及びスラブ40の自重に起因する地震力を負担可能に構成されている。そのため、大チューブ架構32Aでは、その内部の内柱及び内梁をなくし又は低減することができる。この結果、大チューブ架構32Aの内部に大空間を確保することができる。したがって、大チューブ架構32Aの内部プランの自由度が向上すると共に、内部プランの可変性が向上する。
これと同様に、小チューブ架構32Bは、その外周部に多数(複数)の外周柱34及び外周梁36が集中して配置されており、その自重及びスラブ42の自重に起因する地震力を負担可能に構成されている。そのため、小チューブ架構32Bでは、その内部の内柱及び内梁をなくし又は低減することができる。したがって、小チューブ架構32Bの内部プランの自由度が向上すると共に、内部プランの可変性が向上する。
また、本実施形態では、大チューブ架構32Aと小チューブ架構32Bとの平面積が異なっている。これにより、例えば、大チューブ架構32Aを居室等の専用スペースとし、小チューブ架構32Bをエレベータホールや階段等の共用スペースとすることで、大チューブ架構32A及び小チューブ架構32Bの内部空間を効率的に使用することができる。つまり、本実施形態では、求められる内部プランや用途に応じて、平面積が異なる大チューブ架構32A及び小チューブ架構32Bを使い分けることができる。したがって、上部構造体30の内部プランの自由度及び可変性がさらに向上する。
しかも、大チューブ架構32A及び小チューブ架構32B内のスラブ40,42には、大チューブ架構32A及び小チューブ架構32Bの平面積に応じたスラブ形式を採用することができる。したがって、スラブ40,42の施工性が向上する。
また、前述したように、一対の大チューブ架構32Aは、各々の自重及びスラブ40の自重に起因する地震力を負担可能に構成されている。これと同様に、小チューブ架構32Bは、その自重及びスラブ42の自重に起因する地震力を負担可能に構成されている。換言すると、大チューブ架構32A及び小チューブ架構32Bは、独立して地震力に処理可能に構成されている。したがって、大チューブ架構32Aと小チューブ架構32Bとを適宜組み合わせることにより、耐震性能を確保しつつ、種々の平面形状の構造物10を容易に構築することができる。
さらに、本実施形態では、一対の大チューブ架構32Aと小チューブ架構32Bとを横に連結した連結チューブ架構32が、上部構造体本体30Bの最下階FLから最上階FTに亘って設けられている。これにより、上部構造体本体30Bの構造が単純化される。したがって、上部構造体本体30Bの施工性が向上する。
次に、大チューブ架構32Aのスラブ構造の作用について説明する。
図3に示されるように、大チューブ架構32A内には、スラブ40が設けられている。このスラブ40は、スラブ端部40Aのスラブ厚TAがスラブ中間部40Bのスラブ厚TBよりも厚くされている。これにより、スラブ中間部40Bと比較して、長期荷重及び短期荷重に起因するモーメントM(図4(B)参照)が大きくなるスラブ端部40Aの剛性及び耐力を確保しつつ、スラブ40の軽量化を図ることができる。
また、本実施形態では、スラブ端部40Aに鉄筋付きハーフプレキャスト床版44を使用すると共に、スラブ中間部40Bにプレキャスト床版50を使用する。これらの鉄筋付きハーフプレキャスト床版44及びプレキャスト床版50は、スラブ40の底型枠としても機能する。そのため、本実施形態では、在来型枠の仮設や撤去作業等を不要にすることができる。したがって、スラブ40の施工性が向上する。
さらに、鉄筋付きハーフプレキャスト床版44のハーフプレキャスト床版46には、トラス鉄筋48が予め一体化されている。したがって、現場でのトラス鉄筋48の配筋作業が不要になるため、施工性が向上する。
次に、外周柱の集約構造の作用について説明する。
図2に示されるように、本実施形態では、一対の大チューブ架構32A及び小チューブ架構32Bの外周部に多数の外周柱34を配置することにより、耐震性能を確保している。この場合、例えば、全ての外周柱34を免震装置20で支持すると、免震装置20の数が増加し、コストがかかる可能性がある。
この対策として本実施形態では、図5に示されるように、第1外周柱34Aとその両側の第2外周柱34Bが免震層18の直上階30Aにおいて集約され、一つの免震装置20に支持される。具体的には、直上階30Aには、第1外周柱34Aと連続する縦柱60と、第2外周柱34Bと連続する傾斜柱62とが設けられている。縦柱60は、第1外周柱34Aの材軸上に配置されており、フーチング64を介して免震装置20に支持されている。
一方、傾斜柱62は、第2外周柱34Bの下端部から免震装置20に向かって傾斜されており、その下端部が縦柱60の下端部に接合されている。この傾斜柱62によって第2外周柱34Bが第1外周柱34Aを支持する縦柱60に集約されており、当該縦柱60と共に1つの免震装置20によって支持されている。したがって、本実施形態では、免震装置20の必要数を低減することができる。
このように本実施形態では、多数の外周柱34(第1外周柱34A及び第2外周柱34B)によって連結チューブ架構32の耐震性能を確保しつつ、免震装置20のコストを削減することができる。
また、図5に二点鎖線で示されるように、縦柱60と一対の傾斜柱62との間にセメント系充填材72を充填し、縦柱60と一対の傾斜柱62とを一体化させることにより、縦柱60及び傾斜柱62の剛性(曲げ剛性等)を高めることができる。
さらに、図6(A)に示されるように、直上階30Aの角部C1では、縦柱60の片側に傾斜柱62が設けられている。この場合、傾斜柱62からフーチング64に、上下方向に対して傾斜する斜め荷重Pが作用するため、免震装置20が傾く可能性がある。
これに対して本実施形態では、隣り合う免震装置20上のフーチング64が基礎梁66を介して連結されている。これにより、フーチング64に作用する斜め荷重Pが基礎梁66の引張力Sによって処理される。また、図1(A)に示されるように、直上階30Aの角部C1と隣り合う他の角部C2では、角部C1の斜め荷重Pと反対向きの斜め荷重Qがフーチング64に作用する。これらの斜め荷重P,Qは、基礎梁66を介して互いに打ち消し合うため、免震装置20の傾きが抑制される。
なお、図6(B)に示されるように、直上階30Aの角部C1において、縦柱60の両側に傾斜柱62を設け、斜め荷重P1,P2が互いに打ち消されるように構成しても良い。
次に、連結チューブ架構32の変形例について説明する。
上記実施形態では、一対の大チューブ架構32Aの間に小チューブ架構32Bが配置されるが、上記実施形態はこれに限らない。例えば、図7(A)に示されるように、一対の小チューブ架構32Bの間に大チューブ架構32Aが配置されても良い。
また、図7(B)に示されるように、大チューブ架構32Aと小チューブ架構32Bとを連結チューブ架構32(上部構造体30)の長手方向に交互に配置しても良い。さらに、小チューブ架構32Bの平面形状は矩形状に限らず、例えば、図7(C)に示されるように、三角形状であっても良い。この場合、連結チューブ架構32の平面形状が「へ」の字状に屈曲される。また、図示を省略するが、小チューブ架構32Bの平面形状は、五角形以上の多角形状であっても良い。大チューブ架構32Aの平面形状についても同様である。
また、図8(A)に示されるように、連結チューブ架構32の平面形状は、L字形状であっても良い。この連結チューブ架構32では、連結チューブ架構32のL字形状の角部に小チューブ架構32Bが設けられており、この小チューブ架構32Bによって一対の大チューブ架構32Aが連結されている。また、小チューブ架構32Bの内部は、平面視にて十字状に連続する間柱68及び小梁70によって4つに区画されている。なお、間柱68及び小梁70を外周柱及び外周梁として形成し、連結チューブ架構32の角部に4つの小チューブ架構を設けることも可能である。
また、図8(B)に示されるように、連結チューブ架構32の平面形状は、T字形状であっても良い。この連結チューブ架構32では、中央部に設けられた小チューブ架構32Bを介して、3つの大チューブ架構32Aが互いに連結されている。また、小チューブ架構32Bの内部には、前述した間柱68及び小梁70が設けられている。
さらに、図8(C)に示されるように、連結チューブ架構32の平面形状は、Y字形状であっても良い。この連結チューブ架構32では、中央部に平面形状が三角形状の小チューブ架構32Bが設けられており、この小チューブ架構32Bを介して3つの大チューブ架構32Aが互いに連結されている。
なお、上記実施形態では、平面積が異なる2つの大チューブ架構32A及び小チューブ架構32Bによって連結チューブ架構32を形成した例を示したが、上記実施形態はこれに限らない。連結チューブ架構は、平面積が異なる互いに異なる3つ以上のチューブ架構を連結して形成されても良い。
また、例えば、大チューブ架構32Aの外周柱34及び外周梁36は、プレキャスト部材によって形成しても良い。例えば、図9(A)に示される例では、立面視にてT字形状の複数のプレキャスト柱梁部材80を組み合わせることにより、外周柱34及び外周梁36が形成される。
各プレキャスト柱梁部材80は、外周柱34を形成する柱部80Aと、外周梁36を形成する一対の梁部80Bとが柱梁仕口部80Cを介して一体化されている。この梁部80Bには、隣接する他のプレキャスト柱梁部材80の梁部80Bが接合される。また、柱梁仕口部80Cには、他のプレキャスト柱梁部材80の柱部80Aが接合される。このようにプレキャスト柱梁部材80を用いることにより、施工性の向上及び工期の短縮化を図ることができる。
また、図9(B)に示されるプレキャスト柱梁部材82では、前述した2つのプレキャスト柱梁部材80が上下に並べられて一体化されている。一方、図9(C)に示されるプレキャスト柱梁部材84では、2つのプレキャスト柱梁部材80が左右(横)に並べられて一体化されている。さらに、図9(D)に示されるプレキャスト柱梁部材86では、4つのプレキャスト柱梁部材80が上下左右に並べられて一体化されている。このようにプレキャスト柱梁部材の形状は、適宜変更可能である。
また、連結チューブ架構32の構面には、耐震壁やブレース等の耐震要素が設けられても良い。具体的には、図10に示される例では、連結チューブ架構32の短手方向(矢印Y方向)に沿った構面に、複数の耐震壁88が設けられている。複数の耐震壁88は、上部構造体本体30Bの複数階に亘って千鳥状に配列されている。
耐震壁88としては、例えば、鉄筋コンクリート造であっても良いし、鋼板等を用いた鋼製耐震壁であっても良い。さらには、木製パネル等を用いた木製耐震壁であっても良い。なお、木製耐震壁の場合には、グラウトやモルタル、コンクリート等のセメント系固化材によって木製耐震壁の外周部を連結チューブ架構32に接合しても良いし、接着剤等によって連結チューブ架構32に接着しても良い。また、耐震壁は、連結チューブ架構32の長手方向(矢印X方向)に沿った構面に設けることも可能である。
また、例えば、上部構造体本体30Bの最上階FTや中層階の構面に、前述した耐震壁88等を水平方向に連続して設け、ハット梁やベルト梁(メガ梁)等のメガストラクチャー構造を形成しても良い。
次に、大チューブ架構32A内のスラブ構造の変形例について説明する。
上記実施形態では、大チューブ架構32Aの内部に間柱38が配置されるものの、基本的に、大チューブ架構32Aの内部には内柱が配置されない。そのため、スラブ40は、主としてその外周に設けられた外周柱34及び外周梁36によって支持される。この場合、図4(B)に示されるように、外周梁36に作用するモーメント(ねじりモーメント)Mが大きくなる。
この対策として、例えば、図11(A)に示されるように、外周梁36に複数の捩れ補強筋90を埋設することにより、外周梁36を捩れ補強しても良い。具体的には、複数の捩れ補強筋90は、外周梁36の両側部に当該外周梁36の材軸方向に沿って埋設されると共に、せん断補強筋36Cの内側に配置されている。この捩れ補強筋90によって、モーメントMに起因する外周梁36の捩れが抑制される。
また、例えば、図11(B)に示されるように、スラブ端部40Aのスラブ厚TAをスラブ中間部40Bから外周梁36へ向かうに従って厚くすることにより、外周梁36を捩れ補強しても良い。具体的には、スラブ端部40Aの下面40ALは、スラブ中間部40Bから外周梁36へ向かって下方へ傾斜されている。これにより、スラブ端部40Aのスラブ厚TAが、スラブ中間部40Bから外周梁36へ向かうに従って厚くされている。また、スラブ端部40Aの下面40AL側には、スラブ筋36Dが適宜埋設されている。なお、図11(B)に示されるスラブ端部40Aは、現場打ちコンクリート91によって形成されている。
このようにスラブ端部40Aのスラブ厚TAをスラブ中間部40Bから外周梁36へ向かうに従って厚くすることにより、外周梁36の捩れが抑制される。
さらに、図11(C)に示されるように、外周梁36の梁幅Jを広くすることにより、外周梁36を捩れ補強しても良い。具体的には、外周梁36の梁幅Jは、外周柱34の柱幅Kよりも広くされている。また、外周梁36には、捩れ補強筋90が適宜埋設されている。このように外周梁36の梁幅Jを広げることにより、外周梁36の捩れが抑制される。
また、図12に示されるように、外周梁36の側面に、外側(スラブ40と反対側)へ跳ね出す跳出しスラブ92を設けることにより、外周梁36に逆モーメント(相殺モーメント)Rを発生させ、外周梁36に発生するモーメントMを打ち消すことも可能である。
なお、外周梁36に発生する逆モーメントRが小さい場合には、例えば、図13に示されるように、跳出しスラブ92の跳ね出し方向の先端部92Aを引張材94によって下方へ引っ張ることにより、外周梁36に発生する逆モーメントRを大きくすることも可能である。
引張材94は、例えば、連結ロッド等で形成されており、張力Tが付与された状態で、上下に隣接する跳出しスラブ92の先端部92Aに連結される。また、最下段の跳出しスラブ92の先端部92Aは、張力Tが付与された引張材94によって基礎スラブ14に連結される。これにより、各跳出しスラブ92が引張材94によって下方へ引っ張られるため、上部構造体30の各階の外周梁36に逆モーメントRを発生させることができる。
なお、引張材94の端部には、定着体96が適宜設けられている。また、図13に示される例では、上部構造体30が免震化されていないが、上記実施形態と同様に、上部構造体30は免震化されても良い。
次に、図14に示されるスラブ100では、プレキャスト床版106を傾斜させた状態で設置することにより、スラブ100の幅方向(矢印W方向)のスラブ中間部100Bのスラブ厚TBよりもスラブ端部100Aのスラブ厚TAが厚くされている。なお、図14では、理解を容易にするために、プレキャスト床版106の傾斜角度が大きくされている。
具体的には、スラブ100の幅方向の中央部には、間柱102が立てられている。この間柱102上には、例えば、オムニア版等の鉄筋付きハーフプレキャスト床版104が設置されている。鉄筋付きハーフプレキャスト床版104は、トラス鉄筋105を有し、スラブ100の幅方向と直交する方向を長手方向として配置されている。この鉄筋付きハーフプレキャスト床版104と両側の外周梁36との間に、スパンクリートやFR板等のプレキャスト床版106がそれぞれ架設されている。
プレキャスト床版106は、鉄筋付きハーフプレキャスト床版104から外周梁36へ向かって下方へ傾斜された状態で、鉄筋付きハーフプレキャスト床版104と外周梁36との間にそれぞれ架設されている。これらのプレキャスト床版106及び鉄筋付きハーフプレキャスト床版104上にトップコンクリート(コンクリート)108を打設することによりスラブ100が形成されている。なお、隣接するプレキャスト床版106は、鉄筋付きハーフプレキャスト床版104上に打設されたトップコンクリート108によって接合されている。また、スラブ100の上面は、水平面又は略水平面とされている。
このようにスラブ中間部100Bのスラブ厚TBよりもスラブ端部100Aのスラブ厚TAを厚くすることにより、上記実施形態と同様に、モーメントMが大きくなるスラブ端部100Aの剛性及び耐力を確保しつつ、スラブ100の軽量化を図ることができる。
また、プレキャスト床版106を傾斜させることにより、スラブ中間部100Bのスラブ厚TBよりもスラブ端部100Aのスラブ厚TAを容易に厚くすることができる。したがって、スラブ100の施工性が向上する。
さらに、スラブ100の幅方向の中央部を間柱102で支持することにより、プレキャスト床版106の支持スパンを短くすることができる。
ここで、例えば、スラブ100上に浴室や洗面所等の水廻り設備を設置する場合、配管等の設置スペースを確保するために、スラブ100の上面に当該上面を下げる段差部が形成される。この際、段差部がプレキャスト床版106に干渉すると、例えば、プレキャスト床版106を切断等する必要があり、施工が煩雑化する可能性がある。
これに対して本実施形態では、プレキャスト床版106を傾斜させることにより、トップコンクリート108の厚みが、スラブ中間部100Bよりもスラブ端部100Aで厚くされている。そのため、スラブ端部100Aでは、プレキャスト床版106を切断等せずに、水廻り設備用の段差部を形成することができる。したがって、水廻り設備用の段差部の施工性が向上する。
なお、図14に示される変形例では、トップコンクリート108の上面が水平面とされているが、トップコンクリート108の上面は、例えば、図15に示されるように、プレキャスト床版106の傾斜角度に応じて傾斜させても良い。なお、図15に示される例では、スラブ端部100Aの厚みとスラブ中間部100Bの厚みが略同じとされている。
また、鉄筋付きハーフプレキャスト床版104に替えて、鉄筋が一体化されていないハーフプレキャスト床版を用いても良い。さらに、図15に示されるように、鉄筋付きハーフプレキャスト床版104に替えて、梁110を用いても良い。この場合、梁110とその両側の外周梁36との間に、プレキャスト床版106がそれぞれ架設されている。なお、梁110は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造とされる。また、図14及び図15において、プレキャスト床版106上のトップコンクリート108は、適宜省略可能である。
次に、上記実施形態の他の変形例について説明する。
上記実施形態では、連結チューブ架構32が上部構造体本体30Bの最下階FLから最上階FTに亘って設けられるが、上記実施形態はこれに限らない。連結チューブ架構32は、例えば、上部構造体本体30Bの最下階FLよりも上階にある所定階から最上階FTに亘って設けられても良い。
また、上記実施形態では、上部構造体本体30Bの各階の柱割が同じとされているが、例えば、上部構造体本体30の最下階FLと最上階FTとの間の途中階において、所定の外周柱34を抜く(省略)ことも可能である。また、外周柱34は、連続する複数の途中階に亘って省略することも可能である。
また、上記実施形態では、隣り合うフーチング64が基礎梁66を介して連結されるが、基礎梁66は適宜省略可能である。さらに、上記実施形態では、構造物10が免震構造物とされるが、構造物10は、免震化されていなくても良い。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。