JP3226492B2 - 高層建築物の免震構造 - Google Patents
高層建築物の免震構造Info
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Description
築に適用される高層建築物の免震構造に関するものであ
る。
層建築物を免震構造とするためには、一般的に建築物の
各柱の直下に水平方向に剪断変形可能な鉛入りの積層ゴ
ムを各々配置している。ここで、各柱に発生する軸力
(長期軸力、地震時軸力)は、その各柱の直下の積層ゴ
ムにそのまま伝達される。更に、地震力、即ち水平力が
建築物に作用した場合に、この積層ゴムの水平方向の剪
断変形により水平力を吸収するように構成されている。
ゴムの外径を大きくし、設置個数を少なくして、積層ゴ
ムを配設した免震層の固有周期を大きくすることによっ
て、地震時に上部構造体に加わる地震力を少なくするよ
うに計画される。しかし、集合住宅建築等が高層化する
と、例えば20階では、上部構造体を構成する柱の設置
数も多くなり、しかも、各柱に発生する長期柱軸力、地
震時柱軸力が大きくなるので、各柱を最下階の基礎から
立設して、各柱の直下に積層ゴムをそれぞれ配設せざる
を得なくなる。従って、各柱の直下に積層ゴムを配設す
る従来技術によると積層ゴムの数が多くなり、免震層の
固有周期を大きくし、ひいては建築物全体の固有周期を
長周期化することが困難となるという欠点を有してい
た。
ゴムの許容変形量、即ち許容変位角を確保するために
は、積層ゴムは、その最低受圧面積を一定面積以上に規
制されてくる。即ち、前記最低受圧面積以下の面積で構
成された積層ゴムを使用すると、水平力が作用した場合
に、この積層ゴムは、水平方向に許容変位角以上の変形
をしてしまって、塑性域に達して復元不可能となり、積
層ゴムとしての再使用が不可能となるからである。
に配設された積層ゴムは上記の如く最低受圧面積以上の
ものが使用されている。このため、建築物全体として見
ると各柱の分担する軸力と比較して、必要以上の受圧面
積の積層ゴムが配設されている。換言すれば、建築物全
体として配設された積層ゴムの数が多いことになり、よ
って、建築物の固有周期を長周期化することが困難であ
るという問題を有していた。
には、作用側の上部構造体の外柱に大きな引き抜き力が
働くが、その直下に設置された積層ゴムには引き抜き力
を生じない様にするのが望ましい。また、外柱に水平力
が作用することにより生じる引き抜き力に抵抗するの
は、当該外柱の長期柱軸力である。ところが、外柱の負
担する各階床の固定荷重と積載荷重との負担面積は、平
面的に見ると中間位置の柱の負担面積に比較して約半分
であり、建築物の各隅角部に配置された外柱においては
約1/4になるため、これらの外柱に加わる長期軸力
は、中間位置の柱に比較して小さくなり、よって、前記
引き抜き力に十分に抵抗することが困難となる。そこ
で、これらの外柱に加わる長期軸力を増大することが要
望されていた。
の問題点を解決し、建築物の固有周期を長周期化するこ
とができ、かつ、外柱に加わる長期軸力を増大すること
によって、外柱の直下に配設された積層ゴム(免震装
置)に地震時に引張力が生じないことを可能にする高層
建築物の免震構造を提供することを課題とするものであ
る。
め、請求項1記載の発明は、複数階を有する上部構造体
の下部に免震基盤及び免震層を介して基礎構造体が形成
されている高層建築物であって、前記免震層には、前記
上部構造体から当該免震層を介して前記基礎構造体に軸
力を伝達する各通し柱下端部に各々免震装置が配設さ
れ、前記上部構造体の外周の外柱から1スパン内側に
は、前記上部構造体と前記免震基盤位置との境界となる
免震基盤の上弦梁から上階に立設され、免震基盤の下弦
梁とは連結されずに断接された断接柱が配設され、前記
免震基盤の両側部位置に一対の免震補強部が配設されて
おり、当該免震補強部は、少なくとも直立柱と、枠梁
と、斜材とを備えて成り、前記直立柱は、前記上部構造
体の外周に配設された外柱が延設されて成り、前記枠梁
は、前記上部構造体との境界となる免震基盤の上弦梁両
端部が延設されて成り、前記斜材は、前記断接柱の下端
部と前記直立柱下端部とを連結して構成されており、前
記免震基盤の両側部位置に一対の前記免震補強部が配設
されることにより、前記上弦梁と、下弦梁と、一対の前
記斜材とで略台形の力学的トラスが形成されていること
を特徴としている。
明の構成に加えて、前記第1免震補強部は、前記直立柱
と、枠梁と、斜材とから成る軸線材だけで構成されてい
ることを特徴としている。
明の構成に加えて、前記第1免震補強部は、前記直立柱
と、枠梁と、斜材とから成る軸線材に加えて、これらの
軸線材を被覆する壁材から構成されていることを特徴と
している。
項3のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記免震
基盤の下弦梁が鉄筋コンクリート構造又は鉄骨鉄筋コン
クリート構造であり、当該免震基盤の下弦梁にプレスト
レスが導入されていることを特徴としている。
図面により説明する。図1及び図2は本発明の第1実施
形態を示すものであり、本実施形態に係る高層建築物1
は、上部構造体2と、免震基盤3と、免震層4と、基礎
構造体5とから構成されている。上部構造体2は、本実
施形態では20階程度の階層を有するものであり、図1
ではその下層部分のみを図示しており、中層部及び上層
部を省略している。なお、本実施形態では、上部構造体
2が一般的なラーメン構造の場合を例示しているが、こ
れに限定されるものではない。
盤3が設置され、当該免震基盤3の下部には免震層4を
介して基礎構造体5が設けられている。免震層4には、
上部構造体2から延設され、当該免震層4を介して基礎
構造体5に軸力を伝達する各通し柱7の下端部に各々免
震装置8が配設されている。この免震装置8としては、
鉛入りの積層ゴムが一般的であるが、これに限定され
ず、免震装置としての機能、即ち水平力が建築物に作用
した場合に、水平方向の剪断変形により水平力を吸収す
る機能を果たしうる他の適宜免震装置8を採用すること
ができる。
礎9と、下部基礎梁10と、杭11と擁壁12とから構
成されている。なお、杭11は省略して、直接基礎とす
ることも可能である。また、擁壁12は、地盤からの土
圧に対処するものであり、擁壁12と建物本体との間に
は、水平力により高層建築物1が変形した場合を考慮し
て所定のクリアランスが形成されている。
の構成について述べる。図1に示すように、上部構造体
2の外周の通し柱7から1スパン内側には、上部構造体
2と免震基盤3との境界となる免震基盤3の上弦梁20
から上階に向けて立設され、免震基盤3の下弦梁21と
は連結されずに断接された状態の断接柱15、15が配
設されている。なお、本明細書中において「スパン」と
は、対向配置される2本の柱間の単位のことであり、1
スパンとはそれが1単位、つまり柱が2本の場合のこと
である。また、「スパン長さ」とは、柱間の直線状の距
離であり、「スパン数」とはスパンの数をそれぞれ意味
するものとして各用語を使用する。そして、図1におい
て免震基盤3の両側部位置には、一対の免震補強部1
6、16が配設されている。
直立柱17と、枠梁18と、斜材19とから成る軸線材
だけで構成されている。直立柱17は、前記外周に配設
された通し柱7としての外柱71がそのまま下部方向に
延設されて形成されている。枠梁18は、図1に示すよ
うに上部構造体2との境界となる免震基盤3の上弦梁2
0の両端部がそのまま水平方向に延設されて構成されて
いる。斜材19は、断接柱15の下端部と直立柱17の
下端部とを連結して構成されており、断接柱15に加わ
る上部構造体2からの軸力が直立柱17へと流れるよう
に構成されている。また、図1において、免震基盤3の
下部には上部基礎梁としての下弦梁21が配設され、各
通し柱7の直下位置には上部基礎22が設置され、この
上部基礎22は、当該上部基礎22に作用する各通し柱
7からの軸力と、地震時の水平力を下部基礎9に伝達す
る機能を果たしている。
とした力学的な力の流れについて、図2を参照して説述
する。断接柱15に長期軸力NL が作用した場合、上弦
梁20には水平方向圧縮力Nc が、また、下弦梁21に
は水平方向引張力Nt が生じる。ここで、図2に示すよ
うに斜材19と下弦梁21とのなす角度θが45度の場
合には、断接柱15の長期軸力NL と上弦梁20の圧縮
力Nc の大きさが等しくなり、また断接柱15の長期軸
力NL と下弦梁21の引張力Nt の大きさも等しくな
る。よって、上弦材20の圧縮耐力を上部構造体2の梁
の圧縮耐力よりも大きくする必要がある。
造形式としては、鉄筋コンクリート構造、鉄骨鉄筋コン
クリート構造あるいは鉄骨構造のいずれにも適用可能で
あるが、上記の如く下弦梁21には、長期荷重時及び地
震時共に引張力Nt が作用するため、当該下弦梁21が
鉄筋コンクリート構造または鉄骨鉄筋コンクリート構造
の場合には、下弦梁21にプレストレスを導入しておけ
ば引張力Nt に十分に抵抗し、下弦梁21にコンクリー
トの引張ひび割れが生じることもない。このように、斜
材19と下弦梁21とのなす角度θを45度に設定した
場合には、力の釣り合いが対称形となるため、架構全体
のバランスがとれて望ましいが、必ずしも45度に限定
されるものではない。即ち、斜材19と下弦梁21との
なす角度θは、外柱71と断接柱15との間のスパン長
さと、免震基盤3の階高とで決定されるものであり、こ
の外柱71と断接柱15との間のスパン長さと、免震基
盤3の階高とを適宜に設定することにより、斜材19と
下弦梁21とのなす角度θを自由に調整可能である。
θを45度以上に設定した場合には、免震基盤3におけ
る階高を上部構造体2における一般階の階高の1.5倍
以上とすることができ、この免震基盤3部分を階高の高
さを利用してロフト付き住戸や、機械式駐車場として利
用可能である。あるいは、免震基盤3の直上の住戸の設
備配管スペースとしても利用でき、この場合は、階高が
高いため、さらに店舗等の空間としても利用可能とな
る。
免震補強部16、16が配設されることにより、構造的
観点からは、上弦梁20と、下弦梁21と、一対の斜材
19、19とで略台形の力学的トラス30が形成されて
いることになる。
接柱15、15の直下には免震装置としての積層ゴム8
が配置されないことになるため、全体としての積層ゴム
8の設置個数を減少させることができる。これは、高層
建築物1全体として見ると、各通し柱7の分担する軸力
と比較して当該軸力に見合った個数で、しかも適切な受
圧面積を有する積層ゴム8を配設することが出来ること
になり、よって、建築物の固有周期を長周期化すること
が可能となる。
長期軸力は、斜材19を介して外柱71の延長された直
立柱17に流れる。よって、外柱71の負担する各階床
の固定荷重と積載荷重との負担面積は、平面的に見て、
従来の外柱の負担面積に断接柱15の負担面積を加えた
ものとなり、約3倍に増大する。即ち、外柱71に加わ
る長期軸力が格段に増大することとなる。従って、高層
建築物1に水平力が作用した場合に作用側の外柱71に
生じる引き抜き力に十分に抵抗することが可能となり、
外柱71の直下に配設された積層ゴム8に過大な引き抜
き力が生じることもない。
枠梁18と、斜材19とから成る軸線材だけで構成する
ことにより、この三角形トラス部分の力の流れが明瞭化
されるため、構造設計が容易となる。さらに、この三角
形トラス部分に空間部が生じるため、この空間を設備配
管スペースとしても利用可能となる。
ものであり、本実施形態の特徴は、一対の免震補強部1
6が、直立柱17と、枠梁18と、斜材19とから成る
軸線材と、これらの軸線材を被覆する壁材23から構成
されている点にある。この壁材23の壁厚は周囲の直立
柱17、枠梁18及び斜材19の厚さ寸法よりも小さく
設定しても良い。更に、周囲の直立柱17、枠梁18及
び斜材19の厚さ寸法と同厚にして一体化しても良いも
のである。その他の構成は、図1に示した上記第1実施
形態と同様であるため、同一構成要素には同一符号を付
して説明を省略する。
を被覆する壁材23を追加することにより、免震補強部
16が、直立柱17と、枠梁18と、斜材19とから成
る軸線材のみである場合に比較して、免震補強部16を
施工する場合の型枠工事が省力化し得る。また、壁材2
3で被覆することにより、免震補強部16の面内剪断耐
力が向上して水平剛性を高めることができ、また、靭性
も相対的に向上する。また、力学的に上記第1実施形態
に準じた作用効果も奏し得る。
態では20階程度の階層の場合について説明したが、本
発明はこれに限定されるものではなく、より低層の建築
物や超高層建築物にまで幅広く適用することが可能であ
る。
請求項1記載の発明では次の効果を奏し得る。 (1) 免震基盤の両側部では、一対の断接柱の直下には免
震装置が配置されないことになるため、全体としての免
震装置の設置個数を減少させることができる。従って、
高層建築物全体として見ると、各通し柱の分担する軸力
と比較して当該軸力に見合った個数で、しかも適切な受
圧面積を有する免震装置を配設することが出来ることに
なり、よって、建築物の固有周期を長周期化することが
可能となる。 (2) 一対の断接柱に作用する長期軸力は、斜材を介して
外柱の延長された直立柱に流れるため、外柱の負担する
負担面積は、平面的に見て、従来の外柱の負担面積に断
接柱の負担面積を加えたものとなり、外柱に加わる長期
軸力が格段に増大することとなる。よって、高層建築物
に水平力が作用した場合に作用側の外柱に生じる引き抜
き力に十分に抵抗することによって、外柱の直下に配設
された免震装置に地震時に引き抜き力が生じないように
することも可能となる。 (3) 斜材と下弦梁とのなす角度を調整することにより、
免震基盤における階高を上部構造体における一般階の階
高よりも大きくすることができ、この免震基盤部分を階
高の高さを利用してロフト付き住戸や、機械式駐車場と
して利用可能である。あるいは、免震基盤直上の住戸の
設備配管スペースとしても利用でき、この場合は、階高
が高いため、さらに店舗等の空間としても利用可能とな
る。
の発明の効果に加えて次の効果を奏し得る。 (4) 免震補強部を、直立柱と、枠梁と、斜材とから成る
軸線材だけで構成することにより、この三角形トラス部
分の力の流れが明瞭化されるため、構造設計が容易とな
る。さらに、この三角形トラス部分に空間部が生じるた
め、この空間を設備配管スペースとしても利用可能とな
る。
の発明の効果に加えて次の効果を奏し得る。 (5) 免震補強部に軸線材を被覆する壁材を追加すること
により、軸線材のみである場合に比較して、免震補強部
を施工する場合の型枠工事が省力化し得る。また、壁材
で被覆することにより、免震補強部の面内剪断耐力が向
上して水平剛性を高めることができ、また、靭性も相対
的に向上する。
求項3のいずれかの発明の効果に加えて次の効果を奏し
得る。 (6) 下弦梁には引張力が作用するため、高層建築物が鉄
筋コンクリート構造又は鉄骨鉄筋コンクリート構造の場
合には、下弦梁にプレストレスを導入しておけば引張力
に十分に抵抗することが可能となる。
構造の構成を示す立面的要部説明図である。
要部説明図である。
構造の構成を示す立面的要部説明図である。
Claims (4)
- 【請求項1】複数階を有する上部構造体の下部に免震基
盤及び免震層を介して基礎構造体が形成されている高層
建築物であって、 前記免震層には、前記上部構造体から当該免震層を介し
て前記基礎構造体に軸力を伝達する各通し柱下端部に各
々免震装置が配設され、 前記上部構造体の外周の外柱から1スパン内側には、前
記上部構造体と前記免震基盤位置との境界となる免震基
盤の上弦梁から上階に立設され、免震基盤の下弦梁とは
連結されずに断接された断接柱が配設され、 前記免震基盤の両側部位置に一対の免震補強部が配設さ
れており、 当該免震補強部は、少なくとも直立柱と、枠梁と、斜材
とを備えて成り、 前記直立柱は、前記上部構造体の外周に配設された外柱
が延設されて成り、前記枠梁は、前記上部構造体との境
界となる免震基盤の上弦梁両端部が延設されて成り、前
記斜材は、前記断接柱の下端部と前記直立柱下端部とを
連結して構成されており、 前記免震基盤の両側部位置に一対の前記免震補強部が配
設されることにより、前記上弦梁と、下弦梁と、一対の
前記斜材とで略台形の力学的トラスが形成されているこ
とを特徴とする高層建築物の免震構造。 - 【請求項2】前記免震補強部は、前記直立柱と、枠梁
と、斜材とから成る軸線材だけで構成されている請求項
1記載の高層建築物の免震構造。 - 【請求項3】前記免震補強部は、前記直立柱と、枠梁
と、斜材とから成る軸線材に加えて、これらの軸線材を
被覆する壁材から構成されている請求項1記載の高層建
築物の免震構造。 - 【請求項4】前記免震基盤の下弦梁が鉄筋コンクリート
構造又は鉄骨鉄筋コンクリート構造であり、当該免震基
盤の下弦梁にプレストレスが導入されていることを特徴
とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の高層建
築物の免震構造。
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