JP2009002079A - 既存建物の耐震補強工法 - Google Patents

既存建物の耐震補強工法 Download PDF

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豪人 熊野
Yoshinori Serizawa
好徳 芹澤
Rikuta Murakami
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Abstract

【課題】既存建物に構築した耐震補強架構と、既存建物の床スラブとを、アンカー部材を使用せずに一体化し得、施工性の優れた既存建物の耐震補強工法を提供すること。
【解決手段】(1)床スラブ4において、スラブ鉄筋又はスラブ鉄骨の少なくともいずれか一方を残した状態でコンクリートを除去した除去区域4aを形成する工程;(2)除去区域内に、既存建物1の基礎部から立設される補強柱7を、複数建て込むと共に、その複数の補強柱7間に補強梁8を架設して耐震補強架構9を形成する工程;及び(3)除去区域4aにコンクリートを打設する工程を包含する既存建物の耐震補強工法。
【選択図】図2

Description

本発明は、コンクリートの中にスラブ鉄筋又はスラブ鉄骨の少なくともいずれか一方を配設した床スラブを備える既存建物に、補強柱と補強梁とを備える耐震補強架構を構築し、前記既存建物と前記耐震補強架構とを一体にする既存建物の耐震補強工法に関する。
既存建物(ビル、マンション、一般家屋等)に対する従来の一般的な耐震補強工法としては、建物の既存架構(柱、梁)に後施工アンカーを配置して、壁配筋と型枠工事を行い、コンクリートを打設して耐震壁を構築する方法が挙げられる。
しかしながら、上記耐震補強工法によれば、複層階建ての建物に対して前記耐震壁を構築する際、補強材料(後施工アンカー、鉄筋、コンクリート等)をエレベータ等で各階に搬入し、各階に構築される耐震壁毎に、コンクリートを打設するための打設用のアゴを設けたり、コンクリート打設後の壁頂部に無収縮モルタルを充填したりする必要があるので、非常に手間がかかり、工期が長期化してコストの増大を招来し得る。
そこで、上述のような問題を回避し得る別の耐震補強工法として、建物の各階の床スラブに作業孔を開口して、複数階にわたって貫通する作業空間を形成し、最も上の階に設けられた作業孔から、連続的に補強材料を供給して、作業空間内に耐震補強架構を構築し、コンクリートを打設して床スラブと一体化する方法が提案されている。(特許文献1参照)
特開2005−179978号公報
上記特許文献1に記載される耐震補強工法によれば、エレベータ等で各階に補強材料を搬入する必要がなく、また各階に構築される耐震壁毎に、コンクリートを打設するための打設用のアゴを設けたり、コンクリート打設後の壁頂部に無収縮モルタルを充填したりする必要も無いので、従来の一般的な耐震補強工法と比べると、より簡便に作業を実施することが可能である。
しかしながら、上記特許文献1に記載される耐震補強工法においては、構築した耐震補強架構を床スラブと一体化するために、数多くの後施工アンカーを作業孔内に打設する必要があるため施工性が良くなく、また打設の際の騒音もうるさくなるという問題が生じていた。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、既存建物に構築した耐震補強架構と、既存建物の床スラブとを、アンカー部材を使用せずに一体化し得、施工性の優れた既存建物の耐震補強工法を提供するものである。
本発明の第1特徴構成は、床スラブを備える既存建物に、補強柱と補強梁とを備える耐震補強架構を構築し、前記既存建物と前記耐震補強架構とを一体にする既存建物の耐震補強工法であって、
(1)前記床スラブにおいて、スラブ鉄筋又はスラブ鉄骨の少なくともいずれか一方を残した状態でコンクリートを除去した除去区域を形成する工程;
(2)前記除去区域内に、前記既存建物の基礎部から立設される前記補強柱を、複数建て込むと共に、その複数の補強柱間に前記補強梁を架設して前記耐震補強架構を形成する工程;及び
(3)前記除去区域にコンクリートを打設する工程;
を包含する点にある。
〔作用及び効果〕
本発明によれば、新設される耐震補強架構と、既設の床スラブとを、除去区域内に残されたスラブ鉄筋又はスラブ鉄骨を利用することによって、一体化することが可能であり、特に新たにアンカーを設けることがないので、耐震補強施工を簡素化することができる。
本発明の第2特徴構成は、前記補強柱を、前記既存建物の既設梁を抱き込むように設置する点にある。
〔作用及び効果〕
本発明によれば、既存建物にかかる地震時負担応力が、その既設梁を介して耐震補強架構に伝わり易くなる。その結果、既存建物にかかる負荷がより一層分散されることとなり、耐震補強効果がさらに向上し得る。
本発明の第3特徴構成は、前記耐震補強架構に、耐震壁又はブレースの少なくともいずれか一方を設置する点にある。
〔作用及び効果〕
本発明によれば、耐震補強架構の補強効果がさらに向上し得る。
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔実施形態〕
図1〜図7は、本発明の耐震補強工法を施す既存建物1の一階部分を示している。
既存建物1は、鉄筋コンクリート構造又は鉄骨鉄筋コンクリート構造を有する柱2、梁3、床スラブ4等から構成されており、柱2と梁3を一体化して骨組を作るラーメン構造を備えている。
本発明の耐震補強工法は、少なくとも以下に記載する各工程(1)〜(3)を包含するものであるが、これらの工程以外の工程を必要に応じて任意に組み合わせて実施することも可能である。
(1)除去区域形成工程
床スラブ4には、そのコンクリートの中にスラブ鉄筋又はスラブ鉄骨の少なくともいずれか一方が配設されている。以下、スラブ鉄筋及びスラブ鉄骨をまとめて配筋部材5と称する。
図1(イ:斜視図、ロ:平面図)に示すように、除去区域形成工程においては、既設の柱2及び梁3からなる既存柱梁フレーム架構に沿って、配筋部材5(スラブ鉄筋又はスラブ鉄骨の少なくともいずれか一方)を残した状態で、コンクリートを除去して、床スラブ4の一部に除去区域4aを形成する。
ここで、本発明における除去区域4aとは、コンクリートを除去した床スラブ4部分だけでなく、その周縁の既存柱梁フレーム架構部分をも含むものと定義する。
(2)耐震補強架構形成工程
次いで、図2(イ:斜視図、ロ:平面図)及び図3(立面図)に示すように、除去区域4a内に、既存建物1の基礎部6から立設される補強柱7を2本建て込むと共に、その2本の補強柱7間に補強梁8を架設して耐震補強架構9を形成する。
このとき、補強柱7と補強梁8は、露出した配筋部材5の一部を包含する状態で形成されることとなるため、耐震補強架構9が、配筋部材5を介して既存建物1と一体化される。
また、図5(イ:斜視図、ロ:平面図)及び図6(立面図)に示すように、補強柱7を建て込む際、既存建物1の既設梁3を抱き込むように設置しても良い。この構成によれば、補強柱7と、既設梁3とを、いわゆる「ほぞ組構造」とすることによって、既存建物1にかかる地震時負担応力が、その既設梁3を介して耐震補強架構9に伝わり易くなる。その結果、既存建物1にかかる負荷がより一層分散されることとなり、耐震補強効果が向上し得る。
尚、上述の補強柱7は、鉄筋コンクリート構造、又は鉄骨鉄筋コンクリート構造を有するものに限られず、鉄骨柱としても良く、建て込む補強柱7の数については、2本以上(複数)であれば特に限定されるものではない。一方、補強梁8についても、鉄筋コンクリート構造、又は鉄骨鉄筋コンクリート構造を有するものに限られず、鉄骨梁としても良い。
(3)コンクリート打設工程
最後に、図4又は図7に示すように、除去区域4aに再びコンクリートを打設し、床スラブ4を再生して作業を完了する。
尚、耐震補強架構9については、その補強効果をさらに向上させるために、図8に示すような耐震壁10(図8(イ)参照)又はブレース11(図8(ロ)参照)の少なくともいずれか一方を設置する構成としても良い。
また、図9に示すように、複層階建ての既存建物1に対して本発明を実施する場合、各階について本発明における上述の(1)除去区域形成工程及び(2)耐震補強架構形成工程を実施した後、トレミー管12などを用いて最上階から連続的にコンクリートを供給することによって、効率良く(3)コンクリート打設工程を実施することができる。
〔参考例〕
本発明によって形成された耐震補強架構9は、その既存建物1を建て替える際の新たな柱梁フレーム架構としても利用することができる。
即ち、図10(イ)に示すように、本発明によって形成された耐震補強架構9を備える既存建物1において、図10(ロ)に示すように、その既存建物1を解体する際、耐震補強架構9を残して、既設の柱2及び梁3からなる既存柱梁フレーム架構を解体する。そして、図10(ハ)に示すように、残された耐震補強架構9を利用して、新たな梁3や床スラブ4等を設けることによって、新築建物を短期間且つ低コストで構築することができる。
本発明の耐震補強工法を施す既存建物の一階部分を示す斜視図(イ)及び平面図(ロ) 本発明の耐震補強工法を施す既存建物の一階部分を示す斜視図(イ)及び平面図(ロ) 本発明の耐震補強工法を施す既存建物の一階部分を示す立面図 本発明の耐震補強工法を施す既存建物の一階部分を示す斜視図 本発明の耐震補強工法(耐震補強架構をほぞ組構造とする場合)を施す既存建物の一階部分を示す斜視図(イ)及び平面図(ロ) 本発明の耐震補強工法(耐震補強架構をほぞ組構造とする場合)を施す既存建物の一階部分を示す立面図 本発明の耐震補強工法(耐震補強架構をほぞ組構造とする場合)を施す既存建物の一階部分を示す斜視図 耐震補強架構の立面図 複層階建ての既存建物における耐震補強架構の立面図 本発明による耐震補強架構を利用して新築建物を構築する参考例を模式的に示した平面図
符号の説明
1 既存建物
2 柱
3 梁
4 床スラブ
4a 除去区域
5 配筋部材
6 基礎部
7 補強柱
8 補強梁
9 耐震補強架構
10 耐震壁
11 ブレース
12 トレミー管

Claims (3)

  1. 床スラブを備える既存建物に、補強柱と補強梁とを備える耐震補強架構を構築し、前記既存建物と前記耐震補強架構とを一体にする既存建物の耐震補強工法であって、
    (1)前記床スラブにおいて、スラブ鉄筋又はスラブ鉄骨の少なくともいずれか一方を残した状態でコンクリートを除去した除去区域を形成する工程;
    (2)前記除去区域内に、前記既存建物の基礎部から立設される前記補強柱を、複数建て込むと共に、その複数の補強柱間に前記補強梁を架設して前記耐震補強架構を形成する工程;及び
    (3)前記除去区域にコンクリートを打設する工程;
    を包含する既存建物の耐震補強工法。
  2. 前記補強柱を、前記既存建物の既設梁を抱き込むように設置する請求項1に記載の既存建物の耐震補強工法。
  3. 前記耐震補強架構に、耐震壁又はブレースの少なくともいずれか一方を設置する請求項1又は2のいずれか1項に記載の既存建物の耐震補強工法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014020119A (ja) * 2012-07-19 2014-02-03 Taisei Corp 既存建物の外付け補強構造および既存建物の補強方法
CN106437189A (zh) * 2016-09-12 2017-02-22 上海市建筑科学研究院 加固修复震损钢筋混凝土框架结构的方法
CN109184254A (zh) * 2018-10-23 2019-01-11 贵州中建建筑科研设计院有限公司 一种在既有建筑楼板之上新增隔墙的施工方法及结构

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